(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】磁気センサ装置および位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
G01D5/245 110C
(21)【出願番号】P 2018020668
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】長田 航太
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 正吾
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102163(JP,A)
【文献】実開平2-97604(JP,U)
【文献】特開2000-258106(JP,A)
【文献】実開平3-27376(JP,U)
【文献】特開2007-232616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0164867(US,A1)
【文献】実開平5-81634(JP,U)
【文献】国際公開第2017/169740(WO,A1)
【文献】特開2016-217754(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098627(WO,A1)
【文献】実開平6-86009(JP,U)
【文献】特開2015-200524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
G01R 33/00-33/18
H05K 9/00
G12B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気スケールに対して相対移動する磁気センサ装置であって、
磁気センサ素子と、
電子部品が搭載された回路基板と、
前記磁気センサ素子および前記回路基板を保持するケースと、
前記磁気センサ素子と前記回路基板の間に配置されるシールド部材と、を備え、
前記回路基板の側から見た場合に、前記シールド部材の外形の内側に前記磁気センサ素子が位置しており、
前記シールド部材の外周縁の少なくとも1辺が前記磁気センサ素子の側へ屈曲して
おり、
前記磁気センサ素子はセンサ基板に設けられ、
前記シールド部材は、前記センサ基板に接続される配線部材を通す貫通部を備え、
前記ケースは、前記磁気スケールの側を向く対向面を構成する底板部を備え、
前記底板部は、開口部と、前記開口部の外周側において前記磁気スケールとは反対側へ突出する位置決め用凸部を備え、
前記センサ基板は、前記対向面の側から前記底板部に固定され、
前記シールド部材は、前記底板部に対して前記センサ基板とは反対側に配置され、前記貫通部に前記位置決め用凸部を挿入することによって、前記開口部と前記貫通部とが重なる位置に位置決めされることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記配線部材はフレキシブルプリント基板であり、
前記貫通部は直線状に延びたスリットであることを特徴とする請求項
1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記ケースは、開口部と、前記開口部の縁における対向する2箇所から前記開口部の内側へ突出する2箇所のセンサ支持部を備え、
前記センサ基板は、前記2箇所のセンサ支持部に固定されることを特徴とする請求項
1または
2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記シールド部材は、接着剤によって前記ケースに固定されることを特徴とする請求項1から
3の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
一端が前記シールド部材に電気的に接続され、他端が前記ケースに電気的に接続される導電部材を備えることを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記電子部品は、前記磁気センサ素子の検出信号が入力される信号処理回路を構成することを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
N極とS極が交互に直線状に並ぶトラックを備える前記磁気スケールと、
前記磁気スケールに対して前記トラックの延在方向に相対移動可能に設けられた請求項1から
6の何れか一項に記載の磁気センサ装置と、を有することを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ素子およびケースを備えた磁気センサ装置、および、磁気スケールの表面に沿って磁気センサ装置を相対移動させる位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気式リニアエンコーダ(位置検出装置)は、N極とS極が交互に直線状に並ぶトラックが形成された磁気スケールに沿って、磁気センサ装置を相対移動させるようになっている。特許文献1には、この種の磁気式リニアエンコーダが開示されている。特許文献1の磁気式リニアエンコーダは、非磁性材料からなる直方体状のケース(ホルダ)に磁気センサを搭載した磁気センサ装置を備える。ホルダは、磁気スケールと対向する対向面を備えており、対向面に形成された開口部に磁気センサが配置される。磁気センサは、センサ基板と、センサ基板の表面に形成された磁気抵抗素子(磁気センサ素子)を備える。
【0003】
特許文献2には、磁気式リニアエンコーダに用いられる磁気センサ装置が開示されている。特許文献2の磁気センサ装置では、直方体状のケース(筐体)の底部に磁気センサが配置され、筐体の内部には、ケーブルを接続するためのコネクタやLED等を実装した基板が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-102089号公報
【文献】特開2014-102163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の磁気式リニアエンコーダは、磁気スケールに複数のトラックが設けられており、磁気センサ装置では、基板上に各トラックに対向する磁気抵抗素子が設けられ、各トラックに対応する検出信号を出力する。磁気抵抗素子の検出信号は、回路基板に搭載された信号処理回路へ入力される。信号処理回路は、磁気抵抗素子の検出信号を増幅するアナログ回路、A/Dコンバータ、MPUなどのマイクロプロセッサを備える。
【0006】
磁気センサ装置において、磁気センサが保持されるケースの内部に信号処理回路を搭載した回路基板を配置する場合、磁気センサが回路基板上の電子部品の帯磁の影響を受けるおそれがある。特許文献2では、磁気抵抗素子に対する外部からの電気的ノイズの影響を低減させるために、センサ面を金属製のシールド部材で覆っている。しかしながら、磁気センサ装置の内部に収容される回路基板からの磁気的影響を低減させるためのシールドは設けられていない。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、電子部品を搭載した回路基板を備えた磁気センサ装置において、磁気センサ素子に対する回路基板からの磁気的影響を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、磁気スケールに対して相対移動する磁気センサ装置であって、磁気センサ素子と、電子部品が搭載された回路基板と、前記磁気センサ素子および前記回路基板を保持するケースと、前記磁気センサ素子と前記回路基板の間に配置されるシールド部材と、を備え、前記回路基板の側から見た場合に、前記シールド部材の外形の内側に前記磁気センサ素子が位置しており、前記シールド部材の外周縁の少なくとも1辺が前記磁気センサ素子の側へ屈曲しており、前記磁気センサ素子はセンサ基板に設けられ、前記シールド部材は、前記センサ基板に接続される配線部材を通す貫通部を備え、前記ケースは、前記磁気スケールの側を向く対向面を構成する底板部を備え、前記底板部は、開口部と、前記開口部の外周側において前記磁気スケールとは反対側へ突出する位置決め用凸部を備え、前記センサ基板は、前記対向面の側から前記底板部に固定され、前記シールド部材は、前記底板部に対して前記センサ基板とは反対側に配置され、前記貫通部に前記位置決め用凸部を挿入することによって、前記開口部と前記貫通部とが重なる位置に位置決めされることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、磁気センサ素子と、電子部品が搭載された回路基板とを同じケースによって保持するにあたって、磁気センサ素子と基板との間にシールド部材を配置している。このようにすると、回路基板に搭載された電子部品からの磁気的影響をシールド部材によって低減させることができる。従って、磁気センサ素子による位置検出の精度が低下することを抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、前記回路基板の側から見た場合に、前記シールド部材の外形の内側に前記磁気センサ素子が位置する。従って、回路基板が配置される側からの磁気的影響を少なくすることができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、前記シールド部材の外周縁の少なくとも1辺が前記磁気センサ素子の側へ屈曲している。従って、磁気センサ素子の外周側からの磁気的影響を低減させることができる。
【0012】
本発明によれば、前記磁気センサ素子はセンサ基板に設けられ、前記シールド部材は、前記センサ基板に接続される配線部材を通す貫通部を備える。従って、配線部材を容易に引き回すことができ、配線スペースを少なくことができる。例えば、前記配線部材がフレキシブルプリント基板である場合は、前記貫通部として、直線状に延びたスリットを形成することが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板を容易に磁気センサ素子の側へ引き回すことができる。更に、切欠きでなく貫通部を形成したことにより、回路基板が配置される側からの磁気的影響を少なくすることができる。
【0013】
本発明によれば、前記ケースは、前記磁気スケールの側を向く対向面を構成する底板部を備え、前記底板部は、開口部と、前記開口部の外周側において前記磁気スケールとは反対側へ突出する位置決め用凸部を備え、前記センサ基板は、前記対向面の側から前記底板部に固定され、前記シールド部材は、前記底板部に対して前記センサ基板とは反対側に配置され、前記貫通部に前記位置決め用凸部を挿入することによって、前記開口部と前記貫通部とが重なる位置に位置決めされる。従って、貫通部および開口部が重なった箇所に配線部材を通すことができる。また、シールド部材の位置決めを容易に行うことができるので、シールド部材の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明において、前記ケースは、開口部と、前記開口部の縁における対向する2箇所から前記開口部の内側へ突出する2箇所のセンサ支持部を備え、前記センサ基板は、前記2箇所のセンサ支持部に固定されることが好ましい。このようにすると、ケースを介してセンサ基板に応力が加わることを抑制できる。従って、センサ基板に加わる応力によって磁気センサ素子による位置検出の精度が低下することを抑制できる。
【0015】
本発明において、前記シールド部材は、接着剤によって前記ケースに固定されることが好ましい。このようにすると、ねじなどの固定部材を使用する必要がないので、部品点数を削減することができる。また、シールド部材およびケースに固定孔等の固定構造を設ける必要がないので、シールド部材およびケースの形状を単純化することができる。
【0016】
本発明において、一端が前記シールド部材に電気的に接続され、他端が前記ケースに電気的に接続される導電部材を備えることが好ましい。このようにすると、ケースを介してシールド部材を接地電位に確実に接続できるため、シールド部材に外部からの電気的ノイズがのるおそれが少ない。
【0017】
本発明において、前記電子部品は、前記磁気センサ素子の検出信号が入力される信号処
理回路を構成する。このようにすると、磁気センサ部と信号処理部とを一体化させた磁気センサ装置を構成することができる。
【0018】
次に、本発明の位置検出装置は、N極とS極が交互に直線状に並ぶトラックを備える前記磁気スケールと、前記磁気スケールに対して前記トラックの延在方向に相対移動可能に設けられた上記の磁気センサ装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁気センサ素子と、電子部品が搭載された回路基板とを同じケースによって保持するにあたって、磁気センサ素子と基板との間にシールド部材を配置している。このようにすると、回路基板に搭載された電子部品からの磁気的影響をシールド部材によって低減させることができる。従って、磁気センサ素子による位置検出の精度が低下することを抑制できる。また、回路基板の側から見た場合に、シールド部材の外形の内側に磁気センサ素子が位置するので、回路基板が配置される側からの磁気的影響を少なくすることができる。さらに、シールド部材の外周縁の少なくとも1辺が磁気センサ素子の側へ屈曲しているので、磁気センサ素子の外周側からの磁気的影響を低減させることができる。また、配線部材を容易に引き回すことができ、配線スペースを少なくことができるとともに、回路基板が配置される側からの磁気的影響を少なくすることができる。さらに、シールド部材の位置決めを容易に行うことができるので、シールド部材の取り付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用した位置検出装置の斜視図である。
【
図2】磁気センサ装置を磁気スケールと対向する対向面の側から見た分解斜視図である。
【
図3】磁気センサ装置の断面図(
図1のA-A位置の断面図)である。
【
図4】磁気センサ装置の断面図(
図1のB-B位置の断面図)である。
【
図7】磁気センサ装置の組立方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置および位置検出装置の実施形態を説明する。
【0022】
(位置検出装置)
図1は、本発明を適用した位置検出装置の実施形態である磁気式エンコーダ装置1の斜視図である。磁気式エンコーダ装置(位置検出装置)1は、磁気スケール2と、磁気スケール2を読み取る磁気センサ装置3を備える。磁気スケール2は、磁気スケール2と磁気センサ装置3の相対移動方向である第1方向Xに延びる磁気トラック4を備える。磁気トラック4には、N極とS極が所定ピッチで交互に直線状に並んでいる。磁気式エンコーダ装置1は、磁気スケール2および磁気センサ装置3の一方が固定体側に配置され、他方が移動体側に配置される。
【0023】
磁気センサ装置3は、磁気スケール2に対して相対移動する際に、磁気スケール2の表面に形成された磁界の変化を検出して、磁気スケール2または磁気センサ装置3の絶対位置を出力する。以下の説明では、第1方向Xと直交する方向を第2方向Yとし、第1方向Xおよび第2方向Yと直交する方向を第3方向Zとする。また、第1方向Xの一方側と他方側をそれぞれX1方向、X2方向とし、第2方向Yの一方側と他方側をそれぞれY1方向、Y2方向とし、第3方向Zの一方側と他方側をそれぞれZ1方向、Z2方向とする。第3方向Zは、磁気スケール2と磁気センサ装置3が対向する方向である。Z1方向は磁気センサ装置3が配置される側であり、Z2方向は磁気スケール2が配置される側である。
【0024】
(磁気センサ装置)
磁気センサ装置3は、非磁性材料からなる第1ケース6および第2ケース7と、第1ケース6から延びたケーブル8を備える。第1ケース6および第2ケース7は、磁気センサ
装置3のケースを構成する。本形態では、第1ケース6は第1方向Xを長手方向とする略直方体状であり、第2ケース7は板状である。第2ケース7は、第1ケース6の内部に形成される凹部空間をZ1方向から塞ぐように取り付けられる。
図1に示すように、ケーブル8は、第1ケース6のX1方向の側面に取り付けられたケーブル保持部材80によって保持されて、第1ケース6からX1方向に引き出されている。
【0025】
図2は磁気センサ装置3を磁気スケール2と対向する対向面9の側(Z2方向)から見た分解斜視図であり、磁気センサ10およびアルミシート13を第1ケース6から分離した状態を示す。第1ケース6は、磁気スケール2と第3方向Zで対向する対向面9を備える。磁気センサ10は対向面9に取り付けられ、シールド部材であるアルミシート13によって覆われている。磁気センサ10は、シリコン基板やセラミックグレース基板などのセンサ基板11と、センサ基板11のZ1方向の表面に形成された磁気抵抗素子12を備える。
【0026】
図2に示すように、第1ケース6の対向面9には開口部90が形成されている。開口部90は、第1方向Xで対向する開口縁である縁部90X1、90X2と、第2方向Yで対向する開口縁である縁部90Y1、90Y2を備えており、第1方向Xで対向する縁部90X1、90X2には、開口部90の内側に向かって突出するセンサ支持部91、92が形成されている。また、第1ケース6の対向面9には、開口部90の外周側に、開口部90より一回り大きい矩形枠状の突出部93が形成されている。対向面9において、突出部93と開口部90との間の領域は、突出部93の上端面(先端面)よりZ1方向に一段凹んだ段面94となっている。また、開口部90の内側に突出するセンサ支持部91、92のZ2方向の面は、開口部90の外周側の段面94よりも更に一段Z1方向に凹んだ位置に設けられている。
【0027】
磁気センサ10は、磁気抵抗素子12が形成された面をZ1方向に向けて開口部90の内側に配置され、センサ支持部91、92にZ2方向から固定される。センサ支持部91、92に対する磁気センサ10の固定は接着剤により行われる。また、センサ基板11は、開口部90のY2方向の縁部90Y2からY1方向に突出する位置決め部95の先端面に当接することによって、第2方向Yに位置決めされて固定される。アルミシート13は、突出部93の内周側に配置され、磁気センサ10および段面94を覆うように取り付けられている。第1ケース6の対向面9において、Z2方向に最も突出した部位は、突出部93の先端面である。磁気センサ装置3を磁気スケール2に組み付けると、磁気抵抗素子12と磁気スケール2は所定の隙間を介して対向する。
【0028】
図3、
図4は磁気センサ装置3の断面図である。
図3は
図1のA-A位置の断面図であり、
図4は
図1のB-B位置の断面図である。また、
図5、
図6は磁気センサ装置3の分解斜視図である。
図5はZ1方向から見た分解斜視図であり、
図6はZ2方向から見た分解斜視図である。第1ケース6は、Z2方向を向く対向面9を備えた矩形の底板部61と、底板部61の外周縁からZ1方向へ立ち上がる壁部62を備えており、開口部90は、底板部61に形成されている。壁部62には、X1方向の側面に切欠きが形成され、ケーブル保持部材80が取り付けられている。第2ケース7は、壁部62のZ2方向の端部に固定される。
図1に示すように、第2ケース7は、対角位置となる2箇所が、壁部62のX1方向とY1方向の間の角部、および、X2方向とY2方向の間の角部に設けられた固定穴621(
図5参照)にねじ止めされる。
【0029】
磁気センサ装置3では、第1ケース6と第2ケース7の間にシールド部材20、第1回路基板31、および第2回路基板32がこの順で第3方向Zに重なった状態で収容される。シールド部材20は第1ケース6の底板部61に対してZ1方向から固定される。
図3、
図4に示すように、第1回路基板31はシールド部材20に対してZ1方向から重なる
ように配置され、第2回路基板32は第1回路基板31に対してZ1方向から重なるように配置される。また、第1回路基板31とシールド部材20の間に第1フレキシブルプリント基板40が配置され、第1回路基板31と第2回路基板32の間には第2フレキシブルプリント基板50が配置される。
【0030】
図4、
図5に示すように、第1ケース6には、X1方向の側面の内側に第1段部63が形成され、X2方向の側面の内側に第1段部64が形成されている。第1段部63、64は、底板部61よりZ1方向に一段高くなっている。また、第1ケース6には、第1段部63、64のY1方向側に第2段部65、66が形成されている(
図5、
図7参照)。第2段部65、66は、第1段部63、64よりZ1方向に一段高くなっている。
図5、
図6に示すように、第1回路基板31には、X1方向の縁部の略中央からX1方向に突出する固定部311、および、X2方向の縁部の略中央からX2方向に突出する固定部312が形成されている。また、第2回路基板32には、X1方向の縁部から突出する固定部321、および、X2方向の縁部から突出する固定部322が形成されている。第1回路基板31は、固定部311、312を第1段部63、64にZ1方向から当接させてねじ止めすることによって第1ケース6に固定される。また、第2回路基板32は、固定部321、322を第2段部65、66にZ1方向から当接させてねじ止めすることによって第1ケース6に固定される。第1回路基板31と第2回路基板32は、第1段部63、64および第2段部65、66によって第3方向Zに位置決めされる。
【0031】
第1フレキシブルプリント基板40は、第1回路基板31と磁気センサ10とを接続する配線部材である。
図3に示すように、第1フレキシブルプリント基板40は、第1回路基板31とシールド部材20の間で第2方向Yに延在する第1部分41と、第1部分41のY1方向の端部からY2方向へ折り返されて第1部分41のZ2方向側に重なる第2部分42と、第2部分42からZ2方向側に折り曲げられてシールド部材20に形成された貫通部21を通って第1ケース6の底板部61に形成された開口部90へ引き出される第3部分43を備える。
図5、
図6に示すように、第1部分41には、第1回路基板31と接続される幅広の端子部44が形成されている。また、第3部分43のZ2方向の端部は、開口部90のY1方向の縁部90Y1とセンサ支持部91、92との隙間を通って磁気センサ10のセンサ基板11に固定される端子部45が形成されている。
【0032】
第2フレキシブルプリント基板50は、第1回路基板31と第2回路基板32を接続する配線部材である。
図3に示すように、第2フレキシブルプリント基板50は、第2方向Yに延在する第1部分51と、第1部分51のY2方向の端部からY1方向へ折り返されて第1部分51のZ1方向側に重なる第2部分52を備える。第1部分51のY1方向の端部は第1回路基板31に接続され、第2部分52のY1方向の端部は第2回路基板32に接続される。
【0033】
第1回路基板31には、磁気センサ10の磁気抵抗素子12から出力されるアナログ信号が入力される信号処理回路が設けられており、アナログ信号を増幅する回路を構成するオペアンプや抵抗などの回路素子が搭載されている。第2回路基板32には、第1回路基板31から出力される信号を処理する信号処理回路、上位装置との通信を行うための通信回路、電源回路などが搭載されている。本形態では、磁気スケール2にアブソリュートパターンを形成したアブソリュートトラックとインクリメンタルパターンを形成したインクリメンタルトラックが設けられており、磁気センサ10は、磁気抵抗素子12として、アブソリュートパターンを読み取って信号を出力する磁気抵抗素子、および、インクリメンタルパターンを読み取って信号を出力する磁気抵抗素子を備えている。従って、第1回路基板31には、これら複数の磁気抵抗素子のアナログ信号を増幅するため、多くの回路素子が搭載されている。第2回路基板32の信号処理回路では、アブソリュートパターンを読み取った信号、および、インクリメンタルパターンを読み取った信号からアブソリュー
ト値およびインクリメンタル値を求め、磁気スケール2または磁気センサ装置3の絶対位置を求める処理が行われる。
【0034】
(シールド部材)
本形態では、第1ケース6の底部にシールド部材20が配置され、第1回路基板31および第2回路基板32は、シールド部材20のZ1方向に配置される。これにより、シールド部材20は、第1ケース6の対向面9に取り付けられた磁気センサ10と、第1回路基板31との間に配置されるので、磁気センサ10は、シールド部材20によって第1回路基板31および第2回路基板32から遮蔽される。シールド部材20は金属板であり、本形態では、パーマロイが用いられている。
図5、
図6に示すように、シールド部材20は、第1方向Xに長い長方形の板状部22と、板状部22の外周縁に形成された枠状の縁部23を備えている。縁部23は、板状部22の4辺を磁気センサ10の側(Z2方向)へ屈曲させた形状となっている。
【0035】
図4に示すように、シールド部材20は、板状部22の第1方向Xの幅が磁気センサ10の第1方向Xの幅より大きく、縁部23は、板状部22の第1方向Xの両側の端部から磁気センサ10の第1方向Xの両側に向かって延びている。また、
図3に示すように、シールド部材20は、板状部22の第2方向Yの幅が磁気センサ10の第2方向Yの幅より大きく、縁部23は、板状部22の第2方向Yの両側の端部から磁気センサ10の第2方向Yの両側に向かって延びている。つまり、シールド部材20は、第3方向Zから見た外形が磁気センサ10の外形より大きく、Z1方向から見てシールド部材20の外形の内側に磁気センサ10が配置されている。板状部22には、上述した第1フレキシブルプリント基板40の第3部分43と通すための貫通部21が形成されている。貫通部21は第1方向Xに延在するスリット状に形成されており、板状部22のY1方向寄りの位置で第1方向Xに延在する。
【0036】
第1ケース6の底板部61は、磁気スケール2が配置される側(Z2方向)を向く対向面9を備えると共に、Z1方向を向く平坦な底面67を備える。磁気センサ10は、対向面9の側から底板部61に固定される。一方、シールド部材20は、底面67の側から底板部61に固定される。底面67の外周側には、壁部62の内面に沿って矩形状に延在する溝部68が形成されている。溝部68には、シールド部材20の縁部23が挿入される。また、底面67における4箇所の角部には、Z1方向へ突出する固定用凸部69が形成されている。シールド部材20は、板状部22が固定用凸部69にZ1方向から当接するように配置され、接着剤によって固定用凸部69の先端面に固定される。
【0037】
図5に示すように、底板部61には、開口部90と、開口部90の外周側において底面67から磁気スケール2とは反対側(Z1方向)へ突出する位置決め用凸部70が形成されている。位置決め用凸部70は、開口部90のY1方向の端部のX1方向側、および、X2方向側の2箇所に形成されている。位置決め用凸部70は、シールド部材20を第1ケース6の底部に固定する際に、シールド部材20の貫通部21に挿入される。
【0038】
図7は磁気センサ装置3の組立方法を示す説明図である。
図7(a)は第2ケース7、第2回路基板32、第2フレキシブルプリント基板50、第1回路基板31、第1フレキシブルプリント基板40、およびシールド部材20を取り外した磁気センサ装置3の斜視図である。また、
図7(b)は
図7(a)に対してシールド部材20を組み付けた状態を示し、
図7(c)は、
図7(b)に対して更に第1フレキシブルプリント基板40を組み付けた状態を示す。
図7(a)に示すように、磁気センサ10は、開口部90に設けられたセンサ支持部91、92に対してZ2方向から接着固定される。また、磁気センサ10は、開口部90のY2方向の縁部90Y2に設けられた位置決め部95に当接することによって第2方向Yに位置決めされる。
【0039】
シールド部材20を第1ケース6に固定する際は、固定用凸部69の先端面に接着剤を塗布してから、第1ケース6の底部にシールド部材20を配置する。その際、
図7(b)に示すように、開口部90の第1方向Xの両側に形成された位置決め用凸部70をシールド部材20の貫通部21に挿入すると共に、シールド部材20の縁部23を溝部68に挿入する。そして、貫通部21のY2方向の縁に位置決め用凸部70を当接させて、シールド部材20を第2方向Yで位置決めする。これにより、シールド部材20の貫通部21と開口部90のY1方向の端部とが第3方向Zに重なった状態が形成される。
図7(c)に示すように、第1フレキシブルプリント基板40は、貫通部21と開口部90とが重なった隙間を通って磁気センサ10に接続される。
【0040】
図5、
図6に示すように、シールド部材20には、帯状の導電部材24の一端が固定される。導電部材24は金属製の板バネである。シールド部材20を第1ケース6に固定する際、
図7(b)に示すように、導電部材24の他端は、固定ねじ25によって第1ケース6の第1段部64にねじ止めされる。第1段部64には、第1回路基板31をねじ止めするためのねじ孔のY2方向側に、導電部材24をねじ止めするためのねじ孔が形成されている。導電部材24を第1段部63にねじ止めすると、シールド部材20は、導電部材24および固定ねじ25を介して、第1ケース6と電気的に接続される。これにより、シールド部材20を確実に第1ケース6と同電位にすることができる。従って、第1ケース6を接地することにより、第1ケース6を介してシールド部材20を確実に接地することができる。
【0041】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の磁気式エンコーダ装置1は、磁気抵抗素子12(磁気センサ素子)を備えた磁気センサ10を保持する第1ケース6に、磁気センサ10の信号を処理する電子部品が搭載された第1回路基板31および第2回路基板32を収容して、磁気抵抗素子12および信号処理回路を備えた磁気センサ装置3を構成している。このように、磁界の変化を検出するセンサユニットに信号処理回路を組み込んだ磁気センサ装置3を構成するにあたって、本形態では、磁気抵抗素子12が搭載されたセンサ基板11と、電子部品が搭載された第1回路基板31および第2回路基板32との間にシールド部材20を配置する。これにより、第1回路基板31および第2回路基板32に搭載された電子部品からの磁気的影響をシールド部材20によって低減させることができる。特に、本形態では、センサ基板11に近い側に配置された第1回路基板31にオペアンプや抵抗などの電子部品が多数搭載されているので、これらの電子部品からの磁気的影響をシールド部材20によって低減させることができる。従って、磁気スケール2に対して相対移動する磁気センサ装置3に磁気抵抗素子12だけでなく信号処理回路を搭載した構成においても、信号処理回路を構成する電子部品からの磁気的影響によって磁気抵抗素子12による位置検出の精度が低下することを抑制できる。
【0042】
本形態では、第1回路基板31および第2回路基板32の側、すなわち、Z1方向からシールド部材20および磁気センサ10を見た場合に、磁気抵抗素子12が形成されたセンサ基板11の外形よりシールド部材20の外形の方が大きくなっている。従って、Z1方向からの磁気的影響を低減させることができ、第1回路基板31および第2回路基板32に搭載された電子部品からの磁気的影響を低減させることができる。また、本形態では、シールド部材20の外周縁の全周が磁気センサ10の側へ屈曲して縁部23が形成されている。従って、磁気センサ10の外周側、すなわち、磁気センサ10の第1方向Xの両側、および、第2方向Yの両側からの磁気的影響を低減させることができる。なお、本形態では、シールド部材20の板状部22の外周縁の全周がZ2方向へ屈曲しているが、縁部23が形成されているのは、板状部22の外周縁の一部であってもよい。例えば、板状部22の外周縁の少なくとも1辺がZ2方向へ屈曲している構成であってもよい。
【0043】
本形態のシールド部材20は、磁気センサ10に接続される第1フレキシブルプリント基板40を通す貫通部21を備えている。従って、シールド部材2のZ1方向に配置された第1回路基板31とシールド部材2のZ2方向に配置された磁気センサ10とを接続する第1フレキシブルプリント基板40を容易に引き回すことができ、配線スペースを削減することができる。また、貫通部21は直線状に延在するスリット状の孔であるため、第1フレキシブルプリント基板40を通すのに適している。更に、切欠きでなく貫通部21(孔)を形成しているので、切欠きを形成した場合と比較して、第1回路基板31および第2回路基板32が配置される側からの磁気的影響を少なくすることができる。
【0044】
本形態では、第1ケース6の底板部61に開口部90が形成され、開口部90の第1方向Xの両側には、Z1方向(すなわち、磁気スケール2と反対側)へ突出する位置決め用凸部70が形成されている。従って、底板部61に対して磁気センサ10とは反対側にシールド部材20を取り付ける際に、位置決め用凸部70をシールド部材20の貫通部21に挿入してシールド部材20を位置決めすることができる。これにより、貫通部21と開口部90とが重なるようにシールド部材20を位置決めすることができ、貫通部21と開口部90とが重なった箇所に第1フレキシブルプリント基板40を通して磁気センサ10に接続することができる。従って、シールド部材20を取り付ける際にその位置決めを容易に行うことができ、第1フレキシブルプリント基板40を容易に引き回すことができる。
【0045】
本形態のシールド部材20は、接着剤により、底板部61に形成された固定用凸部69に固定される。従って、ねじなどの固定部材を使用する必要がないので、部品点数を削減することができる。また、シールド部材20および第1ケース6に固定孔等の固定構造を設ける必要がないので、シールド部材20および第1ケース6の形状を単純化することができる。
【0046】
本形態の第1ケース6は、磁気センサ10が固定される対向面9に形成された開口部90と、開口部90の縁における対向する2箇所から開口部90の内側へ突出する2箇所のセンサ支持部91、92と、を備えており、磁気センサ10のセンサ基板11は、2箇所のセンサ支持部91、92に固定されている。このような固定構造は、第1ケース6を介してセンサ基板11に応力が加わることを抑制できる。従って、センサ基板11の変形を抑制でき、センサ基板11の変形による位置検出精度の低下を抑制できる。
【0047】
本形態では、シールド部材20に導電部材24が取り付けられ、導電部材24は、シールド部材20を第1ケース6に固定する際、第1ケース6の第1段部63に固定ねじ25によってねじ止めされる。これにより、シールド部材20は、導電部材24を介して第1ケース6と電気的に接続されるので、第1ケース6を介して、シールド部材20を確実に接地電位にすることができる。よって、シールド部材20に外部からの電気的ノイズがのるおそれが少ないので、磁気センサ10に搭載される磁気抵抗素子12や、第1回路基板31および第2回路基板32に搭載される電子部品に対する電気的ノイズの影響を抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1…磁気式エンコーダ装置、2…磁気スケール、3…磁気センサ装置、4…磁気トラック、6…第1ケース、7…第2ケース、8…ケーブル、9…対向面、10…磁気センサ、11…センサ基板、12…磁気抵抗素子、13…アルミシート、20…シールド部材、21…貫通部、22…板状部、23…縁部、24…導電部材、25…固定ねじ、31…第1回路基板、32…第2回路基板、40…第1フレキシブルプリント基板、41…第1部分、42…第2部分、43…第3部分、44、45…端子部、50…第2フレキシブルプリン
ト基板、51…第1部分、52…第2部分、61…底板部、62…壁部、63、64…第1段部、65、66…第2段部、67…底面、68…溝部、69…固定用凸部、70…位置決め用凸部、80…ケーブル保持部材、90X1、90X2、90Y1、90Y2…縁部、90…開口部、91、92…センサ支持部、93…突出部、94…段面、95…位置決め部、311、312…固定部、321、322…固定部、621…固定穴、X…第1方向、Y…第2方向、Z…第3方向