(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2017201907
(22)【出願日】2017-10-18
【審査請求日】2020-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤井 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】森本 弘樹
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-66678(JP,A)
【文献】特開2007-69809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06 - 2/08
B60N 2/12
A47C 1/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックとを備える乗物用シートであって、
シートクッションの骨格を構成するクッションフレームと、
前記クッションフレームに対しシート上下方向に締結された可動レールと、
前記可動レールをシート上下方向と垂直な方向にスライド可能なように支持する固定レールと、
前記固定レールの少なくとも一部を外側から覆うように構成された
金属製の保護ブラケットと、
を備え、
前記保護ブラケットは、
前記固定レールに固定されると共に、前記固定レールからシート上方に延伸する第1ブラケットと、
前記可動レールよりもシート上方において、前記固定レールの少なくとも一部とシート上下方向に重なるように配置されると共に、前記第1ブラケットに締結される第2ブラケットと、
を有する、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記固定レールと前記保護ブラケットとを少なくともシート上方から被覆するレールカバーをさらに備える、乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの締結方向は、シート上下方向と前記可動レールのスライド方向とに垂直な方向である、乗物用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シートであって、
前記クッションフレームは、
シート上下方向と垂直な方向に延伸し、前記可動レールに締結された板状の取付部と、
前記取付部からシート上方に延伸し、板面が前記可動レールのスライド方向と平行な板状の支持部と、
を有する、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に設置される乗物用シートにおいて、シートクッションの骨格を構成するクッションフレームには、シートクッションを前後方向にスライドさせるためのスライド機構が設けられる。
【0003】
このスライド機構は、乗物のフロアに固定される固定レールと、固定レールに対してスライド可能な可動レールとを有する。可動レールは、シートクッションの一部であるブラケットに対し締結具によって上下方向に締結される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば乗物用シートを前方にスライドさせると、固定レールの後端部がシートクッションから露出する。固定レールは上方が開口した凹状の断面を有するため、露出した状態の固定レールには上方から異物が侵入し易い。固定レールに異物が侵入すると、スライド機構の作動が妨げられるおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、固定レールへの異物の侵入を抑制できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートバック(3)とを備える乗物用シート(1)である。乗物用シート(1)は、クッションフレーム(4)と、可動レール(6)と、固定レール(7)と、保護ブラケット(8)と、を備える。クッションフレーム(4)は、シートクッション(2)の骨格を構成する。可動レール(6)は、クッションフレーム(4)に対しシート上下方向に締結される。固定レール(7)は、可動レール(6)をシート上下方向と垂直な方向にスライド可能なように支持する。保護ブラケット(8)は、固定レール(7)の少なくとも一部を外側から覆うように構成される。
【0008】
また、保護ブラケット(8)は、第1ブラケット(81)と、第2ブラケット(82)と、を有する。第1ブラケット(81)は、固定レール(7)に固定されると共に、固定レール(7)からシート上方に延伸する。第2ブラケット(82)は、可動レール(6)よりもシート上方において、固定レール(7)の少なくとも一部とシート上下方向に重なるように配置されると共に、第1ブラケット(81)に締結される。
【0009】
このような構成によれば、固定レール(7)とシート上下方向に重なるように配置された第2ブラケット(82)によって、固定レール(7)の内部にシート上方から異物が侵入することが抑制できる。
【0010】
ここで、固定レール(7)のシート上方に他の部材が存在すると、可動レール(6)とクッションフレーム(4)とを上下方向に締結するためのスペース(つまり締結軌跡)が塞がれ、可動レール(6)とクッションフレーム(4)とが締結できない。
【0011】
これに対し、本開示では、可動レール(6)とクッションフレーム(4)とを上下方向に締結した後に、第2ブラケット(82)を固定レール(7)からシート上方に延伸する第1ブラケット(81)に締結できる。そのため、可動レール(6)とクッションフレーム(4)との締結を阻害せずに、固定レール(7)を上方から保護する第2ブラケット(82)を組み付けできる。
【0012】
本開示の一態様は、固定レール(7)と保護ブラケット(8)とを少なくともシート上方から被覆するレールカバー(9)をさらに備えてもよい。このような構成によれば、露出した固定レール(7)による乗物用シート(1)の外観の低下を抑制できる。また、第2ブラケット(82)がシート下方からレールカバー(9)を支持することで、踏み付け等によってレールカバー(9)の上方から力が加わった際のレールカバー(9)の破損を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、第1ブラケット(81)と第2ブラケット(82)との締結方向は、シート上下方向と可動レール(6)のスライド方向とに垂直な方向であってもよい。このような構成によれば、第1ブラケット(81)と第2ブラケット(82)との締結スペースを最小限にすることができる。その結果、スライド機構を省スペース化できる。
【0014】
本開示の一態様では、クッションフレーム(4)は、シート上下方向と垂直な方向に延伸し、可動レール(6)に締結された板状の取付部(41A)と、取付部(41A)からシート上方に延伸し、板面が可動レール(6)のスライド方向と平行な板状の支持部(41B)と、を有してもよい。このような構成によれば、クッションフレーム(4)から可動レール(6)に向かってシート上下方向に延伸する部分におけるレール幅方向の厚みが最小限となり、第2ブラケット(82)のレール幅方向の長さを大きくすることができる。その結果、異物の侵入効果を促進できる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の乗物用シートのクッションフレーム及びスライド機構の模式的な斜視図である。
【
図4】
図4Aは、
図3のIVA-IVA線での模式的な切断部端面図であり、
図4Bは、
図3のIVB-IVB線での模式的な切断部端面図ある。
【
図5】
図5は、第2ブラケット及びレールカバーを取り付ける前の
図3のスライド機構の模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、レールカバーを取り付ける前の
図3のスライド機構の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3とを備える。
【0018】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。
また、乗物用シート1は、
図2に示すように、2つの可動レール6と、2つの固定レール7と、2つの保護ブラケット8と、2つのレールカバー9とをさらに備える。
【0019】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり車両)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0020】
さらに、本実施形態における「シート下方」は、シートクッション2に着席者の荷重が加わる方向を意味し、「シート上方」は、「シート下方」と反対の方向を意味する。つまり、「シート上下方向」は、シートクッション2の厚み方向に一致し、2つの固定レール7が乗物のフロアに固定された状態では、「シート上下方向」は、鉛直方向と一致する。
【0021】
<クッションフレーム>
シートクッション2は、シートクッション2の骨格を構成するクッションフレーム4を有する。
クッションフレーム4は、
図2に示すように、2つの接続ブラケット41と、2つのサイドフレーム42とを有する。
【0022】
2つのサイドフレーム42は、シート幅方向に離間して配置されたパネル状の部材である。2つのサイドフレーム42は、複数のパイプ43によってシート幅方向に連結されている。
【0023】
2つの接続ブラケット41は、それぞれ1つのサイドフレーム42に固定され、サイドフレーム42からシート下方に延伸している。各接続ブラケット41は、
図3及び
図4Bに示すように、可動レール6に対し締結によって固定されている。各接続ブラケット41は、金属によって形成される。
【0024】
各接続ブラケット41は、
図4A,4Bに示すように、シート上下方向と垂直な方向に延伸する板状の取付部41Aと、シート上下方向及び可動レール6のスライド方向(本実施形態ではシート前後方向)に延伸する板状の支持部41Bとを有する。各接続ブラケット41のシート前後方向と垂直な断面は、L字状である。
【0025】
取付部41Aは、後述する可動レール6の上壁6Aにシート上方から重なるように当接し、ボルト11A及びナット11Bによって上壁6Aに共締めされている。ボルト11Aは、シート上下方向に取付部41A及び可動レール6を貫通している。
【0026】
支持部41Bは、取付部41Aのシート幅方向の一端からシート上方に向かって延伸し、後述するレールカバー9のスリット93を貫通している。支持部41Bの板面は、可動レール6のスライド方向と平行である。また、支持部41Bは、
図2に示すように、リンク44を介してサイドフレーム42に連結されている。
【0027】
<可動レール>
2つの可動レール6は、いわゆるアッパレールであり、金属で形成されている。2つの可動レール6は、後述する2つの固定レール7とそれぞれ組み合わされ、パワー式又はマニュアル式のスライド機構を構成している。各可動レール6は、シート前後方向に延伸し、各固定レール7に対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。
【0028】
各可動レール6は、上述のように、クッションフレーム4の各接続ブラケット41に対しシート上下方向に締結されている。また、各可動レール6は、シート前後方向における複数個所で各接続ブラケット41に固定されている。
【0029】
図4A,4Bに示すように、各可動レール6は、シート上下方向と垂直な方向に延伸し、クッションフレーム4と対向する上壁6Aと、上壁6Aのレール幅方向両側に配置され、レール幅方向に対向する2つの側壁6B,6Cとを有する。2つの側壁6B,6Cは、それぞれ、上壁6Aのレール幅方向両端から下方に垂下し、さらにレール幅方向外側かつ上方に向かって湾曲している。
【0030】
ここで、「レール幅方向」とは、シート上下方向と可動レール6のスライド方向とに垂直な方向を意味する。なお、本実施形態では、レール幅方向はシート幅方向に一致している。
【0031】
<固定レール>
2つの固定レール7は、いわゆるロアレールであり、金属で形成されている。2つの固定レール7は、
図2に示すように、それぞれ1つの可動レール6を上下方向と垂直な方向にスライド可能なように支持している。2つの固定レール7は、レール幅方向に離間して配置されている。
【0032】
各固定レール7は、シート前後方向に延伸している。各固定レール7は、シート上下方向と垂直な方向に延伸する底壁7Aと、底壁7Aのレール幅方向両側に配置され、レール幅方向に対向する2つの側壁7B,7Cとを有する。底壁7Aは、各可動レール6の上壁6Aと対向している。
【0033】
図4A,4Bに示すように、2つの側壁7B,7Cは、それぞれ、底壁7Aのレール幅方向両端から上方に立ち上がり、さらに固定レール7のレール幅方向の内側かつ下方に向かって湾曲している。つまり、2つの側壁7B,7Cは、下側が開放され、かつスライド方向に延伸する溝状の空間をそれぞれ形成している。
【0034】
各可動レール6における2つの側壁6B,6Cの湾曲した先端部は、各固定レール7の2つの側壁7B,7Cがそれぞれ形成する溝状の空間に挿入されている。このように各可動レール6の側壁6B,6Cと各固定レール7の側壁7B,7Cとが互いの先端部を挟むように配置されることで、各可動レール6のシート幅方向の移動が規制されている。
【0035】
なお、本実施形態では、固定レール7の各側壁7B,7Cの先端と可動レール6の各側壁6B,6Cとでシート上下方向に挟まれた空間と、固定レール7の底壁7Aと可動レール6の各側壁7B,7Cとでシート上下方向に挟まれた空間とに、それぞれ摺動部材10A,10Bが配置されている。
【0036】
各固定レール7は乗物のフロアに固定されていてもよいし、乗物用シート1の折り畳みが可能なように、例えば各固定レール7のシート後側の端部が乗物のフロアに着脱可能に構成されていてもよい。
【0037】
<保護ブラケット>
2つの保護ブラケット8は、2つの固定レール7の少なくとも一部をそれぞれ外側から覆う部材である。保護ブラケット8は、レールカバー9よりも機械的強度が高く、例えば金属によって形成される。
【0038】
各保護ブラケット8は、
図3及び
図4A,4Bに示すように、第1ブラケット81と、第2ブラケット82とを有する。
第1ブラケット81は、固定レール7に固定されると共に、固定レール7からシート上方に延伸する板状の部材である。第1ブラケット81は、
図4Aに示すように、底壁81Aと、2つの側壁81B,81Cとを有する。
【0039】
底壁81Aは、固定レール7の底壁7Aに沿って延伸している。具体的には、底壁81Aは、固定レール7の底壁7Aのシート下方から重なるように当接している。
【0040】
2つの側壁81B,81Cは、固定レール7の各側壁7B,7Cにそれぞれ沿って延伸している。具体的には、2つの側壁81B,81Cは、それぞれ、底壁81Aのレール幅方向の両端からシート上方に向かって延伸し、固定レール7の2つの側壁7B,7Cに外側から重なるように当接している。つまり、2つの側壁81B,81Cは、2つの側壁7B,7Cをレール幅方向に挟むように配置されている。また、2つの側壁81B,81Cは、固定レール7に溶接又は締結によって固定されている。なお、底壁81Aが溶接又は締結によって固定レール7に固定されていてもよい。
【0041】
2つの側壁81B,81Cのうち一方の側壁81Cは、固定レール7よりもシート上方まで延伸している。この側壁81Cの固定レール7よりもシート上方の位置にはスタッドボルト83が取り付けられている。スタッドボルト83は、固定レール7の外側に向かって、シート上下方向と可動レール6のスライド方向とに垂直な方向(つまりレール幅方向)に延伸している。また、側壁81Cのシート上方の端部は、底壁81Aと平行な方向に湾曲している。
【0042】
第2ブラケット82は、可動レール6よりもシート上方の位置で固定レール7の底壁7Aと対向するように配置される板状の部材である。また、第2ブラケット82は、第1ブラケット81に締結されている。第2ブラケット82は、上壁82Aと、側壁82Bとを有する。
【0043】
上壁82Aは、可動レール6の上壁6Aよりもシート上方において、固定レール7の底壁7Aと平行な方向に延伸している。上壁82Aは、可動レール6の上壁6A及び固定レール7の底壁7Aそれぞれの一部とシート上下方向に重なる位置に配置されている。
図4Bに示すように、上壁82Aの下面は、可動レール6と接続ブラケット41との締結部(つまりボルト11A及びナット11B)の少なくとも一部と対向する。また、上壁82Aは、レールカバー9のスリット93とはシート上下方向に重ならない位置に配置されている。
【0044】
側壁82Bは、上壁82Aのレール幅方向の一端からシート下方に延伸している。側壁82Bは、レール幅方向と垂直な方向に延伸し、第1ブラケット81の側壁81Cとレール幅方向に一部が重なっている。
【0045】
側壁82Bの第1ブラケット81と重なる部分には、スタッドボルト83が貫通する孔が設けられている。スタッドボルト83の第2ブラケット82を貫通した部分には、ナット84が螺合され、第1ブラケット81と第2ブラケット82とが共締めされている。つまり、第1ブラケット81と第2ブラケット82との締結方向は、レール幅方向である。また、
図3に示すように、第1ブラケット81と第2ブラケット82とは、スライド方向の複数個所で締結されている。
【0046】
<レールカバー>
レールカバー9は、
図2に示すように、固定レール7のシート後方の一部分をシート上方及びレール幅方向両側から被覆するカバーである。また、レールカバー9は、保護ブラケット8の少なくとも第2ブラケット82をシート上方から被覆している。
【0047】
レールカバー9は、
図4Aに示すように、基材部91と、カバー部92とを有する。
基材部91は、レールカバー9の内層を構成し、カバー部92を支持する。基材部91は、例えば樹脂によって成形される。基材部91は、シート上下方向と垂直な方向に延伸する上壁91Aと、上壁91Aからシート下方に向かって延伸する2つの側壁91B,91Cとを有する。
【0048】
基材部91の上壁91Aは、固定レール7の底壁7Aと可動レール6の上壁6Aとに対向する。基材部91の一方の側壁91Bは、保護ブラケット8の第1ブラケット81の側壁81Bと対向している。基材部91の残りの側壁91Cは、保護ブラケット8のスタッドボルト83と対向している。
【0049】
カバー部92は、レールカバー9の外層を構成し、意匠性を有する部位である。カバー部92は、例えば繊維を用いた織布、不織布等によって構成される。カバー部92は、基材部91の外面を被覆するように配置されている。
【0050】
レールカバー9のシート上方の面には、
図3に示すように、スライド方向に延伸するスリット93が形成されている。スリット93は、
図4Aに示すように、カバー部92をシート上下方向に貫通するように設けられている。また、基材部91のスリット93と重なる位置には、開口部91Dが設けられている。
【0051】
クッションフレーム4の接続ブラケット41は、可動レール6のスライドに伴い、スリット93をシート上下方向に貫通しながらスライド方向に移動する。
なお、基材部91と保護ブラケット8とは当接していてもよいし、離間していてもよい。本実施形態では、基材部91は、上壁91Aからシート下方に突出する複数の凸部91Eを有している。複数の凸部91Eは、保護ブラケット8の第2ブラケット82の上壁82Aにシート上方から当接している。
【0052】
<保護ブラケット及びレールカバーの組み付け方法>
保護ブラケット8及びレールカバー9は、可動レール6及び固定レール7に対し、以下の手順により組み付けられる。
【0053】
まず、
図5に示すように、ボルト11Aとナット11Bとを用いたシート上下方向の締結により可動レール6に接続ブラケット41を固定する。
図5の状態では、保護ブラケット8の第1ブラケット81は固定レール7に取り付けられているが、第2ブラケット82は第1ブラケット81に取り付けられていない。そのため、シート上下方向の締結スペースが確保されている。
【0054】
次に、
図6に示すように、第1ブラケット81の側壁81Cと重なるように第2ブラケット82を配置する。その後、第1ブラケット81に取り付けられた複数のスタッドボルト83それぞれに対し、ナット84を第2ブラケット82の外側から螺合する。これにより、第2ブラケット82が第1ブラケット81に締結される。
【0055】
第1ブラケット81と第2ブラケット82との締結後、レールカバー9を保護ブラケット8のシート上方から被せるように組み付ける。これにより、
図3に示すスライド機構が得られる。
【0056】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)固定レール7とシート上下方向に重なるように配置された第2ブラケット82によって、固定レール7の内部にシート上方から異物が侵入することが抑制できる。
【0057】
乗物用シート1では、可動レール6とクッションフレーム4の接続ブラケット41とを上下方向に締結した後に、第2ブラケット82を固定レール7からシート上方に延伸する第1ブラケット81に締結できる。そのため、可動レール6とクッションフレーム4との締結を阻害せずに、固定レール7を上方から保護する第2ブラケット82を組み付けできる。
【0058】
(1b)レールカバー9によって、露出した固定レール7による乗物用シート1の外観の低下を抑制できる。また、第2ブラケット82がシート下方からレールカバー9を支持することで、踏み付け等によってレールカバー9の上方から力が加わった際のレールカバー9の破損を抑制できる。
【0059】
(1c)第1ブラケット81と第2ブラケット82との締結方向がシート上下方向と可動レール6のスライド方向とに垂直な方向(つまりレール幅方向)であるので、第1ブラケット81と第2ブラケット82との締結スペースを最小限にすることができる。その結果、スライド機構を省スペース化できる。
【0060】
(1d)クッションフレーム4が接続ブラケット41を有することで、クッションフレーム4から可動レール6に向かってシート上下方向に延伸する部分におけるレール幅方向の厚みが最小限となり、第2ブラケット82のレール幅方向の長さを大きくすることができる。その結果、異物の侵入効果を促進できる。
【0061】
また、レールカバー9に1つのスリット93を設けることで、レールカバー9におけるクッションフレーム4の可動スペースを確保できる。その結果、レールカバー9に開口や、複数のスリットを設ける必要が無いため、レールカバー9の意匠性を向上できる。
【0062】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0063】
(2a)上記実施形態の乗物用シート1において、レールカバー9は必須の構成要件ではない。つまり、乗物用シート1は、レールカバー9を必ずしも備えなくてもよい。また、レールカバー9は必ずしも2層構造でなくてもよく、単層でも3層以上の構造であってもよい。
【0064】
(2b)上記実施形態の乗物用シート1において、第1ブラケット81と第2ブラケット82とは、必ずしもレール幅方向に締結される必要はない。締結スペースが確保できれば、レール幅方向と交差する方向に第1ブラケット81と第2ブラケット82とを締結してもよい。
【0065】
また、第1ブラケット81がスタッドボルト83の替わりにスタッドナットを有してもよい。つまり、第2ブラケット82の外側からボルトがスタッドナットに螺合されることで第1ブラケット81と第2ブラケット82とが締結されてもよい。
【0066】
(2c)上記実施形態の乗物用シート1において、クッションフレーム4は、必ずしも接続ブラケット41を備えなくてもよい。例えば、サイドフレーム42の一部が直接可動レール6に締結されてもよい。また、接続ブラケット41のシート前後方向と垂直な断面は、必ずしもL字状でなくてもよい。
【0067】
(2d)上記実施形態の乗物用シート1は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0068】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0069】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…シートバック、
4…クッションフレーム、6…可動レール、6A…上壁、6B,6C…側壁、
7…固定レール、7A…底壁、7B,7C…側壁、8…保護ブラケット、
9…レールカバー、10A,10B…摺動部材、11A…ボルト、11B…ナット、
41…接続ブラケット、41A…取付部、41B…支持部、42…サイドフレーム、
43…パイプ、44…リンク、81…第1ブラケット、81A…底壁、
81B,81C…側壁、82…第2ブラケット、82A…上壁、
82B,82C…側壁、83…スタッドボルト、84…ナット、91…基材部、
91A…上壁、91B,91C…側壁、91D…開口部、91E…凸部、
92…カバー部、93…スリット。