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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】非常用貯水槽
(51)【国際特許分類】
   E03B 11/14 20060101AFI20221017BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E03B11/14
B65D90/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018134214
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020012272
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】玉田 善明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 祥太朗
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-064370(JP,A)
【文献】特開2007-217976(JP,A)
【文献】特開平09-025654(JP,A)
【文献】特開平10-025776(JP,A)
【文献】実開平03-126894(JP,U)
【文献】実開昭59-173765(JP,U)
【文献】特開平10-292445(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105329571(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/00-11/16
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管その他の配管の間に介装されて、通常時には流入管から流入した新水が槽内を主として槽の軸線方向に流れて流出管から流出して給水され、非常時には当該槽に貯えられた水を利用できるようにした非常用貯水槽であって、
円筒胴とその両端を閉鎖する鏡板とで形成された槽内に上側流路と下側流路とを形成している水平方向の仕切板とを備えた横置き円筒型の非常用貯水槽において、
前記仕切板は、両側縁を前記円筒胴の内壁に固定されて、当該仕切板の両端と両鏡板との間には上下の前記流路を連通する連通路が形成され、
前記上側流路は、前記円筒胴の略中央部で周縁を前記円筒胴の内壁と前記水平仕切板に固定した隔壁で流入側流路と流出側流路とに区画され、
前記流入管及び流出管が前記上側流路の前記隔壁の近傍に開口し、
前記流入管から貯水槽に流入する水の一部を前記下側流路の底部の当該流路内流れの上流端部分で当該流れの方向に吐出する副流入管を備えていることを特徴とする、非常用貯水槽。
【請求項2】
貯水槽から流出管に流出する水の一部を前記下側流路底部の当該流路内流れの下流端部分で前記流れの上流側に向いて開口する副流出管を備えていることを特徴とする、請求項1記載の非常用貯水槽。
【請求項3】
前記副流入管を流れる水の量が前記流入管を流れる水の量の10~25%である 、請求項1又は2記載の非常用貯水槽。
【請求項4】
貯水槽底部の当該底部における槽内流れの上流端に集水ピットを備えている非常用貯水槽において、前記副流入管の当該集水ピットの上部に当該副流入管を流れる水の一部を当該集水ピットに向けて吐出する開口を備えている 、請求項1又は2記載の非常用貯水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管その他の清水の給水管の途中に設けられる非常用貯水槽(以下、単に「貯水槽」と言う。)に関し、通常時は当該貯水槽を経由して清水を給水し、地震などによる断水などの非常時には貯水槽に蓄えられた水を使用できるようにした貯水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道管その他の清水の給水配管に介設される貯水槽は、一般的には地下に埋設され、給水源に繋がる流入配管と蛇口などの給水口に繋がる流出配管とが接続されている。通常時は、流入配管から流入する水が貯水槽を通過して流出配管から給水口に送られる。地震などにより給水配管が損傷して給水が止まったときは、貯水槽に蓄えられた水を非常用の水として使用する。
【0003】
このような貯水槽を介設した給水配管から供給される水の品質が保証されるには、貯水槽内の水が流入してくる水により常に入れ替っていることが必要である。貯水槽の一部に水が滞留すると、当該部分の水の劣化が懸念され、非常時はもとより、通常時における水の品質が保証できなくなる。
【0004】
地下に埋設される貯水槽は、円筒胴の両端に鏡板を取り付けた横置き円筒形のもので、従来は一方の鏡板の中心に流入配管を接続し、他方の鏡板の中心に流出配管を接続していた。しかしこの構造では、円筒胴内を軸方向に流れる主流により円筒胴と鏡板周辺の接続部となる隅の部分に小さな旋回流が起こって、この隅の部分の水が流出配管へ流れにくくなり、この隅部分に水が滞留しやすいという問題があった。
【0005】
この問題を解決する従来構造として、鏡板を円錐形にしてその円錐の頂部に流入管及び流出管を接続した構造、流入管と流出管を一方と他方の鏡板の近くにそれぞれの開口端を当該側の鏡板に向けて設けた構造、槽の長手方向に延びる流入管と流出管を貯水槽の下部と上部に設けてそれぞれの管の外周面に多数の小孔を放射状に穿設した構造、貯水槽の円筒胴と鏡板との境界の位置の近傍に円板状の遮蔽板を設置する構造、貯水槽内周に沿って螺旋状リブを設けて流入水に旋回流を与える構造など、種々の構造の貯水槽が提案されている。
【0006】
また、特許文献1には、槽内での水の滞留を低減する構造として、横置き円筒型貯水槽において、仕切板で円筒胴内を上下の2つの流路に区画すると共に、仕切板の端縁と鏡板との間に上下の流路を連通する連通路を形成し、当該仕切板によって区画された2つの流路のうちの一方の流路を隔壁で流入側流路と流出側流路に区画した貯水槽が提案されている。貯水槽に新水を吐出する流入管は、流入側流路における隔壁に近接して当該隔壁に向けて開口させ、槽内の水を吸入する流出管は、流出側流路における隔壁に近接して当該隔壁に向けて開口させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10‐292445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で提案された構造の貯水槽は、図2のS構造に相当する構造で、同図に示すように、従来提案されている他の構造に比べて槽内での水の滞留を低減する作用に優れていることが認められた。
【0009】
しかし、貯水槽における水の滞留を防止する試みは、槽の内部構造及び流入管や流出管を槽内のどの位置にどのように開口するか、という観点でのみ検討及び提案が為されており、貯水槽の環境条件、特に貯水槽の設置状態や貯水槽に流入する新水の状態によって槽内の滞留がどのように変化するかについての検討はあまり為されていなかった。
【0010】
この発明は、槽内に貯留されている水(旧水)と槽内に供給される水(新水)に温度差がある場合に、槽内の水の滞留がどのように変化するか、もし旧水と新水の温度差により槽内の滞留が増加するおそれがあるとすれば、その滞留の増加をどのようにして避けることができるか、という課題の提起とその解決手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の貯水槽は、水道管その他の給水配管21、31間に介装されて、通常時には流入配管21から流入した流入水(新水)が貯水槽内を主として槽の軸線方向に流れて流出配管31から流出して一般家庭の蛇口などに給水され、災害のために流入配管21からの水の供給が停止したような非常時には、貯水槽に貯えられた水をポンプなどでくみ上げて利用できるようにした、一般的には地中に埋設される、横置き円筒型の貯水槽である。
【0012】
この発明の貯水槽は、流入配管21に接続した流入管2から貯水槽本体1に流入する水の一部を貯水槽本体1の底部の当該底部における槽内流れの上流端部分に導く副流入管23を備えている。好ましくは更に、貯水槽本体1から流出配管31に接続した流出管3に流出する水の一部を貯水槽底部の当該底部における槽内流れの下流端部分から吸入する副流出管33を備えている。
【0013】
副流入管23からの水の吐出方向は、副流入管23が開口24する箇所における槽内流れの方向であり、副流出管33への水の吸入方向は、副流出管33が開口34する箇所における槽内流れの方向である。すなわち、副流入管23は、その開口部24における槽内流れの下流に向けて開口し、副流出管33は、その開口部34における槽内流れの上流に向けて開口している。
【0014】
副流入管23及び副流出管33は、貯水槽本体1の底部に槽内水が滞留するのを防止するために設けられている。副流入管から吐出する水は、直進しようとする運動エネルギーを持っているため、槽底部に滞留しようとする水を下流側に送るのに有効に作用する。これに対して副流出管33に吸入される水は、副流出管33に吸入されることによって運動エネルギーが付与されるので、槽底部に滞留しようとする水を付勢する作用は小さい。従って、副流入管23のみを設けた構造であっても、槽底部の水の滞留を軽減する効果が得られる。
【0015】
この発明は、槽内水が円筒胴11の軸線方向に流れる貯水槽に適用されるが、特に仕切板4により槽内を上側流路41と下側流路43とに区画して、流入管2及び流出管3を上側流路41(41a、41b)に開口した貯水槽に有効である。このような貯水槽では、副流入管23は下側流路43の上流端部分に開口し、副流出管33は下側流路43の下流端部分に開口するように設ける。
【0016】
また、集水ピット14を備えている貯水槽では、集水ピット14内に水が滞留するのを防止するために、副流入管23の先端部に分岐管の開口を集水ピット14に向けた異径チーズを取り付けるなどして、副流入管23を流れる水の一部を集水ピット14に向けて吐出するように設けるべきである。
【発明の効果】
【0017】
上記のような副流入管や副流出管を備えていない貯水槽では、流入水温が槽内水温より高いときに、槽内に滞留する水量が増大する現象が見られた。これに対して副流入管と副流出管とを備えたこの発明の貯水槽では、流入水温が槽内水温より高いときの槽内での滞留水の増大を低減することができる。
【0018】
地下に埋設される貯水槽においては、地表の温度や河川水の温度が高くなる夏季に流入水の温度が槽内水の温度より高くなる。一般に、温度が高くなるほど水の劣化が起こりやすい。この発明の貯水槽は、劣化の起こりやすい夏季において貯水槽内での水の滞留を低減できるので、年間を通じて槽内水の品質を維持する構造として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施例の断面側面図
図2】各種の従来構造の貯水槽について入替数と旧水体積率の関係を示すグラフ
図3】流入管、流出管と副流入管、副流出管の接続部の具体的構造例を示す斜視図
図4図3における特殊フランジの正面図
図5】集水ピット部分における副流入管先端の側面図
図6】模型による流動特性試験装置を示した図
図7】副流入管及び副流出管無しの模型による試験結果を示したグラフ
図8】副流入管及び副流出管有りの模型による試験結果を示したグラフ
図9】貯水槽本体を水平仕切板と垂直仕切板とで4つの流路に区画した貯水槽における実施例を示す断面側面図
図10図9におけるA部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図において、1は貯水槽本体、11はその円筒胴、12、13は鏡板,14は円筒胴11の底部に設けた集水ピット、15は遮断弁室、16は空気弁室、17は集水ピット14の直上に設けた給水栓室、2は流入管、3は流出管である。貯水槽本体1は、図示しない基礎上に水平に設置されている。流入管2は、図示しない給水源に接続された流入配管21に遮断弁や可撓管を介して接続され、流出管3は家庭の蛇口などに接続された流出配管31に遮断弁や可撓管を介して接続されている。
【0021】
貯水槽本体1の内部は、両側縁を円筒胴11の内壁に固定した水平仕切板4で等しい断面積の上側流路41(41a、41b)と下側流路43とに仕切られている。水平仕切板4の両端4a、4bと両鏡板12、13との間には上下の流路41、43を連通する連通路42、44が形成されている。上側流路41は、円筒胴11の略中央部で、周縁を円筒胴11の内壁と水平仕切板4に固定して設けた鉛直方向の隔壁45で流入側流路41aと流出側流路41bとに区画されている。
【0022】
遮断弁室15内で下方に向けられた流入管2及び流出管3は、それぞれ、流入側流路41a及び流出側流路41bの断面中心部で隔壁45に向けて開口22、32している。通常時には、流入配管21を流れてきた新水は、図1に矢印で示すように、流入口22から隔壁45に向けて貯水槽本体1内に流入し、隔壁45に衝突して拡散及び反転して流入側流路41a、流入側連通路42、下側流路43、流出側連通路44、流出側流路41bを通って流れ、隔壁45に衝突して収束及び反転して流出口32に吸い込まれ、流出配管31に供給される。
【0023】
給水栓室17には、上端に閉止弁を設けた非常用配管6が設けられている。非常用配管6は、水平仕切板4を貫通して集水ピット14の底部で開口している。地震などにより、新水の供給が停止したときは、給水栓室17の蓋を開いて非常用配管6の上端にポンプ配管を接続し、集水ピット14から貯水槽内の水をくみ出して必要な給水を行う。給水栓室17及び空気弁室16には、槽内に水を出し入れするときに槽内の空気を出し入れする空気弁が設けられている。
【0024】
非常用水の品質を保証するためには、通常時に流入口22から流入する新水が槽内で滞留することなく流出口32から流出して行くことが望まれる。上記構造の貯水槽では、水平仕切板4により槽内の流路面積を円筒胴の断面の1/2とし、流入口22から流入した水を隔壁45に衝突させて流入側流路全体に拡散させることにより、槽内での滞留を少なくして、槽内の水の品質が保たれるようにしている。
【0025】
非常用水を貯蔵する貯水槽として、種々の構造が提案されている。図2は、各種の構造の貯水槽について、槽内に流入した新水の槽容量に対する割合である入替数を横軸にして、もともと槽内にあった水(旧水)がどの程度槽内に残っているかを示す旧水体積率を縦軸にして示したグラフである。例えば入替数2のときに旧水体積率が0.1であれば、流入管から槽容量の2倍の水が流入したとき、槽内にもともとあった水が槽容量の1/10だけ残っていることを示している。
【0026】
図2のSモデルは仕切板で槽内を上下の流路に区画した上記の構造、Aモデルは流入管と流出管を一方と他方の鏡板の近くにそれぞれの開口端を当該側の鏡板に向けて設けた構造、Bモデルは槽の長手方向に延びる流入管と流出管を貯水槽の下部と上部に設けてそれぞれの管の外周面に多数の小孔を放射状に穿設した構造、Cモデルは流入口と流出口を一方と他方の鏡板の中央に設けて円筒胴と流出側鏡板との境界の位置の近傍に円板状の遮蔽板を設置した構造、Dモデルは貯水槽内周にそって螺旋状リブを設けて流入水に旋回流を与える構造である。図2に示すように、上記の構造であるSモデルは、槽内での水の滞留を防止する作用に優れていることが分かる。
【0027】
すなわち、上記構造の貯水槽では、水平仕切板4により貯水槽断面を上下に区画して、新水(水道水)が貯水槽内を循環する際の断面積を1/2にすることにより、水の滞留を少なくしており、新たに流入してくる水が、貯水槽内にある旧水を押し出すように流れるため、新旧の水の混合による残留塩素濃度の希釈による水質の劣化を防ぐことができる。
【0028】
貯水槽は、通常、温度が比較的一定している地下に埋設されている。一方、流入配管21は、地上近くに配置され、清水は河川水を浄化して供給されることが多い。そのため、季節により、又は昼夜により、槽内の旧水と槽内に流入する新水との間に温度差が生ずる。本願の発明者らは、槽内水と流入水との温度差により入替率が変化すると考え、後述する模型実験を基に、本願発明を提案している。
【0029】
この発明の貯水槽では、流入管2の流入口22から伸びて槽内流路の底部近くで当該底部での流れを助長する方向に開口24する副流入管23を設けている。水平仕切板4で槽内流路を上下に2分した図示実施例の貯水槽では、副流入管23は、下側流路43の上流側底部に当該流路の下流側を向けて開口24している。副流入管23は、流入管2から流入する新水の10~25%が流れるように設けるのが良い。図の実施例では、副流入管23と同様な構造の副流出管33を設けて、槽内水と流入水の温度差に起因する槽内の水の滞留をより減少させるようにしている。
【0030】
具体的には、管径200Aの流入管2及び流出管3の流入口22及び流出口32に管径100Aの副流入管23及び副流出管33を接続している。具体的な構造としては、図3、4に示すように、流入口22及び流出口32に200Aのフランジ26を取付け、フランジ26に固定する相手側フランジ27を100Aに分岐する特殊フランジとし、当該特殊フランジを介して100Aの塩ビ管とエルボで下側流路43の底部に開口する副流入管23及び副流出管33を形成している。この構造では、流入管2を流れる水の83%は相手側フランジ27の略扇状の貫通孔28から隔壁45に向けて吐出し、17%が副流入管23を通って下側流路43の底部に導かれた。
【0031】
副流入管23及び副流出管33の作用は、気温や地下水の影響等で、貯水槽内部で水温差が生ずる場合に、滞留を防ぐことである。流入配管21から流入してくる新水と貯水槽内の旧水との間で温度差がある場合、貯水槽の上下方向において温度勾配が生じ、貯水槽底部に水の滞留現象が生じる恐れがある。副流入管23、更には副流出管33を取付けることにより、新規に流入して来る新水の一部を優先的に貯水槽底部へ送り込むことで、確実に底部の水の入替を行うことができるため、水の滞留現象を事前に防ぐことが可能である。また、貯水槽内の残留塩素が低下しているような場合でも、新しい水を底部に導くことにより、貯水槽底部や流出口32近くの部分も早期に残留塩素が回復する。
【0032】
集水ピット14は、貯水槽の底部にあり、凹形状をしているため、最も水が滞留しやすい箇所である。図示実施例では、図5に示すように、副流入管23の先端部に100A×50Aの異径チーズ継手29を取付け、50Aの分岐部をピット底部に向けて開口させることで、集水ピット14における水の滞留を防止している。
【0033】
上記構造の貯水槽において、槽内にもともとあった水(旧水)より温度の高い水(新水)が流入したときの流動特性を模型を使って比較試験をした。図6は、試験装置を示した図で、模型51は、実物の1/10.56の寸法のアクリル製で、集水ピットは備えていない。流入管52にタンク54、55を接続し、旧水タンク54にメチレンブルーで着色した水を入れ、新水タンク55には水道水56と温水57を供給できるようにしている。タンク内の水は、水中ポンプ58、59で模型51内に供給される。新水の供給配管には流量計60を設けている。模型内の水の透明度をカメラ61で撮影し、流出管53から出る水の透明度を光学セル62で検出して透過率測定器63で測定した。
【0034】
試験条件として、水温差は6℃とし、比較として温度差がないときと逆温度差(流入水の温度が低い。)のときの試験も行った。流量は、実機で100m3/日のレイノルズ数(相似比)と一致させるため、模型試験では7L/分とした。試験方法として、旧水タンク54から模型内にメチレンブルー5ppm水溶液(旧水)を供給して貯めておき、貯水槽内部より高い温度の水を流入させた。流入させる水の温度は、旧水の貯水槽内平均温度から約+6℃、0℃、-6℃とし、水道水と温水を混合することで、一定温度を保つように調整した。
【0035】
初めに「副流入管・副流出管無し」の模型を使い、貯水槽内と流入水との温度差が6℃ある時の貯水槽内の流動特性を確認した。その後、流入管52と流出管53の先端に副流入管65、副流出管66を取り付けて貯水槽の仕切板64の下部を流れるようにした「副流入・流出管有り」の模型で同様の試験を行った。各温度差の試験も同様に行った。
【0036】
副流入管及び副流出管無しの試験結果を図7に示す。水温差が+6℃の時、80分後(入替数6)では上部のみが透明になっており、底部は着色水(旧水)が滞留し易い傾向が見られた。温度差無し(0℃)、-6℃差においては、40分後(入替数3)の時点で、槽内の水はほぼ透明になり滞留は見られなかった。また、-6℃差の実験結果より、貯水槽内の旧水より低い温度の水が流入した場合も、滞留が増加する傾向は見られなかった。
【0037】
次に副流入管及び副流出管を取り付けて上記と同様な条件で試験を行った。副流入管及び副流出管有りの試験結果を図8に示す。水温差が+6℃のときは、70分後には底部の着色水の色が薄まっており、80分後では更に透明になっており、温度差による水の滞留が大きく緩和された。温度差無し(0℃)、-6℃差においては、副流入管及び副流出管無しの構造と同様の結果であった。
【0038】
以上の試験結果により、槽内水に比べて流入水の温度が高い程、貯水槽底部の水温の低い水は流れ難くなり、旧水が滞留しやすくなるが、副流入・流出管を取り付けて分岐し、槽内下側から新水を流すと旧水の滞留を抑制する効果があることが判る。すなわち、流入管及び流出管に副流入管及び副流出管を取り付けることにより、貯水槽内の水と流入水との間の温度差に起因するおそれのある滞留の増加現象を未然に防止できることを確認できた。
【0039】
上記の実施例は、特許文献1で提案された貯水槽本体内を上下に2分した構造の貯水槽にこの発明を実施した例である。特許文献1には、図9、10に示すように、貯水槽本体1の内部を水平仕切板4と垂直仕切板7とで4つの流路に区画する構造も提案されている。隔壁45は、一方の上側流路41に設けられ、この隔壁45の中央に向けて流入管2及び流出管3が配置される。
【0040】
この4区画構造では、流入管2から流入した新水は、隔壁45に衝突、拡散及び反転して上側流路の一方(流入側流路)41aから当該側の下側流路43a、反対の側の下側流路43b、隔壁が設けられていない側の上側流路41cを経て隔壁を設けた側の流出側流路41bへと流れ、隔壁45に衝突、反転、収束して流出管3に流れ込む。
【0041】
この4区画構造の貯水槽では、副流入管23は、上流側下側流路43aの上流端に開口するように設けられる。必要により、2本の副流入管を設けてその一方を上流側下側流路43aの上流端に開口させ、他方を下流側下側流路43bの上流端に開口するように設けることもできる。副流出管33を設ける場合は、同様に、1本とするときは下流側下側流路43bの下流端に開口するように設け、2本とするときは、一方を上流側下側流路43aの下流端に開口させ、他方を下流側下側流路43bの下流端に開口するように設けてやれば良い。
【符号の説明】
【0042】
1 貯水槽本体
2 流入管
3 流出管
4 仕切板
11 円筒胴
14 集水ピット
21 流入配管
24 開口
23 副流入管
31 流出配管
33 副流出管
34 開口
41(41a、41b) 上側流路
43 下側流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10