(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】冠状動脈アテローム性硬化症およびその合併症を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20221017BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221017BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221017BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221017BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20221017BHJP
C12N 9/68 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
A61K38/48
A61P9/10 ZNA
A61P9/10 101
A61P43/00 121
C12N15/12
C12N15/57
C12N9/68
(21)【出願番号】P 2019532070
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2017089044
(87)【国際公開番号】W WO2018107685
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110168
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110172
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ ジナン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-534508(JP,A)
【文献】特表2005-507244(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102199587(CN,A)
【文献】特表2020-502154(JP,A)
【文献】特表2020-502156(JP,A)
【文献】BIOSIS [online]; Biological Abstracts Inc., Retrieved from STN,BIOSIS Accession No.2002:354449,(Entered STN: 2002)
【文献】Academic Journal of Shanghai Second Medical University,2005年,Vol.25, No.2,pp.151-154
【文献】Journal of Thrombosis and Haemostasis,2009年,Vol.8,pp.194-201
【文献】Journal of Japan Society of Blood Transfusion,1986年,Vol.32, No.6,pp.590-593
【文献】Chinese Journal of Biochemical and Pharmaceutics,1991年,No.1,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、
前記プラスミノーゲンは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、医薬組成物。
【請求項2】
前記プラスミノーゲンは、対象の血清の総コレステロールレベルを低下させることと、対象の血清のトリグリセリドレベルを低下させることと、対象の血清の低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、対象の血清の高密度リポタンパク質レベルを上昇させることと、対象の動脈管壁における脂質沈着を低減することと、対象の肝臓の脂肪代謝を促進することと、対象の肝臓の脂肪輸送を促進することと、対象の肝臓における脂肪沈着を低減することとからなる群より選ばれる一つ以上によって冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記プラスミノーゲンは、対象に必要な一種以上のその他の薬物または治療方法と併用される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、及びチロキシンからなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記プラスミノーゲンは、配列番号14に示されるプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アテローム性動脈硬化症およびその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの作用に係り、さらにアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患を予防及び/または治療するために全く新しい治療ステラテジーを提供する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis,AS)は、冠状動脈性心臓病、脳梗塞、末梢血管疾患の主因である。脂質代謝障害はアテローム性動脈硬化症の病変基礎であり、その特徴として、係る動脈の病変は内膜から始まり、一般的にはまず脂質と複合糖類が蓄積され、出血して血栓が形成され、さらに繊維組織が増殖してカルシウム質が沈着し、しかも動脈中間層の段階的にな変質と石灰化があり、動脈壁が厚くなり硬くなり、血管腔が狭くなる。病変はよく大中筋性動脈に係り、一旦発展すると動脈腔を塞ぐまでに至り、該動脈により供給される組織または器官は虚血または壊死することになる。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は多くの心脳血管疾患の共通の病理的基礎であり、心血管系疾患の中で最もよく見られる疾患でもあり、人の健康に深刻な危害を及ぼす。アテローム性動脈硬化症の発生発展は、脂質の侵入、血小板の活性化、血栓の形成、内膜損傷、炎性反応、酸化ストレス、血管平滑筋細胞(VSMC)活性化、選択的基質代謝、及び血管再建などを含む[1]。百年近くの研究を経て、多くの学者がAS発症メカニズムについて、脂質滲入説、マクロファージ受容体欠落説、平滑筋変異説、損傷応答説、炎性反応説、血行動態学説および免疫学説などの異説を提出したが、いずれの学説で単独でASの発生発展を全面的に解釈することができない。近年来、大量の細胞及び分子レベルの実験研究資料により、内皮細胞、VSMC、単核マクロファージおよび血小板の恒常性に対する認識は広げられ、それがASの形成及び発症メカニズムにおける作用に対してもさらに認識できた。
【0004】
1.血管内皮細胞損傷の作用
研究によると、アテローム性動脈硬化症プラークが現れる前の長い期間内に、内皮機能損傷はすでに形成されていた。Esperら[2]によると、内皮細胞は双方向機能を持つ分子を大量に発生させ、促進と阻害効果を平衡にすることができる。内皮細胞がこの些細な平衡を維持する能力を失うと、脂質と白血球(主に単核細胞とTリンパ細胞)は内皮に侵入して炎性反応及び脂質線条を引き起こす。内皮細胞の機能障害、活性化及び形態学的損傷は、血液中の単核細胞、血小板及び血管壁中膜VSMCの変化を引き起こし、最終的にASを形成する。その具体的なメカニズムは以下である。(1)内皮細胞の透過性の増加は、ASの主要な開始段階であり、脂質が動脈壁の皮下に入る最も早い病理的変化である[3];(2)血小板と単核細胞の接着を増加させる。Ottら[4]によると、機能障害した内皮細胞は、その表面の細胞接着分子の発現が増加するため、単核細胞の接着を促進するかもしれないので、細菌を含む単核細胞が循環血からASプラークに滲入することを促進する;(3)単球走化性タンパク質21(MPC21)、線維芽細胞成長因子、形質転換成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)などの多くの成長因子を分泌して、単核細胞が凝集して内皮に接着し、内皮下の隙間に移動し、その表面の清掃者受容体、CD36受容体及びFC受容体の介在下で、内膜下に入った酸化された脂質を大量に摂取し、単核細胞由来の泡沫細胞を形成する。Boosら[3]の研究によると、内皮損傷程度はある程度ではASの発症インデクス及び厳重さの新しい指標とすることができる。
【0005】
2.血小板の作用
動脈内皮細胞が損傷した後、損傷した内皮細胞上への血小板の接着を促進でき、さらにPDGFの放出を促進し、筋内膜細胞の持続増殖を引き起こして最終的にコラーゲンの合成を引き起こし、ASプラークを形成する。AS血栓形成の最終段階において、血小板の接着、活性化及び凝集は、動脈閉塞と継発性虚血を引き起こし得る[5]。血小板は内皮細胞、結合組織と互いに作用して局所管壁のASの発生に対して重要な意義がある。血小板がASにおける作用は主に下記通りである。(1)いかなる形の内皮損傷は、血小板を大量に内皮局所に接着・凝集させ、凝血系を活性化させて血栓の形成を引き起こすことができる。(2)PDGF、血小板第4因子、βトロンボグロブリンなど、VSMC及び単核細胞に対して強い化学的走化性作用を有する多くの活性物質を分泌・放出し、VSMC遊出、増殖及び大動脈内膜の修飾に寄与し、単核細胞を吸引して内皮に接着させる。PDGFが線維芽走化作用と、単核細胞が各自の抗原決定基を増殖することを促進する作用を有し、ASを引き起こす過程において重要な役割を果たしていると学者は指摘した。(3)静脈内皮細胞は一酸化窒素とプロスタサイクリンを生成することができ、しかも肺内で持続的に放出し、血小板の機能を調節する。
【0006】
3.アテローム性動脈硬化発生、発展における脂質の作用
ASの病理的変化は、血脂レベル、特に血漿コレストロール及びトリアシルグリセロールレベルと密接に関連していると多くの研究により証明された[6]。脂質と脂肪酸の沈着は、内皮細胞機能障害及びAS形成過程における重要な病理的メカニズムであると学者は指摘した。研究によると、正常動脈と比べ、ASプラークを有する動脈アポリポタンパク質C1とアポリポタンパク質Eのタンパク質と遺伝子の発現はいずれも明らかに上昇しており、これは単なる結果ではなく、ASの形成原因であるかもしれない[7]。すでに公認されているように、高脂血症がAS発症における作用メカニズムは、内皮細胞損傷を直接に引き起こす他、主に内皮細胞の透過性を増加させることであり、これは、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化修飾による酸化性低密度リポタンパク質(оx-LDL)の生成に関係している。оx-LDLが損傷していない内皮を通過したとき、血漿LDLは内皮下の隙間に輸送されて酸化修飾される。LDLはマクロファージの除去反応および中間膜VSMCの増殖を引き起こしてアテローム性プラークを形成する。以上の変化は最終的に動脈内膜脂質線条、線維プラークおよび/またはアテローム性プラークの形成を引き起こす可能性がある。
【0007】
4.単核マクロファージの作用
研究によると、ASプラークには、単核細胞、単核細胞由来のマクロファージ、оx-LDL負荷のマクロファージ(すなわち、泡沫細胞)およびTリンパ細胞などの炎性反応細胞の浸潤が含まれている[8]。単核-マクロファージがASにおける作用は以下のようにまとめることができる。(1)食作用:病変早期の泡沫細胞は血の中の単核細胞から由来することが多く、後者は内皮下に入ってマクロファージに変え、その表面の特異性受容体はоx-LDLと結合することができるので、大量のコレステロールを摂取して泡沫細胞になる。(2)炎性反応と免疫反応に寄与すること:上記食過程は、細胞外基質へ炎性反応因子を放出することによって特有の炎性反応を誘発することができる。AS病巣内にTリンパ細胞の浸潤が見えられるとともに、非破裂のプラークと比べ、破裂したASプラークの線維皮膜にはより多くのマクロファージが含まれている。(3)増殖反応に寄与すること:マクロファージが活性化させられた後、多くの細胞因子と成長因子を放出して中間膜VSMCの遷移および増殖を促進することができる。また、マクロファージは複数のメタロプロテアーゼとセリンプロテアーゼを発現し、細胞外基質を退化させ、プラークが不安定になり、甚だしきに至っては破裂の傾向がある[9]。
【0008】
5.VSMCの作用
近年の研究を経て、中間膜VSMCの増殖、内膜への遊出および基質タンパク質の合成は、ASの進行期間における病変形成の主要な一環であり、しかもASと再狭窄の内膜肥厚において重要な役割をはたしていることは認識されてきた[10]。ASプラークと再狭窄の発症と進行は、血管壁細胞間の複雑な相互作用効果を含み、細胞因子、炎性反応、走化因子、成長因子はその中において重要な役割を果たしている。遊離したVSMCはその表面のLDL受容体の介在下で脂質を貪食し、VSMC由来泡沫細胞を形成し、病変の形成に寄与する。また、これらの増殖した内膜VSMCはコラーゲン、エラスチン、糖タンパク質などを合成することができ、マクロファージがLDLを貪食して遊離脂質を放出し、病変下内膜を厚くして硬くし、硬化プラークの形成を促進する。これについて、上記細胞の蓄積を抑制するように多くの努力はされ、しかもステント術後の再狭窄の面において大きな成果が遂げられた[11]。
【0009】
糖尿病はアテローム性動脈硬化症と密接な関係があり、糖尿病患者にアテローム性動脈硬化症が現れる時間が早く、程度が重く、予後が劣ることとして表され、アテローム性動脈硬化症は糖尿病患者の主要な死因である。
【0010】
糖尿病患者の冠状動脈血管の病理的変化の特徴は主に、病変に係る血管が多く、冠状動脈の狭窄が重く、病変がより広くて深刻であると臨床に発見された。そのメカニズムは、血糖代謝異常によるアテローム性動脈硬化であると考えられるのが多いが、研究を深まるにつれて、より多くの結果により明らかなように、糖尿病によるアテローム性動脈硬化症は単一の要素によるものではなく、マクロファージの分極化、マクロファージ遊走阻止因子ルート、最終糖化産物ルート、清掃受容体の上昇、インスリン抵抗、ユビキチン・プロテアソーム系(ubiquitin proteasome system,UPS)の活性化、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor,PDGF)の活性化ルートなど、多くのルートおよび複雑なメカニズムでアテローム性動脈硬化症の発生及び進展を誘発・促進している[12]。
【0011】
2型糖尿病患者体内の白色脂肪などの組織には、マクロファージ分極化がのバランスが崩れることがあり、M1型マクロファージが増加することとして表される。M1型マクロファージはおもにTNF-α、IL-6、単核細胞走化タンパク質1などを分泌し、炎症を促進する役割を果たし、上記細胞因子はインスリン抵抗の発生を誘発するだけではなく、アテローム性動脈硬化症を促進する[13]。
【0012】
マクロファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor,MIF)は免疫と炎症反応に寄与する重要な因子である。糖尿病患者において、MIFの発現の増加は、糖尿病とアテローム性動脈硬化症との合併に関係するかもしれない[14]。それがアテローム性動脈硬化症を引き起こすメカニズムは次のようである。(1)MIFにより、マクロファージが炎症部位に浸潤し活性化し、脂質の取り込みを加速し、泡沫細胞の発生を誘導する。マクロファージが酸化低密度リポタンパク質を摂取してMIFを上昇させ、それと相応にMIFが酸化低密度リポタンパク質の摂取を増加させて泡沫細胞の形成を促進できることは研究により発見された。(2)MIFは血管内皮細胞及び平滑筋細胞を活性化させることができ、それぞれ単核細胞走化タンパク質1と細胞間接着分子1を発現するようにさせ、単核マクロファージの走化遷移を増加させ、さらにアテローム性動脈硬化症を加速することができる。各動脈モデルにおいてMIF抗体を使用すると、内皮下マクロファージ、泡沫細胞、マクロファージ活性化を示すマーカーを弱めることができる。
【0013】
糖尿病患者において、終末糖化産物(advanced glycation end products,AGEs)は、アテローム性動脈硬化症病変の発生及び発展を促進することができる。AGEsは動脈壁内のグルコースとタンパク質およびリポタンパク質との非酵素糖化反応産物であり、対応する受容体と結合した後下記のメカニズムによりアテローム性動脈硬化症を加速することができる。(1)長期高血糖はAGEsの生成を増加させることができ、AGEsはタンパク質、核酸および脂質を修飾して活性酸素種の生成を増加させ、酸化ストレスを増強でき、AGEsは好中球の酸素ラジカルの生成を増加させるとともに好中球のNADPH酸化酵素の活性を増加させ、血管の酸化ストレスを促進し、糖尿病患者の心血管疾患の発生率を高めることができる[15]。(2)AGEsは接着分子の発現を増加させ、骨髄系細胞と非骨髄系細胞の表面のAGEs受容体は血管接着分子1の発現を増加して糖尿病に関連するアテローム性動脈硬化症を加速することができる[16]。
【0014】
インスリン抵抗(insulin resistance,IR)は、インスリンが作用するターゲット組織が外因性または内因性インスリンに対する感度および反応性の低下である。2型糖尿病はよくインスリン抵抗と合併する。インスリン抵抗は以下のメカニズムを通して糖尿病アテローム性動脈硬化症を加速することができる。(1)インスリン抵抗はマクロファージアポトーシスを加速すること:研究によると、糖尿病患者の進行期のアテローム性動脈硬化症のプラーク核心は、非糖尿病患者より明らかに増大した[17]。糖尿病進行期のアテローム性動脈硬化症の病変の箇所には、マクロファージのインスリン抵抗のため、小胞体ストレスにより誘導される細胞アポトーシスは明らかに増え、プラーク核心の増大を促進する。(2)インスリン抵抗と代謝症候群患者において、CX3CL1/CX3CL1軸の活性化が明らかに増加し、アテローム性動脈硬化症の加速と正比例に相関していることは発見された。動物モデルにおいて、該軸の活性化によりプラークの不安定性が増えたことは発見された。インスリン抵抗は、CX3CL1/CX3CL1軸を活性化させることで血管平滑筋細胞のアポトーシスを誘導してアテローム性動脈硬化を加速する[18]。マクロファージのビタミンD3受容体のノックアウトはインスリン抵抗を促進し、アテローム性動脈硬化症を加速する[19]。
【0015】
糖尿病患者の内因性酸化ストレスの増強により、マクロファージのUPSは過剰に活性化される[20]。UPSの過剰な活性化は、糖尿病炎症因子(例えば血管細胞接着因子1及び細胞間接着分子1)の発現と分泌を促進し、血管内皮細胞の不可逆性損傷を引き起こし、アテローム性動脈硬化症を引き起こす[21]。
【0016】
また、糖尿病患者のAGEs、アンジオテンシンII、エンドセリン、炎症と高血脂状態は、PDGFルートの活性を増加させ、PDGFルートの活性の増加は、炎症反応を促進する作用がある。PDGFは結合組織成長因子の発現を上昇させる作用があり、内皮細胞と繊維芽細胞の遷移、接着および増殖を促進し、アテローム性動脈硬化症の発生を促進する[22]。
【0017】
今までにアテローム性動脈硬化症を治療するための薬物として主に、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬が挙げられる。プラスミノーゲンは、動脈管壁における脂質の蓄積、沈着を低減し、繊維組織の増殖を低下し、アテローム性動脈硬化症による血管壁への損傷を修復し、アテローム性動脈硬化症による組織器官の虚血損傷及び組織器官の虚血による関連疾患を改善することができるということは研究において意外に発見された。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患を予防及び/または治療することに係る。
【0019】
一つの局面において、本発明は、冠状動脈アテローム性硬化症およびその関連疾患に罹患しているか罹患した疑いがある、または冠状動脈アテローム性硬化症およびその関連疾患に罹患するリスクがある被験者に、予防及び/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の冠状動脈アテローム性硬化症及びその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0020】
一部の実施形態において、前記冠状動脈アテローム性硬化症の関連疾患は、冠状動脈アテローム性硬化症によって引き起こされる冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全を含む。一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は糖尿病と合併して発症するアテローム性動脈硬化症である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、被験者の血清の総コレステロールレベルを低下させることと、被験者の血清のトリグリセリドレベルを低下させることと、被験者の血清の低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、被験者の血清の高密度リポタンパク質レベルを上昇させることとからなる群より選ばれる一つ以上によってアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療する。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、被験者の動脈管壁における脂質沈着を低減することによってアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療する。一部の実施形態において、肝臓の脂肪代謝を促進することと、肝臓の脂肪輸送を促進することと、被験者の肝臓における脂肪沈着を低減することとからなる群より選ばれる一つ以上によって冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療する。
【0021】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0022】
一部の実施形態において、前記被験者の組織、器官虚血損傷は、冠状動脈アテローム性硬化症による心筋損傷である。一部の実施形態において、前記関連疾患は、心臓供血不足によって引き起こされる冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全である。一部の実施形態において、前記組織、器官虚血損傷またはその関連疾患は、脳虚血損傷またはその関連疾患である。一部の実施形態において、前記疾患は、脳虚血、脳血栓、脳萎縮、脳出血、または脳塞栓である。一部の実施形態において、前記関連疾患は、腎機能不全、高血圧、糸球体繊維化、腎不全、または尿毒症である。
【0023】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の冠状動脈血栓およびその関連疾患を予防及び/または治療するための方法。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の冠状動脈血栓及びその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の冠状動脈血栓及びその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の冠状動脈血栓及びその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、冠状動脈アテローム性硬化症による被験者の冠状動脈血栓及びその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0024】
一部の実施形態において、前記疾患は、冠状動脈性心臓病と、狭心症と、心筋梗塞と、不整脈と、心不全と、脳虚血と、脳血栓と、脳萎縮と、脳出血と、脳塞栓と、脳梗塞と、腎機能不全と、高血圧と、糸球体繊維化と、腎不全と、尿毒症と、腸壊死と、間欠性跛行と、壊疽とを含む。
【0025】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0026】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併した冠状動脈アテローム性硬化症を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0027】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、糖尿病被験者の冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、糖尿病被験者の冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、糖尿病被験者の冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、糖尿病被験者の冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、糖尿病被験者の冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、または心不全を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者のアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症およびその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0029】
一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は、アテローム性大動脈硬化症、冠状動脈アテローム性硬化症、脳動脈アテローム性硬化症、腎動脈アテローム性硬化症、腸間膜動脈アテローム性硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症を含む。一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症の関連疾患は、アテローム性動脈硬化による組織、器官虚血によって引き起こされる関連疾患を含み、冠状動脈アテローム性硬化症によって引き起こされる冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全;脳動脈アテローム性硬化症によって引き起こされる脳虚血、脳血栓、脳萎縮、脳出血、脳塞栓;腎動脈アテローム性硬化症によって引き起こされる腎機能不全、高血圧、糸球体繊維化、腎不全、尿毒症;腸間膜動脈アテローム性硬化症によって引き起こされる満腹後の腹痛、消化不良、便秘、腸壁壊死、便血;下肢アテローム性動脈硬化症によって引き起こされる間欠性跛行、壊疽を含む。
【0030】
一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈アテローム性硬化症と、脳動脈アテローム性硬化症と、腎動脈アテローム性硬化症とからなる群より選ばれる。一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は、糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、被験者の血清の総コレステロールレベルを低下させることと、被験者の血清のトリグリセリドレベルを低下させることと、被験者の血清の低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、被験者の血清の高密度リポタンパク質レベルを上昇させることとからなる群より選ばれる一つ以上によってアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療する。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、被験者の動脈管壁における脂質沈着を低下させることによってアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療する。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、肝臓の脂肪代謝を促進することと、肝臓の脂肪輸送を促進することと、被験者の肝臓における脂肪沈着を低減することとからなる群より選ばれる一つ以上によってアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療する。
【0031】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、アテローム性動脈硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷及びその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷およびその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷およびその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、アテローム性動脈硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷およびその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の組織、器官虚血損傷およびその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0032】
一部の実施形態において、前記被験者の組織、器官虚血損傷は心筋損傷、脳損傷または腎損傷である。一部の実施形態において、前記疾患は、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、脳虚血、脳血栓、脳萎縮、脳出血または脳塞栓、腎機能不全、高血圧、糸球体繊維化、腎不全または尿毒症である。
【0033】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、アテローム性動脈硬化症による被験者の動脈血栓およびその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の動脈血栓およびその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の動脈血栓およびその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、アテローム性動脈硬化症による被験者の動脈血栓およびその関連疾患の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、アテローム性動脈硬化症による被験者の動脈血栓およびその関連疾患を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0034】
一部の実施形態において、前記疾患は、冠状動脈性心臓病と、狭心症と、心筋梗塞と、不整脈と、心不全と、脳虚血と、脳血栓と、脳萎縮と、脳出血と、脳塞栓と、脳梗塞と、腎機能不全と、高血圧と、糸球体繊維化と、腎不全と、尿毒症と、腸壊死と、間欠性跛行と、壊疽とを含む。
【0035】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症の予防及び/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の糖尿病と合併したアテローム性動脈硬化症を予防及び/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0036】
一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は、アテローム性大動脈硬化症と、冠状動脈アテローム性硬化症と、脳動脈アテローム性硬化症と、腎動脈アテローム性硬化症と、腸間膜動脈アテローム性硬化症と、下肢アテローム性動脈硬化症とからなる群より選ばれる一つ以上である。
【0037】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症の被験者の高脂血症を治療するための方法に係る。本発明はさらに、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症の被験者の高脂血症の治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症の被験者の高脂血症を治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症の被験者の高脂血症の治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、糖尿病またはアテローム性動脈硬化症の被験者の高脂血症を治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0038】
一部の実施形態において、前記被験者は、血清の総コレステロールレベルの上昇と、血清のトリグリセリドレベルの上昇と、血清の低密度リポタンパク質レベルの上昇と、血清の高密度リポタンパク質レベルの低下とからなる群より選ばれる一つ以上を有する。一部の実施形態において、前記高脂血症は、被験者の血清の総コレステロールレベルを低下させることと、被験者の血清のトリグリセリドレベルを低下させることと、被験者の血清の低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、被験者の血清の高密度リポタンパク質レベルを上昇させることとからなる群より選ばれる一つ以上によって改善される。
【0039】
もう一つの局面において、本発明は、アテローム性動脈硬化症に罹患しやすいかアテローム性動脈硬化症に罹患している被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の動脈管壁における脂質沈着を予防または低減するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の動脈管壁における脂質沈着の予防または低減におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の動脈管壁における脂質沈着を予防または低減するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の動脈管壁における脂質沈着の予防または低減に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の動脈管壁における脂質沈着を予防または低減するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0040】
一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症に罹患しやすい被験者は、原発性または継発性の脂肪代謝障害に罹患している被験者である。一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症に罹患しやすい被験者は、肝臓疾患、腎臓疾患、肥満症、高脂血症または糖尿病に罹患している被験者である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、被験者に必要な一種以上のその他の薬物または治療方法と併用することができる。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンを含む。一部の実施形態において、前記薬物は、スタチン系、フィブラート系、ニコチン酸、コレスチラミン、クロフィブラート、益壽寧や血脂平や心脈楽のような不飽和脂肪酸、硫酸多糖類(Poly Saccharide Sulphate、Alginic Sodium Diester)のような脂質低下薬;アスピリン、ペルサンチン、クロピドグレル、シロスタのような抗血小板薬;ヒドララジン、ニトログリセリンと硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシンのようなα1受容体遮断薬、フェントラミンのようなα受容体遮断薬、サルブタモールのようなβ2受容体刺激薬、カプトプリル、エナラプリル、ニフェジピンやジルチアゼム、サルブタモール酸、ミノキシジル、プロスタグランジン、カルジオナトリンのような血管拡張薬;ウロキナーゼとストレプトキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性化剤、単鎖ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤、TNK-組織型プラスミノーゲン活性化剤のような血栓溶解薬;ヘパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、ビバリルジンのような抗凝固薬を含む。
【0041】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである。一部の実施形態において、プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除及び/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。
【0042】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は2、6、8、10または12に示される通りである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンである。
【0043】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0044】
一部の実施形態において、前記薬物組成物は、薬学的に許容される担体及び前記方法に使用されるプラスミノーゲンを含む。一部の実施形態において、前記キットは、(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットであってもよい。一部の実施形態において、前記手段はシリンジまたはバイアルである。一部の実施形態において、前記キットは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0045】
一部の実施形態において、前記製品は、ラベルを含む容器と;(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であり、前記ラベルは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0046】
一部の実施形態において、前記キットまたは製品は、その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンからなる群より選ばれる。
【0047】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所投与により投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下という経路により投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは適切なポリペプチド担体または安定化剤と組み合わせて投与する。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm2、0.001~800mg/cm2、0.01~600mg/cm2、0.1~400mg/cm2、1~200mg/cm2、1~100mg/cm2、10~100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0048】
本発明は、本発明に係る実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせた技術構成は前記実施形態が単独且つ明確に開示されているように、本出願で明確に開示されている。また、本発明はさらに各実施形態及び要素のすべてのサブの組み合わせを明確にカバーし、この組み合わせた技術構成は本明細書中において明確に開示されている。
[発明の詳細な説明]
【0049】
「アテローム性動脈硬化症」は慢性的、進行性動脈疾患であり、発症時動脈に堆積した脂肪の一部またはすべては血流を塞ぐ。本来は滑らかで堅固な動脈内膜が粗くなって厚くなり、しかも脂肪、フィブリン、カルシウムおよび細胞破片により詰まられると、アテローム性動脈硬化症が現れる。アテローム性動脈硬化は進行性過程である。血液中の脂質濃度が大きくなると、動脈壁に沿って脂肪線条を形成する。これらの脂肪線条は脂肪とコレステロールの沈着をもたらし、これらの沈殿物は元々滑らかな動脈内膜上に付着して小節を形成する。これらの小節の下に続いて繊維化した瘢痕組織が生じてカルシウム沈着が引き起こされる。沈着したカルシウムはだんだん除去できない白亜質の硬い薄膜(アテローム性プラークという)に変化する。動脈内部のこの永久の薄膜は、動脈の正常な拡張と収縮を阻害し、動脈内の血流速度を緩め、血ぺいを形成しやすく、動脈を通る血液の流れを阻害または阻止することになる。
【0050】
アテローム性動脈硬化症のみについていえば、何の症状も感じられない。体内のある重要な器官とつながっている動脈が塞がれた後しか、この疾患が発見されることができない。これは、該器官における動脈が塞がれて引き起こされる症状が目立つからである。例えば、心臓の供血動脈の部分は塞がれると、狭心症が感じられるが、完全にふさがれると、心臓病を引き起こす可能性がある(塞がれた動脈により供血される心臓組織が死亡した)。アテローム性動脈硬化症は脳部動脈を影響すると、めまいや視線のかすみや気絶が感じられ、甚だしきに至っては卒中(塞がれた動脈により供血される脳組織が死亡し、神経損傷を引き起こす;例えば、死亡した脳組織により制御される四肢体幹が麻痺状態になる)を引き起こす可能性がある。腎臓部への動脈が塞がれると、腎不全を引き起こす可能性がある。眼部への血管が塞がれると失明するおそれがある。四肢動脈が塞がれると、各四肢体幹の病変を引き起こす可能性がある。
【0051】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む[23]。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である[24、25]。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳密な制御を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin、αプラスミン阻害剤)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある[26、27]。
【0052】
プラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである[28、29]。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である[30、31]。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌されかつ分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす[32]。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同性三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンジオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0053】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理学的血栓の形成を予防するキーポイントである[33]。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している[29、34、35]。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である可能性がある[36]。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する[37-39]。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0054】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0055】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドのヒト由来の天然プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、Papは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0056】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。δ-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず[40、41]、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり[41]、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノーゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており[42]、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し[43]、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0057】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0058】
本願において、プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0059】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。
【0060】
循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び血液凝固因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0061】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とはプラスミノーゲンタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノーゲンの技術構成に係り、プラスミノーゲン活性フラグメントでプラスミノーゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノーゲンは該プラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノーゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0062】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のプラスミノーゲンはSKの作用下においてプラスミンとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0063】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0064】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、塩基性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性の塩基性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0065】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0066】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0067】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0068】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0069】
そのうちXは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0070】
本文において使用されているように、用語の「治療」及び「処理」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させること。
【0071】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0072】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0073】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0074】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0075】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0076】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列を有してもよい。
【0077】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターはアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0078】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノーゲンの発現および生成に用いることができる(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0079】
一旦合成(化学または組み換え的に)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0080】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0081】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0082】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0083】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0084】
本発明のプラスミノーゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0085】
投与及び使用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0086】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0087】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってに従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性はリアルタイムに評価すべきである。
【0088】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連疾患を治療するための本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを10日投与した後の大動脈のグロスオイルレッドO染色の写真を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は36.0%であり、プラスミノーゲン投与群は29.6%である。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークの沈着を減少させ、アテローム性動脈硬化症による血管壁の損傷の修復を促進することができることを示している。
【
図2】
図2はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにPBSまたはプラスミノーゲンを20日投与した後の大動脈のグロスオイルレッドO染色の写真を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は48.1%であり、プラスミノーゲン投与群は39.4%である。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークの沈着を減少させ、アテローム性動脈硬化症による血管壁の損傷の修復を促進することができることを示している。
【
図3】
図3はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のオイルレッドO染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈洞における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが大動脈洞における脂肪沈着を改善できることを示している。
【
図4】
図4はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈弁のHE染色の代表的写真を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群(
図4B、4D)マウスの大動脈弁におけるプラーク沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図4A、
図4C)より明らかに少なく、しかも大動脈弁の融合程度では前者は後者より小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈弁損傷を改善できることを示している。
【
図5】
図5はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈のオイルレッドO染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群の大動脈のオイルレッドO着色面積(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈における脂質沈着を明らかに減少させ、大動脈内壁の損傷を改善することができることを示している。
【
図6】
図6は26週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の血清中の高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)含有量の検出結果を示すものである。その結果、ヒトプラスミノーゲンを35日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清中のHDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より有意に高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲン注射が血清におけるHDL-Cの含有量の上昇を促進できることを示している。
【
図7】
図7は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の血清中の低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)含有量の検出結果を示すものである。その結果、糖尿病モデルマウスにヒトプラスミノーゲンを31日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清中のLDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より低い。これは、プラスミノーゲンが血清におけるLDL-C含有量を低減できることを示している。
【
図8】
図8はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の体重の変化を示すものである。その結果、プラスミノーゲンを30日投与した後のマウスの体重には明らかな変化はない。これは、投与処理はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの体重に対して明らかな影響はないことを示している。
【
図9】
図9はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清総コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清における総コレステロールの含有量を低下させることができることを示している。
【
図10】
図10はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清のトリグリセリドの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのトリグリセリド濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清におけるトリグリセリドの含有量を低下させることができることを示している。
【
図11】
図11はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清の低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)の検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清におけるLDL-C含有量を低下させることができることを示している。
【
図12】
図12はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓臓器係数(心係数)の統計結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心臓臓器係数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの心臓損傷による心臓代償性肥大を改善できることを示している。
【
図13】
図13はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の肝臓のオイルレッドO染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの肝臓における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を改善することができることを示している。
【
図14】
図14はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のIgM免疫染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心臓のIgMの陽性発現(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症による心臓損傷の修復を促進することができることを示している。
【
図15】
図15はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓繊維化を軽減することができることを示している。
【
図16】
図16は26週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の心室のオイルレッドO染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心室における脂質沈着(矢印に示される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を減少させ、心室損傷の修復を促進することができることを示している。
【
図17】
図17はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のシリウスレッド染色の代表的写真を示すものである。AとCは溶媒PBS投与対照群であり、BとDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群の大動脈洞の血管内壁におけるコラーゲン沈着(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを低減できることを示している。
【
図18】
図18は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の大動脈洞のHE染色写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の血管管壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に表記される)、中間層弾性膜の配列が乱れ、管壁は凹凸して不均一である;プラスミノーゲン投与群の中間層弾性膜の構造は規則し、波状を呈する。これは、プラスミノーゲンが糖尿病による大動脈損傷に対して一定の修復作用を有することを示している。
【
図19】
図19は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の血清中の心筋トロポニン含有量の検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群の心筋トロポニンIの濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病後期のマウスの心筋損傷の修復を有意に促進できることを示している。
【
図20】
図20はプラスミノーゲンをそれぞれ10日と20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清の高密度リポタンパク質コレストロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲンを投与した後のプラスミノーゲン投与群マウスのHDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも両者は10日と20日投与した後の高密度リポタンパク質濃度の差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロールの含有量を効果的に高め、高脂血症モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
【
図21】
図21はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化指数の計算結果を示すものである。計算した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスにアテローム性動脈硬化症が発症するリスクを低めることができることを示している。
【
図22】
図22はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの心臓リスク指数の計算結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群のCRIは溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的にとても有意である。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスに心臓疾患が発症するリスクを効果的に低めることができることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0090】
[実施例]
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質プラーク沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は10日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。11日目に二群からランダムにマウスを一匹ずつ取って殺処分し、大動脈を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。切り開いた後オイルドレッドOでグロス染色して、大動脈を実体顕微鏡下で7倍にて観察して撮像した。
オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、損傷の厳重さを反映することができる
[49]。染色の結果(
図1)、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は36.0%であり、プラスミノーゲン投与群は29.6%である。この実験は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークの沈着を減少させ、アテローム性動脈硬化の修復を促進することができることを示している。
【0091】
[実施例2]
実施例2は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質プラーク沈着を減少させることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は20日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。21日目に二群からランダムにマウスを一匹ずつ取って殺処分し、大動脈を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。切り開いた後オイルドレッドOでグロス染色して、大動脈を実体顕微鏡下で7倍にて観察して撮像した。
プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈弓、胸部大動脈及び腹部大動脈の脂質プラーク(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、溶媒PBS投与対照群の脂質が血管の面積を占める割合は48.1%であり、プラスミノーゲン投与群は39.4%である(
図2)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスのアテローム性動脈プラークを減少させ、アテローム性動脈硬化の修復を促進することができることを示している。
【0092】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図3B)マウスの大動脈洞における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図3A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症の大動脈洞における脂質沈着を改善できることを示している。
【0093】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞損傷を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。大動脈洞の組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で40倍(
図4A、4B)、200倍(
図4C、4D)にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(
図4B、4D)マウスの大動脈洞における脂質プラーク沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図4A、4C)より明らかに少なく、しかも大動脈弁の融合程度では前者は後者より小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症における大動脈弁膜の損傷を改善できることを示している。
【0094】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈における脂質沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して大動脈を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(
図5B)の大動脈のオイルドレッドO染色の沈着(矢印に表記される)面積は溶媒PBS投与対照群(
図5A)より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈脂質が血管内壁における沈着を明らかに低減し、大動脈の損傷を改善できることを示している。
【0095】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロールを上昇させることに関するものである。
26週齢のdb/dbオスマウス20匹を取ってランダムに群分けをし、プラスミノーゲン投与群で11匹と溶媒PBS投与対照群で9匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。35日連続して注射した後にマウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)検出を行った。高密度リポタンパク質コレストロールの検出は、キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて該キットに記載する方法に従って行われた。
測定した結果、db/dbマウスに35日連続してヒトプラスミノーゲンを注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群(
図6)より高く、しかもその差が統計学的に有意である。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われ
[45,46]、高密度リポタンパク質はアテローム性動脈硬化症を防ぐ血漿リポタンパク質であり、冠状動脈性心臓病の保護因子であり、いわゆる「血管清掃者」である。この測定結果は、プラスミノーゲンが血清におけるHDL-Cレベルを高め、糖尿病マウスのアテローム性動脈硬化症改善に寄与できることを示している。
【0096】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における低密度リポタンパク質コレストロールを低めることに関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取ってランダムに群分けをし、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で各5匹ずつとし、さらにdb/m3匹を取って正常対照群とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、正常対照群マウスに対して何の処置もしなかった。投薬開始当日を0日目とし、31日連続して注射した後、マウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)検出を行った。低密度リポタンパク質コレストロールの検出は、キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて該キットに記載する方法に従って行われた。
検出の結果、db/dbマウスにヒトプラスミノーゲンを31日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるLDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より低い(
図7)。
低密度リポタンパク質はコレステロールを末梢組織細胞に運ぶリポタンパク質粒子であり、酸化低密度リポタンパク質に酸化されることができる。低密度リポタンパク質、特に酸化修飾された低密度リポタンパク質(OX-LDL)が過剰になると、それにより運ばれるコレステロールは動脈壁上に蓄積して動脈硬化を誘発してしまう。そのため、低密度リポタンパク質コレストロールは「悪いコレストロール」と呼ばれる
[52]。この実験の結果は、プラスミノーゲンが血清における低密度リポタンパク質コレストロールの含有量を低減でき、アテローム性動脈硬化症の制御に寄与することを示している。
【0097】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの体重に対する影響に関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投与した1日目、31日目にマウスの体重を測った。
その結果、プラスミノーゲンを30日投与した後、マウスの体重には明らかな変化はない(
図8)。これは、投薬処理はApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの体重に対して明らかな影響がないことを示している。
【0098】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血脂含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清の総コレステロール(T-CHO)、血清のトリグリセリド(TG)及び血清の低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)の含有量を検出した。
1.血清の総コレステロール含有量
検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて該検出キットに記載する方法に従って血清の総コレストロール含有量を検出した。
検出した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図9)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における総コレステロール含有量を低下させることができることを示している。
2.血清のトリグリセリド含有量
TG検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A110-1)を用いて該検出キットのプロトコルに従ってCOD-PAP法により血清のTG含有量を検出した。検出した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのTG濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図10)。
3.血清の低密度リポタンパク質コレストロール含有量
低密度リポタンパク質コレストロール(LDL-C)検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて該キットに記載する方法に従って血清の低密度リポタンパク質コレストロール含有量を検出した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図11)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清におけるLDL-C含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症を改善できることを示している。
上記結果によって、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清の総コレステロール、トリグリセリド及び低密度リポタンパク質コレストロール含有量を有意に低め、アテローム性動脈硬化症を改善できることは証明された。また、血清の総コレステロール、トリグリセリド及び低密度リポタンパク質コレストロール含有量を低めることによって、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のようなアテローム性動脈硬化症の合併症のリスクを低めることができることも証明された。
【0099】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓の代償性肥大を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。投与期間は30日間であり、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投与した31日目に体重を測ってマウスを殺処分し、心臓を取って重量を測って、心係数を計算した。心係数(%)=心臓重量/体重×100。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心係数は溶媒PBS投与対照群(
図12)より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓損傷による心臓の代償性肥大を軽減できることを示している。
【0100】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの肝臓における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して肝臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(
図13B)の肝臓における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図13A)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差は統計学的に有意である(
図13C)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を改善できることを示している。
【0101】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓損傷を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)を滴加して室温で1時間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。IgM抗体は、アポトーシス細胞及び壊死細胞の排除において重要な役割を果たし、損傷した組織器官の局所IgM抗体のレベルは、損傷の程度と正比例に相関している
[50,51]。よって、検出した組織器官の局所IgM抗体のレベルは該組織器官の損傷状況を反映することができる。実験の結果、プラスミノーゲン投与群マウス(
図14B)の心臓IgM陽性発現は、溶媒PBS投与対照群(
図14A)より明らかに少ない。
これは、プラスミノーゲンがApoEマウスの心筋損傷を明らかに改善できることを示している。
【0102】
[実施例13]
実施例13は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓繊維化レベルを低減することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[47,48]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
シリウスレッド染色は、コラーゲンを長期的に染色することができ、病理学的切片の特殊染色法として、シリウスレッド染色はコラーゲン組織を特異的に表示することができる。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(
図15B)のコラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図15A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓組織におけるコラーゲンの沈着を低減し、心筋の繊維化を軽減できることを示している。
【0103】
[実施例14]
実施例14は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を低めることに関するものである。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われる
[45,46]。心血管アテローム性動脈硬化症は心筋細胞の虚血損傷を引き起こし得る。オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、損傷の厳重さを反映することができる
[49]。
26週齢のdb/dbオスマウス9匹を取ってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群で4匹と溶媒PBS投与対照群で5匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、35日間投与した。36日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウス(
図16B)の心室における脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図16A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を減少させ、心室損傷の修復を促進することができることを示している。
【0104】
[実施例15]
実施例15は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞繊維化を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した
[31,32]。モデル化後の各マウスから、投薬の3日前に50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で40倍にて観察した。
図17C、Dはそれぞれ、
図17A、Bの黒枠領域の拡大図である。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図17B、17D)のコラーゲン沈着(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群(
図17A、17C)より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞の繊維化レベルを軽減できることを示している。
【0105】
[実施例16]
実施例16は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの大動脈内壁の損傷に対する保護作用に関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、実験開始当日を0日として体重を測って、体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で各群5匹ずつとした。1日目からプラスミノーゲンまたはPBS(PBSはリン酸緩衝液(Phosphate Buffer Saline)であり、本文ではプラスミノーゲンの溶媒である)を投与し、連続して31日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。32日目にマウスを殺処分して大動脈を取り、10%中性フルマリン固定液において24時間固定を行った。固定後の組織サンプルをアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリン及びエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
HE染色の結果、溶媒PBS投与対照群の血管管壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に表記される)、中間層弾性膜の配列が乱れ、管壁は凹凸して不均一である(
図18A);プラスミノーゲン投与群の中間層弾性膜の構造は規則し、波状を呈する(
図18B)。これは、プラスミノーゲン注射が糖尿病による大動脈管内壁の損傷に対して一定の修復作用を有することを示している。
【0106】
[実施例17]
実施例17は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心筋損傷に対する保護作用に関するものである。
糖尿病には通常心血管アテローム性動脈硬化症が伴われる
[45,46]。心血管アテローム性動脈硬化症は、心筋細胞の虚血損傷を引き起こし得る。心筋トロポニンI(Cardiac troponin I,CTNI)は、心筋損傷の重要な指標であり、その血清における濃度は、心筋損傷の程度を反映することができる
[44]。本実験は、心筋トロポニンIを検出することでプラスミノーゲンが心筋損傷に対する修復作用を観察する。
24~25週齢のdb/dbオスマウス28匹を取り、実験開始当日を0日として体重を測って、体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で12匹とプラスミノーゲン投与群で16匹とした。群分けした次の日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与してその日を1日目とし、連続して31日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。32日目に眼球を摘出して採血し、3500r/分で15~20分間遠心分離して上澄み液を取り、心筋トロポニンIの濃度測定を行った。その結果、プラスミノーゲン投与群の心筋トロポニンIの濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(
図19)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心血管アテローム性動脈硬化症による心筋損傷の修復を有意に促進できることを示している。
【0107】
[実施例18]
実施例18は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロール濃度を高めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。10日目、20日目にマウスを16時間禁食した後、11日目、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、血清の高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)を測定した。本文では、高密度リポタンパク質コレストロール含有量を、検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)に記載の方法でを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも両者は10日と20日投与した後のHDL-C濃度の差が統計学的に有意である(
図20)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレストロール含有量を高め、高脂血症マウスの血脂障害を改善できることを示している。
【0108】
[実施例19]
プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症の形成リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投薬した後マウスを禁食し、16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定し、高密度リポタンパク質コレストロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレストロール(HDL-C)含有量を測定した。
アテローム性動脈硬化指数は、臨床上でアテローム性動脈硬化症を予測するための総合的指標であり、それが冠状動脈性心臓病のリスクを見積もる面における臨床的意義は、総コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質と低密度リポタンパク質のいずれか一つより大きいと考えられている
[54]。アテローム性動脈硬化指数=(T-CHO-HDL-C)/HDL-C。
計算した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(
図21)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させることができることを示している。
【0109】
[実施例20]
実施例20は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの心臓発症リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[52,53]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度と体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投与した後、マウスを16時間禁食し、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定した。高密度リポタンパク質コレストロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレストロール含有量を測定した。心臓リスク指数=T-CHO/HDL-C。
心臓リスク指数(cardiac risk index,CRI)は、血脂障害によって心臓疾患が誘発されるリスクを評価するためのものである
[54]。
その結果、プラスミノーゲン投与群のCRIは溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、しかもその差が統計学的にとても有意である(
図22)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓疾患の発症リスクを効果的に低めることができることを示している。
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