(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】位置情報システム
(51)【国際特許分類】
H04L 67/52 20220101AFI20221017BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20221017BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20221017BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20221017BHJP
H04W 4/021 20180101ALI20221017BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20221017BHJP
【FI】
H04L67/52
G08B17/00 F
G08B27/00 B
H04M11/04
H04W4/021
H04W64/00 173
(21)【出願番号】P 2018143415
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰久
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-253888(JP,A)
【文献】特開2010-243846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/278046(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0057838(KR,A)
【文献】石井 悠 Hisashi Ishii,FIT2006 第5回情報科学技術フォーラム 一般講演論文集 第2分冊 データベース 自然言語 人工知能・ゲーム 音声・音楽 生体情報科学 Forum on Information Technology 2006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/52
G08B 17/00
G08B 27/00
H04M 11/04
H04W 4/021
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリアに設置された発信器からの信号を受信して、当該発信器の識別情報を含む発信器情報および自己の識別情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末により送信された発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置が示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を当該携帯端末に送信可能なサーバと、を備えた位置情報システムであって、
携帯端末を保有する使用者の属性を示す使用者情報を携帯端末の識別情報と関連して記憶するとともに、携帯端末を保有する使用者の前記属性に応じて、平時には前記マップ画像に示さないが有事の際には前記マップ画像に示す施設に関する情報を記憶する使用者・施設情報記憶手段を備え、
前記サーバは、前記発信器情報および識別情報に基づいて、情報を送信してきた携帯端末の現在位置および当該携帯端末を保有する使用者の属性を判定し、その属性に応じて当該携帯端末の現在位置が示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であ
り、前記使用者・施設情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記携帯端末の現在位置と前記属性に応じた表示範囲の施設とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を送信可能であることを特徴とする位置情報システム。
【請求項2】
所定エリアに設置された火災感知器からの火災検出信号を受信可能な受信機により送信された火災の発生場所情報を含む火災情報に基づいて、前記火災の発生位置を判定する火災監視装置を備え、
前記サーバは、前記火災監視装置から送信されてくる火災の発生位置情報を含む火災情報に基づいて、前記携帯端末の現在位置と火災の発生位置とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であることを特徴とする
請求項1に記載の位置情報システム。
【請求項3】
建物内に設置されている設備・機器のうち、通常時には前記マップ画像に示さないが火災時には前記マップ画像に示す設備・機器に関する情報を記憶する設備・機器情報記憶手段を備え、
前記サーバは、前記火災監視装置から送信されてくる火災の発生場所情報を含む火災情報と、前記設備・機器情報記憶手段に記憶されている情報とに基づいて、前記携帯端末の現在位置と、火災の発生位置と、所定の設備・機器とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であることを特徴とする
請求項2に記載の位置情報システム。
【請求項4】
前記携帯端末の画面に表示されている前記マップ画像において前記所定の設備・機器が選択された場合には、当該選択された設備・機器に関する情報が当該画面に表示されることを特徴とする
請求項3に記載の位置情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の位置を報知可能な位置情報システムに関し、特にビル等の施設内における携帯端末の位置を視覚的に報知可能な位置情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器を利用して、機器固有の識別情報を位置検出用の情報として無線により発信するビーコン等の位置情報システム用の発信器が知られている(例えば特許文献1参照)。
上記のような発信器を備えた位置情報システムでは、異なる位置に配設された複数の発信器の各識別情報と各設置箇所とを対応付けたマップ情報が予め用意され、携帯端末に与えられる。そして、携帯端末のユーザが当該携帯端末を保有して移動する際に、携帯端末が建物内の各箇所に配設された発信器からの識別情報を受信することで、受信した識別情報とマップ情報とから建物内での位置をマップと共に携帯端末の表示部に表示されることで自身の位置を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビーコン等の発信器を使用した従来の位置情報システムでは、建物内での携帯端末の位置は把握できるものの、建物内で火災が発生した場合には地区ベル等が鳴動することで火災の発生は認知できるが、火災の発生位置は把握できなかった。火災の発生位置を把握できれば、適切な避難や消火作業が可能となり、確実に火災初動動作が行えるという利点がある。
そこで、建物内での携帯端末の位置を携帯端末の表示部に表示させるとともに、火災が発生した場合には火災の発生位置を表示させる防災位置情報システムが考えられるが、火災等の有事が発生した際だけのためにかかるシステムを導入することは、コスト面で敷居が高いという課題がある。
【0005】
また、近年、様々な企業および商業施設が入居している高層ビルやホテルや企業、住居が共存している複合施設が造築されており、かかる建物や施設では自身の位置を把握できる位置情報システムが望まれるが、セキュリティ上、必要以上に施設構造や地図の情報を閲覧できるシステムを導入することは好ましくないという課題がある。
本発明は上記のような背景の下になされたものでその目的とするところは、使用者の属性(権限、資格等)によって異なる地図情報を表示させたり、平時と有事の際とで異なる地図情報を携帯端末の表示部に表示させたりすることが可能な利便性の高い位置情報システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は、
所定エリアに設置された発信器からの信号を受信して、当該発信器の識別情報を含む発信器情報および自己の識別情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末により送信された発信器情報に基づいて、当該携帯端末の現在位置が示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を当該携帯端末に送信可能なサーバと、を備えた位置情報システムにおいて、
携帯端末を保有する使用者の属性を示す使用者情報を携帯端末の識別情報と関連して記憶するとともに、携帯端末を保有する使用者の前記属性に応じて、平時には前記マップ画像に示さないが有事の際には前記マップ画像に示す施設に関する情報を記憶する使用者・施設情報記憶手段を備え、
前記サーバは、前記発信器情報および識別情報に基づいて、情報を送信してきた携帯端末の現在位置および当該携帯端末を保有する使用者の属性を判定し、その属性に応じて当該携帯端末の現在位置が示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であり、前記使用者・施設情報記憶手段に記憶されている情報に基づいて、前記携帯端末の現在位置と前記属性に応じた表示範囲の施設とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を送信可能であるように構成したものである。
【0007】
上記のような構成を有する位置情報システムによれば、使用者の属性(権限、資格等)によって異なる地図情報を表示させることができ、それによって様々な企業および商業施設が入居している建物や、ホテル、企業、住居等が共存している複合施設内のセキュリティを向上させつつ、携帯端末の保有者が内部を移動する際の利便性を高めることができる。
【0009】
また、上記構成によれば、平時と有事の際とで異なる地図情報を携帯端末の表示部に表示させることができるため、建物や複合施設内のセキュリティを向上させつつ、有事の際には速やかかつ適切な行動を実行する上での利便性を高めることができる。また、火災等の有事が発生した際だけでなく、平時においても携帯端末の保有者に有効な情報を提供することができるため、システムを導入することに伴うコスト面での敷居を低くすることができる。
【0010】
また、望ましくは、所定エリアに設置された火災感知器からの火災検出信号を受信可能な受信機により送信された火災の発生場所情報を含む火災情報に基づいて、前記火災の発生位置を判定する火災監視装置を備え、
前記サーバは、前記火災監視装置から送信されてくる火災の発生位置情報を含む火災情報に基づいて、前記携帯端末の現在位置と火災の発生位置とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であるように構成する。
かかる構成によれば、火災が発生した場合には、携帯端末の位置だけでなく当該火災の発生位置も報知することができ、速やかな避難行動や消火活動などを行う際の利便性を高めることができる。
【0011】
さらに、望ましくは、建物内に設置されている設備・機器のうち、通常時には前記マップ画像に示さないが火災時には前記マップ画像に示す設備・機器に関する情報を記憶する設備・機器情報記憶手段を備え、
前記サーバは、前記火災監視装置から送信されてくる火災の発生場所情報を含む火災情報と、前記設備・機器情報記憶手段に記憶されている情報とに基づいて、前記携帯端末の現在位置と、火災の発生位置と、所定の設備・機器とが示されたマップ画像を当該携帯端末に表示させるためのマップ情報を作成し、送信可能であるように構成する。
かかる構成によれば、火災が発生した場合に、携帯端末の現在位置や火災の発生位置だけでなく、所定の設備・機器(例えば、消火作業の際に使用する消火作業関連機器や、避難の際に使用する非常口など)の位置もマップ上に表示されるため、携帯端末の保有者は火災時に適切な対応を行うことが可能となる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記携帯端末の画面に表示されている前記マップ画像において前記所定の設備・機器が選択された場合には、当該選択された設備・機器に関する情報が当該画面に表示されるように構成する。
かかる構成によれば、設備・機器の使い方を熟知していない人であっても、適切な消火作業を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る位置情報システムによれば、使用者の属性(権限、資格等)によってそれぞれ適するよう、異なる地図情報を表示させたり、平時と有事の際とで異なる地図情報を携帯端末の表示部に表示させたりすることができ、利便性が高くコスト面での敷居を低くすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の位置情報システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】位置情報サーバによって参照される表示範囲指定テーブルの一例を示す図である。
【
図3】平時と有事に使用者の携帯端末に表示されるマップ画像(フロア図画像)の一例を示す図である。
【
図4】火災情報サーバ(火災監視装置)によって参照される表示/非表示テーブルの一例を示す図である。
【
図5】商業施設において平時と有事(火災発生時)に使用者の携帯端末に表示されるマップ画像(フロア図画像)の一例を示す図である。
【
図6】有事(火災発生時)に管理者、自衛消防隊員の携帯端末に表示されるマップ画像(フロア図画像)の一例を示す図である。
【
図7】実施形態の位置情報システムを構成する携帯端末及び火災情報サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の位置情報システムを構成する位置情報サーバにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を適用した位置情報システムの実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の位置情報システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態の位置情報システムは、
図1に示すように、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されているビーコン(発信器)10からの信号(電波)を受信可能な携帯端末20と、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯端末20との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40と、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されている火災感知器50からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60と、ゲートウェイ(中継器)70及びインターネット等の通信ネットワークNを介して火災受信機60との間でデータ通信を行う火災情報サーバ80などから構成されている。位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は1つの支援サーバとして構成しても良い。
【0016】
なお、携帯端末20へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン10の通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式を利用することができる。ビーコン10を配置する間隔は特に限定されないが、以下の説明では、隣接するそれぞれのビーコン10の通信範囲が建物内の空間を網羅できるように配置されているものとする。
【0017】
具体的には、もともと建物内には所定の間隔をおいて火災感知器50やスプリンクラーヘッドが設置されているので、それらの機器に内蔵もしくは付加する形態で取り付けたビーコン10、あるいは、それらの機器の近傍に設置する形態で取り付けたビーコン10を利用することができる。
ビーコン10は、電源に関する情報(内蔵電池情報又は外部電源情報)と自己の識別情報とを無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備える。ビーコン10が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン10の識別情報(発信器の機器ID)が含まれていれば良く、さらに、設置されているエリアに関する情報が含まれても良い。
【0018】
携帯端末20は、ビーコン10からの信号を受信する受信機能と、無線通信機能とを備えるスマートフォン等の機器である。携帯端末20の内部メモリには、定期的にビーコン10から無線で発信されるビーコン信号を受信して当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出するとともに、当該ビーコン信号の受信電波強度を検出し、識別情報等と受信電波強度とを含むビーコン情報を携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理と、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して位置情報サーバ40から送信されたフロア図情報に基づくフロア図画像を画面に表示する処理とを実行するアプリケーション・プログラム(位置情報表示アプリ)が格納されている。携帯端末20は、複数のビーコン10(通信範囲が互いに重なるビーコン10)から発信されるビーコン信号を受信した場合には、それぞれのビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信する。
【0019】
火災感知器50は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号を、感知器回線51を介して火災受信機60に送信する。火災感知器50は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、火災検出信号に自身の設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。
【0020】
火災受信機60は、火災感知器50からの火災検出信号を受信した場合に、表示部に火災報知表示を行うとともに、地区ベル鳴動や防排煙連動などの制御を行う。さらに、火災受信機60は、火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む火災情報を、ゲートウェイ70及び通信ネットワークNを介して火災情報サーバ80に送信する。
なお、火災受信機60は、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されている場合には、当該設置アドレスに基づいて火災の発生場所を特定する。一方、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されていない場合には、当該火災検出信号を伝送した感知器回線51(警戒区域)に基づいて火災の発生場所を特定する。
【0021】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する建物の各フロアの地図情報(フロア図)と、携帯端末固有の識別情報(端末ID)と、使用者(携帯端末保有者)の権限や資格等の属性に関する情報(使用者属性情報)または使用者種別情報と紐づけした表示範囲指定テーブルとを記憶するデータベース41を備えている。なお、各フロアの地図情報(フロア図情報)には、各フロアに設置されているビーコン10の機器ID及び設置位置情報などが含まれる。
【0022】
位置情報サーバ40は、携帯端末20からビーコン10の機器IDを受信すると、受信したビーコンの機器IDとデータベース41に記憶されている情報に基づいて当該携帯端末20の現在位置を算出する。そして、データベース41から当該携帯端末20が位置しているフロアのマップ情報を読み出し、読み出したフロア図に当該携帯端末20の現在位置を示すマークをプロットしてフロア表示情報を生成し、生成したフロア表示情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する処理を実行する。これにより、当該携帯端末20には、当該携帯端末20の現在位置を示すフロア図画像が表示される。
【0023】
また、位置情報サーバ40は、携帯端末20から送られてくる発信器の機器IDと端末IDに基づいて、使用者の属性または種別を判断し、表示範囲指定テーブルを参照して使用者の属性または種別に応じて表示する設備の情報を読み出し、当該携帯端末の表示データを生成して送信する。
ここで、表示範囲指定テーブルは、建物の各フロアに設けられている設備等のアイテムをフロア図上に表示するか否かに関する情報であり、その一例が
図2に示されている。
【0024】
図2に示すように、表示範囲指定テーブルにおいては、例えばホテルや居住区、オフィス、病院、商業施設(店舗)などの施設ごとに、利用者(訪問者)やスタッフ、管理者(責任者)のような属性の異なる使用者の保有する携帯端末に表示するフロア図上に表示する設備(通路やエレベータのような共用部など)の範囲が、平時と有事に分けて登録されている。
なお、
図2の表示範囲指定テーブルに示されている有事の際の表示範囲とは別に、例えば自衛消防隊員が保有する携帯端末に対しては、概略レイアウトの情報を付加して送信し、表示させるようにしても良い。
【0025】
因みに、
図2に示す表示範囲指定テーブルは、例えば下記の表1に示すような考えのもとに作成されている。
【表1】
また、
図3には、
図2の表示範囲指定テーブルに従って利用者(訪問者)の携帯端末に表示される平時と有事の際のフロア図の一例が示されている。
図3のうち、(a)は平時に表示されるフロア図、(b)は火災発生等の有事の際に表示されるフロア図の例である。
【0026】
さらに、位置情報サーバ40は、平時に利用者(訪問者)に許可されていないエリアに入ったことを検知した場合、当該利用者の携帯端末へアラートの通知を送信して報知するとともに、当該エリアの管理者もしくは当該施設の管理者へ無許可進入を通知するように構成しても良い。また、このような通知を行う機能を設けた場合であっても、有事の際にはアラートの通知をしない、あるいはその機能を無効にするようにしても良い。
【0027】
また、上記アラート通知が設定されている場合であっても、来客や設備の点検・修繕作業を行う作業者のような一時的に入室させたい来訪者に対しては、制限時間および許可区画を設定して入室を許可するとともに、制限時間オーバーあるいは許可区画以外への進入を検知した際には、立ち合い者(居住者または管理者)の携帯端末へアラートを通知するようにしても良い。
したがって、本実施形態の位置情報システムによれば、使用者の属性(権限、資格等)によって異なる地図情報を表示させることができる。
【0028】
さらに、本実施形態の位置情報サーバ40は、火災情報サーバ80からの火災情報(火災の発生場所情報を含む情報)と火災時表示必要アイテム情報と火災時表示不要アイテム情報とを受信した場合に、これらの情報を反映させたフロア図表示情報を生成し、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して携帯端末20へ送信する処理を実行可能に構成されている。これにより、当該携帯端末20には、端末の現在位置を示すマークと共に、火災情報と火災時表示必要アイテム情報と火災時表示不要アイテム情報とが反映されたフロア図が表示される。
したがって、本実施形態の位置情報システムによれば、平時と有事の際とで異なるアイテムを表記した地図情報を携帯端末の表示部に表示させることができる。
【0029】
火災情報サーバ80は、
図1に示すように、当該火災情報サーバ80が管理する各建物の設備・機器情報等を格納するデータベース81を備えている。ここで、建物の設備・機器情報とは、当該建物の各フロアに設置されている設備・機器等のアイテムをフロア図上に表示するか否かに関する表示/非表示テーブルや、当該建物の各フロアに設置されている設備・機器等のアイテムの設置位置情報などを含む情報である。なお、表示/非表示テーブルや設備・機器等の設置位置情報は、位置情報サーバ40に接続されたデータベース41に格納されていても良い。
【0030】
表示/非表示テーブルには、例えば
図4に示すように、間仕切り、部屋名、出入り口、扉、各種フロア間移動用設備(例えば、階段、エレベータ、エスカレータ)、各種防災関連設備・機器(例えば、非常口、火災報知機器(地区ベル等の発信機など)、消火設備(消火器、消火栓など)、非常電話、防排煙機器(防火戸、防火シャッター、排煙口など))等のアイテムを、火災時ではない通常時に表示するか否かの情報(フラグ)と、同フロアで火災が発生している時に表示するか否かの情報と、別フロアで火災が発生している時に表示するか否かの情報等が登録される。なお、
図4に示されている発信機は、火災の発生を火災受信機へ知らせる信号を生成する押釦スイッチを内蔵した火災発信機である。
【0031】
火災情報サーバ80は、火災感知器50からの火災情報を受信すると、当該火災情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する処理を実行可能である。
さらに、火災情報サーバ80は、当該火災情報に基づいて火災が発生している建物を特定し、特定した建物の設備・機器情報をデータベース81から取得する。そして、取得した設備・機器情報に基づいて、通常時に表示するが火災時に表示しないアイテムを指定する火災時表示不要アイテム情報と、通常時に表示しないが火災時に表示するアイテムを指定する火災時表示必要アイテム情報を生成し、生成したこれらの情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する処理を実行可能である。
【0032】
図5(a)には、建物が商業施設である場合に、平時において利用者(来訪者)の携帯端末に表示されるフロア図の例が、
図5(b)には、有事(火災発生)の際に利用者(来訪者)の携帯端末に表示されるフロア図の例が示されている。
図5(a)と(b)とを比較すると分かるように、有事の際には、自分が居る位置の他、平時には不要な情報である非常階段の位置および火災の発生位置が表示されるため、速やかに適切な避難行動をとることができる。
【0033】
また、
図6には、建物が商業施設である場合に、有事(火災発生)の際に管理者または自衛消防隊員の携帯端末に表示されるフロア図の例が示されている。
図6から分かるように、有事の際には、管理者または自衛消防隊員の携帯端末に、自分が居る位置の他、消火栓や非常電話の接地位置および火災の発生位置が表示されるため、速やかに消火活動および消防署等関係部署への火災通報を実行することができる。
【0034】
さらに、フロア図が表示されている携帯端末20の画面のうち、操作可能設備・機器を示す記号等(例えば強調表示が施された記号等)が表示されている部分に触れると、当該操作可能設備・機器に関する情報(例えば、操作可能設備・機器の機器情報や操作方法など)が表示されるようにしても良い。これにより、操作可能設備・機器の使い方を熟知していない使用者であっても、適切な消火作業を行うことができるようになるため、延焼を防止することが可能となる。
【0035】
次に、本実施形態の位置情報システムを構成する携帯端末20、火災情報サーバ80及び位置情報サーバ40による処理手順を、
図7及び
図8に示すフローチャートを用いて説明する。
携帯端末20は、位置情報表示アプリが起動されると、例えば
図7(a)に示すように、まず、ビーコン10から発信されるビーコン信号を受信したかを判定する(ステップS11)。そして、ビーコン信号を受信した場合(ステップS11;Yes)には、当該ビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報(機器ID)等と当該ビーコン信号の受信電波強度とを含むビーコン情報を、携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する(ステップS12)。
【0036】
次に、位置情報サーバ40から送信されるフロア図情報を受信したかを判定する(ステップS13)。そして、フロア図情報を受信した場合(ステップS13;Yes)には、当該フロア図情報に基づくフロア図画像を画面に表示する(ステップS14)。これにより、位置情報表示アプリの起動後最初のステップS14では、最新のフロア図画像が携帯端末20の画面に表示されることとなり、位置情報表示アプリの起動後、2回目以降のステップS14では、画面に表示中のフロア図画像が最新のフロア図画像に更新される。
【0037】
火災情報サーバ80は、例えば
図7(b)に示すように、まず、火災受信機60から送信される火災情報(火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む情報)を受信したかを判定する(ステップS21)。そして、火災情報を受信した場合(ステップS21;Yes)には、当該火災情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する(ステップS22)。
【0038】
次に、当該火災情報に基づいて火災が発生している建物を特定し、特定した建物の設備・機器情報をデータベース81から取得し、取得した設備・機器情報に基づいて火災時表示必要アイテム情報を生成し、生成した火災時表示必要アイテム情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する(ステップS23)。次いで、取得した設備・機器情報に基づいて火災時表示不要アイテム情報を生成し、生成した火災時表示不要アイテム情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する(ステップS24)。
なお、火災が発生している建物に、同フロア火災時表示必要アイテム及び別フロア火災時表示必要アイテムがない場合には、ステップS23の処理は省略される。また、火災が発生している建物に、同フロア火災時表示不要アイテム及び別フロア火災時表示不要アイテムがない場合には、ステップS24の処理は省略される。
【0039】
図8には、位置情報サーバ40による処理の手順の一例が示されている。
位置情報サーバ40は、
図8に示すように、まず、携帯端末20から送信されるビーコン情報を受信したかを判定する(ステップS31)。そして、ビーコン情報を受信した(Yes)と判定した場合には、受信したビーコン情報および端末IDとデータベース41に記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の現在位置を算出し(ステップS32)、端末IDを用いてデータベース41を参照して当該携帯端末の使用者の属性を判定する(ステップS33)。続いて、
図2のテーブルを参照して属性に応じた表示範囲を決定し(ステップS34)、データベース41から当該携帯端末20が位置しているフロアのフロア図を抽出し、抽出したフロア図に当該携帯端末20の現在位置を示すマークをプロットするとともに、表示範囲の設備を表示したフロア図情報を生成する(ステップS35)。
【0040】
次に、当該携帯端末20が位置している建物で火災が発生しているかを判定する(ステップS36)。ここで、位置情報サーバ40は、例えば、通信ネットワークNを介して火災情報サーバ80に問い合わせることによって、当該携帯端末20が位置している建物で火災が発生しているかを判定する。あるいは、火災情報サーバ80から送信される火災情報であって、当該携帯端末20が位置している建物に関する火災情報を受信した場合に、当該携帯端末20が位置している建物で火災が発生していると判定することができる。
そして、当該携帯端末20が位置している建物で火災が発生していない(ステップS36;No)と判定した場合には、ステップS33で生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する(ステップS42)。これにより、例えば
図5(a)に示すようなフロア図画像が当該携帯端末20の画面に表示されることとなる。
【0041】
一方、当該携帯端末20が位置している建物で火災が発生している場合(ステップS36;Yes)には、当該携帯端末20が位置している建物に関する火災関係情報(火災情報、火災時表示必要アイテム情報、火災時表示不要アイテム情報)を受信したかを判定する(ステップS37)。そして、当該携帯端末20が位置している建物に関する火災関係情報を受信した場合(ステップS37;Yes)には、当該火災関係情報に基づいて火災の発生位置を特定し、当該携帯端末20が位置しているフロアで火災が発生しているかを判定する(ステップS38)。
【0042】
当該携帯端末20が位置しているフロアで火災が発生している場合(ステップS38;Yes)には、当該携帯端末20の現在位置がプロットされたフロア図に、火災の発生位置をプロットして(ステップS39)、同フロア火災時表示必要アイテムの設置位置をプロットする(ステップS40)。次いで、当該携帯端末20の現在位置と火災の発生位置と同フロア火災時表示必要アイテムの設置位置とがプロットされたフロア図から、同フロア火災時表示不要アイテムを消去する(ステップS41)。すなわち、ステップS39~S41では、ステップS35で生成したフロア図情報を用いて、火災の発生位置を示す記号等と同フロア火災時表示必要アイテムを示す記号等とが付加され、かつ、同フロア火災時表示不要アイテムを示す記号等が消去されたフロア図画像を表示させるためのフロア図情報が生成される。
【0043】
そして、ステップS39~S41で生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する(ステップS42)。これにより、例えば
図5(b)に示すようなフロア図画像(10階フロア)が当該携帯端末20の画面に表示されることとなる。
なお、火災関係情報として、火災時表示必要アイテム情報を受信しなかった場合には、ステップS40の処理は省略される。また、火災関係情報として、火災時表示不要アイテム情報を受信しなかった場合には、ステップS41の処理は省略される。
【0044】
一方、当該携帯端末20が位置しているフロアで火災が発生していない場合(ステップS38;No)には、当該携帯端末20の現在位置がプロットされたフロア図に、別フロア火災時表示必要アイテムの設置位置をプロットする(ステップS42)。次いで、当該携帯端末20の現在位置と別フロア火災時表示必要アイテムの設置位置とがプロットされたフロア図から、別フロア火災時表示不要アイテムを消去する(ステップS43)。すなわち、ステップS42~S43では、ステップS35で生成したフロア図情報を用いて、別フロア火災時表示必要アイテムを示す記号等が付加され、かつ、別フロア火災時表示不要アイテムを示す記号等が消去されたフロア図画像を表示させるためのフロア図情報が生成される。
【0045】
そして、ステップS42~S43で生成したフロア図情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する(ステップS41)。これにより、別フロア(例えば9階フロア)のフロア図画像が当該携帯端末20の画面に表示されることとなる。
なお、火災関係情報として、火災時表示必要アイテム情報を受信しなかった場合には、ステップS40の処理は省略される。また、火災関係情報として、火災時表示不要アイテム情報を受信しなかった場合には、ステップS41の処理は省略される。
【0046】
このように、本実施形態の位置情報システムにおいて、サーバ(位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80)は、受信機(火災受信機60)により送信された火災情報(火災の発生場所情報を含む情報)に基づいて、携帯端末20の現在位置と、火災の発生位置とが示されたマップ画像(フロア図画像)を当該携帯端末20に表示させるためのマップ情報(フロア図表示情報)を当該携帯端末20に送信可能である。
また、サーバ(位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80)は、記憶手段(データベース41、81)に記憶されている使用者の属性情報および表示必要設備・機器情報に基づいて、携帯端末20の現在位置と、火災の発生位置と、所定の表示必要設備・機器(同フロア火災時表示必要アイテム、別フロア火災時表示必要アイテム)とが示されたマップ画像(フロア図画像)を当該携帯端末20に表示させるためのマップ情報(フロア図情報)を当該携帯端末20に送信可能である。
【0047】
さらに、サーバ(位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80)は、記憶手段(データベース41、81)に記憶されている使用者の属性情報および表示不要設備・機器情報に基づいて、携帯端末20の現在位置と、火災の発生位置とが示されたマップ画像(フロア図画像)であって、所定の表示不要設備・機器(同フロア火災時表示不要アイテム、別フロア火災時表示不要アイテム)が示されていない、あるいは所定の表示不要設備・機器(同フロア火災時表示不要アイテム、別フロア火災時表示不要アイテム)が通常時とは異なる表示態様(濃淡、色、サイズ、形状、点滅の有無等)で示されたマップ画像を当該携帯端末20に表示させるためのマップ情報(フロア図情報)を当該携帯端末20に送信可能である。
【0048】
上述したように、本実施形態の位置情報システムによれば、使用者の属性および設備・機器情報に応じて、平時は移動が許可された範囲での携帯端末の位置を、また火災が発生した場合には当該火災の発生位置や携帯端末の位置と、消火作業関連機器の位置、非常口の位置等も報知することができるので、セキュリティを保証しつつ、有事の際の初動動作を速やかに行えるようにすることができる。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80は、別体ではなく共通の支援サーバ等として一体的に構成されていても良い。
また、上記実施形態では、ビーコンからの信号を携帯端末によって受信し受信した情報を無線通信で位置情報サーバへ送信すると説明したが、監視対象エリアがオフィスのような空間である場合には、オフィス内の机に設置されているパソコンにビーコンからの信号を受信可能な機器を接続して、当該機器が受信した情報をパソコンがLAN(ローカルエリアネットワーク)を介して位置情報サーバへ送信するようにしても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、ビーコンは情報を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯端末や他の発信器(無線タグ、端末等)からの無線信号を受信する機能さらには受信した情報をサーバへ送信する機能を有するものであっても良い。
また、上記実施形態では、位置情報システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、位置情報システムは、例えばIMES(Indoor MEssaging System)等のその他の方式による測位を利用したシステムであっても良い。すなわち、発信器は、ビーコンに限定されずIMES送信機等であっても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、位置情報システムの位置特定処理は、サーバで行うこととしたが、処理の一部または全てを携帯端末側で行うようにしても良い。
さらに、位置情報システムの位置特定処理は、ビーコンの一点測位でも良いし、多点測位(複数のビーコンの信号により位置を特定する処理)であっても良い。
また、上記実施形態では、有事の例として火災監視装置により火災を検知した場合に関して述べたが、地震や水害などによる他の有事が発生した場合に適用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 ビーコン(発信器)
20 携帯端末
40 位置情報サーバ(サーバ)
41 データベース(使用者・施設情報記憶手段)
50 火災感知器
60 火災受信機(受信機)
80 火災情報サーバ(火災監視装置)
81 データベース(設備・機器情報記憶手段)