(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】無人飛行体
(51)【国際特許分類】
B64C 39/02 20060101AFI20221017BHJP
B64C 27/10 20060101ALI20221017BHJP
B64C 27/68 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/10
B64C27/68
(21)【出願番号】P 2018129672
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】515246269
【氏名又は名称】株式会社空撮技研
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】三崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】合田 豊
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240242(JP,A)
【文献】特開2015-137092(JP,A)
【文献】特開2017-074804(JP,A)
【文献】特開2007-159323(JP,A)
【文献】特開2007-050841(JP,A)
【文献】特表2017-535478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 27/10
B64C 27/08
B64C 27/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に揚力を発生させるための主回転翼と、
前記主回転翼の羽よりも小さい羽を有し、主に前記主回転翼での飛行を補助するための補助回転翼と、
前記主回転翼および前記補助回転翼の回転を制御する制御部と、を有
し、
前記補助回転翼は、前記主回転翼よりも外周側に配置される第2補助回転翼であり、
前記制御部は、前記主回転翼の回転速度の変化率よりも、前記第2補助回転翼の回転速度の変化率を高く制御する、
無人飛行体。
【請求項2】
前記主回転翼を回転させるアウターローター型のモーターと、
前記モーターの上方および側方を囲う防水カバーとをさらに備え、
前記補助回転翼は、鉛直方向において前記防水カバーと前記モーターとの間に設置される第1補助回転翼である、請求項1に記載の無人飛行体。
【請求項3】
前記モーターの下方を囲う下部防水カバーと、
前記下部防水カバーに設けた通気孔から圧縮した気体を前記モーターに対して噴出する圧縮気体供給源と、をさらに有する、請求項2に記載の無人飛行体。
【請求項4】
前記第2補助回転翼の回転速度を制御するための制御信号の振幅を調整する振幅調整部をさらに有し、
前記振幅調整部は、前記主回転翼の回転速度を制御するための第1信号に基づいて、前記第2補助回転翼の回転速度を制御するための第2信号を出力する、請求項1
ないし3のいずれかに記載の無人飛行体。
【請求項5】
前記主回転翼を回転させる動力源がエンジンであり、
前記第2補助回転翼を回転させる動力源が電動モーターである、請求項
1ないし4のいずれかに記載の無人飛行体。
【請求項6】
前記補助回転翼の数が、前記主回転翼と同数、または前記主回転翼よりも多い、請求項1ないし
5のいずれかに記載の無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人命救助に用いることが可能な無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるドローンと称される無人飛行体の普及が進んでいる。また近年、このような無人飛行体を人命救助に利用しようとする試みが行われている(たとえば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213951号公報
【文献】特開2017-074821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、無人飛行体のモーターは、高回転・高トルクを実現するためにアウターロータ型を採用している。アウターロータ型のモーターは、発熱量が多く、その放熱のため、また軽量化のために、アウタケースには通気開口部が多く設けられる。そのため、従来の無人飛行体では、外部からモーターに雨滴や水滴が付着する場合があり、雨天や海での人命救助に使用できない場合があった。
【0005】
また、一般に、無人飛行体は加速度センサーにより無人飛行体の姿勢を検出し、制御部から回転翼に対して加速度センサーの検出結果に応じた制御信号を送信することで、各回転翼の回転速度を個々に制御して姿勢制御を行っている。しかしながら、回転翼の回転に慣性が働いているため、制御信号を発信しても直ぐに回転翼を所望の回転速度に変更することができず、強風下(たとえば風速5m/秒以上)において姿勢が不安定となり、人命救助のために無人飛行体を使用できない場合があった。
【0006】
本発明は、風雨でも安定して飛行可能な無人飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無人飛行体は、主に揚力を発生させるための主回転翼と、前記主回転翼の羽よりも小さい羽を有し、主に前記主回転翼での飛行を補助するための補助回転翼と、前記主回転翼および前記補助回転翼の回転を制御する制御部と、を有し、前記補助回転翼は、前記主回転翼よりも外周側に配置される第2補助回転翼であり、前記制御部は、前記主回転翼の回転速度の変化率よりも、前記第2補助回転翼の回転速度の変化率を高く制御する。
上記無人飛行体において、前記主回転翼を回転させるアウターローター型のモーターと、前記モーターの上方および側方を囲う防水カバーとをさらに備え、前記補助回転翼は、鉛直方向において前記防水カバーと前記モーターとの間に設置される第1補助回転翼であるように構成することができる。
上記無人飛行体において、前記モーターの下方を囲う下部防水カバーと、前記下部防水カバーに設けた通気孔から圧縮した気体を前記モーターに対して噴出する圧縮気体供給源と、をさらに有するように構成することができる。
上記無人飛行体において、前記第2補助回転翼の回転速度を制御するための制御信号の振幅を調整する振幅調整部をさらに有し、前記振幅調整部は、前記主回転翼の回転速度を制御するための第1信号に基づいて、前記第2補助回転翼の回転速度を制御するための第2信号を出力するように構成することができる。
上記無人飛行体において、前記主回転翼を回転させる動力源がエンジンであり、前記第2補助回転翼を回転させる動力源が電動モーターであるように構成することができる。
上記無人飛行体において、前記補助回転翼の数が、前記主回転翼と同数、または前記主回転翼よりも多いように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、風雨でも安定して飛行可能な無人飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る無人飛行体を示す底面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿うモーター装置の断面図である。
【
図4】第2実施形態に係るモーター装置の断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【
図6】第3実施形態に係る無人飛行体の制御信号回路を示す回路図である。
【
図7】第3実施形態における制御信号の振幅制御を説明するための図である。
【
図8】第3実施形態における制御信号の振幅強度と回転翼の回転数との関係を説明するための図である。
【
図9】第4実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【
図10】他の実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【
図11】他の実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【
図12】他の実施形態に係る無人飛行体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施形態に係る無人飛行体を、図に基づいて説明する。本発明は、人命救助、特に海難救助に利用することを目的としており、無人飛行体に浮き輪などの救助物資を搭載し、要救助者付近まで無人飛行体を飛行させて救助物資を提供することで人命救助を行うことを想定している。上述したように、従来の無人飛行体では、放熱性・軽量化のためにアウタケースに通気開口部が設けられ、雨滴や水滴などがモーターに付着してしまうとモーターが故障してしまう場合があるため、無人飛行体を雨天や海で使用することができない場合があった。また、従来の無人飛行体では、強風下(たとえば風速5m/秒以上)において主回転翼の動作だけでは無人飛行体の姿勢が安定せずに墜落して要救助者付近まで飛行できないおそれもあった。そこで、発明者は鋭意研究し、風雨においても安定して飛行可能な無人飛行体に係る本発明を完成させるに至った。
【0011】
《第1実施形態》
図1は、第1実施形態に係る無人飛行体1を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る無人飛行体1は、本体10と、4本のアーム11a~11dと、4個の主回転翼12a~12dと、4個のモーター装置20a~20dとを備える。なお、以下においては、4本のアーム11a~11d、4個の主回転翼12a~12dおよび4個のモーター装置20a~20dを単にアーム11、主回転翼12およびモーター装置20とも称す。
【0012】
本体10は、制御部100、無線通信部200、およびバッテリ(不図示)を備える箱体である。本体10は、軽量であり、かつ、厳しい環境下(風雨、塩水、日射、低温・高温)においても使用できるよう、高強度・耐久性を備えた樹脂材料(例えばガラス繊維や炭素繊維等で強化された樹脂)からなる。
【0013】
制御部100は、加速度センサーと、モーター装置20の動作を制御するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。また、制御部100は、無線通信部200を介して外部から受信した指令に基づいて、各モーター装置20の主回転翼の回転速度をそれぞれ制御することで、無人飛行体1を指令に基づいて飛行させることもできる。さらに、制御部100は、加速度センサーにより無人飛行体1の姿勢を検出し、風などにより無人飛行体1の姿勢が変化した場合には、各モーター装置20における各主回転翼12の回転速度をそれぞれ制御することで、無人飛行体1の姿勢を安定化させることもできる。
【0014】
4本のアーム11a~11dは、本体10の側面上部に放射状に設けられた棒状部材である。詳細には、4本のアーム11a~11dは、本体10の中心に対し等間隔(90°間隔)に設けられている。アーム11は、本体10から外方に延出され、主回転翼12の回転によって下方に生じる風が本体10にぶつかって揚力が低下することを防止する。アーム11は、本体10と同様の樹脂材料からなる。
【0015】
主回転翼12は、回転により無人飛行体1に揚力を与えるためのものであり、1つの回転軸に対して対向する2枚の羽を備える。主回転翼12の羽は、消費電力に対して生じる揚力が大きくなるように、一定以上の大きさを有している。なお、羽の枚数は、重量と必要な揚力・回転翼の回転数等のバランスを考慮して適宜設定することができ、例えば3枚以上であってもよい。主回転翼12は、それぞれアーム11の先端付近の上方に設けられており、主回転翼12の回転軸は本体10の中心に対し回転対称の位置関係にある。
【0016】
主回転翼12は、回転の反作用によって無人飛行体1が本体10の中心周りに回転することを防止している。すなわち、主回転翼(12a,12c)が正方向に回転して反作用により生じる本体10中心周りのトルクをキャンセルし、主回転翼(12b,12d)が逆方向に回転して反作用により生じる本体10中心周りのトルクをキャンセルしている。
【0017】
図2は、
図1に示す無人飛行体1を示す底面図である。また、
図3は、
図1のIII-III線に沿うモーター装置20の断面図である。
図2および
図3に示すように、モーター装置20a~20dは、モーター21a~21d、第1補助回転翼22a~22d、防水カバー23a~23d、回転軸24a~24dをそれぞれ備える。なお、以下においては、モーター21a~21d、第1補助回転翼22a~22d、防水カバー23a~23dおよび回転軸24a~24dを単にモーター21、第1補助回転翼22、防水カバー23および回転軸24とも称す。
【0018】
モーター21は、主回転翼12および第1補助回転翼22に回転の動力を与えるものであり、メンテナンスフリーの観点からは、摩耗部品のないモータ(例えばブラシレスモータ)を用いることが好ましい。モーター21は、それぞれ4本のアーム11の先端付近に設けられており、回転軸24を介して主回転翼12および第1補助回転翼22の中心に接合されている。
【0019】
モーター21は、制御部100により独立して回転方向および回転速度を変えることができ、これにより揚力が調整される。主回転翼12の揚力のバランスによって、無人飛行体1の高度・機体の傾き・機体方向が制御される。
【0020】
本実施形態において、モーター21は、高回転・高トルクを実現するためにアウターローター型のモーターを採用している。アウターローター型のモーターは発熱量が多く、モーター21では、従来のように、アウタケースに通気開口部が多く設けられている。これにより、モーター21の放熱性と軽量化を実現している。
【0021】
第1補助回転翼22は、
図3に示すように、防水カバー23の内側であって、鉛直方向においてモーター21と防水カバー23との間に配置される。第1補助回転翼22は、モーター21で生じた熱を放熱するための冷却ファンとしての機能を有し、第1補助回転翼22を回転させることで、
図3に示すように、モーター21の下方の空気がモーター21内部(モーター21のアウタケースに設けられた通気開口部)を通過してモーター21で生じた熱を奪う。そして、モーター21の熱により温められた空気は、
図3に示すように、第1補助回転翼22の回転で生じた気流により、モーター21の側面を通って、モーター装置20の外側へと排出される。なお、
図3において、破線は気流を示してしている(後述する
図4も同じ)。
【0022】
モーター装置20内部において上記気流が形成されるように、モーター21、第1補助回転翼22および防水カバー23の大きさや配置間隔が適宜決定されている。なお、
図3に示す例では、モーター21で生じた熱を吸収した空気がモーター21の側面を通ってモーター装置20の外側へと排出されるように気流を形成する構成を例示したが、このような構成に限定されず、たとえば、第1補助回転翼22の羽の向きを反対にすることで、気流の方向を
図3に示す例とは反対にすることができる。この場合、モーター21の上方から下方へと空気を送風することで、モーター21で生じた熱を吸収した空気がモーター21の下方からモーター装置20の外側へと排出させることとなる。
【0023】
第1補助回転翼22は、主回転翼12a~12dと同様に、回転軸24に接合している。そのため、回転軸24が回転することで、主回転翼12および第1補助回転翼22が同方向に同じ回転速度で回転する。
【0024】
なお、主回転翼12および第1補助回転翼22の個数は、例示した4個に限られず、3個または5個以上であってもよいが、5個以上の場合、偶数個(例えば、6個または8個)であることが好ましい。偶数個であれば、正方向に回転する回転翼と逆方向に回転する回転翼を同数個ずつ設けることができるので、トルクを打ち消すための制御が容易となるからである。偶数個の回転翼を設ける場合も、本体10の中心に関して等間隔で回転対称に配置し、回転方向が正方向と逆方向の回転翼を交互に配置することが好ましい。
【0025】
防水カバー23は、モーター21の上方および側方を囲い、雨滴や水滴がモーター21に接触しモーター21が故障してしまうことを防止する。また、本実施形態では、防水カバー23の上部主面の中心位置に、回転軸24を挿通するための挿通孔が空いている。なお、防水カバー23は、本体10と同様の樹脂材料から形成することができる。
【0026】
以上のように、第1実施形態に係る無人飛行体1では、モーター装置20が防水カバー23を備えるため、雨天において、モーター21が雨で濡れてしまうことを防止することができる。また、防水カバー23によりモーター21で生じた熱が防水カバー23内部にこもってしまうことを防止するために、防水カバー23とモーター21との間に第1補助回転翼22を配置することで、防水カバー23内部に気流を形成し、モーター21で生じた熱を防水カバー23外部へと放出することができるようにしている。また、防水カバー23や第1補助回転翼22は、既存製品に取り付けや、既存製品から取り外しも可能となっており、これにより、安価に本実施形態に係る無人飛行体1を提供することができる。さらに、第1実施形態では、モーター21自体を防水構造とするものではなく、市販されている安価な非防水性のモーターを用いて、モーターの防水性を実現することができるため、安価に無人飛行体1を製造することができる。その結果、雨天においても安定して飛行することができる無人飛行体1を安価に提供することが可能となる。
【0027】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る無人飛行体1aについて説明する。
図4は、第2実施形態に係る無人飛行体1aのモーター装置20の断面図である。第2実施形態に係る無人飛行体1aは、
図4に示すように、下部防水カバー25、圧縮気体供給源26、および保持部材28を備えること以外は、第1実施形態に係る無人飛行体1と同様の構成を有し、同様に動作する。
【0028】
第2実施形態において、下部防水カバー25は、モーター21の下部に取り付けられており、モーター21の下方からモーター21に水滴や雨滴が付着してしまうことを防止する。また、下部防水カバー25は、中央位置に空気を通気させるための通気孔が開けられており、下部防水カバー25の下側に、圧縮気体供給源26が配置されている。具体的には、圧縮気体供給源26が、下部防水カバー25の下側に配置されるように、防水カバー23に固定された保持部材28が、圧縮気体供給源26を保持し、下部防水カバー25の下側位置に固定する。なお、本実施形態では、外部から雨滴や水滴がモーター21に混入しないように、圧縮気体供給源26と下部防水カバー25との接合部分は密封されている。また、圧縮気体供給源26は、
図4に示すように、開閉弁(ノズルを含む)27を上部に有し、開閉弁27を開くことで、圧縮気体をモーター21に向けて噴射する。これにより、圧縮気体供給源26から噴射された圧縮気体が、下部防水カバー25の通気孔を通過し、モーター21の下方からモーター21の内部を通過してモーター21の上方へと排出され、モーター21で生じた熱を放熱することができる。
【0029】
なお、圧縮気体供給源26により供給される圧縮気体は、特に限定されず、たとえば乾燥圧縮空気や乾燥圧縮窒素とすることができる。また、開閉弁27の開閉は、制御部100の制御によりアクチュエーター(不図示)が実行する構成とすることもできるし、無人飛行体1を飛行させる前に人が手で開く構成とすることもできる。
【0030】
上述したように、本発明に係る無人飛行体は、人命救助に利用することを目的としており、特に水難救助においては、無人飛行体が5分間程度飛行することで十分に役に立つ場合がある。このような理由から、圧縮気体供給源26として炭酸飲料用のペットボトルを用い、当該ペットボトルに5分間程度噴射可能な量の圧縮した窒素を封入する構成とすることもできる。そして、無人飛行体1aを飛行させる際に、人の手で圧縮気体供給源26の開閉弁27を開けることで、5分間程度、安定して無人飛行体1aを飛行させることができる。また、このように無人飛行体1aを構成することで、圧縮気体供給源26の容器をペットボトルで再利用することができ、また、開閉弁27を開閉するための機構が不要となるため、無人飛行体1aを安価かつ軽量に製造することができる。
【0031】
以上のように、第2実施形態に係る無人飛行体1aは、モーター装置20が下部防水カバー25を備える構成のため、雨天に加えて、水難救助においても無人飛行体1aを使用することが可能となる。特に、下部防水カバー25と圧縮気体供給源26との接合部を密閉することで、モーター装置20に雨滴や水滴が付着することを有効に防止することができるとともに、圧縮気体供給源26から供給される圧縮気体をモーター21の内部を通過するように供給することでモーター21で生じた熱を放熱することもできる。
【0032】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る無人飛行体1bについて説明する。
図5は、第3実施形態に係る無人飛行体1bを示す平面図である。
図5に示すように、第3実施形態に係る無人飛行体1bは、モーター装置20に代えて、主回転翼12a~12dをそれぞれ回転させる第1モーター13a~13dと、第2補助回転翼14a~14dと、第2補助回転翼14a~14dをそれぞれ回転させる第2モーター15a~15dと、を備えること以外は、第1実施形態に係る無人飛行体1と同様の構成を有し、同様に動作する。なお、以下においては、第1モーター13a~13d、第2補助回転翼14a~14d、および第2モーター15a~15dを、単に、第1モーター13、第2補助回転翼14、および第2モーター15とも称す。
【0033】
第1モーター13a~13d(以下、単に第1モーター13ともいう)は、主回転翼12a~12dの回転軸をそれぞれ回転させるモーターである。第1モーター13は、電気モーターであり、制御部100から送信される制御信号に基づいて駆動する。なお、第1モーター13は、第1実施形態または第2実施形態と同様に、第1補助回転翼22、防水カバー23、および下部防水カバー25を備える構成とすることもできる。
【0034】
第2補助回転翼14a~14d(以下、単に補助回転翼14ともいう)は、無人飛行体1bの姿勢を制御するための回転翼である。第2補助回転翼14の羽は、
図5に示すように、主回転翼12の羽に対して小さく形成されており、第2補助回転翼14は主回転翼12よりも外周側に配置される。第2補助回転翼14は、第2補助回転翼14a~14dごとに設けられた第2モーター15a~15d(以下、単に第2モーター15ともいう)によりそれぞれ回転駆動される。第2モーター15は、電動モーターであり、制御部100から送信される制御信号に基づいて駆動する。
【0035】
図6は、第3実施形態に係る無人飛行体1bの制御信号の回路図である。
図6に示すように、制御部100は、電気回線および第1ESC16a~16dを介して、主回転翼12a~12dを回転する第1モーター13a~13dにそれぞれ接続している。ここで、ESC(ESC:Electronic Speed Controller)とは、制御部100からの制御信号(PWM信号)に従って、バッテリーからの直流(DC)入力を三相交流に変換し、モーターの速度を制御するための装置である。本実施形態では、制御部100から、第1モーター13a~13dごとに、第1モーター13a~13dをそれぞれの回転速度で回転させるための制御信号が出力される。
【0036】
また、本実施形態において、制御部100は、
図6に示すように、第1モーター13に送信する制御信号を分岐して、振幅調整器17a~17d(以下、単に振幅調整器17ともいう)にも出力する。すなわち、制御部100は、第1モーター13に送信する制御信号と同じ振幅強度の制御信号を振幅調整器17a~17dに出力する。
【0037】
ここで、振幅調整器17は、制御部100から送信された制御信号の振幅を調整するための装置である。
図6に示すように、振幅調整器17は、振幅調整制御装置18と接続しており、振幅調整制御装置18が有する関係式に基づいて、入力された制御信号(PWM信号)の振幅を調整し、振幅を調整した制御信号(PWM信号)を出力する。具体的には、振幅調整制御装置18は、
図7に示すような関係式を有しており、振幅調整器17に入力された制御信号の振幅強度に応じて、出力する制御信号の振幅強度を変化させる。より具体的には、振幅調整制御装置18は、制御部100から入力された制御信号の振幅強度が所定値Im未満である場合には、主回転翼12を回転させるために第1ESC16に入力される制御信号と、第2補助回転翼14を回転させるために第2ESC19に入力される制御信号とを、同じ振幅強度となるように調整する。一方、振幅調整制御装置18は、制御部100から入力された制御信号の振幅強度が所定値Im以上である場合には、主回転翼12を回転させるために第1ESC16に入力される制御信号の振幅強度よりも、第2補助回転翼14を回転させるために第2ESC19に入力される制御信号の振幅強度が大きくなるように、制御信号の振幅強度を調整する。なお、所定値Imは、特に限定されないが、たとえば制御部100から入力される制御信号の振幅強度の最大値の半分の値とすることができる。
【0038】
たとえば、
図7に示す例において、制御部100から入力された制御信号の振幅強度がI
2である場合、主回転翼12を回転させるための第1ESC16には、振幅調整器17を介さず、制御部100から出力された制御信号の振幅強度I
2と同じ振幅強度O
2(O
2=I
2)の制御信号がそのまま入力される。これに対して、制御部100から入力された制御信号の振幅強度が、所定値Im以上のI
2(I
2>Im)でである場合に、第2補助回転翼14を回転させるための第2ESC19には、振幅調整器17を介して、制御部100から入力された制御信号の振幅強度I
2よりも大きい振幅強度O
3(O
3>I
2)の制御信号が入力される。その結果、
図8に示すように、第2補助回転翼14は、主回転翼12よりも高いトルクで迅速に回転することが可能となり、主回転翼12よりも回転数が高くなる。なお、
図8は、
図7における制御信号の振幅強度I
1~I
3と主回転翼12および第2補助回転翼14の回転数との関係を示すグラフである。
図7に示すように、制御信号の振幅強度がI
1~I
3である場合には、主回転翼12の回転軸を回転させる第1モーター13に対して、第2補助回転翼14の回転軸を回転させる第2モーター15に出力される制御信号の信号強度が高くなり、また、主回転翼12に比べて第2補助回転翼14の大きさが小さく形成されていることから、
図8に示すように、主回転翼12の回転数に対して、第2補助回転翼14の回転数が多くなる。
【0039】
なお、本実施形態では、制御部100から出力される制御信号はPWM信号で出力される。そのため、振幅調整器17に入力される制御信号もPWM信号となり、振幅調整器17は、制御信号(PWM信号)のデューティー比を制御することで、制御信号の振幅強度を調整することとなる。
【0040】
そして、振幅調整器17で振幅が調整された制御信号は、第2ESC19a~19dに出力され、第2ESC19a~19dにおいて、振幅が調整された制御信号に基づいて、バッテリーからの直流電流が三相交流電流に変換された後、第2モーター15a~15dに入力され、各制御信号の振幅強度に基づく回転速度で、第2モーター15a~15dの回転がそれぞれ行われる。
【0041】
たとえば、第3実施形態に係る無人飛行体1bの実施例として、主回転翼12の羽の長さを25~100cmとし、第1モーター13の海面での揚力を5~50kgとし、第2補助回転翼14の羽の長さを12~60cm(ただし主回転翼12よりも短い)とし、第2モーター15の海面での揚力を1~20kgとすることができる。このような実施例で、発明者が第3実施形態に係る無人飛行体1bを試作したところ、20m/秒の強風下においても飛行が可能な無人飛行体を製造することができた。
【0042】
以上のように、第3実施形態に係る無人飛行体1bでは、主回転翼12による飛行を補助するための第2補助回転翼14を備える。第2補助回転翼14の羽は主回転翼12の羽よりも小さく構成されており、また、第2補助回転翼14は主回転翼12よりも大きな振幅強度で回転制御が行われる。これにより、たとえ強風により無人飛行体1bの姿勢が崩れた場合でも、無人飛行体1bの姿勢に応じて、第2補助回転翼14を迅速かつ高トルクで回転させることができ、無人飛行体1bの姿勢を安定化させることができる。すなわち、主回転翼12は揚力を得るために羽の大きさを大きくする必要があり、羽の大きさを大きくした場合には羽の回転の慣性が強く働くため、強風により無人飛行体1bの姿勢が崩れた場合に、無人飛行体1bの姿勢に応じて主回転翼12の回転速度を迅速に変更することができず、無人飛行体1bが墜落してしまう場合もあった。これに対して、第3実施形態に係る無人飛行体1bでは、第2補助回転翼14の羽の大きさを主回転翼12の羽の大きさよりも小さく構成し、かつ、第2補助回転翼14を主回転翼12よりも大きな振幅強度で回転制御することで、強風により無人飛行体1bの姿勢が崩れた場合でも、無人飛行体1bの姿勢に応じて、第2補助回転翼14を迅速に回転させることができ、無人飛行体1bの姿勢を安定化させることができる。
【0043】
なお、
図7に示す例では、制御部100から入力される制御信号の信号強度がIm以上かつI1未満である場合に比べて、制御部100から入力される制御信号の信号強度がI1以上かつI3未満である場合に、出力される制御信号の振幅強度が大きくなるように、振幅調整が行われる。これは、無人飛行体1bの姿勢が小さく変化した場合には、第2補助回転翼14の補助が少なくても主回転翼12の回転制御により無人飛行体1bの姿勢を安定化させることができる一方、たとえば強風により無人飛行体1bの姿勢が大きく崩れた場合には、第2補助回転翼14の補助を大きくすることで無人飛行体1bの姿勢を安定化させることができるためである。
【0044】
≪第4実施形態≫
次に、第4実施形態に係る無人飛行体1cについて説明する。
図9は、第4実施形態に係る無人飛行体1cの概要を示す平面図である。
図9に示すように、第4実施形態に係る無人飛行体1cは、4個の主回転翼12a~12dを4個の第1モーター13a~13dで回転させる構成に代えて、4個の主回転翼12a~12dを1個のエンジン300を用いて回転させること以外は、第3実施形態に係る無人飛行体1bと同様の構成を有し、同様に動作する。
【0045】
図9に示すように、エンジン300は、本体10a内部に配置される。エンジン300は、シャフトとタイミングベルト(不図示)を介して、4個の主回転翼12a~12dに連結している。これにより、エンジン300を駆動することで、主回転翼12a~12dは同じ回転速度で回転する。なお、本体10a中心周りのトルクをキャンセルするために、本実施形態においても、主回転翼(12a,12c)が正方向に回転し、主回転翼(12b,12d)が逆方向に回転するように、主回転翼12a~12dとタイミングベルトとが連結している。
【0046】
また、第4実施形態では、1個のエンジン300に4個の主回転翼12a~12dが連結するため、主回転翼12a~12dの回転速度を個々に制御することができず、主回転翼12a~12dは無人飛行体1cを上下方向に移動させる機能のみを有することとなる。そのため、第4実施形態に係る無人飛行体1cでは、第2補助回転翼14a~14dの回転を個々に制御することで、無人飛行体1cの水平方向の移動をも制御することができる。
【0047】
また、第2補助回転翼14の羽は、第3実施形態と同様に、主回転翼12の羽に対して小さく形成されるとともに、第2補助回転翼14の回転は、電動モーターである第2モーター15で個々に制御されるため、たとえば強風により無人飛行体1cの姿勢が崩れた場合も、無人飛行体1cの姿勢に応じて迅速に第2補助回転翼14を回転させることができ、無人飛行体1cの姿勢を安定化させることができる。特に、第2補助回転翼14の回転は電動モーターである第2モーター15で行うことことで、エンジンを用いる場合と比べて、細やかで、かつ、迅速な回転制御が可能となり、無人飛行体1cの姿勢をより有効に安定化させることができる。
【0048】
以上のように、第4実施形態に係る無人飛行体1cは、4個の主回転翼12a~12dを1個のエンジン300で駆動するとともに、4個の第2補助回転翼14を4個の第2モーター15で個々に回転させることで、強風下においても、上下方向における十分な揚力を得ることができるとともに、水平方向における移動や姿勢制御を迅速かつ細やかに制御することができ、強風下においても安定して飛行することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
たとえば、上述した第3実施形態および第4実施形態では、
図5および
図9に示すように、4個の第2補助回転翼14a~14dと4個の第2モーター15a~15dを備える構成を例示したが、
図10に示すように、12個の第2補助回転翼14a~14lと12個の第2モーター15a~15lとを備える構成としてもよい。また、上述した第3実施形態および第4実施形態では、主回転翼12と第2補助回転翼14とが同じアーム11上に放射線状に配置される構成を例示したが、
図11に示すように、主回転翼12と第2補助回転翼14とを異なるアーム11上に配置する構成とすることもできる。また、
図11に示す例においては、4個の第2補助回転翼14a~14dと4個の第2モーター15a~15dとを備える構成を例示しているが、
図12に示すように、
図11に示す例において、12個の第2補助回転翼14a~14lと12個の第2モーター15a~15lとを備える構成としてもよい。第2補助回転翼14および第2モーター15の数を増やすことで、無人飛行体1d,1fをより安定して飛行させることが可能となる。
【0051】
また、上述した第2実施形態では、外部から雨滴や水滴が混入しないように、圧縮気体供給源26と下部防水カバー25との接合部分を密閉する構成を例示したが、この構成に限定されず、圧縮気体供給源26と下部防水カバー25とを離して配置する構成としてもよい。また、外部から雨滴や水滴が混入しないように、下部防水カバー25を形成することで、圧縮気体供給源26を備えない構成としてもよい。
【0052】
さらに、上述した第3実施形態では、振幅調整制御装置18が、制御部100から入力された制御信号の振幅強度を、第2ESC19に出力する制御信号の振幅強度に調整するための関係式を有し、当該関係式に基づいて、制御信号の振幅強度を調整する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、振幅調整制御装置18が、制御部100から入力された制御信号の振幅強度と、第2ESC19に出力する制御信号の振幅強度との関係を示すテーブルを有し、当該テーブルに基づいて、制御信号の振幅強度を調整する構成とすることができる。
【0053】
加えて、上述した第4実施形態では、エンジン300が4個の主回転翼12a~12dを回転させる構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、エンジン300をモーターに供給する電力の発電に用い、主回転翼12および第2補助回転翼14をモーターで駆動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1a~1f…無人飛行体
10,10a…本体
100…制御部
200…無線通信部
300…エンジン
11…アーム
12…主回転翼
13…第1モーター
14…第2補助回転翼
15…第2モーター
16…第1ESC
17…振幅調整器
18…振幅調整制御装置
19…第2ESC
20…モーター装置
21…モーター
22…第1補助回転翼
23…防水カバー
24…回転軸
25…下部防水カバー
26…圧縮気体供給源
27…開閉弁(ノズルを含む)
28…保持部材