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  • 特許-壁紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/00 20060101AFI20221017BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221017BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221017BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20221017BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221017BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B5/18
B32B27/00 E
B32B27/10
B32B27/18 Z
E04F13/07 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020174659
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065887
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】石田 智樹
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-113899(JP,A)
【文献】特開2018-203897(JP,A)
【文献】特開2019-179008(JP,A)
【文献】特開2008-81884(JP,A)
【文献】特開平10-119197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00-43/00
E04F13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙層と、
発泡樹脂層と、
絵柄模様を有する絵柄層と、
抗ウイルス剤を含む表面保護層と、
がこの順に積層される壁紙であって、
前記表面保護層の厚みDは3μmであり、前記抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上10wt%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足することを特徴とする壁紙。
【請求項2】
原紙層と、
発泡樹脂層と、
絵柄模様を有する絵柄層と、
抗ウイルス剤を含む表面保護層と、
がこの順に積層される壁紙であって、
前記表面保護層の厚みDは5μmであり、前記抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上15wt%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足することを特徴とする壁紙。
【請求項3】
原紙層と、
発泡樹脂層と、
絵柄模様を有する絵柄層と、
抗ウイルス剤を含む表面保護層と、
がこの順に積層される壁紙であって、
前記表面保護層の厚みDは2.5μm以上5.4μm以下であり、前記抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上10wt%以下であり、前記抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足することを特徴とする壁紙。
【請求項4】
前記発泡樹脂層も前記抗ウイルス剤を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の壁紙。
【請求項5】
前記抗ウイルス剤は銀系材料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁紙や、化粧シート等の表面保護層に抗ウイルス剤を添加し、抗ウイルス性能と表面保護層の透明性とを維持し、意匠性を保持するようにしたシート状物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-210566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のシート状物においては、抗ウイルス性能と意匠性とを保持することはできるものの、近年の市場要求の高い表面強化性能を保持することは困難であった。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、抗ウイルス性及び意匠性を保持すると共に、表面強化性能も保持することの可能な壁紙を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、原紙層と、発泡樹脂層と、絵柄模様を有する絵柄層と、抗ウイルス剤を含む表面保護層と、がこの順に積層される壁紙であって、表面保護層の厚みDは3μmであり、抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上10wt%以下であり、抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足する壁紙が提供される。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、原紙層と、発泡樹脂層と、絵柄模様を有する絵柄層と、抗ウイルス剤を含む表面保護層と、がこの順に積層される壁紙であって、表面保護層の厚みDは5μmであり、抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上15wt%以下であり、抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足する壁紙が提供される。
【0008】
さらに、本発明の他の態様によれば、原紙層と、発泡樹脂層と、絵柄模様を有する絵柄層と、抗ウイルス剤を含む表面保護層と、がこの順に積層される壁紙であって、表面保護層の厚みDは2.5μm以上5.4μm以下であり、抗ウイルス剤の添加量は5wt%以上10wt%以下であり、抗ウイルス剤の平均粒径は1.4×D以上1.6×D以下を満足する壁紙が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗ウイルス性能と、意匠性と、表面強化性能とを有する壁紙を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る壁紙の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
<構成>
図1は、本発明に係る壁紙の一例を示す断面図であって、壁紙1は、原紙層2と、発泡樹脂層3と、絵柄印刷層(絵柄層)4と、表面保護層5と、がこの順に積層されてなる。なお、壁紙10の層構成は、図1に示す層構成に限るものではなく、例えば壁紙1の表面に、凹凸模様を構成するエンボス模様を形成してもよい。また、絵柄印刷層4と表面保護層5との間に、アンカーコート層を設けてもよい。
【0014】
<原紙層2>
原紙層2は、壁紙用として汎用されている一般紙からなり、坪量が50g/m以上100g/m以下である。原紙層2の厚みは、例えば12μmである。なお、原紙層2の厚みは、12μmに限定されない。
【0015】
<発泡樹脂層3>
発泡樹脂層3は、非塩ビ系であり、原紙層2の上に積層される。
発泡樹脂層3は、樹脂成分と、充填剤と、発泡剤と、発泡助剤と、樹脂成分と、添加剤と、を含有している。そして、発泡剤が発泡することで、発泡樹脂層3となる。
発泡樹脂層3の坪量を、80g/m以上100g/m以下に設定する。これは不燃性能を付与しつつ、意匠性を維持するためである。
【0016】
(樹脂成分)
発泡樹脂層12の樹脂成分として、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体との少なくとも一方の樹脂を含有する非塩ビ系の樹脂を使用する。
エチレン共重合体に含有されるエチレン以外のモノマーの含有量としては、例えば、5質量%以上25質量%以下の範囲内が好ましく、9質量%以上20質量%以下の範囲内がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押し出し製膜性を向上させることが可能となる。
【0017】
具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9質量%以上25質量%以下の範囲内が好ましく、9質量%以上20質量%以下の範囲内がより好ましい。また、エチレン-メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5質量%以上25質量%以下の範囲内が好ましく、5質量%以上15質量%以下の範囲内がより好ましい。
また、エチレン-メタクリル酸共重合体は、アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2質量%以上15質量%以下の範囲内が好ましく、5質量%以上11質量%以下の範囲内がより好ましい。
【0018】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、無機充填剤を用いることが可能である。
無機充填剤は、一種を単独で用いることも、二種類以上を併用して用いることも可能である。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を用いることが可能である。
充填剤の含有量は、発泡樹脂層3の樹脂成分100質量部に対し60質量部以上120質量部以下含有することが好ましい。この範囲で充填剤を添加することで、単位面積当たりの燃焼カロリーが低減して、より壁紙10の不燃性が向上する。
【0019】
(発泡剤)
発泡剤は、揮発性膨張剤であり、2種類以上のニトリル系モノマーを構成単位とするポリマー、若しくは2種類以上のニトリル系モノマー及び非ニトリル系モノマーを構成単位とするポリマーの一方からなるシェルに内包して、熱膨張性マイクロカプセルの形で樹脂層の樹脂成分に添加するのが、性能(発泡倍率、強度)の観点から好ましい。発泡剤としては、その他、アゾ系、ヒドラジッド系、ニトロソ系等が使用可能である。
発泡剤は、樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下、好ましくは5質量部以上15質量部以下程度が良い。これは、1重量部でも、壁紙として機能するが、発泡樹脂層の厚み不足でエンボスが十分に入らず、意匠性に劣るため、5重量部以上の添加が好ましい。
【0020】
(顔料等)
発泡樹脂層3には、必要に応じて顔料等を添加して着色しても良い。顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー等の有機顔料等を用いることが可能である。
顔料の添加量は、樹脂層全量を基準として、無機顔料であれば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。有機顔料であれば、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0021】
(樹脂組成物)
樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤、セル調整剤、安定剤、滑剤等の周知の添加剤を用いることが可能である。
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属酸化物系難燃剤、リン酸エステル系等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤等を用いることが可能である。
【0022】
<絵柄印刷層4>
絵柄印刷層4は、発泡樹脂層3上に積層される。絵柄印刷層4は、木目模様等の絵柄模様により表層側を加飾して発泡壁紙の意匠性を向上するために形成される。
絵柄印刷層4は、発泡樹脂層3の表面に印刷されることで形成される塗膜からなる。
絵柄印刷層4は、壁紙1として一般的に求められるような耐光性、発色性、及び使用される成分の安全性の要件(顔料や添加剤として重金属や硫黄化合物を含まない等)を満たしていれば特に限定されるものではないが、アクリル重合体をベースレジンとする水系のインキであることが特に好ましい。印刷法としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インキジェット印刷法等を挙げることができる。また、印刷法は、前記印刷法に限定されるものではなく、転写法、感光性樹脂法など、従来公知の任意の画像形成手段を適用することができる。
絵柄印刷層4の模様の種類は、任意であり、例えば、木目柄、石目柄、抽象柄等であってもよく、また、全面ベタ印刷等であってもよい。
【0023】
<表面保護層5>
表面保護層5は、壁紙1の表面に、耐摩耗性や耐水性、また、抗ウイルス性を付与する目的で設けられるものである。表面保護層5は、アクリル系樹脂を主成分とする樹脂からなり、絵柄印刷層4の表面の保護や艶調整等を主に意図して設けられ、艶調整等を目的としてシリカ等のフィラーをさらに含有することも可能である。くわえて、表面保護層5は、施工時に、水性接着剤(糊)が塗布された際の壁紙10の伸長を抑制すると共に、水性接着剤(糊)が乾燥する際の壁紙1の収縮を抑制することができるようになっている。また、表面保護層5は、撥水性を有していると好ましい。表面保護層5は、乾燥時の坪量が、5g/m以上40g/m以下であると好ましい。
【0024】
上述したアクリル系樹脂を主成分とする樹脂は、グラビア印刷法,ナイフコート法,ノズルコート法,ダイコート法,リップコート法,コンマコート法等によって、発泡前の発泡剤含有樹脂組成物上に塗工され得る。そして、加熱乾燥されることにより、表面保護層5として成膜される。
表面保護層5には、さらに銀を含む銀成分が添加された抗ウイルス剤6としての銀系添加剤(銀系材料)が添加され、抗ウイルス性を付与している。これに加え表面保護層5には、塩素を含む成分が添加されていない。これは銀系添加剤の銀成分と、塩素との接触による変色を防止するためである。
【0025】
表面保護層5の厚みDμmは、3μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、ここでいう、表面保護層5の厚みDが3μmとは、2.5μm以上3.4μm以下を含む。同様に、表面保護層5の厚みDが5μmとは、4.5μm以上5.4μm以下を含む。つまり、表面保護層5の厚みDμmは、2.5μm以上5.4μm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、3μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましい。表面保護層5の厚みDが1μm以下であると、十分な表面強度を得ることができない。
【0026】
表面保護層5は、例えばグラビアコート法を用いて、複数層からなる表面保護層を設けてもよい。この場合、抗複数層のうちの一部の層、例えば最表層に位置する表面保護層にのみ、抗ウイルス剤6を添加してもよく、中間に位置する層に抗ウイルス剤6を添加してもよい。なお、不燃性を付与すること等の目的で表面保護層5と絵柄印刷層4との間に、ポリ塩化ビニル樹脂層を設ける場合には、複数の表面保護層のうち、ポリ塩化ビニル樹脂層と隣接する表面保護層には、銀成分を添加しない。表面保護層とポリ塩化ビニル樹脂層と隣接する層に銀成分が添加されていないことで、積層界面での塩素と銀との接触を遮断することができ変色の原因を完全に絶つことができる。
【0027】
(抗ウイルス剤6)
抗ウイルス剤は、銀系材料であることが好ましい。抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。
また、抗ウイルス剤は銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。「無機材料」としては、「ガラス」を使用するが、「無機材料」はガラスに限定されない。
銀を無機物に担時させることで、経時での銀成分の脱落や、ポリ塩化ビニル層への転移を防ぐことができる。
【0028】
(抗ウイルス剤6の平均粒径及び添加量との関係)
表面保護層5における抗ウイルス剤6の添加量は、表面保護層5の厚みDμmに応じて設定されることが好ましい。抗ウイルス性能を得るためには、抗ウイルス剤6の添加量が比較的多い方が好ましく、逆に表面強度は、抗ウイルス剤6の添加量が比較的小さい方が好ましく、添加量が多い場合には、十分な表面強度を得ることができない。具体的には、例えば表面保護層5の厚みDが3μmであるときには、抗ウイルス剤6の添加量は5wt%以上10wt%以下であることが好ましい。抗ウイルス剤6の添加量が5wt%より小さいと、抗ウイルス性能を発揮することができず、10wt%より大きいと、表面強度を確保することができない。また、例えば表面保護層5の厚みDが5μmであるときには、抗ウイルス剤6の添加量は5wt%以上15wt%以下であることが好ましい。抗ウイルス剤6の添加量が5wt%より小さいと、抗ウイルス性能を発揮することができず、15wt%より大きいと、表面強度を確保することができない。
【0029】
抗ウイルス剤6の平均粒径は、表面保護層5の厚さDの1.4倍以上1.6倍以下であることが好ましく、1.5倍であることがより好ましい。抗ウイルス剤6の平均粒径が表面保護層5の厚さDの1.4倍以上1.6倍以下である場合、銀の担時体の一部が表面保護層5から突起するため、抗菌及び抗ウイルス効果が高まると共に、表面強度が向上する。抗ウイルス剤6の平均粒径が表面保護層5の厚さDの1.4倍より小さいと、十分な表面強度を得ることができず、1.6倍を超えると、表面硬度が低下する。
【0030】
なお、表面保護層5に、抗ウイルス剤6が添加されている場合について説明したが、発泡樹脂層3にも、抗ウイルス剤6としての銀系添加剤を添加してもよい。これにより、摩耗等により発泡樹脂層3が露出した場合であっても、抗ウイルス性能を維持することができる。発泡樹脂層3に添加する抗ウイルス剤6の添加量は1wt%以上、30wt%以下が好ましい。また抗ウイルス剤6の粒径は、2μm以上、20μm以下が好ましく、より好ましくは、5μm以上12μm以下程度である。発泡樹脂層3に、抗ウイルス剤6を添加する場合には、発泡樹脂層3には、塩素を含む成分を添加しない。
【0031】
(架橋構造)
表面保護層5は、架橋構造を有している。
表面保護層5を架橋構造とすることで、銀成分の転移をブロックすることが可能となる。架橋構造は、紫外線や、電子線等の高エネルギで架橋させることで、架橋度を上げ、銀の転移をさらに抑制することができる。
例えば、表面保護層5を架橋構造とするに当たり、電離放射線効果型樹脂を使用可能であり、電離放射線効果型樹脂としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0032】
<実施形態の作用・効果>
実施形態の作用・効果は、次の通りである。
(1)本実施形態によれば、原紙層2と、発泡樹脂層3、絵柄印刷層4と、表面保護層5と、がこの順に積層されている壁紙1において、表面保護層5に抗ウイルス剤6を添加し、表面保護層5の厚みDに応じて抗ウイルス剤6の添加量のとり得る範囲を決定し、表面保護層5の厚みDに応じて抗ウイルス剤6の平均粒径を設定した。
表面保護層5の厚みDと、抗ウイルス剤6の添加量と、抗ウイルス剤6の平均粒径とによって、得られる抗ウイルス性能及び表面強度が変化するため、表面保護層5の厚みに応じて抗ウイルス剤6の添加量と、抗ウイルス剤6の平均粒径とを決定することにより、抗ウイルス性及び壁の意匠性を発揮しつつ良好な表面強度を得ることができる。
(2)また、抗ウイルス剤6として銀系抗ウイルス剤を用いている。銀系抗ウイルス剤は、抗ウイルス効果の点で優れているため、より優れた抗ウイルス効果を有する壁紙1を実現することができる。
【実施例1】
【0033】
本発明に係る壁紙の効果を確認するために行った実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例及び比較例の試験体の作製>
(実施例1)
《原紙層2》
天然パルプのみをパルプ成分とし、合成樹脂を含有しない紙(KJ特殊紙株式会社製「WK665TMN(品番)」を原紙層2として使用した。なお、坪量は65g/m、原紙層2の厚みは12μmである。
《発泡樹脂層3》
原紙層2の上に、アプリケーターを用いて、発泡樹脂層3となる、EVA(Ethylene-vinyl acetate エチレン酢酸ビニル)樹脂を、厚み120μmで塗工し、100度のオーブンで3分乾燥させた。EVA樹脂として、ジャパンコーティングレジン株式会社製のEVA樹脂を用いた。
【0035】
《絵柄印刷層4》
乾燥させた発泡樹脂層3の上に絵柄印刷層4を形成した。具体的には、アクリル系樹脂を樹脂成分とする印刷インキ(大日精化工業株式会社製「ハイドリックWP(品番)」)を用い、グラビア印刷法により厚さ1μmの絵柄印刷層4を形成した。
《表面保護層5》
絵柄印刷層4の上に、表面保護層5を形成した。具体的には、日信化学工業株式会社製のアクリル樹脂「SS-65-3(品番)」を厚み3μmとなるように塗工した。このアクリル樹脂には抗ウイルス剤6の添加量を5wt%としている。また、表面保護層5の厚み3μmに対する抗ウイルス剤6の平均粒径は、1.5×D(表面保護層5の厚みD=3μm)とした。
そして、最後に180度のオーブンに30秒入れ、発泡樹脂層3を発泡させた。これにより、発泡した発泡樹脂層3を有する、実施例1における壁紙1を作製した。
【0036】
(実施例2)
抗ウイルス剤6の添加量を10wt%としたこと以外は、実施例1の場合と同様にすることにより、実施例2における壁紙1を作製した。
(実施例3)
表面保護層5の厚みを5μmとし、表面保護層5の厚み5μmに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を、1.5×D(表面保護層5の厚みD=5μm)としたこと以外は、実施例1の場合と同様にすることにより、実施例3における壁紙1を作製した。
【0037】
(実施例4)
抗ウイルス剤6の添加量を10wt%としたこと以外は、実施例3の場合と同様にすることにより、実施例4における壁紙1を作製した。
(実施例5)
抗ウイルス剤6の添加量を15wt%としたこと以外は、実施例3の場合と同様にすることにより、実施例5における壁紙1を作製した。
【0038】
(実施例6)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.4×D(D=3μm)としたこと以外は、実施例2の場合と同様にすることにより、実施例6における壁紙を作製した。
(実施例7)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.6×D(D=3μm)としたこと以外は、実施例2の場合と同様にすることにより、実施例7における壁紙を作製した。
【0039】
(実施例8)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.4×D(D=5μm)としたこと以外は、実施例5の場合と同様にすることにより、実施例8における壁紙を作製した。
(実施例9)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.6×D(D=5μm)としたこと以外は、実施例5の場合と同様にすることにより、実施例9における壁紙を作製した。
【0040】
(比較例1)
表面保護層5の厚みDを1μmとし、抗ウイルス剤6の添加量を0.1wt%とし、表面保護層の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.5×D(D=1μm)としたこと以外は、実施例1の場合と同様にすることにより、比較例1における壁紙を作製した。
(比較例2)
抗ウイルス剤6の添加量を1wt%としたこと以外は、比較例1の場合と同様にすることにより、比較例2における壁紙を作製した。
【0041】
(比較例3)
抗ウイルス剤6の添加量を5wt%としたこと以外は、比較例1の場合と同様にすることにより、比較例3における壁紙を作製した。
(比較例4)
抗ウイルス剤6の添加量を10wt%としたこと以外は、比較例1の場合と同様にすることにより、比較例4における壁紙を作製した。
【0042】
(比較例5)
抗ウイルス剤6の添加量を15wt%としたこと以外は、比較例1の場合と同様にすることにより、比較例5における壁紙を作製した。
(比較例6)
抗ウイルス剤6の添加量を30wt%としたこと以外は、比較例1の場合と同様にすることにより、比較例6における壁紙を作製した。
【0043】
(比較例7)
抗ウイルス剤6の添加量を0.1wt%としたこと以外は、実施例1の場合と同様にすることにより、比較例7における壁紙を作製した。
(比較例8)
抗ウイルス剤6の添加量を1wt%としたこと以外は、比較例7の場合と同様にすることにより、比較例8における壁紙を作製した。
【0044】
(比較例9)
抗ウイルス剤6の添加量を15wt%としたこと以外は、比較例7の場合と同様にすることにより、比較例9における壁紙を作製した。
(比較例10)
抗ウイルス剤6の添加量を30wt%としたこと以外は、比較例7の場合と同様にすることにより、比較例10における壁紙1を作製した。
【0045】
(比較例11)
【0046】
抗ウイルス剤6の添加量を0.1wt%としたこと以外は、実施例3の場合と同様にすることにより、比較例11における壁紙を作製した。
(比較例12)
抗ウイルス剤6の添加量を1wt%としたこと以外は、比較例11の場合と同様にすることにより、比較例12における壁紙を作製した。
【0047】
(比較例13)
抗ウイルス剤6の添加量を30wt%としたこと以外は、比較例11の場合と同様にすることにより、比較例13における壁紙を作製した。
(比較例14)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.3×D(D=3μm)としたこと以外は、実施例2の場合と同様にすることにより、比較例14における壁紙を作製した。
【0048】
(比較例15)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.7×D(D=3μm)としたこと以外は、実施例2の場合と同様にすることにより、比較例15における壁紙を作製した。
(比較例16)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.3×D(D=5μm)としたこと以外は、実施例5の場合と同様にすることにより、比較例16における壁紙を作製した。
(比較例17)
表面保護層5の厚みDに対する抗ウイルス剤6の平均粒径を1.7×D(D=5μm)としたこと以外は、実施例5の場合と同様にすることにより、比較例17における壁紙を作製した。
【0049】
<評価判定>
作製した実施例1~9及び比較例1~17について、以下の方法で、抗ウイルス性能及び表面強化性能の評価を行った。
(抗ウイルス性能)
ISO21702に準じた方法で、抗ウイルス試験を実施した。50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。このとき、ウイルス液は、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
【0050】
[ウイルス感染価の測定(プラーク法)]
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いでさらに2~3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
【0051】
[ウイルス感染価の算出]
以下の式に伴い、試料1cm当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm当たりのウイルス感染価(PFU/cm
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0052】
[抗ウイルス活性値の算出]
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm当たりのウイルス感染価の常用対数値
算出した抗ウイルス活性値を以下の「〇」、「×」の2段階で評価した。
【0053】
[評価基準]
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log10未満である場合
[評価結果]
評価結果を表1に示す。
【0054】
(表面強化性能)
JIS-0849で規定する摩擦試験機II型を用い、所定の摩擦子(荷重200g)を取り付け、試験片の上を5往復させた後の試験片の、傷の発生状態を目視により判定した。
[評価基準]
◎:表面に大きな剥がれ等が見られない。
○:表面に剥がれは見られるが、原紙層が見えていない。
×:表面が大きく剥がれ、原紙層が見えている。
[評価結果]
評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1中に表されるように、実施例1~9、比較例1~17の評価結果から、表面保護層5の厚みD及び抗ウイルス剤6の添加量wt%が同一であっても、抗ウイルス剤6の平均粒径が、1.4×D以上1.6×D以下を満足しない場合(比較例14~比較例17)には、良好な表面強度を得られないことがわかる。また、抗ウイルス剤6の平均粒径が、1.4×D以上1.6×D以下を満足する場合であっても、必ずしも良好な表面強度を得ることができず、表面保護層5の厚みDに応じた抗ウイルス剤6の添加量wt%とすることで、良好な表面強度を得られることがわかる。また、高い抗ウイルス性能及び意匠性と良好な表面強度とを得るためには、抗ウイルス剤添加量wt%を、表面保護層5の厚みDμmに応じて決定される添加量以下とすることがわかる。
【0057】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、本発明の壁紙は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 壁紙
2 原紙層
3 発泡樹脂層
4 絵柄印刷層
5 表面保護層
6 抗ウイルス剤
図1