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特許7158906パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20221017BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20221017BHJP
   C07C 21/20 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C07C17/25
B01J31/02 102Z
C07C21/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018114895
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019218275
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2019-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-25
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 友亮
(72)【発明者】
【氏名】中井 勝也
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 敦
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】伊藤 佑一
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-26240(JP,A)
【文献】特表2011-509268(JP,A)
【文献】特開2001-192346(JP,A)
【文献】特開2001-192347(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103922890(CN,A)
【文献】特開2019-218276(JP,A)
【文献】特開2004-26800(JP,A)
【文献】特開2001-192345(JP,A)
【文献】ソ連国特許発明第540858(SU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、含ヨウ素無機材料、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2X4 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2、X3及びX4は同一又は異なって、X1は塩素原子を示し、X2、X3及びX4はハロゲン原子を示す。ただし、X3及びX4の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程
を備え
前記反応工程が、
前記含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と前記有機溶媒とを含む溶液と、前記含窒素化合物とを混合する第1混合工程、及び
前記第1混合工程の後に、得られた混合液を前記一般式(2)で表される化合物と混合する第2混合工程
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記含ヨウ素無機材料の使用量が、前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.0005モル以上であり、且つ、前記有機溶媒の溶解度以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記含ヨウ素無機材料がヨウ素及び/又は金属ヨウ化物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1混合工程においては、前記亜鉛若しくは亜鉛合金を含む溶液に対して、前記含窒素化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間の添加速度で添加する、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2混合工程においては、前記第1混合工程で得られた混合液に対して、前記一般式(2)で表される化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.05~30mol/時間の添加速度で添加する、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1混合工程は、前記含ヨウ素無機材料と亜鉛若しくは亜鉛合金と前記有機溶媒とを含む溶液と前記含窒素化合物とを混合する際に50~200℃の温度である、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記含窒素化合物がN,N-ジメチルホルムアミドである、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒の沸点が、前記含窒素化合物の沸点以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルカジエン化合物は、半導体用ドライエッチングガスの他、各種冷媒、発泡剤、熱移動媒体等として有用な化合物であり、炭素-炭素間に2つの二重結合を有している。特に、炭素数が4個であり両末端に二重結合を有するヘキサフルオロブタジエンは、様々な用途に活用されている。
【0003】
このパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法としては、有機溶媒の存在下、所望の温度でMg、Zn、Cd、Li等の有機金属化合物を反応剤として用いて、ICF2CF2CF2CF2I等の化合物を脱IFさせることによる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。一方、パーフルオロアルカジエン化合物の製造方法としては、ICF2CF2CF2CF2I等の化合物の脱IFを金属亜鉛及び含窒素化合物の存在下で行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-26240号公報
【文献】特開2001-192345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、分離しにくい不純物の生成量を少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物を高収率に得ることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の構成を包含する。
項1.一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、含ヨウ素無機材料、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2X4 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2、X3及びX4は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはなく、且つ、X3及びX4の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物を反応させる反応工程
を備える、製造方法。
項2.前記含ヨウ素無機材料の使用量が、前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.0005モル以上であり、且つ、前記有機溶媒の溶解度以下である、項1に記載の製造方法。
項3.前記含ヨウ素無機材料がヨウ素及び/又は金属ヨウ化物である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記反応工程が、前記含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と前記有機溶媒とを含む溶液と、前記含窒素化合物とを混合する第1混合工程を含む、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.前記第1混合工程においては、前記亜鉛若しくは亜鉛合金を含む溶液に対して、前記含窒素化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間の添加速度で添加する、項4に記載の製造方法。
項6.前記反応工程が、前記第1混合工程の後に、得られた混合液を前記一般式(2)で表される化合物と混合する第2混合工程を含む、項4又は5に記載の製造方法。
項7.前記第2混合工程においては、前記第1混合工程で得られた混合液に対して、前記一般式(2)で表される化合物を前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.05~30mol/時間の添加速度で添加する、項6に記載の製造方法。
項8.前記第1混合工程は、前記含ヨウ素無機材料と亜鉛若しくは亜鉛合金と前記有機溶媒とを含む溶液と前記含窒素化合物とを混合する際に50~200℃の温度である、項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.前記含窒素化合物がN,N-ジメチルホルムアミドである、項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
項10.前記有機溶媒の沸点が、前記含窒素化合物の沸点以下である、項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
項11.一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物と、
一般式(3):
CF2=CF-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (3)
[式中、nは前記に同じである。X3はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
一般式(4A):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF=CF2 (4A)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物、及び/又は一般式(4B):
CF2H-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (4B)
[式中、nは前記に同じである。X2及びX3は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、
一般式(5):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (5)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物と
を含有する、パーフルオロアルカジエン組成物。
項12.前記パーフルオロアルカジエン組成物の総量を100モル%として、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が80~99.8モル%である、項11に記載のパーフルオロアルカジエン組成物。
項13.前記パーフルオロアルカジエン化合物が、ヘキサフルオロブタジエンである、項11又は12に記載のパーフルオロアルカジエン組成物。
項14.項11~13のいずれか1項に記載のパーフルオロアルカジエン組成物からなる、エッチングガス、冷媒、熱移動媒体、発泡剤又は樹脂モノマー。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、分離しにくい不純物の生成量を少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物を高収率に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0009】
本開示のパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法は、一般式(1):
CF2=CF-(CF2)n-4-CF=CF2 (1)
[式中、nは4~20の整数を示す。]
で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の製造方法であって、
有機溶媒中で、含窒素化合物、含ヨウ素無機材料、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、
一般式(2):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2X4 (2)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2、X3及びX4は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはなく、且つ、X3及びX4の双方がフッ素原子となることはない。]
を反応させる反応工程
を備える。
【0010】
本開示においては、特許文献1及び2の方法と比べて収率よく、しかも、特許文献2と比べて1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン等の分離しにくい不純物を抑制して、目的物を得ることができる。
【0011】
一般式(1)及び(2)において、nは4~20の整数、より好ましくは4~10の整数である。この範囲とすることにより、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる。
【0012】
つまり、製造しようとする一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物は、ヘキサフルオロブタジエン(CF2=CF-CF=CF2)、オクタフルオロペンタジエン(CF2=CF-CF2-CF=CF2)、デカフルオロヘキサジエン(CF2=CF-CF2-CF2-CF=CF2)等が挙げられる。
【0013】
一般式(2)において、X1、X2、X3及びX4はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1、X2、X3及びX4は同一でも異なっていてもよい。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となる場合や、X3及びX4の双方がフッ素原子となる場合は反応が進行せずパーフルオロアルカジエン化合物が得られないことから、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはなく、且つ、X3及びX4の双方がフッ素原子となることはない。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる観点から、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましく、X3としてはフッ素原子、塩素原子等(特にフッ素原子)が好ましく、X4としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に臭素原子、ヨウ素原子等)が好ましい。
【0014】
このような条件を満たす一般式(2)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2I、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2I、BrCF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br等が挙げられ、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得ることができる観点から、ClCF2-CFCl-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2I、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2I、BrCF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br等が好ましく、BrCF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2Br等がより好ましい。
【0015】
この一般式(2)で表される化合物の使用量は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、後述の亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して、0.05~30モルが好ましく、0.1~10モルがより好ましく、0.2~5モルがさらに好ましい。
【0016】
含窒素化合物としては、窒素原子を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、アミド化合物(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド等)、アミン化合物(トリエチルアミン等)、ピリジン化合物(ピリジン、メチルピリジン、N-メチル-2-ピロリドン等)、キノリン化合物(キノリン、メチルキノリン等)等が挙げられる。これら含窒素化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、アミド化合物が好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
【0017】
この含窒素化合物は、常温で液体である化合物も含まれるが、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、溶媒ではなく添加剤として使用する(少量使用する)ことが好ましい。含窒素化合物の使用量は、後述の亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して、0.25~4モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましい。
【0018】
含ヨウ素無機材料としては、ヨウ素原子を含有する無機材料であれば特に制限はなく、例えば、ヨウ素;典型金属ヨウ化物(ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等)、遷移金属ヨウ化物(ヨウ化亜鉛等)等の金属ヨウ化物等が挙げられる。なお、本開示の製造方法によれば、生成物中に不純物としてハロゲン化亜鉛(フッ化亜鉛、塩化亜鉛及びヨウ化亜鉛の混合物)が生成され得る。この生成物中に含まれる不純物としてのハロゲン化亜鉛を、含ヨウ素無機材料として使用し、本開示の製造方法に再利用することも可能である。これら含ヨウ素無機材料は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、ヨウ素、遷移金属ヨウ化物、本開示の製造方法による生成物中の不純物としてのハロゲン化亜鉛等が好ましく、ヨウ素がより好ましい。なお、含ヨウ素無機化合物の代わりに、含ハロゲン材料として、フッ化亜鉛や塩化亜鉛等のように、ヨウ素を含まない材料を使用した場合にはパーフルオロアルカジエン化合物の収率を向上させる効果は得られない。
【0019】
この含ヨウ素無機化合物の使用量は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.0005モル以上であり、且つ、有機溶媒の溶解度以下であることが好ましく、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.001~0.1モルがより好ましい。
【0020】
亜鉛若しくは亜鉛合金において、亜鉛合金を使用する場合に含まれ得る元素としては、例えば、鉛、カドミウム、鉄等が挙げられる。なお、市販の亜鉛には、鉛、カドミウム、鉄等の不純物が含まれていることもある。本開示ではこれらの不純物を含むものも包含される。
【0021】
有機溶媒としては、特に一般式(1)で表される化合物、含ヨウ素無機材料等を溶解させる観点から非極性有機溶媒が好ましい。この有機溶媒は、沸点が含窒素化合物の沸点以下であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物等が挙げられる。
【0022】
有機溶媒の使用量は、溶媒量であれば特に制限はなく、亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して、0.01~10モルが好ましく、0.1~5モルがより好ましい。
【0023】
本開示の製造方法では、有機溶媒中で、含窒素化合物、含ヨウ素無機材料、並びに亜鉛若しくは亜鉛合金の存在下に、一般式(2)で表される化合物を反応させる。この添加順序は特に制限はなく、同時に投入することもできるし、逐次的に投入することもできる。なかでも、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液と、含窒素化合物とを混合する(特に、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に対して、含窒素化合物を添加する)ことが好ましい。
【0024】
含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液において、各成分の含有量は上記した各成分の含有割合を満たすように調整することが好ましい。なお、一般式(2)で表される化合物を後の工程で混合(特に添加)する場合は、混合(特に添加)する予定の一般式(2)で表される化合物の量を考慮のうえで各成分の含有量を調整することが好ましい。
【0025】
含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液と含窒素化合物とを混合する(含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に対して含窒素化合物を添加する)場合、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液を好ましくは50~200℃、より好ましくは100~150℃の温度で含窒素化合物と混合することが好ましい。特に、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液を好ましくは50~200℃、より好ましくは100~150℃の温度で含窒素化合物を添加することが好ましい。また、含ヨウ素無機材料と亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を還流しながら含窒素化合物を添加することで、溶媒が反応温度より低いために反応温度となると揮発し、それを冷却してまた反応器へ戻すことができる。含ヨウ素無機材料と亜鉛若しくは亜鉛合金並びに有機溶媒を含む溶液を還流しながら含窒素化合物を添加する場合は、溶液を還流温度下に加熱することが最も好ましい。
【0026】
加熱(特に還流温度下に加熱)後、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液と含窒素化合物とを混合する。例えば、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に含窒素化合物を添加する場合は、その添加速度(滴下速度)は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.1~600mol/時間が好ましく0.33~60mol/時間がより好ましい。添加時間は反応が十分に進行する程度とすることが好ましく、特に、含窒素化合物を添加した総量が上記した範囲になるように調整することが好ましい。具体的には、添加時間は0.002~10時間が好ましく、0.02~3時間がより好ましい。
【0027】
上記した本開示の製造方法において、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液と含窒素化合物とを混合する(特に、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に対して含窒素化合物を添加する)場合、基質である一般式(2)で表される化合物は、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液中に含まれていてもよい(以下、「基質前添加」と言うこともある)し、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液と含窒素化合物とを混合した(特に、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に含窒素化合物を添加した)後に、このようにして得られた溶液と基質である一般式(2)で表される化合物と混合(特に、このようにして得られた溶液に基質である一般式(2)で表される化合物を添加)してもよい(以下、「基質後添加」と言うこともある)。これらのなかでも、亜鉛若しくは亜鉛合金と含窒素化合物とをあらかじめ反応させておくことで、一般式(2)で表される化合物と含窒素化合物とが反応して分離しにくい不純物が生成することをより抑制し、結果的にパーフルオロアルカジエン化合物の収率もより向上させる観点から、基質後添加が特に好ましい。
【0028】
基質前添加を採用する場合、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液中に含まれる一般式(2)で表される化合物の含有量が、上記した各成分の含有割合を満たすように調整することが好ましい。
【0029】
基質後添加を採用する場合、含ヨウ素無機材料と前記亜鉛若しくは亜鉛合金と有機溶媒とを含む溶液に含窒素化合物を添加した後に、このようにして得られた溶液に基質である一般式(2)で表される化合物を添加する場合における一般式(2)で表される化合物の添加速度(滴下速度)は、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物をより高収率に得られる観点から、前記亜鉛若しくは亜鉛合金1モルに対して0.05~30mol/時間が好ましく、0.17~6mol/時間がより好ましい。添加時間は反応が十分に進行する程度とすることが好ましく、特に、一般式(2)で表される化合物を添加した総量が上記した範囲になるように調整することが好ましい。具体的には、添加時間は0.02~10時間が好ましく、0.08~3時間がより好ましい。
【0030】
なお、上記以外の反応条件は特に制限はなく、例えば、反応雰囲気は不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等)が好ましく、反応時間(最高到達温度における維持時間)は反応が十分に進行する程度とすることができる。反応終了後は、常法にしたがって精製処理を行い、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物を得ることができる。
【0031】
このような本開示の製造方法によれば、分離しにくい不純物の生成量をより少なくしつつ一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の収率を高くしたものであり、分離しにくい不純物の単離の労力を低減するとともに効率的に一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物を得ることができる。なお、分離しにくい不純物は、例えば一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物としてヘキサフルオロブタジエンを得ようとする場合は、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(CF3CF=CHCF3)等が挙げられる。
【0032】
このようにして得られる一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物は、半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスをはじめとして、冷媒、熱移動媒体、発泡剤、樹脂モノマー等の各種用途に有効利用できる。
【0033】
このようにして、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物を得ることができるが、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物と、一般式(3):
CF2=CF-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (3)
[式中、nは前記に同じである。X3はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、一般式(4A):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CF=CF2 (4A)
[式中、nは前記に同じである。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物、及び/又は一般式(4B):
CF2H-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (4B)
[式中、nは前記に同じである。X2及びX3は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
で表される化合物と、一般式(5):
CF2X1-CFX2-(CF2)n-4-CFX3-CF2H (5)
[式中、nは前記に同じである。X1、X2及びX3は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。ただし、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。]
で表される化合物とを含有する、パーフルオロアルカジエン組成物の形で得られることもある。
【0034】
一般式(3)において、X3はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。一般式(2)と同様に、X3としてはフッ素原子、塩素原子等(特にフッ素原子)が好ましい。このような条件を満たす一般式(3)で表される化合物としては、例えば、CF2=CF-CF2-CF2H、CF2=CF-CF2-CF2-CF2H、CF2=CF-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられる。
【0035】
一般式(4A)において、X1及びX2はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。ただし、一般式(2)と同様に、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。一般式(2)と同様に、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましい。このような一般式(4A)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF2-CF=CF2、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、ClCF2-CFCl-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF=CF2、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2等が好ましく、BrCF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF=CF2、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF=CF2等がより好ましい。
【0036】
一般式(4B)において、X2及びX3はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X2及びX3は同一でも異なっていてもよい。一般式(2)と同様に、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましく、X3としてはフッ素原子、塩素原子等(特にフッ素原子)が好ましい。このような条件を満たす一般式(4B)で表される化合物としては、例えば、HCF2-CFCl-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、HCF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、HCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が好ましい。
【0037】
一般式(5)において、X1、X2及びX3はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1、X2及びX3は同一でも異なっていてもよい。ただし、一般式(2)と同様に、X1及びX2の双方がフッ素原子となることはない。一般式(2)と同様に、X1としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等(特に塩素原子、臭素原子等)が好ましく、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等(特にフッ素原子、塩素原子等)が好ましく、X3としてはフッ素原子、塩素原子等(特にフッ素原子)が好ましい。特にX3がフッ素原子である場合には、この一般式(5)で表される化合物は液相中に多く発生し気相中にはほとんど存在しないため、捕集ボンベの気相のみを分析した場合は検出されない。つまり、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物は、捕集ボンベの気相及び液相の双方に存在する不純物から構成されるものである。このような条件を満たす一般式(5)で表される化合物としては、例えば、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、ICF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が挙げられ、一般式(2)と同様の理由で、ClCF2-CFCl-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2H、ClCF2-CFCl-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等が好ましく、BrCF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2H、BrCF2-CF2-CF2-CF2-CF2-CF2H等がより好ましい。
【0038】
この本開示のパーフルオロアルカジエン組成物において、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物の総量を100モル%として、一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物の含有量は80~99.8モル%(特に85~99モル%)が好ましく、一般式(3)で表される化合物の含有量は0.1~12モル%(特に0.5~10モル%)が好ましく、一般式(4A)及び/又は(4B)で表される化合物の総含有量は0.01~0.6モル%(特に0.02~0.5モル%)が好ましく、一般式(5)で表される化合物の含有量は0.05~1モル%(特に0.1~0.5モル%)が好ましい。また、本開示のパーフルオロアルカジエン組成物において、上記以外の成分(その他成分)の含有量は、0~5モル%(特に0.01~4モル%)が好ましい。このその他成分には分離しにくい不純物(一般式(1)で表されるパーフルオロアルカジエン化合物としてヘキサフルオロブタジエンを得ようとする場合は、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(CF3CF=CHCF3)等)が含まれ得ることからその他成分の含有量は極力少なくすることが好ましい。
【0039】
このような本開示のパーフルオロアルカジエン組成物は、上記したパーフルオロアルカジエン化合物単独の場合と同様に、半導体、液晶等の最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスをはじめとして、冷媒、熱移動媒体、発泡剤、樹脂モノマー等の各種用途に有効利用できる。
【実施例
【0040】
以下に実施例を示し、本開示の特徴を明確にする。本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;ZnI 2 0.18モル%
-78℃に冷却したトラップが連結されたコンデンサー付きナスフラスコに200g(0.53mol)のキシレン、34.93g(0.53mol)の亜鉛、0.30g(0.001mol;亜鉛に対して0.18mol%)のZnI2を加え、撹拌下、内温が140℃になるまで加熱した。内温が一定になった後、還流しながらN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を滴下速度0.52mol/時間(亜鉛1モルに対して1.04mol/時間)で1時間滴下し、撹拌しながら0.5時間加熱還流を続けた。次いで、還流しながら原料(ClCF2-CFCl-CF2-CF2I)を滴下速度0.24mol/時間(亜鉛1モルに対して0.48mol/時間)で1時間滴下し、攪拌しながら3時間加熱還流を続け反応させた。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が88モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが8.2モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.051モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.32モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計3.4モル%であった。
【0042】
実施例2:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;ZnI 2 0.6モル%
ZnI2の使用量を0.95g(0.003mol;亜鉛に対して0.56mol%)としたこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が91モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが6.8モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.042モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.18モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計2.0モル%であった。
【0043】
実施例3:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;ZnI 2 1.6モル%
ZnI2の使用量を2.70g(0.53mol;亜鉛に対して1.6mol%)としたこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が93モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.6モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.082モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.27モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計1.0モル%であった。
【0044】
実施例4:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;I 2 1.6モル%
0.30g(0.001mol;亜鉛に対して0.18mol%)のZnI2ではなく、2.20g(0.009mol;亜鉛に対して1.6mol%)のI2を使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が96モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが2.6モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.031モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.17モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計1.2モル%であった。
【0045】
実施例5:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;NaI 1.6モル%
0.30g(0.001mol;亜鉛に対して0.18mol%)のZnI2ではなく、1.27g(0.0085mol;亜鉛に対して1.6mol%)のNaIを使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が91モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが6.1モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.053モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.32モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計2.5モル%であった。
【0046】
実施例6:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;NaI 3.2モル%
0.30g(0.001mol;亜鉛に対して0.18mol%)のZnI2ではなく、2.54g(0.017mol;亜鉛に対して3.2mol%)のNaIを使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が94モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.1モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.044モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが0.12モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計0.72モル%であった。
【0047】
参考例1:ClCF 2 -CFCl-CF 2 -CF 2 I;含ヨウ素無機材料なし
ZnI2を使用しなかったこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が78モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが14モル%、ClCF2-CFCl-CF=CF2が0.66モル%、ClCF2-CFCl-CF2-CF2Hが1.5モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計5.9モル%であった。
【0048】
実施例7:ICF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 I;ZnI 2 1.6モル%
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくICF2-CF2-CF2-CF2Iを使用し、ZnI2の使用量を2.70g(0.53mol;亜鉛に対して1.6mol%)としたこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が87モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが5.4モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.2モル%、ICF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計3.3モル%であった。
【0049】
参考例2:ICF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 I;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくICF2-CF2-CF2-CF2Iを使用し、ZnI2を使用しなかったこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が63モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが25モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.2モル%、ICF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計7.7モル%であった。
【0050】
実施例8:BrCF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 Br;ZnI 2 1.6モル%
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくBrCF2-CF2-CF2-CF2Brを使用したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が96モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが3.0モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが0.51モル%、BrCF2-CF2-CF2-CF2Hが0.28モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計0.21モル%であった。
【0051】
参考例3:BrCF 2 -CF2-CF 2 -CF 2 Br;含ヨウ素無機材料なし
基質としてClCF2-CFCl-CF2-CF2IではなくBrCF2-CF2-CF2-CF2Brを使用し、ZnI2を使用しなかったこと以外は実施例1と同様に処理を行った。反応終了後、捕集ボンベの気相、液相及び反応液をガスクロトマトグラフィーで分析し、それぞれを考慮して転化率及び選択率を算出したところ、転化率は100モル%であり、各成分の選択率は、CF2=CFCF=CF2が76モル%、CF2=CF-CF2-CF2Hが13モル%、HCF2-CF2-CF2-CF2Hが1.9モル%、BrCF2-CF2-CF2-CF2Hが2.1モル%、その他副生成物(CF3CF=CHCF3等)が合計7.0モル%であった。
【0052】
結果を表1~3に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】