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特許7158752ストレッチフィルム送出器及びこれを具えたストレッチ梱包機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ストレッチフィルム送出器及びこれを具えたストレッチ梱包機
(51)【国際特許分類】
   B65B 11/04 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B65B11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020119084
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015917
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591099773
【氏名又は名称】株式会社大阪タイユー
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田林 義一
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-029715(JP,A)
【文献】特開2001-171618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレッチフィルムを巻回したストレッチフィルム巻が嵌まる芯軸と、
前記芯軸の下端が固定されるブラケットと、
前記ブラケット上面に配置されるブレーキパッドと、
前記芯軸に回転自在に嵌まり、下面が前記ブレーキパッドに当接し、前記ストレッチフィルム巻の下端を受ける下受け部材と、
前記芯軸の上端に配置され、前記ストレッチフィルム巻の下方へ押し込み、前記下受け部材を前記ブレーキパッドに押し付けることで、前記ストレッチフィルム巻の回転にブレーキを作用させるブレーキ装置と、
を具えるストレッチフィルム送出器であって、
前記ブレーキ装置は、
前記芯軸に位置決めされるシャフトと、
前記シャフトに対して上下方向にスライド可能であって、前記ストレッチフィルム巻の上端と当接する上受け部材と、
前記上受け部材を下向きに付勢する付勢手段と、
前記付勢手段と前記上受け部材との間に配置され、前記付勢手段の下端が当たる付勢プレートと、
前記付勢手段の付勢力を調整する付勢力調整手段と、を含み、
前記付勢力調整手段は、
前記上受け部材と前記付勢プレートとの間に挟まれ、一方の面に前記芯軸と直交するスロープ部を有するスローププレートと、
前記スロープ部に摺動可能に嵌まり、一端から他端に向けて厚さが薄くなる勾配のくさび部材と、
を具え、
前記くさび部材は、前記シャフトから側方に延びるブレーキハンドルに配置されたブレーキレバーに連繋されて、前記スロープ部を摺動する、
ストレッチフィルム送出器。
【請求項2】
回転テーブルと、
前記回転テーブルの側方に立設された筒状の支持支柱と、
前記支持支柱の内部に釣り合いロープにより上下にスライド可能に吊り下げ支持されたバランスウェイトと、
前記支持支柱の外周で上下にスライド可能であり、前記釣り合いロープの他端が装着された支持筒と、
前記支持筒に連繋され、ストレッチフィルムを送出可能なストレッチフィルム送出器と、
を具えたストレッチ梱包機であって、
前記ストレッチフィルム送出器は、請求項1に記載のストレッチフィルム送出器であって、
前記ブラケットは、前記支持筒と連結される、
ストレッチ梱包機。
【請求項3】
前記ストレッチフィルム送出器は、
前記ブレーキハンドルにグリップが形成されており、
前記グリップを押し下げ、又は、押し上げることで、前記ストレッチフィルム送出器は、前記支持支柱に沿って上下に移動させることができる、
請求項2に記載のストレッチ梱包機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットに積み上げた物品の荷崩れを防止するために、物品全体の外周面をストレッチフィルムで巻いて梱包するストレッチ梱包機に関するものであり、より具体的には、ストレッチ梱包機に搭載され、ストレッチフィルムを送出するストレッチフィルム送出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストレッチフィルム送出器は、箱詰め物品等の物品の外周に巻き付けるストレッチフィルムを送出する装置である。ストレッチフィルム送出器は、物品が載置される回転テーブルの横に上下動可能に配置されてストレッチ梱包機を構成する。そして、物品を積み上げたパレットを回転テーブルに載置し、回転テーブルを回転させながらストレッチフィルム送出器に装着されたストレッチフィルム巻からストレッチフィルムを引き出しつつ、物品の外周にストレッチフィルムを巻き付ける。
【0003】
このとき、箱詰め物品が輸送中に荷崩れしないようにストレッチフィルムには、物品に応じたテンションをかけて巻き付ける必要があり、巻付けは、パレットから行なうことが望ましい。このとき、仮にストレッチフィルムがパレットのフォーク差込口を塞ぐように巻かれていても、フォークを差し込んだときにストレッチフィルムを貫通するので問題にはならないのが実情である。
【0004】
出願人は、図13(a)に示すようなストレッチフィルム送出器81を具えたストレッチ梱包機80を特許文献1で提案している。ストレッチフィルム送出器81は、ストレッチフィルム巻70の下側にブレーキ装置82を配置しており、レバー83の操作によってストレッチフィルム巻70に作用するブレーキの効き具合を調整し、送出されるストレッチフィルム71のテンション調整を行なう構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-171618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のストレッチフィルム送出器81は、ブレーキ装置82の主要構成が、図13(a)に示すように、レバー83を含めストレッチフィルム巻70の下側に飛び出して配置されているため、巻付け可能なストレッチフィルムの下限高さ(図13(a)中符号H)が高くなり、パレット90の上に積まれた物品91にパレット90からストレッチフィルム71を巻き付けようとしても、テンションをかけるとストレッチフィルム71が引き伸ばされて幅方向に縮むから、ストレッチフィルム71の下縁は高くなり(符号H’)、パレット90から巻き付けることはできなかった。
【0007】
そのため、ストレッチフィルム71をパレット90から巻き付けたい場合には、図14(a)、(b)に示すように、テンションをかける前にストレッチフィルム90の下端を手99で摘まんで引き下げながら、パレット90に巻き付けていかなければならなかった。しかし、ストレッチフィルム71と同期して、図14(a)、(b)に示す、摘まんでは離し、摘まんでは離しを繰り返して引き出す作業を行なうことは、不慣れな人にとっては容易ではなく、経験、感、コツに頼る作業となっていた。
【0008】
本発明の目的は、回転テーブルの上にあるパレットに直接ストレッチフィルムを巻き付けることができ、1周目は微弱なテンションを掛けて巻いた後、任意の強さのテンションをコントロールしながらストレッチフィルムを巻き付けることができるストレッチフィルム送出器及びこれを具えたストレッチ梱包機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るストレッチフィルム送出器は、
ストレッチフィルムを巻回したストレッチフィルム巻が嵌まる芯軸と、
前記芯軸の下端が固定されるブラケットと、
前記ブラケット上面に配置されるブレーキパッドと、
前記芯軸に回転自在に嵌まり、下面が前記ブレーキパッドに当接し、前記ストレッチフィルム巻の下端を受ける下受け部材と、
前記芯軸の上端に配置され、前記ストレッチフィルム巻の下方へ押し込み、前記下受け部材を前記ブレーキパッドに押し付けることで、前記ストレッチフィルム巻の回転にブレーキを作用させるブレーキ装置と、
を具える。
【0010】
前記ブレーキ装置は、
前記芯軸に位置決めされるシャフトと、
前記シャフトに対して上下方向にスライド可能であって、前記ストレッチフィルム巻の上端と当接する上受け部材と、
前記上受け部材を下向きに付勢する付勢手段と、
前記付勢手段と前記上受け部材との間に配置され、前記付勢手段の下端が当たる付勢プレートと、
前記付勢手段の付勢力を調整する付勢力調整手段と、を具える構成とすることができる。
【0011】
前記付勢力調整手段は、
前記上受け部材と前記付勢プレートとの間に挟まれ、一方の面に前記芯軸と直交するスロープ部を有するスローププレートと、
前記スロープ部に摺動可能に嵌まり、一端から他端に向けて厚さが薄くなる勾配のくさび部材と、
を具え、
前記くさび部材は、前記シャフトから側方に延びるブレーキハンドルに配置されたブレーキレバーに連繋され、前記スロープ部を摺動する構成とすることができる。
【0012】
また、本発明のストレッチ梱包機は、
回転テーブルと、
前記回転テーブルの側方に立設された筒状の支持支柱と、
前記支持支柱の内部に釣り合いロープにより上下にスライド可能に吊り下げ支持されたバランスウェイトと、
前記支持支柱の外周で上下にスライド可能であり、前記釣り合いロープの他端が装着された支持筒と、
前記支持筒に連繋され、ストレッチフィルムを送出可能なストレッチフィルム送出器と、
を具えたストレッチ梱包機であって、
前記ストレッチフィルム送出器は、上記に記載のストレッチ送出器であって、
前記ブラケットは、前記支持筒と連結される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るストレッチフィルム送出器は、ストレッチフィルム巻にブレーキを作用させるブレーキ装置の主要部品をストレッチフィルム巻よりも上側に配置しているから、ストレッチフィルム巻をより低い位置まで降下させることができる。これにより、巻き付け可能なストレッチフィルムの下限高さを低くすることができ、1周目は微弱なテンションしかかけないものの、それ以降は、ストレッチフィルムに強いテンションをかけた状態でもパレットからの巻き付けが可能となった。
【0014】
また、上記した付勢力調整手段によれば、ブレーキレバーの操作によってくさび部材をスロープ部内で摺動させ、付勢手段に抗して付勢力調整手段の厚みを変えることができる。これにより、付勢プレートを上方に押し上げると共に上受け部材を下方に押し込むことができ、上受け部材により下方に押し下げられたストレッチフィルム巻は、下受け部材をブレーキパッドに押し付けるから、ストレッチフィルム巻の回転にブレーキを作用させることができ、ブレーキレバーの握り具合でブレーキの効き具合を調整し、送出されるストレッチフィルムのテンション調整を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るストレッチ梱包機の平面図である。
図2図2は、ストレッチ梱包機の側面図である。
図3図3は、ストレッチフィルム送出器とその昇降機構の斜視図である。
図4図4は、ストレッチフィルム送出器とその昇降機構の部分断面図である。
図5図5は、ストレッチフィルム送出器からブレーキ装置を装着する途上の分解断面図である。
図6図6は、ストレッチフィルム送出器のブレーキ非作用状態を示す断面図である。
図7図7は、ストレッチフィルム送出器のブレーキ作用状態を示す断面図である。
図8図8は、ストレッチフィルム送出器のブレーキ装置以外の分解斜視図である。
図9図9は、ブレーキ装置の分解斜視図である。
図10図10は、ブレーキ装置の断面図である。
図11図11は、図10の線C-Cに沿う矢視断面図である。
図12図12は、ストレッチフィルム送出器の動作を説明する斜視図である。
図13図13は、(a)に示す特許文献1のストレッチフィルム送出器と(b)に示す本発明のストレッチフィルム送出器のストレッチフィルム巻き付け下限高さを比較する説明図である。
図14図14は、特許文献1のストレッチフィルム送出器によって物品にパレットからストレッチフィルムを巻き付ける過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るストレッチフィルム送出器30及びこれを具えたストレッチ梱包機10について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0017】
図1及び図2に示すように、ストレッチ梱包機10は、床面に載置されるベース11と、ベース11上で回転する回転テーブル12、回転テーブル12の側方に立設された支持支柱20に上下動可能に装着されたストレッチフィルム送出器30を主要構成とする。回転テーブル12は、ベース11に配置された回転機構13によって回転可能となっている。
【0018】
回転テーブル12には、ストレッチフィルム71により梱包されるべき箱詰め物品等の物品をパレットに載せた状態で載置される。回転テーブル12は、モーターや減速機等からなる回転機構13にベルトを介して接続され、スイッチ14(たとえば足踏み式)の操作によりベース11上で回転する。本構成は、公知の種々の構造を採用できる。
【0019】
ベース11には、ストレッチフィルム送出器30を上下動可能に支持する支持支柱20が立設される。支持支柱20は、筒状のポールとすることができる。支持支柱20には、図3及び図4に示すようにストレッチフィルム送出器30に連繋される支持筒21が昇降可能に嵌まっている。支持支柱20の内部には、バランスウェイト22がスライド可能に嵌まっており、バランスウェイト22と支持筒21は、ワイヤー23により連繋されている。ワイヤー23は、支持支柱20の上端に設けられたシーブ24に掛けられている。バランスウェイト22は、支持筒21、ストレッチフィルム送出器30及びストレッチフィルム巻70に相当する重さの釣り合い錘であり、ストレッチフィルム送出器30を支持支柱20の所望の高さで停止、或いは、ユーザーが容易にストレッチフィルム送出器30を上下動できるようにしている。なお、この構成については、特許文献1でも採用されているため、詳細な説明は省略する。もちろん、ストレッチフィルム送出器30の昇降機構は、この構成に限定されるものではない。
【0020】
支持筒21の下端には、図3図4等に示すように、側方に向けてブラケット25が突設されており、ブラケット25には、ストレッチフィルム送出器30のネジ32が螺合するネジ孔26が設けられている。なお、支持筒21には、図12に示すようにストレッチフィルム送出器30の昇降の際にユーザーが掴むハンドル27を設けることができる。
【0021】
ストレッチフィルム送出器30は、ストレッチフィルム71を巻回したストレッチフィルム巻70が装着され、当該ストレッチフィルム71を送出する装置である。ストレッチフィルム71は、伸縮性を有する一般的には透明又は半透明のフィルムであり、筒状の紙製芯72に巻回されてストレッチフィルム巻70を構成する。ストレッチフィルム送出器30は、後述及び図5乃至図7等に示すように、下端にネジ32が切られた芯軸31がブラケット25のネジ孔26に螺合されており、芯軸31の上下端に配置された上受け部材53と下受け部材35との間にストレッチフィルム巻70を挟み込んで装着するようにしている。芯軸31の上端には、ブレーキ装置40のシャフト41が嵌まる中空のシャフト取付穴33が凹設されている。
【0022】
芯軸31の下端は、上記のとおりブラケット25に螺合しており、芯軸31には、図8等に示すように、ブラケット25の上面側に環状のゴム板などのブレーキパッド39が嵌まっている。また、芯軸31の下端には、ブレーキパッド39をブラケット25との間で挟み込むように、環状の下受け部材35が嵌まっている。下受け部材35は、ブッシュ36により芯軸31に回転自在である。下受け部材35の上面側はストレッチフィルム巻70の紙製芯72が嵌まる円錐台形状をなし、また、周面には紙製芯72の滑り止め及びぶれ止めのためのOリング37が装着されている。
【0023】
芯軸31の上端には、図8に示すように、ブレーキ装置40が装着される。ブレーキ装置40は、図5乃至図7に示すように、紙製芯72の上端を回転可能に保持すると共に、紙製芯72を下方に押し込んで、上記した下受け部材35をブレーキパッド39に押し付けることで、ストレッチフィルム巻70の回転にブレーキを作用させる装置である。
【0024】
ブレーキ装置40は、分解斜視図を図9に示すように、芯軸31に位置決め可能なシャフト41と、シャフト41の上端近傍に接続される上向きに凹形状のカバー42を具える。カバー42には側方に向けてブレーキハンドル43が突設されており、ブレーキハンドル43の先端にはグリップ44が設けられている。ブレーキハンドル43の内部には、リンク部材47がシャフト41の方向に向けてスライド可能に配備されており、グリップ44側の基端は、ブレーキハンドル43に枢支されたブレーキレバー45に連繋されている。ブレーキレバー45は、バネ46の付勢により、リンク部材47をグリップ44側に引っ張る方向に付勢されている。
【0025】
カバー42の内部には、上記した下受け部材35と対向してストレッチフィルム巻70の紙製芯72を保持する上受け部材53が嵌まっている。上受け部材53は、紙製芯72が嵌まる短筒状の支持部53aと支持部53aの上側で紙製芯72の先端が当たる鍔部53bを有している。また、上受け部材53は、シャフト41から脱落しないように下面側でスナップリング54により保持されている。
【0026】
上受け部材53の上側には、上受け部材53を下向きに付勢する付勢手段50と、当該付勢手段50の付勢力を調整する付勢力調整手段55を具える。
【0027】
付勢手段50は、たとえば、コイルバネ51であり、図9ではカバー42の天面に4つの凹部42aを形成し、夫々コイルバネ51の一端が嵌まるようにしている。コイルバネ51の下端側には、シャフト41に上下動可能に支持され、コイルバネ51により下向きに付勢される付勢プレート52が設けられている。コイルバネ51の下端は、付勢プレート52の凹部52aに嵌まる。
【0028】
付勢力調整手段55は、上受け部材53がストレッチフィルム巻70の紙製芯72を下向きに付勢する力を調整する手段である。付勢力調整手段55として、上記した付勢プレート52と上受け部材53との間に挿入され、付勢プレート52を付勢するコイルバネ51の付勢力を調整するスローププレート56とくさび部材57の構成を例示できる。
【0029】
スローププレート56は、シャフト41に上下動可能に支持される。スローププレート56は、一方の面上面にシャフト41と直交するスロープ部56aが凹設されている。スロープ部56aには、くさび部材57がスライド可能に収容されている。くさび部材57は、図9図10に示すように、一端から他端に向けて厚さが薄くなる勾配の部材であり、スロープ部56aに摺動可能に嵌まる幅を有する。図示の実施形態では、くさび部材57は、勾配に沿う方向、すなわち長手方向に長孔57aが形成されており、長孔57aには図11に示すようにシャフト41がスライド可能に嵌まっている。そして、くさび部材57は、厚みのある基端側が上記したブレーキハンドル43内のリンク部材47に連繋されている。
【0030】
上記構成のブレーキ装置40は、図10に示すように、カバー42の凹部42aにコイルバネ51が配置され、付勢プレート52、くさび部材57、スローププレート56及び上受け部材53の順にシャフト41に嵌められる。そして、コイルバネ51が若干付勢された状態で、上受け部材53の下方にスナップリング54を嵌め、上受け部材53等の脱落を防止すると共に、上受け部材53の下方移動位置を規制している。
【0031】
ブレーキ装置40は、シャフト41を芯軸31に位置決め固定することで、シャフト41に装着可能となっている。シャフト41と芯軸31は、シャフト41に対して側方に位置ズレ可能なウス60により位置決めすることができる。たとえば、図9図10に示すように、シャフト41の下端は斜めにカットされた傾斜面41aを形成し、傾斜面41aに沿ってスライド可能な傾斜面61を上面側に有するウス60を上下動可能な引上げボルト62に取り付けている。そして、引上げボルト62を上向きに引っ張ってウス60を引き上げることで、シャフト41の傾斜面41aにウス60の傾斜面61が乗り上げて、シャフト41と直交する方向にウス60がズレて芯軸31のシャフト取付穴33内で突っ張り、シャフト41を芯軸31に位置決めできる。
【0032】
引上げボルト62は、シャフト41の内部に上下動可能に配備され、ウス60は、引上げボルト62の下端に偏心した状態で装着されている。引上げボルト62の上端は、カバー42よりも上側に突出しており、カムレバー63が装着されている。カムレバー63は、ユーザーが操作可能なレバーの先端に円弧状のカム64を具える。カム64は、その円弧中心からズレた位置で引上げボルト62を軸支している。そして、図5の丸囲み部Aの拡大図に示すように、シャフト取付穴33(一点鎖線で示す)の直径Dよりもシャフト41とウス60の幅Wが小さい状態(W<D)で、シャフト41とウス60をシャフト取付穴33に挿入し、カムレバー63を傾倒させて引上げボルト62を上向きに引き上げる。これにより、上記のとおりウス60の傾斜面61をシャフト41の傾斜面41aに乗り上げるから、図6の丸囲み部Bの拡大図に示すように、ウス60はシャフト41の直交方向に移動し、シャフト41とウス60の見かけの幅Wが大きくなって、シャフト取付穴33内で突っ張り(W=D)、ブレーキ装置40が芯軸31に位置決めされる。なお、図6の丸囲み部Bでは、シャフト取付穴33を一点鎖線で示し、判り易くするためにシャフト41及びウス60から若干離しているが、実際にはシャフト取付穴33とシャフト41、ウス60は当接している。
【0033】
なお、カムレバー63を起立させることで、図5の丸囲み部Aの拡大図に示すように、引上げボルト62が下向きに押し下げられて、ウス60はシャフト41と略直線上に並び、ズレがなくなる(W<D)。これにより、シャフト41を芯軸31のシャフト取付穴33から引き抜くことができ、芯軸31からブレーキ装置40を取り外しできる。
【0034】
上記構成のストレッチフィルム送出器30は、図5に示すように、カムレバー63のカムレバー63を起立させてシャフト41からブレーキ装置40を取り外し、ストレッチフィルム巻70を装着する。ストレッチフィルム巻70は、紙製芯72に芯軸31を挿通し、紙製芯72の下端を下受け部材35に嵌める。
【0035】
そして、図6に示すように、シャフト41と共にウス60を芯軸31のシャフト取付穴33に挿入し、紙製芯72の上端が上受け部材53に嵌まるようにブレーキ装置40を装着する。具体的には、紙製芯72は、上受け部材53の支持部53aに嵌まり、上端が鍔部53bにと当接するように設置する。この状態で、カムレバー63はカムレバー63を倒す。これにより、ウス60は傾斜面61がシャフト41の傾斜面41aに乗り上げ、シャフト41とウス60がシャフト取付穴33で突っ張ってブレーキ装置40が芯軸31に位置決めされる。なお、本構造によるブレーキ装置40の位置決め機構を採用することで、ストレッチフィルム巻70の紙製芯72の長さに多少のばらつきがあっても、紙製芯72を上受け部材53と下受け部材35で挟み込み、ブレーキ装置40をシャフト41に装着することができる。
【0036】
ブレーキ装置40は、図6に示すように、芯軸31に装着された状態で、紙製芯72の上端により上受け部材53は付勢手段50であるコイルバネ51を僅かに圧縮するよう上移動し、紙製芯72を下方に僅かに押し付ける。これにより、紙製芯72は下受け部材35を軽く押し下げ、ブレーキパッド39は下受け部材35とブラケット25との間で僅かに圧縮力を受けて微小なブレーキ力が紙製芯72に作用する。この状態で、図12に示すようにストレッチフィルム巻70からストレッチフィルム71を引っ張ると、ストレッチフィルム71は弱いテンションで引き出すことができる。
【0037】
上記した図6の状態から、ストレッチフィルム送出器30のブレーキレバー45を握ってグリップ44側に引き寄せると(図12参照)、図7に示すように、ブレーキレバー45に連繋されたリンク部材47がくさび部材57をシャフト41側に押し込む(矢印α)。これにより、くさび部材57は、スローププレート56のスロープ部56aを上昇し、スローププレート56とくさび部材57の合計厚さ(T)が増す。付勢プレート52はコイルバネ51の付勢力に抗して上向きに僅かに移動すると共に(矢印β)、上受け部材53は下向きに押し下げられ(矢印γ)、紙製芯72を下向きに押し込むことになり、紙製芯72は下受け部材35を下向きに押し付けるように降下する(矢印δ)。その結果、ブレーキパッド39が下受け部材35とブラケット25との間で圧縮されて、下受け部材35の回転にブレーキが作用し、回転抵抗が大きくなる。下受け部材35の回転抵抗が大きくなると、下受け部材35と上受け部材53に挟まれている紙製芯72の回転のブレーキ力も増すから、ストレッチフィルム巻70の回転抵抗は大きくなって、図12に示すようにストレッチフィルム71のテンションが強くなり、その引き出しを鈍化させることができる。
【0038】
すなわち、ストレッチフィルム送出器30に配置されたブレーキ装置40のブレーキレバー45を操作することで、図6図7及び図12に示すようにストレッチフィルム巻70の回転抵抗を調整でき、ストレッチフィルム71を引き出すテンションを調整することができる。
【0039】
上記構成のストレッチフィルム送出器30を具えるストレッチ梱包機10は、パレット積みした箱詰め物品などの物品を回転テーブル12に載せる。そして、まず、グリップ44或いはハンドル27(図12参照)を掴んでストレッチフィルム送出器30を下向きに押し下げる。これにより、ストレッチフィルム送出器30を支持支柱20に沿って下に移動し、ストレッチフィルム巻70を物品の下段に高さを合わせることができる。本発明では、ストレッチフィルム送出器30は、ストレッチフィルム巻70よりも下側には下受け部材35の一部とブレーキパッド39、ブラケット25しかないので、ベース11の近傍までストレッチフィルム巻70を下降させることができる(図13(b)の高さH参照)。故に、回転テーブル12の直ぐ上にあるパレット90からストレッチフィルム71の巻き付けを行なうことができる。
【0040】
この状態から、ストレッチフィルム71を引き出し、スイッチ14を操作して回転テーブル12を回転させながらパレット90から巻き付けていく。このとき、下受け部材35とブラケット25との間にはブレーキパッド39による小さなブレーキ力が作用しているから、図12に示すように弱いテンションでスムーズにストレッチフィルム71を引き出すことができ、物品に対して巻方向に皺を生じることなく巻き付けを行なうことができる。
【0041】
ストレッチフィルム71をパレット90の外周に1周以上巻き付けた後は、ブレーキレバー45でストレッチフィルム71のテンションを任意の強さに調整しながら、そのままグリップ44を持ってストレッチフィルム送出器30を上側に引っ張り、ストレッチフィルム送出器30を支持支柱20に対して上方にスライド移動させつつ、巻き付けを行なう。ストレッチフィルム送出器30は、バランスウェイト22との釣り合いにより、大きな労力を要することなく、上向きに引き上げることができる。
【0042】
そして、物品の上段までストレッチフィルム71が巻き付けられると、回転テーブル12の回転を停止させると共に、ストレッチフィルム送出器30は、図7及び図12に示すようにブレーキハンドル43を握り、ブレーキ装置40のブレーキ力を作用させる。これにより、ストレッチフィルム巻70の回転抵抗を大きくしてブレーキを作用させることができ、ストレッチフィルム71の引き出しを鈍化させて、テンションを強くすることができる。
【0043】
回転テーブル12は、スイッチ14の操作によりモーターを停止させることで、その回転速度は急激に低下するが、所定の間、慣性により回転する。このとき、ストレッチフィルム71が同じテンションで引き出されていると、ストレッチフィルム巻70も慣性により空転して、ストレッチフィルム71が弛んで絡んだり、切断し難くなる等の不具合が生ずるが、上記のとおりストレッチフィルム巻70の回転に抵抗を与えてストレッチフィルム71の引き出しを鈍化させることで、ストレッチフィルム71を張った状態で維持でき、その切断もナイフ等で美しく行なうことができる。
【0044】
なお、物品へストレッチフィルム71を巻き付けている途上で、ストレッチフィルム71に弛みが生じるような物品の積み方であっても、適宜ブレーキレバー45を握ってブレーキ力を作用させ、ストレッチフィルム71のテンションを調整すればよい。
【0045】
本発明のストレッチフィルム送出器30は、ブレーキ装置40の主要構成をストレッチフィルム巻70の上側に配置できたことで、図13に示すように、特許文献1のストレッチフィルム送出器81(図13(a))よりもストレッチフィルム送出器30を低い位置まで移動させることができ(図13(b))、巻付け可能なストレッチフィルム71の下限高さHを低くすることができる。従って、作業員が手で下にストレッチフィルム71を引っ張らなくても、パレット90から直接ストレッチフィルム71を巻き付けることができる。パレット90が、薄いシート状のパレット(シートパレット)であっても、回転テーブル12の近傍の低い位置の物品から上手くストレッチフィルム71を巻き付けできるというすぐれた効果も具備する。
【0046】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0047】
たとえば、付勢力調整手段55は、上受け部材53を下方に押し込むことができる構成であれば、上記したスローププレート56とくさび部材57に限られない。
【符号の説明】
【0048】
10 ストレッチフィルム梱包機
12 回転テーブル
30 ストレッチフィルム送出器
35 下受け部材
39 ブレーキパッド
40 ブレーキ装置
50 付勢手段
52 付勢プレート
53 上受け部材
56 スローププレート
57 くさび部材
図1
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