(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】車両用空調操作装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
B60H1/00 103D
(21)【出願番号】P 2018139426
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】土井 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健二
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-306378(JP,A)
【文献】特開2004-210019(JP,A)
【文献】特開2017-076258(JP,A)
【文献】特開平04-019248(JP,A)
【文献】特開平11-007332(JP,A)
【文献】特開平09-280214(JP,A)
【文献】米国特許第05218879(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
G05G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに回動可能に配置された伝達シャフトと、
前記ベースの前側に配置され、前記伝達シャフトに対向する挿通孔を有する操作パネルと、
前記操作パネルの前面に配置され、前記挿通孔を通して前記伝達シャフトに連結された操作ノブと
を備え、
前記ベー
スは、
貫通孔と、前記貫通孔の周囲から前記操作パネルに向けて突出する筒状の保持部と、締結部材が固定される固定部
とを備え、
前記伝達シャフトは、前記保持部内に配置されて前記保持部によって径方向への移動が規制された鍔部を備え、
前記固定部は、前記貫通孔の軸線が延びる方向から見て少なくとも一部が前記保持部内に位置し、前記操作パネルに向けて突出するように形成され、
前記鍔部には、前記保持部内に位置する前記固定部に対応する切欠部が形成され、
前記操作パネルの前記挿通孔の周囲には、前記固定部に対向し、前記締結部材が挿入される挿入孔が設けられており、
前記固定部と前記挿入孔は、前記操作ノブの外形よりも内側に配置されている、車両用空調操作装置。
【請求項2】
前記伝達シャフトは、前記操作パネル側から前記貫通孔を通して前記ベースの背面側に配置されたギア部を備え、
前記固定部は、前記ギア部の最大外径部分よりも外側に配置されている、請求項1に記載の車両用空調操作装置。
【請求項3】
前記切欠部の縁形状は前記固定部の外形よりも大きく、
前記伝達シャフトの回転軸を中心とした周方向における前記切欠部と前記固定部の隙間は、この隙間分回動した前記伝達シャフトの回転角度が、前記ギア部の歯の1ピッチ分の回転角度よりも小さくなるように、設定されている、請求項
2に記載の車両用空調操作装置。
【請求項4】
前記伝達シャフトの軸方向における前記鍔部と前記ギア部との間には、径方向外側に付勢された係止部材を収納する収納部が設けられ、
前記保持部内には、前記係止部材が係脱する節度溝を有する節度部が設けられており、
前記固定部の後端と前記節度部の前端との間には、前記鍔部の前後方向の厚みよりも大きい間隔の隙間が形成されている、請求項
2又は
3に記載の車両用空調操作装置。
【請求項5】
前記ギア部はかさ歯車である、請求項2から
4のいずれか1項に記載の車両用空調操作装置。
【請求項6】
ベースと、
前記ベースに回動可能に配置された伝達シャフトと、
前記ベースの前側に配置され、前記伝達シャフトに対向する挿通孔を有する操作パネルと、
前記操作パネルの前面に配置され、前記挿通孔を通して前記伝達シャフトに連結された操作ノブと
を備え、
前記ベースは、貫通孔と、前記貫通孔の周囲から前記操作パネルに向けて突出する筒状の保持部
と、締結部材が固定される固定部とを備え、
前記伝達シャフトは
、前記保持部内に配置され
て前記保持部によって径方向への移動が規制された鍔
部を備え、
前記固定部は、
前記貫通孔の軸線が延びる方向から見て前記保持部よりも外側に形成さ
れ、
前記操作パネルの前記挿通孔の周囲には、前記固定部に対向し、前記締結部材が挿入される挿入孔が設けられており、
前記固定部と前記挿入孔は、前記操作ノブの外形よりも内側に配置されている、車両用空調操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両用空調操作装置は、ベースと、ベースの前側(車室側)に配置された操作パネルとを備える。操作パネルの前面に配置された操作部材の回動操作が、ベースに回動可能に保持された伝達シャフトを介して、空調ユニットに伝達される。操作部材は、操作パネルに設けられた挿通孔を通して操作パネルの背面から突出し、伝達シャフトの一端に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に車両用空調操作装置では、操作パネルはねじ等でベースに対して固定される。特許文献1では、ベースの背面側から挿入したねじによって、操作パネルがベースに対して固定される。この場合、ベースを車体に組み付ける前に操作パネルをベースに固定する必要があり、組付作業性が悪い。操作パネルの前面側から挿入したねじによって、操作パネルをベースに対して固定し得る。しかし、この場合、ねじの頭部が操作パネルの前面に位置し、外観向上のために、ねじの頭部を何らかの部材で隠す必要がある。
【0005】
車両用空調操作装置において、組付作業性を確保しつつ、ねじ等の締結部材が外部に露出しないように遮蔽することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ベースと、前記ベースに回動可能に配置された伝達シャフトと、前記ベースの前側に配置され、前記伝達シャフトに対向する挿通孔を有する操作パネルと、前記操作パネルの前面に配置され、前記挿通孔を通して前記伝達シャフトに連結された操作ノブとを備え、前記ベースは、貫通孔と、前記貫通孔の周囲から前記操作パネルに向けて突出する筒状の保持部と、締結部材が固定される固定部とを備え、前記伝達シャフトは、前記保持部内に配置されて前記保持部によって径方向への移動が規制された鍔部を備え、前記固定部は、前記貫通孔の軸線が延びる方向から見て少なくとも一部が前記保持部内に位置し、前記操作パネルに向けて突出するように形成され、前記鍔部には、前記保持部内に位置する前記固定部に対応する切欠部が形成され、前記操作パネルの前記挿通孔の周囲には、前記固定部に対向し、前記締結部材が挿入される挿入孔が設けられており、前記固定部と前記挿入孔は、前記操作ノブの外形よりも内側に配置されている、車両用空調操作装置を提供する。また、前記固定部は、前記貫通孔の軸線が延びる方向から見て前記保持部よりも外側に形成され、前記操作パネルの前記挿通孔の周囲には、前記固定部に対向し、前記締結部材が挿入される挿入孔が設けられており、前記固定部と前記挿入孔は、前記操作ノブの外形よりも内側に配置されている、車両用空調操作装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用空調操作装置では、操作パネルの前側から挿入した締結部材によって、操作パネルをベースに対して締結できるため、車体に対するベースと操作パネルの組付作業性を確保できる。また、締結部材の固定部と挿入孔が操作ノブの外形よりも内側に配置され、操作ノブによって締結部材を遮蔽できるため、操作パネルの美観が損なわれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調操作装置を正面側から見た上方分解斜視図。
【
図2】車両用空調操作装置を背面側から見た下方分解斜視図。
【
図6】ベースへの伝達シャフトの組付状態を示す正面図。
【
図7】ベースへの操作パネルの組付状態を示す正面図。
【
図8】操作パネルへの操作ノブの組付状態を示す正面図。
【
図9】伝達シャフトを組み付けたベースを正面側から見た斜視図。
【
図10】第1伝達シャフトと第1保持部を示す分解斜視図。
【
図11】第2伝達シャフトと第2保持部を示す分解斜視図。
【
図18】保持部への伝達シャフトの組付状態を示す正面図。
【
図20】第2実施形態の保持部と伝達シャフトを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0010】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る車両用空調操作装置10を示す。この空調操作装置10は、車両に搭載された空調ユニット1を操作するために設けられ、車室のインストルメントパネルに配置されている。
【0011】
(空調操作装置の概要)
図1及び
図2に示すように、空調操作装置10は、回動式の操作ノブ24A,24Bを備える。操作ノブ24Aは例えば送風モード切換用であり、操作ノブ24Bは例えば温度調節用である。操作ノブ24A,24Bの回動操作は、伝達シャフト20A,20B、ギアレバー22A,22B、及びケーブル2A,2Bを介して空調ユニット1に伝達される。これにより空調ユニット1の動作が、操作ノブ24A,24Bの操作に応じた態様に切り換わる。伝達シャフト20A,20B又はギアレバー22A,22Bの回動位置を検出するスイッチ素子を配置するとともに、空調操作装置10と空調ユニット1をリード線によって電気的に接続し、操作ノブ24A,24Bの回動操作を電気的に伝達してもよい。
【0012】
空調操作装置10は、ベース12と、ベース12の前側に配置された操作パネル17とを備える。
図3及び
図4を併せて参照すると、ベース12には、伝達シャフト20A,20Bとギアレバー22A,22Bが回動可能に配置される。操作パネル17には操作ノブ24A,24Bが回動可能に配置される。
【0013】
ベース12は、樹脂製であり、運転席の正面に位置するインストルメントパネルの背面側(車両の前側)に配置される。ベース12は、基板12aと、基板12aの上端から背面側へ突出した突出板12bとを備える。
【0014】
基板12aは、車幅方向かつ車高方向に延びるように、インストルメントパネルに対向して配置される。
図1及び
図2に示すように、基板12aの外周には、前方へ筒状に突出した補強用の枠板12cが設けられている。基板12aには、伝達シャフト20A,20Bを回動可能に保持するシャフト配置部13A,13Bが設けられている。シャフト配置部13A,13Bはそれぞれ、伝達シャフト20A,20Bを前面側から背面側へ貫通させる貫通孔13aと、貫通孔13aの周囲から前向きに突出した円筒状の保持部13bとを備える。
【0015】
突出板12bは、車幅方向かつ車長方向に延びるように配置される。
図1及び
図2に示すように、基板12aとの連続部分を除く突出板12bの外周には、下向きに突出した補強用の枠板12dが設けられている。枠板12dの両側部分は、基板12aの枠板12cの両側部分に対して同一平面上に位置し、互いに連続している。
図3及び
図4を参照すると、突出板12bの下面には、シャフト配置部13A,13Bの背部に位置するように、ギアレバー22A,22Bを回動可能に配置するレバー配置部15A,15Bが設けられている。レバー配置部15A,15Bはそれぞれ、ギアレバー22A,22Bを回動可能に配置する円筒部15aと、伝達シャフト20A,20Bを軸支する軸受部15bとを備える。
【0016】
操作パネル17は、樹脂製であり、ベース12の基板12aの前側に配置され、インストルメントパネルの一部を構成する。
図1及び
図2を参照すると、操作パネル17には、ベース12のシャフト配置部13A,13Bの前側に位置するようにノブ配置部18A,18Bが設けられている。ノブ配置部18A,18Bはそれぞれ、貫通孔13aと同一軸線上に位置する挿通孔18aを備える。
【0017】
図1から
図4に示すように、伝達シャフト20A,20Bは、ノブ配置部18A,18Bの挿通孔18aに対向するように、シャフト配置部13A,13Bに回動可能に配置される。伝達シャフト20A,20Bはそれぞれ、回転軸Aに沿って同一軸線上に位置する軸部20a、ギア部20b、及び連結部20dを備える。軸部20aは、貫通孔13aを貫通して基板12aの背面側に配置され、レバー配置部15A,15Bの軸受部15bに軸支される。ギア部20bは、軸部20aの前側に設けられ、貫通孔13aを貫通し、基板12aの背面側のレバー配置部15A,15Bの直下に配置される。連結部20dは、四角筒状をなすようにギア部20bの前側に設けられ、基板12aから操作パネル17に向けて突出している。また、ギア部20bと連結部20dの間には、保持部13b内に配置される概ね円板状の鍔部20eが更に設けられている。
【0018】
図3及び
図4に示すように、ギアレバー22A,22Bは、レバー配置部15A,15Bに回動可能に配置される。ギアレバー22A,22Bはそれぞれ、基部22a、ケーブル接続部22b、及びギア部22cを備える。基部22aは、円筒部15aに外嵌可能な内径の円環状に形成されている。ケーブル接続部22bは、基部22aから基部22aの径方向外向きに突出しており、先端にケーブル2A,2Bがそれぞれ接続される。ギア部22cは、基部22aの周方向の定められた角度範囲に、扇形状に形成されており、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bとそれぞれ噛み合っている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、操作ノブ24A,24Bは、操作パネル17のノブ配置部18A,18Bに回動可能に配置され、伝達シャフト20A,20Bの連結部20dに連結される。操作ノブ24A,24Bはそれぞれ、操作部24a、及び被連結部24dを備える。操作部24aは、操作部24aの軸方向から見て円形状であり、操作パネル17の前面側に配置されている。操作部24aには、概ね長円形状をなすように前向きに突出する摘まみ24bが形成されている。被連結部24dは、挿通孔18aを貫通して操作パネル17の背面側に配置される。被連結部24dの先端には、伝達シャフト20A,20Bの連結部20dが挿入される嵌入孔24fと、連結部20dの側部に係止される係止片24eとが形成されている。
【0020】
操作ノブ24A,24Bの操作によって伝達シャフト20A,20Bが一体に回動し、ギア部20b,22cの噛み合いによって、伝達シャフト20A,20Bの回動に応じた向きにギアレバー22A,22Bが回動する。これによりケーブル接続部22bに接続されたケーブル2A,2Bを介して空調ユニット1に操作が伝達される。
【0021】
なお、操作パネル17の操作ノブ24A,24Bの周囲には、ベース12に配置したバルブ等(発光手段)の光を透過させる開口(図示せず)が設けられ、操作パネル17の前面には調節する機能に応じた表示(マーク)が印刷された透光性フィルム(図示せず)が配置される。これにより、バルブ等によって表示が点灯する。
【0022】
(ベースと操作パネルの固定構造の概要)
ベース12をインストルメントパネルの背面側に仮止めするために、これらには図示しない係止構造が設けられている。係止構造は、ベース12をインストルメントパネルに係止できれば、どのような構成であってもよい。また、操作パネル17をインストルメントパネルの前側から配置してベース12に固定するために、
図1に示すように、ベース12にはボス(固定部)14が設けられ、操作パネル17にはねじ孔(挿入孔)19が設けられている。前側からねじ(締結部材)26をねじ孔19に挿入してボス14に締め付けることで、ベース12と操作パネル17が締結される。なお、締結部材は、ベース12と操作パネル17が締結可能であれば必要に応じて変更してもよい。
【0023】
図5及び
図6に示すように、ボス14は、シャフト配置部13A,13Bの貫通孔13aの周囲にそれぞれ設けられている。
図7及び
図8に示すように、ねじ孔19は、ボス14の前側に対向するように、ノブ配置部18A,18Bの挿通孔18aの周囲にそれぞれ設けられている。回転軸Aが延びる方向から見て、ボス14とねじ孔19は操作ノブ24A,24Bの外形よりも内側に配置され、操作ノブ24A,24Bによってねじ26が外部(車室側)に露出しないように遮蔽している。
【0024】
具体的には、
図9から
図13に示すように、シャフト配置部13A,13Bには、貫通孔13a、保持部13b、節度部13d、及びボス14が形成されている。
【0025】
貫通孔13aは、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bを貫通可能な範囲で、可能な限り小さい直径で形成された開口である。伝達シャフト20A,20Bのギア部20bは、軸部20aから連結部20dに向けて次第に拡径したかさ歯車であり、その最大外径部分の寸法よりも貫通孔13aの直径は大きい。貫通孔13aの縁には、操作パネル17に向けて突出する円筒状リブからなる支持部13cが形成されている。
【0026】
保持部13bは、貫通孔13aの周囲から操作パネル17に向けて円筒状に突出し、内部に伝達シャフト20A,20Bの鍔部20eを保持する。保持部13bの直径は、貫通孔13aの直径よりも大きく、操作ノブ24A,24Bの操作部24aの直径よりも小さい。
【0027】
図5を参照すると、節度部13dは、保持部13bの内面から保持部13bの中心に向けて突出する第1部分13eと、ボス14の形成領域を迂回する第2部分13fとを備え、保持部13bの軸方向に延びている。節度部13dの前端は保持部13bの前端よりも背面側に位置され、これらの間に定められた段差が形成されている。第1部分13eの内周には、保持部13bの径方向外向きに窪み、保持部13bの軸方向に延びる節度溝13gが設けられている。節度溝13gの数は、操作ノブ24A,24Bの操作によって空調ユニット1の動作を切り換える数に対応する。第2部分13fは、貫通孔13aを中心とした周方向におけるボス14の両側から、支持部13cにかけて延びている。
【0028】
ボス14は、操作ノブ24A,24Bの操作部24aの外周壁24cと、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bの最大外径部との間に位置するように、基板12aから操作パネル17に向けて円筒状に突出している。つまり、ボス14は、操作部24aの外周壁24cとギア部20bの最大外径部との間に配置されていれば、保持部13bの外側に突出していても支持部13cの内側に突出していてもよい。
図5を参照すると、本実施形態のボス14は、貫通孔13aの軸線が延びる方向から見て、外周部の一部が保持部13b内に位置するように配置されている。また、円形状のボス14は、円形状の保持部13bに内接する位置に設けられている。
【0029】
図12及び
図13に最も明瞭に示すように、ボス14は、保持部13bの前側端から突出している。ボス14の後端と節度部13dの前端との間には、保持部13bと節度部13dの間の段差に相当する隙間16が形成されている。この隙間16の前後方向の間隔Dは、鍔部20eの前後方向の厚みT(
図14参照)よりも大きい。この隙間16に鍔部20eが配置されることで、ボス14が保持部13b内に突出していても、伝達シャフト20A,20Bの回動範囲が制限されることはない。
【0030】
図1及び
図7に示すように、操作パネル17のノブ配置部18A,18Bは、ベース12に向けて背面側へ窪む円形状の凹部18bをそれぞれ備える。凹部18bの直径は、操作ノブ24A,24Bの操作部24aの直径よりも僅かに大きく、保持部13bの直径よりも大きい。基板12aに対向する凹部18bの底には、挿通孔18aと、ねじ孔19とが設けられている。
【0031】
挿通孔18aは、シャフト配置部13A,13Bの貫通孔13aよりも小径で、操作ノブ24A,24Bの被連結部24dを貫通可能な範囲で、可能な限り小さい直径で形成された開口である。
【0032】
ねじ孔19は、ボス14の前側に対向するように、挿通孔18aの周囲にそれぞれ設けられている。本実施形態では、凹部18bの底からベース12に向けて更に窪み、ボス14の前端に当接する扇形状の窪み18cが設けられ、この窪み18cの底にねじ孔19が形成されている。窪み18cの深さ、つまり凹部18bの底から窪み18cの底までの寸法は、ねじ26の軸方向における頭部26a(
図1参照)の厚みよりも大きい。
【0033】
図14から
図18に示すように、伝達シャフト20A,20Bは、レバー配置部15A,15Bの軸受部15bに軸支される軸部20a、かさ歯車からなるギア部20b、及び操作ノブ24A,24Bを連結する連結部20dを備える。また、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bと連結部20dの間には、鍔部20eと挿通部20gとが設けられている。
【0034】
鍔部20eは、保持部13b内に配置され、ボス14と節度部13dの間の隙間16に一部が位置する。
図18を参照すると、鍔部20eは、保持部13bの内径よりも小さく、保持部13b内で回動可能な範囲で、可能な限り大きい直径で形成されている。鍔部20eには、ボス14に対応する切欠部20fが形成されている。切欠部20fの形状は、保持部13b内に位置するボス14の一部の形状に対応しており、本実施形態では概ね半円形状である。
【0035】
図19を参照すると、切欠部20fの内径(縁形状)はボス14の外径(外形)よりも大きく、これらの間には直径差に応じた隙間21が形成される。この隙間21は、隙間21分回動した伝達シャフト20A,20Bの回転角度θ1が、
図17に示すギア部20bの歯20cの1ピッチ分の回転角度θ2よりも小さくなるように、設定されている。詳しくは、
図19では、回転軸Aを中心とした伝達シャフト20A,20Bの周方向の回動によって、ボス14の下部に切欠部20fの縁を当接させた状態を示している。この状態で、回転軸Aを中心とした周方向の隙間21(例えば0.5mm)の角度範囲は、シャフト配置部13A,13Bへの伝達シャフト20A,20Bの組付時、伝達シャフト20A,20Bが回動可能な回転角度θ1(例えば1.9度)に相当する。この回転角度θ1(隙間21の角度範囲)が、
図17に示す伝達シャフト20A,20Bのギア部20bの歯20cの1ピッチ分の回転角度θ2(例えば24度)よりも小さくなるように、設定されている。
【0036】
図14及び
図15に示すように、挿通部20gは、鍔部20eに対してギア部20bの方に隣接して設けられている。挿通部20gは、中間部分が貫通孔13a内に位置するように、シャフト配置部13A,13Bに配置される。挿通部20gは、貫通孔13a内で回動可能な範囲で、可能な限り大きい直径で形成されている。挿通部20gの対向部には一対の切り欠き20hが設けられ、この切り欠き20hの形成部分に弾性的に変形可能な係止片20iがそれぞれ設けられている。係止片20iは、基板12aの前側から貫通孔13aを貫通し、基板12aの背面側で貫通孔13aの周囲に係止する(
図4参照)。
【0037】
図14を参照すると、切り欠き20hの形成部分を除く挿通部20gの外周には、保持部13b内に位置する部分に、筒状に突出する1つの突出部(収納部)20jが形成されている。つまり、突出部20jは、軸方向において鍔部20eとギア部20bとの間に設けられている。突出部20jには、節度溝13gに係止する球状の係止部材28と、軸部20aの径方向外側へ係止部材28を付勢するスプリング29とが配置される。伝達シャフト20A,20Bの回転によって係止部材28が節度溝13gに係脱することで、節度感が得られる。よって、ユーザは所定の位置に操作ノブ24A,24Bを正確に止めることができる。
【0038】
背面側への突出部20jの移動は、支持部13cによって規制されている。つまり、貫通孔13aの周囲への係止片20iの係止と、支持部13cへの突出部20jの当接とによって、伝達シャフト20A,20Bは、前後方向の移動が規制され、シャフト配置部13A,13Bに回動可能に保持される。
【0039】
鍔部20eには、突出部20jに対応する位置を直線状に切り欠いた切欠部20kが設けられている。組付時、切欠部20kには、スプリング29の付勢力に抗して係止部材28を突出部20j内に後退させる治具(図示せず)が配置される。
【0040】
図1及び
図2に示すように、操作ノブ24A,24Bは、前述のように操作パネル17の前面に配置される操作部24aと、操作パネル17を貫通して伝達シャフト20A,20Bに連結される被連結部24dとを備える。そのうち、操作部24aは、ノブ配置部18A,18Bの凹部18b内に配置され、凹部18b内で回動可能な範囲で、可能な限り大きい直径で形成されている。操作部24aは、背面側に向けて突出する円筒状の外周壁24cを備える。背面側に位置する外周壁24cの先端には、窪み18cに配置されたねじ26の頭部26aは干渉しない。
【0041】
次に、インストルメントパネルへの空調操作装置10の組付作業の一例を説明する。
【0042】
まず、ベース12に対してギアレバー22A,22Bを組み付ける。この際、図示しない冶具によってギアレバー22A,22Bを、ベース12に対して所定の回転角度位置に保持しておく。
【0043】
続いて、シャフト配置部13A,13Bに伝達シャフト20A,20Bを組み付ける。具体的には、鍔部20eの切欠部20fとボス14の回転角度位置を一致させ、軸部20aの方から伝達シャフト20A,20Bを貫通孔13aに挿入する。この際、切欠部20fとボス14の隙間21分回動した回転角度θ1を、ギア部20bの1ピッチ分の回転角度θ2よりも小さくしているため、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bを定められた回転角度に位置合わせできる。
【0044】
ここで、隙間21による回転角度θ1がギア部20bの1ピッチ分の回転角度θ2以上ある場合、ギア部20bは定められた回転角度から位置ズレして組み付けられる可能性がある。しかし、本実施形態では、このような問題の発生を防止でき、伝達シャフト20A,20Bの組付不良を効果的に防止できる。
【0045】
突出部20jが支持部13cに当接する位置まで貫通孔13aに伝達シャフト20A,20Bを挿入すると、係止片20iが基板12aの背面側の貫通孔13aの周囲に係止する。これにより、伝達シャフト20A,20Bがベース12に回動可能に保持される(
図6参照)。また、伝達シャフト20A,20Bのギア部20bがギアレバー22A,22Bのギア部22cに噛み合う。
【0046】
次に、ギアレバー22A,22Bにケーブル2A,2Bを接続する。この状態で、インストルメントパネルの背面側にベース12を組み付ける(仮止め)。
【0047】
続いて、インストルメントパネルの前側から操作パネル17を配置した後(
図7参照)、操作パネル17の前側からねじ26をねじ孔19に挿入してボス14に締め付ける。その後、ノブ配置部18A,18Bに操作ノブ24A,24Bを組み付ける。具体的には、被連結部24dを挿通孔18aに挿入し、操作パネル17の背面側で被連結部24dを連結部20dに連結するとともに、操作部24aを凹部18b内に配置する。これにより、
図8に示すように、操作部24aによってねじ26が覆い隠され、一連の組立作業が完了する。
【0048】
以上のように、本実施形態では、操作パネル17の前側からねじ孔19に挿入したねじ26をベース12のボス14に締め付けることで、操作パネル17をベース12に締結できる。よって、インストルメンツパネルに対するベース12の組付後、ベース12への操作パネル17の組み付けが可能なため、組付作業性を向上できる。
【0049】
ボス14とねじ孔19が操作ノブ24A,24Bの外形よりも内側に配置されているため、ベース12への操作パネル17の締結後、操作パネル17に配置した操作ノブ24A,24Bによってねじ26を遮蔽できる。よって、操作パネル17の美観が損なわれることを防止できる。
【0050】
ボス14を保持部13bの内側に配置しているため、ねじ26を覆う操作ノブ24A,24Bの外形を小さくでき、車両用空調操作装置全体の小型化も可能である。また、伝達シャフト20A,20Bの鍔部20eにボス14に対応する切欠部20fを設けているため、切欠部20fによってボス14への鍔部20eの干渉を防止しつつ、貫通孔13aを通してベース12に伝達シャフト20A,20Bを確実に組み付けることができる。
【0051】
ボス14と節度部13dの間に鍔部20eの厚みTよりも大きい間隔Dの隙間16が形成されているため、ボス14を保持部13b内に配置しても、伝達シャフト20A,20Bの回動範囲は制限されない。よって、操作ノブ24A,24Bの回動範囲の設定の自由度を向上できる。
【0052】
ベース12に対して伝達シャフト20A,20Bを前側から組み付けるため、ギア部20bとしてかさ歯車を使用できる。よって、操作ノブ24A,24Bの回動操作を空調ユニット1に伝達するケーブル2A,2Bの配索性と、操作ノブ24A,24Bの操作性を向上できる。詳しくは、ベース12に対して伝達シャフト20A,20Bを背面側から組み付ける場合、組み付け上の制約によって、ギアレバー22A,22Bの回転軸が操作ノブ24A,24Bの回転軸Aと平行に位置するようにしか、ギアレバー22A,22Bを配置できない。そのため、操作ノブ24A,24Bのギア部20bとしては平歯車しか選択できない。この場合、空調ユニット1に伝達するケーブル2A,2Bの配索性が好ましくないうえ、操作ノブ24A,24Bの回転操作の抵抗になるという不都合がある。しかし、本実施形態ではギア部20b,22cとしてかさ歯車を用いることができる。よって、ギアレバー22A,22Bの回転軸が操作ノブ24A,24Bの回転軸Aと直交するように、ギアレバー22A,22Bを配置できるため、これらの問題を改善できる。
【0053】
なお、本発明の車両用空調操作装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、操作ノブ24A,24Bによってねじ26を遮蔽可能であれば、
図20に示すように、ボス14は保持部13bよりも外側に設けてもよい。このようにしても、ボス14に伝達シャフト20A,20B(鍔部20e)が干渉しないため、組付作業性を向上できる。この変形例のシャフト配置部13A,13Bは、前記実施形態と同様に、貫通孔、保持部13b、及び節度部を備える。また、伝達シャフト20A,20Bは、軸部、ギア部、連結部、及び鍔部20eを備える。鍔部20eには、
図18に示す切欠部20fは設けられていない。
【0055】
シャフト配置部13A,13Bには、節度部13dを設けなくてもよい。切欠部20fの形状は、ボス14と同軸の円弧状に限られず、四角形等の多角形状としてもよい。また、隙間21(回転角度θ1)とギア部20bのピッチ(回転角度θ2)の関係は、ベース12、伝達シャフト20A,20B、ギアレバー22A,22Bに位置合わせ用の印を設ければ、必要に応じて変更が可能である。
【0056】
伝達シャフト及び操作ノブは、1組だけであってもよいし、3組以上であってもよい。3組以上設ける場合、締結部材(ねじ26)を固定する固定部(ボス14)と挿入孔(ねじ孔19)は、3組のうちの1つのみに設けてもよいが、2つ以上に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1…空調ユニット
2A,2B…ケーブル
10…車両用空調操作装置
12…ベース
12a…基板
12b…突出板
12c…枠板
12d…枠板
13A,13B…シャフト配置部
13a…貫通孔
13b…保持部
13c…支持部
13d…節度部
13e…第1部分
13f…第2部分
13g…節度溝
14…ボス(固定部)
15A,15B…レバー配置部
15a…円筒部
15b…軸受部
16…隙間
17…操作パネル
18A,18B…ノブ配置部
18a…挿通孔
18b…凹部
18c…窪み
19…ねじ孔(挿入孔)
20A,20B…伝達シャフト
20a…軸部
20b…ギア部
20c…歯
20d…連結部
20e…鍔部
20f…切欠部
20g…挿通部
20h…切り欠き
20i…係止片
20j…突出部(収納部)
20k…切欠部
21…隙間
22A,22B…ギアレバー
22a…基部
22b…ケーブル接続部
22c…ギア部
24A,24B…操作ノブ
24a…操作部
24b…摘まみ
24c…外周壁
24d…被連結部
24e…係止片
24f…嵌入孔
26…ねじ(締結部材)
26a…頭部
28…係止部材
29…スプリング
A…伝達シャフトの回転軸