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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221017BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61B6/03 330A
A61B6/03 323A
A61B6/00 320M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018013307
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019129939
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-11-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】東 良亮
(72)【発明者】
【氏名】潟山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山鼻 将央
(72)【発明者】
【氏名】天生目 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 寿
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-113715(JP,A)
【文献】特開2007-289297(JP,A)
【文献】特開2016-140429(JP,A)
【文献】特開2006-141906(JP,A)
【文献】特開2008-259679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0325040(US,A1)
【文献】特開平07-148152(JP,A)
【文献】特開2001-178713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上に載置された被検体にX線を照射するX線管と、
前記X線管により照射され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
造影剤インジェクタにより造影剤が注入された前記被検体に複数の方向から前記X線管よりX線を照射する造影撮影の準備未完了の情報を取得すると、造影撮影を行う造影撮影位置とは異なる位置でありかつ前記造影撮影の準備を行う準備位置へ、予め設定された前記造影剤インジェクタの位置情報に基づいて計算された移動方向および距離に従って前記天板を移動する天板駆動部とを
備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記天板駆動部は、前記造影撮影を行う前記被検体の位置を決めるための単純撮影によるX線照射が終了してから、前記単純撮影が行われた単純撮影位置から前記準備位置へ前記天板を移動する請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記予め設定された前記造影剤インジェクタの位置情報に加え、前記天板上に載置された前記被検体の体位の情報、前記造影剤インジェクタを穿刺する前記被検体の穿刺位置の情報、及び前記単純撮影位置の情報に基づいて、前記天板の移動方向及び距離を計算する天板制御部をさらに備え
前記天板駆動部は、前記単純撮影位置の前記天板を、前記穿刺位置が前記X線管から遠ざかり前記造影剤インジェクタに近づく方向に前記距離移動して、前記準備位置で停止させる請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記天板駆動部は、前記造影撮影の準備完了の情報を取得すると、前記造影撮影を行う造影撮影位置へ前記天板を移動する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記天板制御部は、予め設定された造影撮影位置の情報に基づいて、前記準備位置から前記造影撮影位置まで移動させる前記天板の移動方向及び距離を計算し、
前記天板駆動部は、前記準備位置の前記天板を、前記単純撮影位置から前記準備位置への移動方向とは反対方向に前記距離移動して、前記造影撮影位置で停止させる請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記X線管に印可する高電圧を発生する高電圧部と、
前記造影撮影のときに前記X線管を支持する回転フレームを回転する回転駆動部と、
前記造影撮影の準備未完了の情報を取得してから前記造影撮影位置へ前記天板が移動するまでの間、前記回転駆動部に前記回転フレームを回転させてセットアップを行わせると共に前記高電圧部に前記X線管のセットアップを行わせるスキャン制御部とを
備える請求項4又は請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記X線検出器により検出された信号を収集して投影データを生成するデータ収集部を有し
前記スキャン制御部は、前記造影撮影の準備未完了の情報を取得してから前記造影撮影位置へ前記天板が移動するまでの間、前記X線検出器のセットアップ又は前記データ収集部のセットアップの少なくとも1つのセットアップを行わせる請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記造影撮影のときに前記X線管を支持する回転フレームを回転する回転駆動部と、
前記造影撮影の準備未完了の情報を取得してから当該造影撮影が開始されるまでの間、前記回転駆動部に前記回転フレームの回転を停止させる又は前記回転フレームの回転を前記造影撮影のときよりも減速させるスキャン制御部とを
備える請求項4又は請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記X線管は、前記造影剤インジェクタにより前記被検体への造影剤の注入が開始されてから所定の時間経過したときにX線照射を開始し、
前記天板駆動部は、
前記準備位置から前記造影撮影位置までの前記天板の移動に要する時間が前記所定の時間よりも短い場合、前記造影剤の注入が開始されてから前記準備位置の前記天板の前記造影撮影位置への移動を開始し、前記X線管によるX線照射の開始までに前記造影撮影位置まで前記天板を移動し、
前記準備位置から前記造影撮影位置までの前記天板の移動に要する時間が前記所定の時間以上である場合、前記造影剤の注入が開始される前に前記準備位置の前記天板の前記造影撮影位置への移動を開始し、前記X線管によるX線照射の開始までに前記造影撮影位置まで前記天板を移動する請求項4乃至請求項8のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記造影撮影の準備未完了の情報および準備完了の情報を前記造影剤インジェクタから受信する通信部をさらに具備する、請求項1から請求項9のいずれかに記載のX線CT装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、造影撮影を行うX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置には、造影剤インジェクタにより被検体に造影剤を注入して撮影を行う造影検査がある。X線CT装置で造影検査を行う場合、位置決めのための単純撮影と組み合わせて行う。この造影検査では、単純撮影が終了してから、被検体と造影剤インジェクタ間での造影剤注入のルートの確保等の造影撮影の準備を行うことが多い。
【0003】
しかしながら、単純撮影の終了後、造影撮影を行う位置まで天板を自動的に移動させるようになっているため、造影撮影の準備をしようとすると、造影撮影の準備が容易な位置まで天板を移動させる操作が必要となり、検査中に多忙な操作者に負担をかけている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-165887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、操作者の造影検査に掛かる負担を軽減することができるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CT装置は、天板上に載置された被検体にX線を照射するX線管と、前記X線管により照射され、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、造影剤インジェクタにより造影剤が注入された前記被検体に複数の方向から前記X線管よりX線を照射する造影撮影の準備未完了の情報を取得すると、前記造影撮影の準備を行う準備位置へ前記天板を移動する天板駆動部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態に係る造影剤インジェクタの構成の一例を示すブロック図。
図3】実施形態に係るX線CTシステムの動作を示すフローチャート。
図4】実施形態に係る天板上に載置された被検体の体位の一例を示す図。
図5】実施形態に係る天板の単純撮影位置の一例を示す図。
図6】実施形態に係る天板の移動方向及び距離の計算の一例を説明するための図。
図7】実施形態に係る天板の準備位置の一例を示す図。
図8】実施形態に係る天板の造影撮影位置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るX線CTシステムの構成を示した図である。このX線CTシステムは、X線CT装置100と、造影剤インジェクタ200とを備えている。
【0010】
X線CT装置100は、被検体Pの載置や移動が行われる寝台装置10と、被検体PにX線の照射が行われる架台装置20と、画像データの生成等が行われるコンソール装置30とを備えている。そして、X線CT装置100は、単純撮影と造影撮影を組み合わせた造影検査の場合、位置決めのための単純撮影を行い、単純撮影が終了してから、造影剤インジェクタ200により造影剤が注入された被検体Pに複数の角度からX線を照射して造影撮影を行う。
【0011】
寝台装置10は、天板11と、支持フレーム12と、基台13と、天板駆動装置14とを備えている。天板11は、長方形の板状に形成され、被検体Pが載置される。支持フレーム12は、天板11を長手方向に移動可能に支持するフレームである。基台13は、支持フレーム12を上下方向に移動可能に支持する筐体である。天板駆動装置14は、天板11を長手方向に移動するモータと、支持フレーム12を駆動して天板11を上下方向に移動するモータとを備えている。以下では、天板11の短手方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する上下方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に直交する方向である天板11の長手方向をZ軸方向とする。
【0012】
そして、造影検査において、天板駆動装置14は、被検体Pが載置された天板11を、単純撮影を行う位置(単純撮影位置)へ移動し、単純撮影が終了してから、造影剤インジェクタ200と被検体Pとの接続や被検体Pへの造影撮影の説明等の造影撮影の準備を行う位置(準備位置)又は造影撮影を行う位置(造影撮影位置)へ移動する。天板駆動装置14は、天板駆動部の一例である。
【0013】
架台装置20は寝台装置10のZ軸方向に配置され、X線管21と、X線検出器22と、高電圧装置23と、回転フレーム24と、回転駆動装置25と、データ収集装置26とを備えている。
【0014】
X線管21は、回転可能にX線検出器22に対向配置され、例えば、高電圧装置23からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射する真空管を備えている。そして、X線管21は、寝台装置10によりX線検出器22との間に移動された被検体Pに対して一定の方向からのX線照射や、被検体Pの周囲を回転しながら複数の方向からのX線照射を行う。
【0015】
X線検出器22は、例えば、X線管21の焦点を中心として矢印で示した円弧状のチャンネル方向と、Z軸に平行なスライス方向とに格子状に配列された複数のX線検出素子を備えている。そして、X線検出器22は、X線管21から照射され、被検体Pを透過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をデータ収集装置26へ出力する。
【0016】
高電圧装置23は、変圧器及び整流器等の電気回路から構成され、X線管21に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管21が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置から構成される。そして、高電圧装置23は、単純撮影用や造影撮影用等の高電圧をX線管21に印加する。高電圧装置23は、高電圧部の一例である。
【0017】
回転フレーム24は、X線管21、X線検出器22、高電圧装置23及びデータ収集装置26を回転可能に支持する円環状のフレームである。また、回転駆動装置25は、回転フレーム24を回転駆動するモータを備えている。そして、回転駆動装置25は、Z軸に平行なアイソセンタCを通る仮想の軸を中心として、回転フレーム24に支持されたX線管21、X線検出器22、高電圧装置23及びデータ収集装置26を一方向に回転する。回転駆動装置25は、回転駆動部の一例である。
【0018】
データ収集装置26は、X線検出器22の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器、増幅した電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等から構成される。そして、データ収集装置26は、回転フレーム24の回転により、所定の角度(ビュー角度)毎に1ビューの投影データを生成し、回転フレーム24の1スキャンに相当する回転により複数ビューの投影データを収集する。データ収集装置26は、データ収集部の一例である。
【0019】
コンソール装置30は寝台装置10及び架台装置20から離間して配置され、処理回路31と、記憶装置32と、表示装置33と、入力装置34と、通信装置35とを備えている。そして、コンソール装置30は、架台装置20にて収集される投影データに基づいて、被検体Pの断層画像データや、ボリュームデータ等の画像データを生成する。コンソール装置30は、コンソール部の一例である。
【0020】
処理回路31は、天板制御機能311と、スキャン制御機能312と、画像処理機能313と、表示制御機能316と、システム制御機能317とを備えている。処理回路31は、処理部の一例である。
【0021】
天板制御機能311は、寝台装置10の天板駆動装置14を制御する。そして、天板制御機能311は、天板11を上下方向や長手方向に移動させて天板駆動装置14より天板11の位置情報を取得する。天板制御機能311は、天板制御部の一例である。
【0022】
スキャン制御機能312は、高電圧装置23や回転駆動装置25により、回転フレーム24を回転させながらX線管21にX線を照射させるなど、X線スキャン等の各種動作を制御する。スキャン制御機能312は、スキャン制御部の一例である。
【0023】
画像処理機能313は、前処理機能314と、再構成処理機能315とにより構成される。そして、画像処理機能313は、データ収集装置26で収集された複数ビューの投影データに基づいて、画像データを生成する。画像処理機能313は、画像処理部の一例である。
【0024】
前処理機能314は、データ収集装置26で収集された各投影データに対して、オフセット補正、対数変換処理、感度補正等の前処理を行う。前処理機能314は、前処理部の一例である。
【0025】
再構成処理機能315は、前処理された複数ビューの投影データから、被検体Pの断層平面に対応する断層画像データやボリュームデータを生成する。また、再構成処理機能315は、造影剤が注入された被検体PへのX線照射により生成されて前処理された複数ビューの投影データから造影画像データを生成する。再構成処理機能315は、再構成処理部の一例である。
【0026】
表示制御機能316は、画像表示に関する各種制御を行う。そして、画像処理機能313で生成された断層画像データ、ボリュームデータ、造影画像データ等の各画像データを表示装置33に表示させる制御を行う。表示制御機能316は、表示制御部の一例である。
【0027】
システム制御機能317は、寝台装置10、架台装置20及びコンソール装置30の動作を制御して、X線CT装置100の全体を統括して制御する。システム制御機能317は、システム制御部の一例である。
【0028】
記憶装置32は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等を備えている。そして、記憶装置32は、架台装置20で収集された各投影データ、前処理機能314で前処理された各投影データ、画像処理機能313で生成された断層画像データやボリュームデータ等を保存する。記憶装置32は、記憶部の一例である。
【0029】
表示装置33は、表示回路、ビデオメモリ、CRTや液晶ディスプレイ等を備えている。そして、表示装置33は、画像処理機能313で生成された断層画像データ、ボリュームデータ、造影画像データ等の各画像データを表示する。表示装置33は、表示部の一例である。
【0030】
入力装置34は、例えばキーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック等を備える。そして、入力装置34は、各画像データを得るために、被検体Pの診断対象の部位(撮影部位)、スキャン方式、枚数、スライス間隔、管電流及び管電圧、有効視野領域(FOV)等の各種撮影条件を設定する入力を行う。また、入力装置34は、被検体PをX線で照射可能な単純撮影位置等に天板11を移動させる入力を行う。また、入力装置34はスイッチを備え、造影撮影の準備未完了又は準備完了の入力を行う。入力装置34は、入力部の一例である。なお、造影撮影の準備未完了又は準備完了の入力を行うスイッチを、寝台装置10又は架台措置20に配置するように実施してもよい。
【0031】
通信装置35は、送受信回路等を備え、造影剤インジェクタ200との間で、シリアル通信又はCAN(コントローラエリアネットワーク)通信等により通信を行う。そして、通信装置35は、造影撮影の準備を必要とする準備未完了の情報や、造影撮影の準備を終えて造影撮影を可能とする準備完了の情報を造影剤インジェクタ200から受信する。
【0032】
処理回路31にて行われる天板制御機能311、スキャン制御機能312、画像処理機能313、表示制御機能316及びシステム制御機能317の各処理機能は、コンピュータによって実現可能なプログラムの形態で記憶装置32に保存されている。そして、処理回路31は、各プログラムを記憶装置32から読み出し、実行することで各プログラムに対応する処理機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路31は、図1の処理回路31内に示された各処理機能を有することとなる。
【0033】
なお、図1においては、天板制御機能311、スキャン制御機能312、画像処理機能313、表示制御機能316及びシステム制御機能317の各処理機能は、単一の処理回路31にて実現されるものとして説明したが、複数のプロセッサが各プログラムを実現することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。
【0034】
図2は、造影剤インジェクタ200の構成の一例を示したブロック図である。この造影剤インジェクタ200は、寝台装置10の天板11上に載置された被検体Pに造影剤を注入する装置であり、注入装置201と、入力装置211と、通信装置221と、制御装置231とを備えている。
【0035】
注入装置201は、被検体Pに穿刺される穿刺針と、この穿刺針に一端部が接続されたチューブと、このチューブの他端部に接続されたポンプと、このポンプを駆動する動力源としてのモータとを備えている。
【0036】
入力装置211は、例えばスイッチ等を備えている。そして、操作者の操作により、入力装置211は、造影撮影の準備未完了又は準備完了の入力を行う。なお、入力装置211を寝台装置10又は架台装置20に配置するように実施してもよい。
【0037】
通信装置221は、送受信回路等を備え、例えばシリアル通信又はCAN(Controller Area Network)通信等によりX線CT装置100の通信装置35との間で通信を行う装置である。そして、通信装置221は、入力装置211から入力された準備未完了又は準備完了の情報を通信装置35に送信する。
【0038】
制御装置231は、CPU及び記憶回路を備え、注入装置201と、入力装置211と、通信装置221とを制御する。
【0039】
なお、造影剤インジェクタ200の寝台装置10及び架台装置20に対する位置情報を制御装置231に認識させ、入力装置211からの準備未完了の入力に応じて、通信装置221から準備未完了の情報と共に造影剤インジェクタ200の位置情報を通信装置35に送信させるように実施してもよい。
【0040】
以下、図1乃至図8を参照して、造影検査におけるX線CTシステムの動作の一例を説明する。
【0041】
図3は、X線CTシステムの動作を示したフローチャートである。
【0042】
被検体Pを識別する氏名や身長等の患者ID、単純撮影や造影撮影を行うための管電圧や管電流等の照射条件、被検体Pの撮影部位、天板11上に載置される被検体Pの体位、寝台装置10及び架台装置20に対する造影剤インジェクタ200のZ軸方向における位置情報、造影剤インジェクタ200を穿刺する被検体Pの穿刺位置等の造影検査に関する様々な検査情報の入力が入力装置34から行われると、X線CTシステムは、動作を開始する(ステップS1)。
【0043】
システム制御機能317は、寝台装置10、架台装置20及びコンソール装置30の各ユニットに造影検査を指示する。
【0044】
図4は、天板11上に載置された被検体Pの体位の一例を示した図である。この被検体Pは、頭部を架台装置20側に向け、上腕を頭上に組んだ状態で仰向けに天板11上に載置されている。そして、被検体Pの撮影部位は心臓であり、造影剤インジェクタ200により穿刺する被検体Pの穿刺位置は頭上に組んだ状態の上腕である。
【0045】
なお、図4に示した体位以外に、頭部を架台装置20側に向け上腕を天板11上に降ろした状態で仰向けに載置される体位、下肢を架台装置20側に向け上腕を天板11上に降ろした状態で仰向けに載置される体位等の複数の体位がある。また、造影剤インジェクタ200の穿刺位置は、頭上に組んだ状態の上腕以外に、天板11上に降ろした上腕や下肢等がある。
【0046】
入力装置34から単純撮影位置の入力が行われると、天板駆動装置14は天板11をZ軸に平行な矢印L1方向に移動し、図5に示すように、被検体Pの心臓がほぼアイソセンタCとなる単純撮影位置p1で停止させる(図3のステップS2)。
【0047】
入力装置34から単純撮影開始の入力が行われると、架台装置20は天板11上の被検体PにX線を照射して投影データを生成する。画像処理機能313は架台装置20により生成された投影データに基づいて単純画像データを生成し、表示装置33は画像処理機能313で生成された単純画像データを表示する(図3のステップS3)。
【0048】
ここでは、単純撮影として、X線管21を例えば一定の角度で停止させた状態で一定の方向から被検体PへのX線照射により、画像処理機能313は単純画像データとしてスキャノ画像データを生成し、表示装置33は画像処理機能313で生成されたスキャノ画像データを表示する。入力装置34からのスキャノ画像データ上に被検体Pの造影撮影位置を設定する入力により、被検体Pの撮影位置が決定する。
【0049】
X線照射が停止する前又はX線照射が停止して単純撮影が終了した後、操作者が造影剤インジェクタ200の入力装置211のスイッチを押下することによって、入力装置211から造影撮影の準備未完了の入力が行われると、通信装置221は、コンソール装置30の通信装置35に造影撮影の準備未完了の情報を送信する。システム制御機能317は、通信装置35の受信により造影撮影の準備未完了の情報を取得する(図3のステップS4)。なお、入力装置34のスイッチを押下することによって、入力装置34から造影撮影の準備未完了の入力を行うように実施してもよい。この場合、システム制御機能317は、造影撮影の準備未完了の情報を入力装置34から取得することができる。
【0050】
なお、X線照射が停止する前又はX線照射が停止して単純撮影が終了した後、入力装置211のスイッチを押下することによって、入力装置211から造影撮影の準備完了の入力が行われると、ステップS4において、システム制御機能317が造影撮影の準備完了の情報を取得し、ステップS4からステップS8に移行する。また、ステップS4において、入力装置34から造影撮影の準備完了の入力が行われると、システム制御機能317が造影撮影の準備完了の情報を取得し、ステップS8に移行する。
【0051】
天板制御機能311は、予め設定された造影剤インジェクタ200の位置情報、天板11の単純撮影位置の情報、入力装置34から入力された検査情報に基づいて、単純撮影位置p1から準備位置へ移動させる天板11の移動方向及び距離を計算する(図3のステップS5)。
【0052】
図6は、天板11の移動方向及び距離の計算の一例を説明するための図である。
【0053】
記憶装置32には、統計的に求めた例えば各身長とこの身長における心臓から穿刺位置となる頭上に組んだ上腕までの距離との関係を示すテーブルが予め保存されている。天板制御機能311は、入力装置34から入力された検査情報に含まれる身長、体位及び穿刺位置と、造影剤インジェクタ200の位置情報と、天板11の単純撮影位置の情報と、記憶装置32に保存されているテーブルの情報とから準備位置を計算する。
【0054】
ここでは、造影剤インジェクタ200は、架台装置20のアイソセンタCを通る破線で示した中心軸からL1方向に距離D1離れた位置にある。なお、造影剤インジェクタ200は、架台装置20のアイソセンタCを通る破線で示した中心軸からL1方向とは反対方向に位置する場合もある。
【0055】
また、被検体Pの撮影部位である心臓から穿刺位置となる頭上に組んだ上腕までは、記憶装置32に保存されたテーブルから距離D2となる。また、天板11の単純撮影位置p1からの移動方向は、被検体Pに造影剤インジェクタ200を穿刺しやすいように、被検体Pの穿刺位置が架台装置20から遠ざかり造影剤インジェクタ200に近づく方向であるL1方向となる。また、単純撮影位置p1から天板11を移動させる距離は、距離D1から距離D2を差し引いた距離D3となる。
【0056】
図3のステップS5の後、天板駆動装置14は、図7に示すように、単純撮影位置p1の天板11をL1方向に距離D3移動して準備位置p2で停止させる(図3のステップS6)。
【0057】
このように、入力装置211からの例えばスイッチを押下する簡単な操作だけで、単純撮影位置p1の天板11を、造影剤インジェクタ200の位置、被検体Pの穿刺位置及び体位に合わせて準備位置p2へ移動させることができる。これにより、造影検査中に多忙な操作者の負担を軽減することができる。
【0058】
被検体Pへの造影剤インジェクタ200の穿刺や造影撮影の説明など造影撮影の準備が完了して入力装置211から造影撮影の準備完了の入力が行われると、通信装置221は、通信装置35に造影撮影の準備完了の情報を送信する。システム制御機能317は、通信装置35の受信により造影撮影の準備完了の情報を取得する(図3のステップS7)。
【0059】
なお、システム制御機能317は、入力装置34から造影撮影の準備完了の入力によっても、造影撮影の準備完了の情報を取得することができる。
【0060】
天板制御機能311は、予め設定された造影撮影位置の情報及びステップS3において計算した準備位置p2の位置情報に基づいて、準備位置p2から造影撮影位置へ移動させる天板11の移動方向及び距離を計算する。天板駆動装置14は、図8に示すように、準備位置p2の天板11をL1方向と反対の矢印L2方向に移動して、被検体Pの撮影位置となる造影撮影位置p3で停止させる(図3のステップS8)。
【0061】
入力装置34から造影撮影開始の入力が行われると、造影剤インジェクタ200は、システム制御機能317からの通信装置35,221を介しての指示によって被検体Pに造影剤を注入する。架台装置20は、例えば造影剤が注入されてから所定時間経過した天板上の被検体Pに複数の方向からX線を照射して投影データを生成する。画像処理機能313は架台装置20により生成された投影データに基づいて造影画像データを生成し、表示装置33は画像処理機能313で生成された造影画像データを表示する(図3のステップS9)。
【0062】
架台装置20のX線照射が停止して、表示装置33に造影画像データが表示されると、X線CTシステムは動作を終了する(図3のステップS10)。
【0063】
なお、造影撮影の準備未完了の情報を取得してから、造影撮影の準備を行って天板11を造影撮影位置p3まで移動させるまでの間、造影撮影に備えて予め回転駆動装置25に回転フレーム24のセットアップを行わせると共に高電圧装置23にX線管21のセットアップを行わせる、更にはX線検出器22のセットアップ又はデータ収集装置26のセットアップの少なくとも1つを行わせるようにして、造影撮影のための各ユニットの制御をスキャン制御機能312に実行させるように実施してもよい。これにより、造影撮影の準備が完了してから造影撮影によりX線照射を開始させるまでの時間を短縮することができる。
【0064】
また、造影撮影の準備未完了の情報を取得してから造影撮影が開始されるまでの間、回転駆動装置25に回転フレーム24の回転を停止させる又は回転フレーム24の回転を造影撮影のときよりも減速させる制御をスキャン制御機能312に実行させるように実施してもよい。これにより、架台装置20の稼働音を抑えることができるため、造影撮影の準備のときの被検体Pへの造影撮影の説明を容易に行うことができる。
【0065】
また、造影撮影の準備完了の情報を取得すると、入力装置34からの造影撮影開始の入力に応じて造影剤インジェクタ200により被検体Pに造影剤を注入させ、造影剤の注入が開始されてから所定の時間経過したときに造影撮影位置p3の天板11上の被検体PへのX線照射の開始により造影撮影を開始させる場合、準備位置p2から造影撮影位置p3までの天板11の移動に要する時間が所定の時間よりも短いと、造影剤の注入が開始されてから準備位置p2の天板11の造影撮影位置p3への移動を開始させ、X線照射の開始までに造影撮影位置p3まで天板11を移動させ、準備位置p2から造影撮影位置p3までの天板11の移動に要する時間が所定の時間以上であると、造影剤の注入が開始される前に準備位置p2の天板11の造影撮影位置p3への移動を開始させ、X線照射の開始までに造影撮影位置p3まで天板11を移動させるように実施してもよい。これにより、造影撮影によりX線照射が開始される前まで、操作者の目の届く位置や、副作用などの緊急時に天板11から容易に降ろすことができる位置に被検体Pを止めておくことが可能となり、造影剤に対するアレルギー反応等の被検体Pの異常に迅速に対応することができる。
【0066】
以上述べた実施形態によれば、入力装置211からのスイッチを押下する簡単な操作だけで、単純撮影位置p1の天板11を、造影剤インジェクタ200の位置、被検体Pの穿刺位置及び体位に合わせて準備位置p2へ移動させることができる。これにより、造影検査中に多忙な操作者の負担を軽減することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
11 天板
14 天板駆動装置
21 X線管
22 X線検出器
313 画像処理機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8