(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/238 20220101AFI20221017BHJP
【FI】
F24H15/238
(21)【出願番号】P 2018126540
(22)【出願日】2018-07-03
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】紺村 健二
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-108303(JP,A)
【文献】特開平06-050604(JP,A)
【文献】特開2017-078518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水管から供給される冷水をガスバーナによって加熱して温水として出湯する給湯装置であって、出湯量を検知する流量センサを備え、出湯量がゼロであり上記ガスバーナが消火状態から上記流量センサが検知する流量が点火流量に到達すると、ガスバーナに点火して上記冷水を加熱すると共に、このガスバーナが燃焼状態から上記流量センサが検知する流量が減少し、消火流量に到達するとガスバーナを消火するように構成されており、上記点火流量をこの消火流量よりも大きな値に設定し、点火流量と消火流量との間にヒステリシスを設定した給湯装置において、上記上水管から供給される冷水の水圧を検知し、
上記出湯量がゼロの状態での水圧に対する変動値を継続して求め、この水圧の変動値が所定の値より小さい場合に、上記点火流量を上記消火流量に近づける補正を行うことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
上記点火流量についての補正は、上記流量センサが検知する流量が消火流量を下回り、ガスバーナが消火された後に行うこと
を特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
上記冷水の水圧の変動値が増加すると、上記点火流量を上記消火流量から離す方向に補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の給湯装置。
【請求項4】
上記点火流量の値を不揮発性メモリに記憶させ、電源が投入された際にこの不揮発性メモリに記憶されている点火流量の値を読み出すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出湯量を検知する流量センサを備え、ガスバーナが消火している状態から流量センサが検知する流量を増加させてガスバーナが点火する点火流量と、流量を絞っていきガスバーナが消火する消火流量とが相違する流量に設定されている給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置から給湯される給湯管の先端には、カランなどの出湯部が設けられている。このカランなどの出湯部が閉栓されており、給湯装置から出湯への流量がゼロの状態では給湯装置内のガスバーナは消火状態にある。このように流量がゼロの状態から出湯部で開栓が行われ、流量が増加し、流量が予め設定されている点火流量に達すると、ガスバーナが点火されて上水管からの冷水が加熱されて温水となり、出湯部に給湯される。
【0003】
逆に、ガスバーナが点火状態で出湯部に温水が給湯されている状態から、出湯部が閉栓されて流量が減少されていくと、流量が予め設定されている消火流量まで減少した時点でガスバーナが消火される。
【0004】
これら点火流量と消火流量とを同じ流量値に設定しておくと、流量がその流量値に近い状態で給湯している場合に、上記上水管の冷水の圧力が変動をすることにより流量が変動すると、上記給湯部での開栓量を変化させていないにもかかわらずガスバーナが点消火を繰り返すチャタリング状態になる。このようなチャタリング状態を回避するため、点火流量を消火流量よりも大きな値に設定することによって点火流量と消火流量との間にヒステリシスを設定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-50604号公報(段落0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の給湯装置では、上記ヒステリシスを設定する際に、上水管から供給される類推の圧力は一定であることを前提として設定されている。ところが、給湯装置に冷水を供給するための上水管には他の給湯装置などに冷水を供給する給水管が多数接続されている場合があり、他の給湯装置が作動すると給水管から供給される冷水の水圧は低下する。また、作動する他の給湯装置が複数あり、その作動する給湯装置の個数が変動すると、その変動に伴って給水管から供給される冷水の水圧も変動する。このように、給水管から供給される冷水の水圧が変動することを考慮して、上記点火流量は上記消火流量よりも比較的大きな流量に設定されている。
【0007】
ところが、点火流量を消火流量から大きく離すと、出湯部の開栓量を徐々に開けていき、流量を増やしていっても点火流量までなかなか到達せず、相当量の冷水が出湯部から流出されるまで温水が出湯されないという不具合が生ずる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、可及的に速やかにガスバーナが点火して給湯を開始することのできる給湯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による給湯装置は、上水管から供給される冷水をガスバーナによって加熱して温水として出湯する給湯装置であって、出湯量を検知する流量センサを備え、出湯量がゼロであり上記ガスバーナが消火状態から上記流量センサが検知する流量が点火流量に到達すると、ガスバーナに点火して上記冷水を加熱すると共に、このガスバーナが燃焼状態から上記流量センサが検知する流量が減少し、消火流量に到達するとガスバーナを消火するように構成されており、上記点火流量をこの消火流量よりも大きな値に設定し、点火流量と消火流量との間にヒステリシスを設定した給湯装置において、上記上水管から供給される冷水の水圧を検知し、上記出湯量がゼロの状態での水圧に対する変動値を継続して求め、この水圧の変動値が所定の値より小さい場合に、上記点火流量を上記消火流量に近づける補正を行うことを特徴とする。
【0010】
上記圧力センサを設けることにより、上水管から供給される冷水の圧力を検知し、その冷水の圧力が安定している場合には点火流量を消火流量に近づけることによって、開栓からガスバーナの点火までの時間が短くなるようにした。
【0011】
なお、上記点火流量についての補正は次回の給湯開始時に発揮される必要がある。そのため、上記点火流量についての補正は、上記流量センサが検知する流量が消火流量を下回り、ガスバーナが消火された後に行うこととした。
【0012】
ところで、上記冷水の圧力変動が少なく、点火流量を消火流量に近づける補正を行った後で、冷水の圧力変動が大きくなった場合には、点火流量を元の流量に戻す必要がある。そこで、上記冷水の水圧の変動値が増加すると、上記点火流量を上記消火流量から離す方向に補正を行うようにした。
【0013】
上記点火流量に対する補正は、停電などの後、再度給湯を開始する際にも持続させておくことが望ましい。そこで、上記点火流量の値を不揮発性メモリに記憶させ、電源が投入された際にこの不揮発性メモリに記憶されている点火流量の値を読み出すようにした。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、点火流量を消火流量よりも大きな値に設定し、両者の間にヒステリシスを設定している場合に、上水管から供給される冷水の圧力変動値が小さく安定している場合に、そのヒステリシスを小さくする補正を行う。その結果、給湯開始からガスバーナの点火までの時間が短くなり、使用勝手をよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、1は給湯装置であり、内部に熱交換器2を備えている。この熱交換器には上水管3からの冷水が導かれ、ガスバーナ11によって加熱されて冷水が温水となり給湯管21からカランなどの給湯部4に給湯される。上水管3と熱交換器2との間には熱交換器2に流れる冷水の流量を検知する流量センサ22と冷水の水圧を検知する圧力センサ23とが設けられている。
【0017】
図2を参照して、上記給湯部4での開栓量とこの給湯部4から流出する流量、すなわち流量センサ22で検知される流量とは直線L1に示すように正比例の関係にある。この直線L1に沿って流量がゼロから増加し点火流量F1まで流量が増加すると、上記ガスバーナ11に点火される。さらに流量が増加すると、図示しない給湯温度を検知する温度センサによるフィードバック制御により、ガスバーナ11の火力が調節される。給湯部4での開栓量を絞り、流量が減少すると、点火流量F1を下回ってもガスバーナ11は燃焼を継続する。そして流量が消火流量E1を下回ると、そこでガスバーナ11が消火される。
【0018】
上水管3から供給される冷水の水圧が減少すると、給湯部4での開栓量と流量との関係は直線L1から直線L2に変更される。すると、点火流量に相当する開栓量は点火1からF2の点火2に変化する。同じく、消火流量に相当する開栓量は消火1から消火2に変化する。このように、冷水の水圧が変化しても点火流量の開栓量が消火流量の開栓量より上回るように、点火流量は消火流量より大きな値に設定されている。ところが、冷水の水圧が変動せず安定している場合には、点火流量を消火流量に近づけても支障はない。
【0019】
図3を参照して、本図に示す制御は従来の制御とほとんど同じである。最初に、圧力センサ23による検知を開始する(S11)。その後、流量センサ22によって検知される流量が点火流量を上回るまで待機し、上回ればガスバーナ11に点火を行う(S12,S13)。そして、ガスバーナ11が、燃焼中は流量が消火流量以下まで下がるかどうか検知し続け(S14)、流量が消火流量を下回ればガスバーナ11を消火する(S15)。
【0020】
本発明の特徴は、点火流量を補正することにある。
図4を参照して、上記圧力センサ23が検知する冷水の水圧から圧力変動値Vを算出する(S21)。この圧力変動値Vの算出は特定の算出方法に限定されるものではなく、目的に応じて適宜の算出方法を採用すればよい。
【0021】
ステップS21で算出された圧力変動値Vが、予め設定されている基準となる圧力変動値V1より小さければ、すなわち圧力変動が少なければ、上記点火流量を減少させ消火流量に近づける(S23)。逆に、算出された圧力変動値Vが基準となる圧力変動値V1よりも大きければ、点火流量は予め設定されている初期位置にリセットする(S25)。そして、S23もしくはS25で決定された点火流量値を不揮発メモリであるEEPROMに格納する(S24)。このように、圧力変動値の補正は常に行うが、上記
図3に示したS15でガスバーナ11が消火された後、再び流量が増加してガスバーナ11を点火する際に、その時点で不揮発メモリ(EEPROM)に格納されている点火流量値を用いて上記S12の判断を行う。
【0022】
このように、ガスバーナ11が消火した後、再点火される際に点火流量が補正されるが、例えば停電などによってガスバーナ11が消火した場合であっても、補正された点火流量は不揮発メモリに記憶されているので、S12で点火流量について判断する際には、上述のように不揮発メモリ内に記憶されている点火流量値を用いる。
【0023】
ところで、上記実施の形態では、冷水の水圧を検知するために狭義の圧力センサ23を用いたが、冷水の水圧を検知できる手段であればいずれのものを使用してもよい。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 給湯装置
2 熱交換器
3 上水管
4 給湯部
11 ガスバーナ
22 流量センサ
23 圧力センサ