IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NTN株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モータ装置のシリーズ 図1
  • 特許-モータ装置のシリーズ 図2
  • 特許-モータ装置のシリーズ 図3
  • 特許-モータ装置のシリーズ 図4
  • 特許-モータ装置のシリーズ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】モータ装置のシリーズ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20221017BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20221017BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K11/215
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017231824
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019103238
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】松任 卓志
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠紀
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512386(JP,A)
【文献】特開2010-104212(JP,A)
【文献】特開2009-033956(JP,A)
【文献】特開2016-086557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、ステータと、前記ロータ及び前記ステータを収容するモータケースとを有するモータユニットに対して、前記ロータの回転位相を検知するセンサと、前記センサを収容するセンサケースとを有するセンサユニットを、組み付けて構成されるモータ装置のシリーズであって、
前記モータケースの形状又はサイズが異なる複数種類の前記モータユニットを備え、
各種類の前記モータユニットが有する前記モータケースは、同形状かつ同サイズに形成された前記センサケースの嵌合部の内周面に対して嵌合可能な同形状かつ同サイズの嵌合部を有し、
前記センサケースと前記モータケースとの嵌合により、前記センサケースを有する前記センサユニットを、複数種類の前記モータユニットの中から選択された1つのいずれに対しても組み付け可能に構成し
前記センサユニットと前記モータユニットが組み付けられた状態において、前記センサは前記モータケースの嵌合部内に進入するように配置されることを特徴とするモータ装置のシリーズ。
【請求項2】
ロータと、ステータと、前記ロータ及び前記ステータを収容するモータケースとを有するモータユニットに対して、前記ロータの回転位相を検知するセンサと、前記センサを収容するセンサケースとを有するセンサユニット、又は、前記センサを有しないカバー部材を、組み付けて構成されるモータ装置のシリーズであって、
前記センサケースと前記カバー部材は、同形状かつ同サイズに形成された前記モータケースの嵌合部の外周面に対して嵌合可能な同形状かつ同サイズの嵌合部を有し、
前記モータケースに対する前記センサケース又は前記カバー部材の嵌合により、前記モータケースを有する前記モータユニットに対して、前記センサユニットと前記カバー部材とのいずれかを選択して組み付け可能に構成し
前記センサユニットと前記モータユニットが組み付けられた状態において、前記センサは前記モータケースの嵌合部内に進入するように配置されることを特徴とするモータ装置のシリーズ。
【請求項3】
前記ステータに接続される給電線を導出するための配線経路が、前記モータケースに設けられ、
前記センサに接続される信号線を導出するための配線経路が、前記センサケースに設けられている請求項1に記載のモータ装置のシリーズ。
【請求項4】
前記複数種類のモータユニットは、内部に収容されている前記ロータ又は前記ステータの外径に合せて外径が異なるモータケースを有し、
前記モータケースの前記嵌合部は、前記ロータ及び前記ステータが収容された電動モータ収容部とは軸方向に異なる位置に設けられた請求項1又は3に記載のモータ装置のシリーズ。
【請求項5】
前記センサケースと前記モータケースとが嵌合した状態で、前記センサケースは前記ロータ及び前記ステータが収容された電動モータ収容部とは軸方向に異なる位置に設けられた請求項4に記載のモータ装置のシリーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置のシリーズに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の動力源や制御に用いられるモータ装置として、ロータの回転位相を検知するホール素子等のセンサが設けられたモータ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動モータを構成するステータ及びロータと、ロータの回転位相を検知する回転センサとが、ハウジング又はケースに収容された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-192832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多品種展開に向けてモータ装置をシリーズ化する際、モータ装置を適用する機器によっては、その仕様に合わせて電動モータのサイズ(出力)を変更したり、センサを省略したりするなど、構成部品のサイズやレイアウトの変更が予想される。しかしながら、これらの変更に応じてモータ装置全体の構成を個別に設計すると、製造コストが高くなるといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、モータユニット又はセンサユニットを構成するケースや内部構成部品を共通化することにより低コスト化を図れるモータ装置のシリーズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、ロータと、ステータと、ロータ及びステータを収容するモータケースとを有するモータユニットに対して、ロータの回転位相を検知するセンサと、センサを収容するセンサケースとを有するセンサユニットを、組み付けて構成されるモータ装置のシリーズであって、モータケースの形状又はサイズが異なる複数種類のモータユニットを備え、各種類のモータユニットが有するモータケースは、同形状かつ同サイズに形成されたセンサケースの嵌合部に対して嵌合可能な同形状かつ同サイズの嵌合部を有し、センサケースとモータケースとの嵌合により、センサケースを有するセンサユニットを、複数種類のモータユニットの中から選択された1つのいずれに対しても組み付け可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
このように、センサケースを有するセンサユニットを、複数種類のモータユニットの中から選択された1つのいずれに対しても組み付け可能に構成することで、異なるモータユニットを備える複数種類のタイプを用意してシリーズ化するにあたって、センサユニットを共通化することができる。これにより、センサユニットを構成するセンサケース及びその内部に収容される内部構成部品を共通化することができるので、種類ごとにモータ装置全体の設計を個別に行わなければならない場合に比べて、低コスト化を図れるようになる。また、共通する部分については、組立工程に大きな変更も生じないので、シリーズ化する際の組立作業性も向上する。
【0009】
また、本発明は、ロータと、ステータと、ロータ及びステータを収容するモータケースとを有するモータユニットに対して、ロータの回転位相を検知するセンサと、センサを収容するセンサケースとを有するセンサユニット、又は、センサを有しないカバー部材を、組み付けて構成されるモータ装置のシリーズであって、センサケースとカバー部材は、同形状かつ同サイズに形成されたモータケースの嵌合部に対して嵌合可能な同形状かつ同サイズの嵌合部を有し、モータケースに対するセンサケース又はカバー部材の嵌合により、モータケースを有するモータユニットに対して、センサユニットとカバー部材とのいずれかを選択して組み付け可能に構成したことを特徴とする。
【0010】
このように、モータケースを有するモータユニットに対して、センサユニットとカバー部材とのいずれかを選択して組み付け可能であることで、センサを有するタイプとセンサを有しないタイプとを用意してシリーズ化するにあたって、モータユニットを共通化することができる。これにより、モータユニットを構成するモータケース及びその内部に収容される内部構成部品を共通化することができるので、種類ごとにモータ装置全体の設計を個別に行わなければならない場合に比べて、低コスト化を図れるようになる。また、共通する部分については、組立工程に大きな変更も生じないので、シリーズ化する際の組立作業性も向上する。
【0011】
特に、センサを備えるシリーズの場合は、ステータに接続される給電線を導出するための配線経路が、モータケースに設けられ、センサに接続される信号線を導出するための配線経路が、センサケースに設けられることが望ましい。このように構成することで、電動モータの種類や大きさが変化して、給電線の配線経路を変更する必要が生じたとしても、信号線の配線経路についてはその影響を回避することができる。すなわち、センサケースの形状やこれに収容される内部構成部品の配置を変更しなくてもよいので、共通のセンサユニットを用いることができ、部品の共通化を図ることができる。
【0012】
また、シリーズ化するにあたって、モータケースの外径を、内部に収容されるロータ又はステータの外径に合せて異ならせる必要がある場合、モータケースの嵌合部を、ロータ及びステータが収容される電動モータ収容部とは軸方向に異なる位置に設けられるようにすることで、モータケース(電動モータ収容部)の外径が変化しても、それに合わせて嵌合部の形状やサイズを変更する必要がなくなる。このように、モータケースの外径に合せてセンサユニットとの嵌合部の外径を変更する必要がないので、嵌合部の形状やサイズを共通化することで、センサケースも共通化できることからコンパクトなモータ装置のシリーズを提供できるようになる。
【0013】
また、シリーズ化するにあたって、モータケースの外径を、内部に収容されるロータ又はステータの外径に合せて異ならせる必要がある場合、センサケースを、モータケースに対して嵌合された状態で、電動モータ収容部とは軸方向に異なる位置に設けられるようにすることで、モータケース(電動モータ収容部)の外径が変化しても、それに合わせてセンサケースの形状やサイズを変更する必要がなくなる。これにより、モータケースの外径に合せてセンサケースの外径を変更する必要がないので、センサケースの形状やサイズを共通化することができる上、コンパクトなモータ装置のシリーズを提供できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータユニット又はセンサユニットを構成するケースや内部構成部品を共通化することができるので、低コスト化を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るモータ装置のシリーズうちの1つのモータ装置の外観斜視図である。
図2図1に示すモータ装置の縦断面図である。
図3図2より小径のモータ装置の構成例を示す図である。
図4図2より大径のモータ装置の構成例を示す図である。
図5図2のモータ装置のセンサユニットを、センサを有しないカバー部材に置き換えたモータ装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るモータ装置のシリーズのうちの1つのモータ装置の外観斜視図、図2は、図1に示すモータ装置の縦断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すモータ装置1は、モータユニット2とセンサユニット3とを組み付けて構成されている。モータユニット2は、電動モータ4と、電動モータ4を収容するモータケース5とを備える。モータケース5は、組立の都合上、二分割されており、電動モータ4を収容する円筒状のケース本体部51と、ケース本体部51の一端部(図2における左端部)の開口部を閉鎖するケース蓋部52とで構成されている。ケース本体部51とケース蓋部52とは、環状の凹凸嵌合構造によって互いに固定されている。本実施形態では、ケース本体部51に凹嵌合部51aが設けられ、ケース蓋部52に凹嵌合部51aに挿入されて嵌合される凸嵌合部52aが設けられているが、これとは反対に、凹嵌合部がケース蓋部52に設けられ、凸嵌合部がケース本体部51に設けられていてもよい。
【0019】
また、ケース蓋部52には、ステータ6に接続される給電線30(図2参照)を外部に導出するための配線経路31が設けられている。ケース蓋部52の外周面には筒状の突起部52cが設けられており、この突起部52cを通して給電線30が外部に導出され、図示しない電源と接続される。
【0020】
電動モータ4は、ケース本体部51に対して回転しないように固定されたステータ6と、ステータ6に対して隙間を介して対向するように配置されたロータ7とで構成されている。本実施形態では、ステータ6とロータ7とが径方向に隙間を介して配置されたラジアルギャップ型の電動モータを用いているが、ステータとロータとが軸方向に隙間をもって対向するように配置されたアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。
【0021】
ステータ6は、軸方向に積層した複数の鋼板(例えば電磁鋼板等)で形成されたステータコア6aと、ステータコア6aに装着された絶縁材料からなるボビン6bと、ボビン6bに巻回されたコイル6cとで構成されている。ロータ7は、軸方向に積層した複数の交番(例えば電磁鋼板等)で形成された環状のロータコア7aと、ロータコア7aの外周面に取り付けられた複数のマグネット7bと、ロータコア7aの内周面に固定された環状のロータインナ7cと、ロータインナ7cと一体的に回転する回転軸8とで構成されている。
【0022】
ロータインナ7cの内周面には回転軸8が挿入されて固定されている。回転軸8は、ロータインナ7cの軸方向両側に配置された2つの転がり軸受9,10によって回転可能に支持されている。一方の転がり軸受9は、ケース蓋部52に設けられた円筒状の軸受装着部52bの内周面に装着され、他方の転がり軸受10は、ケース本体部51に設けられた円筒状の軸受装着部51bの内周面に装着されている。また、ケース蓋部52における転がり軸受9が配置された側とは反対側には、回転軸8の外周面にすべりカラー11を介して環状のシール部材12が設けられており、このシール部材12によって回転軸8とケース蓋部52との間の隙間が封止されている。
【0023】
回転軸8におけるセンサユニット3側の端部には、半円柱状にS極、N極に着磁された円柱状のセンサマグネット13が設けられている。本実施形態では、センサマグネット13が、有底筒状に形成された樹脂製のマグネットホルダ15の底に突き当たるように挿入されており、センサマグネット13は接着剤によりマグネットホルダ15に固定されている。そして、マグネットホルダ15が、回転軸8の端部に設けられた凹部8a内に挿入され、さらに、固定部材としての固定ピン16によって軸方向及び回転方向に固定されている。これにより、センサマグネット13は、回転軸8に対して軸方向及び回転方向に位置決めされて固定されている。また、本実施形態では、回転軸8を支持する転がり軸受10が、固定ピン16を挿入するための挿入孔の開口部を塞いでいることで、回転軸8に対する固定ピン16の脱落を防止する機能も兼ねている。
【0024】
センサユニット3は、ロータ7の回転位相を検知するセンサ17と、センサ17を収容するセンサケース18とを備える。センサ17は、上記センサマグネット13に対向する位置で基板19を介してセンサケース18内に取り付けられている。センサ17は、磁気センサであり、電動モータ4に電力が供給されてロータ7が回転した際に、回転軸8と一体的に回転するセンサマグネット13の磁界の変化を検知する。これにより、ロータ7の回転位相が検知される。
【0025】
センサケース18には、センサ17に接続される信号線40を外部に導出するための配線経路41が設けられている。センサケース18の外周面には筒状の突起部18aが設けられており、この突起部18aを通して信号線40が外部に導出され、図示しない制御部と接続される。制御部は、信号線40を通して送られたセンサ17からの信号に基づき、電動モータ4の回転を制御する。
【0026】
また、センサケース18は、モータケース5のケース本体部51対して固定されている。具体的には、ケース本体部51におけるケース蓋部52側とは反対側の端部に、円筒状の外周面を有する凸嵌合部51cが設けられており、センサケース18にはケース本体部51の凸嵌合部51cに対して嵌合可能な円筒状の内周面を有する凹嵌合部18bが設けられている。また、これとは反対に、凹嵌合部がケース本体部51に設けられ、凸嵌合部がセンサケース18に設けられていてもよい。
【0027】
次に、図3及び図4に、本実施形態に係るモータ装置のシリーズにおける他のモータ装置の構成例を示す。なお、図3及び図4に示す各モータ装置は、図1及び図2に示す上記モータ装置と基本的に同じ構造であるが、図3及び図4では、モータ装置のセンサユニット3とモータケース5のケース本体部51のみ図示し、他の部分は図示省略している。
【0028】
図3及び図4に示す各モータ装置は、図1及び図2に示す上記モータ装置とは異なる出力(外径)の電動モータを用いたタイプであり、それぞれの電動モータの外径に合せてモータケース5のケース本体部51の外径を変更している。図3に示すモータ装置は、図1及び図2に示す上記モータ装置に比べて、ケース本体部51の外径A2を小さくし(A2<A1)、反対に、図4に示すモータ装置は、図1及び図2に示す上記モータ装置に比べて、ケース本体部51の外径A3を大きくしている(A3>A1)。
【0029】
このように、使用する電動モータの出力が変わると、その電動モータのサイズに応じてモータケース5の外径を変更する必要性が生じる。しかしながら、本実施形態に係るモータ装置のシリーズにおいては、モータケース5のサイズが変わっても、センサユニット3は同形状かつ同サイズで同じ構造のものを用いている。そのため、本実施形態では、モータケース5(ケース本体部51)に設けられた嵌合部(凸嵌合部51c)をいずれも同形状かつ同サイズ(B1=B2=B3)に形成している。これにより、モータケース5のサイズが変わっても、センサユニット3をいずれのモータケース5に対しても組み付けることができ、一種類のセンサユニット3を用いて複数種類のモータ装置を構成することが可能となる。
【0030】
また、モータケース5(ケース本体部51)の嵌合部(凸嵌合部51c)は、電動モータ4の外径が大きくなっても、その影響を受けない箇所に設けられている。すなわち、嵌合部は、モータケース5におけるステータ6及びロータ7が収容される部分E(以下、「電動モータ収容部」という。)には設けられていないので、電動モータ4のサイズ変更に合わせてモータケース5の外径を変更する必要が生じても、嵌合部の形状や外径は変更せずにそのまま維持することができる。また、言い換えれば、モータケース5の嵌合部は、電動モータ4の外径が大きくなっても、その影響を受けないように、電動モータ収容部Eとは軸方向に異なる位置に設けられている。同様に、センサケース18についても、センサケース18とモータケース5とが嵌合した状態で、センサケース18は電動モータ収容部Eの外周には配置されない(センサケース18は電動モータ収容部Eとは軸方向に異なる位置に設けられている)ので、電動モータ4のサイズ変更に合わせてモータケース5の外径を変更する必要が生じても、センサケース18の外径や形状を変更する必要がない。
【0031】
これに対して、上記特許文献1に記載の構成では、ハウジングにおける電動モータが収容される部分の外周に基板ケースや基板カバーが配置されているので、電動モータのサイズに応じてハウジングの外径が大きくなると、これに伴って基板ケースや基板カバーの外径も大きくしなければならない。あるいは、基板ケースや基板カバーを、ハウジングとの干渉を避けるために個別に設計しなければならないため、シリーズ化する場合に製造コストが高くなることが考えられる。
【0032】
この点、本実施形態では、使用する電動モータのサイズ(出力)に応じてモータケースの径を変更しても、センサケースの径を変更しなくてもよいので、同サイズかつ同形状のセンサケースを用いることが可能である。さらに、本実施形態に係るモータ装置においては、図2に示すように、給電線30を導出するための配線経路31がモータケース5に設けられ、信号線40を導出するための配線経路41がセンサケース18に設けられていることで、電動モータの種類や大きさが変化して、給電線の配線経路を変更する必要が生じても、信号線の配線経路は影響を受けることがない。このため、センサケースの形状やサイズを変更する必要がなく、同サイズかつ同形状のセンサケースを用いることが可能である。
【0033】
このように、本実施形態に係るモータ装置の構成によれば、モータ装置をシリーズ化するにあたって、共通のセンサユニットを用いることができるので、モータ装置の種類ごとに個別にセンサユニットを設計する場合に比べて、製造コストの増大を回避できる。また、電動モータの大きさが変わってもセンサユニットのサイズが変わらないコンパクトなモータ装置のシリーズを提供できるようになる。
【0034】
続いて、図5に、本実施形態に係るモータ装置のシリーズにおけるセンサを有しないモータ装置の構成例を示す。
【0035】
図5に示すモータ装置1は、センサユニット3を省略したタイプである。その代りに、モータケース5に対してカバー部材20が取り付けられている。カバー部材20は、内部にセンサを有しない分、上記センサケースに比べて小型に形成されており、モータ装置1全体として小型化が図られている。
【0036】
また、カバー部材20には、モータケース5のケース本体部51に設けられた凸嵌合部51cに嵌合可能な凹嵌合部20aが設けられており、これら嵌合部51c,20a同士の嵌合により、カバー部材20はケース本体部51に対して取り付けられている。なお、図5に示す例とは反対に、凹嵌合部がケース本体部51に設けられ、凸嵌合部がカバー部材20に設けられていてもよい。
【0037】
また、図5に示すモータ装置1は、センサユニット3を備えていないことから、センサターゲットとしてのセンサマグネット13も備える必要がない。従って、図5に示すモータ装置1の回転軸8には、センサマグネット13とこれらを保持するマグネットホルダ15及び固定ピン16が省略されている。
【0038】
上記のように、図5に示すモータ装置1は、上記センサユニット3と、センサマグネット13、マグネットホルダ15及び固定ピン16が設けられていない以外は、図1及び図2に示す上記モータ装置と同じ構成である。すなわち、両モータ装置は、センサマグネットとマグネットホルダ及び固定ピンの有無以外は同じ構成のモータユニットを用いて構成されている。このように、センサを有するタイプとセンサを有しないタイプとでほぼ同じ構成のモータユニットを用いることができるのは、センサケース18の嵌合部(凹嵌合部18b)とカバー部材20の嵌合部(凹嵌合部20a)とが同形状かつ同サイズ(B1=B4)に形成されているからである。すなわち、同じモータケース5に対してセンサケース18とカバー部材20のいずれかを選択して組み付けることができるので、一種類のモータユニット2を用いてセンサを有するタイプとセンサを有しないタイプの両方を構成することができる。
【0039】
また、図5に示すセンサを有しないタイプにおいて、異なる外径の電動モータ4を用いてシリーズ化することも可能である。その場合、電動モータ4の外径に合せてモータケース5の外径を変更する必要があるが、図5に示すように、カバー部材20は、モータケース5に対して嵌合した状態で電動モータ収容部Eの外周には配置されていない(カバー部材20は、電動モータ収容部Eとは軸方向に異なる位置に設けられている)ので、電動モータ4のサイズに合わせてモータケース5の外径を変更する必要が生じても、カバー部材20の外径や形状を変更することなく同サイズかつ同形状のカバー部材20を用いることが可能である。
【0040】
以上のように、上記実施形態に係るモータ装置においては、シリーズ化するにあたって形状又はサイズの異なる複数種類のモータケースを用意する必要があっても、各種類のモータケースに対して、同形状かつ同サイズに形成されたセンサケースを組み付け可能にすることで、センサケース及びその内部に収容される内部構成部品を共通化することができる。また、シリーズ化するにあたって、センサユニットの要否に応じてセンサを備えるタイプとセンサを備えないタイプとを用意する必要があっても、同形状かつ同サイズに形成されたモータケースに対してセンサユニット又はカバー部材を選択して組み付け可能にすることで、モータケース及びその内部に収容される内部構成部品を共通化することが可能である。
【0041】
このように、本発明によれば、モータ装置をシリーズ化するにあたって、モータユニット又はセンサユニットを構成するケース及びそれに収容される内部構成部品を共通化することができるので、種類ごとにモータ装置全体の設計を個別に行わなければならない場合に比べて、低コスト化を図れる。また、共通する部分については、組立工程にも大きな変更が生じないので、シリーズ化する際の組立作業性も向上する。
【0042】
また、上記各実施形態のように、モータケースとセンサケースとの嵌合部や、モータケースとカバー部材との嵌合部が電動モータ収容部Eには設けられないようにし、さらに、センサケースやカバー部材が電動モータ収容部Eの外周には設けられないようにすることで、電動モータのサイズ変更に合わせてモータケースの径を変更する必要が生じたとしても、嵌合部、センサケース、カバー部材のそれぞれの外径や形状を変更する必要がないので、コンパクトなモータ装置のシリーズを提供できるようになる。
【0043】
また、上記本実施形態のように、特にセンサを備えるシリーズの場合は、給電線を導出するための配線経路をモータケースに設け、信号線を導出するための配線経路をセンサケースに設けることで、電動モータの種類や大きさが変化して、給電線の配線経路を変更する必要が生じたとしても、信号線の配線経路についてはその影響を回避することができる。この場合、センサケースの形状やこれに収容される内部構成部品の配置を変更しなくてもよいので、共通のセンサユニットを用いることができ、部品の共通化を図ることが可能である。
【0044】
なお、本発明に係るモータ装置のシリーズは、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、本発明に係る電動モータのシリーズは、必ずセンサユニットを備えるものであってもよい。すなわち、複数種類のモータユニットの中から選択された1つに対して、一種類のセンサユニットを組み付けて構成されるモータ装置のシリーズであってもよい。また、本発明に係るモータ装置のシリーズは、複数種類のモータユニットから一種類のモータユニットを選択するのではなく、予め決められた一種類のモータユニットに対して、センサユニットとカバー部材とのいずれかを組み付けてモータ装置を構成するモータ装置のシリーズであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 モータ装置
2 モータユニット
3 センサユニット
5 モータケース
6 ステータ
7 ロータ
17 センサ
18 センサケース
18b 凹嵌合部
20 カバー部材
20a 凹嵌合部
30 給電線
31 配線経路
40 信号線
41 配線経路
51 ケース本体部
51c 凸嵌合部
E 電動モータ収容部
図1
図2
図3
図4
図5