(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】運転支援装置、及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221017BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60W50/00
(21)【出願番号】P 2017204898
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜久男
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123054(JP,A)
【文献】特開2017-097518(JP,A)
【文献】特開2017-001563(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035268(WO,A1)
【文献】特開2016-024778(JP,A)
【文献】特開2016-153960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する自動運転制御と手動運転制御とを、選択的に実行する走行制御部と、
前記車両の運転者の状態を認識する運転者状態認識部と、
前記走行制御部により前記自動運転制御が実行されているときに、前記自動運転制御から前記手動運転制御への切替が予定されている自動運転終了地点よりも手前の地点に設定された切替準備地点に、前記車両が到達したときに、前記車両が該切替準備地点を走行する際に前記運転者状態認識部により認識された前記運転者の状態である第1運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第1応答要求を決定して出力する第1応答要求部と、
前記第1応答要求の出力に対する前記運転者の応答状態を示す第2運転者状態を、前記運転者状態認識部により認識し、該第2運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第2応答要求を決定して出力する第2応答要求部と、
前記運転者状態認識部により認識される前記運転者の状態を複数の段階に区分し、各段階に対して、優先順位を設定した複数の応答要求を割り当てる応答要求割当部と、
を備え、
前記第2応答要求部は、
前記第1応答要求と同じ内容の応答要求を前記第2応答要求の候補から除外して、前記第2応答要求を決定して出力し、
前記第1運転者状態に対する前記第2運転者状態の変化度合が所定レベル以下であるときに、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数あるか否かを判断し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数ある場合は、前記複数の応答要求のうち、優先度が高い応答要求から先に選択して前記第2応答要求として出力し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数無い場合には、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求を前記第2応答要求として出力する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
車両に対する自動運転制御と手動運転制御とを、選択的に実行する走行制御ステップと、
前記車両の運転者の状態を認識する運転者状態認識ステップと、
前記走行制御ステップにより前記自動運転制御が実行されているときに、前記自動運転制御から前記手動運転制御への切替が予定されている自動運転終了地点よりも手前の地点に設定された切替準備地点に、前記車両が到達したときに、前記車両が該切替準備地点を走行する際に前記運転者状態認識ステップにより認識された前記運転者の状態である第1運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第1応答要求を決定して出力する第1応答要求ステップと、
前記第1応答要求の出力に対する前記運転者の応答状態を示す第2運転者状態を、前記運転者状態認識ステップにより認識し、該第2運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第2応答要求を決定して出力する第2応答要求ステップと、
前記運転者状態認識ステップにより認識される前記運転者の状態を複数の段階に区分し、各段階に対して、優先順位を設定した複数の応答要求を割り当てる応答要求割当ステップと、
を含み、
前記第2応答要求ステップは、
前記第1応答要求と同じ内容の応答要求を前記第2応答要求の候補から除外して、前記第2応答要求を決定して出力
し、
前記第1運転者状態に対する前記第2運転者状態の変化度合が所定レベル以下であるときに、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数あるか否かを判断し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数ある場合は、前記複数の応答要求のうち、優先度が高い応答要求から先に選択して前記第2応答要求として出力し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数無い場合には、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求を前記第2応答要求として出力する
ことを特徴とする運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操舵、制動、加速等の各種動作の全てについて自動制御を行う自動運転モードと、全ての動作又は一部の動作の自動制御を行わない手動運転モードとを切り替える運転支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された運転支援装置においては、自動運転に必要な設備や情報が整っている道路区間を自動運転可能な道路区間として設定し、車両が自動運転可能な道路区間を走行している場合に限定して、自動運転モードによる制御を行っている。そして、自動運転可能な道路区間の終点に近づいた時に、手動運転への切替えの準備を促す音声メッセージ(手動運転モード切替予告)を出力している。さらに、特許文献1に記載された運転支援装置においては、手動運転モード切替予告を出力する際に、自車両周辺の他車両の状況等をディスプレイに表示して、運転者に対する注意喚起を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、自動運転モードによる走行制御(自動運転制御)を行っている際に、手動運転モードによる走行制御(手動運転制御)にスムーズに移行させるためには、運転者が手動運転を行い得る状態となっている必要がある。しかしながら、自動運転制御による走行中は、運転者の運転に対する意識が薄れがちであることから、手動運転に移行するための運転者の対応が遅れるおそれがある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、自動運転制御から手動運転制御に切替える際に、運転者を速やかに手動運転を行い得る状態とすることができる運転支援装置、及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の運転支援装置は、車両に対する自動運転制御と手動運転制御とを、選択的に実行する走行制御部と、前記車両の運転者の状態を認識する運転者状態認識部と、前記走行制御部により前記自動運転制御が実行されているときに、前記自動運転制御から前記手動運転制御への切替が予定されている自動運転終了地点よりも手前の地点に設定された切替準備地点に、前記車両が到達したときに、前記車両が該切替準備地点を走行する際に前記運転者状態認識部により認識された前記運転者の状態である第1運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第1応答要求を決定して出力する第1応答要求部と、前記第1応答要求の出力に対する前記運転者の応答状態を示す第2運転者状態を、前記運転者状態認識部により認識し、該第2運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第2応答要求を決定して出力する第2応答要求部と、前記運転者状態認識部により認識される前記運転者の状態を複数の段階に区分し、各段階に対して、優先順位を設定した複数の応答要求を割り当てる応答要求割当部と、を備え、前記第2応答要求部は、前記第1応答要求と同じ内容の応答要求を前記第2応答要求の候補から除外して、前記第2応答要求を決定して出力し、前記第1運転者状態に対する前記第2運転者状態の変化度合が所定レベル以下であるときに、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数あるか否かを判断し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数ある場合は、前記複数の応答要求のうち、優先度が高い応答要求から先に選択して前記第2応答要求として出力し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数無い場合には、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求を前記第2応答要求として出力することを特徴とする。
【0009】
本発明の運転支援方法は、車両に対する自動運転制御と手動運転制御とを、選択的に実行する走行制御ステップと、前記車両の運転者の状態を認識する運転者状態認識ステップと、前記走行制御ステップにより前記自動運転制御が実行されているときに、前記自動運転制御から前記手動運転制御への切替が予定されている自動運転終了地点よりも手前の地点に設定された切替準備地点に、前記車両が到達したときに、前記車両が該切替準備地点を走行する際に前記運転者状態認識ステップにより認識された前記運転者の状態である第1運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第1応答要求を決定して出力する第1応答要求ステップと、前記第1応答要求の出力に対する前記運転者の応答状態を示す第2運転者状態を、前記運転者状態認識ステップにより認識し、該第2運転者状態に応じて、前記運転者に対して応答を要求する第2応答要求を決定して出力する第2応答要求ステップと、前記運転者状態認識ステップにより認識される前記運転者の状態を複数の段階に区分し、各段階に対して、優先順位を設定した複数の応答要求を割り当てる応答要求割当ステップとを含み、前記第2応答要求ステップは、前記第1応答要求と同じ内容の応答要求を前記第2応答要求の候補から除外して、前記第2応答要求を決定して出力し、
、前記第1運転者状態に対する前記第2運転者状態の変化度合が所定レベル以下であるときに、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数あるか否かを判断し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数ある場合は、前記複数の応答要求のうち、優先度が高い応答要求から先に選択して前記第2応答要求として出力し、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求が複数無い場合には、前記第2運転者状態に割り当てられた応答要求を前記第2応答要求として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の運転支援装置及び運転支援方法によれば、自動運転終了地点に車両が到達する前の時点に設定された切替事前時点において、運転者の状態(第1運転者状態)に応じて決定された第1応答要求が出力される。そして、第1応答要求に対する運転者の応答状態を示す第2運転状態が認識され、第2運転者状態に応じた第2応答要求が出力される。このように、運転者の応答状態に応じた第2応答要求を出力することによって、自動運転制御から手動運転制御に切替える際に、運転者を速やかに手動運転を行い得る状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】自動運転制御から手動運転制御への切替えタイミングの説明図。
【
図3】手動運転への切替えに対する支援処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
[1.運転支援装置の構成図]
図1を参照して、本実施形態における運転支援装置10の構成について説明する。本実施形態における運転支援装置10は、車両1に搭載され、車両1の機構部(駆動機構、制動機構、操舵機構等)2の作動を制御する。
【0013】
運転支援装置10は、車両1の自動運転制御及び手動運転制御を実行する。ここで、自動運転制御には、運転者の操作によらずに車両1の走行を制御する完全自動運転制御の他、運転者の操作を補助して車両1を走行させる部分自動運転制御も含まれる。部分自動運転制御としては、例えば、車両1が走行車線からはみ出さないようにする車線維持制御、前走車との車間を一定に維持して走行する車間距離制御等が実行される。
【0014】
運転支援装置10は、車両1が、予め設定された自動運転区間(自動運転制御の実行が許可された区間)を走行している場合に限定して自動運転制御を実行する。そして、運転支援装置10は、自動運転区間以外の区間(非自動運転区間)を走行している場合には、自動運転制御の実行を禁止する。本実施形態では、高速道路が自動運転区間に設定され、高速道路以外の一般道路が非自動運転区間に設定されている。
【0015】
また、運転支援装置10は、車両1が自動運転区間を走行している場合に、必ず自動運転制御を行うわけではなく、運転者による自動運転制御の実行と停止の操作に応じて、自動運転制御により車両1の走行を制御する状態と、自動運転制御を禁止して手動運転制御により車両1の走行を制御する状態とを切り替える。
【0016】
車両1は、乗員(主として運転者)により操作される操作部40、表示部41、スピーカー42、画像処理部43、車両前方カメラ44、車両後方カメラ45、車内カメラ46、マイク47、地
図DB(Data Base)50、ジャイロセンサ51、GPS(Global Positioning System)受信機52、及びネットワーク通信部56を備えている。
【0017】
運転支援装置10は、CPU20、メモリ30、各種インターフェース回路(図示しない)等により構成された電子回路ユニットである。CPU20は、メモリ30に保存された運転支援装置10の制御用プログラム31を読み込んで実行することにより、走行制御部21、運転者状態認識部22、第1応答要求部23、及び第2応答要求部24として機能する。
【0018】
メモリ30には、制御用プログラム31の他に、運転者に対して出力する応答要求を決定するための応答要求テーブル32のデータと、応答要求の出力と運転者状態の認識結果を記録した対話履歴33のデータが保存される。応答要求テーブル32と対話履歴33の詳細については後述する。
【0019】
運転支援装置10には、操作部40、表示部41、スピーカー42、画像処理部43、地
図DB50、ジャイロセンサ51、GPS受信機52、及びネットワーク通信部56が接続されている。
【0020】
操作部40は運転者により操作されるスイッチを有し、スイッチの操作状況を示す操作信号が運転支援装置10に入力される。また、運転支援装置10から出力される制御信号によって、表示部41の画面表示及びスピーカー42からの音出力が制御される。
【0021】
車両前方カメラ44は車両1の前方を撮像し、車両後方カメラ45は車両1の後方を撮像する。車内カメラ46は運転者を含む車両1の車室内を撮像する。画像処理部43は、車両前方カメラ44、車両後方カメラ45、及び車内カメラ46による撮像画像に対して、公知の特徴量抽出、パターンマッチング等の処理を行う。これらの処理により、画像処理部43は、車両1の周囲に存在する物の種別(信号機、横断歩道、道路標識、歩行者等)を認識し、また、運転者の状態等を認識して、認識結果を示すデータを、運転支援装置10に出力する。地
図DB50には、道路の種別(高速道路、一般道路等)を含む地図情報のデータが保存されている。マイク47は、運転者の発声等を収音して、音声データを運転支援装置10に出力する。
【0022】
ジャイロセンサ51は、車両1の角速度を検出して角速度検出信号を運転支援装置10に出力する。GPS受信機52は、GPS衛星からの電波を受信して車両1の位置(緯度、経度)を検出し、位置検出信号を運転支援装置10に出力する。ネットワーク通信部56は、通信ネットワーク70を介して情報サーバー71との間で各種情報の送受信を行う。
【0023】
運転支援装置10において、走行制御部21は、自動運転制御による車両1の走行制御と、手動運転制御による車両1の走行制御とを選択的に実行する。走行制御部21は、GPS受信52及びジャイロセンサ51の検出信号に基づいて車両1の現在位置を検出し、地
図DB50から車両1が走行している地域の地図情報を取得する。そして、走行制御部21は、車両1が高速道路を走行していると認識しているときに、運転者による自動運転制御の開始操作に応じて、自動運転制御を開始する。
【0024】
走行制御部21は、自動運転制御において、車両前方カメラ44及び車両後方カメラ45による撮像画像から、道路のレーンマーク、周囲の他車両等を認識して、車線維持制御、先行車追従制御、他車両への接近回避制御等を実行する。走行制御部21による処理は、本発明の運転支援方法における走行制御ステップに相当する。
【0025】
運転者状態認識部22は、画像処理部43により、車内カメラ46による撮像画像から運転者の画像部分を抽出し、また、マイク47により収音された運転者の発声データを解析する。そして、運転者状態認識部22は、運転者の画像部分と発声の状況に基づいて、運転者状態を認識する。運転者状態認識部22による処理は、本発明の運転支援方法における運転者状態認識ステップに相当する。
【0026】
第1応答要求部23及び第2応答要求部24は、詳細は後述するが、車両1の運転者に対して、手動運転が可能な状態とするための処理を行う。第1応答要求部23による処理は、本発明の運転支援方法における第1応答要求ステップに相当する。また、第2応答要求部24による処理は、本発明の運転支援方法における第2応答要求ステップに相当する。
【0027】
ここで、
図2は、車両1が自動運転区間である高速道路100を、自動運転制御によって走行している状況を示している。
図2において、P1は高速道路の終点(自動運転終了が予定された地点)であり、P3は、車両1が自動運転終了地点P1よりも手前の地点に設定された切替準備地点を示している。
【0028】
第1応答要求部23は、車両1が切替準備地点P3に到達したときに、車両1の運転者が手動運転を行うことが可能な状態になっているか否かを判断する。そして、運転者が手動運転を行うことが可能な状態でないときには、第1応答要求部23は、第1応答要求を出力して、運転者が手動運転が可能な状態になるように促す。
【0029】
第2応答要求部24は、第1応答要求を出力しても、運転者が手動運転が可能な状態にならなかったときに、第2応答要求を出力して運転者の状況の変化を促す。走行制御部21は、第1応答要求及び第2応答要求の出力を行っても、運転者が手動運転が可能な状況にならなかったときには、車両1が自動運転終了地点P1の手前の強制停止地点P2に到達したときに、車両1を路肩に寄せて停車する制御を行う。
【0030】
[2.手動運転への切替えに対する支援処理]
次に、
図3~
図6に示したフローチャートに従って、運転支援装置10により実行される車両1の運転者を手動運転が可能な状況に移行させるための処理について説明する。
図2は、手動運転に対する切替え支援処理の全体的な処理手順を示しており、運転支援装置10は、走行制御部21により自動運転制御が実行されているときに、
図3のフローチャートによる処理を実行する。以下では、上述した
図2に示した状況を前提として、手動運転への切替えに対する支援処理について説明する。
【0031】
図3のステップS1~S3は、第1応答要求部23による処理である。第1応答要求部23は、ステップS1で、GPS受信機52から出力される車両1の位置と、地
図DB50に保存された道路情報とに基づいて、車両1が切替準備地点P3に到達したか否かを判断する。そして、第1応答要求部23は、車両1が切替準備地点P3に到達したときに、ステップS2に処理を進める。
【0032】
ステップS2で、第1応答要求部23は、運転者状態認識部22により運転者の状態(本発明の第1運転者状態に相当する)を認識する。運転者状態認識部22は、図4に示したフローチャートによる処理によって、運転者の状態を認識する。運転者状態認識部22は、ステップS20~S21で、画像処理部43を介して車内カメラ46により撮像を行い、画像処理部43により運転者の画像部分を抽出する。
【0033】
また、運転者状態認識部22は、ステップS22~S23で、マイク47により収音を行って、運転者の発声内容を分析する。続くステップS24で、運転者状態認識部22は、運転者の画像部分、及び運転者の発声内容から、運転者の状態を認識する。具体的は、運転者の画像部分から、運転者の視線方向、目の開閉状況、しぐさ等が認識され、運転者の発声内容から、運転者の応答状況や要求事項が認識される。
【0034】
次のステップS25で、運転者状態認識部22は、認識した運転者の状態と状態のレベルを示すデータ(運転者状態データ)をメモリ30に保存する。ここで、
図7は、運転者の状態、各運転者の状態のレベル、各レベルに割り当てられた応答要求、及び各応答要求の優先度を対応付けた応答要求テーブル32を示している。応答要求テーブル32により、運転者状態に応じた応答要求を割り当てる構成は、本発明の応答要求割当部に相当する。
【0035】
図7に示したように、本実施形態では、運転者状態が、前方注視、眠気、スマホ操作、及び居眠りの5段階の想定状態と、各想定状態のレベルとにより区分されている。各想定状態のレベルとして、レベル1(運転可能)、レベル2(現状把握)、レベル2(運転ができる気分)、及びレベル3(運転不能)が設定されている。
【0036】
図3のフローチャートに戻り、ステップS3で、第1応答要求部23は、
図5に示したフローチャートにより、第1応答要求出力処理を実行する。
図5のステップS30で、第1応答要求部23は、運転者状態の認識結果を読み込む。続くステップS31で、第1応答要求部23は、手動運転への切替えまでの残時間(車両1が自動運転終了地点P1に到達するまでの時間)を算出する。
【0037】
次のステップS32で、第1応答要求部23は、応答要求テーブル32を参照して、運転者状態、及び手動運転切替えまでの残時間に応じた応答要求を選択し、応答要求の音声をスピーカー42から出力する。例えば、運転者状態が「前方注視」であって、自動運転終了地点P1までの前時間が5分であるときには、「およそ5分後に手動運転に切り替わります。よろしいですか?」との音声(第1応答要求)を、スピーカー42から出力する。なお、音声と共に、同様の内容を示す文字或いは画像を表示部41に表示してもよい。例えば、「ストレッチをするには如何ですか?」との応答要求の音声を出力する際に、ストレッチの仕方を示すガイダンス画面を表示部41に表示してもよい。
【0038】
続くステップS34で、第1応答要求部23は、ステップS30で読み込んだ運転者状態の認識結果と、ステップS33で出力した第1応答要求の内容を、メモリ30に用意された対話履歴33に記録する。対話履歴33は、
図8に示したように、運転者状態認識部22により認識された運転者状態と、第1応答要求部23と第2応答要求部24のいずれかによって出力された応答要求とを、認識時刻及び出力時刻と共に記録した履歴データである。
【0039】
図3のフローチャートに戻り、ステップS4~S5及びステップS5から分岐したステップS10,S12からなるループは、第2応答要求部24による処理である。第2応答要求部24は、ステップS5で運転者状態のレベルが運転可能(レベル1)となるか、或いはステップS10で車両1が強制停止地点P2(
図2参照)に到達するまで、ステップS4による運転者状態認識処理と、ステップ12による第2応答要求出力処理とを繰り返し実行する。ステップS4で認識された運転者状態は、本発明の第2運転者状態に相当する。第2運転者状態は、第1応答要求又は第2応答要求の要求に対する運転者の応答状態を示すものとなる。
【0040】
図6は、第2応答要求出力処理のフローチャートである。第2応答要求部24は、ステップS40で、対話履歴33を参照して前回の運転者状態の認識結果を読出し、続くステップS41で、対話履歴33を参照して今回の運転者状態の認識結果を読み出す。例えば、1回目のループ処理では、前回の運転者状態の認識結果は
図3のステップS2の処理で認識された運転者状態であり、今回の運転者状態の認識結果は
図3の1回目のステップS4の処理で認識された運転者状態である。また、2回目以降のループ処理では、前回の運転者状態の認識結果は、1回前のループによるステップS4の処理で認識された運転者状態となる。
【0041】
次のステップS42で、第2応答要求部24は、前回と今回の運転者状態が異なるか否かを判断する。そして、第2応答要求部24は、前回と今回の運転者状態が異なる場合(相違はステップS43に処理を進め、前回と今回の運転者状態が同じ場合にはステップS51に処理を進める。
【0042】
ステップS50で、第2応答要求部24は、対話履歴33を参照して、出力済みの応答要求を、次に出力する応答要求の候補から除外し、ステップS43に処理を進める。例えば、
図8に示した対話履歴33では、t5及びt6で運転者状態が共に「眠気-運転ができる気分」であって同じであるため、t6で出力された応答要求「ストレッチするのは如何でしょうか?」が、次に出力する応答要求の候補から除外される。そして、次のt8では、異なる応答要求「気分転換のために音楽をかけましょうか?」が選択されて出力されている。
【0043】
ステップS43で、第2応答要求部24は、今回の運転者状態に割り当てられた応答要求が複数あるか否かを判断する。そして、第2応答要求部24は、割り当てられた応答要求が複数ある場合はステップS44に処理を進め、複数の応答要求のうち、優先度が高い応答要求から順に選択する。
【0044】
例えば、
図7に示した応答要求テーブル32では、運転者状態「眠気-運転ができる気分」に対して、優先度2-3の「ストレッチするのは如何でしょうか?」と、優先度2-4の「気分転換のために音楽をかけましょうか?」とが割り当てられている。この場合は、優先度2-3の方が優先度2-4よりも高い設定となっているので、「ストレッチするのは如何でしょうか?」が先に選択され、次に「気分転換のために音楽をかけましょうか?」が選択される。
【0045】
一方、ステップS51では、割り当てられた応答要求が1つだけであるので、第2応答要求部24は、割り当てられた応答要求を選択してステップS45に処理を進める。例えば、
図7に示した応答要求では、運転者状態「前方注視-1:運転可能」には、1つの応答要求「およそ〇〇分後に手動運転に切り替わります。よろしいですか?」が割り当てられている。そのため、第2応答要求部24は、応答要求「およそ〇〇分後に手動運転に切り替わります。よろしいですか?」を選択する。
【0046】
ステップS45で、第2応答要求部24は、ステップS44又はステップS51で選択した応答要求(第2応答要求)の音声をスピーカー42から出力する。なお、音声と共に、第2応答要求と同様の内容を示す文字或いは画像を表示部41に表示してもよい。続くステップS46で、第2応答要求部24は、ステップS45で出力した応答要求を対話履歴33に追記して記録する。
【0047】
図3のフローチャートに戻り、第2応答要求部24は、ステップS5で運転者状態が「前方注視-1:運転可能」となったときに、ステップS6に処理を進める。運転支援装置10は、ステップS6で、「およそ〇〇分後に手動運転に切り替わります。準備をお願いします。」等のガイダンス音声を出力する。
【0048】
続くステップS7で、運転支援装置10は、応答要求の出力に対して運転者からの操作指示があったか否かを判断する。ここで、運転者からの操作指示があったとは、例えば、「暑くないですか?」との応答要求に対して、運転者の「暑いからエアコンをつけて」等の音声出力があった場合、或いは「気分転換のために音楽をかけましょうか?」との応答要求に対して、運転者から「うん、音楽をかけて」等の音声出力があった場合が該当する。
【0049】
そして、運転支援装置10は、運転者からの操作指示があったときは、ステップS8に処理を進めて、操作指示に応じた処理(エアコンを作動させる、音楽をかける等)を行い、ステップS9に処理を進めて、手動運転への切替え支援処理を終了する。一方、運転者からの操作指示がなかったときには、運転支援装置10は、ステップS9に処理を進める。
【0050】
また、ステップS10で車両1が強制停止地点P2に到達したとき、すなわち、運転者状態が「1:運転可能」となる前に、車両1が強制停止地点P2に到達したときには、第2応答要求部24は、ステップS11に処理を進める。
【0051】
ステップS11は走行制御部21による処理であり、走行制御部21は、車両1を減速して路肩に寄せて停止させる制御を行う。これにより、運転者による手動運転が困難であると判断できる状態で、車両1の自動運転制御から手動運転制御に切替えられて、手動運転制御が実行されることが回避される。
【0052】
[3.他の実施形態]
上記実施形態では、第2応答要求部24は、応答要求を出力したときに運転者状態が変わらなかったときには、前回とは異なる応答要求を出力したが、同じ応答要求を繰り返し出力する構成としてもよい。
【0053】
また、
図7の応答要求テーブル32に示したように、応答要求に優先順位を設定して、第2応答要求部24は、優先順位が高い応答要求から順に選択して出力したが、優先順位を設定せずに、任意の順番或いは他の条件により応答要求を選択する構成としてもよい。
【0054】
また、運転者状態認識部22は、車内カメラ46による撮像画像から抽出した運転者の画像部分と、マイク47により収音した運転者の発声内容とに基づいて、運転者状態を認識したが、運転者の画像部分と発声内容とのうちのいずれか一方のみに基づいて、運転者状態を認識するようにしてもよい。
【0055】
また、運転席に振動体を組み込み、第1応答要求部23又は第2応答要求部24によって応答要求の音声を出力する際に振動体を作動させて、運転者に対する注意喚起の効果を高めてもよい。
【0056】
また、
図6のステップS42で、第2応答要求部24は、前回と今回の運転者状態が異なるか否かを判断したが、運転者状態をさらに細かい段階に分類して、前回と今回の運転者状態の相違レベルが所定レベル以下である(運転状態の変化度合が小さい)ときに、前回と異なる応答要求を出力するようにしてもよい。
【0057】
なお、
図1は、本願発明を理解容易にするために、運転支援装置10の機能構成を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、運転支援装置10の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0058】
また、運転支援装置10において、CPU20で実行される制御用プログラム31は、例えば、通信ネットワーク70を介して外部サーバーからダウンロードされ、それからRAM等のメモリ30上にロードされてCPU20により実行されるようにしてもよい。また、通信ネットワーク70を介して、外部サーバーからRAM等のメモリ30に直接ロードされ、CPU20により実行されるようにしてもよい。或いは、運転支援装置10に接続された記憶媒体から、RAM等のメモリ30上にロードされるようにしてもよい。
【0059】
また、
図3~
図6に示したフローチャートの処理単位は、運転支援装置10による処理の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。運転支援装置10の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、同様の処理結果が得られるのであれば、上記各フローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 機構部
10 運転支援装置
20 CPU
21 走行制御部
22 運転者状態認識部
23 第1応答要求部
24 第2応答要求部
30 メモリ
31 制御用プログラム
32 応答要求テーブル
33 対話履歴
40 操作部
42 スピーカー
43 画像処理部
44 車両前方カメラ
45 車両後方カメラ
45 車内カメラ
46 車内カメラ
47 マイク
50 地
図DB
51 ジャイロセンサ
52 GPS受信機
56 ネットワーク通信部
70 通信ネットワーク
71 情報サーバー