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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
E03D11/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018060552
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019173324
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】中津 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 有貴
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172119(JP,A)
【文献】特開2011-012508(JP,A)
【文献】特開2015-017460(JP,A)
【文献】特開2016-098610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
上縁に形成されるリムと、汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面と上記リムとの間に形成される棚と、を備え、ボウル形状のボウル面を形成すると共にその下方に溜水部を形成するボウルと、
このボウルの下方に接続されて汚物を排出する排水路と、
上記リムに設けられて上記棚に洗浄水を吐水して上記ボウル面に旋回流を形成する吐水部と、を有し、
上記ボウル面は、上記棚の外縁と上記リムの下縁との間を曲面にて連結する連結面を備えており、
上記連結面は、上記ボウル面における前後及び左右の両端を含む周方向の領域において、上記連結面の曲面の上下方向の曲率半径がほぼ同一に設定されており、
上記連結面は、上記ボウル面における前方領域及び左右の両端を含む左右側方領域において互いにほぼ同一の第1高さ位置に設けられた第1連結面と、上記ボウル面における後方領域において上記第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に設けられた第2連結面と、を備えており、
上記吐水部は、上記ボウル面に対して前方側に吐水する第1吐水口と、上記ボウル面に対して後方側に吐水する第2吐水口と、を備えており、
上記第2連結面は、上記第2吐水口よりも下方側で低く形成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記第1連結面の下端は、上記ボウル面における前方領域及び左右側方領域に亘って上記リムの上面に対して所定距離下方のほぼ同一の高さ位置に設けられ、上記第2連結面の下端は、上記第1連結面の下端よりも低い高さ位置に設けられている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第2連結面の下端の高さ位置は、上記ボウル面の後方領域内の左右方向のほぼ中央の領域において、最も低い高さ位置に設定されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記第2連結面の高さ位置は、上記ボウル面の後方領域において周方向に沿って連続的に変化するように設定されている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記リムは、その内周面が上記第1連結面の上端から上記リムの上面まで立ち上がるように形成された第1立壁面と、上記リムの内周面が上記第2連結面の上端から上記リムの上面まで立ち上がるように形成された第2立壁面と、を備え、
上記第1立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第1距離は、上記ボウル面の前方領域及び左右側方領域に亘ってほぼ同一に設定されており、
上記ボウル面の後方領域における上記第2立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第2距離は、上記第1距離よりも大きく設定されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記第1吐水口は、上記ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して一方側の側方領域から上記前方領域に変化する領域付近に配置されており、上記第2吐水口は、上記ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して他方側の側方領域から上記後方領域に変化する領域付近に配置されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記第1連結面の下端と上記第2連結面の下端との間における鉛直方向の距離は、3mm~15mmに設定されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する従来の水洗大便器として、例えば、特許文献1~3に記載されているものが知られている。
まず、特許文献1、2に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体の後方且つ上方に設けられた洗浄水タンクの洗浄水が、ディストリビュータを介して複数の給水口からボウル後方の給水空間内に供給されるようになっている。そして、ボウルのリムの内周面の後側領域における左右方向中央よりも左側領域には吐水口が設けられており、ボウル後方の給水空間内の洗浄水は、吐水口から前方に向かって吐水されるようになっている。また、吐水口から前方に向かって吐水された洗浄水は、ボウルの棚面の外縁、リムの内壁面の下端、及び、これらのボウルの棚面の外縁とリムの内壁面の下端との連結面に接する旋回流を形成するようになっている。
さらに、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器では、ボウルの棚面の外縁とリムの内壁面の下端との連結面における前側領域及び後側領域が、この連結面の左右両側領域よりも低い位置に設定されている。これにより、ボウルの前側領域及び後側領域におけるリムの上端面と洗浄水の旋回経路との高低差が、ボウルの左右両側領域に比べて大きくなるため、洗浄水の上方への飛び散りが抑制されるようになっている。
また、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器では、ボウルの棚の外周縁とリムの内壁面(立壁面)の下端縁とを連結する連結面において、その曲面の上下方向の曲率半径がボウルの前側領域の左右中央で最大となり、左右両側に向けて徐々に小さくなっている。また、連結面の曲面の上下方向の弧の中点の高さ位置については、ボウルの前側領域の左右中央で最も低くなっている。これらにより、ボウルの前側領域の左右中央部の曲面に対して小便がぶつかった場合に小便を流れやすくすることができ、立壁面と連結面との境界部分に小便が滞留することを抑制することができるようになっている。
つぎに、特許文献3に記載されている従来の水洗大便器では、リムに設けられて棚に洗浄水を吐水してボウル面に旋回流を形成すると共にその吐水方向が便器前方方向であるリム吐水部と、汚物受け面の側面に形成されて溜水を上下方向に攪拌するゼット吐水部とを備えている。さらに、ボウルの汚物受け面には、ボウルの前方側から排水トラップ管路の入口に向けて延びる側壁及び底面を備えた凹部が形成され、リム吐水部から吐水された洗浄水は、凹部の側壁に衝突することにより排水トラップ管路の入口に向かって流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-41881号公報
【文献】特開2016-41879号公報
【文献】特開2012-229612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載されている従来の水洗大便器においては、例えば、旋回経路のうちの平面視の曲率半径が小さいボウルの前側領域の上流側近傍等に吐水口が設けられた場合には、吐水直後の洗浄水が、連結面の左右一方側の領域から、この領域よりも低い位置の前側領域に向かって加速しながら勢い良く降下することになる。そして、このように勢いを増して連結面の前側領域を通過した洗浄水が、連結面の左右他方側の領域に向かって上昇した際に跳ね上がることにより、ボウルの外部へ飛び出したり、周囲へ飛び散ったりするおそれがあるという問題がある。
したがって、上述した特許文献1、2に記載された従来の水洗大便器のように、たとえ連結面における前側領域が左右両側領域よりも低い位置に設定され、リムの上端面と洗浄水の旋回経路との高低差が大きく設定されていたとしても、吐水口の配置次第によっては、ボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを抑制することが難しいという問題がある。
また、上述した特許文献2に記載された従来の水洗大便器のように、ボウルの棚の外周縁とリムの内壁面(立壁面)の下端縁とを連結する連結面において、その曲面の上下方向の曲率半径がボウルの前側領域の左右中央で最大に設定され、左右両側に向けて徐々に小さく設定されたとしても、吐水口の配置次第によっては、ボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを抑制することが難しいという問題がある。
同様に、上述した特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においても、例えば、旋回経路のうちの平面視の曲率半径が小さいボウルの前側領域の上流側近傍等に吐水口が設けられた場合には、吐水直後の洗浄水が、ボウルの前側領域の凹部を通過する際には、吐水口よりも低い凹部の底面に向かって加速しながら勢い良く降下する。そして、この勢いを増した洗浄水は、凹部の底面を勢い良く上昇して跳ね上がることによりボウルの外部へ飛び出したり、或いは、凹部の側壁に勢い良く衝突することにより、周囲へ飛び散ったりするおそれがあるという問題がある。
よって、上述した特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においても、吐水口の配置次第によっては、ボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを抑制することが難しいという問題がある。
さらに、これらのボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを抑制することができない場合には、洗浄水の流れのエネルギーロスにもつながるため、本来の便器の洗浄すべき箇所に対して十分な洗浄を行うことができず、ボウル面に不洗浄部分を残してしまうという問題がある。
ボウル面の中でも、特に、汚物受け面の後方領域等については、汚物が付着しやすい箇所ではあるが、このような汚物が付着しやすい箇所に対して、洗浄水が水勢の弱められた状態で供給されてしまうと、汚物受け面の後方領域の汚物を十分に洗い流すことができずに汚物が残存してしまい、洗浄水による洗浄性能が低下するという問題が生ずる。
したがって、汚物が付着しやすい汚物受け面等のボウル面の後方領域について、いかに確実に洗浄を行い、洗浄性能を向上させるかが、従来から要請された課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、洗浄水によるボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを効果的に抑制することができ、特に、ボウル面の後方領域における洗浄性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、上縁に形成されるリムと、汚物を受ける汚物受け面と、この汚物受け面と上記リムとの間に形成される棚と、を備え、ボウル形状のボウル面を形成すると共にその下方に溜水部を形成するボウルと、このボウルの下方に接続されて汚物を排出する排水路と、上記リムに設けられて上記棚に洗浄水を吐水して上記ボウル面に旋回流を形成する吐水部と、を有し、上記ボウル面は、上記棚の外縁と上記リムの下縁との間を曲面にて連結する連結面を備えており、上記連結面は、上記ボウル面における前後及び左右の両端を含む周方向の領域において、上記連結面の曲面の上下方向の曲率半径がほぼ同一に設定されており、上記連結面は、上記ボウル面における前方領域及び左右の両端を含む左右側方領域において互いにほぼ同一の第1高さ位置に設けられた第1連結面と、上記ボウル面における後方領域において上記第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に設けられた第2連結面と、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、吐水部から吐水された洗浄水は棚上に沿って流れて旋回流を形成する。この際、ボウル面が、棚の外縁とリムの下縁との間を曲面にて連結する連結面を備えており、ボウル面における前後及び左右の両端を含む周方向の領域において、この連結面の曲面の上下方向の曲率半径がほぼ同一に設定されている。これにより、棚形状のばらつき等によって洗浄水が飛び散ることを抑制し、且つ洗浄水のエネルギー損失を抑制することができる。
さらに、連結面の第1連結面が、ボウル面における前方領域及び左右の両端を含む左右側方領域において互いにほぼ同一の第1高さ位置に設けられており、連結面の第2連結面が、ボウル面における後方領域において第1連結面の第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に設けられている。
これにより、ボウル面の前方領域及び左右側方領域における棚、第1連結面、及び、リムに沿って周方向に旋回する洗浄水は、ボウル面の後方領域に流入した際、ボウル面の後方領域における棚面、第2連結面、及び、リムの内周面に沿って流れることにより、高いエネルギー状態のままでボウル面の下方の溜水部に向けて後方側から勢い良く流下することができる。
したがって、汚物が付着しやすいボウル面の後方領域においても確実に洗浄することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記第1連結面の下端は、上記ボウル面における前方領域及び左右側方領域に亘って上記リムの上面に対して所定距離下方のほぼ同一の高さ位置に設けられ、上記第2連結面の下端は、上記第1連結面の下端よりも低い高さ位置に設けられている。
このように構成された本発明においては、ボウル面における前方領域及び左右側方領域のそれぞれの第1連結面の下端が、互いにリムの上面に対して所定距離下方の同一の高さ位置に設けられているため、ボウル面における前方領域及び左右側方領域の第1連結面に沿って旋回する洗浄水のエネルギー損失を抑制することができる。
また、ボウル面の後方領域における第2連結面の下端がボウル面における前方領域及び左右側方領域の第1連結面の下端よりも低い高さ位置に設けられているため、ボウル面の後方領域の第2連結面付近を流れる洗浄水の水撥ねを抑制しながら、エネルギーロスを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記第2連結面の下端の高さ位置は、上記ボウル面の後方領域内の左右方向のほぼ中央の領域において、最も低い高さ位置に設定されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面の後方領域の第2連結面の下端の高さ位置について、ボウル面の後方領域内の左右方向のほぼ中央の領域が最も低い高さ位置に設定されているため、ボウル面の後方領域の棚上を流れる洗浄水は、ボウル面の後方領域内の左右方向のほぼ中央の領域付近からボウル面の下方の溜水部にスムーズに導かれた後、排水路内に流れ込むことができる。
これにより、汚物が付着しやすいボウル面の後方領域内の左右方向のほぼ中央の領域付近について集中的に洗浄することができるため、ボウル面の後方領域内の洗浄性能を向上させることができる。
加えて、ボウル面の後方領域内を流れる高いエネルギー状態の洗浄水を溜水部内に後方側から勢い良く流入させることができるため、排水路への汚物排出性能を向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記第2連結面の高さ位置は、上記ボウル面の後方領域において周方向に沿って連続的に変化するように設定されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面の後方領域における第2連結面の高さ位置がボウル面の後方領域の周方向に沿って連続的に変化するように設定されていることにより、第2連結面の高さ位置がボウル面の後方領域内の一方側から周方向に沿って左右方向のほぼ中央の領域付近まで徐々に変化しながら下降し、その後、ボウル面の後方領域内の他方側に向かって徐々に上昇することができる。
したがって、第2連結面の高さ位置の急激な変化を抑制することができるため、ボウル面の後方領域における第2連結面付近を流れる洗浄水の水撥ねやそれに伴うエネルギーロスを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記リムは、その内周面が上記第1連結面の上端から上記リムの上面まで立ち上がるように形成された第1立壁面と、上記リムの内周面が上記第2連結面の上端から上記リムの上面まで立ち上がるように形成された第2立壁面と、を備え、上記第1立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第1距離は、上記ボウル面の前方領域及び左右側方領域に亘ってほぼ同一に設定されており、上記ボウル面の後方領域における上記第2立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第2距離は、上記第1距離よりも大きく設定されている。
このように構成された本発明においては、第1立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第1距離が、ボウル面の前方領域及び左右側方領域に亘ってほぼ同一に設定されているため、ボウル面の前方領域及び左右側方領域の第1立壁面に沿って流れる洗浄水について、エネルギーロスが抑制された状態でボウル面の後方領域に流入させることができる。
また、第1立壁面に沿って流れた洗浄水がボウル面の後方領域に流入して第2立壁面に沿って流れる際に、洗浄水の流動が変化して水撥ねが生じる恐れがあっても、ボウル面の後方領域の第2立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第2距離がボウル面の前方領域及び左右側方領域の第1立壁面の下端から上端までの鉛直方向の第1距離よりも大きく設定されているため、水撥ねを効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記吐水部は、上記ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して一方側の側方領域から上記前方領域に変化する領域付近に配置された第1吐水口と、上記ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して他方側の側方領域から上記後方領域に変化する領域付近に配置された第2吐水口と、を備えている。
このように構成された本発明においては、吐水部の第1吐水口は、ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して一方側の側方領域から前方領域に変化する領域付近に配置されているため、この第1吐水口からの吐水直後の洗浄水は、比較的エネルギーロスが生じやすい状態で、また、水撥ねも生じやすい状態となっている。
しかしながら、ボウル面における前後及び左右の両端を含む周方向の領域において、連結面の曲面の上下方向の曲率半径がほぼ同一に設定されているため、第1吐水口からの吐水直後の洗浄水がボウル面の前方領域に流入した後においては、エネルギーロスや水撥ねを抑制しながら、安定して旋回させることができる。
また、吐水部の第2吐水口は、ボウル面の前後方向に延びる中心軸線に対して他方側の側方領域から後方領域に変化する領域付近に配置されているため、第2吐水口から吐水された洗浄水は、ボウル面の後方領域内の棚に沿ってある程度の遠心力が作用した状態で流れることになる。
しかしながら、ボウル面の後方領域における第2連結面が、ボウル面における前方領域及び左右の両端を含む左右側方領域における第1連結面よりも低い位置に設けられているため、ボウル面の後方領域の棚上を流れる洗浄水は、その後、高いエネルギーを維持した状態でボウル面の下方の溜水部にスムーズに導かれる。そして、溜水部内の洗浄水は、上下縦方向に旋回する旋回流を形成し、強力に攪拌することができる。
そして、ボウル面の上下方向の水の落差による流水作用により、洗浄水が排水路内に流れ込み、汚物を押し流すことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記第1連結面の下端と上記第2連結面の下端との間における鉛直方向の距離は、3mm~15mmに設定されている。
このように構成された本発明においては、ボウル面の後方領域における第2連結面付近を流れる洗浄水の水撥ねやそれに伴うエネルギーロスを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、洗浄水によるボウルの外部への飛び出しや周囲への飛び散りを効果的に抑制することができ、特に、ボウル面の後方領域における洗浄性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図1のV-V線に沿った断面図である。
図6A図3のA部拡大図である。
図6B図3のB部拡大図である。
図6C図4のC部拡大図である。
図6D図4のD部拡大図である。
図6E図5のE部拡大図である。
図6F図5のF部拡大図である。
図7】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル内の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
図8】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル内の洗浄水の流れを概略的に説明した概略正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、図1図8を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2を備えている。この便器本体2は、上流側から下流側に向かって、導水路4と、ボウル形状のボウル6と、排水トラップ管路8とを備えている。
また、本実施形態の水洗大便器1は、便器本体2のボウル6内の水の落差による流水作用で汚物を排水トラップ管路8へ押し流す、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」である。
なお、便器本体2については、陶器製以外の樹脂製等であってもよい。
【0016】
つぎに、図1に示す本実施形態の水洗大便器1の便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)等が設けられているが、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
また、便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)の後方側には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部(図示せず)や便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部等の機能部(図示せず)も設けられていてもよいが、これらについても、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0017】
つぎに、図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、便器本体2のボウル6の後方且つ上方に設けられた洗浄水源である洗浄水タンク装置10を備えている。
また、洗浄水タンク装置10は、貯水した洗浄水について重力を利用して便器本体2の導水路4に供給可能にする重力給水式の貯水タンク10aを備えている。
ここで、貯水タンク10aの内部には、代表的には、貯水タンク10a内に洗浄水を給水する給水装置(図示せず)や、貯水タンク10aの排水口(図示せず)を開閉する排水弁装置(図示せず)等が設けられているが、これらの装置は、従来と同様であるため、具体的な説明については省略する。
なお、本実施形態では、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、上述した重力給水式の貯水タンク10のようなタンク式の形態に限定されず、他の形態でも適用可能である。すなわち、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源として、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態であってもよいし、或いは、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給する形態であってもよい。
【0018】
つぎに、図2は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。また、図4は、図1のIV-IV線に沿った断面図であり、図5は、図1のV-V線に沿った断面図である。
なお、図2図5においては、本実施形態の水洗大便器1の洗浄水タンク装置10については省略している。
ここで、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル6の平面視において、ボウル6を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、ボウル6を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を「Y」で示している。
また、図1では、中心軸線X,Yの互いの交点を平面視のボウル6の中心Oとし、この中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
これらにより、図2及び図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル6の側面視において、ボウル6を前後方向に二等分するように鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
さらに、図1図3に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
【0019】
また、図1図3に示すように、水洗大便器1のボウル6においては、その前端(ボウル面Sの前端6a)から水平前後方向の中心軸線Yに沿って所定距離Y1[mm]だけ後方の境界位置P1までの領域を「ボウル6の前方領域F」と定義し、ボウル6内の後端(ボウル面Sの後端6b)から水平前後方向の中心軸線Yに沿って所定距離Y2[mm]だけ前方の境界位置P2までの領域を「ボウル6の後方領域B」と定義する。
さらに、図1図3に示すように、水洗大便器1のボウル6において、前方領域Fと後方領域Bとの間の領域で且つ水平前後方向の中心軸線Yに対して右側の側方領域を「ボウル6の右側方領域R」と定義し、前方領域Fと後方領域Bとの間の領域で且つ水平前後方向の中心軸線Yに対して左側の側方領域を「ボウル6の左側方領域L」と定義する。
例えば、図1に示すように、ボウル6内の前端6aから後端6bまでの前後方向の全長距離をY0[mm]とすると、ボウル6の前方領域Fの水平前後方向の範囲に相当する所定距離Y1は、全長距離Y0に対して30%~40%(Y1/Y0=0.30~0.40)の大きさに設定されている。
また、図1に示すように、ボウル6の後方領域Bの水平前後方向の範囲に相当する所定距離Y2は、全長距離Y0に対して15%~25%(Y2/Y0=0.15~0.25)の大きさに設定されている。
【0020】
つぎに、図1図5に示すように、便器本体2の上流側に位置する導水路4は、ボウル6の後方側に形成され、貯水タンク10から供給された洗浄水をボウル6に導くようになっている。
また、図1図5に示すように、便器本体2の導水路4の下流側に位置するボウル6は、下方から上方に向かって、凹部12、汚物受け面14、棚16、及び、リム18を備えている。
【0021】
まず、ボウル6の凹部12は、ボウル6の下方に凹状に形成されており、溜水W0が収容される溜水部となっている。
つぎに、ボウル6の汚物受け面14は、凹部12の上縁からボウル状に形成されており、汚物を受ける面となっている。
ここで、図1図5に示すように、ボウル面Sについては、汚物受け面14から凹部12にかけて下方に屈曲しており、凹部12は、その屈曲を開始した地点を汚物受け面14との境界としている。
なお、図1図5では、汚物受け面14と凹部12との境界線を「M」とする。すなわち、この境界線Mは、凹部12の上縁に相当すると共に、汚物受け面14の内縁かつ下縁に相当している。
また、図1図5に示すように、ボウル6のリム18は、ボウル6の上縁を形成しており、リム18の内周面S1は、図1に示す平面視において、概ね卵形の形状に形成されている。
【0022】
ここで、図1に示すように、ボウル6の前方領域F、後方領域B、左右側方領域L,Rのそれぞれのリム18の内周面S1の平面視において、それぞれの前端6a付近の代表的な曲率半径をr1、後端6b付近の代表的な曲率半径をr2、左端6c付近の代表的な曲率半径をr3、及び、右端6d付近の代表的な曲率半径をr4とする。
このとき、曲率半径r1は、曲率半径r2,r3,r4よりも小さく設定されている。また、曲率半径r3,r4は、ボウル6の左右対称の位置において互いにほぼ同一の曲率半径に設定されており、曲率半径r2よりも大きく設定されている(r1<r2<r3≒r4)。
さらに、図1図5に示すように、ボウル6の棚16は、汚物受け面14の外縁とリム18の下端との間に形成されている。導水路4内の洗浄水は、詳細は後述する2つのリム吐水口(第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22)のそれぞれに導かれて吐水された後、棚16上に沿って周方向下流側に導かれるようになっている。
【0023】
つぎに、図1図5に示すように、導水路4は、共通通水路24、第1リム通水路26、及び、第2リム通水路28を備えている。
まず、図1図3に示すように、共通通水路24は、貯水タンク10に接続される後方の入口4aから前方のボウル6の背面側近傍まで延びるようにボウル6の後方側の便器本体2の内部に形成されている。
また、図1図2図4及び図5に示すように、第1リム通水路26は、ボウル6の背面側近傍で共通通水路24からボウル6の一方側(ボウル6の前方から見て左側)に分岐している。
そして、図1図2図4及び図5に示すように、第1リム通水路26は、ボウル6の外周面を迂回しながら前方に延びるようにボウル6の左側方領域Lのリム18の内部に形成された後、その前方の前方領域F内の第1吐水口(第1リム吐水口20)まで延びている。
【0024】
一方、図1図3図5に示すように、第2リム通水路28については、ボウル6の背面側近傍で共通通水路24からボウル6の他方側(ボウル6の前方から見て右側)に分岐している。
また、図1図3図5に示すように、第2リム通水路28は、ボウル6の外周面を迂回しながら前方に延びるようにボウル6の後方領域Bのリム18の内部に形成される。
そして、図1図3図5に示すように、第2リム通水路28は、ボウル6の後方領域Bよりも前方で且つ水平左右方向の中心軸線Xよりも後方の右側方領域R内のリム18の内部で後方側にUターンするように形成された後、ボウル6の右側方領域R内の後方側の第2吐水口(第2リム吐水口22)まで延びている。
さらに、図1に示すように、第2リム通水路28については、より具体的には、上流側から下流側に向かって、入口28aと、外側通水路28bと、屈曲通水路28cと、内側通水路28dとを備えている。
これにより、第2リム通水路28は、外側通水路28bの前方部分(下流側部分)から屈曲通水路28c及び内側通水路28dを経て、その下流端の第2リム吐水口22までの部分が、平面視でU字形形状にターンする部分(Uターン部U)を形成している。
【0025】
つぎに、図1図3及び図5に示すように、便器本体2の下流側に位置する排水トラップ管路8は、ボウル6の下方から後方に形成され、ボウル6内の汚物を排出する排水路である。
また、図1図3及び図5に示すように、排水トラップ管路8の入口8aは、ボウル6の凹部12の下方に接続されている。
さらに、図2及び図3に示すように、排水トラップ管路8は、その入口8aから下方且つ後方に下降する下降路8bと、この下降路8bの下流端から上方且つ後方に上昇する上昇路8cと、を備えている。
【0026】
つぎに、図1図5に示すように、ボウル6は、下方から上方に向かって、凹部12内の底壁面12a及び側壁面12bを含む壁面S2、汚物受け面14の全面S3、棚16の表面(棚面)S4、及び、リム18の内周面S1を備えており、これらの面S1~S4により、ボウル形状のボウル面Sを形成している。
なお、本実施形態では、ボウル6の平面視のボウル面Sの形状について、概ね卵形形状に形成された形態について説明するが、卵形形状とは異なる概ね楕円形状に形成された形態等であってもよい。
【0027】
つぎに、図1及び図2に示すように、水洗大便器1の第1リム吐水口20は、ボウル面Sの水平前後方向に延びる中心軸線Yに対して一方側の左側方領域Lから前方領域Fに変化する領域付近に配置されている。より具体的には、第1リム吐水口20は、ボウル6の前方領域Fの境界位置P1よりも前方の前方領域F内の後方側に配置されている。
例えば、図1及び図2に示すように、ボウル6内の前端6aからボウル6の前方領域F内の第1リム吐水口20の位置P3までの前後方向の距離Y3は、ボウル6内の全長距離Y0に対して15%~35%(Y3/Y0=0.15~0.35)の大きさに設定されている。
つぎに、図1及び図3に示すように、水洗大便器1の第2リム吐水口22は、ボウル面Sの前後方向に延びる中心軸線Yに対して他方側の右側方領域Rから後方領域Bに変化する領域付近に配置されている。より具体的には、第2リム吐水口22は、ボウル6の後方領域Bの前方側の境界位置P2よりも前方の右側方領域R内の後方側に配置されている。
例えば、図1及び図3に示すように、ボウル6内の後端6bからボウル6の右側方領域R内の第2リム吐水口22の位置P4までの前後方向の距離Y4は、ボウル6内の全長距離Y0に対して15%~35%(Y4/Y0=0.15~0.35)の大きさに設定されている。
【0028】
つぎに、図1及び図3図5に示すように、第2リム吐水口22の位置P4は、ボウル6の凹部12の後端位置P5(図3に示す凹部12内の後壁面12cの上端位置にも相当する位置)よりも前方に設定されている。
特に、図1に示すように、この凹部12の後端位置P5は、汚物受け面14と凹部12との境界線M上の最後端に位置している。
また、図1図3及び図5に示すように、ボウル6の凹部12内に収容される溜水W0の水位(溜水面WL)については、便器洗浄が開始する前及び便器洗浄が完了した後の待機状態の静水位置を示している。
そして、図1に示すように、第2リム吐水口22の位置P4は、平面視において、ボウル6の凹部12内に収容される溜水W0の溜水面WLの後端位置P6よりも前方に設定されている。
さらに、図1及び図3に示すように、第2リム吐水口22の開口断面は、便器本体2の前後方向の後方に向かって差し向けられた状態で開口している。
【0029】
つぎに、図6A図3のA部拡大図であり、図6B図3のB部拡大図である。また、図6C図4のC部拡大図であり、図6D図4のD部拡大図である。さらに、図6E図5のE部拡大図であり、図6F図5のF部拡大図である。
まず、図1図6A図6C図6Fに示すように、ボウル面Sは、その前方領域F、及び、左右の両端6c,6dを含む左右側方領域L,Rにおいて、棚16の棚面S4の外縁16aとリム18の下縁18aとの間を曲面S5にて連結する第1連結面30を備えている。
また、図1及び図6Bに示すように、ボウル面Sは、さらに、その後方領域Rにおいて、棚16の棚面S4の外縁16aとリム18の下縁18aとの間を曲面S6にて連結する第2連結面32を備えている。
さらに、図6A図6Fに示すように、ボウル面Sの第1連結面30及び第2連結面32のそれぞれの曲面S5,S6の立面視において、それぞれの上下方向の曲率半径ρ1,ρ2が互いにほぼ同一に設定されている。
ここで、曲率半径ρ1,ρ2が互いに「ほぼ同一」とは、完全同一である場合(ρ1=ρ2)を含むことは当然として、完全同一ではない場合であっても、陶器製の便器本体2の製造誤差等を考慮するとほぼ同一(ρ1≒ρ2)とみなすことができる誤差の範囲をも含む。
また、本実施形態では、ボウル面Sにおける前後両端6a,6b及び左右両端6c,6dを含む周方向の領域において、各連結面30,32の各曲面S5,S6の立面視における各上下方向の各曲率半径ρ1,ρ2が互いにほぼ同一に設定されている。
しかしながら、本実施形態では、このような「ボウル面Sにおける前後両端6a,6b及び左右両端6c,6dを含む周方向の領域」については、平面視のボウル面Sの中心Oに対して周方向に完全に一周するボウル面Sの前後両端6a,6b及び左右両端6c,6dを含む全周領域を含むことは当然として、これ以外にも、ボウル面Sの前後両端6a,6b及び左右両端6c,6d以外の局所的な領域を除いた、ボウル面Sの半周以上全周未満であるほぼ全周とみなすことができる領域を含む。
なお、各連結面30,32の立面視における各曲面S5,S6の上下方向の各曲率半径ρ1,ρ2については、3mm~20mmに設定されていることが好ましく、5mm~15mmに設定されていることが最も好ましい。
【0030】
つぎに、図3図4図6A及び図6C図6Fに示すように、第1連結面30の下端30aは、ボウル面Sの前方領域F及び左右側方領域L,Rのそれぞれに亘って、リム18の上面18b(最上端面)の高さ位置H0に対して鉛直方向下方の第1所定距離d1だけ互いにほぼ同一の高さ位置(第1高さ位置)H1に設けられている。
ここで、「ほぼ同一の高さ位置」という記載の「ほぼ同一」とは、高さ位置が完全に同一である場合を含むことは当然として、完全に同一の高さ位置ではない場合であっても、陶器製の便器本体2の製造誤差等を考慮するとほぼ同一の高さ位置とみなすことができる誤差の範囲をも含む。
また、図3図4及び図6Bに示すように、第2連結面32の下端32aは、リム18の上面18b(最上端面)の高さ位置H0に対して第1所定距離d1よりも大きい第2所定距離d2(>d1)だけ下方の高さ位置(第2高さ位置)H2に設けられている。
すなわち、図2及び図3に示すように、第2連結面32の下端32aの高さ位置H2は、第1連結面30の下端30aの高さ位置H1よりも低い位置に設定されている。
さらに、図6A及び図6C図6Fに示す第1連結面30の下端30aから上端30bまでの鉛直方向の距離d3、及び、図6Bに示す第2連結面32の下端32aから上端32bまでの鉛直方向の距離d4についても、互いにほぼ同一に設定されている。
ここで、距離d3,d4が互いに「ほぼ同一」とは、完全同一である場合(d3=d4)を含むことは当然として、完全同一ではない場合であっても、陶器製の便器本体2の製造誤差等を考慮するとほぼ同一(d3≒d4)とみなすことができる誤差の範囲をも含む。
これらにより、第2連結面32の高さ位置(第2高さ位置)は、第1連結面30の高さ位置(第1高さ位置)よりも相対的に低い位置に設定されている。
【0031】
ここで、図6A及び図6C図6Fに示すように、リム18の上面18b(最上端面)の高さ位置H0から第1連結面30の下端30aの高さ位置H1までの鉛直方向下方の第1所定距離d1については、50mm~85mmに設定されていることが好ましく、55mm~75mmに設定されていることが最も好ましい。
また、図6Bに示すように、リム18の上面18b(最上端面)からの高さ位置H0から第2連結面32の下端32aの高さ位置H2までの鉛直方向下方の第2所定距離d2については、53mm~100mmに設定されていることが好ましく、58mm~90mmに設定されていることが最も好ましい。
さらに、図6A図6Fに示すように、各連結面30,32の各下端30a,32aの高さ位置H1,H2から各上端30b,32bの高さ位置H3,H4までの鉛直方向の各距離d3,d4については、3mm~20mmに設定されていることが好ましく、5mm~10mmに設定されていることが最も好ましい。
また、図2及び図3に示すように、第1連結面30の下端30aの高さ位置H1と第2連結面32の下端32aの高さ位置H2との間における鉛直方向の距離d5は、3mm~15mmに設定されていることが好ましく、5mm~10mmに設定されていることが最も好ましい。
【0032】
つぎに、図6A及び図6C図6Fに示すように、ボウル面Sの前方領域F及び左右側方領域L,Rのリム18においては、その内周面S1が第1連結面30の上端30bからリム18の上面18bまで立ち上がるように形成された第1立壁面S7を形成している。
そして、図6A及び図6C図6Fに示すように、第1立壁面S7の下端30b(リム18の下端18a)の高さ位置H3から第1立壁面S7の上端(リム18の最上端面18b)の高さ位置H0までの鉛直方向の距離d6は、ボウル面Sの前方領域F及び左右側方領域L,Rに亘ってほぼ同一に設定されている。
ここで、「ほぼ同一」とは、完全同一である場合を含むことは当然として、完全同一ではない場合であっても、陶器製の便器本体2の製造誤差等を考慮するとほぼ同一とみなすことができる誤差の範囲をも含む。
【0033】
また、図6A及び図6C図6Fに示すように、第1立壁面S7は、リム18の内周面の下側領域及び上側領域をそれぞれ形成する下側立壁面S8及び上側立壁面S9を備えている。
そして、図6A及び図6C図6Fに示すように、第1立壁面S7の下側立壁面S8は、その下端18aから上端18cに向かって斜め外側に向かって立ち上がるように形成されている。
なお、この下側立壁面S8については、その下端から上端に向かって鉛直に立ち上がるような形状であってもよい。
さらに、図6A及び図6C図6Fに示すように、第1立壁面S7の上側立壁面S9は、その下端18cから上端に向かって斜め内側に向かって立ち上がるように形成された立ち上がり部S10を備えている。
また、第1立壁面S7の上側立壁面S9は、立ち上がり部S10の上端部分に設けられて内側に突出するオーバーハング部S11を備えている。
なお、この第1立壁面S7の上側立壁面S9の立ち上がり部S10については、その下端から上端に向かって鉛直に立ち上がるような形状であってもよい。
【0034】
つぎに、図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bのリム18においては、その内周面S1が第2連結面32の上端32bからリム18の上面18bまで立ち上がるように形成された第2立壁面S12を形成している。
そして、図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2立壁面S12の下端32b(リム18の下端18a)の高さ位置H4から第2立壁面S12の上端(リム18の最上端面18b)の高さ位置H0までの鉛直方向の距離d7は、図6A及び図6C図6Fに示す第1立壁面S7の下端30bの高さ位置H3から第1立壁面S7の上端18bの高さ位置H0までの鉛直方向の距離d6よりも大きく設定されている(d7>d6)。
【0035】
また、図6Bに示すように、第2立壁面S12は、リム18の内周面の下側領域及び上側領域をそれぞれ形成する下側立壁面S13及び上側立壁面S14を備えている。
そして、図6Bに示すように、第2立壁面S12の下側立壁面S13は、その下端18aから上端18cに向かって斜め外側に向かって立ち上がるように形成されている。
なお、この下側立壁面S13については、その下端から上端に向かって鉛直に立ち上がるような形状であってもよい。
さらに、図6Bに示すように、第2立壁面S12の上側立壁面S14は、その下端18cから上端に向かって斜め内側に向かって立ち上がるように形成された立ち上がり部S15を備えている。
また、第2立壁面S12の上側立壁面S14は、立ち上がり部S15の上端部分に設けられて内側に突出するオーバーハング部S16を備えている。
なお、この第2立壁面S12の上側立壁面S14の立ち上がり部S15については、その下端から上端に向かって鉛直に立ち上がるような形状であってもよい。
【0036】
つぎに、図2図5及び図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32の下端32aの高さ位置H2は、周方向に沿って連続的に変化するように設定されている。
そして、図2図5及び図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32の下端32aの高さ位置H2は、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向のほぼ中央の領域(中央領域C1)において、最も低い高さ位置(最低高さ位置H5)に設定されている。
これらにより、第2連結面32の下端32aの高さ位置H2は、ボウル面Sの後方領域B内の一方側(図4及び図5の便器本体2を前方から見て右側(第2リム吐水口22側))から周方向に沿ってボウル面Sの後方領域B内の左右方向のほぼ中央の領域C1付近まで徐々に変化しながら下降し、その後、ボウル面Sの後方領域B内の他方側(図4及び図5の便器本体2を前方から見て左側)に向かって徐々に上昇するようになっている。
【0037】
つぎに、図1図8を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル内の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。また、図8は、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル内の洗浄水の流れを概略的に説明した概略正面断面図である。
まず、図7に示すように、便器洗浄が開始され、貯水タンク10内の洗浄水が便器本体2の導水路4の入口4aから共通通水路24に供給される。
そして、共通通水路24内の洗浄水(図7の流れf0)は、第1リム通水路26及び第2リム通水路28のそれぞれに分岐し、下流側の第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれに供給された後、周方向下流側に吐水される。
ここで、図7に示すように、第1リム吐水口20から比較的大流量で吐水された洗浄水(流れf1)は、ボウル面Sの前方領域Fにおいて、棚16の棚面S4、第1連結面30の曲面S5、及び、リム18の内周面S1上に沿って下流側のボウル面Sの右側方領域Rに旋回した後、ボウル面Sの後方領域Bに流れる。
そして、ボウル面S(汚物受け面14の全面S3)上を周方向下流側に旋回する旋回流f1(いわゆる、「横旋回流」)が形成される。
これにより、洗浄水f1(図7参照)は、ボウル面S(汚物受け面14等)を全周に亘って旋回し、ボウル面Sの全域を洗浄した後、ボウル6の凹部12内に流れ込むため、ボウル6内の水の落差による流水作用により、汚物が排水トラップ管路8内に押し流される。
【0038】
一方、図6B図7及び図8に示すように、第2リム吐水口22から後方に吐水された洗浄水(流れf2)は、ボウル面Sの後方領域Bにおいて、旋回流f1の旋回方向と同一方向に、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近に向って、棚面S4、第2連結面32の曲面S6、及び、リム18の内周面S12上に沿って下流側にスムーズに流れる。
そして、図7及び図8に示すように、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近に到達した洗浄水f2は、ボウル面Sの後方領域Bにおける中央領域C1よりも左側の汚物受け面14からボウル面Sの下方の溜水部(凹部12)内の溜水W0に向けて落とし込む流れf3が形成される。
また、図6B図7及び図8に示すように、第2リム吐水口22から吐水された洗浄水の一部は、ボウル面Sの後方領域Bの中央領域C1よりも右側付近の第2立壁面S12、棚面S4、第2連結面32、及び、汚物受け面14から、ボウル6の凹部12内の溜水W0に向けて後方側から落とし込む流れf4が形成される。
そして、図7及び図8に示すように、ボウル6の凹部12内においては、これらの洗浄水の流れf3,f4により、縦方向に旋回する旋回流f5(いわゆる、「縦旋回流」)が形成される。これにより、ボウル6の凹部12内の溜水W0が強力に攪拌された後、ボウル6の凹部12内の水の落差による流水作用で汚物が排水トラップ管路8内に押し流される。
【0039】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、図6A図7に示すように、第1リム吐水口20から吐水された洗浄水f1は、ボウル面Sの前方領域F及び右側方領域Rにおける棚16、第1連結面30、及び、リム18の内周面S7に沿って周方向に旋回した後、ボウル面Sの後方領域Bに流入する。
この際、図1図6A図6C図6Fに示すように、ボウル面Sが、その前方領域F、及び、左右の両端6c,6dを含む左右側方領域L,Rにおいて、棚16の棚面S4の外縁16aとリム18の下縁18aとの間を曲面S5にて連結する第1連結面30を備えている。
また、図1及び図6Bに示すように、ボウル面Sが、さらに、その後方領域Rにおいて、棚16の棚面S4の外縁16aとリム18の下縁18aとの間を曲面S6にて連結する第2連結面32を備えている。
さらに、図6A図6Fに示すように、ボウル面Sの第1連結面30及び第2連結面32のそれぞれの曲面S5,S6の立面視において、それぞれの上下方向の曲率半径ρ1,ρ2が互いにほぼ同一に設定されている。
これらにより、棚16の形状のばらつき等によって洗浄水が飛び散ることを抑制し、且つ洗浄水のエネルギー損失を抑制することができる。
さらに、第1連結面30が、ボウル面Sにおける前方領域F及び左右の両端6c,6dを含む左右側方領域L,Rにおいて互いにほぼ同一の高さ位置に設けられており、第2連結面32が、ボウル面Sにおける後方領域Bにおいて第1連結面30の高さ位置よりも低い高さ位置に設けられている。
これらにより、第2リム吐水口22から吐水された洗浄水の流れf2は、ボウル面Sの後方領域Bにおける棚面S4、第2連結面32、及び、リム18の内周面S12に沿って流れ、高いエネルギー状態のままでボウル面Sの下方の溜水部(凹部12)に向けて後方側から勢い良く流下することができる。
したがって、汚物が付着しやすいボウル面Sの後方領域Bの汚物受け面14においても確実に洗浄することができる。
【0040】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、図2図3図6A及び図6C図6Fに示すように、ボウル面Sにおける前方領域F及び左右側方領域L,Rのそれぞれの第1連結面30の下端30aが、互いにリム18の上面18bの位置H0に対して所定距離d1だけ下方の同一の高さ位置H1に設けられている。これにより、ボウル面Sにおける前方領域F及び左右側方領域L,Rの第1連結面30に沿って旋回する洗浄水f1のエネルギー損失を抑制することができる。
また、図2図3及び図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32の下端32aが、ボウル面Sにおける前方領域F及び左右側方領域L,Rの第1連結面30の下端30aの高さ位置H1よりも低い高さ位置H2に設けられている。これにより、ボウル面Sの後方領域Bの第2連結面32付近を流れる洗浄水の水撥ねを抑制しながら、エネルギーロスを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図2図3図6B及び図8に示すように、ボウル面Sの後方領域Bの第2連結面32の下端32aの高さ位置H2について、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向のほぼ中央の領域C1が最も低い高さ位置H5に設定されている。これにより、ボウル面Sの後方領域Bの棚面S4、第2連結面32の曲面S6、及び、リム18の内周面S12に沿って流れる洗浄水f2は、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近にスムーズに到達することができる。
そして、図7及び図8に示すように、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近に到達した洗浄水f2は、その大半が、ボウル面Sの後方領域Bにおける中央領域C1よりも左側の汚物受け面14からボウル面Sの下方の溜水部(凹部12)内の溜水W0に向けて落とし込む流れf3を形成することができ、その後、排水トラップ管路8内に流れ込むことができる。
同時に、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近に到達した洗浄水f2の一部は、ボウル面Sの後方領域Bの中央領域C1よりも右側付近の第2立壁面S12、棚面S4、第2連結面32、及び、汚物受け面14から、ボウル6の凹部12内の溜水W0に向けて後方側から落とし込む流れf4を形成することができ、その後、排水トラップ管路8内に流れ込むことができる。
これらの洗浄水f3,f4により、汚物が付着しやすいボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央の領域C1付近について集中的に洗浄することができるため、ボウル面Sの後方領域B内の洗浄性能を向上させることができる。加えて、ボウル面Sの後方領域B内を流れる高いエネルギー状態の洗浄水を溜水部(凹部12)内に後方側から勢い良く流入させることができるため、排水トラップ管路8への汚物排出性能を向上させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態の水洗大便器1によれば、図4及び図5に示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32の下端32aの高さ位置H2が、ボウル面Sの後方領域Bの周方向に沿って連続的に変化するように設定されている。これにより、第2連結面32の下端32aの高さ位置H2がボウル面Sの後方領域B内の一方側(図4及び図5の便器本体2を前方から見て右側(第2リム吐水口22側))から周方向に沿ってボウル面Sの後方領域B内の左右方向のほぼ中央の領域C1付近まで徐々に変化しながら下降し、その後、ボウル面Sの後方領域B内の他方側(図4及び図5の便器本体2を前方から見て左側)に向かって徐々に上昇することができる。
したがって、第2連結面32の高さ位置H2の急激な変化を抑制することができるため、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32付近を流れる洗浄水の水撥ねやそれに伴うエネルギーロスを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図6A及び図6C図6Fに示すように、リム18の第1立壁面S7の下端18aから上端18bまでの鉛直方向の第1距離d6が、ボウル面Sの前方領域F及び左右側方領域L,Rに亘ってほぼ同一に設定されている。
これにより、図7に示すように、ボウル面Sの前方領域F及び右側方領域Rの第1立壁面S7に沿って流れる洗浄水f1について、エネルギーロスが抑制された状態でボウル面Sの後方領域Bに流入させることができる。
また、リム18の第1立壁面S7に沿って流れた洗浄水f1が、図6B及び図8に示すように、ボウル面Sの後方領域Bに流入してリム18の第2立壁面S12に沿って流れる際に、洗浄水f2の流動が変化して水撥ねが生じる恐れがある。しかしながら、ボウル面Sの後方領域Bの第2立壁面S12の下端18aから上端18bまでの鉛直方向の第2距離d7がボウル面Sの前方領域F及び左右側方領域L,Rのリム18の第1立壁面S7の下端18aから上端18bまでの鉛直方向の第1距離d6よりも大きく設定されているため、水撥ねを効果的に抑制することができる。
【0044】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、図1に示すように、第1リム吐水口20は、ボウル面Sの前後方向に延びる中心軸線Yに対して一方側の側方領域(図1に示す左側方領域L)から前方領域Fに変化する領域付近に配置されている。より具体的には、第1リム吐水口20は、ボウル6の前方領域Fの境界位置P1よりも前方の前方領域F内の後方側に配置されている。
これにより、第1リム吐水口20からの吐水直後の洗浄水f1(図7参照)は、比較的エネルギーロスが生じやすい状態で、また、水撥ねも生じやすい状態となっている。
しかしながら、図6A図6Fに示すように、ボウル面Sにおける前後両端6a,6b及び左右両端6c,6dを含む周方向の領域(前方領域F、後方領域B、及び左右側方領域L,Rのほぼ全周)において、各連結面30,32の曲面S5,S6の上下方向の各曲率半径ρ1,ρ2が互いにほぼ同一に設定されている(ρ1=ρ2、又は、ρ1≒ρ2)。これにより、第1リム吐水口20からの吐水直後の洗浄水f1(図7参照)がボウル面Sの前方領域Fに流入した後においては、エネルギーロスや水撥ねを抑制しながら、安定して旋回させることができる。
また、図1及び図3に示すように、第2リム吐水口22は、ボウル面Sの前後方向に延びる中心軸線Yに対してボウル面Sの他方側の側方領域(右側方領域R)から後方領域Bに変化する領域付近に配置されている。より具体的には、第2リム吐水口22は、ボウル6の後方領域Bの前方側の境界位置P2よりも前方の右側方領域R内の後方側に配置されている。
これにより、図7及び図8に示すように、第2リム吐水口22から吐水された洗浄水f2は、ボウル面Sの後方領域B内の棚16に沿ってある程度の遠心力が作用した状態で流れることになる。
しかしながら、図2図5及び図6Bに示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32の下端32aの高さ位置H2が、ボウル面Sにおける前方領域F及び左右の両端6c,6dを含む左右側方領域L,Rにおける第1連結面30の高さ位置H1よりも低い位置に設けられている。
これにより、図7及び図8に示すように、ボウル面Sの後方領域Bの棚16上を流れる洗浄水f2は、その後、ボウル面Sの後方領域B内の左右方向の中央領域C1付近で、流れf3又は流れf4となり、高いエネルギーを維持した状態でボウル面Sの下方の溜水部(凹部12)内にスムーズに導かれる。そして、これらの洗浄水の流れf3,f4は、ボウル6の凹部12内で縦旋回流f5を形成し、凹部12内の溜水W0を強力に攪拌することができる。
そして、図8に示すように、ボウル6の凹部12内の上下方向の水の落差による流水作用により、洗浄水が排水トラップ管路8内に流れ込み、汚物を押し流すことができる。
【0045】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図2図5に示すように、第1連結面30の下端30aの高さ位置H1と第2連結面32の下端32aの高さ位置H2との間における鉛直方向の距離d5が、好ましくは、3mm~15mmに設定され、最も好ましくは、5mm~10mmに設定されている。
したがって、図4図5及び図7に示すように、ボウル面Sの後方領域Bにおける第2連結面32付近を流れる洗浄水f2の水撥ねやそれに伴うエネルギーロスを効果的に抑制することができる。
【0046】
なお、上述した本実施形態による水洗大便器1においては、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」の形態に適用した例について説明したが、洗い落し式の水洗大便器以外の形態の水洗大便器に対しても適用可能である。
すなわち、洗い落し式の水洗大便器以外の形態の水洗大便器として、サイホン作用を利用してボウル内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、「サイホン式の水洗大便器」等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 導水路
4a 導水路の入口
6 ボウル
6a ボウル内の前端、ボウル面の前端
6b ボウル内の後端、ボウル面の後端
6c ボウル内の左端、ボウル面の左端
6d ボウル内の左端、ボウル面の左端
8 排水トラップ管路(排水路)
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の下降路
8c 排水トラップ管路の上昇路
10 洗浄水タンク装置(洗浄水源)
10a 貯水タンク
12 凹部(溜水部)
12a 凹部の底壁面
12b 凹部の側壁面
12c 凹部の後壁面
14 汚物受け面
16 棚
16a 棚面の外縁
18 リム
18a リムの下縁、リムの下端、下側立壁面の下端
18b リムの上面
18c リムの下側立壁面の上端、リムの上側立壁面の下端
20 第1リム吐水口(吐水部、第1吐水口)
22 第2リム吐水口(吐水部、第2吐水口)
24 共通通水路
26 第1リム通水路
28 第2リム通水路
28a 第2リム通水路の入口
28b 第2リム通水路の外側通水路
28c 第2リム通水路の屈曲通水路
28d 第2リム通水路の内側通水路
30 第1連結面(連結面)
30a 第1連結面の下端
30b 第1連結面の上端
32 第2連結面(連結面)
32a 第2連結面の下端
32b 第2連結面の上端
B ボウルの後方領域
C1 ボウル面の後方領域内の左右方向の中央領域
d1 リムの最上端面の高さ位置から第1連結面の下端の高さ位置までの鉛直方向下方の第1所定距離
d2 リムの最上端面の高さ位置から第1連結面の下端の高さ位置までの鉛直方向下方の第2所定距離
d3 第1連結面の下端の高さ位置から上端の高さ位置までの鉛直方向の距離
d4 第2連結面の下端の高さ位置から上端の高さ位置までの鉛直方向の距離
d5 第1連結面の下端の高さ位置と第2連結面の下端の高さ位置との間の鉛直方向の距離
d6 第1立壁面の下端から上端までの鉛直方向の距離(第1距離)
d7 第2立壁面の下端から上端までの鉛直方向の距離(第2距離)
L ボウルの左側方領域
M 汚物受け面と凹部との境界線
F ボウルの前方領域
f0 共通通水路の洗浄水の流れ
f1 第1リム吐水口から吐水された洗浄水の流れ(旋回流)
f2 第2リム吐水口から吐水された洗浄水の流れ
f3 第2リム吐水口から吐水された洗浄水の大半の流れ
f4 第2リム吐水口から吐水された洗浄水の一部の流れ
f5 縦旋回流
H0 リムの最上端面の高さ位置
H1 第1連結面の下端の高さ位置(第1高さ位置)
H2 第2連結面の下端の高さ位置(第2高さ位置)
H3 第1連結面の上端の高さ位置
H4 第2連結面の上端の高さ位置
H5 ボウル面の後方領域内の左右方向の中央領域の第2連結面の下端の最低高さ位置
O ボウルの中心
P1 ボウルの前端から水平前後方向の中心軸線に沿って所定距離後方のボウルの前方領域と左右側方領域との境界位置
P2 ボウルの後端から水平前後方向の中心軸線に沿って所定距離前方のボウルの後方領域と左右側方領域との境界位置
P3 第1リム吐水口の位置
P4 第2リム吐水口の位置
P5 凹部の後端位置
P6 溜水面の後端位置
P7 第1連結面の第1高さ位置
P8 第2連結面の第2高さ位置
R ボウルの右側方領域
r1 ボウルの前方領域のリムの内周面の平面視における前端付近の代表的な曲率半径
r2 ボウルの後方領域のリムの内周面の平面視における後端付近の代表的な曲率半径
r3 ボウルの左側方領域のリムの内周面の平面視における左端付近の代表的な曲率半径
r4 ボウルの右側方領域のリムの内周面の平面視における右端付近の代表的な曲率半径
S ボウル面
S1 リムの内周面(立壁面)
S2 凹部内の壁面
S3 汚物受け面の全面
S4 棚の表面(棚面)
S5 ボウル面の前方領域及左右側方領域における棚の外縁とリムの下縁との間の第1連結面の曲面
S6 ボウル面の後方領域における棚の外縁とリムの下縁との間の第2連結面の曲面
S7 第1立壁面
S8 第1立壁面の下側立壁面
S9 第1立壁面の上側立壁面
S10 第1立壁面の上側立壁面の立ち上がり部
S11 第1立壁面の上側立壁面のオーバーハング部
S12 第2立壁面
S13 第2立壁面の下側立壁面
S14 第2立壁面の上側立壁面
S15 第2立壁面の上側立壁面の立ち上がり部
S16 第2立壁面の上側立壁面のオーバーハング部
U 第2リム通水路のUターン部
W0 溜水
WL 溜水の水位(溜水面)
X ボウルの水平左右方向の中心軸線
Y ボウルの水平前後方向の中心軸線
Y0 ボウル内の前端から後端までの前後方向の全長距離
Y1 ボウル内の前端から前方領域と左右側方領域との境界位置までの前後方向の距離
Y2 ボウル内の後端から後方領域と左右側方領域との境界位置までの前後方向の距離
Y3 ボウル内の前端から第1リム吐水口までの前後方向の距離
Y4 ボウル内の後端から第2リム吐水口までの前後方向の距離
Z ボウルの中心を通る鉛直方向の中心軸線
ρ1 ボウルの前方領域及び左右側方領域における第1連結面の立面視における曲面の上下方向の曲率半径
ρ2 ボウルの後方領域における第2連結面の立面視における曲面の上下方向の曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8