(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法及びその水酸化カルシウム粉末を用いた青果洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/02 20060101AFI20221017BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20221017BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221017BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C01F11/02 B
A01N59/06 Z
A01P3/00
C11D7/06
(21)【出願番号】P 2021036733
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】513231775
【氏名又は名称】フィーネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100178179
【氏名又は名称】桐生 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】今平 博康
(72)【発明者】
【氏名】苅部 進
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189471(JP,A)
【文献】特開2008-079579(JP,A)
【文献】特開2006-096593(JP,A)
【文献】特開2018-119291(JP,A)
【文献】特開2020-083741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 1/00 -17/00
C04B 2/00 -32/02
C04B40/00 -40/06
A01N 1/00 -65/48
A01P 1/00 -23/00
C11D 1/00 -19/00
A23L 3/358
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法であって、
炭酸カルシウムを土中炉で焼成することにより、硬焼生石灰を生成する硬焼生石灰生成工程と、
前記硬焼生石灰生成工程において生成された硬焼生石灰に加水処理を行うことにより、水酸化カルシウム粉末を生成する水酸化カルシウム粉末生成工程と、
前記水酸化カルシウム粉末生成工程において生成された水酸化カルシウム粉末
のうち、噴霧飛散した水酸化カルシウム粉末を集塵する水酸化カルシウム粉末集塵工程と
を備えたことを特徴とする青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法。
【請求項2】
前記硬焼生石灰生成工程において、前記焼成する期間は3日間であることを特徴とする
請求項1に記載の青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水酸化カルシウム粉末製造方法により製造された水酸化カルシウム粉末を水に添加して、水酸化カルシウム飽和水溶液を生成する工程と、
前記水酸化カルシウム飽和水溶液で青果を3秒~3分間処理する工程と
を備えたことを特徴とする青果洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法及びその水酸化カルシウム粉末を用いた青果洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カット野菜、果物等の青果を殺菌洗浄するために、水酸化カルシウム水溶液が用いられている(例えば、特許文献1参照)。水酸化カルシウム水溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の塩素系殺菌剤に比較して、野菜本来の食感、味、風味等の低下を招き難く、また、塩素系殺菌剤に特有の不快臭がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、青果洗浄用の水酸化カルシウム水溶液の原料となる水酸化カルシウム粉末は、食品添加物規格を満たしているものを使用する必要があるが、高純度で粒子が微細な高品質の水酸化カルシウム粉末を安定的に供給するのは難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、青果洗浄用の高品質な水酸化カルシウム粉末製造方法及びその水酸化カルシウム粉末を用いた青果洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、
本発明の青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末製造方法は、
炭酸カルシウムを土中炉で焼成することにより、硬焼生石灰を生成する硬焼生石灰生成工程と、
前記硬焼生石灰生成工程において生成された硬焼生石灰に加水処理を行うことにより、水酸化カルシウム粉末を生成する水酸化カルシウム粉末生成工程と、
前記水酸化カルシウム粉末生成工程において生成された水酸化カルシウム粉末を集塵する水酸化カルシウム粉末集塵工程と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、微細な高品質の水酸化カルシウム粉末を製造することができる。
【0008】
上記発明において、
前記硬焼生石灰生成工程において、前記焼成する期間は3日間であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、焼締りが進み、硬焼生石灰といわれる中間物質を生成することができる。
【0010】
上記発明において、
前記水酸化カルシウム粉末集塵工程において、
前記水酸化カルシウム粉末生成工程で生成された水酸化カルシウム粉末のうち、噴霧飛散した水酸化カルシウム粉末を集塵することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、噴霧飛散した微細で重量が軽い粉末を集塵することで、平均粒径10μの高品質な水酸化カルシウム粉末を製造することができる。
【0012】
本発明の青果洗浄方法は、
上記水酸化カルシウム粉末製造方法により製造された水酸化カルシウム粉末を水に添加して、水酸化カルシウム飽和水溶液を生成する工程と、
前記水酸化カルシウム飽和水溶液で青果を3秒~3分間処理する工程と
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この特徴によれば、高品質の水酸化カルシウム飽和水溶液を用いて、3秒~3分間という短時間で効率的に青果を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末の製造及び青果洗浄工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末の製造及び青果洗浄工程図である。
図1を参照して、まず、青果洗浄用の水酸化カルシウム粉末の製造工程を説明する。
【0017】
まず、原料となる炭酸カルシウムを土中炉で数日間焼成することにより、硬焼生石灰を生成する(行程S1)。ここで、原料となる炭酸カルシウムは、純度の高い石灰石を用いる。また、炭酸カルシウムを土中炉で焼成する期間は3日間程度の長い期間が好ましい。このように炭酸カルシウムを土中炉で長い期間焼成することで、機械式焼成炉で数時間程度焼成するのに比較して、内部まで分解反応が進行し、結晶が成長合体することで容積が減少し、嵩密度が増大する。
【0018】
次に、工程S1で生成された硬焼生石灰に加水処理を行う(工程S2)。これにより、高熱暴爆が生じ、微細な水酸化カルシウム粉末が生成される。
【0019】
次に、工程S2において生成された水酸化カルシウム粉末のうち、噴霧飛散した水酸化カルシウム粉末を集塵する(行程S3)。これにより、平均粒径約10μの微細で高品質な水酸化カルシウム粉末を集塵することができる。
【0020】
次に、工程S3で生成された水酸化カルシウム粉末を用いて、青果の洗浄処理を行う。具体的には、まず、水に工程S3で生成された水酸化カルシウム粉末を添加して、水酸化カルシウム飽和水溶液を生成する(工程S4)。ここで、水の温度は0~35℃が好ましい。水酸化カルシウム飽和水溶液は、温度25℃において、水酸化カルシウム濃度が0.17質量%、pHは12.4となる。
【0021】
当該水酸化カルシウム飽和水溶液に除菌対象の青果を浸漬する(工程S5)。ここで、処理時間、すなわち、水酸化カルシウム飽和水溶液に青果を浸漬する時間は、当該水酸化カルシウム飽和水溶液が強アルカリ性で除菌力が高いため、短時間(3秒~3分間)で十分であり、効率的に青果の洗浄処理を行うことができる。
【0022】
表1には、上記製造方法で製造された水酸化カルシウム粉末と一般的な農業用消石灰との、除菌力の比較データを示す。表1における試験結果の表上段の数値の単位はLog10
X乗であり、表下段の数値は表上段の数値を実数化し%表示したものである。上記製造方法で製造された水酸化カルシウム粉末を用いた場合は、99.99%までウイルスを略完全に不活性化することができ、ウイルスを完全に不活性化することができない消石灰に比較して、高い除菌力が示されている。
【表1】
また、表2は、上記製造方法で製造された水酸化カルシウム粉末を用いて青果物を除菌した場合、食中毒防止に有効であることを示す資料である。
試験ウイルスは、主要な食中毒菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌、腸管大腸菌O157、サルモネラ、ノロウイルス代替ネコカリシウイルス)であり、試験結果のAは各細菌やウイルスを直接的に作用させた試験であり、Bは有機物で汚染された環境を想定しアルブミン5%を加えての試験である。試験結果の各表の下欄に示すように、全ての試験ウイルスを100.00%まで完全に不活性化することができ、高い除菌力が示されている。
【表2】
【0023】
以上説明したように、上記製造方法により、青果洗浄用の微細な高品質の水酸化カルシウム粉末を製造することができ、当該水酸化カルシウム粉末を用いて、安全かつ短時間で青果の洗浄処理を行うことができる。