(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
E04H1/04 A
(21)【出願番号】P 2021026971
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521079570
【氏名又は名称】茨木 歩
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】茨木 歩
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 美紗子
【審判官】居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-055051(JP,A)
【文献】特開2016-216890(JP,A)
【文献】特開2015-034451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数の住戸を備えた集合住宅において、前記複数の住戸には、界壁を介した一対の住戸である第1の住戸と第2の住戸が含まれており、前記界壁は、前記第1の住戸と前記第2の住戸を直線状に仕切る直線壁部と、前記直線壁部と連続し、かつ前記第1の住戸と前記第2の住戸を蛇行するようにして仕切る異形壁部と、を有しており、
前記第1の住戸は前記界壁と対向する第1の壁を備え、前記第2の住戸は前記界壁と対向する第2の壁を備え、
前記異形壁部は、前記直線壁部を延長することで規定される、前記第1の住戸と前記第2の住戸の境界線を挟んで、前記第1の壁側と前記第2の壁側に出っ張った状態となっており、
前記異形壁部は、前記第1の住戸および前記第2の住戸における位置が固定されており、
前記異形壁部は、前記第1の住戸に向かって開口する第1の空間と、前記第2の住戸に向かって開口する第2の空間と、を有し、
前記第1の住戸は前記第1の空間の開口部と対向し、前記第1の空間と接する位置に配置される第3の空間を有し、前記第2の住戸は前記第2の空間の開口部と対向し、前記第2の空間と接する位置に配置される第4の空間を有し、
前記第1の住戸は前記第2の空間に対して前記第4の空間と逆側に前記界壁を挟んで接する位置に配置した第5の空間を有し、前記第2の住戸は前記第1の空間に対して前記第3の空間と逆側に前記界壁を挟んで接する位置に配置した第6の空間を有し、
前記第1の空間と前記第2の空間は住宅における通路とは異なる第1の機能に用いられ、前記第3の空間と前記第4の空間は住宅における通路とは異なる第2の機能に用いられ、前記第5の空間と前記第6の空間は住宅における通路とは異なる第3の機能に用いられ、
前記第1の空間、第3の空間、第5の空間は、それぞれ異なる設備を有する空間であって、
前記第2の空間、第4の空間、第6の空間は、それぞれ異なる設備を有する空間であって、
前記第1の住戸は前記第1の壁と、前記第3の空間および前記第5の空間と、に挟まれる形に位置する第1の廊下を備え、前記第2の住戸は前記第2の壁と、前記第4の空間および前記第6の空間と、に挟まれる形に位置する第2の廊下を備え、
前記第1の廊下において、前記第1の壁は前記第1の住戸が備える第1の玄関から前記第1の住戸において前記第1の玄関と反対側の端に配置される第7の空間まで連続した壁であり、前記第2の廊下において、前記第2の壁は前記第2の住戸が備える第2の玄関から前記第2の住戸において前記第2の玄関と反対側の端に配置される第8の空間まで連続した壁である、
集合住宅。
【請求項2】
前記第1の空間は前記第1の壁側に向かって開口し、前記第2の空間は前記第2の壁側に向かって開口する、請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記第1の住戸は前記第1の壁に前記第1の玄関から前記第7の空間まで連続する第1の手すりを取り付け、前記第2の住戸は前記第2の壁に前記第2の玄関から前記第8の空間まで連続する第2の手すりを取り付ける、請求項2に記載の集合住宅。
【請求項4】
前記第1の住戸は前記第1の壁に開口部を取り付け、前記第2の住戸は前記第2の壁に開口部を取り付ける、請求項3に記載の集合住宅。
【請求項5】
前記第7の空間は前記第1の住戸が有する第1の居室であり、前記第8の空間は前記第2の住戸が有する第2の居室であり、前記第1の住戸は居室として前記第1の居室のみを有し、前記第2の住戸は居室として前記第2の居室のみを有する、請求項4の集合住宅。
【請求項6】
前記第1の機能および前記第2の機能は、いずれも水回りに関する機能である、請求項5に記載の集合住宅。
【請求項7】
前記第1の機能は浴室であり、前記第2の機能は脱衣場である、請求項6に記載の集合住宅。
【請求項8】
前記第1の空間および前記第2の空間は前記第1の機能を発揮するための第1の設備を有し、前記第3の空間および前記第4の空間は前記第2の機能を発揮するための第2の設備を有する、請求項7に記載の集合住宅。
【請求項9】
前記第1の設備は浴槽またはシャワーであり、前記第2の設備は洗面台または洗濯機である、請求項8に記載の集合住宅。
【請求項10】
前記第3の機能は、水回りに関する機能である、請求項9に記載の集合住宅。
【請求項11】
前記第3の機能はトイレである、請求項10に記載の集合住宅。
【請求項12】
前記第5の空間および前記第6の空間は前記第3の機能を発揮するための第3の設備を有する、請求項11に記載の集合住宅。
【請求項13】
前記第3の設備は便器である、請求項12に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に都市部において、ワンルームタイプの複数の住戸を備えた集合住宅が多く建築されている。都市部では各住戸の専有面積を広く確保できないことが多く、住戸内に設置が必要な水回り設備などの効率的な配置が求められる。
【0003】
特許文献1には、界壁を構成する異形壁部が一対の住戸のうち一方の住戸に向かって開口する第一空間と、他方の住戸に向かって開口する第二空間とを備えることで、これら第一空間と第二空間が、界壁から各住戸側にはみ出るスペースを細長くすることができる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、異形壁部に沿って配置される廊下と、廊下に沿って配置される水廻りを中心とした住宅設備と、が左右対称的に設けられている。しかし、一対の住戸において左右対称的に設備を配置した場合、2つの部屋で設備間の位置関係は異なる結果となる。特許文献1では、一方の住戸では異形壁部に配置されたトイレの開口部に対向する位置には風呂が配置されており、他方の住戸では異形壁部に配置されたトイレの開口部に対向する位置にはキッチンが配置されている。
【0006】
一対の住戸で設備の位置関係が異なる場合、施工に使用するパーツや施工方法を共通化することができず、施工費用を削減することが難しい。例えば、浴槽、便器などの設備は共通のものが使えたとしても、各設備を住戸内に配置する際に使用するドア、床材、壁材等のパーツが異なる内容となる可能性がある。
【0007】
そこで、本開示において、住宅における機能をそれぞれ有する複数の空間について、一対の住戸で位置関係を保った状態で集合住宅を設計する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態によると、隣接する複数の住戸を備えた集合住宅において、複数の住戸には、界壁を介した一対の住戸である第1の住戸と第2の住戸が含まれており、界壁は、第1の住戸と第2の住戸を直線状に仕切る直線壁部と、直線壁部と連続し、かつ第1の住戸と第2の住戸を蛇行するようにして仕切る異形壁部と、を有しており、異形壁部は、第1の住戸に向かって開口する第1の空間と、第2の住戸に向かって開口する第2の空間と、を有し、第1の住戸は第1の空間の開口部と対向する第3の空間を有し、第2の住戸は第2の空間の開口部と対向する第4の空間を有し、第1の空間と第2の空間は住宅における第1の機能に用いられ、第3の空間と第4の空間は住宅における第2の機能に用いられる、集合住宅。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、住宅における機能をそれぞれ有する複数の空間について、一対の住戸で位置関係を保った状態で集合住宅を提供することができる。
【0010】
水回り設備の施工方法として、工場で事前に必要なパーツを製造して現場で組み立てを行う、いわゆるユニットバス方式が普及している。例えば、3点ユニットバスは、浴室、トイレ、洗面台に必要なパーツを工場で事前に製造し、現地で組み立てを行う。
【0011】
ユニットバス方式を用いる場合、例えば、浴室とトイレの位置関係が同じであれば、必要なパーツおよび施工方法の共通化を図ることができる。住宅の施工において、パーツおよび施工方法の共通化を図ることで、施工時あるいはメンテナンス時の費用を削減することができる。
【0012】
住宅における機能をそれぞれ有する複数の空間について、一対の住戸で位置関係を保った状態で集合住宅を提供することで、住宅の施工時あるいはメンテナンス時の費用を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】集合住宅における第1の住戸10と第2の住戸20、および、第1の住戸10と第2の住戸20を仕切る界壁40の位置関係を示す図である。
【
図2】第1の住戸10および第2の住戸20に配置される、第1の空間12と、第2の空間22と、第3の空間13と、第4の空間23の位置及び各空間が有する設備を示す図である。
【
図3】第1の住戸10および第2の住戸20に配置される、第5の空間14と、第6の空間24と、梁60の位置及び各空間が有する設備を示す図である。
【
図4】第1の住戸10および第2の住戸20に各設備を配置した詳細な間取り図である。
【
図5】梁60が異形壁部42を通過する場合と通過しない場合とを比較した第1の住戸10および第2の住戸20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
<第1の実施の形態>
<1 集合住宅の全体構成>
【0016】
図1は、集合住宅1における第1の住戸10と第2の住戸20、および、第1の住戸10と第2の住戸20を仕切る界壁40の位置関係を示す図である。
【0017】
集合住宅1は、左右に隣接する第1の住戸10と、第2の住戸20と、外廊下30と、を備える。第1の住戸10は、外廊下30から第1の住戸10に入室するための玄関101を備える。第2の住戸20は、外廊下30から第2の住戸20に入室するための玄関201を備える。
【0018】
第1の住戸10と第2の住戸20は、界壁40を介した一対の住戸である。なお、第1の住戸10の左側には第1の住戸10と隣接する他の住戸が隣接しており、第2の住戸20の右側には第2の住戸20と隣接する他の住戸が隣接しているが、本発明における界壁40を介していない状態となっている。従って、
図1に示す第1の住戸10と第2の住戸20が一対の住戸となっている。
【0019】
第1の住戸10は、界壁40と対向する他の壁11を有しており、界壁40と壁11の間の空間が第1の住戸10が占有するスペースとなる。同様に、第2の住戸20は、界壁40と対向する他の壁21を有しており、界壁40と壁21の間の空間が第2の住戸20が占有するスペースとなる。
【0020】
第1の住戸10と第2の住戸20の境界をなす界壁40は、第1の住戸10と第2の住戸20を直線状に仕切る直線壁部41と、この直線壁部41と連続し、かつ第1の住戸10と第2の住戸20を蛇行するようにして仕切る異形壁部42と、を有する。
【0021】
異形壁部42は、第1の住戸10と第2の住戸20の境界線を挟んで、第1の住戸10の壁11側と第2の住戸20の壁21側に出っ張った状態となっている。
【0022】
図2は、第1の住戸10および第2の住戸20に配置される、第1の空間12と、第2の空間22と、第3の空間13と、第4の空間23の位置及び各空間が有する設備を示す図である。
【0023】
異形壁部42は、第1の住戸10の壁11側に向かって開口する第1の空間12と、第2の住戸20の壁21側に向かって開口する第2の空間22と、を有する。
【0024】
第1の空間12と第2の空間22は、界壁40の異形壁部42を挟んで隣接する。
【0025】
第1の空間12と第2の空間22が界壁40の異形壁部42に形成されることで、第1の空間12と第2の空間22は、第1の住戸10と第2の住戸20の境界線から第1の住戸10と第2の住戸20にはみ出るスペースを短くすることができる。
【0026】
第1の住戸10は第1の空間12の開口部15と対向する第3の空間13を有し、第2の住戸20は第2の空間22の開口部25と対向する第4の空間23を有する。
【0027】
第1の空間12の開口部15および第2の空間22の開口部25は、例えば、ドアである。開口部15および開口部25は、開き戸でもよいし、引き戸でもよいし、折り戸でもよい。
【0028】
第1の空間12と第2の空間22は、住宅における第1の機能として用いられる。第3の空間13と第4の空間23は、住宅における第2の機能として用いられる。住宅における第1の機能および住宅における第2の機能の詳細は後述する。
【0029】
第3の空間13は、第1の空間12の開口部15と対向して配置されることにより、主に界壁40の異形壁部42と壁11の間のスペースに配置されることとなる。これにより、第1の住戸10は、界壁40の直線壁部41と壁11の間のスペースを広く確保することができる。
【0030】
第4の空間23は、第2の空間22の開口部25と対向して配置されることにより、主に界壁40の異形壁部42と壁21の間のスペースに配置されることとなる。これにより、第2の住戸20は、界壁40の直線壁部41と壁21の間のスペースを広く確保することができる。
【0031】
第1の住戸10は、界壁40の直線壁部41と壁11の間のスペースを玄関101および居室104として使用する。第1の住戸10の間取りの詳細は後述する。第2の住戸20は、界壁40の直線壁部41と壁21の間のスペースを玄関201および居室204として使用する。第2の住戸20の間取りの詳細は後述する。
【0032】
第3の空間13は、第1の空間12と接する位置に配置される。第4の空間23は第2の空間22と接する位置に配置される。
【0033】
第1の住戸10において、第1の空間12は、第3の空間13からのみ入室可能である。第2の住戸20において、第2の空間22は、第4の空間23からのみ入室可能である。
【0034】
第1の住戸10において、ユーザは、第3の空間13から第1の空間12の開口部15であるドアを通じて第1の空間12に入室する。第2の住戸20において、ユーザは、第4の空間23から第2の空間22の開口部25であるドアを通じて第2の空間22に入室する。
【0035】
住宅における第1の機能および住宅における第2の機能はいずれも水回りに関する機能である。
【0036】
水回りに関する機能は、例えば、浴室、脱衣場、洗面室、ランドリールーム、トイレ、キッチン等である。
【0037】
第1の空間12と、第2の空間22と、第3の空間13と、第4の空間23と、は、全て水回りに関する機能として用いられるため、上水道の配管をまとめて、例えばパイプスペース等に配置することができる。
【0038】
住宅における第1の機能は浴室であり、住宅における第2の機能は脱衣場である。
【0039】
第1の住戸10において、第1の空間12は浴室として用いられ、第3の空間13は脱衣場として用いられる。第1の空間12は第3の空間13からのみ入室可能となっているため、ユーザは脱衣場からのみ浴室に入室することができる。
【0040】
第2の住戸20において、第2の空間22は浴室として用いられ、第4の空間23は脱衣場として用いられる。第2の空間22は第4の空間23からのみ入室可能となっているため、ユーザは脱衣場からのみ浴室に入室することができる。
【0041】
第1の空間12および第2の空間22は住宅における第1の機能を発揮するための第1の設備51を有し、第3の空間13および第4の空間23は住宅における第2の機能を発揮するための第2の設備52を有する。
【0042】
つまり、第1の住戸10において、第1の空間12は住宅における第1の機能を発揮するための第1の設備51を有し、第3の空間13は住宅における第2の機能を発揮するための第2の設備52を有する。
【0043】
同様に、第2の住戸20において、第2の空間22は住宅における第1の機能を発揮するための第1の設備51を有し、第4の空間23は住宅における第2の機能を発揮するための第2の設備52を有する。
【0044】
第1の設備51は、浴槽またはシャワーである。
【0045】
第1の住戸10は、第1の空間12に第1の設備51である浴槽を有することで、第1の空間12を第1の機能である浴室として機能させる。第2の住戸20は、第2の空間22に第1の設備51である浴槽を有することで、第2の空間22を第1の機能である浴室として機能させる。
【0046】
第1の空間12および第2の空間22は、住宅における第1の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第1の空間12および第2の空間22は、浴槽に加えてシャワーを有してもよい。
【0047】
第2の設備52は、洗面台または洗濯機である。
【0048】
第1の住戸10は、第3の空間13に第2の設備52である洗面台を有することで、第3の空間13を第2の機能である脱衣場として機能させる。第2の住戸20は、第4の空間23に第2の設備52である洗面台を有することで、第4の空間23を第2の機能である脱衣場として機能させる。
【0049】
第3の空間13および第4の空間23は、住宅における第2の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第3の空間13および第4の空間23は、洗面台に加えて洗濯機を有してもよい。
【0050】
図3は、第1の住戸10および第2の住戸20に配置される、第5の空間14と、第6の空間24と、梁60の位置及び各空間が有する設備を示す図である。
【0051】
第1の住戸10は、第2の空間22に対して第4の空間23と逆側に界壁40を挟んで接する位置に配置した第5の空間14を有する。
【0052】
第2の住戸20は、第1の空間12に対して第3の空間13と逆側に界壁40を挟んで接する位置に配置した第6の空間24を有する。
【0053】
第5の空間14は、主に界壁40の異形壁部42と壁11の間に配置されることとなる。これにより、第1の住戸10は、界壁40の直線壁部41と壁11の間のスペースを広く確保することができる。
【0054】
第6の空間24は、主に界壁40の異形壁部42と壁21の間に配置されることとなる。これにより、第2の住戸20は、界壁40の直線壁部41と壁21の間のスペースを広く確保することができる。
【0055】
第5の空間14と第6の空間24は、住宅における第3の機能に用いられる。
【0056】
住宅における第3の機能は、水回りに関する機能である。
【0057】
住宅における第3の機能は、トイレである。
【0058】
第5の空間14および第6の空間24は、住宅における第3の機能を発揮するための第3の設備53を有する。
【0059】
つまり、第1の住戸10において、第5の空間14は、住宅における第3の機能を発揮するための第3の設備53を有する。
【0060】
同様に、第2の住戸20において、第6の空間24は、住宅における第3の機能を発揮するための第3の設備53を有する。
【0061】
第3の設備53は、便器である。
【0062】
第1の住戸10は、第5の空間14に第3の設備53である便器を有することで、第5の空間14を第3の機能であるトイレとして機能させる。第2の住戸20は、第6の空間24に第3の設備53である便器を有することで、第6の空間24を第3の機能であるトイレとして機能させる。
【0063】
第5の空間14および第6の空間24は、住宅における第3の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第5の空間14および第6の空間24は、便器に加えて流し台を有してもよい。
【0064】
第1の住戸10および第2の住戸20は、界壁40と直交する形で梁60を配置する。梁60は、界壁40の異形壁部42を避ける位置に配置される。
【0065】
図4は、第1の住戸10および第2の住戸20に各設備を配置した詳細な間取り図である。
【0066】
第1の住戸10は、外廊下30に向かって開口する玄関101を有する。同様に、第2の住戸20は、外廊下30に向かって開口する玄関201を有する。
【0067】
第1の住戸10は、廊下102を有する。廊下102は、壁11と、第3の空間13および第5の空間14とに挟まれる形に位置し、一方の端で玄関101、他方の端で居室104と接続する。
【0068】
廊下102は、第3の空間13および第5の空間14とはドア等を介して繋がっているが、第1の空間12とは繋がっていない。つまり、ユーザは、廊下102から第1の空間12に直接入室することはできない。ユーザは、第3の空間13を通じて、第1の空間12に入室する。
【0069】
第1の住戸10は、第1の空間12と、第3の空間13と、第5の空間14と、を界壁40側に寄せて配置することで、廊下102の幅を広く確保することができる。
【0070】
第2の住戸20は、廊下202を有する。廊下202は、壁21と、第4の空間23および第6の空間24とに挟まれる形に位置し、一方の端で玄関201、他方の端で居室204と接続する。
【0071】
廊下202は、第4の空間23および第6の空間24とはドア等を介して繋がっているが、第2の空間22とは繋がっていない。つまり、ユーザは、廊下202から第2の空間22に直接入室することはできない。ユーザは、第4の空間23を通じて、第2の空間22に入室する。
【0072】
第2の住戸20は、第2の空間22と、第4の空間23と、第6の空間24と、を界壁40側に寄せて配置することで、廊下202の幅を広く確保することができる。
【0073】
第1の住戸10は、キッチン103を有する。第2の住戸20は、キッチン203を有する。キッチン103およびキッチン203は、流し台、ガスコンロ等の設備を有する。キッチン103およびキッチン203は、冷蔵庫、食器棚等の設備を有してもよい。
【0074】
第1の住戸10は、寝室兼居間として利用される居室104を有する。第2の住戸20は、寝室兼居間として利用される居室204を有する。
【0075】
居室104は、玄関101と反対側に位置する直線壁部41と壁11の間のスペースとなる。居室204は、玄関201と反対側に位置する直線壁部41と壁21の間のスペースとなる。
【0076】
第1の住戸10および第2の住戸20は、異形壁部42を玄関101および玄関201に近い位置に配置することで、居室104および居室204のスペースを広く確保することができる。
【0077】
第1の住戸10は、第1の空間12に第1の設備51である浴槽を有することで、第1の空間12を第1の機能である浴室として機能させる。第2の住戸20は、第2の空間22に第1の設備51である浴槽を有することで、第2の空間22を第1の機能である浴室として機能させる。
【0078】
第1の空間12および第2の空間22は、第1の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第1の空間12および第2の空間22は、浴槽に加えてシャワーを有してもよい。
【0079】
第1の住戸10は、第3の空間13に第2の設備52である洗面台を有することで、第3の空間13を第2の機能である脱衣場として機能させる。第2の住戸20は、第4の空間23に第2の設備52である洗面台を有することで、第4の空間23を第2の機能である脱衣場として機能させる。
【0080】
第3の空間13および第4の空間23は、第2の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第3の空間13および第4の空間23は、洗面台に加えて洗濯機を有してもよい。
【0081】
第1の住戸10は、第5の空間14に第3の設備53である便器を有することで、第5の空間14を第3の機能であるトイレとして機能させる。第2の住戸20は、第6の空間24に第3の設備53である便器を有することで、第6の空間24を第3の機能であるトイレとして機能させる。
【0082】
第5の空間14および第6の空間24は、第3の機能を発揮するために必要な設備を複数有してもよい。例えば、第5の空間14および第6の空間24は、便器に加えて流し台を有してもよい。
【0083】
本開示によれば、第1の住戸10および第2の住戸20において、第1の空間12、第2の空間22、第3の空間13、第4の空間23、第5の空間14、第6の空間24は、全て界壁40に寄せた形で配置される。
【0084】
その結果、第1の住戸10は、壁11を玄関101から居室104まで連続した壁として利用することができる。同様に、第2の住戸20は、壁21を玄関201から居室204まで連続した壁として利用することができる。
【0085】
第1の住戸10および第2の住戸20は、壁11および壁21に何らかの設備を取り付けてもよい。
【0086】
第1の住戸10および第2の住戸20は、壁11および壁21に手すり105および手すり205を取り付けてもよい。第1の住戸10は、壁11に玄関101から居室104まで連続する手すり105を取り付けてもよい。同様に、第2の住戸20は、壁21に玄関201から居室204まで連続する手すり205を取り付けてもよい。
【0087】
一般的なマンションでは玄関を入って左右に分かれた形で部屋や水回り設備を配置することが多いため、各住戸は、界壁と対向する壁に連続する手すりを付けることが困難である。本開示の住戸であれば、各住戸は、界壁と対向する壁に連続する手すりを取り付けることができる。
【0088】
高齢化が進む近年、行政は住戸のバリアフリー化を推進しており、ワンルームマンション等にも積極的に手すり等の設置を求める条例が制定されている。本開示の住戸では、各住戸の玄関から居室に至るまで途切れることなく手すりを設置することができるため、手すりを必要とする入居者の利便性を高めることができる。
【0089】
第1の住戸10および第2の住戸20は、壁11および壁21に開口部を取り付けてもよい。例えば、第1の住戸10は、壁11に窓を取り付けてもよい。同様に、第2の住戸20は、壁21に窓を取り付けてもよい。
【0090】
一般的なマンションでは玄関を入って左右に分かれた形で部屋や水回り設備を配置することが多いため、各住戸は、界壁と対向する壁に窓を配置することが困難な場合がある。本開示の住戸であれば、各住戸は、界壁と対向する壁に自由なレイアウトで窓を取り付けることができ、採光などの自由度を高めることができる。
【0091】
図5は、梁60が異形壁部42を通過する場合と通過しない場合とを比較した第1の住戸10および第2の住戸20の断面図である。
【0092】
図5は、第1の住戸10および第2の住戸20を、
図4のB-B’で示した位置で切断した断面図となる。
図4のB-B’は主に第2の住戸20を通過しているが、界壁40の異形壁部42により、一部の区間は第1の空間12を通過している。
【0093】
結果として、
図5の断面図は、第1の空間12と、第2の空間22と、の両方を含む。
【0094】
図5(A)は、梁60が異形壁部42を通過しない場合の第1の住戸10および第2の住戸20の切断図である。
【0095】
図5(B)は、梁60が異形壁部42を通過する場合の第1の住戸10および第2の住戸20の切断図である。
【0096】
図5(B)のように、梁60が異形壁部42を通過する場合、梁60が第2の空間22の一部を通過する。そのため、第2の空間22は、梁欠きを有する必要がある。
【0097】
例えば、第1の空間12および第2の空間22にユニットバスを設置する場合、第2の空間22にのみ梁欠きを形成することで、施工費の増加などの問題が発生する。
【0098】
図5(A)のように、梁60が異形壁部42を通過しない場合、施工費の増加を防ぐことができる。
【0099】
<2 小括>
以上のように、本開示によると、住宅における機能をそれぞれ有する複数の空間について、一対の住戸で位置関係を保った状態で集合住宅を提供することができる。
【0100】
<3 付記>
以上の各実施の形態で説明した事項を以下に付記する。
【0101】
(付記1)隣接する複数の住戸を備えた集合住宅において、複数の住戸には、界壁40を介した一対の住戸である第1の住戸10と第2の住戸20が含まれており、界壁40は、第1の住戸10と第2の住戸20を直線状に仕切る直線壁部41と、直線壁部41と連続し、かつ第1の住戸10と第2の住戸20を蛇行するようにして仕切る異形壁部42と、を有しており、異形壁部42は、第1の住戸10に向かって開口する第1の空間12と、第2の住戸20に向かって開口する第2の空間22と、を有し、第1の住戸10は第1の空間12の開口部15と対向する第3の空間13を有し、第2の住戸20は第2の空間22の開口部25と対向する第4の空間23を有し、第1の空間12と第2の空間22は住宅における第1の機能に用いられ、第3の空間13と第4の空間23は住宅における第2の機能に用いられる、集合住宅。
【0102】
(付記2)第3の空間13は第1の空間12と接する位置に配置されており、第4の空間23は第2の空間22と接する位置に配置されている、(付記1)に記載の集合住宅。
【0103】
(付記3)第1の空間12は第3の空間13からのみ入室可能であり、第2の空間22は第4の空間23からのみ入室可能である、(付記2)に記載の集合住宅。
【0104】
(付記4)第1の機能および第2の機能はいずれも水回りに関する機能である、(付記3)に記載の集合住宅。
【0105】
(付記5)第1の機能は浴室であり、第2の機能は脱衣場である、(付記4)に記載の集合住宅。
【0106】
(付記6)第1の空間12および第2の空間22は第1の機能を発揮するための第1の設備51を有し、第3の空間13および第4の空間23は第2の機能を発揮するための第2の設備52を有する、(付記5)に記載の集合住宅。
【0107】
(付記7)第1の設備51は浴槽またはシャワーであり、第2の設備52は洗面台または洗濯機である、(付記6)に記載の集合住宅。
【0108】
(付記8)第1の住戸10は第2の空間22に対して第4の空間23と逆側に界壁40を挟んで接する位置に配置した第5の空間14を有し、第2の住戸20は第1の空間12に対して第3の空間13と逆側に界壁40を挟んで接する位置に配置した第6の空間24を有し、第5の空間14と第6の空間24は住宅における第3の機能に用いられる、(付記1)に記載の集合住宅。
【0109】
(付記9)第3の機能は水回りに関する機能である、(付記8)に記載の集合住宅。
【0110】
(付記10)第3の機能はトイレである、(付記9)に記載の集合住宅。
【0111】
(付記11)第5の空間14および第6の空間24は第3の機能を発揮するための第3の設備53を有する、(付記10)に記載の集合住宅。
【0112】
(付記12)第3の設備53は便器である、(付記11)に記載の集合住宅。
【0113】
(付記13)第1の住戸10および第2の住戸20は界壁40と直交する形で梁60を配置し、梁60は異形壁部42を避ける位置に配置される、(付記1)に記載の集合住宅。
【符号の説明】
【0114】
10 第1の住戸、20 第2の住戸、12 第1の空間、22 第2の空間、13 第3の空間、23 第4の空間、14 第5の空間、24 第6の空間、15 第1の空間の開口部、25 第2の空間の開口部、40 界壁、41 直線壁部、42 異形壁部、51 第1の設備、52 第2の設備、53 第3の設備、60 梁