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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】熱処理におけるCr-Al合金の使用
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/18 20060101AFI20221017BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20221017BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20221017BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20221017BHJP
【FI】
C03B35/18
C22C38/00 302Z
D03D1/00 Z
D03D15/513
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017542295
(86)(22)【出願日】2015-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2015075056
(87)【国際公開番号】W WO2016066727
(87)【国際公開日】2016-05-06
【審査請求日】2018-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】1419244.7
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517153815
【氏名又は名称】キングス メタル ファイバー テクノロジーズ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KING’S METAL FIBER TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 195, Dongbei St., Fengyuan Dist., Taichung City 420, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】517153859
【氏名又は名称】ヘアバウト,グイド レネ ジュリエット ラファエル
【氏名又は名称原語表記】HEIRBAUT, Guido Rene Juliette Raphael
【住所又は居所原語表記】Podere Casale, Franzione Stribugliano, 58031 Arcidosso, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】ヘアバウト,グイド レネ ジュリエット ラファエル
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】三崎 仁
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/117048(WO,A1)
【文献】特開平11-79766(JP,A)
【文献】特開昭59-13639(JP,A)
【文献】特開2008-195562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B23/00-35/26, C03B40/00-40/04, C04B35/00-35/26, C22C38/00-38/60, D03D1/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料の対象物の熱処理に適したシステムを操作するための方法であって、
前記第1材料の対象物は板ガラスであり、
前記方法は、繰り返される温度サイクルに関する前記システムの一部の内部の温度変化の使用を含み、
各温度サイクルは、第2材料で作られたカバーにより前記システムの内部の1つ以上の部品を覆った状態で、少なくとも1日間の継続期間にわたる700℃より高い温度と、その後の400℃よりも低い温度への低下とを含み、
前記第2材料は、前記繰り返される温度サイクルにおいて、前記カバーの交換なしで(a)その強度が維持される、(b)脆くならないように選択されるCr-Al合金材料であり、
前記第2材料は、熱処理される際に、前記第1材料の対象物を支持する複数の支持要素のカバーとして少なくとも使われ、
前記Cr-Al合金材料は、15重量%より大きいCr含有量と、70重量%のFeの最小含有量と、2重量%のAlの最小含有量とを有し、
前記支持要素は回転要素である方法。
【請求項2】
前記Cr-Al合金材料は、20重量%が最小で21重量%が最大のCr含有量と、5重量%のAlの最小含有量と、6重量%のAlの最大含有量とを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度サイクルは、前記温度サイクルが750℃を含むこと、700℃よりも高い温度が5間の継続期間にわたって適用されること、及び/又は前記温度サイクルが100℃以下の温への低下を含むことのうち、1つ以上により特徴付けられる請求項1~2のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
記温度サイクルは、最適化ファクターに基づいて決められる請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記最適化ファクターは、材料の利用可能性、熱処理された対象物の需要、利用可能な人員および勤務時間から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カバーは、前記第2材料の繊維だけで作られた布で作られる請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
両用窓の製造に用いられる請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記カバーは、支持要素が接触する際に第1材料の対象物をダメージから保護するのに使われる請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記温度サイクルは、前記システムのアクティブ制御を使用して前記システムを操作することにより引き起こされ請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記第2材料は、使用されるバーナー又はヒーターに近接する複数の支持要素のカバーとして少なくとも使われる請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理システムにおける選択された材料の使用、当該材料の様々な形態、関連システム、当該材料を決める方法、及び熱処理システムを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理システムの内部における当該システムの基底要素は、高温状態にさらされるため頻繁に交換する必要があり及び/又は何からの保護カバーを少なくとも必要とすることが知られている。
様々な材料が当該保護カバーに用いられる。
しかしまだ基底要素及び/又は前記保護カバーの交換をとても頻繁にする必要があり、生産ラインにおけるコスト及び/又は操業停止の非効率性が引き起こされる。
さらに、様々な既知の材料は十分に効率的ではないため、人はできるだけそのような大きな温度変化(温度サイクルのような)を避ける傾向があり、このことは全体の(エネルギー消費)システムの非効率的な使用を導く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的
適切に選択された材料区分、及び当該カバーと関連システムを作るための前記材料の有用な形状を提供すること、さらに適切な材料を明確にして選択するために要求される必要な分析技術を提供することにより上記の問題を軽減することが本発明の目的である。加えて、選択された材料の効率性は、さらに当該熱処理システムを操作する他の方法をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の概要
本発明の第1側面において、熱処理に適しているシステムの内部の1つ以上の部品のためのCr-Al合金材料のカバーの使用が提供される。このことにより、本発明は、対象物の熱処理における、全体又はその一部がCr-Al合金で作られたカバーの使用を提供し、それによって、システムの前記1つ以上の部品は、前記カバーにより部分的に又は全体的に覆われる。
その一実施形態において、カバーは、その材料の繊維で作られた(編まれた、編み上げの、織物の、又はフェルトの)布で作られる。特定の実施形態では、カバーは、その材料の繊維だけで作られた布で作られる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によって、ここに記載されたCr-Al合金は、それらの優れた耐熱性ため、対象物の熱処理を含む方法を用いるのに特に有用であることがわかった。特に、ここに記載したようなCr-Al合金は、(a)少なくとも1日間、好ましくは5日間、さらに好ましくは10日間の継続期間にわたり、700℃好ましくは750℃より高い温度において耐熱性であり(その強度、特に引張強度、が維持される及び/又は低下しない)、(b)400℃より低い温度への(1回以上の)温度低下の後、その物理的特性が維持される(脆くならない)。
【0006】
その一実施形態では、ガラス処理、特に車両用窓の製造、におけるシステムの部品をカバーするための材料の使用が提示される、ここで、前記材料は、熱処理されたとき、例えば材料シートなどの対象物を支持する1つ以上の支持要素、任意的には回転支持要素、のカバーとして使われ、及び/又は前記材料は、熱処理の間に材料シートが要求される形状となるようにするのに使われる成型要素のカバーとして使われる。
【0007】
本発明は、さらに、Cr-Al合金とニッケルクロム合金などの材料が、システムの要素の腐食損傷を回避しながら前もって決められた温度サイクル(すなわち大きな温度低下を伴う)の適用を伴う熱処理のためのシステムの操作方法を可能にすることを提供する。従って、本発明は、第1材料の対象物の熱処理に適しているシステムを操作する方法を提供し、この方法は、温度サイクルに関して前記システムの一部の内部における温度変化の適用を含み、このサイクルは、第2材料で作られたカバーでシステム内部の1つ以上の部品をカバーしながら、少なくとも1日間の継続期間にわたる700℃より高い温度と、400℃より低い1回以上の温度低下とを含むことを特徴とし、それによって、第2材料は、当該温度サイクルにおいても(a)耐熱性であり(その強度が維持される)、(b)その物理的特性が維持される(脆くならない)ように選択される。実際の特定の実施形態では、材料は想定される温度サイクルのために具体的に選択される。特定の実施形態において、本発明は第1材料の対象物の熱処理に適したシステムを操作するための方法を提供し、この方法は、温度サイクルに関して前記システムの一部の内部の温度変化の適用を含み、このサイクルが、ニッケルクロム合金又はCr-Al合金である第2材料で作られたカバーでシステム内部の1つ以上の部品を覆った状態で、少なくとも1日間の継続時間において700℃よりも高い温度と、1回以上の400℃より低い温度減少を含むことを特徴とする。実際には、当該合金は(a)耐熱性であり(その強度を維持される)、(b)当該温度サイクルにおいてその物理的特性が維持される(脆くならない)ように見つけられる。ここで想定される方法において、前記第2材料は、熱処理されるときに前記第1材料の対象物を支持する1つ以上の要素のためのカバーとして少なくとも使われる。
【0008】
本発明の一実施形態において、本発明の対象である第2材料は、繊維として利用可能なものがさらに選択され、そして、より詳細には、このカバーは、材料繊維で作られた(編まれた、編み上げの、織物の、又はフェルトの)布であり、支持要素又は成型要素に接触するとき第1材料の対象物を(粒子による)ダメージから保護する。
【0009】
本発明の第2側面において、材料シートの熱処理に適したシステムが提供され、このシステムは、第1材料の対象物、例えばシートなど、を支持することに適している複数の部品又は(回転)要素を備える、ここで、1つ以上(又は、700℃、好ましくは750℃、より高い温度にさらされるシステムの部品の実質的にすべてでさえも)は、本発明の第1側面に記載した(上記した第2材料としても言及している)材料により覆われる。より詳細には、前記カバーが提供された要素は、回転要素である。さらなる実施形態では、前記システムの1つ以上の成型要素が前記材料により覆われる。
【0010】
本発明の第3側面において、本発明の第1側面において記載した材料の繊維で作られ、上記の使用に適している布が提供される。
本発明の第4側面において、本発明の上述の側面において記載した布で作られ、熱処理システムの支持要素を覆うのに適したカバーが提供される。
本発明の第5側面において、本発明の上述の側面において記載した布で作られ、要素、より詳細には材料シートなどの対象物を成型するために使われる要素、を覆うのに適したカバーが提供される。
【0011】
本発明の第6側面において、対象物の熱処理のためのシステムの内部の1つ以上の部品のために適している材料を決定するための(コンピューター実施)方法が提供され、この方法は、温度サイクルに関して前記1つ以上の部品の温度変化を監視するステップと、前記1つ以上の部品のために、当該温度サイクルにおいて耐熱性であり(その強度が維持される)、(b)その物理的特性が維持される(脆くならない)材料で作られたカバーを選択するステップとを備える。特定の実施形態では、前記温度サイクルは、少なくとも1日間、好ましくは5日間、より好ましくは10日間の継続期間にわたる700℃より高い、好ましくは750℃よりも高い温度を含み、任意的に、(1回以上の)400℃より低い温度低下が先行する又は後に続き;好ましい実施形態では、選択される材料は、本発明の上記の側面に記載したような材料である。
【0012】
本発明の第7側面において、熱処理に適したシステムを操作するための方法が提供され、この方法は、システム内部の1つ以上の部品をニッケルクロム合金又はCr-Al合金で作られたカバーで覆った状態で、少なくとも1日間、好ましくは5日間、さらに好ましくは10日間の継続期間にわたる700℃、好ましくは750℃より高い温度と、400℃より低い(1回以上の)温度低下とを含む温度サイクルに関して前記システムの一部の内部の温度変化の使用を備え、ここで、前記材料は、熱処理される際に第2(ガラス)材料シートを支持する1つ以上の回転要素のためのカバーとして少なくとも使われる。特定の実施形態では、前記材料はCr-Al合金材料である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明は、熱処理のためのシステムにおける選択された材料の使用と、当該材料の様々な形態と、関連したシステムと、当該材料を決定し選択するための方法とに関し、ここで想定されるこの方法は、対象物の熱処理のためのシステムの内部の熱力学の理解と、それらの熱特性などのそれらの様々な側面を認識し、また適切な製品を作るためにどのようにして材料を提供することができるかを認識して材料を選択することを必要とする。好ましくは、(半)自動化方法が、(選択プロセスの一部として)当該熱力学を決定するために使用される、及び/又は、交換を決めるために、(半)自動化方法が材料が提供されている当該システムのフォローアップに使用される。
【0014】
本発明は、熱処理のためのシステムに関し、より詳細には、当該システムの1つ以上の基底要素が高温条件にさらされるシステムに関し、本発明は、適切に選択された材料区分、当該カバーを作るために前記材料の有用な形状、及び関連システムを提供することにより、これらの要素の頻繁な交換、及び/又はこれらの要素のために使われる保護カバーの交換の必要性を減らすことを目的とする。本発明は、さらにこれらのシステムにおける使用のための適切な材料を決定し及び選択し、これらのシステムにおいて使用されている材料をフォローアップするために必要とされる必要な分析技術を提供することを目的とする。
【0015】
高温に耐性を示す材料の能力それ自体からは熱サイクル、すなわち温度の大きな変化、に耐性を示すその能力は予測されないことが一般的に知られている。ここに記載した材料について、それらが熱サイクルも操作できることが意外にも見つけられた。より詳細には、熱サイクルを操作するそれらの能力は、高温を操作する能力の少し低い類似の合金材料より実質的に優れているという発見は注目すべきである。
【0016】
本発明は、熱処理の状況、より詳細には熱サイクルを伴う熱処理、において使われる要素を覆うための適切なカバーの提供のために適切なCr-Al合金又はニッケルクロム(Ni-Cr)合金材料を同定することに関する。
本発明は、熱処理におけるCr-Al合金材料の特定の使用をさらに提供し、より詳細には、ここに記載したような温度の大きな減少が間に割り込んだ複数の高温を伴う熱処理システムを提供する。
ここでの使用において想定される材料とカバーについて、少なくとも2ヶ月、最大3~4ヶ月の寿命を達成することができることは注目すべきである。
【0017】
より詳細には、想定される材料は、15w%(重量パーセント)以上のCr含有量を有し、熱処理に適し使われるシステムの内部の1つ以上の部品のカバーとして適している。合金は、2つ以上の元素からなる混合物又は金属固溶体である。より詳細には、ここで使用されている用語“Cr-Al合金”は、成分としてAlとCrを含む合金をいう。同様に、ここで使われている用語“ニッケルクロム合金”は、成分としてNiとCrを含む合金をいう。
【0018】
好ましい実施形態では、Cr-Al合金材料は、15重量%より大きいCr含有量と、70重量%のFeの最小含有量と、2重量%のAlの最小含有量とを有する。
より好ましい実施形態では、Cr-Al合金材料は、最小20重量%で最大21重量%のCr含有量と、5重量%のAlの最小含有量と6重量%のAlの最大含有量を有する。
【0019】
本発明は、熱処理システム、より詳細にはここに記載したような温度の大きな減少が間に割り込んだ複数の高温を伴う熱処理システム、の操作におけるニッケルクロム合金材料の特定の使用をさらに提供する。特定の温度サイクルにおいてそれらの(a)耐熱性である(その強度が維持される)能力と(b)それらの物理的特性が維持される(脆くならない)能力に基づいてニッケルクロム合金を選択することができる。
【0020】
好ましい実施形態において、想定されるNi-Cr合金は、少なくとも19w%Crと、少なくとも45w%鉄(Fe)、より好ましくは少なくとも47w%Fe、最も好ましくは少なくとも50w%Feとを含む。好ましくは、Ni、Cr及びFeの合計は、Ni-Cr合金の少なくとも95w%を形成する。
好ましい実施形態において、Ni-Cr合金は、少なくとも10w%Ni、好ましくは少なくとも12w%Niを含む。Ni-Cr合金は、22w%Niより多く含まないこと及び最高で26w%Crまでであることがさらに好ましい。
任意的に、ここで想定される合金は、Al/NiとCr以外の他の元素を含んでもよい。より詳細には、合金は、鉄(Fe)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、ケイ素(Si)及びモリブデン(Mo)から選択される1つ以上の元素を含んでもよい。
【0021】
好ましい実施形態において、この合金は、ステープルファイバー糸、紡績糸、又は連続フィラメント糸として利用されるように選択され、より詳細には、この繊維の断面の相当直径が、50μm未満であり、好ましくは25μm未満であり、例えば14μm以下であるように選択される。
好ましい実施形態において、これらの繊維は、紡績技術により紡績単糸に変形される。さらなる実施形態において、ねじり技術の使用により、紡績単糸は安定化され、紡績双糸を形成する。この技術は、とても高い引張強度を生み出すために主に使われる。紡績双糸を、様々な構造の使用により、チューブに編むこと、編み込むこと、又は織ることができる。
【0022】
さらなるその実施形態において、編み構造が使われる。編み構造のタイプは、最終製品の弾性に影響を与えうる。すべての編み針上に糸が編まれる平編みは、安定したチューブになるだろう。ステッチとタックステッチの組み合わせで作られたチューブでは、弾性がより高くなるだろう。ステッチとミスステッチから作られたチューブは、制限された弾性を有するだろう。1つのステッチと1つのミスステッチ又はタックステッチ、又は1つのステッチと2つ以上のミスステッチのような様々なパターンが可能である。ステッチ、タックステッチ及びミスステッチの組み合わせも可能である。
代替的な実施形態において、織物構造が使われる。さらに、平織り、あや織り、繻子織り及びこれらの組み合わせのような様々な構造が可能である。
【0023】
本発明は、対象物の熱処理に使われるシステムの少なくとも一部のためのカバーにおける上記の合金材料の使用に関する。通常、カバーは、材料繊維で作られた(編まれた、織られた、又は繊維ウェブの)布である。特定の実施形態において、布は、他の金属繊維又は非金属繊維(シリカファイバー及びカーボンファイバー)との組み合わせ又は混合物としてここで想定される材料の繊維で作られる。さらなる特定の実施形態において、布は、ここに記載した材料の繊維だけで作られる。
【0024】
本願は、熱処理に適したシステムの内部の1つ以上の部品のためのカバーとして15w%より大きいCr含有量を有する選択された合金材料の使用をさらに提供する。特定の実施形態において、カバーは、材料繊維で作られた(編まれた、織られた、又は繊維ウェブの)布で作られる。このように、システム及び/又は(ガラス)加工利用に有益である軟質材料が得られる。特定の実施形態において、材料は、(a)少なくとも1日間、好ましくは5日間、さらに好ましくは10日間の継続期間にわたる700℃好ましくは750℃より高い温度において耐熱性であり(その強度が維持される)、(b)400℃より低い(1回以上の)温度低下の後、その物理的特性が維持される(脆くならない)ように選択される。
【0025】
関心ある温度は、1つ以上の回転要素を覆うのに使われる材料により経験される温度であることは注目すべきである。実際には、典型的な処理において、全体的なシステム温度は、500℃と680℃との間であってもよい。しかし、熱の導入はヒーター又はバーナーにより実行され、支持される複数の板ガラスの間において実際には隔たりがあるため、回転要素、より詳細にはそれらのカバーは、一時的には700℃を超える温度を経験する。本発明は、(i)当該温度から進んだ後に材料問題が生じる(特に400℃より低い冷却のような過酷な温度サイクルが後で生じる場合)、(ii)たとえ全体的な設計温度が低かったとしても、実際には700℃を超える当該温度が生じている(回転要素の速度とシートの間隔とに依存する速いサイクルにおいて)、という洞察を提供する。当該高温操作の継続期間は、たとえ温度ピークがこの期間の間に短く頻繁に生じたとしても、少なくとも1日間、好ましくは5日間、より好ましくは10日間であってもよい。従って、本発明は、システムの内部の1つ以上の部品を、Cr-Al合金材料で作られたカバーで覆う熱処理に適したシステムを操作する方法として明確に表すことができ、ここで前記材料は、熱処理される第2(ガラス)材料シートを支持する1つ以上の回転要素のためのカバーとして少なくとも使われ、この方法は、前記材料により経験される700℃、好ましくは750℃、より高い温度を含む温度サイクルに関して、前記システムの一部の内部の温度変化の使用を含み、当該サイクルは、少なくとも1日間、好ましくは5日間、さらに好ましくは10日間の継続期間と、任意的に400℃より低い1回以上の温度減少(たとえ100℃以下でも)とを有する。
【0026】
特定の実施形態において、カバーはここで想定される材料からなる繊維の布から作られる。
上記のことは、ガラス加工、特に車両用窓の製造、のシステムにおいて発見された温度力学を説明し、ここで、前記材料は、熱処理される材料シートを支持するように設計された1つ以上の回転要素のためのカバーとして使われうる;追加的に又は代替的に前記材料は、熱処理の間に材料シートを求められた形状にするために使われる要素のためのカバーとして使われうる。詳細な上記のように、これらの適用において、材料が繊維として利用可能なものにさらに選択されうるように、材料の軟らかさが求められる場合がある。特定の実施形態では、これらの実施形態で提供されたようなカバーは、従って、材料繊維で作られた(編んだ、織物の、又はファイバーウェブの)布である。このことは、支持要素又は成型要素が接触した際に材料シートを(粒子による)ダメージから保護することを可能にする。好ましい実施形態において、材料は、15w%より大きいCr含有量、好ましくは20.0w%よりも大きいCr含有量を有する。本発明は、材料シートの熱処理に適したシステムにさらに関し、このシステムは、前記材料シートを支持するための複数の(回転及び/又は直線的に動く)要素を備える、ここで、前記要素の1つ以上の(又は実質的にすべての)部品、より詳細には700℃より高い温度、好ましくは750℃より高い温度、にさらされる部品、は、上記の材料により覆われる。好ましくは、前記材料はカバーとして設けられ、最も好ましくは前記カバーは被覆プロセスを促進するために弾性であることが好ましい。ここで想定される例えばガラス対象物などの加熱対象物のためのシステムに設けられた要素の性質は重要ではなく、例は、当業者によく知られたものであり、限定されないが、板ガラスの運搬用のローラーが挙げられる。
【0027】
上記の特定の実施形態において、材料は、上記の材料の繊維で作られた布として設けられ、上記のシステムにおける使用に適している。最も好ましくは、カバーは、布で作られ、(回転)要素を覆うのに適して設けられる。
方法、特に限定されないが例えばコンピューター実施方法(及び関連するコンピュータープログラム、当該プログラムを保存したコンピューター可読媒体)など、は、熱処理に適したシステムの内部の1つ以上の部品のために適切な材料を決定するために提供される。当該方法は、対象物の熱処理に通常使われる温度サイクルの観点から前記1つ以上の部品の温度変化をモニタリングするステップと、前記1つ以上の部品のために、当該温度サイクルにおいて、耐熱性であり(その強度が維持される)、(b)その物理的特性が維持される(脆くならない)材料で作られたカバーを選択するステップとを含む。特定の実施形態において、温度サイクルは、任意的に400℃以下の(1回以上の)温度低下と交互に起る、少なくとも1日間、好ましくは5日間、さらに好ましくは10日間の継続期間にわたる700℃より高い、好ましくは750℃より高い温度を複数含み;特定の実施形態において、この方法は、上記のように15w%より大きいCr含有量を有するCr-Al合金の材料を選択するステップを含む。
【0028】
特定の実施形態において、ここで想定される方法は、システムの異なる複数の機能部品に対応する異なる複数の場所で前記システムの温度変化をモニタリングするステップを含む。
適切な材料がいったん特定される(そして前記部品に提供される)と、プロセスの続行のための、材料とカバーの交換が必要となるときを決定する同様の方法を使うことができる。当該方法は、通常、温度力学のオンラインデータの読み込みと、選択された材料の温度力学特性のそれとを比較することを伴う。
【0029】
上記の本発明の様々な側面(使用、材料、カバー、システム、オフライン又はオンラインで方法を実施するコンピューター)は、(ガラス)加工応用の温度力学の手元での詳細な理解(と獲得)を、一方における材料の温度特性さらに、特定の応用のさらなる要求を満たすことを可能にする特性(例えば、繊維として準備できるそれらの能力、従ってカバーを作るための布に使われうるそれらの能力、)、例えば、得られるカバーの軟らかさなど、に組み合わせる本発明により得られる相乗効果を明らかにする。
【0030】
熱処理の間に使われる本発明により提供される材料は、特定のシステムの内部の場所によって異なる過酷な条件に耐える、加えて、それ自体の過酷な熱処理のほかに、(当該高温で引き起こされる)化学的相互作用にもさらされる。このことは、材料を回転要素に固定する手段が設けられる必要があるかもしれないことを暗示する。本発明は、特定のシステムの内部の複数のはっきりと異なる場所又は位置における上記材料のモニタリングを伴う方法も提供し、これらの位置は、支持するという第1機能と、固定するという第2機能に関連する。そのシステムが板ガラスを加熱するためのシステムである特定の実施形態において、ここで想定される方法は、異なる複数の部分においてシステムをモニタリングするステップを含み、その1つは、前記板ガラスが提供される下部の要素の位置に位置づけられており、前記場所のもう1つは、前記板ガラスを運搬するための要素に前記材料を取り外し可能に固定するための手段のすぐ近くに位置づけられる。
【0031】
従って、本発明は、適切な固定手段、例えば特に限定されないがリングなど、と組み合わせた前記材料の使用をさらに提供する。固定手段は、前記カバー材料と同じであってもよく又は異なってもよい材料で作られている。より詳細には、固定手段の材料は、前記熱処理の間に前記カバーと化学的に相互作用しないように選択される。
【0032】
最後に、本発明は熱処理システムを操作する別の方法に関するということができる。実際に、システムの沈滞、例えば、加工される対象物がない又は人員が利用できない、の間のとても大きなエネルギー消費の問題に取り組むことは興味深い。1つの可能性のある方法は、通常の操作条件をはるかに超える冷却を含むシステムのアクティブ制御を使うことによりなされうる。しかし、この状況は、回避されると通常考えられており、不可避な運転停止の間にだけ通常発生する。実際に、人は、このことは使用している材料に重大な影響を有するため、通常、可能であればそのような大きな温度変化(ここでは“温度サイクル”とも称される)を避ける傾向がある。しかし、本発明は、そのような条件において安定である材料を特定するための方法を提供する。従って、本発明は、そのように変化する温度条件において保護カバーとしての使用に適した特性を有する材料を特定するステップと、特定された材料の特性に基づいて熱処理に温度サイクルを積極的に導入するステップとを伴う方法を提供する。追加的に又は代替的に、本発明は、システムの沈滞の実際の状況に対応する求められる温度サイクルを決定するステップと、そこで使うのに適した材料を特定するステップとを伴う方法を提供する。当該方法は、最終製品及び/又は原材料の需要及び/又は供給力、及び/又は人員と時間の運営の観点から、熱処理システムにおける最適な温度サイクルを決定するステップを含んでもよい。最後に、本発明は、所定の温度サイクルの適用と、ここで想定されるCr-Al合金及び/又はニッケルクロム合金を含む保護カバーの使用とを伴う熱処理のための方法を提供する。従って、本発明は、例えばここで記載された耐熱性材料と関連するモニタリング方法などの具体的な解決策を提供して、方法を使用するための材料選択に関するそのような包括的な方法論をまさに使用する。