IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センソリオンの特許一覧

特許7158723耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン
<>
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図1
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図2
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図3
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図4
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図5
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図6
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図7
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図8
  • 特許-耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】耳疾患の処置における使用のための(+)-アザセトロン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/538 20060101AFI20221017BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20221017BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20221017BHJP
   A61P 31/00 20060101ALN20221017BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20221017BHJP
   A61K 9/22 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
A61K31/538
A61P27/16
A61P29/00
A61P31/00
A61P37/02
A61K9/22
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018553953
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2017059058
(87)【国際公開番号】W WO2017178645
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】62/322,690
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16180192.3
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517403226
【氏名又は名称】センソリオン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ディハフジェルド-ジョンセン,ジョナス
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527430(JP,A)
【文献】特表2015-524408(JP,A)
【文献】特表2011-528036(JP,A)
【文献】Nature Reviews Drug Discovery,2002年,Vol.1,pp.753-768
【文献】Pharmac.Ther.,1990年,Vol.45,pp.309-329
【文献】YAKUGAKU ZASSHI,2008年,Vol.128,pp.649-655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(R)-I:
【化1】
の(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物と、
少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、
を含む、蝸牛の疾患、障害または状態の処置における使用のための医薬組成物であって、
前記蝸牛の疾患、障害または状態は、感音難聴でり、
前記医薬組成物は、蝸牛の有毛細胞の喪失を予防または軽減する
医薬組成物。
【請求項2】
式(R)-Iの(+)-アザセトロン:(-)-アザセトロンの少なくとも90:10w/w混合物または薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩が、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩および(+)-アザセトロン塩酸塩から選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
約0.01mg~約100mgの範囲の用量で投与される、請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
全身的または局所的に投与される、請求項1~4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
経口投与される、請求項1~5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
耳において直接投与される、請求項1~5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
蝸牛管または蝸牛の任意の他の部分に挿入される装置に装填される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
感音難聴が耳毒性化合物誘発性感音難聴である、請求項1~8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
耳毒性化合物誘発性感音難聴が白金誘発性感音難聴である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
白金誘発性感音難聴がシスプラチン誘発性感音難聴である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
癌と診断された対象に投与される、請求項1~11の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
癌と診断された前記対象が、白金に基づく化学療法を受けるのを待っているかまたは受けている、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
白金に基づく化学療法の前、その最中および/またはその後に投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記白金に基づく化学療法は、シスプラチン、カルボプラチンもしくはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせである、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
感音難聴が突発性感音難聴または騒音性感音難聴である、請求項1~8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
突発性感音難聴が、特発性の突発性感音難聴である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
即時放出組成物または持続放出組成物である、請求項1~17の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
口内分散性組成物である、請求項1~の何れか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳疾患の分野、特に耳疾患を処置するための方法に関する。本発明は、耳疾患の処置における使用のための、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物に関する。
【背景技術】
【0002】
2013年、世界保健機構は、約3億6千万人(世界人口の5%超)が多様な原因:騒音、遺伝子状態、出生時の合併症、ある種の感染性疾患、慢性耳感染、特定の薬物の使用および加齢による耳疾患に罹患していると推定した。この数は、西欧諸国では老齢人口とともに増加し、危険なレベルの騒音への曝露が増加している10代または若年成人で増加している。
【0003】
耳は、3つの主要な構造要素:外耳、中耳および内耳から構成され、これらは、音波を脳に伝わる神経インパルスに変換するために一緒に機能し、その神経インパルスが脳において音として知覚される。内耳はバランスを維持するためにも役立つ。
【0004】
中耳は、鼓膜および、小骨として知られ、鼓膜を内耳につなぐ一連の3個の小さな骨を含有する空気が満たされた小房からなる。内耳(迷路)は、聴覚の器官である蝸牛とバランスの器官である前庭系とからなる複雑な構造である。前庭系は球形嚢、卵形嚢および三半規管からなり、これらは全て、空間での頭部の位置および加速を判断するのに役立ち、したがってバランスを維持するのに役立つ。
【0005】
蝸牛はコルチ器官を収容し、これは、一部、「内耳有毛細胞」または「有毛細胞」と呼ばれる約20,000個の特殊化した感覚細胞からなる。これらの細胞は、蝸牛液に伸びる小さな毛のように細い突起(繊毛)を有する。内耳の卵円窓に中耳の小骨から伝えられる音の振動により、その液および繊毛の振動が起こる。蝸牛の異なる部分における有毛細胞は、異なる音の周波数に反応して振動し、その振動を神経インパルスに変換し、それが処理および解釈のために脳に送られる。内耳有毛細胞は内耳支持細胞により取り囲まれる。支持細胞は、内耳内の感覚有毛細胞の土台となり、少なくとも部分的に取り囲み、物理的にこれを支持する。支持細胞の代表例としては、内柱(柱状細胞)、外柱(柱状細胞)、内指節細胞、(ダイテルスの)外指節細胞、ヘルド細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、ベッチェル細胞、歯間細胞および聴歯(フシュケ)が挙げられる。
【0006】
らせん神経節は、蝸牛から脳へ音を表すものを送る神経細胞群である。らせん神経節ニューロンの細胞体は、蝸牛のらせん構造において見られ、中枢神経系の一部である。それらの樹状突起は有毛細胞の基底とシナプス接合し、それらの軸索は、一緒に束ねられて第8脳神経(前庭蝸牛神経)の聴覚部分を形成する。
【0007】
同様に、前庭の感覚有毛細胞は、頭部の動きにより誘発される内耳液中での動きに反応する。感覚有毛細胞反応は、ニューロンから前庭有毛細胞の基底へ、樹状突起のシナプス接合を通じて前庭神経節ニューロンにおいて神経インパルスに変換される。前庭ニューロンは、前庭蝸牛神経の前庭部分を形成するそれらの軸索束を通じて間隙を介して脳に頭部の位置および運動を表すものを送る。
【0008】
様々な状態が、耳のこれらの構造の1つに特異的に影響を及ぼして、聴覚またはバランスを損ない得:耳感染は、乳児および幼児において最も多い疾病であり;耳鳴、耳での轟音は、大騒音、薬または様々な他の原因の結果起こり得;メニエール病は内耳における液体の問題の結果であり得、その症状としては、耳鳴およびめまいが挙げられ;耳の気圧外傷は、気圧(空気)または水圧の変化による耳に対する傷害である。さらに、難聴および回転性めまいは、薬物に基づく聴器毒性、感染、外傷、虚血または先天性の原因により誘発され得る。このような状態は、耳の様々な部分に影響を与え得る。
【0009】
例えば、抗生物質、抗炎症剤またはNMDAアンタゴニストなど、耳疾患の処置について様々な医薬化合物が既に試験されてきた。全ての化合物が試験されたにもかかわらず、これらの薬物は、強い有害事象を発現するか、有効性がないか、初期症状にのみ有効性を示すが慢性状態では効果がないか、またはごく一部の患者コホートにしか有効性を示さないかの何れかである。したがって、ワイルドな範囲(wild range)の者に対して使用され得る耳疾患に対する新規の処置を発見することが必要とされる。
【0010】
特に、国際公開第2010/133663号は、損傷性前庭障害の処置のための、アザセトロンを含むセトロンファミリーからの化合物のエビデンスを提供する。
【0011】
本願は、驚くべきことに、エナンチオマー(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物が、ラセミアザセトロンまたはエナンチオマー(-)-アザセトロンと比較して、耳疾患の処置に対して良好なローカルドラッグ曝露および結果を提供することを証明する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的の1つは、耳疾患の処置における使用のための式(R)-I:
【化1】
の(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物である。
【0013】
本発明の別の目的は、式(R)-I:
【化2】
の(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、耳疾患の処置における使用のための組成物である。
【0014】
一実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩および(+)-アザセトロン塩酸塩から選択され、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩である。
【0015】
一実施形態において、本組成物は、約0.01mg~約100mgの範囲の用量の(+)-アザセトロンで投与するべきものである。別の実施形態において、本組成物は、約0.1mg~約100mgの範囲の用量の(+)-アザセトロンで投与するべきものである。
【0016】
一実施形態において、本組成物は、全身的にまたは局所的に、好ましくは全身的に、より好ましくは経口により投与するべきものである。
【0017】
一実施形態において、耳疾患は、内耳疾患、中耳疾患、外耳疾患、耳の感染、耳の炎症または耳の自己免疫障害を含む群から選択される。一実施形態において、耳疾患は、難聴、耳鳴および前庭障害から選択される。
【0018】
一実施形態において、難聴は感音難聴である。
【0019】
一実施形態において、感音難聴は、耳毒性化合物誘発性難聴、好ましくは白金誘発性難聴、より好ましくはシスプラチン誘発性難聴である。
【0020】
一実施形態において、本組成物は、癌と診断された対象に投与するべきものである。一実施形態において、癌と診断された対象は、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンまたはそれらの組み合わせの投与を待っているかまたはその投与を受けている。一実施形態において、本組成物は、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの前、その最中および/またはその後に投与するべきものである。
【0021】
一実施形態において、感音難聴は突発性感音難聴または騒音性難聴である。
【0022】
一実施形態において、前庭障害は損傷性前庭障害である。
【0023】
一実施形態において、本組成物は、即時放出組成物または持続放出組成物である。一実施形態において、本組成物は口内分散性組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、経口投与後の、終了時点での、外リンパ、内耳および末梢血漿(尾部血漿)中のアザセトロンのラセミおよび2つのエナンチオマーの濃度(nM)を比較する3つのグラフのセットである。処置群内の平均/時間点サブグループ(+/-SE)。
図2図2は、感音難聴(SSNHL)モデルにおける、聴覚脳幹反応(ABR)閾値シフトに対するアザセトロンのラセミおよび2つのエナンチオマーの効果を比較するグラフである。
図3図3は、SSNHLモデルにおける、聴覚脳幹反応(ABR)閾値シフトおよび歪成分耳音響放射(DPOAE)振幅損失に対する様々な用量でのアザセトロンの(+)エナンチオマーの効果を示す2つのグラフのセットである。ビヒクル対照に対するHolm-Sidak事後検定とともに二元分散分析(ANOVA)(処置群、刺激周波数)を使用して統計学的分析を行った。≦0.05のP値は統計学的に有意であった。
図4図4は、経口投与による音響外傷に対するアザセトロンラセミ体処置の効果を示す2つのグラフのセットである。
図5図5は、プラセボ(n=4)または26.4mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(n=5)での経口処置14日後の、シスプラチン点滴後の聴覚脳幹反応(ABR)閾値シフト(A)および歪成分耳音響放射(DPOAE)振幅損失(B)を示す2つのグラフのセットである。
図6図6は、プラセボ(n=4)または26.4mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(n=5)での経口処置14日後の、シスプラチン点滴後の蝸牛外有毛細胞の生存を示すグラフである。
図7図7は、プラセボ(n=6)、6.6mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(n=7)または13.2mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(n=5)での経口処置14日後の、シスプラチン点滴後の聴覚脳幹反応(ABR)閾値シフト(A)および歪成分耳音響放射(DPOAE)振幅損失(B)を示す2つのグラフのセットである。
図8図8は、プラセボ(n=5)、6.6mg/kg(n=5)または13.2mg/kg(n=5)(+)-アザセトロンベシル酸塩処置での経口処置14日後の、シスプラチン点滴後の蝸牛外有毛細胞の生存を示すグラフである。
図9図9は、経時的な(時)鼓室内カイニン酸注射により誘発される一側性前庭機能不全に対する(+)-アザセトロンベシル酸塩(5.6mg/kg;n=16)対プラセボ(n=18)の効果を示す2つのグラフのセットである。A、自発眼振。B、ロール角逸脱(Roll angle deviation)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本発明において、次の用語は次の意味を有する:
【0026】
数値の前にくる「約」は、その数の値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0027】
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、動物、好ましくはヒトに投与される場合に何ら有害なアレルギー性または他の不要な反応を生じない賦形剤を指す。これには、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などが含まれる。ヒト投与の場合、調製は、例えばFDA OfficeまたはEMAなどの規制当局により求められるように、無菌性、発熱性、一般的安全性、品質および純度の標準規格を満たすべきである。
【0028】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、フェレット、ウサギ、鳥または両生類を含むが限定されないペットである。一実施形態において、対象は、「患者」、すなわち女または男、成人または小児、医学的ケアを受けることを待っている者または医学的ケアを受けている者または、医学的手順の対象であった/対象である/対象となろう者または耳疾患、障害または状態の発症について監視されている者であり得る。
【0029】
「治療的有効量」は、顕著な負または有害な副作用を標的に対して引き起こすことなく、(1)耳疾患、障害または状態の発症を遅延させるかまたは予防する;(2)耳疾患、障害または状態の1つ以上の症状の進行、増悪または悪化を鈍化させるかまたは停止させる;(3)耳疾患、障害または状態の症状の寛解を引き起こす;(4)耳疾患、障害または状態の重症度または発生率を低下させる;または(5)耳疾患、障害または状態を治癒させることを目的とする薬剤のレベルまたは量を指す。治療的有効量は、予防的または予防行動のために、耳疾患、障害または状態の発症前に投与され得る。あるいは、またはさらに、治療的有効量は、治療行動のために耳疾患、障害または状態の発症後に投与され得る。一実施形態において、本組成物の治療的有効量は、耳疾患、障害または状態の少なくとも1つの症状を軽減することにおいて有効である量である。
【0030】
「処置する」または「処置」または「緩和」は、治療的処置および予防的もしくは予防手段の両方を指し;この目的は、標的とされる病的状態または障害を予防するかまたは鈍化させる(和らげる)ことである。処置を必要とするものとしては、既に障害があるものならびに障害を有する傾向があるものまたは障害を予防しようとするものが挙げられる。対象または哺乳動物は、治療的量の本発明の化合物または組成物の投与を受けた後、患者が次のうち1つ以上において観察可能な効果を示す場合、標的とされる病的障害に対して処置が成功する;(i)耳の機能の促進;(ii)難聴の軽減;(iii)回転性めまい、めまいおよび耳鳴などの特定の障害または状態と関連する症状のうち1つ以上のある程度の緩和;(iv)罹患率および死亡率低下および(v)クオリティーオブライフ問題の改善。障害における良好な処置および改善を評価するための上記パラメーターは、医師が精通する通常の手順により容易に測定可能である。
【0031】
「プロドラッグ」は、インビボでの生体内変化産物により生物学的に活性のある薬物が生成する、本発明の式Iの化合物の薬学的に許容可能な誘導体、例えばエステルなど、を指す。プロドラッグは、一般にバイオアベイラビリティの向上を特徴とし、インビボで生物学的に活性のある化合物に容易に代謝される。
【0032】
「プレドラッグ」は、薬物種を形成するように修飾されるあらゆる化合物を指し、この修飾は、体内または体外の何れかで、薬物の投与が指示される身体の領域にプレドラッグが到達する前または後の何れかで起こり得る。
【0033】
「溶媒和物」は、本明細書中で、本発明の式Iの化合物と1つ以上の薬学的に許容可能な溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体を記載するために使用される。「水和物」という用語は、溶媒が水である場合に使用される。
【0034】
「バイオアベイラビリティ」は、投与後に、薬物または他の物質が標的組織、例えば内耳、にとって利用可能となる(すなわち標的組織に到達する)割合および程度を指す。
【0035】
「前庭障害」は、前庭器官が関連する状態の膨大なファミリーを指す。これらの障害はそれらの推定上の起源により区別され得、したがって、(1)損傷性前庭障害および(2)非損傷性前庭障害と特定され得る。
【0036】
「損傷性前庭障害」は、内耳細胞および/または前庭神経の病変が存在するか、または障害の時間経過中に出現する、前庭障害を指す。この場合、前庭の機能性が損なわれる。しかし、前庭末端器官の形態機能的な変化は直接評価できない(MRIにより検出され得る大きな病変を除く)。逆に、前庭の機能喪失を評価するために、間接的な評価方法が現在使用されている。これらの検査方法は一般に、ENTクリニック/病院で行われる。これらの中で、発明者らは、ビデオ眼振法(VNG)および温度眼振検査または回転試験を使用した前庭-眼反射(VOR)の評価、ビデオヘッドインパルステスト(vHIT)および前庭誘発筋電位検査(VEMP)を取り上げ得る。損傷性前庭障害としては、次のものが挙げられる:
・内耳および/または前庭神経の炎症が可逆的および/または不可逆的損傷を誘発する前庭障害。この群からの状態の例としては、前庭神経炎、急性一側性前庭障害および前庭ニューロン炎が挙げられるが限定されない;
・内耳液に影響が及ぶ前庭障害(量、組成および/または内リンパの圧力の異常)。これらの障害は通常、疾患の時間経過中に病変を進展させる。この群からの状態の例は、メニエール病および二次性内リンパ水腫である。これらは耳鳴および難聴を付随する;
・前庭末端器官の傷害または病変により誘発される前庭障害。この状態の例は、ゲンタマイシンおよびシスプラチンなどの薬物による、前庭有毛細胞に対する、局所的虚血、興奮毒性、側頭骨に影響を与える外傷または耳毒性傷害により引き起こされる回転性めまいである;
・永久的な前庭欠損につながるが、耳鳴または難聴がない、未知の起源の反復性前庭障害。この群からの状態の例は前庭偏頭痛(または偏頭痛回転性めまい)である。
【0037】
「非損傷性前庭障害」は、内耳細胞および/または前庭神経における病変が観察され得ない、一時的およびしばしば反復性の回転性めまい発作により裏付けられる前庭障害を指す。この場合、機能テスト(VOR、VNG)を用いた回転性めまい発作との間で評価される前庭の機能性は健康な前庭と違いはない。非損傷性前庭障害としては以下のものが挙げられる。
・内耳の部分内で残屑が回収されている前庭障害。耳石と呼ばれるこの残屑は炭酸カルシウムの小さな結晶から構成され、これらが動くとき、これらは脳に偽のシグナルを送る。この状態の例としては、頭位回転性めまいおよび特に良性発作性頭位回転性めまい(BPPV)が挙げられるが限定されない;
・耳鳴、難聴または永久的な前庭欠損がない未知の起源の反復性前庭障害。
【0038】
本発明の目的の1つは、式I:
【化3】
の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物であり、式中、は、((+)-エナンチオマーに対応する)(R)-エナンチオマー、((-)-エナンチオマーに対応する)(S)-エナンチオマー、((+)-エナンチオマーと(-)-エナンチオマーの混合物に対応する)(R)エナンチオマーと(S)エナンチオマーのラセミ体または非ラセミ混合物を表す。
【0039】
式Iの化合物は、「アザセトロン」と呼ばれ、6-クロロ-3,4-ジヒドロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ-[3.2.1]-オクト-3-イル)-2,4-ジメチル-3-オキソ-2H-1,4-ベンゾオキサジン-8-カルボキサミドに対応し、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第4,892,872号に記載のように、N-(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン-8-イル)-6-クロロ-4-メチル-3-オキソ-1,4-ベンゾオキサジン-8-カルボキサミドとも呼ばれ得る。
【0040】
アザセトロンは、2個の立体異性体を生じさせ得る1個のキラル中心を有する。
【0041】
一実施形態において、本発明は、ラセミアザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を指す。
【0042】
一実施形態において、本発明は、アザセトロンの(R)-エナンチオマーまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を指す。アザセトロンの(R)-エナンチオマーは(R)-アザセトロンまたは(+)-アザセトロンと呼ばれ、式(R)-Iに対応する:
【化4】
【0043】
一実施形態において、本発明は、アザセトロンの(S)-エナンチオマーまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を指す。アザセトロンの(S)-エナンチオマーは(S)-アザセトロンまたは(-)-アザセトロンと呼ばれ、式(S)-Iに対応する:
【化5】
【0044】
特に好ましい実施形態において、本発明は、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物に関する。実際に、出願者らは、驚くべきことに、(+)-アザセトロンの投与の結果、ラセミアザセトロンまたは(-)-アザセトロンよりも内耳においてより高い局所曝露が起こることを示す。したがって、(+)-アザセトロンの耳におけるバイオアベイラビリティはラセミアザセトロンよりも大きい。一実施形態において、(+)-アザセトロンの耳におけるバイオアベイラビリティは、ラセミアザセトロンおよび/または(-)-アザセトロンの場合よりも少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0倍またはそれ以上大きい。
【0045】
本発明の化合物は、全ての多形体およびその晶癖、そのプレドラッグおよびプロドラッグおよび同位体標識される式I、好ましくは式(R)-Iの化合物を含め、本明細書中で前に定められるような、式I、好ましくは式(R)-Iの化合物を含む。
【0046】
本発明の化合物は薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩としては、その酸付加塩が挙げられる。好適な酸付加塩は無毒性塩を形成する酸から形成される。酸付加塩の例としては、ベシル酸塩、塩酸塩/塩化物、リンゴ酸塩、安息香酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシレート(esylate)、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチレート(naphytylate)、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トシル化物、トリフルオロ酢酸塩およびキシノホエート(xinofoate)塩が挙げられる。
【0047】
一実施形態において、好ましい酸付加塩としては、ベシル酸塩、塩酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、フマル酸塩および酒石酸塩;より好ましくはベシル酸塩、塩酸塩、リンゴ酸塩および安息香酸塩;さらにより好ましくはベシル酸塩、塩酸塩またはリンゴ酸塩が挙げられる。
【0048】
具体的な実施形態によれば、本発明は、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩、(+)-アザセトロン安息香酸塩、(+)-アザセトロンエタン-1,2-ジスルホン酸塩、(+)-アザセトロンフマル酸塩および(+)-アザセトロン酒石酸塩に関する。好ましい実施形態によれば、本発明は、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩、(+)-アザセトロン安息香酸塩に関し;より好ましくは、本発明は、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩に関する。
【0049】
式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩は、式Iの化合物を所望の酸と反応させることによって、または適切な酸との反応によるかまたは適切なイオン交換カラムにより式Iの化合物の1つの塩を別の塩に変換することによって調製され得る。これらの反応は全て一般的には溶液中で行われる。
【0050】
塩は溶液から沈殿し得、ろ過により回収し得るか、または溶媒の蒸発により回収し得る。塩におけるイオン化度は、完全なイオン化から非イオン化まで変動し得、その結果、共結晶が生じる。
【0051】
(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を合成するために使用され得る過程の例は、当技術分野で周知である。アザセトロンの合成において重要な文献およびバックグラウンド情報が利用可能である。例えば中国特許第CN101786963号および同第CN104557906号を参照し得る。
【0052】
一実施形態において、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物の合成は、アブイニシオ(ab initio)合成および/またはキラル分割を含む。
【0053】
一実施形態において、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物のアブイニシオ(ab initio)合成が実行される場合、少なくとも1つのラセミ出発化合物および/または中間体化合物がキラル化合物により置換される。
【0054】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を含むか、またはそれらからなるか、または基本的にそれらからなる組成物である。
【0055】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含むか、またはそれらからなるか、または基本的にそれらからなる医薬組成物である。
【0056】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/もしくは溶媒和物を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなる薬物である。
【0057】
一実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなる
【0058】
本明細書中で使用される場合、「本質的に~からなる」という用語は、組成物、医薬組成物または薬物に対して、本発明の少なくとも1つの化合物が、この組成物、医薬組成物または薬物内の、唯一の治療薬剤または生物学的活性を有する薬剤であることを意味する。
【0059】
一実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を含まない。一実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、アザセトロンの総重量に対する重量で、約40%w/w、30%w/w、20%w/wまたは10%w/w未満の(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは、アザセトロンの総重量に対する重量で、約9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%w/w未満の(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、より好ましくは、アザセトロンの総重量に対する重量で、約0.5%、0.4%、0.3%、0.25%、0.2%、0.15%、0.1%w/w未満の(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を含む。
【0060】
一実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、(+)-アザセトロンおよび(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物の混合物を含まない。
【0061】
一実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、(+)-アザセトロン:(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物の、少なくとも60:40w/w混合物、好ましくは少なくとも70:30、80:20または90:10w/w混合物、好ましくは(+)-アザセトロン:(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物の少なくとも95:5、96:4、97:3、98:2、99:1w/w混合物、より好ましくは(+)-アザセトロン:(-)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物の99.5:0.5、99.6:0.4、99.7:0.3、99.75:0.25、99.8:0.2、99.85:0.15、99.9:0.1w/w混合物を含む。
【0062】
薬学的に許容可能な賦形剤の例としては、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびエタノール溶液、デンプン、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール,ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩、酢酸塩、ゼラチン、コラーゲン、Carbopol(登録商標)、植物油などが挙げられるが限定されない。適切な保存剤、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤および緩衝剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどをさらに含み得る。
【0063】
Carbopol(登録商標)または「カルボマー」は、アリルスクロースまたはペンタエリスリトールアリルエーテルで架橋されるポリアクリル酸の高分子量ポリマーを指し、このポリマーは、ホモポリマーおよびコポリマーを含む。Carbopol(登録商標)の例としては、Carbopol(登録商標)910、Carbopol(登録商標)934、Carbopol(登録商標)940、Carbopol(登録商標)941、Carbopol(登録商標)974、Carbopol(登録商標)981、Carbopol(登録商標)Ultrezおよびポリカルボフィルが挙げられるが限定されない。
【0064】
本発明の組成物において使用され得る薬学的に許容可能な賦形剤の他の例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンなど、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系の物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが限定されない。
【0065】
さらに、薬学的に許容可能な賦形剤は、界面活性剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース);適切な担体、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物および植物油、例えばピーナツ油およびゴマ油などを含有する溶媒および分散媒;等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムなど;コーティング剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート80、二酸化チタンおよびレシチンなど;吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど;保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなど;緩衝液、例えばホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、二リン酸ナトリウムなど;等張化剤、例えばデキストロース、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなど;抗酸化剤および安定化剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムチオサルファイト(sodium thiosulfite)、チオ尿素など;非イオン性湿潤または清澄剤、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールなど;粘度調整剤、例えばデキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど;希釈剤、アジュバントなども含み得るが限定されない。
【0066】
本発明の別の目的は、耳疾患、障害または状態の処置のための、またはそれらの処置における使用のための、上述されるような化合物、組成物、医薬組成物または薬物である。
【0067】
したがって、本発明は、耳疾患、障害または状態を処置するための、または処置における使用のための、本明細書中、上記のような(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはその混合物)に関する。
【0068】
一実施形態において、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)は、耳疾患、障害または状態を予防するためのものである。別の実施形態において、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)は、耳疾患、障害または状態の症状を緩和するため、またはこれを治癒させるためのものである。
【0069】
本発明は、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなる、耳疾患、障害または状態を処置するための組成物にも関する。
【0070】
一実施形態において、本発明の組成物は、耳疾患、障害または状態を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の組成物は、耳疾患、障害もしくは状態の症状を緩和するため、または耳疾患、障害もしくは状態を治癒させるためのものである。
【0071】
本発明は、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなる、耳疾患、障害または状態を処置するための医薬組成物にも関する。
【0072】
一実施形態において、本発明の医薬組成物は、耳疾患、障害または状態を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、耳疾患、障害または状態の症状を緩和するため、または耳疾患、障害または状態を治癒させるためのものである。
【0073】
本発明はまた、(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を含むか、またはそれらからなるか、または本質的にそれらからなる、耳疾患、障害または状態を処置するための薬物にも関する。
【0074】
一実施形態において、本発明の薬物は、耳疾患、障害または状態を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の薬物は、耳疾患、障害または状態の症状を緩和するため、または耳疾患、障害または状態を治癒させるためのものである。
【0075】
一実施形態において,本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、蝸牛疾患、障害または状態;前庭疾患、障害または状態;内耳疾患、障害または状態;中耳疾患、障害または状態;外耳疾患、障害または状態;耳の感染;および耳の炎症を含むが限定されない群から選択される耳疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0076】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、難聴、耳鳴、蝸牛聴器毒性(すなわち蝸牛の損傷を誘発する毒性)、蝸牛興奮毒性誘発性の発生、蝸牛病変を伴う頭部外傷、蝸牛聴覚過敏症および蝸牛耳鳴を含むが限定されない、蝸牛疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0077】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、感音難聴、伝音難聴および混合型難聴(混合型難聴は感音性および伝音難聴両方の組み合わせである)を含むが限定されない難聴を処置するためのものである。
【0078】
感音難聴および伝音難聴は、ウェーバー・リンネ試験、耳鏡検査、オージオグラム、オージオメトリー、聴覚脳幹記録、光音響放射記録、単語認識試験および騒音下受聴検査(speech-in-noise test)を含むが限定されない、当業者にとって周知の試験に従い区別され得る。
【0079】
難聴を測定するための方法は当業者にとって周知である。このような方法の例としては、鼓膜聴力検査、音響反射試験、音叉検査、骨伝導検査、標準純音オージオグラム、聴性行動反応オージオメトリー、視覚強化オージオメトリー、条件遊戯オージオメトリー、ABR(聴覚脳幹反応)測定、DPOAE(歪成分耳音響放射)測定、TEOAE(一過性誘発耳音響放射)測定、騒音下受聴検査(speech in noise test)、単語理解検査などが挙げられるが限定されない。
【0080】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、突発性感音難聴(例えば特発性突発性難聴)、騒音誘発性感音難聴、薬物誘発性感音難聴(例えば耳毒性化合物誘発性難聴)、後天性感音難聴、加齢性難聴、先天性、遺伝性および遺伝的感音難聴(例えばアッシャー症候群、ペンドレッド症候群、ジャーベルおよびランゲニールセン症候群、アルポート症候群、モーア・トラネジャーグ(Mohr-Tranebjaerg)症候群およびコーガン症候群などであるが限定されない)(すなわち蝸牛の感覚有毛細胞、ニューロンおよび支持細胞または聴覚神経は、出生時に異常であったか、または生育中に異常になる)およびウイルスまたは細菌感染(CMVなどであるが限定されない)により誘発される感音難聴を含むが限定されない感音難聴を処置するためのものである。
【0081】
感音難聴の原因の例としては、耳毒性化合物、過剰な騒音曝露(例えば約70dBより大きい、80dB、90dB、100dB、110dB、120dB、130dBまたはそれ以上の騒音への曝露など)、加齢、炎症、感染病原体による内耳合併症(例えばウイルスおよび細菌感染など)、自己免疫(例えば自己免疫内耳疾患など)または脈管障害、疾病(高血圧および糖尿病を含むが限定されない)、頭部外傷、腫瘍または爆発への曝露が挙げられるが限定されない。
【0082】
感音難聴を引き起こし得る耳毒性化合物の例としては、化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、トランスプラチン、ネダプラチン、オルマプラチン、PtCl[R,RDACH]、ピリプラチン、ZD0473、BBR3464およびPt-1C3を含むが限定されない白金薬物などであるが限定されない)、アミノグリコシド(ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシンおよびトブラマイシンなどであるが限定されない)、ループ利尿薬(フロセミド、トルセミドおよびブメタニドなどであるが限定されない)、マクロライド系(エリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどであるが限定されない)、糖ペプチド(バンコマイシンなどであるが限定されない)代謝拮抗剤(メトトレキサートなどであるが限定されない)、抗マラリア薬(キニーネなどであるが限定されない)、抗レトロウイルス薬(アバカビル、AZT、デラビルジン、ジデノシン(didenosine)、エファビレンツ、エムトリシタビン、インジナビル、ラミブジン、ネフィナビル、ネビラピン、テノホビル、リトナビル、スタブジンおよびザルシタビンなどであるが限定されない)およびサリチル酸塩(アスピリンなどであるが限定されない)が挙げられるが限定されない。
【0083】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、耳毒性化合物誘発性感音難聴を処置するためのものである。一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、化学療法剤誘発性感音難聴を処置するためのものである。一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、トランスプラチン、ネダプラチン、オルマプラチン、PtCl[R,RDACH]、ピリプラチン、ZD0473、BBR3464および/またはPt-1C3、好ましくはシスプラチンにより誘発される感音難聴などであるが限定されない、白金誘発性感音難聴を処置するためのものである。
【0084】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、化学療法剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、トランスプラチン、ネダプラチン、オルマプラチン、PtCl[R,RDACH]、ピリプラチン、ZD0473、BBR3464およびPt-1C3を含むが限定されない白金薬物などであるが限定されない)、アミノグリコシド(ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシンおよびトブラマイシンなどであるが限定されない)、ループ利尿薬(フロセミド、トルセミドおよびブメタニシドなどであるが限定されない)、マクロライド系(エリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどであるが限定されない)、糖ペプチド(バンコマイシンなどであるが限定されない)代謝拮抗剤(メトトレキサートなどであるが限定されない)、抗マラリア薬(キニーネおよびその類似体などであるが限定されない)、サリチル酸塩およびその類似体(アスピリンなどであるが限定されない)、放射線処置、抗生物質製剤、興奮性神経毒、免疫抑制剤、β-ブロッカー、血管拡張薬、抗レトロウイルス薬(アバカビル、AZT、デラビルジン、ジデノシン(didenosine)、エファビレンツ、エムトリシタビン、インジナビル、ラミブジン、ネフィナビル、ネビラピン、テノホビル、リトナビル、スタブジンおよびザルシタビンなどであるが限定されない)、心血管系薬剤(例えばACE阻害剤)、抗血小板剤、造影剤、免疫グロブリン、マンニトール、NSAID、重金属、リチウム塩、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗てんかん薬、プロトンポンプ阻害剤、抗うつ薬、抗ヒスタミン(例えばジフェンヒドラミン、ドキシラミン)、抗菌スルホンアミド、ベンゾジアゼピン、駆除薬、神経毒性剤(例えばグルタメート、ビククリン、ボツリヌス毒素)、アルコール、重金属および薬物乱用(例えばコカイン、ヘロイン、ケタミン)により誘発される聴器毒性を含むが限定されない、化合物誘発性の聴器毒性を処置するためのものである。一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、放射線処置誘発性聴器毒性を処置するためのものである。
【0085】
感音難聴の炎症性の原因の例としては、自己炎症疾患(例えばマックル・ウェルズ症候群など)、化膿性迷路炎、髄膜炎、流行性耳下腺炎または麻疹が挙げられるが限定されない。
【0086】
感音難聴のウイルス性の原因の例としては、梅毒、流行性耳下腺炎または麻疹が挙げられるが限定されない。
【0087】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、突発性難聴、好ましくは突発性感音難聴(SSNHL)を処置するためのものである。
【0088】
突発性難聴は、次の聴力検査診断基準:3日以下以内に進行する、少なくとも3連続周波数にわたる、少なくとも約10dB、20dB、30dBまたはそれ以上の聴覚低下により定義され得る。一側性難聴の場合、発病前オージオメトリーは一般的には利用可能ではないので、難聴は、反対側の耳の閾値との比較または母平均との比較として定義され得る。
【0089】
突発性難聴(好ましくは突発性感音難聴(SSNHL))は、(限定されないが)前庭神経鞘腫(聴神経腫)、脳卒中、悪性腫瘍、内耳の血管虚血、外リンパ瘻孔または自己免疫の原因(IgEまたはIgGアレルギーを含むが限定されない。)または他の原因(例えば上記で上げられる原因など)からの結果であり得る。しかし、SSNHLの原因は発症時に同定されるのは患者のわずか10~15%に過ぎない。
【0090】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、後天性感音難聴、すなわち蝸牛の感覚有毛細胞、シナプスおよびニューロンまたは聴覚神経が出生時には正常であったが、その後に損傷を受けたもの、を処置するためのものである。
【0091】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、蝸牛の発達の欠如(形成不全)、染色体症候群、遺伝性難聴(アッシャー症候群、ペンドレッド症候群、ジャーベルおよびランゲニールセン症候群、アルポート症候群、モーア・トラネジャーグ(Mohr-Tranebjaerg)症候群およびコーガン症候群などであるが限定されない)、先天性真珠腫、家族性発達遅延(delayed familial progressive)、先天性風疹症候群および妊娠中の発生中胎児へのヒトサイトメガロウイルス(HCMV)伝染を含むが限定されない先天性難聴、好ましくは先天性感音難聴を処置するためのものである。
【0092】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、外耳、鼓膜、中耳腔または小骨の異常からの結果である伝音難聴を処置するためのものである。これは、耳垢栓塞、中耳液、中耳炎、異物、鼓膜穿孔、外耳炎からの耳道の浮腫、耳硬化症、外傷(蝸牛移植手術での電極挿入外傷からの残存聴覚の喪失または外科手術誘発性難聴など)または真珠腫(全てのこれらの状態は耳鏡検査により診断され得る)からの結果であり得る。
【0093】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は耳鳴を処置するためのものである。一実施形態において、耳鳴は難聴の症状である。
【0094】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、損傷性前庭障害および非損傷性前庭障害を含むが限定されない前庭疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0095】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、前庭偏頭痛、前庭神経炎(前庭ニューロン炎、ウイルスニューロン炎、迷路炎、ウイルス内リンパ性迷路炎、漿液性迷路炎、化膿性迷路炎を含むが限定されない)、急性一側性めまい症、回転性めまいおよびめまい(偏頭痛関連回転性めまい、自然発症突発性回転性めまい、良性発作性頭位回転性めまい、家族性突発性回転性めまい、加齢性めまいおよび不均衡、動揺病、下船病を含むが限定されない。)、前庭聴器毒性(化合物誘発性および薬物誘発性聴器毒性、すなわち前庭欠損につながる前庭機能の機能障害の誘発および上記で列挙されるが限定されない化合物により誘発されるものを含むが限定されない)、前庭毒性機能障害、水腫(内リンパ性水腫、二次性内リンパ水腫を含むが限定されない)、メニエール病(メニエール病の発作、慢性メニエール病を含むが限定されない)、瘻孔(外リンパ性瘻孔、迷路瘻孔を含むが限定されない)、外傷(迷路出血を伴う頭部外傷、気圧性外傷を含むが限定されない)、感染(慢性または急性迷路感染を含むが限定されない)、自己免疫内耳疾患、良性または悪性腫瘍(前庭神経鞘腫、聴神経腫を含むが限定されない。)、老人性前庭(presbyvestibula)、中耳の外科的処置後の前庭症候群、チャネル病、上半規管裂隙、内リンパ嚢または橋小脳角、運動失調(突発性運動失調を含むが限定されない。)、前庭水道拡大症、両側性前庭機能低下症、神経毒性めまい症、小児前庭障害、コーガン症候群、前庭聴覚過敏症、椎骨脳底動脈循環不全を含むが限定されない前庭疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0096】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、前庭偏頭痛、前庭神経炎(前庭ニューロン炎、ウイルスニューロン炎、迷路炎、ウイルス内リンパ性迷路炎、漿液性迷路炎、化膿性迷路炎を含むが限定されない)、急性一側性めまい症、回転性めまいおよびめまい(偏頭痛関連回転性めまい、自然発症突発性回転性めまい、家族性突発性回転性めまい、加齢性めまいおよび不均衡を含むが限定されない)、前庭聴器毒性(化合物誘発性および薬物誘発性聴器毒性、すなわち前庭欠損につながる前庭機能の機能障害を誘発し、上記で列挙されるが限定されない化合物により誘発されるものを含むが限定されない)、前庭毒性機能障害、水腫(内リンパ水腫、二次性内リンパ水腫を含むが限定されない)、メニエール病(メニエール病の発作、慢性メニエール病を含むが限定されない)、瘻孔(外リンパ性瘻孔、迷路瘻孔を含むが限定されない。)、外傷(迷路出血を伴う頭部外傷、気圧性外傷を含むが限定されない)、感染(慢性または急性迷路感染を含むが限定されない)、自己免疫内耳疾患、良性または悪性腫瘍(前庭神経鞘腫、聴神経腫を含むが限定されない)、老人性前庭(presbyvestibula)、中耳の外科的処置後の前庭症候群、チャネル病、上半規管裂隙、内リンパ嚢または橋小脳角、運動失調(突発性運動失調を含むが限定されない)、前庭水道拡大症、両側性前庭機能低下症、神経毒性めまい症、小児前庭障害、コーガン症候群、前庭聴覚過敏症、椎骨脳底動脈循環不全を含むが限定されない、損傷性前庭疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0097】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、良性発作性頭位回転性めまい、動揺病および下船病を含むが限定されない非損傷性前庭疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0098】
疾患、障害または状態が損傷性前庭疾患、障害または状態であるか否か、すなわち前庭の機能が損なわれているか否かを判定するための方法は、大きな病変を同定するためのMRIまたは前庭の機能性欠如の評価を可能にする間接的評価方法を含む。これらの方法は一般にENTクリニック/病院で行われ、ビデオ眼振法(VNG)および温度眼振検査または回転試験を使用した前庭-眼反射(VOR)の評価を含む。前庭-眼反射(VOR)の機能は、転置中の網膜上の視像を安定させることである。このVORの測定は、前庭系の機能性を調べるための好都合な方法を提供する。基本的に、赤外光投射技術による眼球運動の監視に基づくパラダイム(Sergiら、「Cisplatin ototoxicity in the guinea pig:vestibular and cochlear damage」Hear Res.2003 Aug;182(1-2):56-64)。水平および垂直の眼の反応を誘起するために、患者をその垂直および長軸を中心として暗所にて正弦波状に振動させる。前庭の何らかの機能障害は、誘起されるVNGの増加の変化を付随する。VORおよびVNGに加えて、前庭の機能障害にも関連する身体の姿勢の偏向を検出するために、姿勢図検査法を使用する。機能イメージング(MRIまたはCAT(コンピュータ断層撮影)および派生物)などの形態機能的な研究は、前庭末端器官内の重度の病変を検出するために使用され得る。前庭における傷害または病変の振幅を評価するために、前庭欠損の動物モデルにおいて、特別に適応させたVNG、VORおよび姿勢の検査を使用する。固定組織(前庭神経節および前庭末端器官)において従来の光学または電子顕微鏡を使用した組織学的研究も可能である。このような研究は殆どげっ歯類で行われる。
【0099】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、聴器毒性(化合物誘発性聴器毒性を含むが限定されない)、内耳感染、外傷(内耳の外傷、内耳損傷につながるブラント(blunt)または爆発誘発性頭部外傷を含むが限定されない)、内耳の腫瘍、内耳炎症、内耳細胞変性または加齢誘発性内耳細胞変性、自己免疫耳障害、蝸牛障害、前庭障害、メニエール病(メニエール病の発作、慢性メニエール病を含むが限定されない)、神経炎(前庭神経炎、前庭ニューロン炎、迷路炎を含むが限定されない)、急性一側性前庭障害、前庭偏頭痛、偏頭痛回転性めまい、中耳炎(慢性中耳炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎(滲出液を伴う中耳炎)、急性および慢性化膿性中耳炎を含むが限定されない)、乳様突起炎(急性および慢性乳様突起炎を含むが限定されない)、鼓膜(鼓膜(tympanic membrane)の穿孔、耳硬化症、上半規管裂隙症候群、耳痛、耳鳴、ミオクローヌスおよび下船病を含むが限定されない、内耳疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0100】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、難聴、耳鳴、中耳感染、メニエール病(メニエール病の発作、慢性メニエール病を含むが限定されない)、中耳炎(慢性中耳炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎(滲出液を伴う中耳炎)、急性および慢性化膿性中耳炎を含むが限定されない)、乳様突起炎(急性および慢性乳様突起炎を含むが限定されない)、アデノイド肥大、新生物、耳管内閉塞、中耳閉塞、鼓膜(鼓膜(tympanic membrane))の穿孔、真珠腫(先天性、原発性後天性、二次性後天性)、CANVAS症候群、鼓室硬化症、外傷(中耳の外傷、側頭骨骨折、気圧性外傷、頭部外傷、爆発誘発性外傷を含むが限定されない)、良性および悪性腫瘍(中耳の腫瘍、グロムス腫瘍、聴覚神経腫瘍(すなわち、聴神経腫、聴神経鞘腫、前庭神経鞘腫、第8神経腫)、扁平上皮癌を含む悪性新生物を含むが限定されない。)および耳痛を含むが限定されない、中耳疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0101】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、外耳感染、外耳のアレルギー、外耳の外傷、嚢胞、腫瘍、外耳炎(外耳炎(swimmer‘s ear))、急性外耳炎、慢性外耳炎、化膿性外耳炎、壊死性外耳炎、外耳道真菌症、軟骨膜炎、水疱性鼓膜炎、顆粒性鼓膜炎(granular myringitis)、耳帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)、接触性皮膚炎、耳湿疹、外耳道断裂、異物の存在、外毛根(皮脂)嚢胞、表皮嚢胞、外骨腫を含む良性病変および基底細胞上皮腫、扁平上皮癌を含む悪性病変および耳痛を含むが限定されない、外耳疾患、障害または状態を処置するためのものである。
【0102】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、内耳炎症、自己免疫耳障害、中耳の炎症、中耳炎(慢性中耳炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎(滲出液を伴う中耳炎)、急性および慢性化膿性中耳炎を含むが限定されない)、マックル・ウェルズ症候群、化膿性迷路炎、髄膜炎、流行性耳下腺炎または麻疹を含むが限定されない耳の炎症を処置するためのものである。
【0103】
一実施形態において、対象は哺乳動物である。一実施形態において、対象は、ペット、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、フェレット、ウサギ、鳥類または両生類などである。一実施形態において、対象はヒトである。
【0104】
一実施形態において、対象は男性である。一実施形態において、対象は女性である。
【0105】
一実施形態において、対象は成人、すなわち18歳以上(ヒト年齢)の対象である。一実施形態において、対象は10代、すなわち12~18歳(ヒト年齢)の対象、例えば12、13、14、15、16、17歳(ヒト年齢)の対象である。一実施形態において、対象は小児、すなわち12歳(ヒト年齢)未満の対象、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11歳(ヒト年齢)の対象である。
【0106】
一実施形態において、対象は約40~約100kgまたはそれ以上の体重の成人である。一実施形態において、対象は約20~約80kgまたはそれ以上の体重の10代である。一実施形態において、対象は約1~約40kgまたはそれ以上の体重の小児である。
【0107】
一実施形態において、対象は、医療ケアを受けるのを待っているかまたは受けているかまたは医学的手順の対象であった/対象である/対象となろう、または耳疾患、障害または状態の進行について監視される。
【0108】
一実施形態において、対象は癌と診断される/された。
【0109】
癌の例としては、神経芽細胞腫、肝芽腫、髄芽腫、骨肉腫、悪性胚細胞性腫瘍、上咽頭癌、肺癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、胃癌、腎臓癌、肝臓癌、膀胱癌、食道癌、脳癌、頭頸部癌、骨癌および白血病が挙げられるが限定されない。
【0110】
一実施形態において、対象は化学療法を受けるのを待っているかまたは受けている。
【0111】
化学療法は、癌と診断された個体に化学療法剤が投与される、一連の処置を指す。化学療法剤は、その癌を処置するために、癌を有する個体に有利に投与され得る薬物などの薬剤を含む。化学療法の例としては、白金に基づく化学療法および非白金に基づく化学療法が挙げられるが限定されない。
【0112】
白金に基づく化学療法の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、トランスプラチン、ネダプラチン、オルマプラチン、PtCl2[R,RDACH]、ピリプラチン、ZD0473、BBR3464およびPt-1C3が挙げられるが限定されない。
【0113】
非白金に基づく化学療法の例としては、ヌクレオシド類似体、葉酸代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイド、アルキル化剤、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、レチノイド、免疫調整剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤などが挙げられるが限定されない。
【0114】
一実施形態において、対象は癌と診断されている/診断され、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンまたはそれらの組み合わせの投与を受けるのを待っているかまたは受けている。
【0115】
一実施形態において、対象は、アミノグリコシド(ネオマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシンおよびトブラマイシンなどであるが限定されない)、ループ利尿薬(フロセミド、トルセミドおよびブメタニシドなどであるが限定されない)、マクロライド系(エリスロマイシンおよびアジスロマイシンなどであるが限定されない)、糖ペプチド(バンコマイシンなどであるが限定されない)代謝拮抗剤(メトトレキサートなどであるが限定されない)、抗マラリア薬(キニーネおよびその類似体などであるが限定されない)、サリチル酸塩およびその類似体(アスピリンなどであるが限定されない)、放射線処置、抗生物質製剤、興奮性神経毒、免疫抑制剤、β-ブロッカー、血管拡張薬、抗レトロウイルス薬(アバカビル、AZT、デラビルジン、ジデノシン(didenosine)、エファビレンツ、エムトリシタビン、インジナビル、ラミブジン、ネフィナビル、ネビラピン、テノホビル、リトナビル、スタブジンおよびザルシタビンなどであるが限定されない)、心血管系薬剤(例えばACE阻害剤)、抗血小板剤、造影剤、免疫グロブリン、マンニトール、NSAID、重金属、リチウム塩、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ阻害剤、抗てんかん薬、プロトンポンプ阻害剤、抗うつ薬、抗ヒスタミン(例えばジフェンヒドラミン、ドキシラミン)、抗菌スルホンアミド、ベンゾジアゼピン、駆除薬、神経毒性剤(例えばグルタメート、ビククリン、ボツリヌス毒素)またはそれらの組み合わせの投与を受けるのを待っているかまたは受けている。
【0116】
一実施形態において、対象は、アルコール、重金属、薬物(例えばコカイン、ヘロイン、ケタミン)またはそれらの組み合わせを使用しているかまたはそれに曝露されているかまたはそれに曝露されるリスクがある。
【0117】
一実施形態において、式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩;またはそれらを含む組成物、それらを含む医薬組成物またはそれらを含む薬物は、当業者により決定される用量で投与するべきものであり、各対象に対して個人ごとに適応させるべきものである。
【0118】
本発明の一実施形態において、式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩;またはそれらを含む組成物、それらを含む医薬組成物またはそれらを含む薬物は、治療的有効量で投与されるべきものである。
【0119】
式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩;またはそれらを含む組成物、それらを含む医薬組成物またはそれらを含む薬物の1日総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医師により決定されることが理解されよう。何れかの特定の患者に対する具体的な治療的有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物、患者の年齢、体重、総体的健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路および使用される具体的な化合物の排泄速度;処置の持続時間;使用される具体的な組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;および医学の技術分野で周知の要因などを含め、様々な要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるものより低いレベルの化合物の用量で開始して、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは十分に当技術分野の技術の範囲内である。しかし、式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩の1日投与量は、約0.1~約10000mg/成人/日、好ましくは0.1~約2000、より好ましくは約0.1~約500mg/成人/日、より好ましくは約0.1~約100mg/成人/日の広い範囲にわたり変動し得る。
【0120】
好ましくは、本組成物は、処置しようとする患者への投与量の症状による調整のために、0.1、0.5、1、10、20、50、100、250、500、1000または2,000mgの式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含有する。一実施形態において、式(I)化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は遊離塩基当量として表される。したがって、一実施形態において、本組成物は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mgの式(I)の遊離塩基化合物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンを含有する。一実施形態において、式(I)化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は塩および/または溶媒和物の当量として表される。したがって、一実施形態において、本組成物は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120または125mgの式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含有する。
【0121】
薬物は、通常、約0.1~約10000mgの式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩、好ましくは約0.1~約2000mg、より好ましくは約0.1~約500mg、より好ましくは約0.1~約100mgの式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含有し得る。一実施形態において、式(I)の化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は遊離塩基当量として表される。したがって、一実施形態において、薬物は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mgの式(I)の遊離塩基化合物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンを含有する。一実施形態において、式(I)の化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は、塩および/または溶媒和物当量として表される。したがって、一実施形態において、本薬物は、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120または125mgの式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含有する。
【0122】
式(I)の遊離塩基化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩の有効量は通常、約0.01mg/kg~約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.02mg/kg~20mg/kg体重/日、より好ましくは約0.05mg/kg~5mg/kg体重/日、より好ましくは約0.1mg/kg~2mg/kg体重/日、より好ましくは約0.5mg/kg体重/日の投与量レベルで供給され得る。一実施形態において、式(I)の化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの有効量は遊離塩基の当量として表される。一実施形態において、式(I)化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は塩および/または溶媒和物当量として表される。
【0123】
一実施形態において、式(I)の遊離塩基化合物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンの投与量は、約0.1~約500mgの遊離塩基の当量/成人/日、好ましくは約1~約200mg、より好ましくは約10~約100mg、より好ましくは約30~約60mgの遊離塩基当量/成人/日の範囲である。一実施形態において、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩の投与量は、約0.1~約500mgの塩および/または溶媒和物当量/成人/日、好ましくは約1~約200mg、より好ましくは約10~約100mg、より好ましくは約43~約87mgの塩および/または溶媒和物当量/成人/日の範囲である。
【0124】
一実施形態において、対象は、早産児、正期産児、小児および/または10代である。一実施形態において、対象は癌と診断されている/された。一実施形態において、対象は、化学療法、好ましくは白金に基づく化学療法、より好ましくはシスプラチンに基づく化学療法を受けるのを待っているかまたは受けている。次いで、一実施形態において、式(I)の化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩の有効量は通常、約0.1mg/kg~約2mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg~約1mg/kg、より好ましくは約0.5mg/kgの投与量レベルで供給され得る。一実施形態において、式(I)の遊離塩基化合物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンの最大1日投与量は、約0.1~約500mgの遊離塩基当量/日、好ましくは約1~約200mg、より好ましくは約10~約100mg、より好ましくは約30~約60mgの遊離塩基当量/日の範囲である。一実施形態において、式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩の最大1日投与量は、約0.1~約500mgの塩および/または溶媒和物当量/日、好ましくは約1~約200mg、より好ましくは約10~約100mg、より好ましくは約43~約87mgの塩および/または溶媒和物当量/日の範囲である。
【0125】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物の治療的有効量は、少なくとも1日1回、1日2回または少なくとも1日3回投与される。
【0126】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、約10mg~約50mgの各用量、好ましくは約20mg~約40mgの各用量、より好ましくは約30mgの遊離塩基当量の各用量の範囲の投与量で1日2回投与される。一実施形態において、各用量は、1つ以上の(特に2、3、4または5)単位形態、例えば1つ以上の経口単位形態などに対応し得る。
【0127】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、約20mg~約100mg、好ましくは約40mg~約80mg、より好ましくは約60mgの遊離塩基当量の範囲の総1日投与量で1日2回投与される。一実施形態において、各用量は、1つ以上の(特に2、3、4または5)単位形態、例えば1つ以上の経口単位形態などに対応し得る。
【0128】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、約20mg~約100mg、好ましくは約40mg~約80mg、より好ましくは約60mgの遊離塩基当量の範囲の投与量で1日1回投与される。
【0129】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、2、3、4、5または6日ごとに投与される。
【0130】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、週に2回、週に1回、2週間ごとまたは1か月に1回投与される。
【0131】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、健全な医学的判断の範囲内で担当医師により決定される時間にわたって、または対象の残りの一生にわたって、投与される。
【0132】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、26回、27回、28回、29回、30回またはそれ以上投与される。
【0133】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月または対象の残りの一生にわたり投与される。
【0134】
別の実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、少なくとも2;3;4;5;6か月間または対象の残りの一生にわたり毎月投与される。
【0135】
一実施形態において、対象が感音難聴、好ましくは突発性感音難聴と診断される/診断された場合、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、症状の出現後、または症例管理の最初のステージ後に、少なくとも2、3、4、5週間またはそれ以上、好ましくは少なくとも3、4または5週間、より好ましくは4週間にわたり投与される。一実施形態において、対象が感音難聴、好ましくは突発性感音難聴と診断される/診断された場合、症状の出現後または症例管理の最初のステージ後に、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物が、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35日間またはそれ以上、好ましくは少なくとも25、26、27、28、29、30または31日間、より好ましくは28日間にわたり投与される。
【0136】
一実施形態において、対象は、最初に、難聴または耳鳴を含むが限定されない症状の出現後、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物の投与を、最長1週間、好ましくは最長6、5、4、3、2または1日間、受ける。
【0137】
一実施形態において、対象が癌と診断される/診断された場合、化学療法、好ましくは白金に基づく化学療法、より好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの前、その最中および/またはその後に、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物が投与される。
【0138】
一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物が、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日間またはそれ以上など、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの前に投与される。
【0139】
一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物が、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日間またはそれ以上など、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの後に投与される。
【0140】
一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの直前および/または直後に投与される。
【0141】
一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、白金に基づく化学療法、好ましくはシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンに基づく化学療法またはそれらの組み合わせの前に1日、2日、3日、4日間またはそれ以上、およびその後に1日、2日、3日、4日、5日、6日間、1週間、2週間、3週間またはそれ以上にわたり投与される。一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、白金に基づく化学療法の前に少なくとも1日およびその後に少なくとも14日間投与される。一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、白金に基づく化学療法の前に1日およびその後に14日間投与される。
【0142】
一実施形態において、治療的有効量の本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、白金に基づく化学療法の各サイクルで、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル以上の白金に基づく化学療法サイクルのそれぞれで、好ましくは6サイクルの白金に基づく化学療法のそれぞれなどで、投与される。
【0143】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、全身的にまたは局所的に投与されるべきものである。
【0144】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、注射により、経口的に、局所的に、鼻腔に、吸入により、頬側に、直腸に、気管内に、経粘膜的に、経鼓膜的に、経皮的投与により、筋肉内に、または非経口投与により投与されるべきものである。
【0145】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、注射により投与されるべきものであり、好ましくは全身的に注射されるべきものである。全身注射に適応する処方物の例としては、液体溶液または懸濁液、注射前の、液体中の溶液または懸濁液に適切な固体形態が挙げられるが限定されない。全身注射の例としては、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、硝子体内および腹腔内注射またはかん流が挙げられるが限定されない。別の実施形態において、注射する場合、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は無菌状態である。無菌医薬組成物を得るための方法としては、滅菌ろ過、最終滅菌(乾熱、放射線、湿式加熱、ガス、ガンマ線)または無菌的処理を介した滅菌が挙げられるが限定されない。
【0146】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、全身的に投与されるべきものであり、好ましくは経口投与されるべきものである。経口投与に適応する処方物の例としては、固形、液体形態およびゲルが挙げられるが限定されない。経口投与に適応する固形の例としては、丸剤、錠剤、カプセル、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、圧縮錠剤、カシェー剤、ウェーハ、糖衣丸剤、糖衣錠または分散および/または崩壊性錠剤、粉末、経口投与前の、液体中の溶液または懸濁液に適切な固形および発泡性錠剤が挙げられるが限定されない。経口投与に適応する液体形態の例としては、溶液、懸濁液、飲用溶液、エリキシル、密封バイアル、頓服、水薬、シロップ剤および濃縮溶液が挙げられるが限定されない。
【0147】
別の実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は局所投与されるべきものである。局所投与に適応する処方物の例としては、スティック、ワックス、クリーム、ローション、軟膏、バーム、ゲル、マスク、リーブオンタイプの洗浄剤および/または類似のものなどが挙げられるが限定されない。
【0148】
一実施形態において、本発明の化合物、組成物、医薬組成物または薬物は、耳、特に内耳、中耳、外耳、蝸牛において直接、または経鼓膜または鼓室内投与によって前庭において投与されるべきものである。この投与経路は、耳において直接的で長期の効果を導入するために好ましいものであり得る。この投与は局所的にまたは注射により完遂され得る。このような投与のための送達技術は、耳に有効成分を運び、および/または送達するための装置または薬物担体の使用を含み得、有効成分が耳に拡散する場合、能動的に注入されるか、または注射される。このような投与に適応する処方物の例としては、持続放出のために本発明の組成物とともに耳に取り付けられ、装着される、オトウィック(otowicks)、蝸牛窓カテーテル、様々なタイプのゲル、フォーム、フィブリン、エマルション、溶液、パッチまたは他の薬物担体が挙げられるが限定されない。蝸牛管または蝸牛の何らかの他の部分に挿入される装置も含まれ得る。
【0149】
中耳-内耳境界組織構造、特に蝸牛窓膜を横切る本組成物の拡散は、様々な要因、例えば分子量、濃度、脂溶性、電荷および膜の厚さなどに依存する(Goycoolea M.およびLundman L.,Microscopy Research and Technique 36:201-211(1997)。
【0150】
一実施形態において、本明細書に記載される化合物は、即時放出形態で投与されるべきものである。
【0151】
一実施形態において、本明細書に記載される化合物は、持続放出形態で投与されるべきものである。別の実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、少なくとも1つの式Iの化合物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、より好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物の放出を制御する送達系を含む。
【0152】
別の実施形態において、本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、持続放出薬物送達剤、例えば生体分解性ポリマーなどを含む。本明細書中で使用される場合、持続放出薬物送達剤は、組成物、例えばポリマー性マトリクスであり、これは、対象における、例えば対象の外耳道における長時間にわたる治療剤の放出のための、リザーバーまたはビヒクルを提供する。
【0153】
いくつかの実施形態において、持続放出薬物送達剤は、対象に投与された後、例えば対象の外耳道に投与された後に粘度上昇が起こる、例えば高分子電解質または熱反応性ポリマーなどの物質である。
【0154】
当然のことながら、持続放出薬物送達剤は、温度変化(例えばポロキサマー)、高分子電解質錯体化(例えばキトサン/コンドロイチン硫酸)、ポリマー架橋(物理的および化学的の両方、例えばそれぞれレオロジー相乗性またはヒアルロン酸誘導体による)または光もしくは電磁波(例えばUVまたはマイクロ波)に対する感度、溶媒交換またはpHに反応して形成されるポリマー性物質を含むが限定されない様々な物質を含む。ある一定の実施形態において、持続放出薬物送達剤は親水性の物質である。
【0155】
いくつかの実施形態において、持続放出薬物送達剤はマトリクス形成剤である。マトリクス形成剤は一般に、周囲状態で液体であるが、対象に投与されると、マトリクス形成剤がゲル化する(すなわちより粘性が高くなる。)。様々な態様において、例えばマトリクス形成剤は、患者の外耳道に投与されると粘度を変化させ、鼓膜と接触するように、または鼓膜の近くに、インサイチュでリザーバーを形成する。鼓膜と接触しているリザーバーは、鼓膜表面での治療剤の曝露および濃度を最大化し、したがって鼓膜を横切る、および中耳および/または内耳への薬剤の流動性が向上する。代表的なマトリクス形成剤としては、高分子電解質錯体(例えばキトサン-コンドロイチン錯体)、熱反応性ゲル化剤(例えばポロキサマー)、プレポリマー、アルギン酸、非架橋ポリマーおよびモノマーが挙げられるが限定されない。
【0156】
本発明の組成物において、有効成分は、単独でまたは別の有効成分と組み合わせて、単位投与形態で、従来の医薬支持体との混合物として、動物およびヒトに投与され得る。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒剤および経口懸濁液または溶液、舌下および頬側投与形態、歯肉または粘膜または粘膜付着性処方物、エアゾール剤、スプレー、経鼓膜、移植物、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下腔内および鼻腔内投与形態および直腸投与形態を含む。
【0157】
一実施形態において、有効成分は、単独でまたは別の有効成分と組み合わせて、経口経路形態(即時または持続放出)で、好ましくは錠剤として投与され得る。
【0158】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、より好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物を含むか、またはそれらからなるかまたは本質的にそれらからなる。
【0159】
一実施形態において、式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、より好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物は、約0.1~10000ミリグラム、好ましくは約0.1~1000ミリグラム、より好ましくは約0.1~100ミリグラム、さらにより好ましくは約1~100ミリグラム/用量などを含むかまたはそれからなる経口経路投与用の錠剤内で処方され得る。
【0160】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、少なくとも約0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mgまたはそれ以上の式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物、より好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる。一実施形態において、式(I)の化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は遊離塩基当量として表される。したがって、一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、少なくとも約0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mgまたはそれ以上の式(I)の遊離塩基化合物、好ましくは遊離塩基(+)-アザセトロンを含むかまたはそれからなる。一実施形態において,式(I)化合物、好ましくは(+)-アザセトロンの量は塩および/または溶媒和物当量として表される。したがって、一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、少なくとも約0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mgまたはそれ以上の式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンの薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物、好ましくは(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を含むかまたはそれからなる。
【0161】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、1つ以上の崩壊剤、1つ以上の結合剤、1つ以上の滑沢剤および/または1つ以上のコーティングを含み得る。
【0162】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は、少なくとも1つの崩壊剤を含む。崩壊剤の例としては、微結晶セルロース(MCC)、カルボキシメチルデンプン-ナトリウム(PirimojelおよびExplotabなど)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、架橋CMC(Ac-Di-Solなど)、架橋PVP(Crospovidone、PolyplasdoneまたはKollidon XLなど)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、グアーガムが挙げられるが限定されない。
【0163】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は少なくとも1つの結合剤を含む。結合剤の例としては、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが限定されない。
【0164】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は少なくとも1つの滑沢剤を含む。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000~8000、タルク、硬化ヒマシ油、ステアリン酸およびその塩、グリセロールエステル、Na-ステアリルフマル酸塩、硬化綿実油などが挙げられるが限定されない。
【0165】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は少なくとも1つのコーティングを含む。コーティングの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート80、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP-ビニル酢酸コポリマー(PVP-VA)、ポリビニルアルコール(PVA)および糖が挙げられるが限定されない。さらなるコーティングは、色素、染料、レーキ、二酸化チタン、酸化鉄、抗タッキング剤(anti tacking agent)(タルクおよびPEG 3350、4000、6000、8000のような軟化剤など)などを含む。
【0166】
一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は即時放出錠剤である。一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は口内分散性錠剤である。一実施形態において、経口経路投与用の錠剤は持続放出錠剤である。
【0167】
本発明の組成物、医薬組成物または薬物は、注射が可能な処方のために薬学的に許容可能であるビヒクルを含有し得る。これらは、特に等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウムまたはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなど、またはこのような塩の混合物)または乾燥、特に凍結乾燥組成物または場合によって滅菌水もしくは生理食塩水の添加時に注射用溶液の構成を可能にする凍結乾燥物であり得る。
【0168】
注射用の使用に適切な医薬形態としては、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナツ油または水性プロピレングリコールを含む処方物;および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、本形態は無菌状態でなければならず、シリンジまたは針を介して容易に投与される程度に流動性がなければならない。これは、製造及び保管条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。
【0169】
遊離塩基または薬学的に許容可能な塩としての少なくとも1つの本発明の化合物を含む溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースなどと適切に混合された水中で調製され得る。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中および油中でも調製され得る。保管および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有し得る。
【0170】
本発明の化合物は、中性または塩形態で組成物に処方され得る。薬学的に許容可能な塩としては、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、リンゴ酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸とともに形成される酸付加塩が挙げられる。
【0171】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒でもあり得る。例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適正な流動性が維持され得る。微生物の作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど、様々な抗菌および抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合において、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用により、注射用組成物の吸収延長がもたらされ得る。
【0172】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中、本発明の化合物を必要とされる量で、1つまたはいくつかの上記の列挙された他の成分とともに組み込み、必要に応じて、続いて滅菌ろ過または溶液滅菌を可能にする他の処理技術を行うことによって調製され得る。一般に、分散液は、塩基性分散媒および上記で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに様々な滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、バルク溶液の処方とそれに続く、滅菌ろ過および、既にろ過滅菌されたその溶液から活性成分+何らかのさらなる所望の成分の粉末を生じさせる凍結乾燥技術である。
【0173】
処方時に、投与処方と適合するように、および治療的に有効であるような量で溶液が投与される。処方物は、上記の注射用溶液のタイプなど、様々な剤型で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用され得る。
【0174】
水溶液中の非経口投与に対して、例えば、溶液は必要ならば適切に緩衝化すべきであり、液体希釈剤は十分な食塩水またはグルコースで等張性を最初に付与する。液体組成物は、有機共溶媒、水性または油性懸濁液ありおよびなしの水溶液、食用油入りのエマルション、リポソームまたはナノエマルションならびに同様の医薬ビヒクルを含み得る。これらの特定の水溶液は、経鼓膜、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適切である。有利に、経鼓膜溶液のための処方物の粘度は、5000~25000mPas(ミリパスカル秒)、好ましくは15000~20000mPasであり、内耳への有効成分のより長期の投与が達成されるようになる。この関係において、使用され得る滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者にとって公知である。例えば、1回の投与量を1mLの等張NaCl溶液中で溶解し得、1000mLの皮下点滴療法液に添加されるか、または提案される点滴部位で注入されるかの何れかである。投与量、pH(好ましくは約5~9)および処方の幾分かの変更が、処置される対象の状態、投与経路、使用される化合物に依存して必ず行われる。
【0175】
投与責任者は、何れにしても、個々の対象に対する適切な用量を決定する。本発明の化合物は、約0.1~10000ミリグラム、好ましくは約0.2~1000ミリグラム、より好ましくは約0.3~100ミリグラム/用量などを含むために治療用混合物内で処方され得る。複数回投与も行われ得る。
【0176】
本発明の別の目的は、耳疾患、障害または状態の処置を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象において耳疾患、障害または状態を処置するための方法である。
【0177】
一実施形態において、本発明の方法は、耳疾患、障害または状態を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、耳疾患、障害または状態の症状を緩和するためまたは耳疾患、障害または状態を治癒させるためのものである。
【0178】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0179】
本発明の別の目的は、難聴、好ましくは感音難聴の処置を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象において難聴、好ましくは感音難聴を処置するための方法である。
【0180】
一実施形態において、本発明の方法は、難聴、好ましくは感音難聴を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、難聴、好ましくは感音難聴の症状を緩和するかまたは難聴、好ましくは感音難聴を治癒させるためのものである。
【0181】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0182】
本発明の別の目的は、耳毒性化合物誘発性難聴、好ましくは白金誘発性難聴の処置を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象において耳毒性化合物誘発性難聴、好ましくは白金誘発性難聴を処置するための方法である。
【0183】
一実施形態において、本発明の方法は、耳毒性化合物誘発性難聴、好ましくは白金誘発性難聴を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、耳毒性化合物誘発性難聴の症状、好ましくは白金誘発性難聴の症状を緩和するため、または耳毒性化合物誘発性難聴、好ましくは白金誘発性難聴を治癒させるためのものである。
【0184】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0185】
本発明の別の目的は、シスプラチン誘発性難聴の処置を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象においてシスプラチン誘発性難聴を処置するための方法である。
【0186】
一実施形態において、本発明の方法は、シスプラチン誘発性難聴を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、シスプラチン誘発性難聴の症状を緩和するため、またはシスプラチン誘発性難聴を治癒させるためのものである。
【0187】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0188】
本発明の別の目的は、前庭機能性の修復を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象において、好ましくは損傷性前庭疾患に罹患している対象において、前庭機能性を修復するための方法である。
【0189】
一実施形態において、本発明の方法は、損傷性前庭疾患を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、損傷性前庭疾患の症状を緩和するため、または損傷性前庭疾患を治癒させるためのものである。
【0190】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0191】
本発明の別の目的は、聴覚および/またはバランスの修復を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象において聴覚および/またはバランスを修復するための方法である。
【0192】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0193】
本発明の別の目的は、内耳での有毛細胞喪失軽減を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象の内耳において有毛細胞の喪失を軽減するための方法である。
【0194】
一実施形態において、本発明の方法は、内耳において有毛細胞の喪失を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、内耳において有毛細胞の喪失の症状を緩和するため、または内耳において有毛細胞の喪失を治癒させるためのものである。
【0195】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0196】
本発明の別の目的は、内耳での有毛細胞とニューロンとの間のシナプス喪失軽減を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象の内耳において有毛細胞とニューロンとの間のシナプスの喪失を軽減するための方法である。
【0197】
一実施形態において、本発明の方法は、内耳において有毛細胞とニューロンとの間のシナプスの喪失を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、内耳において有毛細胞とニューロンとの間のシナプスの喪失の症状を緩和するため、または内耳における有毛細胞とニューロンとの間のシナプスの喪失を治癒させるためのものである。
【0198】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0199】
本発明の別の目的は、内耳におけるニューロン喪失軽減を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象の内耳におけるニューロンの喪失を軽減するための方法である。
【0200】
一実施形態において、本発明の方法は、内耳におけるニューロンの喪失を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、内耳におけるニューロンの喪失の症状を緩和するため、または内耳におけるニューロンの喪失を治癒させるためのものである。
【0201】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0202】
本発明の別の目的は、内耳での支持細胞喪失軽減を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれからなる、それを必要とする対象の内耳における支持細胞の喪失を軽減するための方法である。
【0203】
一実施形態において、本発明の方法は、内耳における支持細胞の喪失を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、内耳における支持細胞の喪失の症状を緩和するかまたは内耳における支持細胞の喪失を治癒させるためのものである。
【0204】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0205】
一実施形態において,有毛細胞、シナプス、ニューロンまたは支持細胞の喪失は、音響外傷、例えば大騒音曝露、慢性騒音曝露、加齢、疾病(高血圧および糖尿病を含むが限定されない)、耳毒性薬、頭部外傷、腫瘍、爆発への曝露、自己免疫内耳疾患、特発性の原因、ウイルスまたは細菌感染によって誘発され得る。
【0206】
本発明の別の目的は、耳における炎症(内耳、中耳、蝸牛および/または前庭における炎症を含むが限定されない)の阻害を必要とする対象に治療的有効量の少なくとも1つの式Iの化合物または薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物を投与することを含むかまたはそれらからなる、それを必要とする対象の耳における炎症を阻害するための方法である。
【0207】
一実施形態において、本発明の方法は、耳における炎症(内耳、中耳、蝸牛および/または前庭における炎症を含むが限定されない)を予防するためのものである。別の実施形態において、本発明の方法は、耳における炎症(内耳、中耳、蝸牛および/または前庭における炎症を含むが限定されない)の症状を緩和するかまたは耳における炎症(内耳、中耳、蝸牛および/または前庭における炎症を含むが限定されない)を治癒させるためのものである。
【0208】
一実施形態において、本方法は、対象に治療的有効量の遊離塩基(+)-アザセトロンまたは薬学的に許容可能なその塩および/または溶媒和物(特に(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロンリンゴ酸塩またはそれらの混合物)を投与することを含むかまたはそれからなる。
【0209】
好ましくは、本発明の方法は、(+)-アザセトロンベシル酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩または(+)-アザセトロンリンゴ酸塩を対象に投与することを含むかまたはそれからなる。
【0210】
実施例
次の実施例によって本発明をさらに説明する。
【0211】
実施例1:薬物動態実験
材料および方法
研究への試験動物割り当て
Janvier(Janvier、Le Genest-St-Isle)から2016年1月28日に受け取った72匹の雄Wistarラットを本研究に割り当てた。これらを、1つの被験物質あたり1群で各24匹の3群に分けた。6つの最終時間点に従い、各群を7つのサブグループに分けた。
【0212】
72匹のWistarラットに対して、被験物質、ラセミアザセトロン塩酸塩、アザセトロン塩酸塩(+)またはアザセトロン塩酸塩(-)の経口単回投与を行い、異なる時点で屠殺して、内耳、外リンパおよび血漿において被験物質の曝露を評価した。
【0213】
ラセミアザセトロン群:24匹の雄Wistar、ラット4匹/時点:10mg/kgアザセトロンHClをNaCl 0.9%中で溶解させた。5mL/kg p.o.として投与;
アザセトロン(+)群:24匹の雄Wistar、ラット4匹/時点:10mg/kg(+)-アザセトロンHClをNaCl 0.9%中で溶解させた。5mL/kg p.o.として投与;
アザセトロン(-)群:24匹の雄Wistar、ラット4匹/時点:10mg/kg(-)-アザセトロンHClをNaCl 0.9%中で溶解させた。5mL/kg p.o.として投与。
【0214】
各被験物質に対して6つの最終時点があった。投与後15/30/60/120/240/480分の時点:尾部からの末梢血漿の試料採取を行った。0.25mL/ラットの160mg/mLペントバルビタール溶液のi.v.投与によって動物を屠殺した。屠殺後、心臓血液および両鼓室胞(左右)の試料採取を行った。
【0215】
バイオ分析のための試料調製
外リンパおよび内耳試料
両鼓室胞(左右)を回収したが、左のみを外リンパおよび内耳分析のために使用した。必要な場合は、将来的なニーズのために右鼓室胞を-20℃で保管した。動物ID1および4に対して、外リンパおよび内耳の試料採取のために右鼓室胞を使用した。
【0216】
左鼓室胞を新鮮解剖した。簡潔に述べると、耳の開口部を介して鼓室胞を開放して、蝸牛周囲の骨を露出させ、その後、骨の先端を鉗子で除去し、10μLピペットチップを挿入して、外リンパ液を引き抜いた。
【0217】
蝸牛の先端の露出時に、2μLの外リンパ(液)を鼓室胞から回収し得た。8μLの水の添加によって外リンパを10μLにし、次いで30μLのアセトニトリルの添加を介して抽出した。その後、試料を遠心分離し、HPLC-MSオートサンプラーに適切なガラスバイアルに上清を移した。
【0218】
外リンパの回収後、細い鉗子で内耳および蝸牛構成要素の骨を除去し、風袋重量を測定したエッペンドルフチューブに添加した。回収物の重量を測定し、水の添加によって10mgにして、抽出まで氷上に置いた。30μLのアセトニトリルを添加し、超音波浴中でチューブを温置し、その後、それらを遠心分離し、HPLC-MSオートサンプラーに適切なガラスバイアルに上清を移した。この工程または内耳の骨の除去において、媒体中でそれらを細かく分散させ、鉗子により破壊した。(組織が非常に低体積であり、その構造が微細な故に、プラスチックおよび媒体に対する喪失の可能性に対して、個別の粉砕はリスクがあると考えられる。この物質は非常に微細なものであり、骨粒子は小さく、したがって、媒体に対して提供される界面は短いものしかない。脂肪の不在および溶媒中での温置は、活性成分の十分な溶解度をもたらすことを目的としている)。
【0219】
バイオ分析のための試料調製において使用されるアセトニトリルは、HPLC-MS分析のための内部標準を含有した。
【0220】
尾部血漿
内部標準を含む30μLのアセトニトリルを各10μLの血漿試料に添加した。アセトニトリルの添加後、ボルテックスによって試料を混合し、さらに遠心分離した。HPLC-MSオートサンプラーに適切なガラスバイアルに上清を移した。
【0221】
心臓血漿
必要とされる場合、将来の任意選択の分析のために心臓血液からの血漿試料を-20℃で保管する。
【0222】
LC-MS/MS装置
LCシステムは、PAL HTS-xtオートサンプラーと一緒にバイナリポンプおよびカラムオーブンを備えたAgilent 1260液体クロマトグラフィーを含んだ。これは、ESIインターフェースおよび統合型切り替え弁(質量分光分析)付きのAB SCIEX TRIPLE QUADTM 4500(三連四重極)機器に連結される。Applied Biosystems Inc.からのAnalyst Softwareを使用してデータ収集および制御システムを作製した。
【0223】
標準曲線のために使用される、被験物質、アザセトロン塩酸塩は、スポンサーにより提供された。水およびアセトニトリルはHPLCグレードであった。全ての他の溶媒および化学物質は分析グレード以上であった。
【0224】
結果
Wistarラットにおけるラセミアザセトロン、(+)-アザセトロン塩酸塩および(-)-アザセトロン塩酸塩の単回経口投与後のアザセトロンの内耳への血漿動態学および分布
【0225】
この研究は、ラセミアザセトロン塩酸塩、(+)-アザセトロン塩酸塩および(-)-アザセトロン塩酸塩の単回経口用量(10mg/kg)の投与後のアザセトロンへの曝露を比較するために行った。内耳試料における被験物質の濃度をHPLC-MSにより分析し、既知の濃度標準曲線(表1)との比較により定量した。
【表1】
【0226】
外リンパ、内耳および末梢血漿中のアザセトロン塩酸塩のラセミおよび2つのエナンチオマーの濃度を図1および表2に示す。
【表2】
【0227】
各化合物の単回当量経口用量の投与後、ラセミアザセトロンまたは(-)-アザセトロンの投与後に観察されたものよりも大きいアザセトロンへの曝露(総AUC)が(+)-アザセトロン投与後の外リンパ、内耳および血漿中で観察された。
【0228】
実施例2:騒音性難聴における(+)-アザセトロンベシル酸塩の活性
材料および方法
動物
実験は全て、French Ministry of Agriculture regulations and European Community Council Directive no.86/609/EEC,OJL 358に従い、7週齢の雄Wistarラット(CERJ,Le Genest,France)を使用して行った。ラットには標準的飼料を自由摂取させ、12時間の明暗サイクル下で維持した。
【0229】
オージオメトリー
聴覚脳幹反応(ABR)および歪成分耳音響放射(DPOAE)は、実験期間を通して、音減衰キュービクル(Med Associates Inc.,St.Albans,VT,USA)内で90mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジンを使用して深く麻酔をかけ、35℃循環温熱パッド上に置いた動物を用いて、RZ6聴覚ワークステーション(Tucker-Davis Technologies,Alachua,FL,USA)を使用して記録した。
【0230】
ABR記録のために、3本のステンレス鋼針電極を各動物の頭頂、右乳様突起および右後肢の皮下に留置した。再現性のある反応が記録され得なくなるまで、減衰強度でクローズドフィールド配置(closed-field configuration)(Tucker-Davis Technologies,Alachua,FL,USA)において較正MF-1スピーカーを使用して、8、16および24kHzのパイプ音(21/sの速度で与えられる5msec持続時間)を右耳に送達した。ABR閾値近くで、5dB段階で1000回の音響刺激に対する反応の平均を算出した。反応に対して3kHzで低域フィルタリングを行った。
【0231】
クローズドフィールド配置(closed-field configuration)(Tucker-Davis Technologies,Alachua,FL,USA)において、2つの較正MF-1スピーカーにより送達される音響刺激でER10B+低騒音DPOAEマイクロフォン(Etymotic Research,Inc.,Elk Grove Village,IL,USA)を使用して、DPOAEを記録した。1.2のf2/f1比率を用いて固定刺激レベル(L1=L2=70dB SPL)でDPOAEを記録した。4、8、16、24および32kHzで反応を記録した。
【0232】
音響外傷
3回転/分で回転する30cm直径プラットフォーム(Aqila Innovation,Valbonne,France)上に置いた特注の円形ケージの個々の区画に入れた4匹のラットの群において、120dBオクターブ帯域騒音(8~16kHz)に動物を2時間曝露した。RZ6 SigGenソフトウェアにより生成された較正オクターブ帯域騒音をブリッジモードでCrown D-75増幅器によりさらに増幅し(Crown Audio,Elkhart,IN,USA)、プラットフォームの中心から各10cmで回転プラットフォームの39cm上に配置した4つのBeyma CP16圧縮ツイーター(Acustica Beyma S.L.,Moncada,Valencia,Spain)によって伝達した。
【0233】
結果
耳疾患におけるラセミアザセトロン、(+)-アザセトロンおよび(-)-アザセトロンの腹腔内投与の比較効果
7週齢の雄Wistarラットを用いてランダム化したビヒクル-対照試験において、音響外傷後にSSNHLを軽減するためのアザセトロン塩酸塩のラセミおよび2つのエナンチオマーの能力を評価した。ラットをランダム化し、音響外傷直後に腹腔内注射により4.22mg/kgのアザセトロンのラセミ、2つのエナンチオマーまたはビヒクル対照(生理食塩水)を投与し、その後、全部で14日間にわたり毎日投与した。音響外傷の2日前に、各動物に対して聴覚脳幹反応(ABR)(8、16および24kHz)を用いたベースライン聴力検査読み取りを記録した。音響外傷を誘発するために、動物を120-dBオクターブ帯域騒音(8~16kHz)に2時間曝露した。
【0234】
聴覚閾値シフトに対する結果を図2で提供する。
【0235】
データは、ビヒクル対照群と比較した場合、試験周波数にわたり、ラセミアザセトロンまたは(-)-エナンチオマーよりも(+)エナンチオマーがABR閾値シフトを軽減させたことを示す。
【0236】
外傷後の(+)-アザセトロンの経口投与の予防効果
7週齢の雄Wistarラットにおいてランダム化ビヒクル対照試験で、音響外傷後にアザセトロン塩酸塩の(+)-エナンチオマーがSSNHLを軽減する能力を評価した。ラットをランダム化して、音響外傷直後に強制経口投与によって5、10または20mg/kgのアザセトロン塩酸塩の(+)-エナンチオマーまたはビヒクル対照(生理食塩水)を投与し、続いて全部で14日間毎日投与した。音響外傷の2日前に、各動物に対して、聴覚脳幹反応(ABR)(8、16および24kHz)を用いたベースライン聴力検査読み取りおよび歪成分耳音響放射(DPOAE)(4、8、16、24および32kHz)を記録した。外傷後オージオメトリー記録を第14日に行った。
【0237】
聴覚閾値シフトに対する結果を図3で提供する。
【0238】
データは、10および20mg/kgの(+)エナンチオマーがベースラインから第14日まで、それぞれ平均35.1%および30.5%、ABR閾値シフトを有意に軽減したことを示し、それぞれ聴覚で平均22.3および19.4dBの改善が示唆される。ビヒクル対照群と比較した場合、(+)エナンチオマーの10および20mg/kg用量は、American Speech Language Hearing Association(ASLHA)基準(ASLHA,2015)に基づき、やや重度(56~70dB)から軽度/中度(26~40dB/41~55dB)の難聴(平均)を軽減する処置効果を明らかにする。
【0239】
難聴における(+)エナンチオマーの効果をさらに理解するために、耳音響放射を評価した。音響外傷実験からの動物を使用して、5、10または20mg/kgの(+)エナンチオマーの投与後に耳音響放射を評価した。
【0240】
(+)エナンチオマー(20mg/kg)は、ベースラインから第14日までに平均51.2%、DPOAE振幅損失を有意に軽減し、このことから、蝸牛での外有毛細胞喪失の有意な軽減が示唆される(図3)。
【0241】
ラセミアザセトロンの経口投与の効果
音響外傷後にSSNHLを軽減するための経口投与によるラセミアザセトロン塩酸塩の能力も評価した。音響外傷直後に強制経口投与により10mg/kgのアザセトロンまたはビヒクル対照(生理食塩水)をラットに投与し(上記と同じプロトコール)、次いで全部で14日間毎日投与した。
【0242】
ABR閾値およびDPOAE振幅損失に対して、ラセミアザセトロン塩酸塩の予防効果に対する小さな傾向が観察された(図4)が、同じ用量の(+)-アザセトロンでの処置とは異なり(図3)、これは統計学的な有意性には達しなかった。
【0243】
実施例3:シスプラチン誘発性難聴および聴器毒性における(+)-アザセトロンベシル酸塩の活性
雌Wistarラット(8mg/kgシスプラチン、30分点滴)においてゆっくりとした静脈内シスプラチン点滴後のABR閾値シフトおよびDPOAE振幅損失における効果を評価することによって、シスプラチン聴器毒性誘発性難聴を予防するための(+)-アザセトロンベシル酸塩の活性を評価した。ベースラインオージオメトリー後、ラットをランダムに割り当てて、シスプラチン投与の15分前に開始して、14日間にわたりプラセボまたは(+)-アザセトロンベシル酸塩処置を毎日行った。第14日(D14)にABR閾値シフトおよびDPOAE振幅損失を評価した。
【0244】
最初の試験において、動物を2群に分けた:プラセボ(n=4)および26.4mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(18.2mg/kg(+)-アザセトロン遊離塩基に対応、n=5)、両方に対して全部で14日間にわたり強制経口投与により投与した。ベースラインオージオメトリー(ABRおよびDPOAE測定)の2日後に、イソフルラン麻酔下で30分間の8mg/kgシスプラチン点滴の15分前に両群で経口処置を開始した。D14に、ベースラインと比較してABR閾値シフトおよびDPOAE振幅損失を評価するために、ABRおよびDPOAE測定を行い、次に組織学用にPFA固定によって各動物の側頭骨を保存した(図5)。
【0245】
26.4mg/kgで毎日経口処置することによって、プラセボ処置群と比較して、シスプラチン点滴後D14日に、ABR閾値シフト(~10-23dB、最大79%軽減)(図5A)およびDPOAE振幅損失(~3.5-15dB、最大78%軽減)(図5B)の両方が有意に軽減された。
【0246】
より低用量の(+)-アザセトロンベシル酸塩でのフォローアップ研究において、動物を3群に分け:プラセボ(n=6)、6.6mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(5mg/kg(+)-アザセトロン遊離塩基に対応、n=7)および13.2mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(10mg/kg(+)-アザセトロン遊離塩基に対応、n=5)、両方に対して全部で14日間にわたり強制経口投与により投与した。ベースラインオージオメトリー(ABRおよびDPOAE測定)の2日後に、イソフルラン麻酔下で30分間にわたる8mg/kgシスプラチン点滴の15分前に両群で経口処置を開始した。D14に、ベースラインと比較してABR閾値シフトおよびDPOAE振幅損失を評価するために、ABRおよびDPOAE測定を行った(図7)。
【0247】
6.6mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(~23-29dB、最大65%軽減)および13.2mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩(22~29dB、最大73%軽減)の両方で毎日経口処置することによって、プラセボと比較して、ABR閾値シフトが有意に軽減され(図7A)、6.6mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩によるDPOAE振幅損失の軽減(1.5~19dB、最大78%軽減)も統計学的有意性に達した(図7B)。
【0248】
耳毒性用量でのシスプラチン投与後の外有毛細胞(OHC)生存における(+)アザセトロンの効果を評価するために、ホールマウント固定蝸牛から生存OHCのコクレオグラムを構築した。プラセボ処置動物において、シスプラチン投与の14日後に、200μmセグメントあたりの生存OHCの平均数が有意に減少し、頂端からの40~60%の距離で開始して、基底部では~10個以下の細胞になった。生存OHCの数は、14日間の(+)アザセトロン処置を受けた動物において有意に高く(p<0.001;図6および8)、有毛細胞喪失がまだ観察された一方で、中間および基底部全体を通じてより漸進的であり、アポトーシス効果が最も卓越していた蝸牛の基底部において最大11倍多いOHCが保たれた。
【0249】
これらのデータは、固定組織試料から構築されるコクレオグラムにおいて、蝸牛外感覚有毛細胞の生存率向上の組織学的な実証によって支持される、認識される臨床転帰(純音オージオグラム、耳音響放射)に対応する聴覚の機能的聴力検査の目安を使用して明らかにされるように(ABR閾値シフト軽減、DPOAE振幅損失軽減)、(+)-アザセトロンベシル酸塩が、シスプラチン誘発性聴器毒性に対する処置としての有意な利点を提供する能力を裏付ける。
【0250】
実施例4:前庭機能不全における(+)-アザセトロンベシル酸塩の活性
末梢興奮毒性損傷のカイニン酸モデルを使用して、末梢前庭系において病変から保護するための(+)-アザセトロンベシル酸塩の能力を評価した。前庭感覚有毛細胞と一次求心性ニューロンとの間のシナプスの腫脹、退縮および脱共役につながる興奮毒性カイニン酸の片側性の経鼓膜注射の後、処置群に対するランダム化前に自発眼振(前庭眼球運動反射の欠如により引き起こされる病的な眼球運動)および姿勢の偏向のベースライン記録を行う。3日間にわたり記録を毎日、次いで病変誘発後D6およびD13に再び反復した。
【0251】
病変誘発およびt=1hでのベースライン記録後、雌Long-Evansをランダム化して、プラセボ(n=18)または5.6mg/kg(+)-アザセトロンベシル酸塩の腹腔内注射を3日間にわたり毎日行った(t=1/24/25h)。最初の病変誘発後、2/4/6/24/25/48/49時間およびD6/D13に自発眼振および姿勢の偏向の記録を反復した(図9)。
【0252】
(+)-アザセトロンベシル酸塩処置によって、最初の投与後既に、特に、前庭眼球運動反射欠如の中枢性代償前、早期に、興奮毒性末梢前庭病変後の自発眼振が有意に改善した(p=0.048、6~8%改善)。(+)-アザセトロンベシル酸塩投与の早期ならびに持続的な有意な処置効果(p<0.001、30~62%改善)が、興奮毒性末梢前庭病変後のロール角逸脱(Roll angle deviation)(体位性頭位傾斜)の軽減において見られた。
【0253】
これらのデータから、内耳の末梢前庭系の病変誘発欠損を軽減するための(+)-アザセトロンベシル酸塩の処置効果が明らかになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9