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特許7158854ポリマー-金属接合用のポリ(アリールエーテル)組成物ならびにポリマー-金属接合および相当する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ポリマー-金属接合用のポリ(アリールエーテル)組成物ならびにポリマー-金属接合および相当する製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221017BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20221017BHJP
   C09J 171/00 20060101ALI20221017BHJP
   C09J 181/06 20060101ALI20221017BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20221017BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B32B15/08 Q
C08G65/40
C09J171/00
C09J181/06
H01B3/30 J
H01B7/02 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017531313
(86)(22)【出願日】2015-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2015079468
(87)【国際公開番号】W WO2016092087
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/090,901
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマール
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】ハモンズ, ライアン
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】加藤 友也
【審判官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-92632(JP,A)
【文献】特開2010-123390(JP,A)
【文献】特開2000-272049(JP,A)
【文献】特開平10-202786(JP,A)
【文献】国際公開第2014/037374(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/072447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B15/08
C08G65/40
C09J171/00
C09J181/06
H01B3/30
H01B7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の表面上に配置されたポリマー組成物と、
ポリマー組成物と金属表面との間に配置され、かつポリマー組成物および金属基材の表面と接触した接着組成物と
を含むポリマー-金属接合であって、
ポリマー組成物が第1ポリ(アリールエーテルケトン)(但しPEKK樹脂を除く)を含み、
接着組成物がポリ(アリールエーテル)を含み、ポリ(アリールエーテル)が、ポリ(アリールエーテルスルホン);または第1ポリ(アリールエーテルケトン)とは異なる第2ポリ(アリールエーテルケトン)であり、
接着組成物が25重量%以下の式[-S(=O)-]のスルホン基を含
接着組成物が、ASTM D3850規格に従って熱重量分析(TGA)によって測定される、200℃以上の5%重量損失温度(Td)を有する、ポリマー-金属接合。
【請求項2】
ポリ(アリールエーテル)が、式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中、
互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは独立して、芳香族単核または多核基であり;
互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は独立して、結合、または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、nおよびmは独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
で表される式で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー-金属接合。
【請求項3】
Ar、Ar、Ar、ArおよびArが互いに等しいかもしくは異なり、以下の群の式:
(式中、各Rは独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、互いに等しいかもしくは異なる、j、kおよびlは独立して、0、1、2、3または4である)
から選択される式で表される、請求項2に記載のポリマー-金属接合。
【請求項4】
ポリ(アリールエーテル)が、式:
[式中、
互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
’は、ゼロであるか、または0~4の整数であり;
互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
の群から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー-金属接合。
【請求項5】
ポリ(アリールエーテル)が、以下の群の式:
から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー-金属接合。
【請求項6】
ポリ(アリールエーテル)が、以下の群の式:
[式中、
-互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;j’は、ゼロであるかまたは0~4の整数であり、
-Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー-金属接合。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー-金属接合を含むワイヤまたはケーブルであって、
-基材が金属コアを含み、ポリマー組成物がコアの長さの第1部分を取り囲むシースを構成し、かつ接着組成物がコアの長さの第2部分(第1部分と同じもしくはそれとは異なるもの)を取り囲み、ポリマー組成物の一部とコアとの間に配置されるか、または
-基材が金属コアを含み、ポリマー組成物がコアの長さの一部を取り囲むシースを構成し、かつ接着組成物がポリマー組成物の少なくとも一部とコアとの間に配置される
ワイヤまたはケーブル。
【請求項8】
ポリマー組成物と金属基材との間の改善された接着を提供する方法であって、前記方法が、
ポリ(アリールエーテル)を含む接着組成物を金属基材の表面上に堆積させて第1堆積物を形成する工程と;
第1ポリ(アリールエーテルケトン)(但しPEKK樹脂を除く)を含むポリマー組成物を第1堆積物上に堆積させて第2堆積物を形成する工程と
を含み、
ポリ(アリールエーテル)が、ポリ(アリールエーテルスルホン);または第1ポリ(アリールエーテルケトン)とは異なる第2ポリ(アリールエーテルケトン)であり、
接着組成物が25重量%以下の式[-S(=O)-]のスルホン基を含み、
接着組成物が、ASTM D3850規格に従って熱重量分析(TGA)によって測定される、200℃以上の5%重量損失温度(Td)を有する、方法。
【請求項9】
ポリ(アリールエーテル)が、式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中、
互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは独立して、芳香族単核または多核基であり;
互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は独立して、結合、または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;
互いに等しいかもしくは異なる、nおよびmは独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
で表される式で表される繰り返し単位を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Ar、Ar、Ar、ArおよびArが互いに等しいかもしくは異なり、以下の群の式:
(式中、各Rは独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、互いに等しいかもしくは異なる、j、kおよびlは独立して、0、1、2、3または4である)
から選択される式で表される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポリ(アリールエーテル)が、式:
[式中、
互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
’は、ゼロであるか、または0~4の整数であり;
互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
の群から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリ(アリールエーテル)が、以下の群の式:
から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリ(アリールエーテル)が、以下の群の式:
[式中、
-互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;j’は、ゼロであるかまたは0~4の整数であり、
-Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
から選択される式で表される繰り返し単位を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年12月12日出願の、米国仮特許出願第62/090,901号に対する優先権を主張するものであり、その仮特許出願は、その全体を本明細書に参照により援用される。
【0002】
本発明は、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含む接着組成物に関する。本発明はまた、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーを有するオーバーモールド組成物と、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含む接着組成物と、金属基材とを含むポリマー-金属接合に関する。
【背景技術】
【0003】
金属-ポリマー接合は、多種多様の用途設定において至る所に存在する接合部分である。例えば、配管工事では、オーバーモールドされたインサートは、異なる配管備品(例えば、パイプ)間の連結および流体流れ通路を提供することができる。別の例として、電気配線用途において、ポリマーシースが、摩耗保護、腐食保護、および誘電絶縁を、下にある導電性コアに提供するために導電性金属コアの周りに形成される。さらなる例として、携帯電子デバイス(例えば携帯電話およびタブレット)において、ポリマー材料は、金属組成物と比べて、それらの軽量および強度のために非常に望ましい。それに応じて、多くの携帯電子デバイスは、望ましいレベルの強度および柔軟性を提供しながら、重量を減らすために、内部電子部品用のポリマーハウジング(例えば、ケース)またはポリマー支持体をそれらの設計に組み入れている。したがって、金属-ポリマー接合設計を含む用途設定は、金属-ポリマー接合の強度に大きく依存する。
【発明の概要】
【0004】
第1態様では、本発明は、ポリマー-金属接合に関する。ポリマー-金属接合は、金属基材の表面上に配置されたポリマー組成物を含む。ポリマー-金属接合は、ポリマー組成物と金属基材との間に配置され、かつポリマー組成物および金属基材の表面と接触した第2接着組成物をさらに含む。ポリマー組成物は第1ポリ(アリールエーテルケトン)を含み、接着組成物はポリ(アリールエーテル)を含む。
【0005】
第2態様では、本発明は、ポリマー組成物と金属基材との間の改善された接着を提供する方法に関する。本方法は、ポリ(アリールエーテル)を含む接着組成物を金属基材の表面上に堆積させて第1堆積物を形成する工程を含む。本方法は、第1ポリ(アリールエーテルケトン)を含むポリマー組成物を第1堆積物上に堆積させて第2堆積物を形成する工程をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ポリマー-金属接合部でポリマーオーバーモールド組成物と金属基材との間の接着を著しく改善する、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含む接着組成物が本明細書に記載される。特に、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテルスルホン)(「PAES」)ポリマーまたは1つもしくは複数のポリ(アリールエーテルケトン)(「PAEK」)ポリマーを含む接着組成物は、金属基材への、PAEKポリマーをまた含む、オーバーモールド組成物の接着を著しく改善できることが意外にも発見された。明確にするために、接着組成物中のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーはPAEK1と言われ、オーバーモールド組成物中のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーはPAEK2と言われる。いくつかの実施形態では、金属基材は、金属とオーバーモールド組成物との間の追加の接着強度を提供するために前処理することができる。本明細書に記載される接着組成物は、金属基材(またはその一部)上へコーティングすることができ、オーバーモールド組成物は、当技術分野で公知の方法を用いて接着組成物上へ堆積させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリマー-金属接合は望ましくは、電気配線へ組み入れることができる。
【0007】
本明細書で興味のある接着組成物は、以下に詳細に記載されるような、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーと、任意選択的に、1つもしくは複数の添加物とを含む。特に、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーのそれぞれは、独立して、以下に詳細に記載されるような、PAESポリマーまたはPAEK1ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、接着組成物は任意選択的に、PAESポリマーおよびPAEK1ポリマーとは異なる、1つもしくは複数の添加物をさらに含むことができる。本明細書で用いるところでは、ポリ(アリールエーテル)ポリマーは、その繰り返し単位(「RPE」)の50重量パーセント(「重量%」)超が少なくとも1つのアリーレン基と、少なくとも1つのエーテル基(-O-)とを含む任意のポリマーを意味する。本明細書で興味のあるポリ(アリールエーテル)ポリマーは、少なくとも約1000g/モル、少なくとも約2000g/モル、少なくとも約3000g/モル、少なくとも約4000g/モル、少なくとも約5000g/モルまたは少なくとも約6000g/モルの重量平均分子量(「Mw」)を有する。Mwは、次の通り:
(ここで、Nは、分子量Mのポリマー分子の数である)
表すことができる。
【0008】
本明細書に記載される接着組成物は、金属基材への、PAEK2ポリマーを含む、オーバーモールド組成物の接着を著しく改善できることが意外にも分かった。特に、金属基材へのPAEK2オーバーモールド組成物の接着は、1つもしくは複数のPAESポリマー、1つもしくは複数のPAEK1ポリマーまたはそれらの組み合わせを含む接着組成物を使って著しく改善できることが分かった。いくつかの実施形態では、ポリマー-金属接合は、室温でおよび3.5インチのグリップ距離を用いてASTM D1002標準に従って測定されるように、少なくとも約700ポンド/平方インチ(「psi」)、少なくとも約800psi、少なくとも約1000psi、少なくとも約1200psi、少なくとも約1400psi、少なくとも約1600psi、または少なくとも約1800psi、または少なくとも約2000psiの破損重ね剪断応力を有することができる。いくつかの実施形態では、破損重ね剪断は、バルクオーバーモールド組成物の破砕によるものであり得る。言い換えれば、そのような実施形態では、オーバーモールド組成物間の接合は、バルクオーバーモールド組成物が破砕する間ずっと、構造的に傷つかないままであり、接合の強度がバルクオーバーモールド組成物のそれよりも大きいことを示唆する。
【0009】
本明細書に記載されるオーバーモールド組成物は、1つもしくは複数のPAEK2ポリマーと、任意選択的に、PAEK2ポリマーおよび追加のポリマーとは異なる1つもしくは複数の追加のポリマーまたは添加物とを含む。接着組成物が1つもしくは複数のPAEK1ポリマーを含むいくつかの実施形態では、1つもしくは複数のPAEK2ポリマーは、1つもしくは複数のPAEK1ポリマーとは異なる。他のそのような実施形態では、1つもしくは複数のPAEK1ポリマーの少なくとも1つと、1つもしくは複数のPAEK2ポリマーの少なくとも1つとは異なる。望ましいPAEK2ポリマーは、PAEK1ポリマーに関して以下に記載されるものである。いくつかの実施形態では、PAEK2ポリマーの1つ、いくつかまたは全ては、ポリ(エーテルエーテルケトン)(「PEEK」)ポリマーである。いくつかの実施形態では、オーバーモールド組成物は、オーバーモールド組成物の総重量に対して、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%または少なくとも約95重量%の1つもしくは複数のPAEK2ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、オーバーモールド組成物は、オーバーモールド組成物の総重量に対して、約99.99重量%の1つもしくは複数のPAEK2ポリマーを含むことができる。
【0010】
追加のポリマーは、ポリスルホン(「PSU」)ポリマー、ポリ(エーテルスルホン)(「PESU」)ポリマー、ポリ(フェニルスルホン)(「PPSU」)ポリマーまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。PSU、PESUおよびPPSUポリマーは、当技術分野で公知の方法によって合成することができる。望ましいPSUおよびPPSU組成物は、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから、それぞれ、Udel(登録商標)PSUおよびRadel(登録商標)PPSUとして商業的に入手可能である。望ましいPESU組成物は、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから、Virantage(登録商標)PESUおよびVeradel(登録商標)PESUとして入手可能である。本明細書で用いるところでは、PESUは、その繰り返し単位の少なくとも50重量%が式(I-1):
の繰り返し単位(RPSb)である任意のポリマーを意味する。
【0011】
いくつかの実施形態では、PESUの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式(I-1)の繰り返し単位(RPSb)である。いくつかの実施形態では、PESUは、式(I-1)の繰り返し単位(RPSb)から本質的になる。PESUは、当業者に公知の方法によって製造することができる。
【0012】
接着組成物のPAEK1ポリマーおよびオーバーモールド組成物のPAEK2ポリマーは、独立して、結晶性、半結晶性または非晶質であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非晶質PAEK1ポリマーを含む接着組成物は、金属基材へのオーバーモールド組成物の接着をさらに改善できることが分かった。一般に、少なくとも1つの非晶質PAEKポリマーを有するPAEK組成物(例えば接着組成物またはオーバーモールド組成物)はまた、結晶性または半結晶性ポリマーを有するPAEK組成物と比べて、基材上への組成物の溶液キャスティングまたは浸漬コーティングを容易にすることができる。
【0013】
接着組成物およびオーバーモールド組成物中の添加剤は、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、補強材、酸捕捉剤、加工助剤、核形成剤、内部潤滑剤および/もしくは外部潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、導電性添加剤(例えば、カーボンブラックおよびカーボンナノフィブリル)またはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。添加剤は、以下に詳細に考察される。
【0014】
金属基材の形態および組成は、所望の用途設定に基づいて選択することができる。例えば、金属基材は、オーバーモールド組成物から形成されるハウジングに使用されるように設計されたコネクタ(例えば、配管コネクタ;工具ハンドルコネクタ;シャフトカラーなど)であり得るが、それに限定されない。いくつかの実施形態では、金属基材は、絶縁性ハウジング(例えば、アンテナハウジング;温度プローブハウジング;または電線ハウジング)とともに使用するために設計された導電性または熱伝導性素子(例えば、電線の導電性金属コア)であり得る。いくつかの実施形態では、金属基材は、別の物品(例えば、別のコネクタまたはシャフト)へのインサートの接続を容易にするために内部表面上にスレッドを有することができる。金属基材は、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス鋼、亜鉛、ニッケル、またはそれらの任意のブレンドもしくは合金(例えば真ちゅう)を含む、またはそれらから本質的になることができる。いくつかの実施形態では、金属基材の1つもしくは複数の表面の少なくとも一部は、その表面積を増やすために前処理し、それによって、基材への接着組成物またはオーバーモールド組成物の接着をさらに助長することができる。例えば、金属基材の表面の少なくとも一部は、基材の表面への接着組成物またはオーバーモールド組成物の接着を助長するために粗くすることができる。いくつかの実施形態では、粗化は、エッチング(例えば化学エッチングもしくはレーザーエッチング)、機械研削、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、粗化表面の少なくとも一部上に堆積させることができ、オーバーモールド組成物は、堆積した接着組成物の少なくとも一部上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される接着組成物は、基材表面を粗くすることなく金属基材へのオーバーモールド組成物の接着を著しく改善する。
【0015】
本明細書で興味のある金属-ポリマー接合は、当技術分野で公知の方法によって製造することができる。一般に、金属-ポリマー接合の製造は、金属基材の少なくとも一部上への接着組成物の堆積と、接着組成物の少なくとも一部上へのオーバーモールド組成物の堆積とを含む。接着組成物およびオーバーモールド組成物はそれぞれ独立して、射出成形、ブロー成形、浸漬コーティング、共押出およびそれらの任意の組み合わせから選択される方法によって堆積させることができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、層を形成するために金属基材の表面の少なくとも一部上へ堆積させられる。そのような実施形態では、オーバーモールド組成物は、堆積した接着組成物の少なくとも一部上へ堆積させることができる。いくつかの実施形態では、接着組成物およびオーバーモールド組成物は、同時に(またはほぼ同時に)金属基材上に(例えば共押出によって)堆積させることができる。いくつかの実施形態では、オーバーモールド組成物は、金属基材の周りにハウジングを形成することができる。例えば、いくつかのそのような実施形態では、オーバーモールド組成物は、配管備品(例えばバルブ、多岐管、パイプ)、羽根車または工具ハンドルまたは電線シース(例えば、導電性金属コアを取り囲む誘電絶縁体)であり得るが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、接着組成物は、基材の少なくとも一部を覆う層として堆積させられる。そのような実施形態では、層は、平均厚さ約1μm~約1mm、約50μm~約800μm、約100μm~約800μm、約100μm~約600μm、または約150μm~約600μmを有することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリマー-金属接合は望ましくは、電線用途へ組み入れることができる。上に考察されたように、電線は一般に、保護シースによって取り囲まれた金属コアを含む。金属コアは、アルミニウム、銅、金、鉄、ニッケル、白金、銀、スチール、およびそれらのブレンドまたは合金(例えば、真ちゅうおよび青銅)を含むが、それらに限定されない任意の望ましい導電性金属組成物を含むことができる。金属コアは、固体コア(例えば、単一ストランドワイヤ)、撚りコア、または編みコアであり得る。いくつかの実施形態では、コアは、その長さまたはその一部に沿って円筒形であり得る。保護シースは一般に、コア、またはその一部を取り囲み、電気絶縁(例えば、ここで、保護シースは誘電組成を有する)、耐化学性(例えば、耐腐食性)、耐物理性(例えば、耐摩耗性)またはそれらの任意の組み合わせを、下にあるコアに提供する。本明細書に記載されるポリマー-金属接合に関して、基材が金属コアであり得るし、オーバーモールド組成物がシースであり得る。そのような実施形態では、接着組成物は、シースとコアとの間に改善された接着を提供することができる。特に、接着組成物は、それらの間の接着を改善するために金属コアとシースとの間に配置することができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、金属コアを取り囲むことができ、他の実施形態では、接着組成物は、金属コアを完全に取り囲むわけではない。いくつかの実施形態では、シースは、コアの長さまたはその一部を取り囲むことができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、シースの長さまたはその一部に沿ってコアとシースとの間に配置することができる。いくつかの実施形態では、電線は望ましくは、金属基材(例えば金属コア)上へ接着組成物およびオーバーモールド組成物(例えばシース)を共押し出しすることによって形成することができる。
【0017】
接着組成物
本明細書に記載される接着組成物は、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテル)ポリマーの1つもしくは複数は、PAESポリマーまたはPAEKポリマーである。いくつかの実施形態では、接着組成物は、着色剤(例えば、染料および/もしくは顔料)、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、補強材、酸捕捉剤、加工助剤、核形成剤、内部潤滑剤および/もしくは外部潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、導電性添加剤(例えば、カーボンブラックおよびカーボンナノフィブリル)またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない1つもしくは複数の添加剤を任意選択的に含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、接着組成物は、接着組成物組成物の総重量に対して、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%または少なくとも約95重量%のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、接着組成物の総重量に対して、少なくとも約99.99重量%のポリ(アリールエーテル)ポリマーを含むことができる。
【0019】
上に説明されたように、本明細書に記載される接着組成物は、金属基材への、PAEK2ポリマーを含む、オーバーモールド組成物の接着を著しく改善し得ることが意外にも分かった。さらに、いくつかの実施形態では、金属基材へのPAEK2オーバーモールド組成物の接着は、接着組成物の1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーが、合計で、1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーの総重量に対して、約25重量%以下の[-S(=O)-](「スルホン」)基を含む場合にさらに改善できることが分かった。いくつかのそのような実施形態では、接着組成物の1つもしくは複数のポリ(アリールエーテル)ポリマーは、合計で、約23重量%以下、約20重量%以下、または約18重量%以下のスルホン基を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、接着組成物は、望ましい加工特性を有するようにさらに選択することができる。一般に、接着組成物の堆積は、接着組成物を金属基材上へ流すことを含む。そのような実施形態では、接着組成物は、流れを助長するために加熱することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される接着組成物は、ASTM D3850標準に従って熱重量分析(「TGA」)によって測定されるように、約200℃以上、約250℃以上、または約300℃以上の5%重量損失温度(「T」)を有することができる。TGA測定は、30℃の出発温度、800℃の終了温度、10℃/分のランプ速度でおよび60mL/分の流量を用いる窒素雰囲気下で行われる。
【0021】
ポリ(アリールエーテルスルホン)
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテル)ポリマーの1つもしくは複数はPAESポリマーであり得る。本明細書で用いるところでは、PAESは、繰り返し単位の少なくとも50重量%が、少なくとも1つのアリーレン基、少なくとも1つのエーテル基(-O-)および少なくとも1つのスルホン基[-S(=O)-]を含む繰り返し単位(RPS)である任意のポリマーを意味する。本明細書で興味のあるPAESポリマー、繰り返し単位の少なくとも約60モルパーセント(「モル%」)、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%は、上に記載されたような、繰り返し単位(RPS)である。いくつかの実施形態では、PAESの繰り返し単位の約99モル%超が、上に詳述されたような、繰り返し単位(RPS)である。
【0022】
PAESポリマーのアリーレン基は、炭素原子の1つもしくは複数が、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択的に置換されている、6~36個の炭素原子を有する芳香族ラジカルであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPS)は、以下に示されるような式(A):
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O- (A)
(式中:
- 互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは独立して、芳香族単核または多核基であり;
- 互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は独立して、結合、または1つもしくは2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、nおよびmは独立して、ゼロまたは1~5の整数である)
の繰り返し単位である。
【0024】
いくつかの実施形態では、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、互いに等しいかもしくは異なり、次式:
(式中、各Rは独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、互いに等しいかもしくは異なる、j、kおよびlは独立して、0、1、2、3または4である)
からなる群から選択される式を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、Arは、縮合ベンゼン環(例えば、ナフチレン類および2,6-ナフチレン)、アントリレン類(例えば、2,6-アントリレン)およびフェナントリレン類(例えば、2,7-フェナントリレン)、ナフタセニレン類およびピレニレン類基;その少なくとも1つがヘテロ原子である、5~24個の原子を含む芳香族炭素環システム(例えば、ピリジン類、ベンズイミダゾール類、およびキノリン類)からなる群からさらに選択されてもよい。ヘテロ原子は、N、O、Si、PまたはSであり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、N、OまたはSであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、互いに等しいかもしくは異なる、式(A)のTおよびT’は、結合;-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;
-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基;n=1~6の整数の-(CH-および
-(CF-;6個以下の炭素の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPS)は、本明細書で下の式(C)~(E):
[式中、
- 互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- J’は、ゼロであるか、または0~4の整数であり;
- 互いに等しいかもしくは異なる、TおよびT’は、結合、CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;
-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
のものからなる群から選択することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、ポリフェニルスルホンを含むがそれに限定されない、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)であり得るし、一方、他の実施形態では、PAESポリマーは、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホンまたはビスフェノールAポリスルホンであり得る。本明細書で用いるところでは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、繰り返し単位の少なくとも50重量%が、少なくとも1つのエーテル基(-O-)、少なくとも1つのスルホン基[-S(=O)-]および少なくとも2つの基(G*)を含有する1つもしくは複数の式の繰り返し単位(RPSa)である任意のポリマーであって、各基(G*)が独立して、フェニレン類、ナフチレン類(例えば、2,6-ナフチレン)、アントリレン類(例えば、2,6-アントリレン)およびフェナントリレン類(例えば、2,7-フェナントリレン)、ナフタセニレン類およびピレニレン類からなる群から選択され;ここで、基(G*)のそれぞれが、少なくとも1つの単結合によって直接に、任意選択的にさらに、最大でも1つのメチレン基によって、それ自体とは異なる少なくとも1つの基(G*)に結合しているポリマーを意味する。したがって、基(G*)は、結合してビフェニレン基(例えば、p-ビフェニレン)、1,2’-ビナフチレン基、ターフェニレン基(例えば、p-ターフェニレン)およびフルオレニレン基(フルオレンに由来する二価基)を含むが、それらに限定されない基を形成することができる。いくつかの実施形態では、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%は、上に定義されたような繰り返し単位(RPSa)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPSa)は、上に定義されたような、式(A)の繰り返し単位であり得る、ただし、少なくとも1つのAr~Arは、下記からなる以下の群の式:
(式中、Rは独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、互いに等しいかもしくは異なるkおよびlは独立して、0、1、2、3または4である)
から選択される式で望ましくは表される芳香族部分である。そのような前述の実施形態では、T、T’、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、nおよびmは、上に記載された通りであり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPSa)は、下式(F)~(H):
およびそれらの混合物からなる群の式で表すことができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、PAESポリマーはポリフェニルスルホン(「PPSU」)ポリマーである得る。本明細書で用いるところでは、PPSUは、繰り返し単位の50重量%超が式(F)の繰り返し単位(RPSa)である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、PPSUの繰り返し単位の約75重量%超、約85重量%超、約95重量%超、または約99重量%超%が式(F)の繰り返し単位(RPSa)である。PPSUは、当業者に公知の方法によって製造することができる。PPSUはさらに、RADEL(登録商標)PPSUおよびDURADEX(登録商標)D-3000 PPSU(両方ともSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製)として商業的に入手可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、PAESは、ポリエーテルエーテルスルホン(「PEES」)ポリマーまたはビスフェノールAポリスルホンポリマーであり得る。本明細書で用いるところでは、PEESは、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式(I-2):
の繰り返し単位(RPSc)である任意のポリマーを意味する。
【0033】
いくつかの実施形態では、PEESの繰り返し単位(RPSc)の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式(I-2)の繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PEESは、式(I-2)の繰り返し単位(RPSc)から本質的になる。
【0034】
いくつかの実施形態では、PAESはビスフェノールA(「PSU」)ポリマーである。本明細書で用いるところでは、PSUは、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式(I-3):
の繰り返し単位(RPSd)である任意のポリマーを意味する。
【0035】
いくつかの実施形態では、PSUの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式(I-3)の繰り返し単位(RPSd)である。いくつかの実施形態では、PSUは、式(I-3)の単位(RPSd)から本質的になる。PSUは、当業者に公知の方法によって製造することができる。さらに、PSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUDEL(登録商標)PSUとして商業的に入手可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、ポリ(アリールスルホンケトン)(「PASK」)ポリマーであり得る。本明細書で用いるところでは、PASKは、上式(D)(式中、Tは-C(=O)-である)のPAESを意味し、ここで、PASKポリマーは、式(I-4):
で表される少なくとも50重量%の繰り返し単位(RPASK)を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、PASKポリマーの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式(I-4)の繰り返し単位(RPASK)である。いくつかの実施形態では、PASKポリマーは、式(I-4)の繰り返し単位(RPASK)から本質的になる。PASKポリマーは、実施例で以下に詳細に記載されるように合成することができる。ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーは特定の繰り返し単位に関して上に記載されているが、いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマーは、上に記載された1つもしくは複数の異なる繰り返し単位のコポリマーであり得る。コポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーまたは交互コポリマーであり得る。
【0038】
ポリ(アリールエーテルケトン)
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテル)ポリマーの1つもしくは複数はPAEK1ポリマーであり得る。本明細書で用いるところでは、PAEK1は、互いに等しいかもしくは異なる、ArおよびAr’が芳香族基である状態で、Ar-C(=O)-Ar’基を有する少なくとも50重量%の繰り返し単位(RPAEK)を含む、任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態ではPAEK1は、少なくとも約60重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約98重量%の繰り返し単位(RPAEK)を有する。繰り返し単位(RPAEK)は、本明細書で以下の、式(J-A)~(J-Q):
[式中:
- 互いに等しいかもしくは異なる、R’のそれぞれは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロであるか、または0~4の整数であり;
- Tは、結合、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各RおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、またはC~C18アリール基である);nが1~6の整数である-(CH-および-(CF-;6個以下の炭素原子の、線状もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される]
からなる群から選択される式で表すことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)のそれぞれのフェニレン部分は独立して、繰り返し単位においてR’とは異なる他の部分に対して1,2-、1,4-または1,3-結合を有することができる。いくつかの実施形態では、フェニレン部分は、1,3-または1,4-結合を有する。さらなる実施形態では、フェニル部分は、1,4-結合を有する。
【0040】
さらに、いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)におけるj’は、出現ごとにゼロであり得る;すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖における結合を可能にするもの以外の置換基を全く持たない。いくつかのそのような実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)は、下式(J’-A)~(J’-Q):
の群から選択される式で表すことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(RPAEK)は、次式:
からなる群から選択される式で表すことができる。
【0042】
PAEK1ポリマーは、ホモポリマー、ランダム、交互またはブロックコポリマーであってもよい。PAEK1ポリマーがコポリマーである場合、それは、(i)式(J-A)~(J-O)から選ばれる少なくとも2つの異なる式の繰り返し単位(RPAEK)、または(ii)1つもしくは複数の式(J-A)~(J-O)の繰り返し単位(RPAEK)および繰り返し単位(RPAEK)とは異なる繰り返し単位(R*PAEK)を含有してもよい。
【0043】
後で詳述されるように、PAEK1ポリマーはポリエーテルエーテルケトンポリマー(「PEEKポリマー」)であってもよい。あるいは、PAEK1ポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(「PEEK」)ポリマー、ポリエーテルケトン(「PEK」)ポリマーまたはPEEK-PEKポリマーであってもよい。本明細書で用いるところでは、用語「PEEKポリマー」は、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式J’-Aの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、PEEKポリマーの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%は、式J’-Aの繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PEEKポリマーの99.99重量%は式J’-Aの繰り返し単位である。さらに、本明細書で用いるところでは、用語「PEKKポリマー」は、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式J’-Bの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、PEKKポリマーの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式J’-Bの繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PEKKポリマーの繰り返し単位の少なくとも99.99重量%は式J’-Bの繰り返し単位である。さらに、本明細書で用いるところでは、用語「PEKポリマー」は、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式J’-Cの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味することを意図する。いくつかの実施形態では、PEKポリマーの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式J’-Cの繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PEKポリマーの繰り返し単位の少なくとも99.99量%は式J’-Cの繰り返し単位である。PAEK1ポリマーは、ポリ(アリールエーテルケトン)の製造技術分野で公知の任意の方法によって製造することができる。さらに、PEEKは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCからKETASPIRE(登録商標)ポリエーテルエーテルケトンとして商業的に入手可能である。
【0044】
いくつかの実施形態では、PAEK1ポリマーは、ポリ(イソソルビドケトン)(「PIK」)ポリマーであり得る。本明細書で用いるところでは、用語「PIKポリマー」は、繰り返し単位の少なくとも50重量%が式J’-Qの繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、PIKポリマーの繰り返し単位の少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約95重量%または少なくとも約99重量%は、式J’-Qの繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PIKポリマーの繰り返し単位の少なくとも99.99重量%は式J’-Qの繰り返し単位である。PIKポリマーは、その全体が参照により本明細書に援用される、Sriramらに付与される2014年2月11日出願の米国特許出願公開第2014/0186624号明細書に記載されているように合成することができる。
【0045】
添加剤
いくつかの実施形態では、接着組成物またはオーバーモールド組成物は、着色剤(例えば、染料および/もしくは顔料)、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、補強材、酸捕捉剤、加工助剤、核形成剤、内部潤滑剤および/もしくは外部潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、導電性添加剤(例えば、カーボンブラックおよびカーボンナノフィブリル)またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない1つもしくは複数の添加剤を任意選択的に含むことができる。
【0046】
当業者は、特定の接着組成物またはオーバーモールド組成物、意図される加工アプローチおよびポリマー-金属接合の意図される用途設定に応じて適切な補強材を選択する方法を知るであろう。例えば、補強材は、その化学的性質、その長さ、直径、ブリッジングなしの配合装置へ望ましくは供給される能力および表面処理に関連して選択することができる(例えば、補強材とポリ(アリールエーテル)との間の良好な界面接着はブレンドの強度および靱性を助長する)。
【0047】
いくつかの実施形態では、補強材は、繊維状充填材、微粒補強材またはそれらの組み合わせであり得る。本明細書で用いるところでは、繊維状補強材は、平均長さが幅および厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅および厚さを有する材料である。一般に、そのような材料は、少なくとも約5のアスペクト比を有し、ここで、アスペクト比は長さと最大の幅および厚さとの間の平均比であると定義される。いくつかの実施形態では、繊維状補強材は、少なくとも約10、少なくとも約20または少なくとも約50であるアスペクト比を有することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、補強繊維状充填材は、ガラス繊維;とりわけ黒鉛炭素繊維(いくつかの実施形態では、少なくとも約99重量%の黒鉛含有量を有する)、非晶質炭素繊維、ピッチ系炭素繊維(いくつかの実施形態では、少なくとも約99重量%の黒鉛含有量を有する)、PAN系炭素繊維などの炭素繊維;合成ポリマー繊維;アラミド繊維;アルミニウム繊維;アルミニウムシリケート繊維;そのようなアルミニウム繊維の金属の酸化物;チタン繊維;マグネシウム繊維;炭化ホウ素繊維;ロックウール繊維;スチール繊維;石綿;ウォラストナイト;炭化ケイ素繊維;ホウ素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)またはそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、補強繊維状充填材は望ましくはガラス繊維を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、補強材は、タルク、雲母、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウム、カルシウムシリケート、炭酸マグネシウム、硫化亜鉛またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない、非繊維状であり得る。
【0050】
1つもしくは複数の補強材が存在する場合、オーバーモールド組成物または接着組成物は、接着組成物の総重量に対して、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%または少なくとも約20重量%の1つもしくは複数の補強材を含むことができる。いくつかの実施形態では、接着組成物は、接着組成物の総重量に対して、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下または約30重量%以下の1つもしくは複数の補強材を含むことができる。1つもしくは複数の他の添加剤が存在する場合、接着組成物は、接着組成物の総重量に対して、約50重量%以下、約20重量%以下、約10重量%以下または約5重量%以下の1つもしくは複数の他の添加剤を含むことができる。
【0051】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0052】
以下の実施例は、ポリ(アリールエーテル)の合成およびポリ(アリールエーテル)接着組成物を使用する金属へのPAEK2オーバーモールド組成物の接着を実証する。接着を実証するために、重ね剪断試料を形成し、重ね剪断応力を、室温でおよび3.5インチのグリップ距離でのASTM D1002標準に従って測定した。重ね剪断試料は、金属基材を接着組成物、オーバーモールド組成物、または両方でコーティングすることによって形成した。金属基材は、アルミニウム6061合金またはステンレス鋼から形成され、約0.25平方インチ(「In」)の表面積のダブルバット重ね継ぎを有した。以下特に明記しない限り、基材(Tykma Technologies製の、MinilaseTM)をレーザーエッチングして約100μmの距離を平行線間に有するクロスハッチパターンンを形成した。エッチング後に、金属基材を、アセトンまたはイソプロパノール中でリンスし、約50トル~約100トルで、および約50℃または100℃で真空オーブン中で乾燥させた。
【0053】
接着組成物を含む重ね剪断試料について、基材を、20重量%の接着組成物およびN-メチルピロリドン(「NMP」)からなる溶液中で浸漬コーティングして接着層を形成した。特に、基材を約1分間溶液に浸漬し、次に、大気圧で空気下に、約50分間約150℃で、その後、約20分間約250℃で乾燥させた。乾燥後に、フィルムの厚さをノギスを用いて測定し、浸漬コーティングおよび乾燥を、約200μm~約500μmの厚さを有する接着層が形成されるまで繰り返した(所望のフィルム厚さは一般に、2または3回の繰り返し後に達成された)。
【0054】
PEEKを、射出成形を用いて金属基材上に(接着組成物を有する重ね剪断試料用のコーテッド金属基材上に、または接着組成物を持たない重ね剪断試料用の非コーテッド金属基材上に)堆積させた。特に、金属基材を、オーブン中で、その後、ホットプレート上で約190℃~約200℃の温度に予熱した。予熱した基材を次に、約199℃に加熱された射出成形金型に入れた。PEEK組成物を次に、約370℃~約380℃の温度で、金型中へ射出して重ね剪断試料を形成した。重ね剪断試料を金型から取り出し、室温まで冷却し続けた。
【0055】
実施例で使用される接着組成物を表1および表1Aに示す。表1および以下の表において、「SSP」は、組成物のソースがSolvay Specialty Polymers USA,LLPであることを示す。さらに、表1および以下の表において、「AC」は、接着組成物を意味し、「Ex」は実施例を意味し、「PSU」はポリスルホンを意味し、「PESU」はポリエーテルスルホンを意味し、「PPSU」はポリフェニルスルホンを意味し、「PIK」はポリ(イソソルビドケトン)を意味する。PIKは、その全体が参照により本明細書に援用される、Sriramらに付与される、2014年2月11日に出願された米国特許出願公開第2014/0186624号明細書の実施例1に記載されているように合成した。
【0056】
【0057】
【0058】
実施例で使用されるオーバーモールド組成物(PAEK2を含む)を表2に示す。各組成物中のガラス繊維のソースは、Ketaspire(登録商標)PEEK KT 880 GF 30組成物からであった。
【0059】
【0060】
重ね剪断試験測定の結果を、同様に破断剪断応力に関して報告し、破断破損のタイプを決定するためにさらに分析した。特に、重ね剪断試料の破損後に、試料を、破損が「接着」、「凝集」、「部分凝集」または「検体破断」であるかどうかを判定するために分析した。接着破損は、金属上の目視検出可能なポリマーの欠如およびポリマー上の、試料の破砕表面上の目視検出可能な金属の欠如で特徴付けられた。凝集破損は、金属上の目視検出可能量のポリマーまたはポリマー上の、試料の破砕表面上の目視検出可能量の金属で特徴付けられた。部分凝集破損は、凝集破損に似ているが、金属上のポリマーまたはポリマー上の金属の量の減少を示した。「検体破断」は、バルクポリマーにおける破砕で、および金属/ポリマー界面での破砕なしで特徴付けられた。
【0061】
実施例1-ポリ(エーテルスルホンケトン)の合成
攪拌機、N2注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisen(クライゼン)アダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Stark(ディーン-スターク)トラップを備えた1Lの4口反応フラスコに、339.26gのジフェニルスルホン、99.61gの4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン(0.465モル)、46.57gの乾燥炭酸ナトリウム(0.439モル)および6.426gの乾燥炭酸カリウム(0.046モル)を導入した。フラスコ内容物を真空下に排気し、次に高純度窒素(10ppm未満のOを含有する)で満たした。この操作を2回繰り返した。反応混合物を次に、一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0062】
反応混合物を160℃までゆっくり加熱した。160℃で、59.11gの4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(0.232モル)と67.43gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(0.235モル)との混合物を、30分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終わりに、反応混合物を1℃/分で310℃まで加熱した。310℃で8分後に、2.365gの4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンを、反応器上に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。2分後に、19.71gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。2分後に、別の1.182gの4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンを反応器に添加し、反応混合物を2分間温度に保った。反応器内容物を次に、反応器からステンレス鋼受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰した。ジフェニルスルホンおよび塩を混合物から、混合物アセトン/メタノール(50/50)および1~12のpHでの水で抽出した。最後の洗浄水は、6~7のpHを有した。粉末を次にそして、12時間真空下に120℃で乾燥させ、183.3gの黄色粉末を生成した。サイズ排除クロマトグラフ(「SEC」)による分析は、ポリマーがMn=26196、Mw=83073を有することを示した。示差走査熱量測定法(「DSC」)によって、ポリマーは192℃のTg(ハーフハイト)で非晶質であることが示された。
【0063】
SECを、塩化メチレンを移動相として使用して行った。ガードカラム付きの2つの、5ミクロン(「μm」)混合D SECカラム(Agilent Technologies)を分離のために使用した。254nmの紫外線検出器を、クロマトグラムを得るために用いた。1.5mL/分の流量および移動相中の0.2%重量/容積(「w/v」)溶液の20マイクロリットル(「μL」)の注入量を選択した。較正を、狭い較正標準のポリスチレン(Agilent Technologies)を使用して行った(較正曲線:1)タイプ:相対的な、狭い較正標準較正 2)フィット:3次回帰)。Empower Pro GPCソフトウェア(Waters)を用いてデータを取得し、較正し、分子量を測定した。
【0064】
実施例2-ポリ(エーテルビスフェノールAケトン)の合成
攪拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisenアダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた1Lの4口反応フラスコに、169.70gのN,N-ジメチルアセトアミド、254.5gのトルエン、111.93gのビスフェノールA(0.490モル)、84.70gの乾燥炭酸カリウム(0.613モル)を導入した。フラスコ内容物を真空下に排気し、次に高純度窒素(10ppm未満のO2を含有する)で満たした。この操作を2回繰り返した。反応混合物を次に、一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0065】
反応混合物を130℃までゆっくり加熱した。共沸混合物トルエン/水を集め、水を分離した。反応混合物を、共沸混合物によって水を除去しながら130℃で4時間保持した。130℃で、169.70gのN,N-ジメチルアセトアミド中の107.63gの4,4’-ジフルオロジベンゾフェノン(0.493モル)の溶液を、30分にわたって添加漏斗によって反応混合物に添加した。添加の終わりに、反応混合物を165℃に加熱した。165℃で40分後に、4.279gの4,4’-ジフルオロジベンゾフェノンを、反応器上に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。15分後に、20.78gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の3.2095の4,4’-ジフルオロジベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物を30分間温度に保った。反応器内容物を次に、2.0Lのメタノール中で凝固させた。固形物を濾過し、混合物アセトン/メタノール(50/50)で、次に1~12のpHでの水で洗浄した。最後の洗浄水は、6~7のpHを有した。粉末を次に12時間真空下に120℃で乾燥させ、171.3gの白色粉末を生成した。SECによる分析は、ポリマーがMn=34046、Mw=123149を有することを示した。DSCによって、ポリマーは、157℃のTg(ハーフハイト)で非晶質であることが示された。
【0066】
実施例3-スルホン酸化PEEKの合成
本実施例は、スルホン酸化PEEKについてH型およびNa型の合成を実証する。
【0067】
スルホン酸化PEEKのH型の合成を実証するために、攪拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisenアダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた3Lの4口反応フラスコに、2.0Lの濃H2SO4(96%)および60.00gのKT820FP粉末(Solvay Specialty Polymers USA,LLCから商業的に入手可能な)を導入した。添加の終わりに、反応混合物をかき混ぜ下におよび窒素雰囲気下で50℃に加熱した。混合物を50℃で5時間保持し、次に4L脱塩水中で高剪断下に(Waringブレンダー)凝固させた。固形物を濾過し、pHが4よりも高くなるまで水およびメタノールで洗浄した。固形物を次に、12時間真空下に70℃で乾燥させ、153.7gのソフトな吸湿性の暗色固形物を生成した。FTIRによる分析は、参照により本明細書に援用される、Xigaoら、Brit.Polymer Journal,1985,V17,P4-10に記載されているような、スルホン酸化PEEKと同一であることを示した。合成コポリマーは、次式:
(式中、nおよびmは、相当する繰り返し単位のモル分率である)
で表された。
【0068】
スルホン酸化PEEKのNa型の合成を実証するために、上に記載された、スルホン酸化PEEKのH型の試料(62.1g)を、6.09gの塩化ナトリウムを含有する2Lの脱塩水でスラリーにした。スラリーを2時間混合するに任せた。固形物を次に濾過し、追加の脱塩(「DM」)水で(4回)洗浄した。固形物を次に、12時間真空下に70℃で乾燥させ、59.0gのソフトな吸湿性の暗色固形物を生成した。DSCによって、ポリマーは、187℃のTg(ハーフハイト)で非晶質であることが示された。硫黄についての元素分析は、ポリマーが59%スルホン酸化されていることを示した。合成コポリマーは、次式:
(式中、nおよびmは、相当する繰り返し単位のモル分率である)
で表された。
【0069】
実施例4-アルミニウムへのオーバーモールド組成物の接着
本実施例は、ポリ(アリールエーテル)接着組成物を使用するアルミニウム6061基材へのPAEK2オーバーモールド組成物の接着を実証する。
【0070】
接着を実証するために、7試料セットを形成した。特に、各試料セットは、上に記載されたような5(試料セット1~4、7および8)または6(試料セット5および6)反復重ね剪断試料のセットを含み、アルミニウム6061基材を使って形成された。レーザーエッチング後に、基材をアセトン中でリンスし、50℃で真空オーブン中で乾燥させた。各重ね剪断試料について、オーバーモールド組成物はP0であった。試料セット1は、接着組成物なしで形成した。試料セット2~8については、接着組成物は、それぞれ、AC1~7であった。
【0071】
形成後に、各試料セットにおける重ね剪断試料の重ね剪断応力を、上に記載されたように測定した。試料セットパラメータおよび重ね剪断応力測定の結果を下の表2に示す。表2において、「Td 5%損失」は、相当する接着組成物が、ASTM D3850標準に従って熱重量分析(「TGA」)によって測定されるようにその重量の5%を失う平均温度を意味する。TGAは、10℃/分で窒素(60mL/分)下に30℃から800℃までTA Instruments TGA Q500で行った。さらに、表3にリストアップされる重ね剪断応力値は、相当する試料セットにおける重ね剪断試料の数にわたって平均されている。
【0072】
【0073】
表3について言及すると、結果は、試験された重ね剪断試料について、非晶質ポリ(アリールエーテルケトン)およびポリ(アリールエーテルスルホン)を含む接着組成物が、アルミニウムへのPAEK2オーバーモールド組成物の接着を著しく改善することを実証する。特に、結果は、ポリ(アリールエーテル)接着組成物が約25重量%よりも下のSO含有量を有する場合に、そしてポリ(アリールエーテル)接着組成物が、5%重量損失でのTdに関して、約200℃まで熱的に安定である場合に、アルミニウムへのPAEK2オーバーモールド組成物接着が著しく改善されることを実証する。例えば、試料セット3~7は、セットにおける重ね剪断試料の5つのうち4つについて検体破断をもたらし、一方、試料セット2(25超の%SO)および試料セット8(100未満のTd 5%損失)の重ね剪断試料は全て、それぞれ、凝集破損および接着破損をもたらした。同様に、試料セット3~7の重ね剪断試料はまた、試料セット1および8の試料と比べて、より大きい破損重ね剪断応力を有した。試料セット8について、接着組成物は、タイ層の調製のための浸漬コーティングプロセスの乾燥工程中(250℃以下>>Td5%)に分解したのではないかと推測される。
【0074】
実施例5-ステンレス鋼へのオーバーモールド組成物の接着
本実施例は、ポリ(アリールエーテル)接着組成物を使用する316ステンレス鋼基材へのPAEK2オーバーモールド組成物の接着を実証する。
【0075】
接着を実証するために、追加の14試料セット(試料セット9~22)を、上に記載されたように製造した。特に、各試料セットは、上に記載されたような2(試料セット11)、3(試料セット9、14および17)、4(試料セット10、12、13、15、16、18および19)または5(試料セット20~22)反復重ね剪断試料のセットを含み、ステンレス鋼基材を使って形成された。試料セット11は、下の表4に実証されるように、金属基材へのオーバーモールド組成物の不十分な接着のためにたった2つの反復重ね剪断試料を含んだ。試料セット11~17のステンレス鋼基材は、レーザーエッチングされなかった。試料セット9、10および12~22については、エッチング後に、金属基材をイソプロパノール中でリンスし、約100℃で真空オーブン中で乾燥させた。試料セットのパラメータを表4に示す。
【0076】
【0077】
重ね剪断測定の結果を下の表5に示す。
【0078】
【0079】
試料セット9~11の重ね剪断応力測定結果の比較は、レーザーエッチングされた(例えばテクスチャ加工された)ステンレス鋼基材を有する重ね剪断試料が金属基材への改善されたオーバーモールド組成物接着を有したことを実証する。特に、試料セット11からの重ね剪断試料は、いかなる測定可能な応力下でも金属基材に接着できず、一方、試料セット9および10からの重ね剪断試料は、それぞれ、約73.9psiおよび約198psiの破断重ね剪断応力を示した。しかし、試料セット9の重ね剪断試料と、試料セット1のものとの比較は、PAEK2オーバーモールド組成物が覆いのないステンレス鋼と比べて覆いのないアルミニウムへの改善された接着を有したことを示唆する。
【0080】
試料セット11~17の重ね剪断応力測定値の比較は、接着組成物を有する重ね剪断試料が比較的高いレベルの接着を有したことを実証する。特に、試料セット11の重ね剪断試料(接着組成物なし)は、金属基材へのオーバーモールド組成物の不十分な接着のために、測定可能な破断重ね剪断応力を持たなかった。他方で、試料セット12~17の重ね剪断試料は、約56.5psi~約464psiの破断重ね剪断応力を有した。試料セット12の重ね剪断試料は最低の破断重ね剪断応力を有したが、応力下での破損は検体破断であり、P1と金属基材との間の接着接合の前にP1が破損したことを示唆したことが注目される。
【0081】
試料セット10と試料セット18~22との比較は、試験された重ね剪断試料について、ポリスルホン接着組成物が、広範囲のSO濃度にわたって金属へのPAEK/PAESブレンドの接着を著しく改善できることを実証した。特に、試料セット10の重ね剪断応力と試料セット18~22のものとの比較は、5.7%~11.7%の範囲の接着組成物SO濃度の範囲にわたって、重ね剪断試料がPAEK2オーバーモールド組成物と金属との間の著しく改善された接着を有したことを実証する。
【0082】
上の実施形態は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。追加の実施形態は、本発明のコンセプト内である。さらに、本発明は特定の実施形態に関連して記載されてきたが、当業者は、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、変更が形式上および詳細に行われ得ることを認めるであろう。上記の公文書の参照によるいかなる援用も、本明細書での明確な開示に反する主題は全く援用されないように制限される。
【0083】
実施例6-アルミニウムへのオーバーモールド組成物のさらなる接着
本実施例は、ポリ(アリールエーテル)接着組成物を使用するアルミニウム6061基材への追加のPAEK2オーバーモールド組成物の接着を実証する。
【0084】
実施例に使用されるオーバーモールド組成物(PAEK2を含む)を表6に示す。各組成物中のガラス繊維のソースは、Ketaspire(登録商標)PEEK KT 880 GF 30組成物からであった。Victrex(登録商標)HTTM G22は、Victrex PLC,Thornton Cleveleys,United Kingdomから入手した。
【0085】
【0086】
接着を実証するために、3つの試料セットを形成した。特に、各試料セットは、上に記載されたような2(試料セット1A)または3(試料セット2A)および4(試料セット3A)反復重ね剪断試料のセットを含み、アルミニウム6061基材を使って形成された。レーザーエッチング後に、基材をアセトン中でリンスし、50℃で真空オーブン中で乾燥させた。各重ね剪断試料について、オーバーモールド組成物はP6であった。PAEK2組成物を次に、約400℃~約410℃の範囲の温度で、金型中へ射出して重ね剪断試料を形成した。重ね剪断試料を金型から取り出し、室温まで放冷した。試料セット1Aは、接着組成物なしで形成した。試料セット2Aおよび3Aについては、接着組成物は、それぞれ、AC2およびAC5であった。
【0087】
形成後に、各試料セットにおける重ね剪断試料の重ね剪断応力を、上に記載されたように測定した。試料セットパラメータおよび重ね剪断応力測定の結果を下の表7に示す。さらに、表7にリストアップされる重ね剪断応力値は、相当する試料セットにおける重ね剪断試料の数にわたって平均されている。
【0088】
【0089】
表7について言及すると、結果は、試験された重ね剪断試料について、非晶質ポリ(アリールエーテルケトン)およびポリ(アリールエーテルスルホン)を含む接着組成物が、アルミニウムへのPAEK2オーバーモールド組成物の接着を著しく改善することを実証する。
【0090】
実施例7:PEEK-PEDEK 70/30の製造
攪拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisenアダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、129.80gのジフェニルスルホン、18.942gのヒドロキノン、13.686gの4,4’ビフェノールおよび54.368gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコ内容物を真空下に排気し、次に高純度窒素(10ppm未満のOを含有する)で満たした。反応混合物を次に、一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0091】
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃で、26.876gのNaCOと0.1524gのKCOとの混合物を、30分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終わりに、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で10分後に、6.415gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、反応器上に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に、0.418gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の2.138gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0092】
反応器内容物を次に、反応器からSS受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰した。ジフェニルスルホンおよび塩を混合物から、アセトンおよび1~12のpHでの水で抽出した。粉末を次に反応器から取り出し、12時間真空下に120℃で乾燥させ、炭化タングステンダイ0.5×3.175mmを用いて400℃の温度および1000s-1の剪断速度で測定される194Pa-s(0.19kNs/m)の溶融粘度の、73gの白色粉末を生成した。
【0093】
最終粉末を次に、引き続いて500μm、250および125μmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰し、次に106μmスクリーンを通して篩分けした。
【0094】
実施例8:PEEK-PEDEK 75/25の製造
攪拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisenアダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、128.21gのジフェニルスルホン、20.295gのヒドロキノン、11.405gの4,4’ビフェノールおよび54.368gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコ内容物を真空下に排気し、次に高純度窒素(10ppm未満のOを含有する)で満たした。反応混合物を次に、一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0095】
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃で、26.876gのNaCOと0.169gのKCOとの混合物を、30分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終わりに、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で10分後に、6.415gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、反応器上に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に、0.418gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の2.138gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0096】
反応器内容物を次に、反応器からSS受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰した。ジフェニルスルホンおよび塩を混合物から、アセトンおよび1~12のpHでの水で抽出した。粉末を次に反応器から取り出し、12時間真空下に120℃で乾燥させ、炭化タングステンダイ0.5×3.175mmを用いて400℃の温度および1000s-1の剪断速度で測定される150Pa-s(0.15kNs/m)の溶融粘度の74gの白色粉末を生成した。
【0097】
最終粉末を次に、引き続いて500μm、250および125μmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰し、次に106μmスクリーンを通して篩分けした。
【0098】
実施例9:PEEK-PEDEK 80/20の製造
攪拌機、N注入管、反応媒体中に突っ込んでいる熱電対付きのClaisenアダプター、ならびに凝縮器およびドライアイストラップ付きのDean-Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、129.83gのジフェニルスルホン、22.196gのヒドロキノン、9.355gの4,4’ビフェノールおよび55.305gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコ内容物を真空下に排気し、次に高純度窒素(10ppm未満のOを含有する)で満たした。反応混合物を次に、一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0099】
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃で、26.625gのNaCOと0.694gのKCOとの混合物を、30分にわたって粉末ディスペンサーによって反応混合物に添加した。添加の終わりに、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で4分後に、6.577gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、反応器上に窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後に、1.285gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の2.192gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0100】
反応器内容物を次に、反応器からSS受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰した。ジフェニルスルホンおよび塩を混合物から、アセトンおよび1~12のpHでの水で抽出した。粉末を次に反応器から取り出し、12時間真空下に120℃で乾燥させ、炭化タングステンダイ0.5×3.175mmを用いて400℃の温度および1000s-1の剪断速度で測定される203Pa-s(0.20kNs/m)の溶融粘度の72gの白色粉末を生成した。
【0101】
最終粉末を次に、引き続いて500μm、250および125μmスクリーンを通してアトリッションミルですり潰し、次に106μmスクリーンを通して篩分けした。
【0102】
実施例10-90度剥離試験によって評価される接着性
アルミニウム1100、ステンレス鋼304、および銅110は、shim stock(シムストック)0.005インチ厚さにおいて入手した。各金属を、試験検体を調製する前に、イソプロパノールおよびアセトンできれいにして残留油、グリース、および他の表面汚染物質を除去した。各金属タイプを、平滑な金属試料として評価し、追加の試料群を、アルミニウム表面を陽極酸化することによって調製した。
【0103】
陽極酸化用のアルミニウムは、ASTM D3933に記載される類似の手順に従った。アルミニウムシムの表面を、220グリットSiCパッドでの処理前に粗化し、メタノールでリンスした。5分10%水酸化ナトリウム溶液浸漬、引き続く40℃脱イオン水中での5分浸漬、および脱イオン水リンスを用いて試料を処理した。次に、10%リン酸溶液を、9分間2ボルト/分ランプから7ボルトまで印加電圧で使用した。40℃脱イオン水中での浸漬洗浄および脱イオン水リンスがリン酸処理に続いた。10%リン酸処理を繰り返したが、20分間3ボルト/分で15ボルトまでであった。40℃脱イオン水中での5分浸漬洗浄および脱イオン水リンスを、リン酸処理後に再び行った。アルミニウム試料を30分間75℃で乾燥させ、72時間以内に使用した。
【0104】
PEEK(AC12)を、粉体塗装によってアルミニウムおよびステンレス鋼シムに塗布した。PEEK-PEDEK(AC13-15)およびPEKK(AC11)を、少なくとも98%粒子が106μmスクリーンを通過する状態での微細粉末を使用して粉体塗装によって陽極酸化されたアルミニウム、アルミニウム、およびステンレス鋼シムに塗布した。コーティングを、静電粉体コーターを用いて塗布して40ミクロン平均厚さのコーティングを塗布した。コーティングを次に、非晶質ポリマーについてはそのガラス転移温度よりも高い温度で、半結晶性ポリマーについてはその溶融温度よりも高い温度で熱処理にかけた。この評価では、400℃の温度1時間を粉体塗装した試料について利用した。
【0105】
PPSU(AC3)、PSU(AC9)、ポリ(エーテルビスフェノールAケトン)(AC5)、およびPEEK-PEDEK(AC13~15)の選り抜きの試料を、ドローダウン技術によって金属シムに塗布した。NMP中の20%溶液を、PPSU、PSU、およびポリ(エーテルビスフェノールAケトン)をコーティングするために使用した。トリフルオロ酢酸/ジクロロメタンの40/60混合物中の10%溶液を、PEEK-PEDEKおよびPEKKについて使用した。
【0106】
陽極酸化されたアルミニウム上でのPPSU(AC3)およびPSU(AC9)についてのコーティング条件は、10分間120℃での金属基材の予熱から始まった。コーティングを50ミクロンローラーバーで塗布し、30分間120℃で乾燥させ、その後一晩真空下に120℃で乾燥させた。
【0107】
アルミニウムおよびステンレス鋼上でのPPSU(AC3)、PSU(AC9)、およびポリ(エーテルビスフェノールAケトン)(AC5)についてのコーティング条件は、120℃10分予熱を用いる類似の手順に従い、50分間150℃での熱処理およびマッフル炉中で20分間250℃での追加の熱処理に従った。
【0108】
PEEK-PEDEK(AC13~15)およびPEKK(AC11)についてのコーティング条件は、予熱シムなしで銅上に塗布し、50分間100℃で乾燥させ、マッフル炉中で20分間250℃にさらした。
【0109】
試料をPEEK(KT-880 GF30,Solvay SSP)でオーバーモールドした。各オーバーモールドした試料は、おおよそ2×3×0.125インチであった。Mini-jector射出成形機をオーバーモールディングに用いた。本方法についての条件は、393℃ 前部および後部、399℃ ノズル、171℃ 金型の温度プロフィール、530psi圧力、2秒射出時間、および20秒サイクル時間を含んだ。
【0110】
各試料上の金属シムのエッジを取り除いてInstron試験架上にテスト構成を収容した。この組立は、1.5インチ幅の試料を生成する。からデータを集めるための2.5インチ長さを残して、最初の0.5インチの試料長さを、引張枠にしっかりつかむために犠牲にした。試験検体は、金属シムの引張方向から90度にあり、毎分2インチの歪み速度で試験した。最初のおよび最後の0.2~0.3インチのデータ試験データは、データ解析に含めなかった。残りの2インチの剥離長さを用いて平均負荷を測定して接着強度を定量化した。結果を以下に報告する。
【0111】
表8は、陽極酸化されたアルミニウム上のPEEK-PEDEK、PEKK、PPSU、およびPSUを使用する接着タイ層の使用が、剥離強度の増加によって実証される、接着を改善することを実証する。表9、10、および11は、それぞれ、アルミニウム、ステンレス鋼、および銅上での改善された接着を同様に示す。表9は、アルミニウム上の有効な接着タイ層としてのPEEK、PEEK-PEDEK、PEKK、PPSU、PSU、およびポリ(エーテルビスフェノールAケトン)を示す。表10は、ステンレス鋼上の有効な接着タイ層としてのPEEK、PEEK-PEDEK、およびPEKKを示す。表11は、銅上の有効な接着タイ層としてのPEEK-PEDEKおよびPEKKを示す。
【0112】
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【0115】