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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】鋼管杭の溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/02 20060101AFI20221017BHJP
   B23K 9/028 20060101ALI20221017BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B23K37/02 301A
B23K37/02 B
B23K37/02 E
B23K9/028 K
E02D5/24 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018120762
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020001048
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595071036
【氏名又は名称】株式会社三誠
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 富成
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035309(JP,A)
【文献】特開2017-196630(JP,A)
【文献】特開2005-334916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/02
B23K 9/028
E02D 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の外周に装着される環状のガイドレールと、このガイドレールに沿って環状に移動する移動体とを備えた鋼管杭の溶接装置において、
前記移動体は、前記ガイドレールに沿って移動するように前記ガイドレールに掛けられた掛合部と、前記ガイドレールよりも下側で鋼管杭の外周面上を周方向へ転動するローラ部と、前記ガイドレールよりも下側で鋼管杭の外周面を磁気吸引するマグネットと、鋼管杭へ向けてアークを発生するアーク発生部とを具備し
前記ガイドレールは、前記掛合部を載置する略水平な平坦環状のガイド面を有し、
前記掛合部は、前記ガイドレールの前記ガイド面上を転動する複数の球状の転動部材を備えていることを特徴とする鋼管杭の溶接装置。
【請求項2】
前記ローラ部には、第一のローラ部と、この第一のローラ部に対し、鋼管杭の周方向に間隔を置いて略平行する第二のローラ部とが含まれていることを特徴とする請求項1記載の鋼管杭の溶接装置。
【請求項3】
前記マグネットは、鋼管杭の外周面から離れた位置で鋼管杭の外周面を磁気吸引するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管杭の溶接装置。
【請求項4】
前記ガイドレールは、前記ガイド面の上方側に、前記掛合部の上方への移動を可能にする着脱スペースを確保していることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の鋼管杭の溶接装置。
【請求項5】
前記アーク発生部の上下方向位置を調整する電動位置調整機構を具備したことを特徴とする請求項1~4何れか1項記載の鋼管杭の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭の接続箇所を溶接する鋼管杭の溶接装置に関し、特に埋設される鋼管杭の上側に別の鋼管杭を継ぎ足す作業に好適な鋼管杭の溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、鋼管杭の周面に取付けるガイドレールと自走装置とからなる鋼管杭の溶接装置がある。
前記ガイドレールは、その周面に凹状部を円形状に形成している。そして、前記自走装置は、前記凹状部の底面に沿って回転しながら移動するガイドロールと、鋼管杭の周面を転動する車輪と、径方向の逆側で前記鋼管杭の周面に補助車輪を転動させるサポートアームとを備えている。
この溶接装置によれば、前記車輪と前記補助車輪との間に前記鋼管杭を挟さむようにしているため、前記自走装置が鋼管杭の表面から離れてしまったり、前記ガイドロールが前記ガイドロールから脱落したりするのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-35309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、鋼管杭の溶接装置を鋼管杭に装着する際に、前記サポートアームを鋼管杭の手前側から背面側へ跨らせて、前記車輪と前記補助車輪との間に鋼管杭を挟まなければならず、その作業性に改善の余地がある。
また、サポートアーム等を有する装置全体が、複雑化及び高重量化し易く、より簡素で軽量な構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
鋼管杭の外周に装着される環状のガイドレールと、このガイドレールに沿って環状に移動する移動体とを備えた鋼管杭の溶接装置において、前記移動体は、前記ガイドレールに沿って移動するように前記ガイドレールに掛けられた掛合部と、前記ガイドレールよりも下側で鋼管杭の外周面上を周方向へ転動するローラ部と、前記ガイドレールよりも下側で鋼管杭の外周面を磁気吸引するマグネットと、鋼管杭へ向けてアークを発生するアーク発生部とを具備し、前記ガイドレールは、前記掛合部を載置する略水平な平坦環状のガイド面を有し、前記掛合部は、前記ガイドレールの前記ガイド面上を転動する複数の球状の転動部材を備えていることを特徴とする鋼管杭の溶接装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、鋼管杭に装着する際の作業性が良好な上、簡素で軽量な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る鋼管杭の溶接装置の一例を示す正面図である。
図2】同溶接装置を示す側面図である。
図3図1の(III)-(III)線に沿う断面図である。
図4】本発明に係る鋼管杭の溶接装置の他例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1図2に示す一例は、先に地中に埋設された鋼管杭a2の上端に、後から埋設する鋼管杭a1の下端を近接させ、この近接箇所を、鋼管杭の溶接装置1によって溶接する作業を示している。
【0009】
溶接装置1の設置対象となる各鋼管杭a1,a2は、例えば、鉄や鉄を含む合金等の強磁性材料から円筒状に形成される。
【0010】
溶接装置1は、鋼管杭a1の外周に装着される環状のガイドレール10と、このガイドレール10に沿って環状に移動する移動体20とを備えている。
【0011】
ガイドレール10は、鋼管杭a1の外周面に着脱可能に設けられる円環状の部材であり、例えば金属等の硬質材料によって形成される。
このガイドレール10の上面は、鋼管杭a1の外周面に略直交して周方向へ延設され、略水平な平坦環状に形成される。この面は、溶接装置1の掛合部21を掛合して周方向へ案内するガイド面11として機能する。
そして、このガイド面11の上方側には、掛合部21の上方への移動を可能にする着脱スペースSが確保されている。
【0012】
着脱スペースSは、ガイド面11に載置された掛合部21よりも上側で、ガイド面11に沿って円筒状に確保された空間である。
この着脱スペースSは、図2に示すように、移動体20がガイドレール10に装着される際や、移動体20がガイドレール10から外される際等に、部材間の干渉がないようにして、その作業を容易にする。
【0013】
図示例のガイドレール10は、二つの半円環状部材を、鋼管杭a1の周囲で無端輪状に組み合わせて構成される。前記二つの半円環状部材は、一端側が蝶番12によって互いに回転するように接続され、他端側に設けられた鍔部分が、ネジやボルト等の止着具13によって着脱可能に接続される。
【0014】
移動体20は、ガイドレール10に掛けられて下方へ延設される掛合部21と、この掛合部21の下端側に接続されてガイドレール10よりも下方側に位置する基部22と、この基部22によって回転自在に支持され鋼管杭a1の外周面をその周方向へ転動する第一及び第二のローラ部23,24と、基部22内に設けられガイドレール10よりも下側で鋼管杭a1の外周面を磁気吸引するマグネット31と、基部22内から下方へ突出し上下の鋼管杭a1,a2間の近接部分へ向けてアークを発生するアーク発生部43とを備える(図1参照)。
【0015】
掛合部21は、ガイドレール10のガイド面11上を転動する複数の転動部材21aと、これら転動部材21aをそれぞれ回転自在に支持するとともに下方へ延設された支持部材21bとを備える。この掛合部21は、転動部材21aをガイド面11に掛けて、ガイドレール10に沿って環状に移動する。
【0016】
転動部材21aは、金属等の硬質材料から球状に形成され、ガイド面11に沿って自在に転動するように、支持部材21bの上端側に支持されている。
【0017】
支持部材21bは、その上端側に、鋼管杭a1の外表面に対向する突出部21b1を有し(図2参照)、この突出部21b1に、前述した複数の転動部材21aを、それぞれ、回転自在に支持している。
また、支持部材21bの下部側は、下方へ延設され、基部22に接続されている。支持部材21bは、図示例によれば、略T字状に構成される。
【0018】
基部22は、内部が中空の箱状に構成される(図3参照)。
この基部22には、第一のローラ部23及び第二のローラ部24が、それぞれ、鋼管杭a1の外周面を周方向へ転動するように支持されている。
【0019】
第一のローラ部23は、基部22を貫通する支持軸25の両端側に固定されている。
また、第二のローラ部24は、第一のローラ部23に対し、鋼管杭a1の周方向に間隔を置いて略平行に配設される。この第二のローラ部24も、第一のローラ部23と同様に、基部22を貫通する支持軸25の両端側に固定されている。
【0020】
各支持軸25は、鋼管杭a1の中心軸と略平行になるように位置し、基部22に対し回転自在に支持される。
【0021】
そして、これら第一及び第二のローラ部23,24は、基部22内に支持されたモーター(図示せず)によって駆動回転する。このモーターは、基部22内の制御回路27により制御される。
【0022】
制御回路27は、マイコンやリレー等を備えた電子回路である。この制御回路27には、給電配線27a及び制御配線27b等を介して、外部電源(図示せず)や操作部27c等が電気的に接続される。
【0023】
操作部27cは、複数のスイッチを備えたスイッチボックスであり、そのスイッチ操作による信号を制御回路27へ発信し、モーター(図示せず)及び電動位置調整機構41等を遠隔操作する。
【0024】
なお、図示例によれば、操作部27cを制御回路27に対し有線接続したが、この操作部27cの他例としては、制御回路27に対し無線で制御信号を送信する態様とすることも可能である。
【0025】
また、マグネット31は、鋼管杭a1の外周面から径方向へ離れた位置で鋼管杭a1の外周面を磁気吸引するように、基部22内における鋼管杭a1外周面に近接する位置に設けられる。
【0026】
また、基部22には、電動位置調整機構41を介してアーク発生部43が設けられる。
【0027】
電動位置調整機構41は、上下方向へわたる昇降バー42を、ラックアンドピニオン機構とモーター等により上下駆動するように構成され、この昇降バー42を基部22の下方へ突出させその下端側にアーク発生部43を固定支持している。この電動位置調整機構41は、制御回路27に電気的に接続されており、操作部27cによって操作される。
【0028】
アーク発生部43は、昇降バー42の下端側に、ブラケット等を介して固定された溶接トーチであり、ケーブル44を介して図示しない溶接機本体に接続される。このアーク発生部43の先端部は、上下の鋼管杭a1,a2間の接合部分に向けられる。
【0029】
なお、図中、符合51,52は、基部22の左右両側に固定された取っ手であり、移動体20を持ち運ぶ際等に利用される。
【0030】
次に、上記構成の鋼管杭の溶接装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
上記鋼管杭の溶接装置1を用いて、上下の鋼管杭a1,a2を溶接するには、先ず、図1に示すように、上側の鋼管杭a1に対し、ガイドレール10を装着し、次に、ガイドレール10に、移動体20を掛合する。
この掛合の際、図2に示すように、移動体20の掛合部21を、ガイド面11上方の着脱スペースSに通過させて、ガイド面11に載置すればよく、複雑な凹凸嵌合等を要さない。
この掛合状態では、掛合部21の下端側に基部22側が吊るされ、左右の第一及び第二のローラ部23,24が鋼管杭a1の外周面に接触し、アーク発生部43が上下の鋼管杭a1,a2の接合部分へ向く。アーク発生部43の上下位置は、操作部27cの操作により電動位置調整機構41を動作させることで、容易に調整することができる。
【0031】
上記のように移動体20をセットすれば、基部22内のマグネット31が鋼管杭a1を磁気吸引する。
このため、平行する二つのローラ部23,24が鋼管杭a1の外周面に圧接されて、鋼管杭a1の中心軸と、各ローラ部23,24の中心軸とが略平行に保持される。
【0032】
そして、操作部27cの操作により、基部22内のモーター(図示せず)を駆動回転させれば、第一及び第二のローラ部23,24が鋼管杭a1の表面を転動し、移動体20が鋼管杭a1の周囲を周方向へ略一定の速度で移動する。
この移動中、平行な二つのローラ部23,24と鋼管杭a1の中心軸とが略平行に保持されるため、移動体20は、ほとんど傾斜することなく、鋼管杭a1の外周円に沿って移動する。また、マグネット31が鋼管杭a1の表面を磁気吸引するため、掛合部21がガイドレール10から脱落するのを防ぐことができる。
そして、前記移動中に、アーク発生部43からアークを発生させれば、鋼管杭a1,a2の接合部分を周方向にわたって略均等に溶接することができる。
【0033】
よって、本実施の形態の鋼管杭の溶接装置1によれば、当該鋼管杭の溶接装置1を鋼管杭a1に装着する際の作業性が良好な上、高品質な溶接を行うことができる。
しかも、従来のサポートアーム等を必要としないため、装置全体を簡素で軽量な構造にすることができる。
【0034】
次に、図4に示す他の実施態様について説明する。
なお、以下に示す実施態様は、上記鋼管杭の溶接装置1に対し、その一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、他の部分の詳細説明を適宜省略する。
【0035】
図4に示す鋼管杭の溶接装置2は、上述した鋼管杭の溶接装置1に対し、ガイドレール10をガイドレール10’に置換し、掛合部21を掛合部21’に置換したものである。
【0036】
ガイドレール10’は、上面にガイド面11を有する平板環状のガイド部10aと、このガイド部10aの上側に接続された筒状部10bとから構成される。このガイドレール10’は、上記ガイドレール10と同様に、二つの半円環状部材を、鋼管杭a1の周囲で無端輪状に組み合わせて構成される。
このガイドレール10’においても、ガイド面11の上方側には、掛合部21’の係脱作業を容易にする着脱スペースSが確保される。
【0037】
掛合部21’は、上述した球状の転動部材21aを、転動部材21a’に置換したものであり、ガイドレール10の周方向に沿って複数(例えば三つ)設けられる。
各転動部材21a’は、円盤状又は円筒状のローラであり、ガイド面11上を転動するように、回転自在に支持される。
【0038】
上記構成の鋼管杭の溶接装置2によれば、先に説明した鋼管杭の溶接装置1と略同様に、掛合部21を簡単にガイドレール10’に掛合することができ、その作業性が良好である。
【0039】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:鋼管杭の溶接装置
10,10’:ガイドレール
20:移動体
21,21’:掛合部
21a,21a’:転動部材
21b:支持部材
22:基部
23:第一のローラ部
24:第二のローラ部
25:支持軸
31:マグネット
41:電動位置調整機構
42:昇降バー
43:アーク発生部
a1,a2:鋼管杭
S:着脱スペース
図1
図2
図3
図4