(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】映像信号変換装置
(51)【国際特許分類】
H04N 7/01 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
H04N7/01 220
(21)【出願番号】P 2021198853
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2022-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593079944
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】篠田 篤史
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-086364(JP,A)
【文献】特開2008-131573(JP,A)
【文献】特開2010-034696(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155566(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/01
H04N 5/66
G09G 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される入力映像信号に基づき、フレーム毎の信号群が垂直同期信号によって区切られるとともに各フレームにおいて水平同期信号によって区切られるライン毎の信号群である水平ラインが所定数含まれる出力映像信号を出力する映像信号変換装置であって、
クロック信号の周波数が第1周波数である前記入力映像信号に対してスケーリングを行うことによりフレームのサイズを変更した前記出力映像信号を生成し、且つ前記出力映像信号の水平同期信号のタイミングを調整する信号変換部を有し、
前記出力映像信号に含まれる前記所定数の水平ラインは、画素データが含まれ
且つ長さが基準値とされたデータラインが複数続いた後、前記画素データが含まれない複数のブランクラインが最終まで続き
、
前記信号変換部は、前記出力映像信号の垂直同期信号の周波数を前記入力映像信号の垂直同期信号の周波数と同一とし、前記入力映像信号の垂直同期信号の周波数に基づいて前記出力映像信号のクロック信号の周波数を第2周波数に設定し、前記第2周波数に基づいて前記基準値を定め、前記基準値に前記所定数を乗じた長さと前記出力映像信号の1フレーム当たりの長さとの差を特定するための値ΔHを算出し、前記出力映像信号の各フレームにおいて、前記所定数の水平ラインの中から複数の調整ラインを選択し、
複数の前記調整ラインの各々の長さから前記値ΔHを前記複数の調整ラインに分配した値を減算して、複数の前記調整ラインの各々の長さを
所定の許容範囲を満たすように調整する
映像信号変換装置。
【請求項2】
前記入力映像信号は、各フレームにおいて水平同期信号によって区切られる信号群である水平ラインを第1のライン数含んだ信号であり且つ水平ラインの長さが第1の長さで定められ、
前記信号変換部は、前記入力映像信号に基づいて中間映像信号を生成する変換部と、前記出力映像信号の水平同期信号のタイミングを調整する調整部と、を有し、
前記中間映像信号は、各フレームにおいて水平同期信号によって区切られる信号群である水平ラインを第2のライン数含んだ信号であり且つ水平ラインの長さが第2の長さで定められ、
前記所定数は、前記第2のライン数であり、
前記基準値は、前記第2の長さであり
前記調整部は、前記変換部が生成する前記中間映像信号に対して水平同期信号のタイミングの調整を行い、前記中間映像信号の一部をなす複数の水平ラインの長さを前記基準値から増減するように前記出力映像信号を生成する
請求項1に記載の映像信号変換装置。
【請求項3】
前記調整部は、各々の前記調整ラインの増減量を、前記基準値に前記第2のライン数を乗じた長さと前記中間映像信号の1フレーム当たりの長さとの差よりも0に近づくように複数の前記調整ラインの各々の長さを定める
請求項2に記載の映像信号変換装置。
【請求項4】
前記信号変換部は、複数の前記調整ラインを前記データラインの後に続く複数の前記ブランクラインのみから選択する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の映像信号変換装置。
【請求項5】
前記信号変換部は、複数の前記ブランクラインのうち、最終の前記ブランクラインを除く残余の複数の前記ブランクラインのいずれか複数又は全部の長さを前記基準値よりも小さい又は大きい調整値に設定することで、最終の前記ブランクラインの開始タイミングを調整し、
最終の前記ブランクラインの長さが、前記基準値又は前記調整値よりも前記基準値に近い値とされる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の映像信号変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号調整装置及び映像信号変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デジタルビデオ信号のインタフェースを有する半導体装置が開示されている。特許文献1に開示される半導体装置は、1フレームのうち水平方向の奇数番目に位置する複数の奇数ピクセルを含むシリアルデータを受信する第1レシーバと、1フレームのうち水平方向の偶数番目に位置する複数の偶数ピクセルを含むシリアルデータを受信する第2レシーバと、を備える。更に上記半導体装置は、複数の奇数ピクセルと複数の偶数ピクセルを統合し、ラインデータを生成する信号処理部を備える。そして、信号処理部は、ラインデータをスケーリングし、正常なソースドライバに対応するトランスミッタに分配する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載モニタなどの表示機器に与える映像信号は、水平同期信号によって1フレームが複数の水平ラインに区切られ、垂直同期信号によって1フレームの切り替わりのタイミングが定められるようなものが一般的である。この種の映像信号を用いる場合、水平ラインの長さを調整すべき場合が想定される。
【0005】
一例としては、外部機器から出力された映像信号を車載モニタに表示する場合、車載モニタに適したサイズにスケーリングしなければならない場合がある。例えば、ソース機器から与えられる入力映像信号の画像サイズが1600×900であり、入力映像信号の1フレームにおいて、水平同期信号のクロック数が2000クロックであり、ライン数が1000ラインである場合、60FPSの周期で1フレームを生成する場合には、クロック信号の周波数は120MHzである。一方で、車載モニタに出力する出力映像信号の画像サイズが800×450であり、この出力映像信号の1フレームにおいて、水平同期信号のクロック数が1000クロックであり、ライン数が500ラインである場合、入力映像信号と同じ60FPSの周期で出力映像信号の1フレームを生成する場合には、クロック信号の周波数を30MHzにする必要がある。このようなスケーリングを行えば、入力映像信号とフレーム周期を合わせつつ、表示機器に適した画像サイズに変更することができる。なお、1フレームの期間は、一つの垂直同期信号の出力から次の垂直同期信号の出力までの期間である。
【0006】
このようなスケーリングを行う場合、出力映像信号において、最終の水平ラインが終了すべきタイミング(最終の水平同期信号の出力から1000クロック分経過したタイミング)と、フレームの切り替わりタイミング(次の垂直同期信号の出力タイミング)とを正確に合わせるためには、出力映像信号のクロック周波数を正確に30MHzにしなければならない。しかし、何らかの理由により、出力映像信号のクロック周波数を所望の周波数に正確に設定できない場合(例えば、装置において周波数の分解能が低く、所望の周波数からずれる場合等)も想定される。このような場合、垂直同期信号に基づく1フレームの切り替わりタイミングが、最終の水平ラインが終了すべきタイミングからずれてしまい、許容範囲外の長さの水平ラインが生じる懸念がある。なお、上述の問題はあくまで一例であり、他の場面でも、出力映像信号の水平ラインの長さを調整することが望ましい場合があり得る。
【0007】
本開示では、上述された課題の少なくとも一つを解決するために、出力映像信号の水平ラインの長さを調整可能であり、且つ、調整が特定の水平ラインのみに偏ることを抑え得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つである信号調整装置は、
入力される入力映像信号に基づき、フレーム毎の信号群が垂直同期信号によって区切られるとともに各フレームにおいて水平同期信号によって区切られるライン毎の信号群である水平ラインが所定数含まれる出力映像信号を出力する映像信号変換装置に適用される信号調整装置であって、
前記出力映像信号の水平同期信号のタイミングを調整する調整部を含み、
前記出力映像信号に含まれる前記所定数の水平ラインは、画素データが含まれるデータラインが複数続いた後、前記画素データが含まれない複数のブランクラインが最終まで続き、複数の前記データラインにおける全部又は一部の長さが基準値とされ、
前記調整部は、前記出力映像信号の各フレームにおいて、前記所定数の水平ラインの中から複数の調整ラインを選択し、水平同期信号のタイミングを調整することにより複数の前記調整ラインの各々の長さを前記基準値よりも大きい値又は小さい値に調整する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る技術は、出力映像信号の水平ラインの長さを調整することができ、且つ、調整が特定の水平ラインのみに偏ることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の信号調整装置を含む車載システムを概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の車載システムに用いられる映像信号変換装置の一部をなす信号変換部の具体的構成等を説明するブロック図である。
【
図3】
図3は、スケーリングの概念を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、中間映像信号の1フレーム分を概念的に説明する説明図である。
【
図5】
図5は、中間映像信号の1ライン分を概念的に説明する説明図である。
【
図6】
図6は、水平ラインの調整方法を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、水平ラインの調整を行わない場合の問題を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、水平ラインの調整方法について、
図6とは異なる例を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、水平ラインの調整方法について、
図6、
図8とは異なる例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔6〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わされてもよい。
【0012】
〔1〕入力される入力映像信号に基づき、フレーム毎の信号群が垂直同期信号によって区切られるとともに各フレームにおいて水平同期信号によって区切られるライン毎の信号群である水平ラインが所定数含まれる出力映像信号を出力する映像信号変換装置に適用される信号調整装置であって、
前記出力映像信号の水平同期信号のタイミングを調整する調整部を含み、
前記出力映像信号に含まれる前記所定数の水平ラインは、画素データが含まれるデータラインが複数続いた後、前記画素データが含まれない複数のブランクラインが最終まで続き、複数の前記データラインにおける全部又は一部の長さが基準値とされ、
前記調整部は、前記出力映像信号の各フレームにおいて、前記所定数の水平ラインの中から複数の調整ラインを選択し、水平同期信号のタイミングを調整することにより複数の前記調整ラインの各々の長さを前記基準値よりも大きい値又は小さい値に調整する
信号調整装置。
【0013】
上記の〔1〕の信号調整装置は、水平同期信号のタイミングを調整することにより、複数の調整ラインの各々の長さを基準値よりも大きい値又は小さい値に調整することができる。つまり、この信号調整装置は、調整ラインの各々の長さを基準値と違う長さに調整することができる。しかも、この信号調整装置は、複数の調整ラインに分散させて調整することができるため、調整が特定の水平ラインのみに偏ることを抑えることができ、調整が特定の水平ラインのみに偏ることに起因する問題を解消しやすい。
【0014】
本明細書では、水平同期信号のタイミングとは、周期的に出力される各水平同期信号の各々の出力タイミング(各々の開始タイミング)を意味する。例えば、「出力映像信号の各フレームにおける水平同期信号のタイミング」とは、出力映像信号の各フレームに含まれる複数の水平同期信号の各々の出力タイミング(各々の開始タイミング)である。ある1つの調整ラインの時間的な長さは、当該調整ラインの開始時点を定める水平同期信号の出力タイミング(開始タイミング)から当該調整ラインの次の水平ラインの開始時点を定める水平同期信号の出力タイミング(開始タイミング)までの時間的な長さである。従って、調整部は、調整ラインの時間的な長さを調整するためには、当該調整ラインの開始時点を定める水平同期信号の出力タイミングと、当該調整ラインの次の水平ラインの開始時点を定める水平同期信号の出力タイミングとを調整すればよい。
【0015】
「信号調整装置が映像信号変換装置に適用される」とは、信号調整装置が映像信号変換装置の一部として適用される場合を含み、信号調整装置が映像信号変換装置とは別装置として映像信号変換装置から信号を受けるように適用される場合も含む。
【0016】
〔2〕前記入力映像信号は、各フレームにおいて水平同期信号によって区切られる信号群である水平ラインを第1のライン数含んだ信号であり且つ水平ラインの長さが第1の長さで定められ、
前記映像信号変換装置は、前記入力映像信号に基づいて中間映像信号を生成する変換部を有し、
前記中間映像信号は、各フレームにおいて水平同期信号によって区切られる信号群である水平ラインを第2のライン数含んだ信号であり且つ水平ラインの長さが第2の長さで定められ、
前記所定数は、前記第2のライン数であり、
前記基準値は、前記第2の長さであり
前記調整部は、前記変換部が生成する前記中間映像信号に対して水平同期信号のタイミングの調整を行い、前記中間映像信号の一部をなす複数の水平ラインの長さを前記基準値から増減するように前記出力映像信号を生成する
〔1〕に記載の信号調整装置。
【0017】
上記〔2〕の信号調整装置は、第1の長さ及び第1のライン数のフレーム構造を有する入力映像信号から、第2の長さ及び第2のライン数のフレーム構造を有する中間映像信号を生成するように変換部がスケーリングを行う場合に、「変換部が生成した中間映像信号の一部をなす複数の水平ラインの長さをスケーリング後に増減する」という簡易な調整により、複数の調整ラインの長さを基準値と異ならせた出力映像信号を生成することができる。
【0018】
〔3〕前記調整部は、各々の前記調整ラインの増減量を、前記基準値に前記第2のライン数を乗じた長さと前記中間映像信号の1フレーム当たりの長さとの差よりも0に近づくように複数の前記調整ラインの各々の長さを定める
〔2〕に記載の信号調整装置。
【0019】
上記〔3〕の信号調整装置は、基準値に第2のライン数を乗じた長さ(基準値の長さの水平ラインが第2のライン数繰り返されたと仮定した場合の時間的長さ)と、中間映像信号の1フレーム当たりの時間的長さとの差は、調整を行わない場合に予想される最終の水平ラインの増減量(基準値との差)と同程度である。上記信号調整装置は、各々の調整ラインの増減量を上記の差よりも0に近づくように分散させた形で調整することができる。
【0020】
なお、「基準値に第2のライン数を乗じた長さ」から「中間映像信号の1フレーム当たりの長さ」を引いた値(差)が正であれば、上記増減量は、0よりも大きく上記「引いた値」(差)よりも小さい「正の値」の減少量である。「基準値に第2のライン数を乗じた長さ」から「中間映像信号の1フレーム当たりの長さ」を引いた値(差)が負であれば、上記増減量は、上記「引いた値」(差)よりも大きく0よりも小さい「負の値」の減少量(即ち、当該「負の値」の絶対値の増加量)である。
【0021】
〔4〕前記調整部は、複数の前記調整ラインを前記データラインの後に続く複数の前記ブランクラインのみから選択する
〔1〕から〔3〕のいずれか一つに記載の信号調整装置。
【0022】
上記〔4〕の信号調整装置は、特定のラインのみに対して偏った調整を行うことなく調整対象を複数のブランクラインに分けた方式で調整することができ、且つ、複数のデータラインの長さを増減することを強いることなくデータ信号への影響を抑えた方式で調整を行うことができる。
【0023】
〔5〕前記調整部は、複数の前記ブランクラインのうちの最終の前記ブランクラインを除く残余の複数の前記ブランクラインのいずれか複数又は全部の長さを前記基準値よりも小さい又は大きい調整値に設定することで最終の前記ブランクラインの開始タイミングを調整し、
最終の前記ブランクラインの長さが前記基準値又は前記調整値よりも前記基準値に近い値とされる
〔1〕から〔4〕のいずれか一つに記載の信号調整装置。
【0024】
上記〔5〕の信号調整装置は、調整部が最終のブランクラインの開始タイミングを調整することにより、最終のブランクラインの長さを、基準値と一致させるか又は残余のブランクラインの長さよりも基準値に近づけることができる。従って、この信号調整装置は、何らかの誤差が生じても、最終の水平ラインの長さが基準値から大きくずれにくい。
【0025】
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれか一つに記載の信号調整装置を含む映像信号変換装置。
【0026】
上記の〔6〕の映像信号変換装置は、少なくとも上記の〔1〕の信号調整装置と同様の効果を生じさせることができる。
【0027】
<第1実施形態>
1-1.車載システム1の概要
図1には、第1実施形態に係る信号調整装置50を備えた映像信号変換装置10が例示される。更に、
図1には、映像信号変換装置10が適用される車載システム1が例示される。車載システム1は、車両(図示省略)に搭載されるシステムであり、車載モニタ100と車載装置120と映像信号変換装置10とを備える。
【0028】
図1の車載システム1では、外部装置190から出力される映像信号(外部映像信号)が、映像信号変換装置10の入力部32に入力される。映像信号変換装置10は、外部装置190から与えられた映像信号(外部映像信号)を出力映像信号に変換し、出力端子34を介して車載モニタ100に出力する機能を有する。映像信号変換装置10が出力端子34を介して上記出力映像信号を出力する場合に、この出力映像信号が入力部103を介して車載モニタ100に入力される。車載モニタ100は、上記出力映像信号が入力部103に入力される場合、上記外部映像信号に基づく映像(外部映像信号によって表示されるコンテンツなど)をディスプレイ102に表示させ得る。
【0029】
1-2.外部装置190の基本構成及び基本動作
外部装置190は、車載モニタ100及び車載装置120の外部に設けられる装置である。
図1の例では、外部装置190は、映像信号変換装置10の外部の装置である。
図1の例では、外部装置190は、映像信号変換装置10、車載装置120、車載モニタ100のいずれとも異なる装置であり、映像信号変換装置10に向けて映像信号(外部映像信号)を出力し得る装置である。外部装置190は、公知方式の映像信号及び公知方式の音声信号を出力し得る装置であるとよい。外部装置190は、スマートフォン、タブレット端末などの携帯型情報端末であってもよく、その他の情報端末であってもよい。
【0030】
図1の例では、外部装置190が信号線192(例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブルやその他の公知伝送方式のケーブルなど)を介して映像信号変換装置10に電気的に接続されている。なお、HDMIは、登録商標である。外部装置190から出力される信号は、信号線192を介して映像信号変換装置10の入力部32に入力される。以下で説明される代表例では、外部装置190は、HDMI規格に従った映像信号を含む信号(以下、HDMI信号ともいう)を出力し得るHDMIソース機器である。
【0031】
1-3.車載モニタ100の基本構成及び基本動作
車載モニタ100は、ディスプレイ102を有する装置であって且つ自身に入力される映像信号に基づく映像をディスプレイ102に表示し得る装置である。
図1の代表例では、車載モニタ100は、入力部103、映像生成部108、映像合成部101、ディスプレイ102などを備えた装置である。ディスプレイ102は、液晶表示装置などの表示装置として構成され、動画や静止画などの様々な映像を表示し得る。車載モニタ100を構成するディスプレイの種類は、液晶表示装置に限定されず、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなど、他の種類のディスプレイであってもよい。
【0032】
入力部103は、映像信号変換装置10からの映像信号が入力されるインタフェースである。入力部103に入力される映像信号は、例えば、公知の伝送方式(GVIF、LVDS等)のデジタル映像信号であり、シリアル信号である。
【0033】
入力部103は、端子部103Aと変換装置103Bとを備える。端子部103Aは、映像信号変換装置10からの信号が入力される複数の端子を備える部分であり、例えば、コネクタとして構成される。変換装置103Bは、端子部103Aに入力された出力映像信号(シリアル信号)をパラレル信号に変換するデシリアライザである。
【0034】
映像生成部108は、ディスプレイ102に表示するための各種映像を生成する部分である。映像合成部101は、ディスプレイ102に表示する画像を生成する部分である。映像合成部101は、映像生成部108で生成された映像と変換装置103Bで変換された映像とを合成する機能を有する。
【0035】
車載モニタ100は、図示されていない車載通信線を介して各機器と通信を行い得る。この車載通信線は、IE-Bus(Inter Equipment Bus)方式、CAN(Controller Area Network)方式、その他の通信方式などで多重通信を行う通信線である。車載モニタ100は、入力部103に入力される映像信号に基づく映像をディスプレイ102に表示する。
【0036】
1-4.車載装置120の基本構成及び基本動作
車載装置120は、映像信号を出力可能な装置である。
図1の例では、車載装置120は、例えば車載用ナビゲーション装置である。車載装置120は、ナビゲーション機能を有していない車載装置であってもよい。車載装置120は、図示されていない制御装置、音声出力部、記憶部、通信部などを備える。車載装置120は、映像信号を、信号線194を介して出力し得る。
図1の例では、信号線194は、車載装置120から映像信号変換装置10の入力部31に映像信号を伝送するための信号線である。車載装置120から信号線194を介して映像信号変換装置10に送信される映像信号は、例えば、公知の伝送方式(GVIF(Gigabit Video InterFace)、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等)のデジタル映像信号であり、シリアル信号である。
【0037】
車載装置120は、車載通信線を介して情報を送信する機能、及び車載通信線を介して情報を受信する機能を有する。車載装置120は、上記車載通信線を介して各機器と通信を行い得る。車載装置120は、端子部(図示省略)を介して入力される音声信号に応じた音声を出力するようにスピーカ(図示省略)を動作させる機能も有していてもよい。
図1の例では、映像信号変換装置10は、車載装置120の上記端子部に向けて音声信号を出力することもできる。車載装置120は、映像信号変換装置10から入力される音声信号に応じた音声をスピーカが発するように動作させ得る。
【0038】
1-5.映像信号変換装置10の構成及び特徴
映像信号変換装置10は、外部装置190から与えられる映像信号から車載モニタ100での表示に適した出力映像信号を生成し、この出力映像信号を出力端子34から出力し得る装置である。映像信号変換装置10は、入力部31、入力部32、出力端子34、切替装置20、信号変換部16などを有する。
【0039】
入力部31は、映像信号が入力される部分であり、複数の端子を備える第1の入力端子部である。
図1の例では、車載装置120から出力される映像信号が入力部31に入力される。入力部32は、映像信号が入力される部分であり、複数の端子を備える第2の入力端子部である。
図1の例では、外部装置190から出力され且つ信号線192を介して有線方式で伝送される映像信号(外部映像信号)が入力部32に入力される。なお、入力部32は、外部装置190から無線送信される外部映像信号を受信する受信部であってもよい。
【0040】
出力端子34は、映像信号を出力する部分であり、複数の端子を備える出力端子部である。
図1の例では、出力端子34から出力される映像信号は、信号線198を介して車載モニタ100の入力部103に入力される。出力端子34から出力される映像信号は、例えば公知の伝送方式(GVIF、LVDS等)のデジタル映像信号であり、シリアル信号である。
【0041】
切替装置20は、外部装置190からの映像信号(外部映像信号)に基づいて生成される出力映像信号を出力端子34から出力させる動作と、車載装置120から入力される映像信号を出力端子34から出力させる動作とを切り替え得る装置である。切替装置20は、第1条件が成立した場合、外部映像信号に基づく出力映像信号を出力端子34から出力させる。切替装置20は、第1条件とは異なる第2条件が成立した場合、車載装置120から入力される映像信号を出力端子34から出力させる。第1条件及び第2条件は、様々な条件とすることができる。例えば、車載装置120において、所定の入力がなされたことを第1条件としてもよい。
【0042】
信号変換部(信号生成部)16は、外部装置190から与えられる映像信号から車載モニタ100での表示に適した出力映像信号を生成する部分である。信号変換部16が生成した出力映像信号は、信号線42に出力され、信号線42を介して切替装置20に伝送される。
【0043】
信号変換部16は、例えば、
図2のような構成である。
図2の例では、信号変換部16は、信号変換部62と信号調整装置50と出力部64とを備える。代表例では、信号変換部16は、HDMI規格に準拠したHDMI信号を、GVIF規格に準拠したGVIF信号に変換する信号変換部として機能する。
【0044】
信号変換部62は、演算機能及び信号変換機能を有するタイミングコントローラである。信号変換部62は、第1変換部62A及び第2変換部62Bを備える。第1変換部62Aは、入力されるシリアル信号をパラレル信号に変換するデシリアライザである。第1変換部62Aは、外部装置190から入力されたHDMI規格の外部映像信号(シリアル信号)を、パラレル信号に変換する。第1変換部62Aが出力する変換後の信号(パラレル信号)は、垂直同期信号(V-SYNC)、水平同期信号(H-SYNC)、データイネーブル信号(DE)、クロック信号(CLK)、データ信号(R信号、G信号、B信号)などを含み、第1変換部62Aは、これらの信号を並列に出力し、第2変換部62Bに与える。
【0045】
第2変換部62Bは、入力される映像信号に対してスケーリングを行うスケーラとして機能する。第2変換部62Bは、第1変換部62A(デシリアライザ)から入力されるパラレル信号を入力映像信号としてスケーリングを行い、中間映像信号(調整前の出力映像信号)を生成する。スケーリング方法は後述される。第2変換部62Bが生成する中間映像信号は、垂直同期信号(V-SYNC)、水平同期信号(H-SYNC)、データイネーブル信号(DE)、クロック信号(CLK)、データ信号(R信号、G信号、B信号)などを含むパラレル信号である。第2変換部62Bは、これらの信号を並列に出力する。
【0046】
信号調整装置50は、第2変換部62Bが生成した中間映像信号(調整前の出力映像信号)を調整して出力映像信号(調整後の出力映像信号)を生成する。
図1の例では、信号調整装置50は、調整部52を含む。調整部52は、第2変換部62Bが生成した中間映像信号(調整前の出力映像信号)のうちの水平同期信号(H-SYNC)を調整する。信号調整装置50による信号の調整方法は後述される。
【0047】
出力部64は、入力されるパラレル信号(調整後の出力映像信号)をGVIF方式のシリアル信号に変換するシリアライザによって構成される。出力部64には、第2変換部62Bから出力されるパラレル信号の一部である垂直同期信号(V-SYNC)、データイネーブル信号(DE)、クロック信号(CLK)、データ信号(R信号、G信号、B信号)と、信号調整装置50から出力される調整後の水平同期信号(H-SYNC)とが並列に入力される。出力部64は、これらのパラレル信号からGVIF方式のシリアル信号を生成し、信号線42に出力する。
【0048】
なお、映像信号変換装置10は、上述された車載通信線に接続される通信端子(図示省略)や、音声信号を出力する端子(図示省略)なども備える。映像信号変換装置10は、上記通信端子を介して車載通信線に情報を送信する機能を有し、車載通信線で伝送される情報を、上記通信端子を介して受信する機能も有する。映像信号変換装置10は、上記車載通信線を介して各機器と通信を行い得る。
【0049】
1-6.信号変換部の具体的動作
次の説明は、信号変換部16の動作の詳細に関する。
映像信号変換装置10は、外部装置190が出力するHDMI規格の外部映像信号(シリアル信号)を第1変換部62Aによって受信する。デシリアライザとして構成される第1変換部62Aは、外部装置190から外部映像信号(シリアル信号)を受信すると、この外部映像信号をパラレル信号に変換し、上記外部映像信号を反映した、垂直同期信号(V-SYNC)、水平同期信号(H-SYNC)、データイネーブル信号(DE)、クロック信号(CLK)、データ信号(R信号、G信号、B信号)を並列に出力する。第1変換部62Aが出力するパラレル信号は、入力映像信号の一例に相当する。
【0050】
入力映像信号、中間映像信号、出力映像信号のいずれにおいても、映像信号に含まれる垂直同期信号(V-SYNC)は、1フレーム(1画面)の区切りを定める信号である。垂直同期信号によって各フレームの周期が定められる。入力映像信号、中間映像信号、出力映像信号のいずれも、垂直同期信号の周波数は同一である。つまり、中間映像信号及び出力映像信号の各フレームは、入力映像信号の各フレームと同期させて生成される。水平同期信号(H-SYNC)は、各フレームにおける複数のライン(走査線)の各々の区切りを定める信号である。「水平同期信号によって区切られた各期間の信号群」が各走査線の信号群であり、水平ラインである。1つの水平ラインの期間は、その水平ラインに対応する水平同期信号の出力タイミング(
図4、
図5の例では立ち下がりタイミング)から、次の水平同期信号の出力タイミングまでの期間である。水平ラインの長さとは、水平ラインの開始から終了までの時間の長さを意味する。具体的には、水平ラインの長さは、その水平ラインに対応する水平同期信号の出力タイミングから次の水平同期信号の出力タイミングまでの時間的長さ(時間)である。各々の水平ライン(水平同期信号によって区切られる各期間の信号群)は、水平同期信号で区切られる各期間における、データイネーブル信号、データ信号(R信号、G信号、B信号)などを含む。
【0051】
第2変換部62Bは、第1変換部62A(デシリアライザ)から入力されるパラレル信号を入力映像信号として公知の方法でスケーリングを行う。代表例では、
図3の左図のように、第2変換部62Bに与えられる入力映像信号は、各フレームにおいて、水平同期信号によって区切られる水平ライン(第1の水平ライン)が1フレームにおいて第1のライン数L1含まれ、第1の水平ラインの長さ(第1の長さT1)が第1のクロック数H1(水平クロック数H1)を基準として定められる。そして、入力映像信号のクロック信号(CLK)の周波数(クロック周波数)は第1周波数f1である。変換部の一例として機能する第2変換部62Bは、このような入力映像信号に対してスケーリングを行い、上記入力映像信号に基づいて、フレームのサイズが変更された中間映像信号(調整前の出力映像信号)を生成する。
【0052】
第2変換部62Bが生成するスケーリング後の中間映像信号は、
図3の右図のように、各フレームにおいて、水平同期信号によって区切られる水平ライン(第2の水平ライン)が1フレームにおいて第2のライン数L2含まれ、この水平ライン(第2の水平ライン)の長さ(第2の長さT2)が第2のクロック数H2(水平クロック数H2)を基準として定められる。第2のライン数L2は、所定数の一例に相当する。本実施形態では、第2の長さT2が基準値である。よって、以下の説明では、基準値T2とも称される。第2の長さT2(基準値T2)は、中間映像信号の第2のクロック数H2分の長さであり、具体的には、中間映像信号のH2クロック分の時間である。中間映像信号のクロック信号(CLK)の周波数(クロック周波数)は第2周波数f2である。つまり、T2=H2/f2である。第2変換部62Bは、入力映像信号のフレームレートと中間映像信号のフレームレートとが同等になるように第2周波数f2を設定する。
図3の右図のように、中間映像信号は、1フレームにおける所定数L2の水平ライン(走査線)において、画素データが含まれないブランクラインが複数(
図3右図ではA2)続いた後、画素データが含まれるデータラインが複数(
図3右図ではA3)続き、その後、画素データが含まれない複数(
図3右図ではA4)のブランクラインが最終の水平ラインまで続くようになっている。
【0053】
なお、いずれの映像信号においても、各画素におけるデータ信号は、各画素の色を定めるためのRGB信号であり、以降の説明では、データ信号はRGB信号とも称される。RGB信号(データ信号)は、R(赤)色の明るさの度合いを定めるR信号と、G(緑)色の明るさの度合いを示すG信号と、B(青)色の明るさの度合いを示すB信号と、を含む。各画素におけるデータイネーブル信号は、各画素においてRGB信号を有効とするか無効とするかを定める信号である。画素データは、画素の色をRGB信号によって特定可能なデータであり、画像の一部を表示するためのデータである。具体的には、画素データは、データイネーブル信号が有効信号(
図4、
図5の例では、Hレベル信号)とされた期間のRGB信号(R信号、G信号、B信号)である。画素データが含まれない水平ラインとは、当該水平ラインの全期間においてデータイネーブル信号が無効信号(
図4、
図5の例では、Lレベル信号)とされた水平ラインである。画素データが含まれる水平ラインとは、当該水平ラインの少なくとも一部期間においてデータイネーブル信号が有効信号(
図4、
図5の例ではHレベル信号)とされ且つデータイネーブル信号が有効信号とされた期間においてRGB信号(R信号、G信号、B信号)によって各画素の色が特定されるような水平ラインである。
図5の例では、水平ラインにおいて、1つの画素に対応する期間は、1つのクロック信号の立ち上がりから次のクロック信号の立ち上がりまでの期間である。本実施形態ではデータ信号としてRGB信号が例示されるが、色差信号が採用されてもよい。
【0054】
本実施形態では、中間映像信号における全部のデータラインにおいて各データラインの長さが基準値T2とされる。そして、中間映像信号において最終の水平ラインを除く他の水平ラインの長さも上記基準値T2とされる。つまり、中間映像信号では、最終の水平ライン以外の全ての水平ライン(走査線)において各々の水平ラインの長さ(時間)が、第2周波数f2のクロック信号の第2のクロック数H2分の長さとなっている。但し、中間映像信号の1フレームにおいて、最終の水平ラインの終了タイミングは、次のフレームの垂直同期信号の出力によって定められる。従って、最終の水平ライン(走査線)の長さは、上記第2のクロック数H2分の長さから増減する可能性がある。
【0055】
図4は、信号変換部62がスケーリングを行った後の中間映像信号について、1つの垂直同期信号の出力(開始)から次の垂直同期信号の出力(開始)までの期間に着目した信号(1フレームの信号)を概念的に示している。
図5は、
図4の中間映像信号における、1つの水平同期信号の出力(開始)から次の水平同期信号の出力(開始)までの期間に着目した信号(1つの水平ライン(1つの走査線)に着目した信号)を概念的に示している。1フレームの信号とは、1つの垂直同期信号の出力から次の垂直同期信号の出力までの期間(
図4の例では垂直同期信号の立ち下がりから次の立ち下がりまでの期間)に含まれる、垂直同期信号、水平同期信号、データ信号、データイネーブル信号、クロック信号などである。
図4の例では、1フレームの水平ラインの数(ライン数L2)が525ラインであり、1フレームにおけるデータラインの前のブランクラインの数A2が39ラインであり、1フレームにおけるデータラインの数A3が480ラインであり、1フレームにおけるデータラインの後のブランクラインの数A4が6ラインである。そして、1つの水平ラインとは、1つの水平同期信号の出力から次の水平同期信号の出力までの期間(
図5の例では水平同期信号の立ち下がりから次の立ち下がりまでの期間)に含まれる、水平同期信号、データ信号、データイネーブル信号、クロック信号などである。
図5の例では、1つの水平ラインに含まれる「中間映像信号のクロック」の数(1ラインのドット数を示す値)が1000であり、1ラインにおける有効画素の数(データイネーブル信号が有効信号とされる期間の画素数)を示すクロック数B3が800である。
図5の例では、第2の長さT2(基準値)は、中間映像信号の1000クロック分の長さであり、H2=1000である。
【0056】
信号変換部62は、上述のスケーリングを行う機能に加え、水平同期信号を調整するための数値を算出する機能も有する。信号変換部62は、具体的には以下のように各数値を算出することができる。信号変換部62は、基準値T2に第2のライン数L2を乗じた長さX1(時間)と中間映像信号の1フレーム当たりの長さX2(時間)との差を特定するための値であるΔHを求める。中間映像信号の1フレーム当たりの長さは、中間映像信号の垂直同期信号の周期である。長さX1は、X1=T2×L2である。長さX1が、周波数f2のクロック信号(CLK)のC1クロック分であり、長さX2が、周波数f2のクロック信号(CLK)のC2クロック分である場合、X1=C1/f2であり、X2=C2/f2である。そして、ΔHは、ΔH=C1-C2である。つまり、ΔHは、X1に相当するクロック数と、X2に相当するクロック数との差である。例えば、ΔHが正であることは、調整を行わない場合に最終の水平ラインの長さが他の水平ラインの長さ(基準値T2)に対して短くなることを意味する。なお、以下の代表例では、ΔHが正である場合を例に挙げて説明する。
【0057】
ここで、入力映像信号のフレームレートが59.9635(FPS)であり、ブランクラインを含めた中間映像信号及び出力映像信号の解像度が1000×525である場合(即ち、H2=1000,L2=525である場合)を例に挙げる。なお、フレームレートは、垂直同期信号の周波数に相当する。この例では、中間映像信号及び出力映像信号の1フレーム当たりの総ドット数(H2×L2)は、1000×525=525000ドットとなる。59.9635(FPS)のフレームレートで525000ドットを生成し、1ドット当たり1クロックを割り当てる場合、クロック信号の周波数は、31.4808375(MHz)とする必要がある。しかし、信号変換部62の分解能等の制約により、31.4808375(MHz)の周波数でクロック信号を生成できるとは限らない。仮に、信号変換部62の生成するクロック信号(CLK)の周波数が31.48(MHz)である場合、フレームレートが上記59.9635(FPS)の例では、1フレーム当たりの総クロック数(総ドット数)は、31480000/59.9635=524986.0333となる。この例では、30フレームに29フレーム程度の頻度で、1フレーム当たりの総クロック数(総ドット数)が524986となり、30フレームに1フレーム程度の頻度で524987となる。この例において、総クロック数(総ドット数)が524986となるフレームに着目すると、本来、理想的には、総ドット数(総クロック数)は525000ドットが望ましいのであるが、上記の「524986」の例では、ΔH=525000-524986=14のずれが生じてしまう。例えば、H2が1000であれば、最終の水平ラインのドット数(クロック数)は、986となってしまう。このような事態が生じると、仮に、映像信号を与えるモニタの許容範囲が小さい場合(例えば、水平ラインの長さに関して「ずれ」の許容範囲が5クロック以下である場合)には、モニタに対して許容範囲内の長さの水平ラインが入力されなくなり、モニタにおいて適正に映像が表示されない虞がある。上述の問題はあくまで一例であるが、このような問題等に対応するべく、本実施形態に係る信号調整装置50では、以下のような調整を行う。
【0058】
信号変換部62は、上述の中間映像信号における複数(A3)のデータラインの後に続く複数のブランクラインの数A4に基づいて、以下の数1の式の値を求める。
【0059】
【0060】
数1の式が表す値は、ΔH/A4未満でない最小の整数であり、具体的には、ΔH/A4の少数点以下を切り上げて得られる整数である。以下の説明では、Tw1は、以下の数2の式を満たす値である。
【0061】
【0062】
Tw1(即ち、数1の式の値)は、A4だけ含まれる各々のブランクラインにおいてどの程度のクロック数の分だけ長さを減少させれば、1フレーム当たりの上述のずれ(ΔHクロック分の長さ)を調整できるかを示す指標である。なお、本実施形態では、最終の水平ラインは調整ラインではなく、調整部が長さを調整しない水平ラインである。最終の水平ラインの長さは、複数の調整ラインの調整によって定まる「最終の水平ラインの開始タイミング」と「垂直同期信号のタイミング」とによって受動的に決まる。
【0063】
更に、信号変換部62は、以下の数3の式の値を求める。
【0064】
【0065】
以下の説明では、Tcは、以下の数4の式を満たす値である。
【0066】
【0067】
Tc(即ち、数3の式の値)は、ΔH/Tw1未満でない最小の整数であり、具体的には、ΔH/Tw1の少数点以下を切り上げて得られる整数である。そして、信号変換部62は、上述の所定数L2を用い、Vts=(L2+1)-Tcの式によってVtsを求める。Vtsは、Tw1クロック分の長さだけ水平ラインの長さを減少させる調整ライン(走査線)の開始ライン番号である。つまり、本実施形態では、L2ラインが含まれる1フレームにおいて、Vts番目から最終の水平ラインの1つ前のライン(即ち、(L2-1)番目のライン)まで、Tw1クロック分ずつ水平ラインの長さを短くすることを想定している。更に、信号変換部62は、上述の第2のクロック数H2(基準値T2を定めるクロック数)を用い、Ht1=H2-Tw1の式によってHt1を求める。Ht1は、調整ラインの長さを特定するクロック数である。つまり、調整ラインの長さは、中間映像信号のHt1クロック分の長さである。なお、本実施形態の例では、最終の水平ライン(以下では、最終ラインともいう)は調整ラインに該当しない。そして、信号変換部62は、上記の値Vts、Ht1を信号調整装置50に送信する。
【0068】
信号調整装置50は、第2変換部62Bが生成した中間映像信号(調整前の出力映像信号)を調整して出力映像信号(調整後の出力映像信号)を生成する。出力映像信号は、
図3右図に示されるスケーリング後の中間映像信号に対し、水平同期信号のタイミングを調整した信号である。出力映像信号において水平同期信号以外の各信号は、中間映像信号における各信号と同一とすることができる。例えば、
図2の例では、出力映像信号のクロック信号は、中間映像信号のクロック信号と同一である。従って、出力映像信号のクロック信号の周波数(クロック周波数)は、第2変換部62Bが出力する中間映像信号のクロック周波数(第2周波数f2)と同一である。
図2に示される例では、出力映像信号の垂直同期信号(V-SYNC)は、第2変換部62Bが出力する中間映像信号の垂直同期信号(V-SYNC)と同一であるが、出力映像信号の垂直同期信号(V-SYNC)は中間映像信号の垂直同期信号(V-SYNC)に対して所定時間だけ若干遅延した信号等であってもよい。出力映像信号に含まれるフレーム毎の水平ライン(走査線)の数は、第2変換部62Bが出力する中間映像信号のフレーム毎の水平ラインの数(第2のライン数L2)と同一であってもよく、変更されてもよい。出力映像信号に含まれる水平ラインは、一部の水平ラインを除き、中間映像信号の第2のクロック数H2分の長さ(第2の長さT2)とされる。具体的には、出力映像信号において、少なくとも、調整ライン及び最終の水平ラインを除く水平ラインは、中間映像信号のH2クロック分の長さ(第2の長さT2)とされる。そして、調整ラインの長さは、中間映像信号のH2クロック分の長さ(第2の長さT2)から減少させた長さ(後述の調整値T3)とされる。最終の水平ラインの長さは、中間映像信号のH2クロック分の長さ(第2の長さT2)になることもあり、長さT2とは若干異なる長さになることもある。
【0069】
代表例では、信号調整装置50の調整後に得られる出力映像信号(出力部64に入力される映像信号)は、
図3等に示される中間映像信号と同様、1フレーム当たり所定数L2の水平ラインが含まれ、1フレームにおいて、画素データが含まれない複数のブランクラインが複数(
図3のA2と同一の数)続いた後、画素データが含まれるデータラインが複数(
図3のA3と同一の数)続き、その後、画素データが含まれない複数(
図3のA4と同一の数)のブランクラインが最終の水平ラインまで続くように構成される。信号調整装置50による調整後の出力映像信号も、調整前の中間映像信号も、基準値T2の長さのデータラインを複数含んでおり、本実施形態では、いずれの映像信号も、全部のデータラインにおいて各データラインの長さが、中間映像信号のH2クロック分の長さとされる。
【0070】
代表例では、信号調整装置50を構成する調整部52は、中間映像信号の各フレームに含まれる所定数L2の水平ラインの中から複数のブランクラインを含んだ複数の調整ラインを選択し、複数の調整ラインの各々の長さを基準値T2よりも小さい長さに調整する。具体的には、信号調整装置50は、信号変換部62から送信される上記の値Vts、Ht1を受信し、これらの値に基づいて調整ライン(水平ラインの長さを調整すべき走査線)を選択する。より具体的には、中間映像信号の1フレームにおける所定数L2の水平ラインのうち、Vts番目の水平ラインから最終の水平ラインの1つ前の水平ライン((L2-1)番目の水平ライン)を調整ラインとし、この調整ラインの長さを、中間映像信号のクロックHt1分の長さT3とするように水平同期信号のタイミングを調整する。中間映像信号のクロックHt1分の長さT3が調整値の一例に相当する。以下の説明では、長さT3を調整値T3ともいう。最終の水平ライン(L2番目の水平ライン)の実際の長さは、垂直同期信号のタイミング(フレームの切り替わりタイミング)によって受動的に定まる。
【0071】
このように、信号調整装置50は、複数の調整ラインの長さを、基準値T2(中間映像信号のH2クロック分の長さ)よりも小さい長さ(調整値T3)に減少させるように調整する。第2変換部62Bが出力する中間映像信号に対して複数の調整ラインの長さを基準値T2から調整値T3に減少させる調整がなされた上で出力部64に入力される映像信号が出力映像信号である。なお、出力映像信号に含まれる信号(垂直同期信号(V-SYNC)、水平同期信号(H-SYNC)、データイネーブル信号(DE)、クロック信号(CLK)、データ信号(R信号、G信号、B信号))のうち、調整ライン及び最終の水平ラインの水平同期信号(H-SYNC)以外の信号は、第2変換部62Bが出力する中間映像信号と同一とすることができる。
【0072】
このように、信号調整装置50の調整部52は、出力映像信号における複数のデータラインの長さを、基準値T2(中間映像信号のH2クロック分の長さ)とし、出力映像信号における複数の調整ラインの長さを調整値T3(H2よりも少ないクロック数分の長さ)に調整する。複数の調整ラインの長さを調整することにより、出力映像信号における最終の水平ラインの開始タイミングを調整することができ、
図6等で示される上述の代表例では、最終の水平ラインの開始タイミングを、調整を行わない場合(
図7の場合)と比較して早めることができる。例えば、
図4、
図6のように、出力映像信号の各フレーム信号(出力部に入力される1フレーム毎の信号群)は、画素データが含まれない複数のブランクラインが複数(A2ライン)続いた後、データ信号が含まれるデータラインが複数(A3ライン)続き、その後、画素データが含まれないブランクラインが最終の水平ラインまで複数(A4ライン)続く信号構成である。
図6では、基準値T2に対応する第2のクロック数H2が1000とされている。
図6のように、各フレームにおいて、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインのいずれか複数において長さを基準値T2に相当する長さ(中間映像信号の1000クロック分の長さ)よりも短い調整値T3(中間映像信号の997クロック分の長さ)にするように調整がなされると、最終の水平ラインの水平同期信号の開始タイミングがその調整の分だけ早められるため、上記調整が行われない場合(
図7参照)と比較して、最終の水平ラインの長さは長くなる。
【0073】
図6の例では、調整部52は、各フレームにおいて、複数の調整ラインを、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインのみから選択する。そして、調整部52は、出力映像信号において、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインのうちの最終の水平ラインを除く複数の残余ラインのいずれか複数の各水平ラインの長さを基準値T2よりも小さい調整値T3とするように調整する。
図6の例では、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインは、520~525番目の6ラインであり、最終の水平ライン(最終ライン)は、525番目の水平ラインであり、残余ラインは、520~524番目の5ラインである。調整ラインは、複数の残余ラインの一部である521~524番目の4ラインであり、これら各調整ラインの長さは、基準値T2(1000クロック分の長さ)よりも短い調整値T3(997クロック分の長さ)に調整されている。このような調整がなされるため、垂直同期信号によって受動的に定まる値である「最終の水平ラインの長さ」は、基準値T2との差が上述の「ΔHクロック分の長さ」よりも大幅に小さくなっており、具体的には、予め定められた許容範囲に収まるようになっている。
【0074】
1-7.効果の例
信号調整装置50は、水平同期信号のタイミングを調整することにより、複数の調整ラインの各々の長さを基準値T2よりも大きい値又は小さい値に調整することができる。しかも、この信号調整装置50は、複数の調整ラインに分散させて調整することができるため、調整が特定の水平ラインのみに偏ることを抑えることができ、調整が特定の水平ラインのみに偏ることに起因する問題を解消しやすい。
【0075】
例えば、
図7の例は、上述された中間映像信号がそのまま出力映像信号になる場合の例である。
図7の例では、分解能等の理由により、スケーリング後のクロック信号の周波数が高精度に設定できず、最終の水平ラインが終了すべき本来のタイミング(最終の水平ラインの開始に対応する水平同期信号の出力タイミングから時間T2(1000クロック分の時間)が経過したタイミング)が、フレームの切り替わりタイミング(次の垂直同期信号の出力タイミング)からずれている。具体的には、最終の水平ラインの開始時点である水平同期信号の出力タイミングから時間T2(1000クロック分の時間)が経過するタイミングよりもかなり前にフレームの切り替わりタイミングが到来し、その結果、最終の水平ラインの長さが他の水平ラインの長さよりも大幅に短くなっている。つまり、本来ならば、最終の水平ラインの開始(水平同期信号の出力タイミング)から時間T2(基準値T2)が経過する時点とフレームの切り替わりタイミング(次の垂直同期信号の出力タイミング)とが一致することが望ましいのであるが、時間T2(基準値T2)が経過するよりもかなり早いタイミングでフレームの切り替わりタイミングが到来している。例えば、
図7の例では、上記のΔHが14(ΔH=1000-986)となっており、最終の水平ラインの長さ(986クロック分の長さ)は、基準値(1000クロック分の長さ)から大きくずれている。
【0076】
これに対し、本願発明は、信号変換部62が
図7のような中間映像信号を生成した場合に、複数の調整ラインを設定して調整することができる。具体的には、信号変換部62は、最終の水平ラインのクロック数(986)を検出する。そして、信号変換部62は、上述の第2のクロック数H2(
図7の例では、H2=1000)と、上述のΔHの式により、ΔH(ΔH=H2-Hw=1000-986=14)を算出する。そして、
図4等に示されるブランクライン数A4(A4=6)と上述のTw1の式とに基づき、Tw1を算出する。具体的には、Tw1は、以下の数5の式で求められる。
【0077】
【0078】
Tw1は、ΔH/A4未満でない最小の整数である。具体的には、Tw1は、ΔH/A4の少数点以下を切り上げて得られる整数である。更に、信号変換部62は、上述のTcの式に基づき、Tcを算出する。具体的には、Tcは、以下の数6の式で求められる。
【0079】
【0080】
Tcは、ΔH/Tw1未満でない最小の整数である。具体的には、Tcは、ΔH/Tw1の少数点以下を切り上げて得られる整数である。そして、信号変換部62は、第2のライン数(所定数)L2(
図7の例では、L2=525)と、上述のVts=(L2+1)-Tcの式(即ち、Vts=(525+1)-5の式)とに基づき、Vts(Vts=521)を求める。更に、信号変換部62は、Ht1=1000-3の式によってHt1(Ht1=997)を求める。そして、信号変換部62は、上記の値Vts、Ht1を信号調整装置50に送信する。信号調整装置50は、これらの値を取得することにより、
図6のように、出力映像信号における1フレームの水平ライン(L2の水平ライン)のうちのVts(521)番目の水平ラインからL2-1(524)番目の水平ラインまでのブランクラインの長さをHt1(997)クロック分の長さ(調整値T3)に調整することができ、この調整により、L2(525)番目の最終の水平ラインの長さがHt2(998)クロック分の長さと同程度となる。なお、この例ではHt2は、信号調整装置50が演算を行って能動的に定める値ではなく、受動的に定まる値である。Ht2の値は、H2-(ΔH-(Tw1×(Tc-1))の式によって表すことができる。Ht2の値は、上述のずれの程度を示すクロック数(ΔH)から複数の調整ラインでの増減量の総和の程度を示すクロック数(Tw1×(Tc-1))を引いた値(ΔH-(Tw1×(Tc-1))を、上述の第2のクロック数H2から引いた値に相当する。このように、ΔHクロック分の長さのずれを複数の調整ラインによって分散して調整することができるため、最終ライン(最終の水平ライン)の長さが基準値T2(1000クロック分の長さ)から大きくずれることを抑えることができ、複数の調整ラインも、基準値T2から大きくずれないで済む。なお、本実施形態の例では、最終ラインが調整ラインに該当しないことは上述の通りである。例えば、出力映像信号を与えるモニタにおいて、水平ラインの長さの許容範囲(基準値からのずれの許容範囲)が5クロック以下である場合(即ち、基準値(1000クロック分の長さ)からのずれが5クロック以下である範囲が許容範囲である場合)、上述の調整を行わないと、ΔHが14であるため、
図7のように最終の水平ラインの長さが986クロック分の長さとなり、許容範囲を外れてしまう。しかし、上述の調整を行えば、
図6のように、全ての水平ラインにおいて、基準値からのずれが3クロック以下に収まるため、許容範囲を満たすことができる。
【0081】
信号調整装置50は、
図3のように、第1のクロック数H1及び第1のライン数L1のフレーム構造を有する入力映像信号(
図3左図)から、第2のクロック数H2及び第2のライン数L2のフレーム構造を有する中間映像信号(
図3右図)を生成するように信号変換部62がスケーリングを行う場合に、信号変換部62が生成した中間映像信号の一部の水平ラインの長さを増減するという簡易な調整により、複数の調整ラインの長さを基準値T2と異ならせた出力映像信号を生成することができる。
【0082】
調整部52は、基準値T2に第2のライン数L2を乗じた長さX1(基準値T2の長さの水平ラインが第2のライン数L2だけ繰り返されたと仮定した場合の時間的長さ)と、中間映像信号の1フレーム当たりの時間的長さX2との差は、調整を行わない場合に予想される最終の水平ラインの増減量(基準値T2との差)と同一である。上記信号調整装置50は、各々の調整ラインの増減量を上記の差よりも0に近づくように分散させた形で調整することができる。
【0083】
例えば、
図6の例では、信号調整装置50は、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインのみで調整を行うため、データラインの長さを増減することなく調整を行うことができ、画素データが影響を受けることを抑えることができる。例えば、複数のデータラインよりも前のブランクラインで長さの調整を行うと、調整に伴い、その後に到来する複数のデータラインの各々の開始タイミングが本来のタイミングからずれるため、何らかの方法で開始タイミングを調整する必要がある場合があるが、本実施形態の方法を採用すれば、このような問題は生じない。また、複数のデータラインで長さの調整を行うと、調整に伴ってデータイネーブル信号やRGB信号が影響を受けてしまうが、本実施形態の方法を採用すれば、このような問題が生じない。例えば、
図4のように、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインの期間では、実質的にデータイネーブル信号やRGB信号が出力されていない状態(詳細な情報を含まない状態)となるため、データイネーブル信号やRGB信号が影響を受けにくい。
【0084】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0085】
上述の実施形態では、信号変換部62において第1変換部62Aと第2変換部62Bとが設けられ、第2変換部62Bが「入力映像信号に基づいて中間映像信号を生成する変換部」として機能するが、この例に限定されない。例えば、信号変換部62において第1変換部62Aと第2変換部62Bとが一体的に構成されていてもよく、この場合、信号変換部62が、第1変換部62Aの機能と第2変換部62Bの機能とを有する1つの装置として構成されていてもよい。この例では、信号変換部62に入力される映像信号が入力映像信号に相当する。この例では、信号変換部62が、「入力映像信号に基づいて中間映像信号を生成する変換部」として機能した上で上述の第1変換部62Aが出力する中間映像信号と同様の信号を出力してもよい。また、上述の実施形態では、信号変換部62と出力部64の間は、信号変換部62から出力部64に対してパラレル信号が送信されるパラレル伝送方式であったが、シリアル伝送方式であってもよい。この場合、信号変換部62から出力部64に送信されるシリアル信号に対して、上述の調整部52と同様の調整方式で調整ラインの調整が行われてもよい。
【0086】
上述の実施形態では、複数の調整ラインの長さを減少させるように水平同期信号のタイミングを調整する例が用いられるが、水平ラインの長さを増加させるように水平同期信号のタイミングを調整してもよい。例えば、上述のΔHが負であるような場合には、複数の調整ラインの長さを増加させるように水平同期信号のタイミングを調整すればよい。この場合、「複数のデータラインの後に続く複数のブランクライン」のうちの最終ラインを除く「複数の残余ライン」の一部又は全部を調整ラインとして、これら調整ラインの長さを基準値T2よりも増加させるように調整を行えばよい。この場合の調整ラインの増加量は、中間映像信号の|ΔH|クロック分の長さよりも小さい値である。
【0087】
「信号調整装置が映像信号変換装置に適用される」とは、上述された実施形態のように、信号調整装置50が映像信号変換装置10の一部として適用される場合を含むが、この例に限定されず、信号調整装置が映像信号変換装置とは別装置として構成され、映像信号変換装置から信号を受けるように適用される場合も含む。例えば、
図1の映像信号変換装置10において信号調整装置50が映像信号変換装置10の外部の装置として構成され、信号変換部62が生成した中間映像信号を、信号調整装置50が映像信号変換装置10の外部で調整し、出力映像信号を生成してもよい。
【0088】
図6の例では、調整部52は、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインにおいて、最終の水平ラインを除く残余の複数の水平ラインのうちの一部をなす521~524番目の水平ラインの長さが、基準値T2(1000クロック分の長さ)とは異なる調整値T3(997クロック分の長さ)に調整され、これにより、最終の水平ラインの長さは、調整値T3よりも基準値T2に近い値であって基準値T2以外の値(998クロック分の長さ)となるが、この例に限定されない。例えば、
図8のように、最終の水平ラインの長さが基準値T2(1000クロック分の長さ)となるように、他の調整ラインが調整されてもよい。
図8のような調整を行う場合、以下のように各値を算出することができる。この例でも、信号変換部62は、第1実施形態と同様の方法で、最終の水平ラインのクロック数(986)を検出する。そして、信号変換部62は、第1実施形態と同様の方法で、ΔH(ΔH=H2-Hw)を算出する。
図4、
図5及び
図7の中間映像信号の例では、ΔHは、14である。更に、信号変換部62は、中間映像信号における複数(
図3ではA3)のデータラインの後に続く複数のブランクラインの数A4に基づいて、Tw1を求める。この例では、Tw1は以下の数7の式を満たす値である。
【0089】
【0090】
具体的には、Tw1は、ΔH/(A4-1)の少数点以下を切り上げて得られる数である。
図4、
図5及び
図7の中間映像信号の例では、Tw1は3である。更に、信号変換部62は、Tcを求める。Tcは、以下の数8の式を満たす値である。
【0091】
【0092】
具体的には、Tcは、ΔH/Tw1の小数点以下を切り上げた数である。
図4、
図5及び
図7の中間映像信号の例では、Tcは、5である。そして、信号変換部62は、Tw2=ΔH-(Tw1×(Tc-1))の式によってTw2を求める。
図4、
図5及び
図7の例では、Tw2は、2である。そして、信号変換部62は、上述の所定数L2を用い、Vts=(L2+1)-(Tc+1)の式によってVtsを求める。
図4、
図5及び
図7の例では、Vtsは、520である。Vtsは、Tw1クロック分だけ長さを減少させる調整ライン(走査線)の開始ライン番号である。更に、信号変換部62は、上述の第2のクロック数H2を用い、Ht1=H2-Tw1の式によってHt1を求める。Ht1は、最終の調整ライン(最終の水平ラインの1つ前の水平ライン)以外の調整ラインの長さを定めるクロック数であり、これら調整ラインは、Ht1クロック分の長さとされる。なお、この例では、最終の水平ラインは、調整ラインではない。更に、信号変換部62は、Ht3=H2-Tw2の式によってHt3を求める。Ht3は、最終の水平ラインの1つ前の水平ラインの長さを定めるクロック数であり、この調整ラインは、Ht3クロック分の長さとされる。そして、信号変換部62は、上記の値Vts、Ht1、Ht3を信号調整装置50に送信する。信号調整装置50は、これらの値を受信し、
図8のように調整ラインの水平同期信号のタイミングを調整することができる。
図8の例では、信号調整装置50は、出力映像信号の1フレームにおいて、Vts(520)番目から最終の水平ラインの2つ前(523番目)の水平ラインの長さを、Ht1(997)クロック分の長さに調整する。この例では、Ht1(997)クロック分の長さ(時間)が調整値T3である。そして、信号調整装置50は、最終の水平ラインの1つ前(524番目)の水平ラインの長さを、Ht3(998)クロック分の長さに調整する。この例では、Ht3(998)クロック分の長さ(時間)が調整値T4である。つまり、信号調整装置50は、2種類の調整値T3,T4を扱う。このようにして、ΔH(14)クロック分のずれが、最終の水平ラインの1つ前までで調整されるため、最終の水平ラインの長さは基準値T2(1000クロック分の長さ)と同程度となる。
図8の例では、信号調整装置50は、最終の水平ライン(最終のブランクライン)の長さを基準値T2又は基準値T2に近い値にすることができるため、最終の水平ラインの長さが基準値T2から大きくずれることに起因する問題を、より生じにくくすることができる。例えば、入力映像信号のフレームレートが上述したように59.9635(FPS)とされるべき場合であっても、温度や電源変動などの外的要因によって若干の変動が生じうる。例えば、入力映像信号のフレームレートが59.9635(FPS)から59.964(FPS)に変動すると、上述した31.48(MHz)の周波数でクロック信号(CLK)が生成される場合には、1フレーム当たりの総ドット数は、31480000/59.964=524981.657となり、ΔHは、上述の14から19に変化してしまう虞がある。このような事態が生じると、
図6のような例では、最終ラインの長さが998クロック分の長さから993クロック分の長さに変動してしまい、上述の許容範囲(基準値(1000クロック分の長さ)からのずれが5クロック以下)を外れてしまう。これに対し、
図8のように最終ラインが基準値T2となるように他の調整ラインが調整されれば、上述の変動があったとしても最終ラインの長さは995クロック分の長さで収まり、上述の許容範囲をみたすことができる。
なお、上述の例はあくまで一例であり、ΔH(
図8の例では、14)の相当する分の、増減値の振り分け方法は様々な方法が採用され得る。
【0093】
図6の例では、調整部52は、複数のデータラインの後に続く複数のブランクラインのうちの最終の水平ラインを除く「残余の複数の水平ライン」の一部が調整ラインとされたが、「残余の複数の水平ライン」の全てが調整ラインとされてもよい。いずれの場合でも、複数の調整ラインの長さの調整により、最終の水平ラインの長さが基準値T2(H2クロック分の長さ)と同程度であってもよく、各調整ラインの長さよりも基準値T2に近い値であってもよい。
【0094】
図6,
図8の例では、長さを調整する対象の水平ライン(調整ライン)がブランクラインのみから選択されたが、一部のデータラインが調整ラインに含まれていてもよい。例えば、複数のデータラインのうちの最後のデータラインを調整ラインの1つとし、最後のデータラインのスタートタイミングやデータ信号の期間(RGB信号の期間)などは変更せずにデータ信号の後の期間(
図5におけるB4クロックの期間)を増減するように調整が行われてもよい。或いは、
図9のように、複数のデータラインのうちの最後のデータラインよりも前のデータラインが調整ラインとなっていてもよい。或いは、複数の調整ラインが複数のデータラインのみから選ばれてもよく、複数のデータラインよりも前側の複数のブランクライン(
図3、
図4におけるライン数A2のブランクライン)のみから選ばれてもよく、前側のブランクラインと複数のデータラインから選ばれてもよい。なお、前側の複数のブランクラインや複数のデータラインから調整ラインが選定される場合、調整ラインの後にデータラインがある場合には、調整ラインの長さを増減すると、その増減の分だけ、その後の各データラインの期間がずれてしまう。このように、調整ラインの長さの増減に伴ってその後の各データラインの期間がずれるような方法を採用する場合には、そのずれた期間に収まるように、RGB信号の期間やデータイネーブル信号の期間をずらせばよい。例えば、
図9の例のように、518番目のデータラインの長さを減少させると、この減少に伴い、519番目のデータラインに対応する水平同期信号の出力タイミングがずれて早まり、519番目のデータラインの期間が早まるが、このようにいずれかのデータラインの期間が早くなったり遅くなったりする場合でも、このデータラインの期間に収まるようにRGB信号の期間やデータイネーブル信号の期間が調整されればよい。
【0095】
図6の例では、最終の水平ラインの長さが調整ラインの長さよりも基準値T2に近い値であるように調整ラインが調整されるが、
図9や
図10のように、最終の水平ラインの長さが他の調整ラインの全て又は一部と同程度であるように調整ラインが調整されてもよい。
【0096】
上述された実施形態では、信号調整装置50が映像信号変換装置10の一部をなす信号変換部62とは別の装置として構成されるが、この例に限定されない。例えば、信号変換部62が、信号調整装置として機能してもよい。上述された実施形態では、増減量を決定するための演算を信号変換部62が行い、信号調整装置50は、信号変換部62から情報を取得するように動作するが、この例に限定されない。例えば、信号調整装置50自身が増減量を決定するための演算を行ってもよく、信号調整装置50が上記の値Vts、Ht1、Ht3を算出する機能を有していてもよい。
【0097】
上述された実施形態では、映像信号変換装置10が単一のユニットとして構成されたものであるが、映像信号変換装置が複数のユニットによって構成されていてもよい。
【0098】
第1実施形態の
図6の例では、最終ラインが調整ラインに該当せず且つ全ての調整ラインの長さが同一の調整値(997クロック分の長さ)に設定されるが、いずれの実施形態の例でも、複数の調整ラインの長さが2種類以上の調整値に設定されてもよい。
【0099】
上述された実施形態では、最終の水平ラインが調整ラインではないが、最終の水平ラインが調整ラインであってもよい。即ち、調整部が最終の水平ラインの長さを調整してもよい。
【0100】
上述の実施形態の説明では、音声信号の伝送に関する説明は省略されたが、音声信号の伝送については、適切な方式で伝送されればよく、伝送経路や伝送に伴う装置構成は特に限定されない。例えば、信号変換部62や信号線42とは別経路で出力されてもよい。
【0101】
上述された実施形態では、入力映像信号、中間映像信号、出力映像信号のそれぞれが、垂直同期信号によってフレームを切り替える方式であるプログレッシブ方式の信号であったが、各映像信号は、インターレース方式の信号であってもよい。
【0102】
上述された実施形態では、水平同期信号の出力タイミングが信号の立ち下りタイミングであったが、信号の立ち上がりタイミングが水平同期信号の出力タイミングであってもよい。また、上述された実施形態では、水平ラインにおいて1つの画素に対応する期間は1つのクロック信号の立ち上がりから次のクロック信号の立ち上がりまでの期間であったが、1つのクロック信号の立ち下がりから次のクロック信号の立ち下がりまでの期間であってもよい。また、上述の例では、1クロックが1画素に対応していたが、複数クロックが1画素に対応していてもよい。或いは、1クロックにおける立ち上がりから次の立ち下がりまでが1画素に対応していてもよく、1クロックにおける立ち下がりから次の立ち上がりまでが1画素に対応していてもよい。また、上述された実施形態では、データイネーブル信号に関して、Hレベル信号が有効信号であり、Lレベル信号が無効信号であったが、Lレベル信号が有効信号であり、Hレベル信号が無効信号であってもよい。
【0103】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 :車載システム
10 :映像信号変換装置
16 :信号変換部
20 :切替装置
31 :入力部
32 :入力部
34 :出力端子
50 :信号調整装置
52 :調整部
62 :信号変換部
62A :第1変換部
62B :第2変換部(変換部)
64 :出力部
100 :車載モニタ
101 :映像合成部
102 :ディスプレイ
120 :車載装置
190 :外部装置
【要約】
【課題】出力映像信号の水平ラインの長さを調整可能であり、且つ、調整が特定の水平ラインのみに偏ることを抑え得る技術を提供する。
【解決手段】信号調整装置50は、入力映像信号を出力映像信号に変換する映像信号変換装置10に適用される。出力映像信号は、水平同期信号によって区切られる信号群である水平ラインを所定数L2含んだ映像信号である。調整部52は、出力映像信号の各フレームにおいて、所定数L2の水平ラインの中から、複数の調整ラインを選択し、水平同期信号のタイミングを調整することにより、複数の調整ラインの各々の長さを基準値よりも大きい値又は小さい値に調整する。
【選択図】
図1