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特許7158877産業用ロボットおよび産業用ロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】産業用ロボットおよび産業用ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221017BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20221017BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J19/06
B25J15/08 U
B25J15/08 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018063458
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176029
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-200476(JP,A)
【文献】特開2002-025877(JP,A)
【文献】特開平11-006501(JP,A)
【文献】特開2013-151034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 19/06
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持して搬送する産業用ロボットにおいて、
第1把持部材と、
前記第1把持部材とともに前記ワークを把持する第2把持部材と、
前記第2把持部材を、前記第1把持部材との間に前記ワークを把持する把持位置よりも当該第1把持部材に接近した閉位置と、前記把持位置よりも前記第1把持部材から離間した開位置との間で移動可能に支持する把持部材支持機構と、
前記第2把持部材を移動させる駆動機構と、
前記駆動機構を駆動して、前記第2把持部材を前記開位置と前記閉位置との間で移動させる把持部材駆動制御部と、
前記第2把持部材が前記開位置と前記閉位置との間を移動する移動時間を計測する計測部と、
前記移動時間と予め定めた基準時間とを比較する監視部と、
前記第1把持部材、前記第2把持部材および前記把持部材支持機構を備えるハンドと、
前記ハンドを、前記ワークを把持するワーク把持位置と当該ワーク把持位置から離間した離間位置とを経由する第1ハンド移動経路に沿って移動させるハンド移動機構と、
前記ハンド移動機構を駆動して、前記ハンドを、前記離間位置および前記ワーク把持位置をこの順に経由させるハンド移動制御部と、を有し、
前記把持部材駆動制御部は、前記第1ハンド移動経路において前記ハンドが前記離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記閉位置から前記開位置に移動させて前記ワークが把持されていないことを確認する把持前未在荷確認動作を行い、
前記計測部は、前記把持前未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記第2把持部材が前記把持位置、前記開位置および前記閉位置にあることを検出する位置検出機構を備え、
前記計測部は、前記位置検出機構からの出力に基づいて前記移動時間を計測することを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ハンド移動機構は、前記ハンドを、把持している前記ワークを解放するワーク解放位置と当該ワーク解放位置から離間する第2の離間位置とを経由する第2ハンド移動経路
に沿って移動させ、
前記ハンド移動制御部は、前記ハンド移動機構を駆動して、前記ハンドを、前記ワーク解放位置および前記第2の離間位置をこの順に経由させ、
前記把持部材駆動制御部は、前記第2ハンド移動経路において前記ハンドが前記第2の離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記開位置から前記閉位置に移動させて前記ハンドに前記ワークが把持されていないことを確認する解放後未在荷確認動作を行い、
前記計測部は、前記解放後未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記移動時間を外部の機器に送信する送信部を備えることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記監視部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に異常が発生している旨を報知することを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記監視部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が前記閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に、前記ワークの搬送を停止させることを特徴とする請求項に記載の産業用ロボット。
【請求項7】
記憶部と、
異常レベル判定部と、を有し、
前記計測部は、前記移動時間を逐次に前記記憶部に記憶保持し、
前記異常レベル判定部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、前記記憶部を参照して所定期間における前記移動時間の変化量に基づいて、前記ワークの搬送を停止する必要があるか否かを判定することを特徴とする請求項1からのうちのいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【請求項8】
ワークを把持して搬送する産業用ロボットの制御方法において、
前記第1把持部材および前記第2把持部材を有するハンドを備えており、
第1把持部材とともに前記ワークを把持する第2把持部材を、前記第1把持部材との間に前記ワークを把持する把持位置よりも当該第1把持部材に接近した閉位置と、前記把持位置よりも前記第1把持部材から離間した開位置との間で移動させ、
前記第2把持部材が、前記開位置と前記閉位置との間を移動する移動時間を計測して、
前記移動時間と予め定めた基準時間とを比較し、
前記ハンドを、前記ワークを把持するワーク把持位置と当該ワーク把持位置から離間した離間位置とを経由する第1ハンド移動経路に沿って移動させて当該離間位置および当該ワーク把持位置をこの順に経由させ、
前記第1ハンド移動経路において前記ハンドが前記離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記閉位置から前記開位置に移動させて前記ワークが把持されていないことを確認する把持前未在荷確認動作を行い、
前記把持前未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【請求項9】
前記第2把持部材が前記把持位置、前記開位置および前記閉位置にあることを検出する位置検出機構を備えておき、
前記位置検出機構からの出力に基づいて前記移動時間を計測することを特徴とする請求項に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項10】
前記ハンドを、把持している前記ワークを解放するワーク解放位置と当該ワーク解放位
置から離間する第2の離間位置とを経由する第2ハンド移動経路に沿って移動させて当該ワーク解放位置および当該第2の離間位置をこの順に経由させ、
前記第2ハンド移動経路において前記ハンドが前記第2の離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記開位置から前記閉位置に移動させて前記ハンドに前記ワークが把持されていないことを確認する解放後未在荷確認動作を行い、
前記解放後未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする請求項8または9に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項11】
計測した前記移動時間を外部の機器に送信することを特徴とする請求項8から10のうちのいずれか一項に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項12】
前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に異常が発生している旨を報知することを特徴とする請求項8から11のうちのいずれか一項に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項13】
前記移動時間と前記基準時間との差分が前記閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に、前記ワークの搬送を停止することを特徴とする請求項12に記載の産業用ロボットの制御方法。
【請求項14】
計測した前記移動時間を逐次に記憶保持し、
前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、所定期間における前記移動時間の変化量に基づいて、前記ワークの搬送を停止する必要があるか否かを判断することを特徴とする請求項8から12のうちのいずれか一項に記載の産業用ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークを搬送する産業用ロボットおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造システムにおいて半導体ウエハを搬送する産業用ロボットは特許文献1に記載されている。同文献の産業用ロボットは、半導体ウエハを把持するハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されたアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備える。ハンドは、半導体ウエアを把持するための複数の把持部材を備える。
【0003】
特許文献2には、産業ロボットのハンドが記載されている。同文献のハンドは、当該ハンドに固定された2つの固定把持部材と、固定把持部材に対して接近する方向および離間する方向に移動して当該固定把持部材とともにワークを把持する移動把持部材とを備える。ハンドによってワークを保持する際には、固定把持部材と移動把持部材とがワークを間に挟む。すなわち、固定把持部材と移動把持部材とがワークを間に挟んだ両側からワークに当接する。移動把持部材は、固定把持部材とともにワークを挟む把持位置よりも固定把持部材に接近した閉位置と、把持位置よりも固定把持部材から離間した開位置との間で移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-35771号公報
【文献】特開2017-119326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動把持部材を移動させる駆動機構の駆動源としては、エアシリンダなどが用いられる。ここで、例えば、エアシリンダにエアーを供給する供給系などに不具合が発生すると、固定把持部材と移動把持部材とによってワークを把持することが困難となる場合がある。また、エアシリンダにエアーを供給する供給系などに不具合が発生すると、把持したワークをハンドから落下させてしまう可能性がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ワークを把持するための移動把持部材が正常に移動するか否かを判断できる産業用ロボット、およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ワークを把持して搬送する産業用ロボットにおいて、第1把持部材と、前記第1把持部材とともに前記ワークを把持する第2把持部材と、前記第2把持部材を、前記第1把持部材との間に前記ワークを把持する把持位置よりも当該第1把持部材に接近した閉位置と、前記把持位置よりも前記第1把持部材から離間した開位置との間で移動可能に支持する把持部材支持機構と、前記第2把持部材を移動させる駆動機構と、前記駆動機構を駆動して、前記第2把持部材を前記開位置と前記閉位置との間で移動させる把持部材駆動制御部と、前記第2把持部材が前記開位置と前記閉位置との間を移動する移動時間を計測する計測部と、前記移動時間と予め定めた基準時間とを比較する監視部と、前記第1把持部材、前記第2把持部材および前記把持部材支持機構を備えるハンドと、前記ハンドを、前記ワークを把持するワーク把持位置と当該ワーク把持位置から離間した離間位置とを経由する第1ハンド移動経路に沿って移動させるハンド移動機構と、前記ハンド移動機構を駆動して、前記ハンドを、前記離間位置および前記ワーク把持位置をこの順に経由させるハンド移動制御部と、を有し、前記把持部材駆動制御部は、前記第1ハンド移動経路において前記ハンドが前記離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記閉位置から前記開位置に移動させて前記ワークが把持されていないことを確認する把持前未在荷確認動作を行い、前記計測部は、前記把持前未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする。
【0008】
本発明では、ワークを把持するための第2把持部材が、開位置と閉位置との間を移動する移動時間を計測し、基準時間と比較する。従って、例えば、把持部材支持機構や駆動機構に不具合が発生していない場合の移動時間を基準時間として設定しておけば、第2把持部材が正常に移動しているか否かを判断できる。ここで、第2把持部材が開位置と閉位置との間を移動可能な状態は、第1把持部材と第2把持部材との間にワークを把持していない状態である。従って、移動時間を計測する際に、第2把持部材の移動を妨げるものはない。よって、基準時間を適切な値に設定することにより、把持部材支持機構や駆動機構に不具合が発生しているか否かを精度よく判断できる。また、ワークを搬送する産業用ロボットでは、ワークを把持する前に、ハンド上にワークが存在しないことを確認する把持前未在荷確認動作が行われる。従って、このような把持前未在荷確認動作において移動時間を計測すれば、移動時間を計測するためだけに第2把持部材を移動させなくて済む。よって、ワークを把持するまでのタクトタイムが長くなることを回避しながら、移動時間を計測できる。
【0009】
本発明において、前記駆動機構は、前記第2把持部材が前記把持位置、前記開位置および前記閉位置にあることを検出する位置検出機構を備え、前記計測部は、前記位置検出機構からの出力に基づいて前記移動時間を計測することが望ましい。このようにすれば、移動時間の計測が容易となる。
【0011】
本発明において、前記ハンド移動機構は、前記ハンドを、把持している前記ワークを解放するワーク解放位置と当該ワーク解放位置から離間する第2の離間位置とを経由する第2ハンド移動経路に沿って移動させ、前記ハンド移動制御部は、前記ハンド移動機構を駆動して、前記ハンドを、前記ワーク解放位置および前記第2の離間位置をこの順に経由させ、前記把持部材駆動制御部は、前記第2ハンド移動経路において前記ハンドが前記第2の離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記開位置から前記閉位置に移動させて前記ハンドに前記ワークが把持されていないことを確認する解放後未在荷確認動作を行い、前記計測部は、前記解放後未在荷確認動作において前記移動時間を計測することが望ましい。ワークを把持する産業用ロボットでは、把持したワークを解放した後に、ハンド上にワークが存在しないことを確認する解放後未在荷確認動作が行われる。従って、このような解放後未在荷確認動作において移動時間を計測すれば、移動時間を計測するためだけに第2把持部材を移動させなくて済む。
【0012】
本発明において、前記移動時間を外部の機器に送信する送信部を備えることが望ましい。このようにすれば、例えば、産業用ロボットが通信可能に接続されている上位装置に計測した移動時間を逐次に送信して、上位装置において、不具合の発生を検出するものとすることができる。
【0013】
本発明において、前記監視部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に異常が発生している旨を報知することが望ましい。このようにすれば、産業用ロボットを管理する管理者が、異常の発生を知ることができ、ワークの搬送を停止させるなどの操作を行うことができる。また、駆動機構の駆動源が、例えば、エアシリン
ダの場合には、エアシリンダに供給されるエアーの不具合や、産業用ロボットの異常や故障などを早期に発見し、対策や復旧をおこなうことができる。
【0014】
本発明において、前記監視部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が前記閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に、前記ワークの搬送を停止させることが望ましい。このようにすれば、ワークを落下させてしまうことを回避できる。
【0015】
本発明において、記憶部と、異常レベル判定部と、を有し、前記計測部は、前記移動時間を逐次に前記記憶部に記憶保持し、前記異常レベル判定部は、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、前記記憶部を参照して所定期間における前記移動時間の変化量に基づいて、前記ワークの搬送を停止する必要があるか否かを判定することが望ましい。このようにすれば、移動時間が基準時間を超えた場合に、ワークの搬送動作を一律に止めてしまうことを回避できる。例えば、経年によって移動時間が変動する場合などには、所定期間における移動時間の変化量は少ない。従って、このような場合には、ワークの搬送を停止する必要性は低い。この一方で、例えば、所定期間に移動時間が急激に増減した場合には、把持部材支持機構や駆動機構に突然の障害が発生している事態が想定される。よって、このような場合には、ワークの搬送を停止する必要があると判断できる。
【0016】
次に、本発明は、ワークを把持して搬送する産業用ロボットの制御方法において、前記第1把持部材および前記第2把持部材を有するハンドを備えており、第1把持部材とともに前記ワークを把持する第2把持部材を、前記第1把持部材との間に前記ワークを把持する把持位置よりも当該第1把持部材に接近した閉位置と、前記把持位置よりも前記第1把持部材から離間した開位置との間で移動させ、前記第2把持部材が、前記開位置と前記閉位置との間を移動する移動時間を計測して、前記移動時間と予め定めた基準時間とを比較し、前記ハンドを、前記ワークを把持するワーク把持位置と当該ワーク把持位置から離間した離間位置とを経由する第1ハンド移動経路に沿って移動させて当該離間位置および当該ワーク把持位置をこの順に経由させ、前記第1ハンド移動経路において前記ハンドが前記離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記閉位置から前記開位置に移動させて前記ワークが把持されていないことを確認する把持前未在荷確認動作を行い、前記把持前未在荷確認動作において前記移動時間を計測することを特徴とする。
【0017】
本発明では、ワークを把持するための第2把持部材が開位置と閉位置との間を移動する
移動時間を計測して基準時間と比較する。従って、例えば、第2把持部材の移動に不具合が発生していない場合の移動時間を基準時間として設定しておけば、第2把持部材が正常に移動するか否かを判断できる。ここで、第2把持部材が開位置と閉位置との間を移動可能な状態は、第1把持部材と第2把持部材との間にワークを把持していない状態である。従って、移動時間を計測する際に、第2把持部材の移動を妨げるものはない。よって、基準時間を適切な値に設定することにより、不具合が発生しているか否かを精度よく判断できる。また、ワークを把持する産業用ロボットでは、一般的に、ワークを把持する前に、ハンド上にワークが存在しないことを確認する把持前未在荷確認動作が行われる。従って、このような把持前未在荷確認動作において移動時間を計測すれば、移動時間を計測するためだけに第2把持部材を移動させなくて済む。よって、ワークを把持するまでのタクトタイムが長くなることを回避しながら、移動時間を計測できる。
【0018】
前記第2把持部材が前記把持位置、前記開位置、または、前記閉位置にあることを位置検出機構によって検出し、前記位置検出機構からの出力に基づいて前記移動時間を計測することが望ましい。このようにすれば、移動時間の検出が容易となる。
【0020】
本発明において、前記ハンドを、把持している前記ワークを解放するワーク解放位置と当該ワーク解放位置から離間する第2の離間位置とを経由する第2ハンド移動経路に沿って移動させて当該ワーク解放位置および当該第2の離間位置をこの順に経由させ、前記第2ハンド移動経路において前記ハンドが前記第2の離間位置を経由する際に、前記第2把持部材を前記開位置から前記閉位置に移動させて前記ハンドに前記ワークが把持されていないことを確認する解放後未在荷確認動作を行い、前記計測部は、前記解放後未在荷確認動作において前記移動時間を計測することが望ましい。ワークを把持する産業用ロボットでは、一般的に、把持したワークを解放した後に、ハンド上にワークが存在しないことを確認する解放後未在荷確認動作が行われる。従って、このような解放後未在荷確認動作において移動時間を計測すれば、移動時間を計測するためだけに第2把持部材を移動させなくて済む。
【0021】
本発明において、計測した前記移動時間を外部の機器に送信するものとすることができる。このようにすれば、例えば、産業用ロボットが通信可能に接続されている上位装置に計測した移動時間を逐次に送信して、上位装置において、不具合の発生を検出することができる。
【0022】
本発明において、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に異常が発生している旨を報知することが望ましい。このようにすれば、産業用ロボットを管理する管理者が、異常の発生を知ることができる。また、例えば、第2把持部材がエアシリンダを駆動源として駆動される場合には、エアシリンダに供給されるエアーの不具合や、産業用ロボットの異常や故障などを早期に発見し、対策や復旧をおこなうことができる。
【0023】
本発明において、前記移動時間と前記基準時間との差分が前記閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に、前記ワークの搬送を停止するものとすることができる。このようにすれば、ワークを落下させてしまうことを回避できる。
【0024】
本発明において、計測した前記移動時間を逐次に記憶保持し、前記移動時間と前記基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、所定期間における前記移動時間の変化量に基づいて、前記ワークの搬送を停止する必要があるか否かを判断することが望ましい。このようにすれば、移動時間が基準時間を超えた場合に、ワークの搬送動作を一律に止めてしまうことを回避できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、ワークを把持するための第2把持部材が開位置と閉位置との間を移動する移動時間を計測して基準時間と比較することにより、第2把持部材を移動させるための機構に不具合が発生しているか否かを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明を適用した産業用ロボットの斜視図である。
図2】移動把持部材が開位置にある場合のハンドの説明図である。
図3】移動把持部材が把持置にある場合のハンドの説明図である。
図4】移動把持部材が閉位置にある場合のハンドの説明図である。
図5】移動把持部材の位置を検出する位置検出機構の説明図である。
図6】位置検出機構からの出力の説明図である。
図7】産業用ロボットの制御系の概略ブロック図である。
図8】ハンド移動経路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の産業用ロボットを説明する。
【0028】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの斜視図である。図1(a)は本体部の昇降体が下降している状態を示し、図1(b)は本体部の昇降体が上昇している状態を示す。
【0029】
本例の産業用ロボット1は、ワーク2として半導体ウエハを搬送する水平多関節ロボットである。産業用ロボット1は、例えば、FOUP(FRONT OPEN UNIFIED POD)と半導体ウエハ処理装置との間でワーク2を搬送するものであり、半導体製造システムに組み込まれて使用される。図1に示すように、産業用ロボット1は、本体部5と、基端部が本体部5に回転可能に連結されたアーム6と、アーム6の先端部に回転可能に連結されたハンド7と、を備える。本例では、アーム6の先端部に2つのハンド7を備える。ハンド7は上下に配置されている。また、産業用ロボットは、ブザー8(図7参照)を備える。
【0030】
図1(b)に示すように、本体部5は、アーム6の基端部が連結された昇降体10と、昇降体10を昇降可能に保持する筺体部11と、筺体部11に対して昇降体10を昇降させる昇降機構12とを備える。昇降機構12は、例えば、昇降モータ13と、昇降モータ13の回転が伝達される不図示のボールネジ機構とを備える。昇降モータ13が駆動されると、昇降体10は、図1(a)に示す下降位置と、図1(b)に示す上昇位置との間を移動する。
【0031】
アーム6は、基端部が昇降体10に連結された第1アーム部16と、第1アーム部16の先端部に基端部が回動可能に連結された第2アーム部17と、第2アーム部17の先端部に基端部が回動可能に連結された第3アーム部18とを備える。本体部5、第1アーム部16、第2アーム部17、および、第3アーム部18は、下方から上方に向かってこの順に配置されている。アーム6には、第1アーム部16および第2アーム部17を回動させて第1アーム部16と第2アーム部17とからなるアーム6の一部を伸縮させる基端側アーム部移動機構19と、第3アーム部18を回動させる先端側アーム部移動機構20とが設けられている。また、アーム6には、ハンド7を回動させるハンド回動機構21が設けられている。
【0032】
基端側アーム部移動機構19は、第1アーム駆動モータ23と、第1アーム駆動モータ23の回転を第1アーム部16の基端部および第2アーム部17の基端部に伝達する第1駆動力伝達機構24を備える。先端側アーム部移動機構20は、第2アーム駆動モータ25と、第2アーム駆動モータ25の回転を第3アーム部18の基端部に伝達する第2駆動力伝達機構26を備える。ハンド回動機構21は、ハンド駆動モータ27と、ハンド駆動モータ27の回転を、第3アーム部18に連結されたハンド7の基端部に伝達する第3駆動力伝達機構28を備える。
【0033】
ここで、昇降機構12、基端側アーム部移動機構19、先端側アーム部移動機構20、および、ハンド回動機構21は、ハンド7を目的とする所定の位置に移動させるハンド移動機構30を構成する。ハンド移動機構30は、ハンド7を、ワーク2を把持するワーク把持位置Aおよびワーク把持位置Aから離間した第1の離間位置Bを経由する第1ハンド移動経路31(図8(a)参照)に沿って移動させる。また、ハンド移動機構30は、ハンド7を、把持しているワーク2を解放するワーク解放位置Cおよびワーク解放位置Cから離間する第2の離間位置Dを経由する第2ハンド移動経路32(図8(b)参照)に沿
って移動させる。なお、第1の離間位置Bと第2の離間位置Dとは同一の場合がある。
【0034】
(ハンド)
図2は移動把持部材が開位置にある場合のハンド7の説明図である。図3は移動把持部材が把持位置にある場合のハンド7の説明図である。図4は移動把持部材が閉位置にある場合のハンド7の説明図である。図5は移動把持部材の位置を検出する位置検出機構の説明図である。図5(a)は移動把持部材が開位置にある場合の位置検出機構を示し、図5(b)は移動把持部材が把持位置にある場合の位置検出機構を示し、図5(c)は移動把持部材が閉位置にある場合の位置検出機構を示す。図6は位置検出機構からの出力の説明図である。図6(a)はワーク把持部にワーク2が存在しない場合に移動把持部材が開位置から閉位置に移動した場合の出力を示し、図6(b)はワーク把持部にワーク2が存在する場合に移動把持部材を開位置から閉位置に向かって移動させた場合の出力を示し、図6(c)はワーク把持部にワーク2が存在しない場合に移動把持部材が閉位置から開位置に移動した場合の出力を示す。
【0035】
図2に示すように、ハンド7は、その基端部に、第3アーム部18の先端部に回転可能に連結される連結部35を備える。また、ハンド7は、先端側部分にワーク2を把持するワーク把持部36を備える。連結部35とワーク把持部36との間には、これらを接続する中間部37が設けられている。連結部35は円形の開口部35aを備える。
【0036】
ワーク把持部36は平板状である。ワーク把持部36を上下方向から見た場合の形状は、先端側部分が二股に分岐した略Y形状をしている。ワーク把持部36は、二股に分かれた部分の各先端部に、それぞれワーク2を把持するための固定把持部材41(第1把持部材)を備える。各固定把持部材41は、ワーク2の端面が当接する当接面41aを備える。当接面41aはワーク把持部36の基端側を向いている。また、ワーク把持部36は、2つの固定把持部材41とともにワーク2を把持するための移動把持部材42(第2把持部材)を備える。移動把持部材42は、ローラ43であり、その回転軸を上下方向に向けている。移動把持部材42の両側には、ワーク2を載置するためのワーク載置部材44が固定されている。
【0037】
また、ハンド7は、移動把持部材42を固定把持部材41に接近する方向および離間する方向に支持する把持部材支持機構46を備える。把持部材支持機構46は、移動把持部材42を、ワーク2を把持する把持位置42Aを経由する移動経路に沿って直線状に移動可能とする。把持位置42Aは、図3に示すように、固定把持部材41と移動把持部材42との間に位置する円盤状のワーク2の側端面に固定把持部材41および移動把持部材42が当接したときの移動把持部材42の位置である。ここで、把持部材支持機構46は、移動把持部材42を、把持位置42Aよりも固定把持部材41に接近した閉位置42B(図4参照)と、把持位置42Aよりも固定把持部材41から離間した開位置42C(図2参照)との間で移動可能とする。
【0038】
図2に示すように、把持部材支持機構46は、先端部に移動把持部材42(ローラ43)を支持する把持部材支持部材47と、把持部材支持部材47を移動可能に支持する支持部49を備える。把持部材支持部材47は細長い略直方体状をしている。支持部49は中間部37に設けられており、把持部材支持部材47を直線状に案内する。
【0039】
ここで、産業用ロボットは、移動把持部材42を移動させる駆動機構50を備える。駆動機構50は中間部37に設置されたエアシリンダ51を備える。エアシリンダ51には給気用の配管52および排気用の配管53が接続されている。エアシリンダ51のロッド51aには把持部材支持部材47の基端部が固定されている。エアシリンダ51を駆動すると、把持部材支持部材47に支持された移動把持部材42を往復移動させることができ
る。
【0040】
また、駆動機構50は、移動把持部材42の位置を検出するための位置検出機構55を備える。位置検出機構55は、把持部材支持部材47に固定されて当該把持部材支持部材47と一体に移動する検知板56と、移動把持部材42の移動経路に沿って配置された第1センサ57および第2センサ58を備える。位置検出機構55は中間部37に設けられている。
【0041】
第1センサ57および第2センサ58は、それぞれ透過型のフォトセンサである。各センサは、上下方向に隙間を開けて対向配置された発光素子と受光素子とを有する。検知板56は、把持部材支持部材47が移動する際に、各センサの発光素子と受光素子との間を通過する。検知板56には、各センサ57、58の発光素子から射出されて受光素子に至る検査光を遮るための遮光部56aが設けられている。
【0042】
図4および図5(c)に示すように、移動把持部材42が把持位置42Aよりも固定把持部材41に接近した閉位置42Bにあるときには、第1センサ57および第2センサ58のうち固定把持部材41に近い位置にある第1センサ57の検査光が遮光部56aによって遮られる。図2および図5(a)に示すように、移動把持部材42が把持位置42Aよりも固定把持部材41から離間した開位置42Cにあるときには、第2センサ58の検査光が遮光部56aによって遮られる。図3および図5(b)に示すように、移動把持部材42が把持位置42Aにあるときには、第1センサ57および第2センサ58の双方の検査光が遮光部56aによって遮られる。従って、2つのセンサからの出力に基づいて、移動把持部材42の位置を取得することができる。
【0043】
ここで、ワーク把持部36にワーク2が存在しない場合に移動把持部材42が開位置42Cから閉位置42Bに移動した場合には、図6(a)に示すように、第1センサ57からの信号は、オフの状態から所定時間を経過後にオンの状態に移行する。第2センサ58からの信号は、オンの状態を所定時間維持した後にオフの状態に移行する。また、ワーク把持部36にワーク2が存在する場合に移動把持部材42を開位置42Cから閉位置42Bに向かって移動させた場合には、図6(b)に示すように、第1センサ57からの信号は、オフの状態から所定時間を経過後にオンの状態に移行する。第2センサ58からの信号は、移動把持部材42が把持位置42Aで停止するので(検知板56が取り付けられた把持部材支持部材47が停止するので)、オンの状態を維持する。さらに、ワーク把持部36にワーク2が存在しない場合に移動把持部材42が閉位置42Bから開位置42Cに移動する場合には、図6(c)に示すように、第1センサ57からの信号は、オンの状態から所定時間維持した後にオフの状態に移行する。第2センサ58からの信号は、オフの状態を所定時間経過後にオンの状態に移行する。
【0044】
(制御系)
図7は産業用ロボットの制御系の概略ブロック図である。図8はハンドの移動経路の説明図である。図8(a)はGET動作における第1ハンド移動経路を示し、図8(b)はPUT動作における第2ハンド移動経路を示す。
【0045】
図7に示すように、産業用ロボットの制御系は、CPUを備える制御部61を中心に構成されている。制御部61の入力側には、第1センサ57および第2センサ58が接続されている。制御部61の出力側には、ドライバ回路を介して、ブザー8、昇降モータ13、第1アーム駆動モータ23、第2アーム駆動モータ25、ハンド駆動モータ27、エアシリンダ51が接続されている。制御部61には、通信部62を介して上位装置63(外部の機器)が通信可能に接続されている。上位装置63は半導体製造システムの制御装置である。また、制御部61には、記憶部64が接続されている。
【0046】
制御部61は、ハンド移動制御部66、把持部材駆動制御部67、計測部68、送信部69、監視部70、異常レベル判定部71を備える。
【0047】
図8(a)に示すように、ハンド移動制御部66は、ハンド移動機構30を駆動して、ハンド7を、第1ハンド移動経路31に沿って第1の離間位置Bおよびワーク把持位置Aをこの順に経由させる。また、図8(b)に示すように、ハンド移動制御部66は、ハンド移動機構30を駆動して、ハンド7を、第2ハンド移動経路32に沿ってワーク解放位置Cおよび第2の離間位置Dをこの順に経由させる。すなわち、ハンド移動制御部66は、昇降モータ13、第1アーム駆動モータ23、第2アーム駆動モータ25、ハンド駆動モータ27を適宜に駆動して、ハンド7を第1ハンド移動経路31および第2ハンド移動経路32に沿って移動させる。
【0048】
把持部材駆動制御部67は、ハンド7がワーク把持位置Aを通過することによりワーク2がワーク把持位置Aからハンド7に受け渡されると、その後に、駆動機構50(エアシリンダ51)を駆動して、移動把持部材42を開位置42Cから把持位置42Aに向かって移動させるワーク把持動作を行う(図8(a)参照)。これにより、移動把持部材42をワーク2の側端面に押し付けて、固定把持部材41と移動把持部材42との間にワーク2を挟んだ状態として、ハンド7でワーク2を把持する。また、把持部材駆動制御部67は、ハンド7がワーク解放位置Cを経由する前に、移動把持部材42を把持位置42Aから開位置42Cに向かって移動させる解放動作を行う(図8(b)参照)。これにより、固定把持部材41と移動把持部材42との間に挟んだワーク2を解放した状態とする。そして、この状態でハンド7がワーク解放位置Cを通過すると、ワーク2はハンド7からワーク解放位置Cに受け渡される。
【0049】
また、把持部材駆動制御部67は、ハンド7が第1ハンド移動経路31において第1の離間位置Bを経由する際にハンド7にワーク2が把持されていないこと確認する把持前未在荷確認動作を行う。ここで、第1の離間位置Bを通過する前の時点では、後述するように、移動把持部材42は閉位置42Bに配置されている。従って、把持前未在荷確認動作では、移動把持部材42を閉位置42Bから開位置42Cに移動させる。より詳細には、把持前未在荷確認動作では、図6(c)に示すように、駆動機構50を駆動して閉位置42Bから開位置42Cに移動把持部材42の移動を開始させた時点(把持部材駆動制御部67が駆動機構50を駆動するために制御信号を出力した時点)からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号がオフ、第2センサ58からの信号がオンとなっていることを確認する。
【0050】
さらに、把持部材駆動制御部67は、ハンド7が、第1ハンド移動経路31においてワーク把持位置Aを経由した後に行うワーク把持動作において、ハンド7にワーク2が把持されていることを確認する把持後在荷確認動作を行う。把持後在荷確認動作では、ワーク把持動作における駆動機構50の駆動から所定のディレイ時間t1の経過の後に、位置検出機構55からの出力に基づいて移動把持部材42が把持位置42Aに位置していることを確認する。すなわち、図6(b)に示すように、駆動機構50を駆動した時点からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号および第2センサ58からの信号がオンとなっていることを確認する。ここで、駆動機構50を駆動した時点からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号がオンであり、第2センサ58からの信号がオフとなっている場合には、移動把持部材42が閉位置42Bに到達しているので、ハンド7にワーク2が把持されていない。
【0051】
また、把持部材駆動制御部67は、ハンド7が第2ハンド移動経路32においてワーク解放位置Cを経由する前に、ハンド7にワーク2が把持されていることを確認する解放前
在荷確認動作を行う(図8(b)参照)。解放前在荷確認動作では、駆動機構50を駆動する。そして、駆動機構50を駆動した時点からディレイ時間t1の経過の後に、位置検出機構55からの出力に基づいて移動把持部材42が把持位置42Aに位置していることを確認する。すなわち、図6(b)に示すように、駆動機構50を駆動した時点からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号および第2センサ58からの信号がオンとなっていることを確認する。ここで、駆動機構50を駆動した時点からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号がオンであり、第2センサ58からの信号がオフとなっている場合には、移動把持部材42が閉位置42Bに到達しているので、ハンド7にワーク2が把持されていない。本例では、把持後在荷確認動作と解放前在荷確認動作とは同一の動作である。すなわち、第1ハンド移動経路31と第2ハンド移動経路32とは互いに重なる経路部分を備えており、この重なる経路部分において、把持後在荷確認動作と解放前在荷確認動作とが一つの動作として1回行われる。なお、把持後在荷確認動作と解放前在荷確認動作とは、第1ハンド移動経路31と第2ハンド移動経路32のそれぞれにおいて、別々に行われてもよい。
【0052】
さらに、把持部材駆動制御部67は、ハンド7が第2ハンド移動経路32において第2の離間位置Dを経由する際に、ハンド7にワーク2が把持されていないこと確認する解放後未在荷確認動作を行う。解放後未在荷確認動作では移動把持部材42を開位置42Cから閉位置42Bに移動させる。より詳細には、解放後未在荷確認動作では、図6(a)に示すように、駆動機構50を駆動して開位置42Cから閉位置42Bに移動把持部材42の移動を開始させた時点(把持部材駆動制御部67が駆動機構50を駆動するために制御信号を出力した時点)からディレイ時間t1の経過の後に、第1センサ57からの信号がオン、第2センサ58からの信号がオフとなっていることを確認する。ここで、本例では、第1ハンド移動経路31と第2ハンド移動経路32とは連続する経路であり、解放後未在荷確認動作が行われた後に、ハンド7は離間位置Bを経由する。従って、ハンド7が離間位置Bを経由する時点では、移動把持部材42は閉位置42Bに配置されている。
【0053】
計測部68は、移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動する移動時間t0を計測する。移動時間t0の計測は、位置検出機構55の第1センサ57からの出力および第2センサ58からの出力に基づいて行われる。また、計測部68は、移動時間t0の計測を把持前未在荷確認動作中において行う。さらに、計数部は、移動時間t0の計測を解放後未在荷確認動作において行う。また、計測部68は、測定した移動時間t0を逐次に記憶部64に記憶保持する。なお、図6(a)に示すように、移動時間t0の計測は、移動把持部材42が開位置42Cから閉位置42Bに移動するときに計測することができる。また、図6(c)に示すように、移動時間t0の計測は、移動把持部材42が閉位置42Bから開位置42Cに移動するときに計測することができる。
【0054】
送信部69は、計測部68によって計測された移動時間t0を上位装置63(外部の機器)に送信する。
【0055】
監視部70は、計測部68によって計測された移動時間t0と、予め定めた基準時間とを比較する。基準時間は、把持部材支持機構46や駆動機構50に不具合が発生していない場合の移動時間t0に基づいて設定される。また、監視部70は、移動時間t0と基準時間との差分が予め設定した閾値よりも大きい場合には、異常が発生している旨を報知する。本例では、監視部70は、ブザー8を鳴動させて異常が発生している旨を報知する。
【0056】
異常レベル判定部71は、移動時間t0と基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、記憶部64を参照して直近の所定期間における移動時間t0の変化量に基づいて、ワーク2の搬送を停止する必要があるか否かを判定する。そして、異常レベル判定部71は、ワーク2の搬送を停止する必要があると判断した場合には、ハンド移動制御部66
および把持部材駆動制御部67によるハンド7の駆動制御および移動把持部材42の駆動制御を停止させる。すなわち、経年によって移動時間t0が変動する場合などには、所定期間における移動時間t0の変化量は少ない。従って、変化量が基準とする基準変化量以下の場合には、ワーク2の搬送を停止する必要性は低く、ワーク2の搬送を停止する必要はないと判断できる。この一方で、所定期間に移動時間t0が急激に増減した場合には、把持部材支持機構46や駆動機構50に突然の障害が発生している事態や、エアシリンダ51に供給しているエアー(圧縮空気)の流量や圧力に急激な変動が生じている事態が想定される。よって、変化量が基準変化量を超える場合には、ワーク2の搬送を停止する必要があると判断できる。
【0057】
(ワーク搬送動作:GET動作)
産業用ロボット1は、ハンド7によってワーク2を把持するGET動作を行う。図8(a)に示すように、GET動作では、制御部61(ハンド移動制御部66)は、ハンド移動機構30を駆動して、ハンド7を第1の離間位置Bおよびワーク把持位置Aを経由する第1ハンド移動経路31に沿って移動させる。
【0058】
ハンド7が第1の離間位置Bを経由する際には、把持前未在荷確認動作ST1が行われる。本例では、第1の離間位置Bを経由する前の時点では、移動把持部材42は閉位置42Bに配置されている。従って、把持前未在荷確認動作ST1では、移動把持部材42を閉位置42Bから開位置42Cに移動させる。ここで、把持前未在荷確認動作ST1では、移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動する。従って、計測部68はこの移動時間t0を測定する。移動時間t0は図6(c)に示すものである。すなわち、駆動機構50の駆動により移動把持部材42が移動を開始した時点(駆動機構50を駆動するための制御信号が出力された時点)から、第1センサ57の出力がオンからオフに切り替わる時点までの時間である。計測された移動時間t0は、記憶部64に記憶保持されるとともに、送信部69によって上位装置63に送信される。
【0059】
ここで、移動時間t0と基準時間との差分が閾値を超えた場合には、監視部70は、ブザー8を鳴動させて、異常が発生している旨を報知する。また、移動時間t0と基準時間との差分が閾値を超えた場合には、異常レベル判定部71によって、所定期間における移動時間t0の変化量に基づいて、ワーク2の搬送を停止する必要があるか否かが判定される。そして、異常レベル判定部71が、ワーク2の搬送を停止する必要があると判断した場合には、ワーク2の搬送が停止される。
【0060】
ワーク2の搬送が停止されない場合には、ハンド7がワーク把持位置Aに移動する。ここで、ハンド7はワーク把持位置Aを下方から上方に向かって通過する。これにより、ワーク把持位置Aにあるワーク2は、ハンド7(ワーク把持部36)に受け渡され、固定把持部材41と移動把持部材42との間に位置した状態となる。ワーク2がワーク把持位置Aからハンド7に受け渡されると、ワーク把持動作ST2が行わる。ワーク把持動作ST2では、移動把持部材42が開位置42Cから閉位置42Bに向かって移動する。そして、移動把持部材42が把持位置42Aに位置すると、ワーク2は固定把持部材41と移動把持部材42との間において、固定把持部材41と移動把持部材42との双方に当接して、ハンド7に把持された状態となる。
【0061】
また、ワーク把持動作ST2において移動把持部材42が開位置42Cから閉位置42Bに向かって移動する際には、ハンド7にワーク2が把持されていることを確認する把持後在荷確認動作ST3が行われる。把持後在荷確認動作ST3では、駆動機構50を駆動する。そして、駆動機構50を駆動するための制御信号が出力された時点からディレイ時間t1の経過後における位置検出機構55からの出力に基づいて、移動把持部材42が把持位置42Aに位置していることを確認する。
【0062】
(ワーク搬送動作:PUT動作)
また、産業用ロボット1は、ハンド7からワーク2を解放するPUT動作を行う。図8(b)に示すようにPUT動作では、制御部61(ハンド移動制御部66)は、ハンド移動機構30を駆動して、ハンド7をワーク解放位置Cおよび第2の離間位置D経由する第1ハンド移動経路31に沿って移動させる。
【0063】
ハンド7が、第2ハンド移動経路32をワーク解放位置Cに向かって移動する際には、ハンド7にワーク2が把持されていることを確認する解放前在荷確認動作ST21が行われる。本例では、GET動作における把持後在荷確認動作ST3が解放前在荷確認動作ST21を兼ねており、把持後在荷確認動作ST3と解放前在荷確認動作ST21とは一つの動作として1回行われる。解放前在荷確認動作ST21では、駆動機構50を駆動する。そして、駆動機構50を駆動するための制御信号が出力された時点からディレイ時間t1の経過後における位置検出機構55からの出力に基づいて、移動把持部材42が把持位置42Aに位置していることを確認する。
【0064】
ハンド7がワーク解放位置Cに接近すると、ワーク解放動作ST22が行われる。ワーク解放動作ST22では、移動把持部材42が把持位置42Aから開位置42Cに向かって移動する。これにより、ワーク2はハンド7に把持されていない解放状態となる。また、ハンド7は、ワーク解放位置Cを通過する際に、上方から下方に向かって移動する。これにより、ハンド7(ワーク把持部36)にあるワーク2はワーク解放位置Cに受け渡される。
【0065】
その後、ハンド7はワーク解放位置Cから第2の離間位置Dに向かって移動する。ハンド7が第2の離間位置Dを経由する際には、解放後未在荷確認動作ST23が行われる。本例では、ハンド7が第2の離間位置Dに接近する際に、移動把持部材42が開位置42Cから閉位置42Bに移動する。ここで、解放後未在荷確認動作ST23では、移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動する。従って、計測部68はこの移動時間t0を測定する。移動時間t0は、図6(a)に示すものである。すなわち、駆動機構50の駆動により移動把持部材42が移動を開始した時点(駆動機構50を駆動するための制御信号が出力された時点)から、第2センサ58からの出力がオンからオフに切り替わる時点までの時間である。計測した移動時間t0は、記憶部64に記憶保持されるとともに、送信部69によって上位装置63に送信される。
【0066】
ここで、移動時間t0と基準時間との差分が閾値を超えた場合には、監視部70は、ブザー8を鳴動させて異常が発生している旨を報知する。また、移動時間t0と基準時間との差分が閾値を超えた場合には、異常レベル判定部71によって、所定期間における移動時間t0の変化量に基づいて、ワーク2の搬送を停止する必要があるか否かを判定される。そして、異常レベル判定部71が、ワーク2の搬送を停止する必要があると判断した場合には、ワーク2の搬送が停止される。
【0067】
(作用効果)
本例では、ワーク2を把持するための移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動する移動時間t0を計測して基準時間と比較する。従って、移動把持部材42が正常に移動しているか否かを判断できる。また、移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動可能な状態は、固定把持部材41と移動把持部材42との間にワーク2を把持していない状態である。従って、移動時間t0を計測する際に、移動把持部材42の移動を妨げるものはない。よって、基準時間を適切な値に設定することにより、把持部材支持機構46や駆動機構50に不具合が発生しているか否かを精度よく判断できる。
【0068】
ここで、固定把持部材41と移動把持部材42との間にワーク2を把持する際に、移動把持部材42が開位置42Cから把持位置42Aに移動する移動時間を計測して、予め定めた基準時間と比較して、不具合の発生を判断することも考えられる。
【0069】
しかし、ワーク2にノッチなどが形成されている場合には、移動把持部材42がノッチと異なる部分に当接してワーク2を把持する場合と、移動把持部材42がノッチに当接してワーク2を把持する場合とで、移動時間t0が変化する。また、GET動作のワーク把持動作ST2では、まず、移動把持部材42が移動してワーク2に当接する。その後、移動する移動把持部材42がワーク2を固定把持部材41に向かって移動させて、ワーク2を固定把持部材41に押し付ける。従って、移動把持部材42がワーク2を固定把持部材41に向かって移動させる移動距離によっては、移動把持部材42が開位置42Cから把持位置42Aに移動する移動時間t0が変動する場合がある。よって、開位置42Cから把持位置42Aに移動する移動時間と基準時間とを比較しても、把持部材支持機構46や駆動機構50に発生している不具合を精度よく検出することができない場合が発生する。これに対して、移動把持部材42が開位置42Cと閉位置42Bとの間を移動する移動時間t0を計測して基準時間と比較すれば、移動時間t0を計測する際に移動把持部材42の移動を妨げるものはなく、ワーク2との当接位置によって移動時間t0が変化することもない。よって、把持部材支持機構46や駆動機構50で発生した不具合を精度よく検出できる。
【0070】
また、本例では、計測部68は、位置検出機構55からの出力に基づいて移動時間t0を計測するので、移動時間t0の計測が容易である。
【0071】
また、本例では、ワーク2を搬送する産業用ロボットにおいて、ワーク2を把持する前に一般的に行われる把持前未在荷確認動作ST1において、移動時間t0を計測する。従って、移動時間t0を計測するためだけに移動把持部材42を移動させなくて済む。よって、ワーク2を把持するまでのタクトタイムが長くなることを回避しながら、移動時間t0を計測できる。
【0072】
さらに、本例では、ワーク2を搬送する産業用ロボットにおいて、ワーク2を解放した後に一般的に行われる解放後未在荷確認動作ST23において、移動時間t0を計測する。従って、移動時間t0を計測するためだけに移動把持部材42を移動させなくて済む。従って、次の動作までのタクトタイムが長くなることを回避しながら、移動時間t0を計測できる。
【0073】
また、本例では、計測した移動時間t0を上位装置63に送信しているので、上位装置63において不具合の発生を検出できる。
【0074】
さらに、本例では、移動時間t0と基準時間との差分が予め定めた閾値を超えた場合に、所定期間における移動時間t0の変化量に基づいて、ワーク2の搬送を停止する必要があるか否かを判断し、ワーク2の搬送を停止する必要があると判断した場合に、搬送を停止する。従って、移動時間t0が基準時間を超えた場合に、ワーク2の搬送動作を一律の止めてしまうことを回避できる。
【0075】
(変形例)
なお、監視部70は、移動時間t0と基準時間との差分が、閾値よりも大きい第2の閾値を超えた場合に、ワーク2の搬送を停止させてもよい。すなわち、監視部70は、移動時間t0と基準時間との差分が第2の閾値を超えた場合に、ハンド移動制御部66および把持部材駆動制御部67によるハンド7の駆動制御および移動把持部材42の駆動制御を
停止させる。このようにすれば、移動時間t0と基準時間との差分が拡大した場合における産業用ロボット1の制御が容易である。
【0076】
また、異常レベル判定部71が直近の所定期間における移動時間t0の変化量に基づいて、ワーク2の搬送を停止する必要があるか否かを判定したときに、その変化量が基準変化量以下の場合には、変化量に基づいてディレイ時間t1を変更してもよい。すなわち、経年などに起因して移動時間t0が漸増している場合などには、把持前未在荷確認動作、把持後在荷確認動作、解放前在荷確認動作、および、解放後未在荷確認動作において、移動把持部材の位置を検出するためにディレイ時間t1を延ばすことにより、これらの確認動作を正確に行うことができる。
【0077】
なお、上記においては、駆動機構50がエアシリンダ51を備える例を用いて説明をおこなっているが、エアシリンダ51の代わりに、駆動機構50が油圧シリンダ、ソレノイド、モータなどにより移動把持部材42を駆動する構成であってもよい。その場合においては、把持部材支持機構46や駆動機構50の不具合のほかに、油圧や電力の異常などを判断できる。
【符号の説明】
【0078】
1…産業用ロボット、2…ワーク、5…本体部、6…アーム、7…ハンド、8…ブザー、10…昇降体、11…筺体部、12…昇降機構、13…昇降モータ、16…第1アーム部、17…第2アーム部、18…第3アーム部、19…基端側アーム部移動機構、20…先端側アーム部移動機構、21…ハンド回動機構、23…第1アーム駆動モータ、24…第1駆動力伝達機構、25…第2アーム駆動モータ、26…第2駆動力伝達機構、27…ハンド駆動モータ、28…第3駆動力伝達機構、30…ハンド移動機構、31…第1ハンド移動経路、32…第2ハンド移動経路、35…連結部、35a…開口部、36…ワーク把持部、37…中間部、41…固定把持部材、41a…当接面、42…移動把持部材、42A…把持位置、42B…閉位置、42C…開位置、43…ローラ、44…ワーク載置部材、46…把持部材支持機構、47…把持部材支持部材、48…案内部、49…支持部、50…駆動機構、51…エアシリンダ、51a…ロッド、52…給気用の配管、53…排気用の配管、55…位置検出機構、56…検知板、56a…遮光部、57…第1センサ、58…第2センサ、61…制御部、62…通信部、63…上位装置、64…記憶部、66…ハンド移動制御部、67…把持部材駆動制御部、68…計測部、69…送信部、70…監視部、71…異常レベル判定部、ST1…把持前未在荷確認動作、ST2…ワーク把持動作、ST3…把持後在荷確認動作、ST21…解放前在荷確認動作、ST22…ワーク解放動作、ST23…解放後未在荷確認動作
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8