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  • 特許-ロックアップ制御装置 図1
  • 特許-ロックアップ制御装置 図2
  • 特許-ロックアップ制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ロックアップ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/14 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
F16H61/14 601B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017181851
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2019056440
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宣行
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298145(JP,A)
【文献】特開昭60-164062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機とともに車両に設けられたトルクコンバータのロックアップクラッチを制御するロックアップ制御装置であって、
前記車両が加速中であるか否かを検出する検出手段、
前記検出手段によって加速中でないと検出された場合に車輪回転数の変動量を繰り返し算出する算出手段、
前記算出手段によって算出された変動量が第1の閾値を上回った時点で前記ロックアップクラッチによるロックアップを解除する解除手段、および
ロックアップ解除時に前記算出手段によって算出された変動量が、前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回った時点で前記ロックアップクラッチによるロックアップを復帰させる実行手段を備え
前記ロックアップ制御装置は、
前記検出手段によって加速中であると検出された場合には、前記ロックアップクラッチの制御処理を終了し、
前記検出手段によって加速中でないと検出された場合には、前記算出手段によって算出された変動量が前記第1の閾値を上回ったとの判別結果に応じて前記解除手段により前記ロックアップクラッチによるロックアップを解除し、
前記解除手段によるロックアップ解除継続時において前記算出手段によって算出された変動量が、前記第1の閾値よりも小さい前記第2の閾値を下回った時点で前記実行手段により前記ロックアップクラッチによるロックアップを復帰させる、ロックアップ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロックアップ制御装置に関し、特に、自動変速機とともに車両に設けられたトルクコンバータのロックアップクラッチを制御する、ロックアップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置の一例が、特許文献1に開示されている。この文献によれば、トルクコンバータ内に設けられたロックアップクラッチは、惰性走行時に締結される。ただし、車輪と路面との摩擦係数が低下すると、ロックアップクラッチの締結力が弱められるか、或いはロックアップクラッチが強制的に切り離される。これによって、燃費の向上を図りつつ、低μ路での急ブレーキによるエンジンストールを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-370466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロックアップクラッチが締結されている状態で路面段差を乗り越えると、乗り越え時の車輪回転数の変動がエンジンに伝達され、ドライバビリティが悪化するという問題がある。にも拘らず、このような問題に如何に対処するかについて、特許文献1は何ら開示していない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、車輪回転数の局所的な変動に起因してドライバビリティが悪化する懸念を軽減することができる、ロックアップ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るロックアップ制御装置は、自動変速機とともに車両に設けられたトルクコンバータのロックアップクラッチを制御するロックアップ制御装置であって、車両が加速中であるか否かを検出する検出手段、検出手段によって加速中でないと検出された場合に車輪回転数の変動量を繰り返し算出する算出手段、算出手段によって算出された変動量が第1の閾値を上回った時点でロックアップクラッチによるロックアップを解除する解除手段、およびロックアップ解除時に算出手段によって算出された変動量が、第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回った時点でロックアップクラッチによるロックアップを復帰させる実行手段を備え、ロックアップ制御装置は、検出手段によって加速中であると検出された場合には、ロックアップクラッチの制御処理を終了し、検出手段によって加速中でないと検出された場合には、算出手段によって算出された変動量が第1の閾値を上回ったとの判別結果に応じて解除手段によりロックアップクラッチによるロックアップを解除し、解除手段によるロックアップ解除継続時において算出手段によって算出された変動量が、第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回った時点で実行手段によりロックアップクラッチによるロックアップを復帰させる
【発明の効果】
【0007】
車輪回転数の変動量は繰り返し算出されるところ、算出された変動量が所定範囲から外れると、ロックアップが速やかに解除される。これによって、車輪回転数の局所的な変動に起因してドライバビリティが悪化する懸念を軽減することができる。
【0008】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この実施例の車両の要部構成を示すブロック図である。
図2図1に示すECUの動作の一部を示すフロー図である。
図3】(A)は車輪回転数の時間的変化の一例を示すグラフであり、(B)は車輪回転数の変動量の時間的変化の一例を示すグラフであり、(C)は当該変動量の絶対値の時間的変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、この実施例の車両10は、3つの気筒141~143が形成された4ストローク型のエンジン(内燃機関)12を動力源として備える。
【0011】
イグニッションキー(図示せず)によってIGオン操作が行われると、ECU50は、エンジン12を始動するべくリレー22をオンする。バッテリ24の電力は、オン状態のリレー22を介してスタータ26に供給される。スタータ26は、クランクシャフト16の端部に取り付けられたドライブプレート28を回転させて、クランキングを実行する。
【0012】
エンジン12はクランキングによって始動し、気筒141~143の各々に設けられたピストン(図示せず)は、クランクシャフト16がアイドル回転数で回転できる速度で上下動する。クランクシャフト16の回転力は、ベルト18を介してオルタネータ20の回転軸20sに伝達され、バッテリ24は、オルタネータ20の発電力によって充電される。
【0013】
なお、クランクシャフト16の回転数は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量に応じて変化する。また、車両10の状態は、各種センサ46によって検知される。
【0014】
ドライブプレート28と自動変速機40との間には、トルクコンバータ30が設けられる。トルクコンバータ30は、タービンランナ32,ポンプインペラ34およびロックアップクラッチ36を備える。このうち、ポンプインペラ34は、ドライブプレート28に取り付けられ、クランクシャフト16の回転に伴って回転する。一方、タービンランナ32は、自動変速機40と結合されたインプットシャフト38の端部に取り付けられる。タービンランナ32とポンプインペラ34との間には、トルコンオイルが充填される。
【0015】
ロックアップクラッチ36が作動していない状態では、タービンランナ32はドライブプレート28から開放される。つまり、ロックアップが解除される。このとき、ドライブプレート28ひいてはポンプインペラ34の回転力は、トルコンオイルを介してタービンランナ32に伝達される。これによって、回転力の伝達ロスは発生するものの、ドライバビリティは向上する。
【0016】
これに対して、ロックアップクラッチ36が作動すると、タービンランナ32はドライブプレート28と結合される。つまり、ロックアップが実行される。このとき、ドライブプレート28の回転力は、直接タービンランナ32に伝達される。タービンランナ32ひいてはインプットシャフト38は、ドライブプレート28の回転に伴って回転する。これによって、回転力の伝達ロスに起因する燃費の悪化が抑制される。
【0017】
自動変速機40は、インプットシャフト38の回転力を現時点で設定されている変速比で変換し、変換した回転力をデファレンシャル機構42を介してドライブシャフト44に伝達する。ドライブシャフト44の回転力は車輪(図示せず)を介して路面に伝えられ、これによって車両10が走行する。なお、ドライブシャフト44の回転数つまり車輪回転数は、回転センサ48によって検知される。
【0018】
ロックアップの実行中に車両10が路面段差を乗り越えると、乗り越え時の車輪回転数の変動がエンジン12ひいては車体に伝達され、エンジン12のトルク制御精度の悪化やドライバビリティの悪化を引き起こしてしまう。そこで、この実施例では、図2に示すロックアップ制御処理をECU50に繰り返し実行させるようにしている。
【0019】
なお、ロックアップ制御処理を実行するとき、ECU50はロックアップ制御装置として機能する。また、このフロー図に対応する制御プログラムは、メモリ50mに記憶される。
【0020】
図2を参照して、ステップS1では、各種センサ46の出力に基づいて車両10の状態を検出する。ステップS3では、車両10が走行中であるか否かをステップS1の検出結果に基づいて判別し、ステップS5では、車両10が加速中であるか否かをステップS1の検出結果に基づいて判別する。
【0021】
ステップS3の判別結果がNOであるか、ステップS5の判別結果がYESであれば、そのまま今回のロックアップ制御処理を終了する。これに対して、ステップS3の判別結果がYESでかつステップS5の判別結果がNOであれば、車両10は定速走行中または減速走行中であるとみなし、ステップS7で車輪回転数の変動量(=dθ/dt)を算出する。
【0022】
ステップS9では、算出された変動量の絶対値が閾値TH_Hを上回るか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS13に進む。一方、判別結果がYESであれば、ステップS11でロックアップクラッチ36によるロックアップを解除し、その後にステップS13に進む。
【0023】
ステップS13では、算出された変動量の絶対値が閾値TH_Lを下回るか否かを判別する。ここで、閾値TH_Lは閾値TH_Hよりも小さい。ステップS13の判別結果がNOであれば、そのまま今回のロックアップ制御処理を終了する。これに対して、ステップS13の判別結果がYESであれば、ステップS15でロックアップクラッチ36によるロックアップを実行し、その後に今回のロックアップ制御処理を終了する。
【0024】
したがって、定速走行中の車両10が路面段差を乗り越えると、車輪回転数が図3(A)に示す要領で変動する。このとき、車輪回転数の変動量は図3(B)に示す波形を描き、当該変動量の絶対値は図3(C)に示す波形を描く。閾値TH_HおよびTH_Lが図3(C)に示す値を有する場合、ロックアップは、時刻T1から時刻T2までの期間に解除される。
【0025】
以上の説明から分かるように、ロックアップクラッチ36を備えるトルクコンバータ30は、自動変速機40とともに車両10に設けられる。ECU50は、車輪回転数の変動量を繰り返し算出し(S7)、算出された変動量が所定範囲(=変動量の絶対値が閾値TH_H以下の範囲)から外れた時点でロックアップクラッチ36によるロックアップを解除する(S9, S11)。
【0026】
ロックアップが解除されることで、車輪回転数の変動は、トルクコンバータ30によって吸収される。この結果、車輪回転数の局所的な変動に起因してドライバビリティが悪化したり、エンジン12のトルク制御精度が悪化する懸念を軽減することができる。
【0027】
また、この実施例では、閾値TH_HおよびTH_Lを上述の値に設定することで、ロックアップの解除および実行にヒステリシス特性を持たせているため、車輪回転数の変動が収束する前にロックアップが実行される懸念が軽減される。
【0028】
さらに、加速中にロックアップの解除を禁止することで、タービンランナ32とポンプインペラ34との間の伝達ロスに起因してエンジン回転数が無意味に上昇する現象を回避することができる。また、各種センサ46および回転センサ48としては既存のものを利用できるため、ロックアップ制御に掛かるコストを抑えることができる。
【0029】
なお、この実施例では、ドライブシャフト44の回転数を検出するようにしているが、これに代えて、自動変速機40を構成するフォワードクラッチの回転数を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 …車両
12 …エンジン
30 …トルクコンバータ
36 …ロックアップクラッチ
40 …CVT
44 …ドライブシャフト
48 …回転センサ
50 …ECU
図1
図2
図3