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特許7158868錯体化合物を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】錯体化合物を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C09B 45/14 20060101AFI20221017BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221017BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C09B45/14 C CSP
G02B5/20 101
C09B67/20 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018044230
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019156944
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 志泳
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-293168(JP,A)
【文献】英国特許第00922403(GB,B)
【文献】米国特許第03072454(US,A)
【文献】Yamase, Iroh; Tanaka, Takehiko; Kuroki, Nobuhiko; Konishi, Kenzo,Reactive dyes. XVII. Reactivities of reactive dyes containing a triazine ring,Kogyo Kagaku Zasshi ,1964年,67(1),,110-14
【文献】McArdell, Judy E. C.; Atkinson, Tony; Bruton, Chris J.,The interaction of tryptophanyl-tRNA synthetase with the triazine dye Brown MX-5BR,European Journal of Biochemistry,1982年,125(2),361-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ染料と金属との下記一般式(1)で表される錯体化合物であって、
前記一般式(1)において、アゾ染料が、下記一般式(9)~(11)で表されるアゾ染料である錯体化合物。
【化1】
[式中、Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基を表す。
R1~R2は、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表し、R1とR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
nおよびmは1または2であり、
nおよびmが2のとき、それぞれは異なる基であってもよいとする。
X1、X2、X3は、それぞれ独立に、アミノ基、エーテル基、スルホニル基、スルホキシド基、エステル基、アミド基、ウレア基、チオエーテル基、チオエステル基、チオアミド基、チオウレア基、ウレタン基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、カルバモイル基を表す。
Mは、陽金属イオンを表す。qは1~4の整数を表す。]
【化2】
【化3】
【化4】
[式中、R1、R2、n及びm、X1、X2、X3は、前記一般式(1)に記載するものとする。
R10~R13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、―SO
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基を表す。
aは1~4の整数を、b~dは1~6の整数を表し、
a~dが2以上のとき、それぞれは異なる基であってもよいとする。]
【請求項2】
溶媒に粉末を添加して溶解度を測定する際に、25℃±2℃におけるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)への溶解度が5重量%以上である、請求項に記載の錯体化合物。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の錯体化合物を含有する着色組成物。
【請求項4】
請求項に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項5】
請求項に記載のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ染料と金属との錯体化合物、その錯体化合物を含有する着色組成物、該着色組成物を用いたカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いたカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置に、カラーフィルターが用いられることがある。カラーフィルターは、ガラスなどの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより着色層を積層することによって製造される。着色層に用いる着色剤は、顔料と染料とに大きく分けられるが、一般的に耐熱性および耐光性に優れるとされる顔料が広く用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。しかし、顔料は一般的に溶剤に不溶な性質があり、樹脂などを含むカラーフィルター中では微粒子状で存在しているため、顔料を用いたカラーフィルターは、フィルター中の顔料粒子表面で透過光が反射・散乱することにより、透明性や色純度に影響し、また、反射による消偏作用があるためにカラー液晶表示装置のコントラスト比が低下することが知られている。
【0003】
このようなコントラスト比の低下の問題を改善するため、着色剤として染料のみを用いる方法または染料と顔料を併用する方法などが提案されている。染料は溶剤に可溶であるため、染料を使用したカラーフィルターは、顔料のみを着色剤として使用した場合に比べ消偏作用が抑えられ、分光特性に優れている。カラーフィルターに用いる染料としては、優れた発色性、耐熱性および耐光性を有する点から、キサンテン系染料などが知られている(例えば、特許文献4~8参照)。特許文献4に記載したC.I.アシッドレッド289やC.I.アシッドレッド52などのキサンテン系染料をアゾピリドン系染料と併用することにより、優れた赤色色調が得られることが開示されている。ここで、C.I.とはカラーインデックスを意味する。
【0004】
また、これらのキサンテン系染料またはその誘導体をフタロシアニン系色素と併用することにより、コントラスト比および色純度の高い青色のカラーフィルターを作製できることが知られている(例えば、特許文献6、7参照)。このような染料と顔料を併用したカラーフィルターは、色の異なる両者が混在して凝集体を形成することにより、光励起された染料分子と近傍の顔料分子の間で直ちに電荷移動が起こるため、酸化分解を互いに抑制する効果もあると考えられ、染料を単独使用で作製したカラーフィルターに比べて、発色性の維持および耐光性の向上が可能である。
【0005】
染料の一種類であるアゾ染料は、色の種類が豊富であり、且つ原料の入手しやすさや、製造工程が簡単であるため、染料としてよく使われている。しかしながら、従来のアゾ染料色素は、水やメタノールなどのアルコールへの溶解性はある程度確保できるものであるが(特許文献9)、カラーフィルターを製造する際に用いられる有機溶剤への溶解性が不十分であり、さらなる溶解性の向上が望まれている(特許文献10)。特に、分子量増による効果や、電子的な安定性の効果により耐熱性や発色性を向上させる目的で合成したアゾ染料錯体は、有機溶剤への溶解性が低いため改良が求められている。
【0006】
また、塩化シアヌルは、反応性染料や顔料の分散性向上に用いられる化合物である(特許文献11~14)。特許文献14には、有機色素と塩化シアルとの反応物が示されているが、顔料粒子をビヒクル中に安定した状態で混合分散させることを目的としており、ビヒクル中に溶解させることには言及されていない。言い換えれば、有機色素と塩化シアルとの反応物を染料という観点からの示唆や開示がいまだにない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-220520号公報
【文献】特公表2007-533802号公報
【文献】特開2012-12498号公報
【文献】特開2002-265834号公報
【文献】特開2012-207224号公報
【文献】特開2010-254964号公報
【文献】特開2014-12814号公報
【文献】特開2014-59538号公報
【文献】特許3927001号公報
【文献】特開2013-040240号公報
【文献】特許4250777号公報
【文献】特許4446339号公報
【文献】特開2017-197719号公報
【文献】特許5705754号公報
【文献】特開平10-36692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、カラーフィルターの製造において一般的に用いられているプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などの有機溶媒への良好な溶解性を持ち、優れた耐熱性をも併せ持つ新規なアゾ染料錯体化合物を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、カラーフィルターの製造工程において、良好な溶解性または分散性を示すために必要な固体(粉末など)の状態を有する新規なアゾ染料錯体化合物を含有する着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤、および該カラーフィルター用着色剤を用いた、発色性(色域、輝度、コントラスト比など)に優れたカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アゾ染料と金属との錯体化合物が、顔料より透明性に優れた染料として、耐熱性を維持しつつ、PGMEなどの有機溶媒に対する良好な溶解性を持たせることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
更に、本発明者らは、アゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤に含有させ、カラーフィルター用着色剤として、カラーフィルターの検討を行い、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果から得られた、以下を要旨とするものである。
【0013】
本発明は、アゾ染料と金属との下記一般式(1)で表される錯体化合物である。
【0014】
【化1】
(1)
【0015】
一般式(1)中、Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基を表す。
R1~R2は、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表し、R1とR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
nおよびmは1または2であり、nおよびmが2のとき、それぞれは異なる基であってもよいとする。
X1、X2、X3は、それぞれ独立に、アミノ基、エーテル基、スルホニル基、スルホキシド基、エステル基、アミド基、ウレア基、チオエーテル基、チオエステル基、チオアミド基、チオウレア基、ウレタン基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、カルバモイル基を表す。
Mは、陽金属イオンを表す。qは1~4の整数を表す。
【0016】
また本発明は、前記一般式(1)において、Mが、ニッケルイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、クロムイオン、鉄イオン、銅イオン、アルミニウムイオンである錯体化合物である。
【0017】
本発明は、前記一般式(1)において、X1、X2、X3がそれぞれ独立にアミノ基ないしエーテル基である錯体化合物である。
【0018】
本発明は、前記一般式(1)において、Ar1、Ar2がそれぞれ独立に、一般式(2)~(8)で表される複素芳香環基の一つを含むアゾ染料と金属との錯体化合物である。
【0019】
【化2】
(2)
【0020】
【化3】
(3)
【0021】
【化4】
(4)
【0022】
【化5】
(5)
【0023】
【化6】
(6)
【0024】
【化7】
(7)
【0025】
【化8】
(8)
【0026】
一般式(2)~(8)の中、R3~R9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、―SO
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基を表す。
【0027】
更に、本発明は前記一般式(1)において、アゾ染料が、一般式(9)~(11)で表されるアゾ染料である前記の錯体化合物である。
【0028】
【化9】
(9)
【0029】
【化10】
(10)
【0030】
【化11】
(11)
【0031】
一般式(9)~(11)の中、R1、R2、n及びm、X1、X2、X3は、前記一般式(1)に記載するものとする。
R10~R13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、―SO
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基を表す。
aは1~4の整数を、b~dは1~6の整数を表し、
a~dが2以上のとき、それぞれは異なる基であってもよいとする。
【0032】
更に本発明は、溶媒に粉末を添加して溶解度を測定する際に、25℃±2℃におけるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)への溶解度が5重量%以上である前記の錯体化合物である。
【0033】
本発明または前記の錯体化合物を含有する着色組成物である。
【0034】
本発明または前記の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤である。
【0035】
本発明または前記のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルターである。
【発明の効果】
【0036】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物は、PGMEなどの有機溶媒への溶解性が高く、かつ耐熱性に優れているため、当該錯体化合物を含有する着色組成物はカラーフィルターの製造工程において、良好な溶解性または分散性を示すために必要な固体(粉末など)の状態を有するので、カラーフィルターに用いる着色剤として好適である。従って、当該着色剤を用いて得たカラーフィルターは、発色性(色域、輝度、コントラスト比など)に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0038】
一般式(1)で表されるアゾ染料と金属との錯体化合物には、下記一般式(12)で表されるアゾ染料が含まれる。まず、一般式(12)で表されるアゾ染料について説明する。
【0039】
【化12】
(12)
【0040】
一般式(12)中、Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していてよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基を表す。R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表し、R1とR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。nおよびmは1または2である。X1、X2、X3は、それぞれ独立に、アミノ基、エーテル基、スルホニル基、スルホキシド基、エステル基、アミド基、ウレア基、チオエーテル基、チオエステル基、チオアミド基、チオウレア基、ウレタン基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、カルバモイル基を表す。
【0041】
一般式(12)において、Ar1、Ar2で表される、「置換基を有していてよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基」における「置換基」としては、具体的に、水酸基、アミノ基、エーテル基、スルホニル基、スルホキシド基、エステル基、アミド基、ウレア基、チオエーテル基、チオエステル基、チオアミド基;チオウレア基、ウレタン基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、カルバモイル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~19のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~19の直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~19の分岐状のアルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~19の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0042】
一般式(12)において、Ar1、Ar2で表される、「置換基を有していてよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基」における「炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の単独または複数種からなる原子数3~20の芳香族炭化水素基、複素芳香環基」としては、具体的に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~19の複素芳香環基、などをあげることができる。
【0043】
一般式(12)において、Ar1、Ar2で表される、好ましい化合物の具体例を以下の式(A-1)~(A-21)に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0044】
【化13】
(A-1)
【0045】
【化14】
(A-2)
【0046】
【化15】
(A-3)
【0047】
【化16】
(A-4)
【0048】
【化17】
(A-5)
【0049】
【化18】
(A-6)
【0050】
【化19】
(A-7)
【0051】
【化20】
(A-8)
【0052】
【化21】
(A-9)
【0053】
【化22】
(A-10)
【0054】
【化23】
(A-11)
【0055】
【化24】
(A-12)
【0056】
【化25】
(A-13)
【0057】
【化26】
(A-14)
【0058】
【化27】
(A-15)
【0059】
【化28】
(A-16)
【0060】
【化29】
(A-17)
【0061】
【化30】
(A-18)
【0062】
【化31】
(A-19)
【0063】
【化32】
(A-20)
【0064】
【化33】
(A-21)
【0065】
一般式(12)において、R1、R2で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの分岐状のアルキル基をあげることができる。
【0066】
一般式(12)において、R1、R2で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基をあげることができる。
【0067】
一般式(12)において、R1、R2で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、などをあげることができる。
【0068】
一般式(12)において、R1、R2で表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;―SO ;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~19のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~19の直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~19の分岐状のアルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~19の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0069】
一般式(12)において、R1、R2で表される、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;―SO ;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~14の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの炭素原子数3~14の分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~14のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~14の直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~14の分岐状のアルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~14のシクロアルコキシ基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~14の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~14の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~14の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0070】
一般式(12)において、R1、R2としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~12のシクロアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0071】
一般式(12)において、R1とR2の組み合わせは、同一でも異なっていてもよい。また、nおよびmは1または2である。nおよびmが2のとき、それぞれは異なる基であってもよいとする。
【0072】
一般式(12)において、R1とR2における隣り合う基同士は、互いに結合して環を形成していてもよく、それらの環は単結合、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子のいずれかの原子を介した結合によって環を形成していてもよい。また、その場合に形成される環としては、5員環または6員環が好ましい。
【0073】
一般式(12)で表される化合物は、例えば、下記反応式(1)のような方法により合成することができる。反応式(1)の合成において、5-アミノ-2-ナフトールと、塩化シアヌルとを出発原料に、ジイソプロピルエチルアミン化合物などの塩基化合物を用いて任意の溶媒中で反応させることで、中間体1が得られる。さらにこの中間体1と、ジブチルアミンなどのアミン化合物とを任意の溶媒中で反応させることで、中間体2が得られる。続いて、2-アミノベンゾチアゾールなどの芳香族アミンを定法によりジアゾ化し、中間体2とカプリング反応させることで、例示化合物(B-1)で表されるアゾ染料を得ることができる。
【0074】
(反応式1)
【0075】
一般式(12)で表されるアゾ染料の合成法において、析出するアゾ染料が強固に付着し撹拌の妨げとなる場合、それを解消あるいは緩和するために、有機溶媒を混合してもよい。混合する有機溶媒としては、対応するアゾ染料の十分な溶解性があれば特に制限されず、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などを、単独で、または混合して用いることができる。
【0076】
一般式(12)で表されるアゾ染料は、上記の合成方法で得られた生成物を必要に応じて、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による分散洗浄や再結晶、晶析、塩析などの公知の精製を行うことにより、得ることが出来る。これらの精製方法に用いる溶媒は特に限定されず、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類などを単独で、または混合して用いることができる。
【0077】
前記の合成方法で得られる一般式(12)で表される本発明のアゾ染料として好ましい化合物の具体例を以下の式(B-1)~(B-14)に例示するが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0078】
【化34】
(B-1)
【0079】
【化35】
(B-2)
【0080】
【化36】
(B-3)
【0081】
【化37】
(B-4)
【0082】
【化38】
(B-5)
【0083】
【化39】
(B-6)
【0084】
【化40】
(B-7)
【0085】
【化41】
(B-8)
【0086】
【化42】
(B-9)
【0087】
【化43】
(B-10)
【0088】
【化44】
(B-11)
【0089】
【化45】
(B-12)
【0090】
【化46】
(B-13)
【0091】
【化47】
(B-14)
【0092】
本発明の一般式(12)で表されるアゾ染料は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよく、アゾ染料全体に占める重量濃度比において、最も分子構造は小さい方の1種のアゾ染料錯体の重量濃度比は0.1~50重量%である。アゾ染料の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0093】
一般式(1)で表されるアゾ染料と金属との錯体化合物は、一般式(12)で表されるアゾ染料と、陽金属イオン「M」とを反応させて得られる(例えば、特許文献15)。「M」で表される陽金属イオンには、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、タングステンイオン、金イオンなどがあげられ、クロムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンが好ましく、ニッケルイオン、亜鉛イオンが特に好ましい。
【0094】
また、本発明の「M」で表される陽金属イオンは、前記の陽金属イオンの1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の陽金属イオンを組み合わせてアゾ染料と反応させて反応する場合、前記錯体化合物の混合物が得られる。
【0095】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する粉末は、溶媒分子、水分、本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物以外の分子構造の成分、その他の成分が含まれている場合がある。これらの粉末は、いずれもそのまま用いても良いが、精製処理を施したものが好ましい。しかしながら、どのような精製方法によっても、一定の割合の不純物は存在してしまう場合があるが、現在の技術水準において製造可能な染料であれば使用可能である。
【0096】
以下、本発明の一般式(1)で表される、アゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物について詳細に説明する。
【0097】
その他の成分として、本発明の着色組成物のカラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0098】
本発明の着色組成物の粉末の状態は、その形状は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することができる。本発明の着色組成物の形状は、通常、結晶状、微結晶状、微粉末状、フレーク状、針結晶状、顆粒状などの形状を有する固体の粉末の状態で用いられるが、特に限定されない。
【0099】
本発明の着色組成物の粉末の粒度分布、表面積、細孔径分布、粉体密度などを測定することによって、粉末の形状の全体的・平均的な情報がより詳細に得られる。例えば、粉末を分散した電解液の電気抵抗測定によるコールター法、粉末の分散液の吸光度測定によりストークス有効径を求める遠心沈降法、粉末の分散液の回折散乱パターン解析によるレーザ回折・散乱法、などを用いて測定することができる。本発明の着色組成物は、0.1μm~数mmの粒径の範囲にあるものが好ましいが、製造条件や乾燥後の粉末の回収方法により粒子の形状が変化するため、特定の粒径に限定されないが、高い溶解性のためには粒径がより小さいものが好ましく、粒径分布の中央値が、0.1~100μmの範囲にあるものが好ましい。
【0100】
本発明の着色組成物の熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)を行うことによって、粉末の分解開始温度を評価することができる。また、分解開始温度に相当する温度として、試料の加熱後に一定割合(%)重量減少した時点の温度を用いて評価しても良い。分解開始温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。カラーフィルターに応用する場合、分解開始温度は高いほど好ましい。
【0101】
本発明における着色組成物の粉末の溶解性は溶解度で表され、溶解度は、粉末状の着色組成物が特定の溶媒中に溶解することのできる最大量の着色組成物中の割合を表すものであり、例えば「重量%(溶媒名,温度)」などの単位で表される。溶解度は、例えば、試料を特定の溶媒に混合し、一定温度で一定時間、溶媒を撹拌し、調製した飽和溶液の濃度を測定することによって得られ、溶解部の液体クロマトグラフィー(LC)や吸光度測定などによる濃度測定によっても得られる。
【0102】
カラーフィルター用着色剤に含有される着色組成物は、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などがあげられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物は、PGMEやPGMEAへの溶解性に優れることが好ましく、PGMEAへの溶解性に優れることが特に好ましい。
【0103】
本発明における着色組成物の粉末の溶解度は、一定量の溶媒に溶け残るまで徐々に粉末を添加して測定する方法で、25℃±2℃でのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)への溶解濃度を測定することによって得たものである。
【0104】
本発明の着色組成物の粉末の分光特性(透過率、反射率)は、カラーフィルター用着色剤として色素を単独で使用する場合、または、他の色素と混合して使用する場合のどちらでも重要であり、カラーフィルターの色特性に直接影響する。測定方法は、溶液や分散液状態の吸収(または透過)スペクトルや、ガラスや透明樹脂基板に塗布した薄膜の吸収(または透過)スペクトルを測定する方法がある。また、粉末に直接に光照射し、粒子表面や粒子表面付近で反射・散乱した光を計測する方法がある。
【0105】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、一般式(1)で表されるアゾ染料と金属との錯体化合物、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0106】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0107】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤は、アゾ染料と金属との錯体化合物を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254などの赤色顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色染料、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー83などの黄色顔料などがあげられる。青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、キサンテン系、本発明に属さないアゾ系;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系の染料または顔料があげられる。
【0108】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、アゾ染料と金属との錯体化合物に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%とするのがより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%であるのがより好ましい。
【0109】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50重量%であるのがより好ましい。
【0110】
本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%であるのが好ましく、10~40重量%であるのがより好ましい。
【0111】
本発明に使用した具体的な測定方法・条件について、下記に説明する。
【0112】
可視吸収スペクトルの測定は、測定試料が0.02mmol/l濃度の溶液となるようにPGMEを用いて調整し、日本分光製V-650紫外可視分光光度計を使用して定法により300nmから750nmの紫外可視スペクトルを測定した。測定結果より最大吸収波長を読み取った。
【0113】
本発明において分解開始温度として、5%重量減少温度を測定する。具体的に、Bruker AXS製 TG-DTA2000SAを用いて、25℃から600℃まで10℃/分で昇温測定し、測定開始時より試料重量が5%減少した温度を読み取った。
【0114】
本発明における溶解度(PGME,25±2℃)の測定方法は、25℃±2℃の温度条件で、10ml容量の試験管にPGME1gを測り取り、そこへ測定試料を1mgずつ添加した。超音波を5分間かけた後、試料の溶け残りの有無を確認した。この操作を試料の溶け残りが確認されるまで繰り返した。試料の溶け残りがないところを溶解度として計算した。
【実施例
【0115】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、H-NMR分析(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECA-600)により行った。
【0116】
[合成例1]アゾ染料(例示化合物(B-1))の合成
300mlコルベンに塩化シアヌル(1g、5.2mmol)と、THF80mlとを加え攪拌しながら0℃まで冷却した。そこへ、ジイソプロピルエチルアミン(1.47g、11.3mmol)と、5-アミノ-2-ナフトール(0.8g、5.42mmol)を添加した。その後、室温下で3時間反応した。TLCで原料の消失を確認後、定量的に中間体1を得た。そこへ、ジオキサン 30ml、ジイソプロピルエチルアミン(3.15g, 24.4mmol)、ジブチルアミン(1.4g, 10.8mmol)を加えた。 80℃で12時間拌して反応させた。溶媒を留去後、カラムクロマトグラフィーで分離して、 中間体2を1.6g得た。(収率61.5%)
【0117】
ジアゾ液の調整は、硫酸(6ml)、酢酸(12ml),水(10ml)、チアゾール(0.5g、3.33mmol)を100mlコルベンに加えて攪拌、冷却(0℃)した。 そこへ亜硝酸ナトリウム(0.253g、3.66mmol)を添加し、2時間攪拌した。中間体2(1.6g、3.33mmol)を 水酸化ナトリウム水溶液(2.43g、22.9mmol)に溶かし0℃に冷却した。そこへ、調整したジアゾ液をゆっくりと添加して0~5℃温度を維持して1時間撹拌後、室温まで昇温し一夜撹拌した。 溶媒を留去後、固体をカラムクロマトグラフィーで分離して例示化合物(B-1)を0.7g(Y.35%)を得た。
【0118】
[合成例2]アゾ染料と金属との錯体化合物の合成
合成例1で得た例示化合物(B-1)(0.20g, 0.3mmol)をメタノール(10ml)に溶かし、酢酸ニッケル(II)4水和物(0.04g, 0.16mmol)を水(1ml)に溶かしたものを滴下した。すぐに液色が赤紫色へ変化した。1時間撹拌後 、減圧濃縮し、クロロホルムで抽出し、有機層を濃縮して例示化合物(B-1)のニッケル錯体として下記式(C-1)で示す錯体化合物0.15gを得た。
【0119】
【化48】
(C-1)
【0120】
[合成例3]アゾ染料と金属との錯体化合物の合成
合成例1で得た例示化合物(B-1)(0.30g, 0.46mmol)をメタノール(10ml)に溶かし、酢酸亜鉛(II)2水和物(0.05g, 0.23mmol)を水(1ml)に溶かしたものを滴下した。すぐに液色が赤紫色へ変化した。1時間撹拌後 、減圧濃縮し、クロロホルムで抽出し、有機層濃縮して例示化合物(B-1)の亜鉛錯体として下記式(C-2)で示す錯体化合物0.3gを得た。
【0121】
【化49】
(C-2)
【0122】
[実施例1~2]
合成例2、合成例3で得られた錯体化合物(C-1)および(C-2)について、前記の測定方法を用いて、可視吸収スペクトルの最大吸収波長、5%重量減少温度(分解開始温度)および溶解度(重量%、PGME,25±2℃)を測定した。それらの結果は表1に示す。
【0123】
[比較例1]
比較のために、合成例1で得られた例示化合物(B-1)について、実施例1と同様に、可視吸収スペクトルの最大吸収波長、5%重量減少温度(分解開始温度)および溶解度(重量%、PGME,25±2℃)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0124】
[比較例2]
比較のために、下記式(D-1)で表されるAcidRed88について、実施例1と同様に、可視吸収スペクトルの最大吸収波長、5%重量減少温度(分解開始温度)および溶解度(重量%、PGME,25±2℃)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0125】
【化50】
(D-1)
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように、本発明実施例のアゾ染料と金属との錯体化合物は、既存の染料(比較例2)に比べて、PGMEへの高い溶解性(5重量%)を有している。さらに、錯体化前の化合物(比較例1)と比べ、PGMEへの溶解性をほぼ維持しつつ、耐熱性(5%重量減少温度)の向上が図られている。また、最大吸収波長は560nm前後で、赤色もしくは青色のカラーフィルター用染料として適した波長を有している。従って、本発明のアゾ染料と金属との錯体化合物はPGME有機溶媒への溶解性が高く、かつ耐熱性に優れているため、当該錯体化合物を含有する着色組成物はカラーフィルターの製造工程において、良好な溶解性または分散性を示すために必要な固体(粉末など)の状態を有するので、カラーフィルターに用いる着色剤として好適である。従って、当該着色剤を用いて得たカラーフィルターは、発色性(色域、輝度、コントラスト比など)に優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係るアゾ染料と金属との錯体化合物は、カラーフィルター用色素として有用であり、着色組成物としてカラーフィルターに用いる着色剤として好適である。当該着色剤を用いて優れた発色性(色域、輝度、コントラスト比など)を有するカラーフィルターが得られる。