(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】2液ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/08 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
C09J175/08
(21)【出願番号】P 2018113197
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】321011088
【氏名又は名称】シーカ・ハマタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080508(WO,A1)
【文献】特開2007-031483(JP,A)
【文献】特開2015-067663(JP,A)
【文献】特開2017-206600(JP,A)
【文献】特開2000-239338(JP,A)
【文献】特開2018-002954(JP,A)
【文献】特表2005-513222(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10;9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(A)を含有する硬化剤と、を有し、
前記化合物(A)が、1分子中に3個の活性水素含有基を有し、末端にエチレンオキサイドを有し、数平均分子量が1,000を超え20,000以下であり、不飽和度が0.01meq/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05以下であるポリオール化合物(a1)
、及び、1分子中に3個以上の活性水素含有基を有し、数平均分子量が200~1,000であるポリオール化合物(a2)のみを含み、
前記イソシアネート基に対する、前記化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.2以上0.8未満である、2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(a1)が有する前記活性水素含有基がヒドロキシ基であり、
前記ポリオール化合物(a1)が有する前記エチレンオキサイドが、-(CH
2CH
2-O)
r1-で表され、前記r1が1又は2以上であり、
前記ヒドロキシ基と前記-(CH
2CH
2-O)
r1-とが連結して、-(CH
2CH
2-O)
r1-Hを形成する、請求項1に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオール化合物(a1)が、前記-(CH
2CH
2-O)
r1-Hを1分子中に3個有する、請求項2に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(a1)において、前記活性水素含有基が、前記エチレンオキサイドを介して、連結基に結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有する、請求項
1~4のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオール化合物(a2)が有する前記活性水素含有基がヒドロキシ基であり、
前記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有し、
前記ポリオール化合物(a2)が有する前記エチレンオキサイドが、-(CH
2CH
2-O)
r2-で表され、前記r2が1又は2以上であり、
前記ヒドロキシ基と前記-(CH
2CH
2-O)
r2-とが連結して、-(CH
2CH
2-O)
r2-Hを形成する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリオール化合物(a2)が、前記-(CH
2CH
2-O)
r2-Hを1分子中に4個以上有する、請求項
6に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項8】
前記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有し、
前記ポリオール化合物(a2)において、前記活性水素含有基が、前記エチレンオキサイドを介して、連結基に結合する、請求項
1~7のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリオール化合物(a1)が有する活性水素の量(H1)が、前記量(H1)と前記ポリオール化合物(a2)が有する活性水素の量(H2)との合計に対して、20~80モル%であり、
前記量(H2)が、前記量(H1)と前記量(H2)との合計に対して、80~20モル%である、請求項
1~8のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項10】
基材を接着するために使用される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【請求項11】
前記基材がポリオレフィンを含む、請求項
10に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤組成物として2液型のウレタン系接着剤組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
特許文献1には、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、水と、2官能以上の活性水素含有化合物とを含有する硬化剤とからなる2液型ウレタン接着剤組成物が記載され、上記活性水素含有化合物としてポリオール等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは特許文献1を参考にして組成物を調製しこれを評価したところ、2液ウレタン系接着剤組成物において硬化剤が従来のポリオールを含有する場合、初期接着性(例えば、接着直後の迅速な硬化性)、又は、(例えば水の存在又は高温条件下における)接着性に対する長期的な信頼性(以下これを「長期接着性」と称する場合がある。)が低くなる場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、初期接着性、長期接着性に優れる2液ウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、2液ウレタン系接着剤組成物において、不飽和度等が所定の範囲であり末端にエチレンオキサイドを有するポリオール化合物を使用し、(広義の)硬化剤に含まれる(狭義の硬化剤としての)化合物(A)が有する活性水素が特定の量であることによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0006】
[1] イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(A)を含有する硬化剤と、を有し、
上記化合物(A)が、1分子中に3個の活性水素含有基を有し、末端にエチレンオキサイドを有し、数平均分子量が1,000を超え20,000以下であり、不飽和度が0.01meq/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05以下であるポリオール化合物(a1)を含み、
上記イソシアネート基に対する、上記化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.2以上0.8未満である、2液ウレタン系接着剤組成物。
[2] 上記ポリオール化合物(a1)が有する上記活性水素含有基がヒドロキシ基であり、
上記ポリオール化合物(a1)が有する上記エチレンオキサイドが、-(CH2CH2-O)r1-で表され、上記r1が1又は2以上であり、
上記ヒドロキシ基と上記-(CH2CH2-O)r1-とが連結して、-(CH2CH2-O)r1-Hを形成する、[1]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[3] 上記ポリオール化合物(a1)が、上記-(CH2CH2-O)r1-Hを1分子中に3個有する、[2]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[4] 上記ポリオール化合物(a1)において、上記活性水素含有基が、上記エチレンオキサイドを介して、連結基に結合する、[1]~[3]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[5] 上記化合物(A)が、更に、1分子中に3個以上の活性水素含有基を有し、数平均分子量が200~1,000であるポリオール化合物(a2)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[6] 上記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有する、[5]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[7] 上記ポリオール化合物(a2)が有する上記活性水素含有基がヒドロキシ基であり、
上記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有し、
上記ポリオール化合物(a2)が有する上記エチレンオキサイドが、-(CH2CH2-O)r2-で表され、上記r2が1又は2以上であり、
上記ヒドロキシ基と上記-(CH2CH2-O)r2-とが連結して、-(CH2CH2-O)r2-Hを形成する、[5]又は[6]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[8] 上記ポリオール化合物(a2)が、上記-(CH2CH2-O)r2-Hを1分子中に4個以上有する、[7]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[9] 上記ポリオール化合物(a2)が、末端にエチレンオキサイドを有し、
上記ポリオール化合物(a2)において、上記活性水素含有基が、上記エチレンオキサイドを介して、連結基に結合する、[5]~[8]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[10] 上記ポリオール化合物(a1)が有する活性水素の量(H1)が、上記量(H1)と上記ポリオール化合物(a2)が有する活性水素の量(H2)との合計に対して、20~80モル%であり、
上記量(H2)が、上記量(H1)と上記量(H2)との合計に対して、80~20モル%である、[5]~[9]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[11] 基材を接着するために使用される、[1]~[10]のいずれかに記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
[12] 上記基材がポリオレフィンを含む、[11]に記載の2液ウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2液ウレタン系接着剤組成物は、初期接着性、長期接着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、初期接着性及び長期接着性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0009】
[2液ウレタン系接着剤組成物]
本発明の2液ウレタン系接着剤組成物(本発明の組成物)は、
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、
1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(A)を含有する硬化剤と、を有し、
上記化合物(A)が、1分子中に3個の活性水素含有基を有し、末端にエチレンオキサイドを有し、数平均分子量が1,000を超え20,000以下であり、不飽和度が0.01meq/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05以下であるポリオール化合物(a1)を含み、
上記イソシアネート基に対する、上記化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.2以上0.8未満である、2液ウレタン系接着剤組成物である。
【0010】
従来、ウレタン系接着剤の原料として例えばポリプロピレングリコール(PPG)のようなポリエーテルポリオールが使用されている。
下記参考文献によれば、ポリプロピレングリコール(例えば、下記に示す構造を有するPPG)は、プロピレンオキサイド(PO)の開環重合で得られ、ポリウレタンの原料として最も多用されるポリオールであり、ポリプロピレングリコールを製造する際には重合触媒に水酸化カリウム(KOH)を用いることが一般的で、片末端2重結合のモノオール(~50mol%)(下記に示す構造を有するmono-ol)が副生されることが記載されている。
また、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC)から得たPPG(DMC-PPG)は、水酸化カリウムから得られたPPGよりは上記モノオールの含有量が少ないものの、PPGとしての純度が低いことが記載されている。
(参照文献:第26回ポリマー材料フォーラム 予稿集P110 「高純度PPGを用いたポリウレタンの特性」 東ソー株式会社 清水義久・大浜俊生・井上善彰・山本敏秀・森勝朗)。
このように、従来使用されているポリプロピレングリコールは、片末端に二重結合を有するモノオールを多く含んでいた。
【0011】
【0012】
同様のことが、ポリオキシアルキレントリオールのような3官能以上のポリオキシアルキレンポリオールにも言えると本発明者らは考える。
つまり、従来のように、重合触媒として、例えば、水酸化カリウム、複合金属シアン化物錯体触媒等を使用して、オキシエチレン、オキシプロピレンのようなオキシアルキレンを付加させて目的物質のポリオールを製造する場合(ここで上記目的物質を例えばポリオキシアルキレントリオールとして以下説明する)、ポリオキシアルキレントリオールの他に、1つの端部に二重結合を有しかつ2つの各端部にヒドロキシ基をそれぞれ1個有するポリオキシアルキレン、及び/又は、1つの端部にヒドロキシ基を有しかつ2つの各端部に二重結合をそれぞれ1個有する(ポリ)オキシアルキレンが副生すると推測される。
以上のように、PPG又はポリオキシアルキレントリオールのようなポリオキシアルキレンポリオールが、副生成物として上記のような端部に二重結合を有する(ポリ)オキシアルキレンを含む場合、得られるポリオキシアルキレンポリオールの不飽和度は高くなる。
反対に、得られたポリオキシアルキレンポリオールの不飽和度が低いことは、ポリオキシアルキレンポリオール中において、例えば上記モノオールのような副生成物の含有量が少ないことを示す指標となる。
【0013】
また、2液ウレタン系接着剤組成物において、ポリオール化合物に由来する上記副生成物の含有量が多いと、ウレタンプレポリマーが上記副生成物と反応する結果、ウレタンプレポリマーの末端が上記副生成物(特に、上記モノオール、又は、ヒドロキシ基を1つ有し、末端に二重結合を2個有する(ポリ)オキシアルキレンモノオールが推定される。)で封鎖され、得られる硬化物の物性等が配合設計のとおりに発現しない場合がある。
【0014】
一方、本発明の組成物は上記構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物が有する硬化剤はポリオール化合物(a1)を含む。上記ポリオール化合物(a1)は1分子中に3個の活性水素含有基を有する(3官能である)。また、上記ポリオール化合物(a1)の不飽和度は0.01meq/g以下であり、従来のPPG又はポリオキシアルキレントリオールより低い。
本発明においては、上記のような副生成物による封鎖等の不具合が少ないこと、更に、上記ポリオール化合物(a1)が3官能であり、末端にエチレンオキサイドを有すること、及び、上記化合物(A)が有する活性水素の量を特定の範囲とすることによって、本発明の組成物は、接着初期の硬化速度が速く初期接着性に優れ、また、長期的な接着性が高いと考えられる。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0015】
本発明の組成物は、主剤と硬化剤とを有する。
<<主剤>>
上記主剤は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する。
【0016】
<ウレタンプレポリマー>
上記ウレタンプレポリマーはイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。
ウレタンプレポリマーは、複数のイソシアネート基(好ましくは2個のイソシアネート基)を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を分子末端に有することが好ましい。
ウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
【0017】
・活性水素含有基
本発明において、活性水素含有基は、活性水素を含有する基を意味する。
上記活性水素は、例えば、イソシアネート基に対して反応しうる。
活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0018】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0019】
これらのうち、硬化性(例えば、40~80℃環境下で5~60分程度の加熱を行った場合での、上記活性水素化合物に対する上記ポリイソシアネート化合物の反応性、又は、化合物(A)に対するウレタンプレポリマーの反応性)に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0020】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0021】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0022】
・ポリオール化合物
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0023】
・・ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
【0024】
・・・ポリエーテル
ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、-(Ra-O)n-Rb-で表される構造が挙げられる。ここで、上記構造中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの組合せが挙げられる。上記アルキレン基としては例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基が挙げられる。nは2以上とできる。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、末端にエチレンオキサイドを有するポリオール化合物(例えば、後述する、ポリオール化合物(a1))、ポリエーテル骨格を有する場合のポリオール化合物(a2);ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
【0026】
上記ポリエーテルポリオールは、不飽和度については特に制限されない。不飽和度が0.01meq/gを超えるものであってもよい。
【0027】
ポリオール化合物(例えば、ポリエーテルポリオール)の数平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500~20,000であることが好ましい。本発明において上記数平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0028】
上記ポリオール化合物の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオール化合物は、例えば、水酸化カリウム又は複合金属シアン化物錯体触媒を使用して製造されたポリオール化合物が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0029】
ウレタンプレポリマーは、所定の接着性により優れ、硬化性(例えば、40~80℃環境下で5~60分程度の加熱を行った場合での化合物(A)に対するウレタンプレポリマーの反応性)に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであることが好ましい。
【0030】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
【0031】
<<硬化剤>>
本発明組成物において、硬化剤は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(A)を含有する。
上記硬化剤は、上記主剤に対応する概念である。上記硬化剤は広義の硬化剤ということができる。本発明は、上記主剤と上記(広義の)硬化剤とを有する2液(型)の組成物である。
上記(広義の)硬化剤に含有される化合物(A)は実際の硬化成分として機能できる化合物である。上記化合物(A)を狭義の硬化剤ということができる。
【0032】
<化合物(A)>
上記硬化剤に含有される化合物(A)は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物である。
本発明において、化合物(A)が1分子中に有する活性水素含有基の数は2個以上である。上記数は6個以下とできる。
【0033】
本発明において、化合物(A)として、1分子中に有する活性水素含有基がヒドロキシ基であるポリオール化合物(例えば、上記ポリオール化合物(a1)、後述するポリオール(a2)等)を使用する場合、上記ポリオール化合物が有する活性水素含有基(ヒドロキシ基)の数は、上記ポリオール化合物を製造する際に原料として使用された開始剤(活性水素含有化合物)が1分子あたりに有する活性水素原子の数を指す。化合物(A)が市販品である等の理由で開始剤の活性水素原子の数を特定できない場合、公称されているヒドロキシ基の官能基数を、上記ポリオール化合物が1分子中に有する活性水素含有基の数とする。
また、本発明において、化合物(A)として使用されうる上記ポリオール化合物の活性水素含有基(ヒドロキシ基)の数について、上記副生成物による活性水素含有基(ヒドロキシ基)の数(官能基数)の低下は加味されない。
【0034】
<活性水素含有基>
化合物(A)が有する活性水素含有基は、活性水素を含有する基を意味する。上記活性水素は、例えば、イソシアネート基に対して反応しうる。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
なかでも、上記化合物(A)が有する活性水素含有基はヒドロキシ基が好ましい。
【0035】
<ポリオール化合物(a1)>
本発明において、上記化合物(A)は、ポリオール化合物(a1)を含む。
ポリオール化合物(a1)は、1分子中に3個の活性水素含有基を有し、末端にエチレンオキサイドを有し、数平均分子量が1,000を超え20,000以下であり、不飽和度が0.01meq/g以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05以下である化合物である。
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)を使用することによって、本発明は初期接着性、長期接着性に優れる。
本発明の組成物は、化合物(A)として不飽和度が0.01meq/gを超えるポリオール化合物を使用する場合よりも、初期接着性及び/又は長期接着性に優れる。
また、本発明の組成物は、化合物(A)として、例えば、末端にプロピレンオキサイドを有し1分子中に2個のヒドロキシ基を有する以外は上記ポリオール化合物(a1)と同じポリオール化合物を使用する場合よりも、初期接着性及び/又は長期接着性に優れる。
【0036】
<活性水素含有基>
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)は、1分子中に3個の活性水素含有基を有する。
また、本発明において、上記ポリオール化合物(a1)が有する上記活性水素含有基はヒドロキシ基である。つまり、上記ポリオール化合物(a1)は1分子中に3個のヒドロキシ基を有する。
【0037】
上記ポリオール化合物(a1)において、上記活性水素含有基の位置は特に制限されない。上記活性水素含有基は、本発明の効果により優れるという観点から、上記エチレンオキサイドの端部に結合することが好ましい。
【0038】
<末端>
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)は、末端にエチレンオキサイドを有する。
なお、上記「末端」とは、上記ポリオール化合物(a1)全体に対して、末端であることを意味する。
【0039】
上記エチレンオキサイドは、例えば、-(CH2-CH2-O)r1-で表すことができる。
上記r1は、1又は2以上とできる。r1の上限は例えば、500以下とできる。
複数の-(CH2-CH2-O)r1-において、r1は同じであっても異なってもよい。
上記r1は、2以上であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、本明細書において、上記r1が2以上である場合、上記エチレンオキサイドを「ポリエチレンオキサイド」と称する場合がある。
【0040】
上記エチレンオキサイドは2価の基なので、上記エチレンオキサイドが上記ポリオール化合物(a1)の末端に位置するとき、エチレンオキサイドの端部には、別の基が結合し得る。
上記別の基としては、例えば、ポリオール化合物(a1)が有する活性水素含有基(ヒドロキシ基)が挙げられる。
上記活性水素含有基としてのヒドロキシ基が上記エチレンオキサイドの端部に結合する場合、上記ヒドロキシ基を構成する酸素原子が、上記エチレンオキサイドにおける端部の酸素原子を構成してもよい。
【0041】
具体的には例えば、上記活性水素含有基としてのヒドロキシ基が、上記-(CH2CH2-O)r1-と連結して、-(CH2CH2-O)r1-Hを形成することができる。
【0042】
上記ポリオール化合物(a1)は、本発明の効果により優れるという観点から、上記-(CH2CH2-O)r1-Hを1分子中に3個有することが好ましい。この場合複数のR1は、それぞれ独立に、1又は2以上とできる。r1の上限は、それぞれ独立に、例えば500以下とできる。
【0043】
(連結基)
上記ポリオール化合物(a1)において、上記エチレンオキシドは、連結基に結合できる。
上記連結基は、3価以上の基であれば特に制限されない。
上記連結基としては、例えば、ポリエーテルが挙げられる。
上記連結基としてのポリエーテルは、例えば、上記「・・・ポリエーテル」にしたポリエーテルと同様とできる。
【0044】
(式(1)で表される化合物)
上記ポリオール化合物(a1)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
R-[-(ZO)p-(AO)q-(CH2CH2-O)r1-H]m (1)
上記式(1)において、Rは、式(1)で表される化合物を製造する際に使用された活性水素含有化合物(R[-H]m)からm個の活性水素を除いたm価の基を表す。
mは3である。
Zは炭素数2~12のアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの組合せを表す。
Aは炭素数3のアルキレン基を表す。
複数のZ又はAがある場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。
pは0又は1~500、qは0又は1~1000、r1はそれぞれ独立に1又は2以上を表す。
p、q、r1はそれぞれ独立に整数であってもよい。
p+q+r1は、ポリオール化合物(a1)が有する数平均分子量に対応させることができる。
【0045】
なお、上記式(1)における-(CH2CH2-O)r1-Hは、上記ポリオール化合物(a1)が有する上記活性水素含有基としてのヒドロキシ基が上記エチレンオキサイドに結合した場合に相当する。
また、上記式(1)における、-(CH2CH2-O)r1-H以外の部分(R-[-(ZO)p-(AO)q-]mが、上記連結基に相当する。
【0046】
・活性水素含有化合物(R[-H]m)
上記式(1)における上記活性水素含有化合物(R[-H]m)は、活性水素を3個有する化合物(m=3)であれば特に制限されない。例えば、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン;ポリオキシプロピレントリオールのようなポリエーテルトリオールが挙げられる。上記ポリエーテルトリオールは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
R[-H]mが例えば1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン又はグリセリンである場合、上記式(1)におけるqが1以上であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0047】
・Z
Zは炭素数2~12のアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの組合せを表す。上記アルキレン基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
Zとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0048】
・A
Aは炭素数3のアルキレン基を表す。炭素数3のアルキレン基としては、トリメチレン基(直鎖状である)、プロピレン基(分岐している)が挙げられる。
【0049】
・p
pは0又は1~500を表す。pは0が好ましい。
・q
qは0又は1~1000を表す。ポリオール化合物(a1)を製造する際に上記活性水素含有化合物(R[-H]m)として例えばポリオキシプロピレントリオールを使用した場合、qは0であってもよい。
・r1
r1は1又は2以上を表す。r1は2以上が好ましく、500以下とできる。
【0050】
<数平均分子量>
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)の数平均分子量(Mn)は、1,000を超え20,000以下である。
上記Mnは、本発明の効果により優れるという観点から、2,000~15,000であることが好ましく、5,000~10,000であることがより好ましい。
【0051】
本発明において、ポリオール化合物(a1)の数平均分子量は、下記式(Mn-1)によって算出できる。
ポリオール化合物(a1)の数平均分子量=(56100/OHV)×(ポリオール化合物(a1)が1分子あたりに有する活性水素含有基の数) (Mn-1)
本発明において、ポリオール化合物(a1)が1分子あたりに有する活性水素含有基の数は「3」である。
【0052】
・OHV
上記式(Mn-1)において、OHVはポリオール化合物(a1)の水酸基価(単位:mgKOH/g)である。「OHV」は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定した値である。
【0053】
・ポリオール化合物(a1)が1分子あたりに有する活性水素含有基の数
「ポリオール化合物(a1)が1分子あたりに有する活性水素含有基の数」は、上記と同様である。
【0054】
<不飽和度>
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)の不飽和度は0.01meq/g以下である。上記不飽和度が所定の範囲であることによって、本発明の組成物は初期接着性及び長期接着性に優れる。
上記不飽和度は、本発明の効果により優るという観点から、0.001~0.008meq/gであることが好ましい。
上記不飽和度は、JIS K1557-3:2007に規定された方法に準拠して測定できる。
【0055】
<分子量分布>
本発明において、上記ポリオール化合物(a1)の分子量分布(Mw/Mn)は1.05以下である。
上記分子量分布は、本発明の効果により優れるという観点から、0.98~1.02であることが好ましい。
【0056】
上記分子量分布は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
上記分子量分布(Mw/Mn)は、分離カラムに粒径3μmの充填剤を充填したカラム4本を直列接続し、レファレンス側に抵抗管を接続、展開溶媒にテトラヒドロフランを用いた条件で測定して分析した分子量分布であることが好ましく、標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線を用いて算出した分子量分布(Mw/Mn)であることが望ましい。
本発明において、上記分子量分布の測定方法の詳細について、例えば、特開2017-206600号公報([0061]~[0075]、[0197])等を引用できる。
【0057】
ポリオール化合物(a1)の製造方法は、特に制限はなく、例えば、従来公知の製造方法で製造することができる。例えば、開始剤としての上記活性水素含有化合物(R[-H]m、m=3。例えば、ポリオキシプロピレントリオール)にイミノ基含有フォスファゼニウム塩触媒等のような塩基触媒、更に必要に応じてアルミニウム化合物のようなルイス酸を用いて所定の分子量まで、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド等)を開環重合させる方法が挙げられる。
上記イミノ基含有フォスファゼニウム塩触媒としては、例えば、特開2011-132179号公報に記載されたものが挙げられる。
【0058】
<イソシアネート基に対する化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率>
本発明において、上記ウレタンプレポリマーが有する上記イソシアネート基に対する、上記化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率は、0.2以上0.8未満である。
上記モル比率が所定の範囲であることによって、本発明は、初期接着性、長期接着性、養生後の接着性に優れる。
上記モル比率が0.8を超える場合、初期接着性又は長期接着性が劣る場合がある。又は、養生後の接着性が劣る場合がある。
上記モル比率は、本発明の効果により優れ、養生後の接着性に優れるという観点から、0.2~0.7であることが好ましく、0.3~0.6であることがより好ましい。
【0059】
(ポリオール化合物(a2))
上記化合物(A)は、本発明の効果により優れ、硬化性(例えば、40~80℃環境下で5~60分程度の加熱を行った場合でのウレタンプレポリマーとの反応に起因した、初期の硬化性)に優れるという観点から、更に、1分子中に3個以上の活性水素含有基を有し、数平均分子量が200~1,000であるポリオール化合物(a2)を含むことが好ましい。
上記ポリオール化合物(a2)はヒドロキシ基を複数有する化合物である。
【0060】
・活性水素含有基
上記ポリオール化合物(a2)は、活性水素含有基としてヒドロキシ基を有していればよい。
上記ポリオール化合物(a2)は、1分子中に3個以上の活性水素含有基(例えば、ヒドロキシ基)を有することができる。上記ポリオール化合物(a2)が1分子中に有することができる活性水素含有基(ヒドロキシ基)の数は、本発明の効果により優れるという観点から、4個以上が好ましく、4~6個がより好ましい。
【0061】
・・末端
上記ポリオール化合物(a2)は、本発明の効果(特に初期接着性(具体的には例えば、接着初期の迅速な硬化性))により優れ、硬化性(例えば、40~80℃環境下で5~60分程度の加熱を行った場合でのウレタンプレポリマーとの反応に起因した、初期の硬化性)に優れるという観点から、末端にエチレンオキサイドを有することが好ましい。
なお、上記「末端」とは、上記ポリオール化合物(a2)全体に対して、末端であることを意味する。
【0062】
上記エチレンオキサイドは、例えば、-(CH2-CH2-O)r2-で表すことができる。
上記r2は、1又は2以上とできる。r2の上限は例えば、250以下とできる。
上記r2は、2以上であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、本明細書において、上記r2が2以上である場合、上記エチレンオキサイドを「ポリエチレンオキサイド」と称する場合がある。
ポリオール化合物(a2)が上記エチレンオキサイドを複数有する場合、複数のエチレンオキサイドは同じであっても異なってもよい。
【0063】
上記エチレンオキサイドは2価の基なので、上記エチレンオキサイドが上記ポリオール化合物(a2)の末端に位置するとき、エチレンオキサイドの端部には、別の基が結合し得る。
上記別の基としては、例えば、ポリオール化合物(a2)が有する活性水素含有基(ヒドロキシ基)が挙げられる。
上記活性水素含有基としてのヒドロキシ基が上記エチレンオキサイドの端部に結合する場合、上記ヒドロキシ基を構成する酸素原子が、上記エチレンオキサイドにおける端部の酸素原子を構成してもよい。
【0064】
具体的には例えば、上記ヒドロキシ基が上記-(CH2CH2-O)r2-とが連結して、-(CH2CH2-O)r2-Hを形成することができる。
【0065】
上記ポリオール化合物(a2)は、本発明の効果により優れるという観点から、上記-(CH2CH2-O)r2-Hを1分子中に3個以上有することが好ましく、4個以上がより好ましく、4~6個が更に好ましい。
複数の-(CH2CH2-O)r2-Hは同じであっても異なってもよい。
【0066】
(連結基)
上記ポリオール化合物(a2)において、上記エチレンオキシドは、連結基に結合できる。
上記連結基は、3価以上の基であれば特に制限されない。
上記連結基としては、例えば、ポリエーテルが挙げられる。
上記連結基としてのポリエーテルは、例えば、上記「・・・ポリエーテル」にしたポリエーテルと同様とできる。
【0067】
(式(2)で表される化合物)
上記ポリオール化合物(a2)としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
R-[-(ZO)p-(AO)q-(CH2CH2-O)r2-H]m (2)
上記式(2)において、Rは、式(2)で表される化合物を製造する際に使用された活性水素含有化合物(R[-H]m)からm個の活性水素を除いたm価の基を表す。
mは3以上である。
Zは炭素数2~12のアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの組合せを表す。
Aは炭素数3のアルキレン基を表す。
複数のZ又はAがある場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。
pは0又は1~250、qは1~500、r2はそれぞれ独立に1又は2以上を表す。
p、q、r2はそれぞれ独立に整数であってもよい。
p+q+r2は、ポリオール化合物(a2)が有する数平均分子量に対応させることができる。
【0068】
なお、上記式(2)における-(CH2CH2-O)r2-Hは、上記ポリオール化合物(a1)が有する上記活性水素含有基としてのヒドロキシ基が上記エチレンオキサイドに結合した場合に相当する。
また、上記式(2)における、-(CH2CH2-O)r2-H以外の部分(R-[-(ZO)p-(AO)q-]mは、上記連結基に相当する。
【0069】
・活性水素含有化合物(R[-H]m)
上記式(2)における上記活性水素含有化合物(R[-H]m)は、活性水素をm個有する化合物(mは3以上)であれば特に制限されない。例えば、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリンのような3官能の化合物;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのような4官能以上の化合物が挙げられる。
【0070】
・Z
Zは炭素数2~12のアルキレン基、シクロアルキレン基又はこれらの組合せを表す。上記アルキレン基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
Zとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
【0071】
・A
Aは炭素数3のアルキレン基を表す。炭素数3のアルキレン基としては、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。
【0072】
・p
pは0又は1~250を表す。pは0が好ましい。
・q
qは1~500を表す。
・r1
r2は1又は2以上を表す。r2は2以上が好ましく、250以下とできる。
【0073】
・・数平均分子量
上記ポリオール化合物(a2)の数平均分子量(Mn)は、本発明の効果(特に初期接着性(具体的には例えば、接着初期の迅速な硬化性))により優れ、硬化性(例えば、40~80℃環境下で5~60分程度の加熱を行った場合でのウレタンプレポリマーとの反応に起因した、初期の硬化性)に優れるという観点から、200~1,000であることが好ましい。
本発明において、ポリオール化合物(a2)の数平均分子量は、上記ポリオール化合物(a1)と同様にして算出できる。
【0074】
ポリオール化合物(a2)の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、開始剤としての上記活性水素含有化合物(R[-H]m、mは3以上)に、例えば、水酸化カリウム、複合金属シアン化物錯体触媒等のような触媒を用いて、アルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシド)を開環重合させる方法が挙げられる。
【0075】
・・ポリオール化合物(a1)が有する活性水素の量(H1)
上記化合物(A)が更に上記ポリオール化合物(a2)を含む場合、上記ポリオール化合物(a1)が有する活性水素の量(H1)は、本発明の効果により優れ、初期接着性(具体的には例えば、接着直後における迅速な硬化性)と長期接着性とを非常に高いレベルでバランスさせることができるという観点から、上記量(H1)と上記ポリオール化合物(a2)が有する活性水素の量(H2)との合計に対して、20~80モル%であることが好ましく、30~70モル%であることがより好ましい。
【0076】
・・ポリオール化合物(a2)が有する活性水素の量(H2)
上記化合物(A)が更に上記ポリオール化合物(a2)を含む場合、上記ポリオール化合物(a2)が有する活性水素の量(H2)は、本発明の効果により優れ、初期接着性(具体的には例えば、接着直後における迅速な硬化性)と長期接着性とを非常に高いレベルでバランスさせることができるという観点から、上記量(H1)と上記量(H2)との合計に対して、80~20モル%であることが好ましく、70~30モル%であることがより好ましい。
【0077】
(他の任意成分)
本発明の組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、イソシアヌレート化合物、テルペン樹脂のような接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。
また、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
また、後述する任意成分の含有量は、本発明の組成物に含有されうる、各任意成分の全体の量を表す。各任意成分を上記含有量で主剤又は硬化剤の何れに添加してもよいし、上記含有量を分けて主剤及び硬化剤に添加してもよい。
【0078】
・カーボンブラック
本発明の組成物は、更にカーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは特に制限されない。例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
具体的には、上記SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、ISAFとしてはショウワブラックN220(昭和キャボット社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、ニテロン#200(新日化カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(中部カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シースト5(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱#5(三菱化学社製)、FTとしては旭サーマル(旭カーボン社製)、HTC#20(中部カーボン社製)、MTとしては旭#15(旭カーボン社製)等が例示される。
【0079】
カーボンブラックの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30~70質量部が好ましく、40~60質量部がより好ましい。
【0080】
・炭酸カルシウム
本発明の組成物は、更に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0081】
炭酸カルシウムの含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、20~150質量部が好ましく、20~120質量部がより好ましく、30~70質量部が更に好ましい。
【0082】
カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
【0083】
・硬化触媒
上記硬化触媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸などカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;オクチル酸ビスマスなどのビスマス触媒;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどのスズ触媒;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(例えば、DMP-30)、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含む化合物などの第三級アミン触媒等が挙げられる。
【0084】
硬化触媒は、所定の接着性により優れるという点で、ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むことが好ましい。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造は、ジモルフォリノジエチルエーテルを基本骨格とする構造である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0085】
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、例えば、下記式(9)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
上記式(9)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基であり、m、nはそれぞれ独立に0、1又は2である。
ジモルフォリノジエチルエーテル構造を含むアミン系触媒としては、具体的には例えば、ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、ジ(メチルモルフォリノ)ジエチルエーテル、ジ(ジメチルモルフォリノ)ジエチルエーテルが挙げられる。
硬化触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
硬化触媒の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.05~2.0質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましく、0.15~0.45質量部が更に好ましい。
本発明において、上記化合物(A)が上記ポリオール化合物(a1)を含むので、上記硬化触媒の含有量を従来よりも少なく設定しても、本発明の組成物を基材に適用した際、初期段階で素早く接着が発現し、初期接着性に優れる。
【0087】
・可塑剤
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
可塑剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましい。
【0088】
(製造方法)
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、上記主剤に含有される各成分、上記硬化剤に含有される各成分をそれぞれ別の容器に入れて、各容器内を窒素ガス雰囲気下で混合する方法により製造することができる。
【0089】
(使用方法)
本発明の組成物の使用方法としては上記主剤と上記硬化剤とを混合して使用すればよい。
【0090】
本発明の組成物は、例えば、基材を接着するために使用することができる。
【0091】
(基材)
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。好適な基材としては、プラスチックを含む基材が挙げられる。プラスチックは、例えば、単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。ゴムも同様である。
【0092】
上記プラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)のようなポリオレフィン;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;アセテート樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂);ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、上記COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
プラスチックは、難接着性樹脂であってもよい。
【0093】
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、例えば、フレーム処理、コロナ処理、イトロ処理が挙げられる。上記各表面処理の方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0094】
基材は、ポリオレフィンを含む基材が好適に挙げられる。
基材は、上記プラスチック(例えば、ポリオレフィン)又はゴムの他に、更に、例えば、充填剤等を含むことができる。
上記充填剤としては、例えば、炭素繊維;
ガラスフィラーのようなガラス;
タルク、炭酸カルシウム、アルミナが挙げられる。
【0095】
本発明の組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0096】
(硬化)
本発明の組成物は、例えば、5~90℃、相対湿度5~95%の条件下で硬化できる。
【0097】
・硬化のメカニズム
本発明者は本発明の組成物の硬化のメカニズムを以下のように推察する。
本発明の組成物は、硬化剤が上記ポリオール化合物(a1)を含有するので、主剤と硬化剤とを混ぜ、基材に適用すると、初期の段階において、ウレタンプレポリマーと上記ポリオール化合物(a1)とが素早く反応して(ウレタン結合を形成)、本発明の組成物は半硬化の状態になることができる。
このように、本発明の組成物が素早く半硬化の状態になると、基材をある程度固定すること(仮止め)ができるので、作業性に優れる。
また、本発明の組成物において、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に対する化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.8未満であるため、化合物(A)と反応した後の本発明の組成物において、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基が未反応で残存しうる。ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基同士が、例えば湿気等の水分によって反応する場合、上記反応速度は一般的に遅い。
このため、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基同士が、例えば湿気等の水分によってゆっくりと反応して(ウレア結合を形成)硬化し接着剤層を形成しつつ、その一方、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基は、基材に付与された当初から、基材と結合又は相互作用することによって上記接着剤層が基材と接着できる。
このように、本発明の組成物は、初期段階において半硬化し、その後徐々に硬化しながら基材とも十分に接着し得る。このため、本発明の組成物は初期接着性(具体的には例えば、初期の接着の立ち上がりに優れる)及び長期接着性(接着性に対する長期的な信頼性)に優れると考えられる。
【0098】
(用途)
本発明の組成物の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、自動車用接着剤、建築部材用シーラントが挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0100】
<<ポリオール化合物(a1)の調製>>
イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用して脱水及び脱溶媒を十分に行い、ここに、3官能であり、分子量400のポリオキシプロピレンポリオール、及び、十分に脱水したエチレンオキシドを加え、上記ポリオキシプロピレンポリオールに上記エチレンンオキシドを付加して、(活性水素含有基として)1分子中に3個のヒドロキシ基を有し(3官能)、末端にエチレンオキサイドを有するポリプロピレングリコールを得た。上記ポリプロピレングリコールをポリオール化合物(a1-1)とする。
ポリオール化合物(a1-1)は下記式で表すことができる。
式:(上記分子量400のポリオキシプロピレンポリオールの残基)-[(CH2-CH2-O)r1-H]3(r1はそれぞれ独立に1以上)
上記式において、「(上記分子量400のポリオキシプロピレンポリオールの残基)」が上記式(1)中のRに該当し、上記式(1)中のp及びqは0である。
ポリオール化合物(a1-1)のOHV、数平均分子量、官能基数(1分子中に有する活性水素含有基の数)、不飽和度、及び、分子量分布等を第1表に示す。ポリオール化合物(a2-1)についても同様である。
【0101】
<<2液ウレタン系接着剤組成物の製造>>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、各主剤、各硬化剤を製造した。
次に、上記のとおり製造された主剤100gと、上記のとおり製造された硬化剤とを第1表に示す「主剤/硬化剤」欄に示す質量比で混合し、2液ウレタン系接着剤組成物(接着剤組成物)を得た。
なお、第1表において、ウレタンプレポリマー1の量は、ウレタンプレポリマー1に含まれるウレタンプレポリマーの正味の量である。また、第1表において使用されたウレタンプレポリマー1に含まれる可塑剤(DINP)の量は、第1表の主剤の「可塑剤1」の使用量に含まれる。ウレタンプレポリマー2についても同様である。
【0102】
<<評価>>
上記のとおり製造された各接着剤組成物を用いて後述するサンプルを作製し、上記サンプルを用いて引張剪断試験を行って、初期接着性(初期接着性1)、養生後の接着性(初期接着性2)、及び、長期接着性(長期接着性1、2)を評価した。結果を第1表に示す。
【0103】
(引張剪断試験)
各サンプルについて、JIS K6850:1999に準じて引張剪断試験(引張り速度50mm/分、20℃の環境下)を行い、剪断強度(MPa)を測定し、引張剪断試験後のサンプルの破壊状態を目視で確認した。
【0104】
(破壊状態の評価基準)
上記破壊状態が接着剤層の凝集破壊のみであった場合、これを「CF」と表示した。
「AF」は接着剤層が、被着体との界面で剥離したこと(界面剥離)を意味する。
「AF/CF」は、破壊状態がCFとAFとの混在であったことを意味する。
破壊状態が「CF」であることが好ましい。
【0105】
(評価基準)
・初期接着性の評価(初期接着性1)
本発明において、初期接着性を初期接着性1で評価した。
本発明において、初期接着性1の破壊状態が「CF」である場合、初期接着性に優れるものとする。破壊状態が「CF」であり、かつ、剪断強度が1.8MPa以上である場合、初期接着性により優れるものとする。
なお、初期接着性について破壊状態の評価結果が同等であった場合、剪断強度が高いほうを、初期接着性に優れるものとする。
【0106】
・養生サンプルの接着性の評価(初期接着性2)
初期接着性2の破壊状態が「CF」であることが、後述する養生サンプルの接着性が優れるという観点から好ましい。
また、初期接着性2の剪断強度は2.5MPa以上であることが、養生サンプルの接着性が優れるという観点から好ましい。
なお、養生サンプルの接着性について破壊状態の評価結果が同等であった場合、剪断強度が高いほうを、養生サンプルの接着性に優れるものとする。
【0107】
・長期接着性
本発明において、長期接着性1及び2の破壊状態が「CF」である場合、長期接着性に優れるものとする。
長期接着性1の剪断強度は2.5MPa以上であることが好ましい。
長期接着性2の剪断強度は2.5MPa以上であることが好ましい。
なお、長期接着性1について破壊状態の評価結果が同等であった場合、剪断強度が高いほうを、長期接着性1に優れるものとする。長期接着性2についても同様である。
【0108】
<サンプルの作製>
ポリプロピレン樹脂(商品名ノーブレン、住友化学社製)からなる基板(幅:25mm、長さ:120mm、厚さ:3mm)の片面にフレーム処理を施した被着体を2枚用意した。
各被着体をフレーム処理後、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて樹脂表面の濡れ性が45.0mN/m以上であることを確認した。
次いで、一方の被着体の表面(フレーム処理を施した面)に、上記のとおり製造した各接着剤組成物を幅25mm、長さ10mm、厚さ5mmとなるように塗布した後、他方の被着体の表面(フレーム処理を施した面)と張り合わせて、サンプルを得た。
【0109】
<接着性>
・初期接着性1(1時間後)
上記のとおり得られたサンプルを、25℃、相対湿度50%RHの条件下に1時間置いた。
1時間経過後、上記サンプルについて、上記引張剪断試験を行った。
【0110】
・初期接着性2(3日後)
上記のとおり得られたサンプルを、25℃、相対湿度50%RHの条件下に3日間置いて、養生サンプルを得た。
上記養生サンプルについて、上記引張剪断試験を行った。
【0111】
・長期接着性1(水浸漬老化後)
上記のとおり得られた養生サンプルを、50℃の水中に14日間置き、14日後水から養生サンプルを引き上げて、水浸漬老化後サンプルを得た。
上記水浸漬老化後サンプルについて、上記引張剪断試験を行った。
【0112】
・長期接着性2(熱老化後)
上記のとおり得られた養生サンプルを、90℃の条件下に14日間置き、熱老化後サンプルを得た。
上記熱老化後サンプルについて、上記引張剪断試験を行った。
【0113】
【0114】
なお、第1表に示すモル比率*1欄の数値は比率であって百分率で表示されていない。比較例1のモル比率*1を百分率で表すと40モル%となる。第1表のモル比率*2も同様である。
【0115】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(主剤)
・ウレタンプレポリマー1:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、数平均分子量2,000)25質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名エクセノール5030、旭硝子社製、数平均分子量5,000)50質量部とMDI(商品名スミジュール44S、住化コベストロウレタン社製。以下同様)とをNCO/OH(モル比)が1.6となるように用い、これらに更に可塑剤(DINP)20質量部を混合し、得られた混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー。得られたウレタンプレポリマーをウレタンプレポリマー1とする。ウレタンプレポリマー1のNCO含有量:1.48質量%
【0116】
・ウレタンプレポリマー2
上述のとおり調製されたポリオール化合物(a1-1)とMDIとをNCO/OH(モル比)が2.2となるように用い、これらに更に可塑剤(DINP)20質量部を混合し、得られた混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー。得られたウレタンプレポリマーをウレタンプレポリマー2とする。ウレタンプレポリマー2のNCO含有量:1.45質量%
【0117】
・化合物1:下記式(C1-2)で表されるペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(三井化学社製)。NCO含有量23.6質量%
【化3】
【0118】
・化合物2:下記式(8)で表されるテルペン樹脂。YSレジンCP(ヤスハラケミカル社製)
【化4】
上記式(8)中、mは2~3を表し、nは1~2を表す。
【0119】
・カーボンブラック:商品名#200MP、新日化カーボン社製
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
【0120】
・可塑剤1:ジイソノニルフタレート(DINP)、ジェイプラス社製
・硬化触媒1:ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、商品名UCAT-660M、サンアプロ社製
【0121】
(硬化剤)
・比較ポリオール化合物:末端にポリエチレンオキサイドを有するオキシポリオキシプロピレントリオール。商品名プレミノール7001K、旭硝子社製。比較ポリオール化合物を製造の際使用された触媒は複合金属シアン化物錯体(DMC触媒)である。上記比較ポリオール化合物は不飽和度及び分子量分布が所定の範囲を外れる。
【0122】
・ポリオール化合物(a1-1):上記のとおり調製したポリオール化合物(a1-1)ポリオール化合物(a1-1)は上記ポリオール化合物(a1)に該当する。
【0123】
・ポリオール化合物(a2-1):エクセノール450ED、旭硝子社製。4官能であり、末端にエチレンオキサイドを有する、ポリオキシプロピレンテトラオール。ポリオール化合物(a2-1)は、式:ポリオキシプロピレン-[(CH2-CH2-O)r2-H]4(r2はそれぞれ独立に1以上)で表すことができる。なお、上記式において、上記式(2)における「R」は省略されている。上記式における「ポリオキシプロピレン-」が連結基に該当する。
ポリオール化合物(a2-1)は上記ポリオール化合物(a2)に該当する。
【0124】
・炭酸カルシウム2:脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム、カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・硬化触媒2:ジモルフォリノジエチルエーテル(DMDEE)、商品名UCAT-660M、サンアプロ社製
【0125】
第1表に示す結果から明らかなように、硬化剤が所定のポリオール化合物(a1)を含まず、代わりに、不飽和度及び分子量分布が異なる比較ポリオール化合物を含む比較例1、3は、初期接着性及び長期接着性が低かった。
ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に対する、化合物(A)が有する活性水素全量のモル比率が0.8以上である比較例2は、初期接着性及び長期接着性が低かった。
【0126】
これに対して、本発明の組成物は、初期接着性及び長期接着性に優れた。