(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】アゾ化合物を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
C09B 29/20 20060101AFI20221017BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20221017BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C09B29/20 B
C09B67/20 K
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2018161147
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 志泳
(72)【発明者】
【氏名】金 學奎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529785(JP,A)
【文献】特開2018-002788(JP,A)
【文献】特開2012-121983(JP,A)
【文献】特開2012-068613(JP,A)
【文献】特開昭58-042658(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02029341(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物
であって、
前記アゾ化合物の濃度0.02mmol/Lのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液を用いて、25±2℃で測定する紫外可視透過スペクトル(波長が500nm以上の長波長側)において、
透過率Tが20%である波長λ(nm)から
透過率Tが80%である波長λ(nm)までの範囲内での
波長の変化量(Δλ)に対する透過率の変化量(ΔT)の比(透過率Tの変化率)
(ΔT(%)/Δλ(nm))が3.20(透過率%/nm)以上である、アゾ化合物。
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に
、置換基を有していてもよい炭素原子数
3~
10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
3~R
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子
またはニトロ
基を表す。
x、yおよびzは0~
2の整数を
表す。]
【請求項2】
前記アゾ化合物の熱重量測定による5%重量減少温度が、250~400℃の範囲にある、請求項
1に記載のアゾ化合物。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載のアゾ化合物を含有する着色組成物。
【請求項4】
請求項
3に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項5】
請求項
4に記載のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ化合物、該アゾ化合物を含有する着色組成物、該着色組成物を用いたカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置に、カラーフィルターが用いられることがある。カラーフィルターは、ガラスなどの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより着色層を積層することによって製造される。着色層に用いる着色剤は、顔料と染料とに大きく分けられるが、一般的に耐熱性および耐光性に優れるとされる顔料が広く用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。しかし、顔料は一般的に溶剤に不溶な性質があり、樹脂などを含むカラーフィルター中では微粒子状で存在しているため、顔料を用いたカラーフィルターは、フィルター中の顔料粒子表面で透過光が反射・散乱することにより、透明性や色純度に影響し、また、反射による消偏作用があるためにカラー液晶表示装置のコントラスト比が低下することが知られている。
【0003】
このようなコントラスト比の低下の問題を改善するため、着色剤として染料のみを用いる方法または染料と顔料を併用する方法などが提案されている。染料は溶剤に可溶であるため、染料を使用したカラーフィルターは、顔料のみを着色剤として使用した場合に比べ消偏作用が抑えられ、分光特性に優れている。カラーフィルターに用いる染料としては、優れた発色性、耐熱性および耐光性を有する点から、キサンテン系染料などが知られており(例えば、特許文献4~8参照)、C.I.アシッドレッド289やC.I.アシッドレッド52などのキサンテン系染料をアゾピリドン系染料と併用することにより、優れた赤色色調が得られることが開示されている(特許文献4参照)。ここで、C.I.とはカラーインデックスを意味する。
【0004】
また、これらのキサンテン系染料またはその誘導体をフタロシアニン系色素と併用することにより、コントラスト比および色純度の高い青色のカラーフィルターを作製できることが知られている(例えば、特許文献6、7参照)。このような染料と顔料を併用したカラーフィルターは、色の異なる両者が混在して凝集体を形成することにより、光励起された染料分子と近傍の顔料分子の間で直ちに電荷移動が起こるため、酸化分解を互いに抑制する効果もあると考えられている。このため、染料を単独使用で作製したカラーフィルターに比べて、発色性の維持および耐光性の向上が可能である。
【0005】
アゾ化合物は、色の種類が豊富な色素の一種であり、原料の入手し易さや、製造工程が簡単であることから、顔料や染料としてよく利用されている(特許文献2~4、9~13)。カラーフィルターの分野でも、アゾ化合物を用いて、色特性を向上させる研究が行われている(特許文献10、11)。特に、輝度とコントラストの高いカラーフィルター用着色組成物が求められており、輝度向上に有効であるとされる、特定の波長領域での透過スペクトルの立ち上がりの傾きをより鋭く(急峻に)する研究がなされている(特許文献12、13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-220520号公報
【文献】特公表2007-533802号公報
【文献】特開2012-12498号公報
【文献】特開2002-265834号公報
【文献】特開2012-207224号公報
【文献】特開2010-254964号公報
【文献】特開2014-12814号公報
【文献】特開2014-59538号公報
【文献】特開2013-40240号公報
【文献】国際公開第2005/052074号
【文献】特開平11-14824号公報
【文献】特開2009-237462号公報
【文献】国際公開第2012/039361号
【文献】特開平10-36692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な発色性(色域、輝度、コントラストなど)を有し、かつ、耐熱性に優れたアゾ化合物を含有する着色組成物およびカラーフィルター用着色剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該カラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、特定の波長領域において、立ち上がりの鋭い透過スペクトルを有し、かつ、良好な耐熱性を有することを見出した。また本発明者らは、該アゾ化合物を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いることにより、良好な発色性と耐熱性を兼ね備えたカラーフィルターを提供できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
【0009】
1.下記一般式(1)で表されるアゾ化合物。
【0010】
【0011】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
R3~R5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基を表す。
x、yおよびzは0~4の整数を表し、
x、yまたはzが2~4の整数の場合、
複数存在するR3、R4またはR5同士は、同一でも異なっていてもよく、
隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0012】
2.前記一般式(1)において、R1およびR2が、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるアゾ化合物。
【0013】
3.前記一般式(1)において、R3~R5が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアシル基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数0~10のアミノ基であるアゾ化合物。
【0014】
4.前記一般式(1)において、R3~R5が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはニトロ基であるアゾ化合物。
【0015】
5.前記アゾ化合物の濃度0.02mmol/Lのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液を用いて、25±2℃で測定する紫外可視透過スペクトル(波長が500nm以上の長波長側)において、
透過率Tが20%である波長λ(nm)から
透過率Tが80%である波長λ(nm)までの範囲内での
波長の変化量(Δλ)に対する透過率の変化量(ΔT)の比(透過率Tの変化率)
(ΔT(%)/Δλ(nm))が3.20(透過率%/nm)以上であるアゾ化合物。
【0016】
6.前記アゾ化合物の熱重量測定による5%重量減少温度が、250~400℃の範囲にあるアゾ化合物。
【0017】
7.前記アゾ化合物を含有する着色組成物。
【0018】
8.前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0019】
9.前記カラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアゾ化合物は、500nm以上の長波長側の波長領域において、透過スペクトルの傾きが鋭く(透過率の変化率が大きく)、発色性(色域、輝度、コントラストなど)に優れており、かつ耐熱性に優れているため、当該アゾ化合物を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のアゾ化合物の紫外可視透過スペクトルの具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
一般式(1)で表されるアゾ化合物について説明する。
【0024】
一般式(1)において、R1~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0025】
一般式(1)において、R3~R5で表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などがあげられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0026】
一般式(1)において、R3~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、などがあげられる。
【0027】
一般式(1)において、R3~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」における、「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」または「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などのシクロアルコキシ基;などがあげられる。
【0028】
一般式(1)において、R3~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、などがあげられる。
【0029】
一般式(1)において、R3~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基」における「炭素原子数1~20のアシル基」としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオノイル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、アクリリル基、シクロヘキサノイル基、シクロヘプタノイル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、フェニルアセチル基、ナフタノイル基、などがあげられる。
【0030】
一般式(1)において、R3~R5で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基」における、「炭素原子数0~20のアミノ基」としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ペンタニルアミノ基、プロペニルアミノ基、ブテニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、などがあげられる。
【0031】
一般式(1)において、R3~R5で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基」における「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」および「炭素原子数2~20の複素環基」としては、具体的に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基(アントラセニル基)、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基などの芳香族炭化水素基(もしくは縮合多環芳香族基);
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの複素環基(もしくは複素芳香族炭化水素基)があげられる。
【0032】
一般式(1)において、R1~R5で表される、
「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20のアルコキシ基」、
「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20のアシル基」、
「置換基を有する炭素原子数0~20のアミノ基」、
「置換基を有する炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」、または
「置換基を有する炭素原子数2~20の複素環基」における「置換基」としては、
具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボン酸基;スルホン酸基;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~20の直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基など炭素原子数3~20の分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~20の直鎖状のアルコキシ基;
イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~20の分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、アクリルル基、シクロヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、フェニルアセチル基などの炭素原子数1~20のアシル基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基などの炭素原子数1~20のアミノ基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~20の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0033】
一般式(1)において、R1およびR2としては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数3~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0034】
一般式(1)において、R1とR2の組み合わせは、同一でも異なっていてもよい。また、R1とR2は、互いに結合して環を形成していてもよく、それらの環は単結合、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子のいずれかの原子を介した結合によって環を形成していてもよい。また、その場合に形成される環としては、5員環または6員環が好ましい。
【0035】
一般式(1)において、R3~R5としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアシル基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基が好ましく、
水素原子、ハロゲン原子またはニトロ基がより好ましい。
【0036】
一般式(1)において、x、yおよびzは、それぞれ、R3、R4およびR5の数を表し、0~4の整数を表すが、それぞれのx、yおよびzは、0~3が好ましく、0~2がより好ましい。また、x、yまたはzが、2~4の整数の場合、複数存在するR3同士、R4同士またはR5同士は、同一でも異なっていてもよく、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。また、その場合に形成される環としては、5員環または6員環が好ましい。
【0037】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記反応式(2)で表される方法で合成することができる。p-ニトロスルホニルクロライドと、アミン化合物とを出発原料にして式(中間体1)を得た後、還元反応により式(中間体2)で表されるアミン化合物を得る。その後、定法によりジアゾ化し、2-ヒドロキシナフトール誘導体とカップリング反応させることで、例えば式(例示化合物A-1)のようなアゾ化合物を得ることができる。
【0038】
【0039】
一般式(1)で表されるアゾ化合物の合成方法において、析出するアゾ化合物が強固に付着し撹拌の妨げとなる場合、それを解消あるいは緩和するために、有機溶媒を混合してもよい。混合する有機溶媒としては、対応するアゾ化合物の十分な溶解性があれば特に制限されず、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などを、単独で、または混合して用いることができる。
【0040】
一般式(1)で表されるアゾ化合物は、上記の合成方法で得られた生成物を必要に応じて、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、珪藻土、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による分散洗浄や再結晶、晶析、塩析などの公知の精製を行うことにより、得ることが出来る。これらの精製方法に用いる溶媒は特に限定されず、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類などを単独で、または混合して用いることができる。
【0041】
一般式(1)で表される本発明のアゾ化合物として好ましい具体例を以下の式に例示するが、本発明は、これらの化合物に限定されない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物は、1種のみで使用しても、または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよく、2種以上の場合、アゾ化合物全体に占める重量濃度比において、最も分子構造の小さい方の1種のアゾ化合物の重量濃度比は0.1~50重量%である。アゾ化合物の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0054】
一般式(1)で表されるアゾ化合物は、任意の金属と反応させて錯体として用いることもできる。錯体化合物は、一般式(1)で表されるアゾ染料と、陽金属イオン「M」とを反応させて得られる(例えば、特許文献14)。「M」で表される陽金属イオンには、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオン、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、パラジウムイオン、銀イオン、タングステンイオン、金イオンなどがあげられ、クロムイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンが好ましく、ニッケルイオン、亜鉛イオンがより好ましい。
【0055】
また、本発明の「M」で表される陽金属イオンは、前記の陽金属イオンの1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の陽金属イオンを組み合わせてアゾ化合物と反応させて反応する場合、前記錯体化合物の混合物が得られる。
【0056】
本発明のアゾ化合物と金属との錯体化合物を含有する粉末は、溶媒分子、水分、本発明のアゾ化合物と金属との錯体化合物以外の分子構造の成分、その他の成分が含まれている場合がある。これらの粉末は、いずれもそのまま用いても良いが、精製処理を施したものが好ましい。しかしながら、どのような精製方法によっても一定の割合の不純物は存在してしまう場合があるが、現在の技術水準の精製であれば使用可能である。
【0057】
以下、本発明の一般式(1)で表される、アゾ化合物を含有する着色組成物について詳細に説明する。
【0058】
本発明の着色組成物のカラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、その他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0059】
本発明の着色組成物の粉末の状態は、その形状は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することができる。本発明の着色組成物の形状は、通常、結晶状、微結晶状、微粉末状、フレーク状、針結晶状、顆粒状などの形状を有する固体の粉末の状態で用いられるが、特に限定されない。
【0060】
本発明の着色組成物の粉末の粒度分布、表面積、細孔径分布、粉体密度などを測定することによって、粉末の形状の全体的・平均的な情報がより詳細に得られる。例えば、粉末を分散した電解液の電気抵抗測定によるコールター法、粉末の分散液の吸光度測定によりストークス有効径を求める遠心沈降法、粉末の分散液の回折散乱パターン解析によるレーザ回折・散乱法、などを用いて測定することができる。本発明の着色組成物は、0.1μm~数mmの粒径の範囲にあるものが好ましいが、製造条件や乾燥後の粉末の回収方法により粒子の形状が変化するため、特定の粒径に限定されないが、高い溶解性のためには粒径がより小さいものが好ましく、粒径分布の中央値が、0.1~100μmの範囲にあるものが好ましい。
【0061】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物の熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)を行うことによって、粉末の分解開始温度を評価することができる。また、分解開始温度に相当する温度として、試料の加熱後に一定割合(%)重量減少した時点の温度を用いて評価しても良い。分解開始温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。カラーフィルターに応用する場合、分解開始温度は高いほど好ましい。
【0062】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物の粉末の溶解性は溶解度で表され、溶解度は、粉末状の着色組成物が特定の溶媒中に溶解することのできる最大量の着色組成物中の割合を表すものであり、例えば「重量%(溶媒名,温度)」などの単位で表される。溶解度は、例えば、試料を特定の溶媒に混合し、一定温度で一定時間、溶媒を撹拌し、調製した飽和溶液の濃度を測定することによって得られ、溶解部の液体クロマトグラフィー(LC)や吸光度測定などによる濃度測定によっても得られる。
【0063】
カラーフィルター用着色剤に含有される着色組成物は、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などがあげられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るアゾ染料と金属との錯体化合物を含有する着色組成物は、PGMEやPGMEAへの溶解性に優れることが好ましく、PGMEへの溶解性に優れることがより好ましい。
【0064】
本発明の着色組成物の粉末の分光特性(透過率、反射率)は、カラーフィルター用着色剤として色素を単独で使用する場合、または、他の色素と混合して使用する場合のどちらでも重要であり、カラーフィルターの色特性に直接影響する。測定方法は、溶液や分散液状態の紫外・可視吸収(または透過)スペクトルや、ガラスや透明樹脂基板に塗布した薄膜の吸収(または透過)スペクトルを測定する方法がある。また、粉末に直接に光照射し、粒子表面や粒子表面付近で反射・散乱した光を計測する方法がある。
【0065】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるアゾ化合物を含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、一般式(1)で表されるアゾ化合物、その他の染料や顔料などの色素(アゾ化合物と金属との錯体化合物を含む)、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0066】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0067】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤は、アゾ化合物を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254などの赤色顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色染料、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー83などの黄色顔料などがあげられる。青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、キサンテン系、本発明に属さないアゾ系の化合物;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系の染料または顔料があげられる。
【0068】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、アゾ化合物に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%とするのがより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%であるのがより好ましい。
【0069】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50重量%であるのがより好ましい。
【0070】
本発明のアゾ化合物を含有する着色組成物を含むカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%であるのが好ましく、10~40重量%であるのがより好ましい。
【0071】
本発明のアゾ化合物の、紫外可視透過または吸収スペクトルの測定は、測定試料が濃度0.02mmol/Lの溶液となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶媒を用いて濃度調整した試料を測定して行うのが好ましい。また、測定する波長の範囲は、300nmから750nmであることが好ましい。さらに、測定する温度は、25±2℃であるのが好ましい。
このようにして得た本発明のアゾ化合物のPGME溶液の紫外可視透過スペクトルは、500nm以上の長波長側の範囲に、透過率の高い領域を有しており、比較的狭い波長範囲で、スペクトルの傾きが急峻に立ち上がる部分が観測される。このような紫外可視透過スペクトルの例を
図1に示す。
図1では、波長が500nm以上の長波長側において、このような紫外可視透過スペクトルの急峻な傾きが、透過率の低い点Pと、透過率の高い点Qを結ぶ直線(破線)の傾きで表されている。
ここで本発明において、このような紫外可視透過スペクトルの傾きの大きさは、
「波長λ(nm)の変化量(Δλ)に対する透過率T(%)の変化量(ΔT)の比」、
すなわち「透過率Tの変化率」(ΔT(%)/Δλ(nm)、または変化率ΔT/Δλ)(単位:透過率%/nm)で表す。この値を求めるための透過率Tの範囲については、低い方の透過率は、20%以下が好ましく、高い方の透過率は80%以上が好ましい。本発明において、この透過率Tの変化率(ΔT(%)/Δλ(nm))は、
「透過率Tが20%である波長λ(nm)から、
透過率Tが80%である波長λ(nm)までの範囲内」での
透過率Tの変化率(ΔT(%)/Δλ(nm))であることが好ましい。この変化率の値は、実際の紫外可視透過スペクトルにおいては、下記数式で計算することができる。
紫外可視透過スペクトルにおける透過率Tの変化率
= ΔT(%)/Δλ(nm)
={80(%)-20(%)}/{透過率80%の波長(nm)-透過率20%の波長(nm)}
本発明のアゾ化合物において、上記変化率の値は3.20(透過率%/nm)以上であるのが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、1H-NMR分析(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECA-600)により行った。
【0073】
本発明のアゾ化合物の紫外可視透過スペクトルは、測定試料を0.02mmol/L濃度の溶液となるようにPGME溶媒を用いて調製し、日本分光製V-650型紫外可視分光光度計を使用して定法により300nmから750nmの紫外可視透過スペクトルまたは吸収スペクトルを測定した。測定結果より最大吸収波長、透過率80%および20%の波長を読み取った。
【0074】
本発明において、分解開始温度として、熱重量測定により、5%重量減少温度を測定した。具体的に、熱重量測定-示差熱分析装置(Bruker AXS製 TG-DTA2000SA型)を用いて、窒素気流下において、25℃から600℃まで10℃/分で昇温測定(試料重量:5±1mg)し、測定開始時より試料重量が5%減少した温度(5%重量減少温度)を読み取った。
【0075】
[合成実施例1] ニトロ化合物(中間体1)の合成
3Lコルベンにp-ニトロフェニルスルホニルクロリド(140g、0.63mol)、トルエン(800mL)を加え、溶解後、トリエチルアミン(127.9g、1.26mol)を添加した。10℃に冷却後、ジ(2-エチルヘキシル)アミン(152.6g、0.63mol)を1時間かけて滴下した。10℃で1時間撹拌後、室温で20時間撹拌した。水(500mL)を添加し、洗浄・分液した。有機層を1M HCl(500mL×2)、水(500mL×2)、飽和食塩水(500mL)の順で洗浄後、硫酸マグネシウム(50g)で乾燥させた。固体を濾別後、溶媒を留去して褐色オイルとして、前記反応式(2)中の式(中間体1)で表される化合物を得た(279.0g、Y=103.5%、HPLC純度96.1%)。
【0076】
[合成実施例2] アミン化合物(中間体2)の合成
3Lコルベンに鉄粉(218.3g、3.91mol)、酢酸(153.8g、2.56mol)、水(460mL)を入れ、75℃で1.5時間撹拌した。上記式(中間体1)(260g、0.61mol)とエタノール(620mL)の溶液を1.5時間かけて滴下し、75℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、炭酸ナトリウム(194g、1.83mol)と水(780mL)の溶液を添加し、室温で1時間撹拌した。固形分を珪藻土でろ過し、酢酸エチル(1500mL)で分散洗浄した。ろ液を濃縮乾固させて黄色固体を得た。次に、黄色固体を、ヘプタン(100mL)で分散洗浄し、減圧乾燥(60℃,24時間)させることで白色固体として前記反応式(2)中の式(中間体2)で表される化合物を得た(168.8g、Y=69.8%、HPLC純度96.9%)。
【0077】
[合成実施例3] 化合物(A-1)の合成
100mLコルベンに上記式(中間体2)(5g、12.6mmol)を入れ、THF(17mL)で溶解後、2℃まで冷却した。36%HCl(5.5g、54.3mmol)と水(17mL)を添加後、亜硝酸ナトリウム(0.87g、12.6mmol)と水(3mL)の溶液を添加し、0℃で5時間撹拌した。スルファミン酸(0.12g、1.3mmol)を添加し、0℃で15分撹拌して、ジアゾニウム溶液とした。300mLコルベンにナフトールAS(3.32g、12.6mmol)、水酸化ナトリウム(2.02g、50.4mol)、水(50mL)、THF(10mL)を入れ、50℃で加熱溶解させた後、0℃まで冷却して、ジアゾニウム溶液を5分かけて添加した。0℃で5時間、約25℃で26時間撹拌した後、析出した固体をろ別した。固体をTHFに溶解させ、ろ過して不溶物を除去し、ろ液を濃縮した。濃縮後の固体をエタノール(50mL)でリフラックス洗浄し、減圧乾燥(80℃、18.5時間)することで赤色固体として化合物(A-1)を得た(5.5g、Y=65.0%、LC純度96.5%)。
【0078】
[合成実施例4] ニトロ化合物(中間体3)の合成
合成実施例1のジ(2-エチルヘキシル)アミンをジ(n-プロピル)アミンに変えた以外は、合成実施例1と同様の操作を行い、下記式(中間体3)を得た。
【0079】
【0080】
[合成実施例5] アミン化合物(中間体4)の合成
合成実施例2で用いた前記式(中間体1)を前記式(中間体3)に変えた以外は、合成実施例2と同様の操作を行い、下記式(中間体4)を得た。
【0081】
【0082】
[合成実施例6] 化合物(A-2)の合成
合成実施例3において、式(中間体2)を式(中間体4)へ、ナフトールASを4’-クロロ-3-ヒドロキシ-2-ナフトアニリドに変えた以外は、合成実施例3と同様の操作を行い、化合物(A-2)を得た。
【0083】
[合成実施例7] 化合物(A-3)の合成
合成実施例3において、式(中間体2)を式(中間体4)に変え、ナフトールASを3’-ニトロ-3-ヒドロキシ-2-ナフトアニリドに変えた以外は、合成実施例3と同様の操作を行い、化合物(A-3)を得た。
【0084】
[実施例1]
合成実施例3で得られた化合物(A-1)の、濃度0.02mmol/LのPGME溶液を調製し、25±2℃における紫外可視透過スペクトルを測定した。測定結果より、波長500nm以上の長波長側において、透過率80%および20%の波長を読み取った。読み取った値を用いて下記数式により、透過率20%から80%への
変化率ΔT(%)/Δλ(nm) (単位:透過率%/nm)を算出した。結果を表1に示す。
【0085】
【0086】
化合物(A-1)の熱重量測定を25℃から600℃まで10℃/分で昇温測定し、測定開始時より試料重量が5%減少した温度(5%重量減少温度)を読み取った。結果を表1に示す。
【0087】
[実施例2および実施例3]
実施例1の化合物(A-1)に対して実施した操作・測定を、化合物(A-2)および(A-3)について同様に実施した。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1~比較例3]
比較のために、実施例1の化合物(A-1)を、本発明に属さない色素として、下記の化合物(D-1)(またはアシッドレッド88)、化合物(D-2)および化合物(D-3)の色素に変えた以外は、実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表1に示すように、本発明のアゾ化合物は、アシッドレッド88などの既存の染料やスルホンアミド部位を有さない類似の色素化合物に比べて、紫外可視透過スペクトル(波長が500nm以上の長波長側)の変化率が大きく、より鋭い傾きを有しているため、発色性のよいカラーフィルター用着色剤として適している。さらに、5%重量減少温度は、既存品と遜色なく、耐熱性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係るアゾ化合物は、発色性および耐熱性に優れたカラーフィルター用色素として有用であり、該化合物を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として好適である。また、当該着色剤を用いることにより優れた発色性(色域、輝度、コントラスト比など)を有するカラーフィルターが得られる。