(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】面取り研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/00 20060101AFI20221017BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B24B9/00 601H
H01L21/304 601B
(21)【出願番号】P 2018092658
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 比宇麻
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-345788(JP,A)
【文献】特開2016-111116(JP,A)
【文献】特開2016-203342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0330783(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00962282(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径10~300mmで厚み200~800μmの
円盤状のワークを載置及び回転制御する回転テーブルと、
前記ワークの周端部に接触させて面取り研削を行うための砥石を備え、
前記砥石の回転軸と前記回転テーブルの回転軸が平行に配置されているとともに、前記砥石とワークとの相対的な移動軌跡は水平方向のX軸制御、上下方向のZ軸及びZ軸廻りのC軸制御され
、
前記ワークは周端部が前記回転テーブルの外周端部から所定の寸法だけオーバーハングさせた状態で当該回転テーブルに載置してあり、前記砥石の相対的移動軌跡はワークの面取り形状に合せてNCプログラム制御され、前記ワークの周端部が回転テーブルの外周端部からオーバーハングしているオーバーハング量Hが、前記ワークの厚みTmmに対して5×Tmm以内であり、
前記砥石の外形形状は円盤状であって、
その周端部断面形状は曲率半径Rからなる凸形状であり、
前記曲率半径Rは前記オーバーハング量Hの1/2以下であることを特徴とする面取り研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスに用いられているウエハ等の円盤状の形状をしたワークの周端部を面取り加工するための研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ等として用いられる基板は、シリコン,炭化ケイ素等の脆性材料であり、端部がシャープエッジのままでは取り扱い時に割れたり、欠けたりする恐れやウエハの表面を傷つける恐れがある。
そこで、円盤状の周端部の面取り加工が必要となる。
そこで従来は、例えば
図4に示すように回転テーブル2にワーク1を芯出しした状態に載置するとともに、砥石取付装置3に取り付ける砥石100の外周面に溝部101を形成し、この溝形状にならわせるようにワーク1の周端部を接触させることで面取り加工が行われていた。
しかし、この方法では砥石の溝形状が摩耗により変形すると、それに合せてワークの面取り形状が変化してしまう技術的課題があった。
また、ワークの面取り形状はワークの材質,大きさ等や用途等に応じて各種形状のものが要求されており、それに対応できる面取り加工装置が要求されている。
特許文献1には、ウエハと砥石とを相対的にZ軸方向,Y軸方向に移動制御させたウエハの面取り加工方法を開示する。
しかし、同公報に開示する面取り加工方法は、ウエハの回転軸方向と砥石の回転軸方向とが直交しているため砥石径が大きくなると、装置が大きくなるだけでなく、ウエハにびびり振動が発生しやすく面取り品質に大きな影響を与える恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、面取り形状の設定自由度が高く、加工品質に優れ、コンパクトな面取り研削装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る面取り研削装置は、円盤状のワークを載置及び回転制御する回転テーブルと、前記ワークの周端部に接触させて面取り研削を行うための砥石を備え、前記砥石の回転軸と前記回転テーブルの回転軸が平行に配置されているとともに、前記砥石とワークとの相対的な移動軌跡は水平方向のX軸制御、上下方向のZ軸及びZ軸廻りのC軸制御され、前記ワークは周端部が前記回転テーブルの外周端部から所定の寸法だけオーバーハングさせた状態で当該回転テーブルに載置してあり、前記砥石の相対的移動軌跡はワークの面取り形状に合せてNCプログラム制御されていることを特徴とする。
【0006】
ここで、砥石の相対的移動軌跡とは、砥石をワークの周端部に接触させながら、所定の面取り形状に創成するために移動する軌跡をいい、この動きがNCプログラム制御されている。
【0007】
本発明においては、前記ワークの周端部が回転テーブルの外周端部からオーバーハングしているオーバーハング量Hが、前記ワークの厚みTmmに対して10×Tmm以内であるのが好ましい。
ウエハとしてはφ10~300mmのものが使用され、厚みは200~800μmのものがウエハの大きさに合せて採用されている。
このように、うすい円盤状のワークにあっては、回転テーブルの載置面の外周端部から突出するオーバーハング量Hが大きくなり過ぎると、面取り研削時のワークの安定性が低下する。
そこで、ワークの厚みTmmに対してオーバーハング量Hを10×Tmm以内にするのがよい。
好ましくはオーバーハング量Hが5×Tmm以内である。
【0008】
本発明に係る面取り研削装置は、砥石の回転軸が回転テーブルの回転軸と平行になるように配置され、ワークの周端部の面取り形状が所定の形状に創成されるようにワークの周端部の上面側と下面側との間をNCプログラムにより位置制御されながら移動する。
そこで本発明においては、前記砥石の外形形状は円盤状であって、その周端部断面形状は曲率半径Rからなる凸形状であり、前記曲率半径Rは前記オーバーハング量Hの1/2以下であるのが好ましい。
ここで、砥石の周端部の断面形状を曲率半径Rからなる凸形状と表現したのは、凸形状を半円形状に限定するものではなく、凸面であれば自由曲面でもよく、凸面の形状の曲率を曲率半径Rで表現すると、そのH×1/2以下であることをいう。
このようにすると砥石がワークの下面側の面取り加工を行う際に砥石の先端が回転テーブルの外周壁(外周面)に干渉するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、砥石とワークとの相対位置をNCプログラムでX軸,Z軸,C軸の移動量を同期制御しているので、要求される各種面取り形状に合せてワークの周端部の下面側あるいは上面側を研削することができる。
これにより砥石の摩耗量に合せて移動量を補正することもでき、面取り品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る面取り研削装置の構成例を示し、(a)は回転テーブルと砥石取付装置の位置関係を示し、(b)は砥石の移動軌跡の例を示す。
【
図2】(a)は砥石の例を示し(b)は部分拡大図を示す。
【
図3】(a),(b)は面取り形状と砥石の移動軌跡の関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る面取り研削装置の構成例を以下、図に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、円板状のワーク1を芯出しした状態で載置する回転テーブル2を有する。
ワークを回転テーブル2に載置し保持するための手段に制限はないが、例えば吸引保持する例がある。
ワーク1はZ軸廻り回転速度W
1に制御されている。
これに対して、砥石10を装着し回転テーブル2の回転軸と平行なZ軸廻りの回転速度W
2にて回転制御するための砥石取付装置3を有する。
砥石10は砥石取付装置3の図示を省略した移動制御機構により、ワーク1と水平方向のX軸,上下方向のZ軸,Z軸廻りのC軸が制御されている。
砥石3の移動軌跡は、NCプログラムにより制御されており、その例を
図1(b)に示す。
ワーク1の周端部1aは回転テーブル2の外周面(外周壁)2aから外側にオーバーハング量Hmmだけオーバーハングさせた状態で、この回転テーブル2にワーク1が芯出しされた状態で載置されている。
これに対して
図2に示すように、砥石10の外形は円盤状になっているとともに、本実施例は粗砥石13,細砥石12,仕上げ砥石11の3種のメタルボンドダイヤモンドホイールの例となっている。
このような砥石を用いると、面取り形状の研削創成からみがき仕上げまでを連続的に行うことができる。
【0012】
各砥石の周端部の断面形状は、曲率半径Rの凸形状になっている。
この曲率変形Rは
図1(b)に示すように、回転テーブル2の外周面(外周壁)2aと干渉しないようにオーバーハング量Hの1/2以下になっている。
本実施例においては、ワークの厚みT=0.7mm,オーバーハング量H=3.0mm,曲率半径R=1.5mmの例となっている。
ワーク1の回転速度W
1と砥石10の回転速度W
2との速度差にて、ワークの周端部が面取り研削される。
【0013】
図1(b)にて、砥石10の砥先の動きを2点鎖線で示し、曲率半径Rの中心部の動きを1点鎖線で示す。
このような移動軌跡を砥石10がたどることでワーク1の周端部には、下面側の面取り面1d,先端部の面取り面1c,上面側の面取り面1bが形成される。
これにより例えば、
図3に示すようにワークの素材のエッジ部の研削領域1eを除去するように砥石10の砥先が矢印で示すように移動することで、下側の面取り面1dと上側の面取り面1bとで、研削代を自由に変化させることもできる。
また、面取り形状を創成する手順は、ワークの周端部の上面側から下面側に向けて移動制御してもよい。
また、砥石の移動量は摩耗量に合せてNCプログラム上にて補正することもできる。
図3に示したように上面側の面取り面1bと、下面側の面取り面1dとで形状が相違する場合には、ワーク1の上面側と下面側とを交互に逆にセットすることで、砥石摩耗の均一化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0014】
1 ワーク
2 回転テーブル
3 砥石取付装置
10 砥石