(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ベッセル洗浄システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20221017BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20221017BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221017BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20221017BHJP
B08B 11/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G01N35/02 E
G01N33/15 A
B08B3/02 F
B08B5/00 A
B08B11/00 D
(21)【出願番号】P 2018165481
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】597059100
【氏名又は名称】株式会社ユニフレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃
(72)【発明者】
【氏名】柏原 肇
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3169165(JP,U)
【文献】特開昭63-196859(JP,A)
【文献】特開2003-053287(JP,A)
【文献】登録実用新案第3000816(JP,U)
【文献】特開2016-118072(JP,A)
【文献】特開2013-164411(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123667(JP,U)
【文献】特開2010-230342(JP,A)
【文献】実開昭53-082825(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 33/15
B08B 3/02
B08B 5/00
B08B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業台を配設し、試験員が当該複数の作業台の間の作業空所において製剤溶出試験作業を行うように構成された製剤溶出試験室において、
上記複数の作業台上にそれぞれ上記試験員の作業動線に沿う方向に複数の製剤溶出試験ユニットを配設して当該複数の製剤溶出試験ユニットにおいてそれぞれ溶出用ベッセルを用いて溶出試験を行うようになされ、
洗浄対象ベッセルに洗浄水を供給する洗浄水突出用ポンプを有すると共に、上記洗浄対象ベッセルから洗浄後の排出水を引き出して廃液として廃液管に排出させる排出水引き出し用ポンプを有する給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットを備え、
上記給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットは、上記洗浄水突出用ポンプからの上記洗浄水を上記洗浄対象ベッセルの洗浄水供給部に供給する洗浄ノズルと、上記排出水引き出し用ポンプによって上記洗浄対象ベッセルの排出水排出部から排出水を引き出す廃水ノズルとを1つの筐体の制御操作パネルに設け、
上記洗浄対象ベッセルの上記洗浄水供給部に連通する洗浄水パイプを上記給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの上記洗浄ノズルに上記試験員が手動でノズル接続できるようにすると共に、上記洗浄対象ベッセルの上記排出水排出部に連通する排出水パイプを上記給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの上記廃水ノズルに上記試験員が手動でノズル接続できるようにし、
上記製剤溶出試験ユニットにおいて上記溶出用ベッセルの洗浄作業を行う際に、
上記洗浄対象ベッセルに対して
上記洗浄ノズルを挿入した状態において当該洗浄ノズルの
上記洗浄水供給部から
上記洗浄水を上記溶出用ベッセル内に放出させると共に、上記洗浄対象
ベッセルの上記排出水排出部から上記溶出用ベッセル内の排出水を排出させるようになされ、
上記洗浄ノズルの上記洗浄水
供給部に供給すべき上記洗浄水及び
上記洗浄ノズルの
上記排出水排出部から排水すべき排出水は上記試験員の作業動線の上方位置、又は下方位置を通るように設けた給水流路構造部及び排水流路構造部を介して上記洗浄ノズルに供給されかつ
上記洗浄ノズルから排出されることにより、溶出試験時の上記試験員の作業動線を妨げないように上記溶出用ベッセルを洗浄できるようにした
ことを特徴とするベッセル洗浄システム。
【請求項2】
上記製剤溶出試験ユニットはそれぞれ6台の上記溶出用ベッセルを有し、上記試験員は上記洗浄ノズルを用いて当該6台の溶出用ベッセルを1台又は複数台ずつ洗浄させる
ことを特徴とする請求項1に記載のベッセル洗浄システム。
【請求項3】
上記複数の作業台には、それぞれ上記試験員が上記溶出用ベッセルを洗浄する際に用いる上記洗浄ノズルの設定位置を移動させる洗浄ノズル移動手段を設け、
上記洗浄ノズル移動手段は上記試験員の作業動線に沿う方向に上記洗浄ノズルに接続された洗浄水ホース及び排出水ホースを移動させながら、上記作業動線の上方位置又は下方位置に保持する
ことを特徴とする請求項1に記載のベッセル洗浄システム。
【請求項4】
上記給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットは、上記制御操作パネルに設けられた原水ノズルを介して上記筐体内に設けた給水タンクに常時原水を保持すると共に、当該原水を上記洗浄水突出用ポンプが
上記洗浄水として供給できるようにした
ことを特徴とする請求項
1に記載のベッセル洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベッセル洗浄システムに関し、特に製薬企業における製剤溶出試験室の試験作業の効率を一段と改善するものである。
【背景技術】
【0002】
製薬企業において製造される錠剤等の固形製剤は、国際標準である薬局方により指定される溶出試験手法によって溶出試験を受けることにより、人が当該固形製剤を服用したときの安全性及び効果を事前に確認するようになされ、特許文献1に示すように、1台の溶出試験装置ごとに設けられた6個の溶出用ベッセルに投入した溶出用試験液に落とし込まれた固形製剤を撹拌しながら製剤液の溶出濃度の変化を同時に検出する。
【0003】
実際上、当該製剤溶出試験室における各溶出試験装置は、1つの製剤についての溶出試験作業が終了すると、次の1つの製剤についての溶出試験作業を行うために使用済みの溶出用ベッセルを洗浄して前回の溶出試験と同じ条件で次回の溶出試験を行うことにより、国際標準である薬局方の規定による溶出試験を行うようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製薬企業の製剤溶出試験室においては、複数台の製剤溶出試験装置が製剤販売許認可試験装置として設置され、各製剤溶出試験装置において連続的に溶出試験を効率良く動作させることによってできるだけ多数の製剤について溶出試験合格結果を得ることができるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数の作業台を配設し、試験員が当該複数の作業台の間の作業空所において製剤溶出試験作業を行うように構成された製剤溶出試験室において、複数の作業台上にそれぞれ試験員の作業動線に沿う方向に複数の製剤溶出試験ユニットを配設して当該複数の製剤溶出試験ユニットにおいてそれぞれ溶出用ベッセルを用いて溶出試験を行うようになされ、洗浄対象ベッセルに洗浄水を供給する洗浄水突出用ポンプを有すると共に、洗浄対象ベッセルから洗浄後の排出水を引き出して廃液として廃液管に排出させる排出水引き出し用ポンプを有する給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットを備え、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットは、洗浄水突出用ポンプからの洗浄水を洗浄対象ベッセルの洗浄水供給部に供給する洗浄ノズルと、排出水引き出し用ポンプによって洗浄対象ベッセルの排出水排出部から排出水を引き出す廃水ノズルとを1つの筐体の制御操作パネルに設け、洗浄対象ベッセルの洗浄水供給部に連通する洗浄水パイプを給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの洗浄水ノズルに試験員が手動でノズル接続できるようにすると共に、洗浄対象ベッセルの排出水排出部に連通する排出水パイプを給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの廃水ノズルに試験員が手動でノズル接続できるようにし、製剤溶出試験ユニットにおいて溶出用ベッセルの洗浄作業を行う際に、当該洗浄対象となる溶出用ベッセルに対して洗浄ノズルを挿入した状態において洗浄水供給部から洗浄水を溶出用ベッセル内に放出させると共に、洗浄ノズルの排出水排出部から溶出用ベッセル内の排出水を排出させるようになされ、洗浄ノズルの洗浄水供給部に供給すべき洗浄水及び洗浄ノズルの排出水排出部から排出すべき排出水は試験員の作業動線の上方位置、又は下方位置を通るように設けられた給水流路構造部及び排水流路構造部を介して洗浄ノズルに供給されかつ洗浄ノズルから排出されることにより、溶出試験時の試験員の作業動線を妨げないように溶出用ベッセルを洗浄できるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、製剤溶出試験室内において、溶出試験時の試験員の作業動線の上方位置、又は下方位置を利用して、溶出用ベッセルの洗浄ができるようにした。また本発明は、洗浄対象ベッセルの洗浄水供給部に連通する洗浄水パイプ及び排出水排出部に連通する排出水パイプを、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの洗浄水ノズル及び廃水ノズルに対し、試験員が手動でノズル接続できるようにした。これにより本発明は、試験員に重い浄水タンク又は排水タンクを運搬させる必要が無く、洗浄対象ベッセルに応じて洗浄水パイプ及び排出水パイプをノズル接続させれば良く、簡便に溶出試験装置の洗浄をなし得るベッセル洗浄システムを実現でき、その結果として試験準備時間を短縮し、試験依頼の増加に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明によるベッセル洗浄システムを示す略線的斜視図である。
【
図2】
図1における給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fを示す系統図である。
【
図3】
図1のベッセル洗浄システムの動作の説明に供する略線的系統図である。
【
図4】洗浄ノズル21による洗浄時に生ずる洗浄ノズルの移動原理の説明に供する略線的斜視図である。
【
図5】給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fの外観構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0010】
(1)第1の実施の形態
図1において、1は全体としてベッセル洗浄システムを示し、製薬企業の製剤溶出試験室2の床面3上に複数の作業台(この実施の形態の場合6台分の作業台4A、4B、4C、4D、4E、4F)上にそれぞれ3台の製剤溶出試験ユニット5(5A1~5A3、5B1~5B3、5C1~5C3、5D1~5D3、5E1~5E3、5F1~5F3)が配設されている。
【0011】
これらの製剤溶出試験ユニット5は製剤溶出試験室2の交差方向Xに作業台4A、4B及び4C、4D及び4E、4Fごとに4つの島を構成し、これにより各島を構成する作業台の間の作業空所7A、7B又は7Cを試験員が前後方向の作業動線Yの方向に行き来しながら製剤溶出試験作業を行い得るようになされている。
【0012】
また各作業台の島の任意に選定された位置(この実施の形態の場合作業台の内部)に、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fが設けられ、試験員は、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fによって各島の製剤溶出試験ユニット5A1~5A3、5B1~5B3及び5C1~5C3、5D1~5D3及び5E1~5E3、5F1~5F3に設けられている溶出用ベッセル13を用いて溶出試験作業を行うと共に、当該製剤溶出試験ユニット5に設けられた状態の溶出用ベッセル13の洗浄作業を行う。
【0013】
すなわち試験員は、作業台4A及び4B間の作業空所7Aにおいて作業動線Yの方向に移動しながら、作業空所7A側から作業台4A上の3台の製剤溶出試験ユニット5A1~5A3の溶出用ベッセル13の溶出試験及び洗浄を行う。
【0014】
また試験員は同じように、作業台4A及び4B間の作業空所7Aにおいて作業台4Aの隣の作業台4Bの3台の製剤溶出試験ユニット5B1~5B3の溶出用ベッセル13の溶出試験及び洗浄を作業空所7A側から行う。
【0015】
このようにして試験員は、作業空所7Aの両側の島を形成する製剤溶出試験ユニット5A1~5A3及び5B1~5B3について作業空所7A側から溶出試験及び洗浄を行う。
【0016】
同様にして試験員は、作業台4C及び4D間の作業空所7Bにおいて、両側の島を形成する製剤溶出試験ユニット5C1~5C3及び5D1~5D3について作業空所7B側から溶出試験及び洗浄を行い、また作業台4E及び4F間の作業空所7Cにおいて、両側の島を形成する製剤溶出試験ユニット5E1~5E3及び5F1~5F3について作業空所7C側から溶出試験及び洗浄を行う。
【0017】
給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fは、その機能を
図2に示すように、洗浄原水バルブ24から得られる圧力清浄水でなる洗浄原水H3を原水パイプ95A及び原水連通ノズル92Aを通って洗浄原水H4として給水タンク93に貯留保持する。
【0018】
給水タンク93は当該貯留保持した洗浄原水H4が常時20[L]に維持するように水量制御をしながら制御原水H5としてベッセル洗浄ユニット19の洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cに供給する。
【0019】
洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cは制御原水H5を洗浄水H1として勢良く洗浄水連通ノズル92Bを通って洗浄ノズル21の洗浄水パイプ95Bに供給し、これにより試験員が多数の溶出用ベッセル13から洗浄対象として選定して洗浄ノズル21を挿入保持させた状態の洗浄対象ベッセル20を洗浄水H1によって洗浄する。
【0020】
このとき洗浄対象ベッセル20の洗浄後の廃液は排出水パイプ95Cから廃水連通ノズル92Cを介してベッセル洗浄ユニット19の排出水引き出し用ポンプ94Aによって排出水H2として吸引されて引き出され、逆止弁47(47A、47BC、47DE、47F)を介し、さらに排水パイプ46(46A、46BC、46DE、46F)を通って下水パイプ26に連通する流し台23に廃液H6として廃棄される。
【0021】
この実施の形態の場合、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE及び11Fは
図5及び
図6に示すように、必要な部材を1つのキャビネットでなる筐体90Aの内部に収納することにより製剤溶出試験ユニット5に対して身近な1つの家具として作業台4A~4Fの使い易い部分(この実施の形態の場合作業台4A~4Fの内部)に設置し易くした家具状の機器を構成している。
【0022】
この実施の形態の場合、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE及び11Fは、ほぼ方形のキャビネット状の筐体90Aを正面から見て、
図5に示すように、制御操作パネル89の上段90B、中段90C及び下段90Dに、順次制御操作子91(洗浄タイマ91A・廃水タイマ91B・ブレーカ91C・電源スイッチ91D)、給水ノズル92(原水連通ノズル92A・洗浄水連通ノズル92B・廃水連通ノズル92C・排水切換えコック92D・危険洗浄水排出ノズル92E)、及び給水タンク93を配設している。
【0023】
制御操作子91が配設されている制御操作パネル89上の制御操作子91の背後には、
図6に示すように、各種の電気的操作子
97(97A……
97C)が配設され、これにより試験員が制御操作パネル89上の電源スイッチ91D及びブレーカ91Cをオン操作することにより給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A~11Fを動作状態に設定して、洗浄タイマ91A及び廃水タイマ91Bに設定した動作時間に基づいて、洗浄対象ベッセル20の洗浄作業を実行できるようになされている。
【0024】
また給水ノズル92が設けられている制御操作パネル89の背後には、給水に必要なポンプとして、給水タンク93に導入された洗浄原水H4を洗浄対象ベッセル20に洗浄水H1として送出させる2台の洗浄水突出用ポンプ94B、94Cが設けられ、当該洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cによって制御原水H5として給水タンク93に貯溜した原水を勢良く突出させることにより洗浄効果を高めるようになされている。
【0025】
これに加えて、制御操作パネル89の給水ノズル92の背後には、洗浄ノズル21の排出水排出部21Aに得られる排出水H2を吸い込んで逆止弁47(
図2)を介して廃液H6として流し台23に流す1台の排出水引き出し用ポンプ94Aが設けられている。
【0026】
ここで、給水ノズル92の原水連通ノズル92Aは給水タンク93に直結され、これにより、試験員が、原水連通ノズル92Aに洗浄原水バルブ24に接続されている原水パイプ95Aを手動でノズル接続したとき、圧力浄水でなる洗浄原水H4が給水タンク93に供給され、このとき給水タンク93が貯留量制御動作をすることにより自動的に常時洗浄対象ベッセル20を洗浄操作するのに必要な所定水量、例えば20[L]の原水を貯留保持するようになされている。
【0027】
洗浄水連通ノズル92Bは洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cに直結され、これにより、試験員が、洗浄水連通ノズル92Bに洗浄対象ベッセル20の洗浄水パイプ95Bを手動でノズル接続したとき、洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cが給水タンク93に貯留保持されている洗浄原水H4を制御原水H5として引き出してこれを洗浄水H1として洗浄水パイプ95Bに突出送水するようになされている。
【0028】
また廃水連通ノズル92Cは排水切換えコック92Dを介して排出水引き出し用ポンプ94Aに接続され、これにより、試験員は、排水切換えコック92Dを廃液送出側に切り換えることにより洗浄対象ベッセル20から引き出された排出水H2を逆止弁47(47A、47BC、47DE、47F)を介して排水パイプ46(46A、46BC、46DE、46F)に排出し、これを廃液H6として流し台23に流すようになされている。
【0029】
これに対して試験員が排水切換えコック92Dを危険水送出側に切り換えたとき、排出水引き出し用ポンプ94Aによって洗浄対象ベッセル20から引き出された排出水H2を危険洗浄水排出ノズル92Eを介して危険水H9として危険水廃棄用タンク99に廃棄するようになされている(これを危険水洗浄と呼ぶ)。
【0030】
ここで、危険水H9は、洗浄対象ベッセル20が通常の洗浄水では洗浄し切れない程度に汚れていることを確認した場合に、試験員は、別途用意した洗浄薬液を洗浄対象ベッセルに手動注入して当該汚れを落す必要があり、この場合の洗浄液には流し台23から下水パイプ26に廃棄してはならないものがあり、この場合は当該汚れを落した廃液を危険水H9として危険水廃棄用タンク99に集めて廃液H6として下水パイプ26には流さずに安全廃棄処理を行う。
【0031】
上述のように、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE及び11Fにおいて給水タンク93には常時洗浄原水H4が所定の水量だけ貯留保持されていると共に、ベッセル洗浄ユニット19において洗浄対象ベッセル20に対する洗浄配水処理及び危険水廃棄処理を行うベッセル洗浄システム1の主要な構成部分として、ベッセル洗浄システム主要部100を構成しており、当該ベッセル洗浄システム主要部100における給水タンク93に貯留保持されている洗浄原水H4は、製剤溶出試験ユニット5の各製剤溶出試験に用いられる溶出用ベッセル13に対する溶出試験用水供給装置101に供給される。
【0032】
溶出試験用水供給装置101は、給水タンク93に貯留保持された洗浄原水H4を脱気装置102に溶出試験用原水H7として受けて脱気処理することにより溶出試験用水として用いる。
【0033】
試験員は、当該溶出試験用原水H7からメスシリンダ103を用いて各溶出試験用の溶出用ベッセル13に対して溶出試験に必要な水量(900[mL])を分注し、これにより製剤溶出試験ユニット5(5A1~5A3、5B1~5B3、5C1~5C3、5D1~5D3、5E1~5E3、5F1~5F3)のうち、製剤溶出試験を行なおうとする製剤溶出試験ユニット5の溶出用ベッセル13に溶出試験用水を供給する。
【0034】
この各製剤溶出試験ユニット5への溶出試験用水の供給作業は、試験員の都合により、洗浄対象ベッセル20に対する洗浄作業と必要に応じて同時に行われる。
【0035】
このようにして、各給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE及び11Fにおいて制御操作パネル89上の給水ノズル92に手動でノズル接続された原水パイプ95A並びに洗浄水パイプ95B、排出水パイプ95C、危険洗浄水排出ノズル92Eは、1台の溶出用ベッセル13から同じ島の他の溶出用ベッセル13に接続し直す際には、給水ノズル92の制御操作パネル89上の原水連通ノズル92Aに対する1本の原水パイプ95Aの接続状態及び危険洗浄水排出ノズル92Eに対する危険水廃棄用タンク99の接続状態は変更をせずに、新たに洗浄対象となる溶出用ベッセル13に対して洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cの先端部分を当該島の洗浄対象ベッセル20の位置の変更に応じて変更をして行けば良いようになされている。
【0036】
しかしながら、洗浄ノズル21の洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cの先端部の位置関係は根元部の位置関係(すなわち給水ノズル92の制御操作パネル89上の洗浄水連通ノズル92B及び廃水連通ノズル92Cの位置関係)とほぼ同じなので、洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cを2本束ねた状態で変更して行くことができる。
【0037】
ここで、給水タンク93には洗浄原水バルブ24から常時1台の洗浄対象ベッセル20を洗浄するに必要な水量以上に十分な水量(例えば20[L]程度)の洗浄原水が常時貯留保持されているので、洗浄対象ベッセル20として新たなものに切り換えるごとにそのために洗浄原水を新たに用意する必要をなくし得、その分試験員が洗浄作業を行うごとに事前に用意するといった重労働をしないで済む。
【0038】
従ってこの実施の形態によれば洗浄対象ベッセル20を変更するについて、変更操作を簡易に行うことができる。
【0039】
かかる洗浄動作を行うにつき、各給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fにおいては、当該洗浄動作と同時に、必要に応じて溶出試験用水供給装置101において、同時に洗浄対象ベッセル20以外の溶出用ベッセル13に対する溶出試験水による溶出試験を実行できる。
【0040】
(2)給水排水動作
図1及び
図2の構成において、ベッセル洗浄システム1の給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fの給水排水動作は、
図1との対応部分に同一符号を付して示す
図3に示すように、給水流路構造部40及び排水流路構造部41を用いて実行される。
【0041】
給水流路構造部40は、製剤溶出試験室2内において4つの島に分けて配置された作業台4A、4BC、4DE、4Fに設けられた給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fに対して洗浄原水バルブ24から供給される加圧原水H0を製剤溶出試験室2の天井に設けられた給水流路構造部40から常時給水できるようにし、これにより試験員が各作業台4A、4BC、4DE、4Fに配置されている製剤溶出試験ユニット5A1~5A3、5B1~5B3及び5C1~5C3、5D1~5D3及び5E1~5E3、5F1~5F3の溶出用ベッセル13を洗浄するために用いる洗浄水を、製剤溶出試験室2内で作業する試験員の頭上において天井位置を通る給水流路構造部40を介して常時保持する。
【0042】
この実施の形態の場合、給水流路構造部40は、製剤溶出試験室2の天井における作業台4A、4BC(4B及び4C)、4DE(4D及び4E)、4Fに対向する位置に4本のステンレス製パイプ又は耐圧ビニールホースでなる配水パイプ71A、71BC、71DE、71Fを配設してなり、その後方端部を配管接続具72A、72BC、72DE、72Fを介して後方主配管73に接続し、これにより洗浄原水バルブ24から供給される高圧純水でなる加圧原水H0を給水ホース74及び配管接続具75を介して後方主配管73に供給することにより配水パイプ71A、71BC、71DE、71Fを通じ、さらに配管接続具76A、76BC、76DE、76F及び配管パイプ77A、77BC、77DE、77Fを通じて給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fに配水する。
【0043】
実際上この実施の形態の場合における洗浄原水バルブ24から後方主配管73への加圧原水H0の供給は、作業台4Fに対して加圧原水H0を供給する配水パイプ71Fを利用して行い、これにより構造上の簡易化を図るようになされている。
【0044】
このようにして、
図2に示すように、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fにおいて、洗浄ノズル21の洗浄水パイプ95Bを介して洗浄対象ベッセル20に洗浄水H1を配水した状態において、洗浄ノズル21は製剤溶出試験ユニット5A1~5A3、5B1~5B3、5C1~5C3、5D1~5D3、5E1~5E3、5F1~5F3にそれぞれ設けられている6つの溶出用ベッセル13について試験員は、排水切換えコック92Dを排水パイプ46側に切り換えた状態において、1台ずつ洗浄ノズル21を移動操作をしながら1台ずつ洗浄するようになされ(これを通常洗浄と呼ぶ)、その排出水H2は、ベッセル洗浄ユニット19の排出水引き出し用ポンプ94Aから、排水パイプ46(46A、46BC、46DE、46F)の逆止弁47(47A、47BC、47DE、47F)を通って排水流路構造部41に放出される。
【0045】
排水流路構造部41は、
図3に示すように、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fにそれぞれ設けられている排水パイプ46A、46BC、46DE、46Fから導出される廃液H6(
図2)をそれぞれ逆止弁47A、47BC、47DE、47Fを介して前方主配管81に設けられた配管接続具83A、83BC、83DE、83Fに排出し、さらに当該排出された廃液H6を前方主配管81によって集めて配管接続具83DEから配管接続具84及び廃液管85を介して流し台23に流し、流し台23は下水パイプ26を通って廃液処理をする。
【0046】
かくして通常洗浄処理が行われ、各給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fから集められる廃液H6は、それぞれ逆止弁47A、47BC、47DE、47Fを介して排水流路構造部41の前方主配管81に流出されるので、当該一旦流出した各廃液を前方主配管81には戻さずに廃液管85を介して流し台23だけに流す完全な清浄域を形成している。
【0047】
また、
図2において、洗浄ノズル21に洗浄水H1を供給する洗浄水パイプ95Bと、洗浄ノズル21から排出水H2を排出する排出水パイプ95Cは、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fから洗浄しようとする洗浄対象ベッセル20までの間に洗浄水H1及び排出水H2を流すのに十分な長さ及び柔軟性をもち、これにより試験員が洗浄ノズル21を手に持って洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cを弛ませながら任意の位置に移動させることができる一対の移動用パイプとして機能する。
【0048】
すなわち例えば
図3の作業台4A上に配設された3台の製剤溶出試験ユニット5A1、5A2及び5A3について、製剤溶出試験ユニット5A1及び5A2間並びに5A2及び5A3間に洗浄ノズル保留具61A及び61Bを設け、当該洗浄ノズル保留具61A又は61Bに仮置きした洗浄ノズル21を用いて両側にある製剤溶出試験ユニット5A1及び5A2又は5A2及び5A3の溶出用ベッセル13を洗浄する場合は、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A(
図2)の一部を構成する洗浄ノズル21を洗浄ノズル保留具61A又は61B上に保持させた状態において、試験員は手前側又は奥行側の製剤溶出試験ユニット5A1及び5A2、又は5A2及び5A3の洗浄対象ベッセル20に対して1台ずつ洗浄ノズル21を挿入して洗浄処理を行う。
【0049】
このとき洗浄ノズル21はベッセル洗浄ユニット19の洗浄水突出用ポンプ94B、94Cによって先端側から洗浄水H1を溶出用ベッセル13内に勢良く放出すると共に、ベッセル洗浄ユニット19の排出水引き出し用ポンプ94Aによって洗浄ノズル21の根元側から排出水H2を吸い出すことにより溶出用ベッセル13内の洗浄水を強く撹拌して洗浄をしながら排出水排出部21Aから外部に放出させる。
【0050】
そして排水切換えコック92Dは排水パイプ46側に切り換えられているので、溶出用ベッセル13内で洗浄動作を終った洗浄水は廃液H6として逆止弁47Aを通って前方主配管81の配管接続具83Aに接続された排水パイプ46Aに排出される。
【0051】
かくして製剤溶出試験ユニット5A1又は5A2の当該1台の溶出用ベッセル13の洗浄が終り、試験員はその後当該1台の溶出用ベッセル13から洗浄ノズル21を引き抜いて同じ製剤溶出試験ユニット5A1又は5A2の残る5つの溶出用ベッセル13に順次挿入し直して洗浄動作を続けることによって、やがて全6台分の溶出用ベッセル13の洗浄が終ったとき、当該製剤溶出試験ユニット5A1又は5A2の洗浄動作が終了する。
【0052】
ここで、1台の溶出用ベッセル13を洗浄する際の当該溶出用ベッセル13に対して洗浄水H1を供給停止するタイミングは、試験員が
図5の制御操作子91の制御操作パネル89に設けられている洗浄タイマ91A及び廃水タイマ91Bを設定制御操作することにより決められる。
【0053】
以上は、作業台4Aの島の3台の製剤溶出試験ユニット5A1、5A2及び5A3の溶出用ベッセル13を洗浄する場合について述べたが、他の島について、先づ、作業台4B及び4C上に配設された6台の製剤溶出試験ユニット5B1~5B3及び5C1~5C3については、互いに隣り合う4台の製剤溶出試験ユニット5B1、5B2、5C1及び5C2の間と、5B2、5B3、5C2及び5C3の間とにそれぞれ洗浄ノズル保留具62Aと62Bとを設ける。
【0054】
また作業台4D及び4E上に配設された6台の製剤溶出試験ユニット5D1~5D3及び5E1~5E3については、互いに隣り合う4台の製剤溶出試験ユニット5D1、5D2、5E1及び5E2の間と、5D2、5D3、5E2及び5E3の間とにそれぞれ洗浄ノズル保留具63Aと63Bとを設ける。
【0055】
さらに作業台4F上に配設された3台の製剤溶出試験ユニット5F1~5F3については、互いに隣り合う2台の製剤溶出試験ユニット5F1及び5F2の間と、5F2及び5F3の間とにそれぞれ洗浄ノズル保留具64Aと64Bとを設ける。
【0056】
上述のように、製剤溶出試験室2内において各島に分けて設けられた製剤溶出試験ユニット5A1~5A3、5B1~5B3及び5C1~5C3、5D1~5D3及び5E1~5E3、5F1~5F3がそれぞれ有する溶出用ベッセル13に対して、試験員は、各島ごとに
図4に示す洗浄ノズル移動原理に従って洗浄ノズル21を移動させながら、溶出用ベッセル13を1台ずつ洗浄する。
【0057】
なお
図4は、
図1に示す製剤溶出試験室2に設けられている作業台4A~4Fを共通に作業台51として表わし、また各作業台4A~4Fに設けられている製剤溶出試験ユニット5A1~5A3……5F1~5F3を共通に52A~52Dと表わして、全ての製剤溶出試験ユニット5A1~5A3……5F1~5F3に対する洗浄作業を略線的に説明したものである。
【0058】
ここで、洗浄ノズル保留具61A及び61B、62A及び62B、63A及び63B、64A及び64Bは、試験員が各島について作業動線Yの方向に洗浄ノズル21を手動で移動させる際に各島の作業動線Yの途中で移動を休止させたいと考えたとき、洗浄ノズル21を必要に応じて洗浄ノズル保留具61A~61B……64A~64B上に手から放して置いておくことができるようにするために設けられており、これにより試験員は洗浄水供給部21B及び排出水排出部21Aに溜っている水の水量及び水圧に対する負担が過大にならない状態を保ちながら溶出用ベッセル13の洗浄作業を行い得る。
【0059】
実際上、
図3に示すように、作業台4Aの島には、3台の製剤溶出試験ユニット5A1、5A2、5A3が、間に2台の洗浄ノズル保留具61A及び61Bを挟みながら、作業動線Yの方向に1列に並べられており、また作業台4B及び4Cの島には、6台の製剤溶出試験ユニット5B1、5B2、5B3及び5C1、5C2、5C3が、間に2台の洗浄ノズル保留具62A及び62Bを挟みながら、作業動線Yの方向に2列に並べられており、また作業台4D及び4Eの島には6台の製剤溶出試験ユニット5D1、5D2、5D3及び5E1、5E2、5E3が、間に2台の洗浄ノズル保留具63A及び63Bを挟みながら、作業動線Yの方向に2列に並べられており、また作業台4Fの島には3台の製剤溶出試験ユニット5F1、5F2、5F3が、間に2台の洗浄ノズル保留具64A及び64Bを間に挟みながら、交差方向Xの方向に1列に並べられている。
【0060】
試験員は製剤溶出試験ユニット5A1~5A3……5F1~5F3の配列の間にある作業空所7A又は7B又は7Cに入って、
図4に示すように、その両側にある島を形成する作業台51上に作業動線Yと一致する方向に配置されている製剤溶出試験ユニット52A~52Dに対して1台の洗浄ノズル21を移動仮想線Wで示す方向に移動させながら洗浄対象となる溶出用ベッセル50を1台ずつ洗浄して行く。
【0061】
ここで、洗浄作業に使われる洗浄ノズル21は、
図2に示すように、ベッセル洗浄ユニット19の洗浄水突出用ポンプ94B及び94Cから溶出用ベッセル13に洗浄水を供給する洗浄水パイプ95Bと、ベッセル洗浄ユニット19の排出水引き出し用ポンプ94Aによって溶出用ベッセル13から排出水を引き出す排出水パイプ95Cとをベッセル洗浄ユニット19に接続した状態で1組に束ねて洗浄すべき溶出用ベッセル13に順次位置合せして行くことになるので、洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cは、その柔軟性に基づいて製剤溶出試験室2の天井から必要な長さだけ同時に引き出されると共に、弛んだ状態で、
図4に示す移動仮想線Wによって示す移動位置を通るノズルホース57を作業台51の上方位置に保持できるように洗浄ノズル移動機構49を形成する。
【0062】
図4において、作業台51上には左側の手前から右側の奥行方向に向かって同時に溶出試験動作をする複数の製剤溶出試験ユニット52A、52B、52C及び52Dが配設されているのに対応するように、ノズルホースガイドワイヤ53が一対のガイドワイヤフック54A及び54B(天井に設けられている)間に直線状態を維持するように固定され、当該ノズルホースガイドワイヤ53上に複数例えば3つのノズルガイドワイヤパイプ55A~55Cが貫通保持されている。
【0063】
各ノズルガイドワイヤパイプ55A、55B、55Cにはコイルスプリングを介してノズルホースガイドパイプ56A、56B、56Cが取り付けられ、このノズルホースガイドパイプ56A、56B、56Cに1組に束ねた洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cでなるノズルホース57を挿通保持させた状態にし、この状態のノズルガイドワイヤパイプ55A、55B、55Cを試験員がノズルホースガイドワイヤ53上を移動させたとき洗浄ノズル21を洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cと一体に移動仮想線W上を移動させる。
【0064】
ここで、
図4のノズルホース57は、
図2において、洗浄ノズル21の洗浄水供給部21B及び排出水排出部21Aから外部に導出される洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cで構成され、洗浄ノズル21を洗浄すべき1台の溶出用ベッセル13に挿入して又は引き抜いて次の1台の溶出用ベッセル13に洗浄ノズル21を移動させる際に、試験員は当該1組に束ねた洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cを手に持って作業を行う。
【0065】
図4において、ノズルホースガイドワイヤ53の延長方向は1つの島を構成する作業台51の延長方向、従って試験員が試験動作を行う作業動線Yの方向に沿うように洗浄のための洗浄ノズル21を移動させて行き、これにより1つの洗浄ノズル21が作業台51上に設けられている多数の洗浄対象となる溶出用ベッセル50を、試験員の試験作業を妨げることなく洗浄処理を行うことができることになる。
【0066】
図4において洗浄原水バルブ24から供給される洗浄原水H3は製剤溶出試験室2の天井に配設されたステンレスパイプ又は耐圧ビニールホースでなる洗浄原水供給パイプ60によって試験員の頭上を越えた位置からその両端に接続されている柔軟パイプでなる接続パイプ71AX及び71BXを通って給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fの給水タンク93に供給される。
【0067】
これにより給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fによって処理された洗浄水H1及び排出水H2が試験員の天井を通る柔軟パイプ72及び73を介して洗浄ノズル21に流される動作が洗浄ノズル21による洗浄が新たな洗浄対象となる溶出用ベッセル50に置き換えられるごとに繰り返される。
【0068】
かくして作業台51上に配設されている複数(
図4の場合4台)の製剤溶出試験ユニット52A~52Dのうち1番手前にある製剤溶出試験ユニット52Aの6台の溶出用ベッセル50についての洗浄処理が行われる。
【0069】
続いて試験員は
図4のノズルホース57を最初のノズルガイドワイヤパイプ55Aの位置に移動させて柔軟パイプ72及び73の柔軟性を利用して洗浄ノズル21を隣の製剤溶出試験ユニット52Bの洗浄対象となる溶出用ベッセル50に位置決めして洗浄処理を実行する。
【0070】
以下同様にして他の1台の製剤溶出試験ユニットのベッセルの洗浄を、ノズルホース57の柔軟性を利用してノズルホースガイドパイプ56B、56Cに順次移動させることにより隣の製剤溶出試験ユニット52C、52Dの溶出用ベッセル50の洗浄に移って行く。
【0071】
作業台51における洗浄ノズル21の以上の洗浄動作において、洗浄ノズル21による洗浄作業を休止したい場合には、洗浄ノズル21を洗浄ノズル保留具65に置く。
【0072】
上述のベッセル洗浄システム1の動作は、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fの溶出試験用水供給装置101の排水切換えコック92Dを排水パイプ46側に切り換えた状態の通常の洗浄動作であるが、洗浄対象ベッセル20の汚れを特定の洗浄液を加えて洗浄する危険水洗浄動作モード時においては、試験員は溶出試験用水供給装置101の排水切換えコック92Dを危険水廃棄用タンク99側に切り換えた状態で洗浄対象ベッセル20の洗浄作業を行う。
【0073】
このとき洗浄対象ベッセル20から排出される排出水H2は、排水切換えコック92Dを介して危険水廃棄用タンク99に危険水H9として排出され、試験員は当該危険水H9を通常の洗浄動作時の洗浄水とは区別して当該危険水H9を安全に廃棄させることができる。
【0074】
(3)給水・吸引・ベッセル洗浄ユニットの機能
上述の給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fによれば、
(a)制御操作子91及び給水ノズル92を試験員が手動操作できる制御要素を制御操作パネル89上に有する筐体90A内に洗浄水を供給・排水に用いる水処理部材を設けることにより、当該筐体90Aを多数の製剤溶出試験ユニット5間の必要に応じて選択した位置に容易に設置でき、
(b)試験員は、制御操作パネル89に設けた給水ノズル92に対して洗浄水パイプ95B及び排出水パイプ95Cを選択的に手動でノズル接続するだけで、作業台4A、4B、4C、4D、4E、4F上に配設された製剤溶出試験ユニット5の多数の溶出用ベッセル13のうち選択された1台に対して適性な小量(20[L]程度)な洗浄水の給水及び廃液の排水作業を行うことができ、
(c)かくするにつき、各溶出用ベッセル13ごとに別個に洗浄水の給水作業及び廃液の排水作業を行わずに済むので、試験員は多量の水を運ぶための作業をしないで済み、これにより作業時間の短縮や、設備の簡易化ができるといった効果を実現できる。
【0075】
因みに、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fを使用しない場合には、試験員は、洗浄しようとする溶出用ベッセル13ごとに多量の洗浄水を洗浄作業をする前に用意すると共に、その廃液の排水作業を行うことが不可欠になるが、給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット11A、11BC、11DE、11Fを用いることにより当該作業を軽減できる。
【0076】
その結果、上述のベッセル洗浄システム1によれば、
・1)溶出試験器の機器洗浄が必須となることにより、真正性に貢献でき、
・2)大量浄水タンク・廃棄水タンク運搬の必要性がなくなることにより、重労働から解放されることになり、
・3)溶出試験に集中できる環境整備によって試験品質の向上を図ることができ、
・4)試験準備の時間短縮によって試験数増加に対応することにより、生産性の向上を図ることができ、
・5)実験台スペース拡大と清浄水を常時供給できることにより、自由度を向上することができる。
【0077】
(4)第2の実施の形態
図2の実施の形態においては、給水タンク93からベッセル洗浄システム主要部100に対して、洗浄原水バルブ24からの加圧原水H0を供給するようにしたが、これに代え、
図7に示すように、非加圧浄水タンク110から得られる非加圧洗浄原水H10を、原水連通ノズル92Aを介して洗浄原水H4として、給水タンク93に供給する。
【0078】
この実施の形態の場合、給水タンク93には吸引ポンプ111が設けられ、当該吸引ポンプ111が非加圧浄水タンク110から非加圧洗浄原水H10を洗浄原水H4として吸引して給水タンク93に貯水保持させ、当該洗浄原水H4を制御原水H5としてベッセル洗浄ユニット19に供給させると共に溶出試験用原水H7として溶出試験用水供給装置101に供給させる。
【0079】
かくして
図7の構成によれば、洗浄原水H4として圧力水を用いることはなく、非圧力水によってベッセル洗浄ユニット19により洗浄対象ベッセル20に対する洗浄水を形成することができると共に、脱気装置102を介して溶出試験用水を形成することができる。
【0080】
(5)他の実施の形態
(5-1)上述の実施の形態においては、給水流路構造部40及び排水流路構造部41を製剤溶出試験室2の天井位置に配設することにより、ノズルホース57を試験員の作業動線Yの上方位置に配設して洗浄水H1及び排出水H2を供給及び排水するようにしたが、これに代え、給水流路構造部40及び排水流路構造部41の一方又は両方を試験室の床面3の床下側に設けて下方から供給するようにしても、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
(5-2)上述の実施の形態においては、手動で洗浄処理する洗浄ノズル21が溶出用ベッセル13を1台ずつ洗浄するようにしたが、これに代え、洗浄ノズル21として、同時に複数例えば3台の溶出用ベッセル13を洗浄できる構成のものを適用することにより、洗浄ノズル21を移動するごとに3台の溶出用ベッセル13を洗浄処理できるようにしても上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は製剤溶出試験装置に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1……ベッセル洗浄システム、2……製剤溶出試験室、3……床面、4A~4F……作業台、5、5A1~5A3、……5F1~5F3……製剤溶出試験ユニット、7A~7C……作業空所、11A~11F……給水・吸引・ベッセル洗浄ユニット、13……溶出用ベッセル、19……ベッセル洗浄ユニット、20……洗浄対象ベッセル、21……洗浄ノズル、22……脱気装置、23……流し台、24……洗浄原水バルブ、25……原水制御ユニット、26……下水パイプ、40……給水流路構造部、41……排水流路構造部、51……作業台、52A~52D……製剤溶出試験ユニット、61A、61B~64A、64B、65……洗浄ノズル保留具、73……後方主配管、81……前方主配管、89……制御操作パネル、90A……筐体、92A……原水連通ノズル、92B……洗浄水連通ノズル、92C……廃水連通ノズル、100……ベッセル洗浄システム主要部、101……溶出試験用水供給装置、110……非加浄水タンク。