IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特許7158970異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法
<>
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図1
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図2
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図3
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図4
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図5
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図6
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図7
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図8
  • 特許-異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/028 20160101AFI20221017BHJP
【FI】
H02P29/028
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018178359
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020054030
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光成
(72)【発明者】
【氏名】周 霄
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-048837(JP,A)
【文献】特開2012-095846(JP,A)
【文献】特開2018-148715(JP,A)
【文献】特開2018-129995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出する検出手段と、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行う計時手段と、
前記計時手段により計時された第1の時間と、前記第1の時間が計時される前に計時された第2の時間とを比較する比較手段と、
前記第1の時間と前記第2の時間との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であることを判定する判定手段とを備え
前記比較手段は、前記モータのロータの回転速度と前記モータのロータの目標回転速度とが所定の条件を満たす場合に、前記第1の時間と前記第2の時間とを比較する、異常判定装置。
【請求項2】
前記位置信号は、前記モータのロータの回転に応じてハイレベルの位相とローレベルの位相とが交互に切り替わる信号であり、
前記検出手段は、前記位置信号がハイレベルの位相からローレベルの位相に切り替わる立ち下がりと前記位置信号がローレベルの位相からハイレベルの位相に切り替わる立ち上がりとの少なくとも一方を検出し、
前記計時手段は、前記位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングから前記位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングまでのロー期間と、前記位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングから前記位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングまでのハイ期間との少なくとも一方を計時する、請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記ロー期間の計時結果同士の比較と、前記ハイ期間の計時結果同士の比較との少なくとも一方を行う、請求項2に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングから前記位置信号の立ち上がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、及び前記位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングから前記位置信号の立ち下がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、前記モータの駆動状態が異常であると判定する、請求項2又は3に記載の異常判定装置。
【請求項5】
前記所定の条件は、少なくとも、前記モータのロータの回転速度が前記モータのロータの目標回転速度よりも低いことである、請求項に記載の異常判定装置。
【請求項6】
前記第2の時間は、前記第1の時間が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された時間である、請求項1からのいずれかに記載の異常判定装置。
【請求項7】
モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出する検出手段と、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行う計時手段と、
前記計時手段により計時された第1の時間と、前記第1の時間が計時される前に計時された第2の時間とを比較する比較手段と、
前記第1の時間と前記第2の時間との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であることを判定する判定手段とを備え、
前記比較手段は、前記計時手段による計時が行われる度に、そのとき計時された前記第1の時間とその直前の計時機会において計時された前記第2の時間とを比較し、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長い場合に判定用のカウンタの値を増加させることを行い、
前記判定手段は、前記カウンタの値が所定の閾値よりも大きくなったとき、前記モータの駆動状態が異常であると判定し、
前記比較手段は、
前記第1の時間と前記第2の時間とを比較した場合において、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くないとき、前記第2の時間が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された第3の時間と前記第1の時間とを比較し、
前記第1の時間が前記第3の時間よりも長いとき、前記カウンタの値を、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くなった場合よりも小さくする異常判定装置。
【請求項8】
第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有する前記モータと、
前記第1系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに駆動電流を供給可能な、前記第1系統の駆動回路とは異なる第2系統の駆動回路と、
前記第1系統の駆動回路の動作を制御して前記第1系統の駆動回路により前記モータを駆動する駆動制御手段と、
請求項1からのいずれかに記載の異常判定装置と、
前記第1系統の駆動回路により前記モータが駆動されている場合において、前記異常判定装置により前記モータの駆動状態が異常であると判定されたとき、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路を前記第1系統の駆動回路から前記第2系統の駆動回路に切り替える切替手段とを備える、モータ装置。
【請求項9】
前記モータのロータの位置に応じて前記位置信号を出力する位置検出器をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記位置信号に基づいて前記第1系統の駆動回路の動作を制御し、
前記検出手段は、前記位置信号の位相の変化を検出する、請求項に記載のモータ装置。
【請求項10】
モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、
第1の計時結果と、前記第1の計時結果が得られる前に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップとを備え
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、前記モータのロータの回転速度と前記モータのロータの目標回転速度とが所定の条件を満たす場合に、前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較する、異常判定方法。
【請求項11】
モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、
第1の計時結果と、前記第1の計時結果が得られる前に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップとを備え、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、前記計時が行われる度に、そのとき計時された前記第1の計時結果とその直前の計時機会において計時された前記第2の計時結果とを比較し、前記第1の計時結果に対応する第1の時間が前記第2の計時結果に対応する第2の時間よりも長い場合に判定用のカウンタの値を増加させることを行い、
前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップでは、前記カウンタの値が所定の閾値よりも大きくなったとき、前記モータの駆動状態が異常であると判定し、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較した場合において、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くないとき、前記第2の計時結果が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された第3の計時結果と前記第1の計時結果とを比較し、
前記第1の時間が前記第3の計時結果に対応する第3の時間よりも長いとき、前記カウンタの値を、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くなった場合よりも小さくする、異常判定方法。
【請求項12】
第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有するモータの駆動制御方法であって、
前記第1系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに駆動電流を供給可能な前記第1系統の駆動回路とは異なる第2系統の駆動回路とを用いて行われ、
前記第1系統の駆動回路の動作を制御して前記第1系統の駆動回路により前記モータを駆動する駆動制御ステップと、
前記第1系統の駆動回路により前記モータを駆動している場合において、前記モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、
第1の計時結果と、前記第1の計時結果が得られる前に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップと、
前記モータの駆動状態が異常であると判定されたとき、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路を前記第1系統の駆動回路から前記第2系統の駆動回路に切り替えるステップとを備え
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、前記モータのロータの回転速度と前記モータのロータの目標回転速度とが所定の条件を満たす場合に、前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較する、モータの駆動制御方法。
【請求項13】
第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有するモータの駆動制御方法であって、
前記第1系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに駆動電流を供給可能な前記第1系統の駆動回路とは異なる第2系統の駆動回路とを用いて行われ、
前記第1系統の駆動回路の動作を制御して前記第1系統の駆動回路により前記モータを駆動する駆動制御ステップと、
前記第1系統の駆動回路により前記モータを駆動している場合において、前記モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、
前記位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、
第1の計時結果と、前記第1の計時結果が得られる前に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果との比較結果に基づいて、前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップと、
前記モータの駆動状態が異常であると判定されたとき、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路を前記第1系統の駆動回路から前記第2系統の駆動回路に切り替えるステップとを備え、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、前記計時が行われる度に、そのとき計時された前記第1の計時結果とその直前の計時機会において計時された前記第2の計時結果とを比較し、前記第1の計時結果に対応する第1の時間が前記第2の計時結果に対応する第2の時間よりも長い場合に判定用のカウンタの値を増加させることを行い、
前記モータの駆動状態が異常であると判定するステップでは、前記カウンタの値が所定の閾値よりも大きくなったとき、前記モータの駆動状態が異常であると判定し、
前記第1の計時結果と前記第2の計時結果とを比較するステップでは、
前記第1の時間と前記第2の時間とを比較した場合において、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くないとき、前記第2の計時結果が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された第3の計時結果と前記第1の計時結果とを比較し、
前記第1の時間が前記第3の計時結果に対応する第3の時間よりも長いとき、前記カウンタの値を、前記第1の時間が前記第2の時間よりも長くなった場合よりも小さくする、モータの駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法に関し、特に、モータの駆動制御回路に用いられる異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動制御装置によりモータを駆動するモータ装置において、モータ駆動制御装置の駆動回路に故障が発生し、モータを駆動させることができなくなる場合がある。所定の回転方向にモータを駆動させる用途において、上記のようにモータを駆動させることができなくなったとき、外力が作用してモータが所定の回転方向とは反対の方向に強制的に回転すると、問題が生じる場合がある。
【0003】
例えば、モータ駆動制御装置によりファンモータを駆動する場合において、モータ駆動制御装置の駆動回路が故障し、大電流が流れることで電源ラインのヒューズが切れ、モータ駆動制御装置が動作不能になることがある。このようにモータ駆動制御装置が動作不能となり、ファンモータの駆動が停止した場合において、例えば、当該ファンモータと併用されている他のファンモータの動作に伴って当該ファンモータに風が流入すると、当該ファンモータが逆回転する可能性がある。例えば、複数のファンモータがハウジングで囲まれた装置の冷却用途に用いられている場合において、上記のようにして1つのファンモータが逆回転すると、装置の冷却機能が低下する。
【0004】
このようなモータ駆動制御装置の駆動回路が故障したときに発生する問題に関連して、下記特許文献1には、2系統の駆動回路を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-91455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようにモータ駆動制御装置の駆動回路が動作不能になるなどしてモータを駆動させることができなくなるような異常が発生したときには、モータの用途によっては、モータを駆動させることができなくなったことに速やかに対応する必要がある。速やかに異常の発生に対応できるようにするには、異常が発生したことを速やかに検知できるようにすることが重要である。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、駆動回路の異常を速やかに検知できる異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、異常判定装置は、モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出する検出手段と、位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行う計時手段と、計時手段により計時された第1の時間と、第1の時間が計時される前に計時された第2の時間とを比較する比較手段と、第1の時間と第2の時間との比較結果に基づいて、モータの駆動状態が異常であることを判定する判定手段とを備える。
【0009】
好ましくは、位置信号は、モータのロータの回転に応じてハイレベルの位相とローレベルの位相とが交互に切り替わる信号であり、検出手段は、位置信号がハイレベルの位相からローレベルの位相に切り替わる立ち下がりと位置信号がローレベルの位相からハイレベルの位相に切り替わる立ち上がりとの少なくとも一方を検出し、計時手段は、位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングから位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングまでのロー期間と、位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングから位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングまでのハイ期間との少なくとも一方を計時する。
【0010】
好ましくは、比較手段は、ロー期間の計時結果同士の比較と、ハイ期間の計時結果同士の比較との少なくとも一方を行う。
【0011】
好ましくは、判定手段は、位置信号の立ち下がりが検出されたタイミングから位置信号の立ち上がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、及び位置信号の立ち上がりが検出されたタイミングから位置信号の立ち下がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、モータの駆動状態が異常であると判定する。
【0012】
好ましくは、比較手段は、モータのロータの回転速度とモータのロータの目標回転速度とが所定の条件を満たす場合に、第1の時間と第2の時間とを比較する。
【0013】
好ましくは、所定の条件は、少なくとも、モータのロータの回転速度がモータのロータの目標回転速度よりも低いことである。
【0014】
好ましくは、第2の時間は、第1の時間が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された時間である。
【0015】
好ましくは、比較手段は、計時手段による計時が行われる度に、そのとき計時された第1の時間とその直前の計時機会において計時された第2の時間とを比較し、第1の時間が第2の時間よりも長い場合に判定用のカウンタの値を増加させることとを行い、判定手段は、カウンタの値が所定の閾値よりも大きくなったとき、モータの駆動状態が異常であると判定する。
【0016】
好ましくは、比較手段は、第1の時間と第2の時間とを比較した場合において、第1の時間が第2の時間よりも長くないとき、第2の時間が計時された計時機会の直前の計時機会において計時された第3の時間と第1の時間とを比較し、第1の時間が第3の時間よりも長いとき、カウンタの値を、第1の時間が第2の時間よりも長くなった場合よりも小さくする。
【0017】
好ましくは、モータ装置は、第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有するモータと、第1系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路と、第2系統のコイルに駆動電流を供給可能な、第1系統の駆動回路とは異なる第2系統の駆動回路と、第1系統の駆動回路の動作を制御して第1系統の駆動回路によりモータを駆動する駆動制御手段と、上記のいずれかに記載の異常判定装置と、第1系統の駆動回路によりモータが駆動されている場合において、異常判定装置によりモータの駆動状態が異常であると判定されたとき、モータに駆動電流を供給する駆動回路を第1系統の駆動回路から第2系統の駆動回路に切り替える切替手段とを備える。
【0018】
好ましくは、モータ装置は、モータのロータの位置に応じて位置信号を出力する位置検出器をさらに備え、駆動制御手段は、位置信号に基づいて第1系統の駆動回路の動作を制御し、検出手段は、位置信号の位相の変化を検出する。
【0019】
この発明の他の局面に従うと、異常判定方法は、モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、第1の計時結果と、第1の計時結果が得られた後に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、第1の計時結果と第2の計時結果との比較結果に基づいて、モータの駆動状態が異常であると判定するステップとを備える。
【0020】
この発明のさらに他の局面に従うと、モータの駆動制御方法は、第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有するモータの駆動制御方法であって、第1系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路と、第2系統のコイルに駆動電流を供給可能な第1系統の駆動回路とは異なる第2系統の駆動回路とを用いて行われ、第1系統の駆動回路の動作を制御して第1系統の駆動回路によりモータを駆動する駆動制御ステップと、第1系統の駆動回路によりモータを駆動している場合において、モータのロータの回転に対応して位相が変化する位置信号の位相の変化を検出するステップと、位置信号の位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行うステップと、第1の計時結果と、第1の計時結果が得られた後に得られた第2の計時結果とを比較するステップと、第1の計時結果と第2の計時結果との比較結果に基づいて、モータの駆動状態が異常であると判定するステップと、モータの駆動状態が異常であると判定されたとき、モータに駆動電流を供給する駆動回路を第1系統の駆動回路から第2系統の駆動回路に切り替えるステップとを備える。
【発明の効果】
【0021】
これらの発明に従うと、駆動回路の異常を速やかに検知できる異常検知装置、モータ装置、異常検知方法、及びモータの駆動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータ装置の構成を示す図である。
図2】モータ装置のモータのステータの一例を示す図である。
図3】モータ装置のモータ駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】モータが駆動中に正回転から逆回転に移行するときのホール信号の典型的な例を示す波形図である。
図5】切替動作の一例を示すフローチャートである。
図6】異常判定動作の一例を示すフローチャートである。
図7】変数操作処理の一例を示すフローチャートである。
図8】ハイ期間カウント処理の一例を示すフローチャートである。
図9】ロー期間カウント処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における異常検知装置を用いたモータ装置について説明する。
【0024】
[実施の形態]
【0025】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ装置1の構成を示す図である。図2は、モータ装置1のモータ20のステータの一例を示す図である。図3は、モータ装置1のモータ駆動制御装置1aの構成を示すブロック図である。
【0026】
図1及び図3に示されるように、モータ装置1は、モータ20と、モータ20に駆動電流を供給しモータ20を駆動するモータ駆動制御装置1aとを有している。モータ20は、U相、V相、W相の3相のコイル(第1系統のコイルの一例)Lu,Lv,Lwを有する3相モータである。本実施の形態において、モータ20は、単相のコイル(第2系統のコイルの一例)Lu2,Lv2,Lw2を有している。すなわち、モータ20は、第1系統のコイル及び第2系統のコイルを有している。モータ20の種類は、同期モータ、ブラシレスモータなど、いずれであってもよい。
【0027】
なお、図1及び図2において、3相のコイルLu,Lv,Lwや単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、模式的に示されている。
【0028】
図2に示されるように、3相のコイルLu,Lv,Lwは、鉄心22に設けられている複数のティース23のそれぞれに巻回されている。例えば、9つのティース23が設けられている場合において、3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれは、3つのティース23に巻回されている。図1に示されるように、U相のコイルLu、V相のコイルLv、及びW相のコイルLwのそれぞれの一端は、モータ駆動制御装置1aに接続され、それぞれの他端は、互いに接続されている。
【0029】
図2に示されるように、本実施の形態において、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、複数のティース23のそれぞれに巻回されている。すなわち、9つのティース23が設けられている場合において、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、3相のコイルLu,Lv,LwのU相のコイルLuが巻回される3つのティース23、V相のコイルが巻回される3つのティース23、及びW相のコイルが巻回される少なくとも3つのティース23のそれぞれに巻回されている。具体的には、U相のコイルLuが巻回されるティース23にはコイルLu2が巻回されており、V相のコイルLvが巻回されるティース23にはコイルLv2が巻回されており、W相のコイルLwが巻回されるティース23にはコイルLw2が巻回されている。コイルLu2と、コイルLv2と、コイルLw2とは、互いに直列に接続されている。すなわち、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、2つの端部を有している。なお、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、U相のコイルLuが巻回される少なくとも1つのティース23、V相のコイルLvが巻回される少なくとも1つのティース23、及びW相のコイルLwが巻回される少なくとも1つのティース23のそれぞれに巻回されていてもよい。なお、本実施の形態では、3相のコイルLu,Lv,Lwが巻回されるティースのそれぞれに単相のコイルLu2,Lv2,Lw2が巻回されているが、これに限られるものではない。単相のコイルは、3相のコイルLu,Lv,Lwの少なくともいずれか1相のコイルが巻回されるティースに巻回されればよい。
【0030】
3相のコイルLu,Lv,Lwのいずれか1相のコイルが巻回されるティース23への単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の巻回方向は、他の2相のコイルが巻回されるティース23への単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の巻回方向とは異なっている。図2に示される例では、U相のコイルLuが巻回されるティース23へのコイルLu2の巻回方向は、V相のコイルLvが巻回されるティース23へのコイルLv2の巻回方向及びW相のコイルLwが巻回されるティース23へのコイルLw2の巻回方向とは異なっている。例えば、コイルLu2の巻回方向がCW(時計回り方向)であるとき、他のコイルLv2,Lw2の巻回方向は、CCW(反時計回り方向)である。換言すると、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に電流が流れるとき、コイルLu2に流れる電流の向きと、他のコイルLv2,Lw2に流れる電流の向きとは、異なっている。
【0031】
図1に示されるように、モータ装置1は、モータ20のほか、制御回路部(異常判定装置の一例、駆動制御手段の一例)3と、位置検出器5とを備える。また、モータ装置1は、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwに駆動電流を供給可能な第1駆動回路(第1系統の駆動回路の一例)2と、モータ20の単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に駆動電流を供給可能な、第1駆動回路2とは異なる第2駆動回路(第2系統の駆動回路の一例)52とを備える。図3に示されるように、制御回路部3、位置検出器5、第1駆動回路2、及び第2駆動回路52などで、モータ駆動制御装置1aが構成される。モータ駆動制御装置1aは、外部の制御装置80に接続されており、制御装置80から入力される速度指令信号Scに応じて、モータ20を駆動させる。なお、モータ駆動制御装置1aは、制御装置80に接続されておらず、例えばモータ駆動制御装置1a単体でモータ20を駆動させることができるように構成されていてもよい。
【0032】
詳細は後述するが、第1駆動回路2は、3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれの一端に接続された3相インバータ回路2aを有し、第2駆動回路52は、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の両端に接続された単相インバータ回路52aを有する。モータ装置1は、第1駆動回路2の動作を制御して第1駆動回路2によりモータ20を駆動する駆動制御手段と、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える切替手段とを備えている。なお、モータ装置1の制御回路部3は、駆動制御手段として、位置検出器5が出力する位置信号に基づいて第1駆動回路2の動作を制御し、第2駆動回路52は、単相インバータ回路52aの動作を制御する単相駆動部52bを有し、単相駆動部52bは、位置信号に基づいて単相インバータ回路52aの動作を制御する。
【0033】
また、詳細は後述するが、本実施の形態において、制御回路部3は、モータ20の駆動状態が異常であると判定する異常判定装置として機能する。モータ装置1は、第1駆動回路2によりモータ20が駆動されている場合において、異常判定装置によりモータ20の駆動状態が異常であると判定されたとき、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える切替手段を有している。
【0034】
位置検出器5は、モータ20の3相のうちいずれか1相に対応し、モータ20のロータの回転に対応して位相が変化する位置信号を出力する。具体的には、位置検出器5は、例えば、ホール素子やホールICなどの磁気センサである。本実施の形態では、位置検出器5は、具体例として、ホールICであり、位置信号はホール信号Shである。位置検出器5から出力されるホール信号Shは、制御回路部3と第2駆動回路52とに入力される。位置検出器5は、モータ20の1箇所においてロータの位置を検出し、ホール信号Shを出力する。
【0035】
ホール信号Shは、ロータの位置に応じて、すなわちモータ20の各相とロータとの位置関係に応じて、位相が変化する信号である。ホール信号Shは、ロータの回転に応じてハイレベルの位相(以下、単にハイということがある)とローレベルの位相(以下、単にローということがある)とが交互に切り替わる信号である。換言すると、ホール信号Shは、ロータの回転に応じて周期的にハイ、ローとなる信号である。ホール信号Shは、ロータが1回転する間に、所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第1の回転位置になったとき)にローからハイになり(立ち上がり;立ち上がりエッジ)、それとは別の所定の位置をロータが通過したとき(ロータが第2の回転位置になったとき)にハイからローに戻る(立ち下がり;立ち下がりエッジ)。
【0036】
本実施の形態において、1つの位置検出器5のみが設けられており、モータ20のうち1箇所のみで検出されたホール信号Shが制御回路部3と第2駆動回路52とに入力される。モータ装置1は、制御回路部3を用いて、ロータの位置を検出するための位置検出器5を1つのみ使用する1センサ方式で、モータ20を駆動する。位置検出器5は、巻回方向が他のコイルLu2,Lw2とは異なるコイルLv2に対応する位置(例えばモータ20のU相とV相の間)に、配置されている。
【0037】
なお、位置検出器5は、モータ20の他のいずれかの相に対応するものであってもよい。また、3相のそれぞれに対応する2つ又は3つの位置検出器5が設けられており、そのうち1箇所の位置検出器5のみから出力されたホール信号Shが制御回路部3及び第2駆動回路52に入力されて用いられるようにしてもよい。また、位置検出器5は、第1駆動回路2を構成するICや第2駆動回路52を構成するICに設けられている物であってもよい。また、制御回路部3には、このようなホール信号Shに加えて、又はホール信号Shに代えて、モータ20の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ20の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ20の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ20の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ20の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
【0038】
第1駆動回路2は、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電する。すなわち、第1駆動回路2は、モータ20に駆動電流を供給可能である。第1駆動回路2は、3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれの一端に接続された3相インバータ回路2aと、プリドライブ回路2bとを有している。第1駆動回路2には、制御回路部3から出力される駆動制御信号Sd1が入力される。
【0039】
3相インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力される6種類の駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlに基づいてモータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電し、モータ20を駆動する。
【0040】
本実施の形態において、3相インバータ回路2aは、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1-Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、直流電源の正極側にメインヒューズ7を介して接続されたPチャンネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、直流電源の負極(本実施の形態において、グランド)側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q2,Q4,Q6のソース端子は、直流電源の負極に、センス抵抗R0を介して接続されている。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点が、U相のコイルLuの一端に接続される出力端子Tuに接続されている。スイッチング素子Q3,Q4の接続点が、V相のコイルLvの一端に接続される出力端子Tvに接続されている。スイッチング素子Q5,Q6の接続点が、W相のコイルLwの一端に接続される出力端子Twに接続されている。上述のように、3相インバータ回路2aに接続されていないコイルLu,Lv,Lwの他端は、モータ20において互いに接続されている。
【0041】
プリドライブ回路2bは、3相インバータ回路2aの6個のスイッチング素子Q1-Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。各出力端子から駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力して、スイッチング素子Q1-Q6のオン/オフ動作を制御する。制御回路部3から出力される駆動制御信号Sd1は、プリドライブ回路2bに入力される。プリドライブ回路2bは、駆動制御信号Sd1に基づいて、駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを出力することにより、3相インバータ回路2aを動作させる。すなわち、3相インバータ回路2aは、駆動制御信号Sd1に基づいて、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに選択的に通電する。
【0042】
第2駆動回路52は、モータ20に駆動電流を供給可能である。第2駆動回路52は、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の両端に接続された単相インバータ回路52aを有する。また、第2駆動回路52は、単相インバータ回路52aに駆動信号V1u,V1l,V2u,V2lを出力して単相インバータ回路52aを動作させる単相駆動部52bを有する。第2駆動回路52は、例えば、1チップの単相駆動ドライバICである。
【0043】
単相インバータ回路52aは、単相駆動部52bから出力される4種類の駆動信号V1u,V1l,V2u,V2lに基づいて、モータ20の単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に通電する。本実施の形態において、単相インバータ回路52aは、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に駆動電流を供給するための4個のスイッチング素子Q7-Q10を備えている。スイッチング素子Q7,Q9は、直流電源の正極側に配置されたPチャンネルのMOSFETからなるハイサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q8,Q10のソース端子は、直流電源の負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q8,Q10は、直流電源の負極に、センス抵抗R0を介して接続されている。スイッチング素子Q7,Q8の組み合わせとスイッチング素子Q9,Q10の組み合わせとのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの2組の直列回路が並列に接続されている。スイッチング素子Q7,Q8の接続点が、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の一端(図に示される例では、コイルLu2の一端)に接続される出力端子T1に接続されている。また、スイッチング素子Q9,Q10の接続点が、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の他端(図に示される例では、コイルLw2の一端)に接続される出力端子T2に接続されている。
【0044】
単相駆動部52bには、位置検出器5から出力されたホール信号Shが入力される。単相駆動部52bは、ホール信号Shに基づいて、単相インバータ回路52aの動作を制御する。すなわち、単相駆動部52bは、単相インバータ回路52aの4個のスイッチング素子Q7-Q10のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。単相駆動部52bは、ホール信号Shに基づいて、各出力端子から駆動信号V1u,V1l,V2u,V2lを出力して、スイッチング素子Q7-Q10のオン/オフ動作を制御する。
【0045】
以下に詳述するように、制御回路部3は、切替手段として、第2駆動回路52に制御電圧を印加することによりモータ20に駆動電流を供給する駆動回路の切り替えを行い、第2駆動回路52は、制御電圧が基準電圧であるときに駆動電流の供給動作を行わず、制御電圧が所定の駆動電圧であるときに駆動電流の供給動作を行う。
【0046】
本実施の形態において、第2駆動回路52は、制御端子の電位に応じて、駆動電流の供給動作を行う。具体的には、第2駆動回路52は、制御電圧が基準電圧であるとき(例えば、グランドに接続されているとき)に駆動電流の供給動作を行わず、制御電圧が所定の駆動電圧(例えば、5ボルトであるが、これに限られない。また、駆動電圧の値に幅があってもよい。)であるときに駆動電流の供給動作を行う。すなわち、第2駆動回路52は、制御端子に基準電圧が印加されているときには、単相駆動部52bが駆動信号V1u,V1l,V2u,V2lを出力せず、単相インバータ回路52aがオン/オフ動作を行わないため、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に駆動電流が供給されない。他方、第2駆動回路52は、制御端子に所定の駆動電圧が印加されているときには、単相駆動部52b及び単相インバータ回路52aが動作することにより、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に駆動電流が供給される。
【0047】
第2駆動回路52の制御端子には、制御回路部3から出力される制御信号Sd2が入力される。制御信号Sd2は、例えば、基準電圧と所定の駆動電圧とのいずれかの電圧値をとる制御電圧であり、ローレベル(基準電圧)かハイレベル(所定の駆動電圧)のいずれかの水準の電圧値をとる信号である。制御回路部3は、ローレベルまたはハイレベルのいずれかの水準の電圧値の制御信号Sd2を出力することで、第2駆動回路52の制御端子に制御電圧を印加する。これにより、制御回路部3により、第2駆動回路52によるモータ20に対する駆動電流の供給動作が行われるか否かが切り替えられる。
【0048】
制御回路部3は、例えば、マイクロコンピュータ(MCU)で構成されている。制御回路部3は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、マイクロコンピュータなどのプログラマブルデバイスを用いて構成することができるが、これに限られるものではない。制御回路部3は、例えば、デジタル回路等であってもよい。
【0049】
制御回路部3には、電源電圧Vccに基づいてレギュレータ8によって生成された駆動電圧Vdが印加されている。
【0050】
制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力し、モータ20の制御を行う。制御回路部3は、複数のスイッチング素子Q1-Q6を動作させる駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力することで、モータ20の制御を行い、モータ20を回転させる。制御回路部3は、位置検出器5から出力されるホール信号Shに基づいて、駆動制御信号Sd1をプリドライブ回路2bに出力する。
【0051】
制御回路部3は、第1駆動回路2により3相のコイルLu,Lv,Lwに通電する6通りの通電パターンを、所定の順序で、ホール信号Shの位相の変化に応じて切り替える。
【0052】
すなわち、モータ20は3相のコイルLu,Lv,Lwを有しているので、6つの通電パターンがある。すなわち、(1)ハイサイドU相UH及びローサイドV相VLの組合せの第1通電パターン、(2)ハイサイドU相UH及びローサイドW相WLの組合せの第2通電パターン、(3)ハイサイドV相VH及びローサイドW相WLの組合せの第3通電パターン、(4)ハイサイドV相VH及びローサイドU相ULの組合せの第4通電パターン、(5)ハイサイドW相WH及びローサイドU相ULの組合せの第5通電パターン、及び(6)ハイサイドW相WH及びローサイドV相VLの組合せの第6通電パターンがある。
【0053】
また、制御回路部3は、上述のように、ローまたはハイのいずれかの水準の電圧値の制御信号Sd2を出力することで、第2駆動回路52の制御端子に制御電圧を印加する。これにより、制御回路部3により、第2駆動回路52による駆動電流の供給動作が行われるか否かが切り替えられる。
【0054】
図3に示されるように、制御回路部3には、速度指令信号Scが入力される。制御回路部3は、速度指令信号Scに基づいてモータ20の駆動制御を行う。
【0055】
速度指令信号Scは、例えば、制御回路部3の外部から入力される。速度指令信号Scは、モータ20の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、速度指令信号Scは、モータ20の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0056】
制御回路部3は、駆動制御信号Sd1を出力することで、モータ20が速度指令信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部3は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sd1を第1駆動回路2に出力し、モータ20の回転制御を行う。第1駆動回路2は、駆動制御信号Sd1に基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0057】
図3に示されるように、制御回路部3は、回転数算出部(検出手段の一例)31と、速度指令解析部32と、PWM指令部33と、PWM信号生成部35と、駆動回路切替部(計時手段の一例、比較手段の一例、判定手段の一例、切替手段の一例)37とを有している。
【0058】
回転数算出部31には、位置検出器5が出力したホール信号Shが入力される。回転数算出部31は、入力されたホール信号Shに基づいて、所定の相とロータとの位置関係を示す位置信号を出力する。また、回転数算出部31は、ホール信号Shに基づいて、位置信号の周期に対応する実回転数情報を生成して出力する。すなわち、回転数算出部31は、モータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を出力する。図においては、位置信号と実回転数情報とを合わせて、実回転信号S2が示されている。実回転信号S2は、PWM指令部33に出力される。
【0059】
また、回転数算出部31は、ホール信号Shに基づいて回転数信号Sを生成し、回転数信号Sを制御装置80に出力する。回転数信号Sは、例えばFG信号である。
【0060】
速度指令解析部32には、速度指令信号Scが入力される。速度指令解析部32は、速度指令信号Scに基づいて、モータ20の目標回転数を示す目標回転数信号S1(以下、単に目標回転数S1ということがある)を出力する。目標回転数S1は、速度指令信号Scに対応するデューティ比を示すPWM信号である。目標回転数S1は、PWM指令部33に出力される。
【0061】
PWM指令部33には、回転数算出部31から出力された実回転信号S2と、速度指令解析部32から出力された速度指令信号Scに対応する目標回転数S1とが入力される。PWM指令部33は、実回転信号S2すなわち位置信号及び実回転数情報と、目標回転数S1とに基づいて、PWM設定指示信号S3を出力する。PWM設定指示信号S3は、駆動制御信号Sd1を出力するためのデューティ比を示す情報である。PWM設定指示信号S3は、PWM信号生成部35に出力される。
【0062】
PWM指令部33は、目標回転数S1と、モータ20の回転数に対応する実回転数情報とを比較し、モータ20の回転速度が目標回転数S1に対応するものとなるように、PWM設定指示信号S3を生成する。
【0063】
PWM信号生成部35には、PWM設定指示信号S3が入力される。PWM信号生成部35は、PWM設定指示信号S3に基づいて、第1駆動回路2を駆動させるための駆動制御信号Sd1を生成する。駆動制御信号Sd1は、例えば、デューティ比がPWM設定指示信号S3と同一となるPWM信号である。換言すると、駆動制御信号Sd1は、PWM設定指示信号S3に対応するデューティ比を有する信号である。
【0064】
PWM信号生成部35から出力された駆動制御信号Sd1は、制御回路部3から第1駆動回路2に出力される。これにより、第1駆動回路2からモータ20に駆動信号が出力され、モータ20が駆動される。
【0065】
駆動回路切替部37には、後述のように回転数算出部31から出力される位置検出信号S5が入力される。以下に詳述するが、駆動回路切替部37は、位置検出信号S5に基づいて、モータ20の駆動状態が異常であるか否かについての判定を行う。そして、その判定結果に応じて、PWM信号生成部35に制御信号S6を出力したり、第2駆動回路52に制御信号Sd2を出力したりすることで、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える制御を行う。
【0066】
より具体的には、駆動回路切替部37は、モータ20の駆動状態が異常であると判定したとき、PWM信号生成部35に制御信号S6を出力する。制御信号S6は、PWM信号生成部35が駆動制御信号Sd1を出力するのを停止させるための停止制御信号である。すなわち、制御信号S6が駆動回路切替部37からPWM信号生成部35に出力されることにより、制御回路部3から第1駆動回路2への駆動制御信号Sd1の出力が停止され、第1駆動回路2によるモータ20の駆動が停止する。また、駆動回路切替部37は、モータ20の駆動状態が異常であると判定したとき、第2駆動回路52に制御信号Sd2を出力する。これにより、第2駆動回路52によるモータ20の駆動が開始される。すなわち、このように駆動回路切替部37は、制御信号S6と制御信号Sd2とを出力することにより、モータ20に駆動電流を供給する駆動回路を第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替える切替手段として動作する。
【0067】
ここで、モータ20の駆動状態が異常であるか否かについて判定を行う異常判定動作は、以下のようにして、制御回路部3により行われる。
【0068】
すなわち、本実施の形態において、制御回路部3は、ホール信号Shの位相の変化を検出する検出手段と、ホール信号Shの位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行う計時手段と、計時手段により計時された第1の時間と、第1の時間が計時される前に計時された第2の時間とを比較する比較手段と、第1の時間と第2の時間との比較結果に基づいて、モータ20の駆動状態が異常であることを判定する判定手段とを有している。
【0069】
より具体的には、回転数算出部31は、検出手段として動作し、位置信号がハイレベルの位相からローレベルの位相に切り替わる立ち下がりと位置信号がローレベルの位相からハイレベルの位相に切り替わる立ち上がりとの両方を検出し、検出したタイミングを示す位置検出信号S5を出力する。位置検出信号S5は、駆動回路切替部37に出力される。なお、回転数算出部31は、位置信号の立ち下がりと位置信号の立ち上がりとのいずれか一方を検出して位置検出信号S5を出力するように構成されていてもよい。
【0070】
駆動回路切替部37は、第1駆動回路2によりモータ20が駆動されているとき、計時手段として動作し、位置検出信号S5に基づいて、ホール信号Shの位相の変化の検出タイミングに応じた計時を行う。本実施の形態においては、駆動回路切替部37は、位置検出信号S5に基づいて、ホール信号Shの立ち下がりが検出されたタイミングからホール信号Shの立ち上がりが検出されたタイミングまでのロー期間(ローレベルの継続期間)と、ホール信号Shの立ち上がりが検出されたタイミングからホール信号Shの立ち下がりが検出されたタイミングまでのハイ期間(ハイレベルの継続期間)とを計時する。計時は、例えばタイマでクロック信号をカウントすることにより行われ、ロー期間やハイ期間について、タイマのカウント値が得られる。なお、計時は、ハイ期間とロー期間とのいずれか一方について行われるようにしてもよい。また、計時は、ホール信号Shの1周期や複数周期など、上記とは異なる期間について行われるようにしてもよい。
【0071】
また、駆動回路切替部37は、比較手段として動作し、現在の計時結果(第1の時間の一例)と、過去の計時結果(第2の時間の一例)とを比較する。そして、駆動回路切替部37は、現在の計時結果と過去の計時結果との比較結果に基づいて、モータ20の駆動状態が異常であることを判定する。駆動回路切替部37は、ロー期間の計時結果同士の比較と、ハイ期間の計時結果同士の比較との両方を行う。駆動回路切替部37が、ロー期間の計時結果同士の比較と、ハイ期間の計時結果同士の比較とのいずれか一方を行うようにしてもよい。なお、ここで比較される過去の計時結果は、現在の計時結果について計時された計時機会の直前(1周期前)の、1つまたは連続した複数周期の計時機会におけるものであるが、これに限られるものではない。このような比較を行うことで、駆動回路切替部37は、モータ20が減速している傾向にあるか否かを判断する。
【0072】
なお、本実施の形態においては、駆動回路切替部37は、モータ20のロータの回転速度(現在速度)とモータ20のロータの目標回転速度(目標速度)とが所定の条件を満たす場合に、計時結果の比較を行う。所定の条件は、少なくとも、モータ20のロータの回転速度がモータ20のロータの目標回転速度よりも低いことである。これにより、モータ20が速度指令信号Scに従って減速している場合には、そのときの計時結果は異常判定に影響を与えないようになっている。本実施の形態においては、所定の条件は、目標速度が、現在速度に4分の3を乗じた速度よりも大きい場合に、計時結果の比較を行う。なお、現在速度に乗じる係数は、この値に限られるものではなく、回転変動の大きさなどを考慮して、適切な値に設定することができる。
【0073】
駆動回路切替部37は、計時を行う度に、そのとき計時された現在の計時結果(計時された時間)とその直前の計時機会における1つ前の計時結果(計時された時間)とを比較し、現在の計時結果が1つ前の計時結果よりも長い場合に、判定用のカウンタの値を増加させることを行う。また、現在の計時結果と1つ前の計時結果とを比較した場合において、現在の計時結果が1つ前の計時結果よりも長くないとき、1つ前の計時結果が計時された計時機会の直前の計時機会における2つ前の計時結果(第3の時間の一例)と現在の計時結果とを比較する。そして、現在の計時結果が2つ前の計時結果よりも長いとき、カウンタの値を変更する。このとき、現在の計時結果が1つ前の計時結果よりも長かった場合の増加後のカウンタの値よりも、カウンタの値が小さくなるように変更される。すなわち、カウンタの値は、計時結果の比較結果に応じて、重み付けして変更される。そして、駆動回路切替部37は、カウンタの値が所定の閾値よりも大きくなったとき、判定手段として動作し、モータ20の駆動状態が異常であると判定する。
【0074】
ここで、駆動回路切替部37の異常判定動作において、以下の場合にも、モータ20の駆動状態が異常であると判定を行う。すなわち、駆動回路切替部37は、ホール信号Shの立ち下がりが検出されたタイミングからホール信号Shの立ち上がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、モータ20の駆動状態が異常であると判定する。また、駆動回路切替部37は、ホール信号Shの立ち上がりが検出されたタイミングからホール信号Shの立ち下がりが検出されないまま所定時間が経過したとき、モータ20の駆動状態が異常であると判定する。
【0075】
図4は、モータが駆動中に正回転から逆回転に移行するときのホール信号Shの典型的な例を示す波形図である。
【0076】
図4においては、モータのロータに、モータの駆動回路により加えられるトルク(正回転方向のトルク)とは反対方向のトルク(逆回転方向のトルク)が常に加えられている状況で、モータが駆動している場合が示されている。このような状況において、時刻t0までは、駆動回路によりモータが駆動されることにより、モータが正常に回転している(正常回転期間)。
【0077】
ここで、時刻t0において、駆動回路に故障が発生して、モータに正回転方向のトルクが加えられなくなった場合を想定する。この場合、逆回転方向のトルクにより、モータの回転が減速していく。この減速期間においては、回転速度が次第に低くなることにより、ホール信号Shの周期が徐々に長くなっていく。すなわち、各周期のハイ期間やロー期間が、徐々に長くなっていく。
【0078】
その後、時刻t11において、モータの回転速度がほぼゼロになると、不定期間に入る。不定期間では、ホール信号Shの位相は変化せず(ハイレベル又はローレベルに固定)、ホール信号Shのハイ期間(ハイレベルの継続期間)又はロー期間(ローレベルの継続期間)が最も長くなる。不定期間中のどこか(不定のタイミング)でモータの回転方向が正回転から逆回転に変わる可能性が高い。
【0079】
逆回転に変わった後、ホール信号Shの位相が変化した時刻t12以降は、逆回転方向のトルクによりモータの逆回転方向の回転速度が徐々に増加する逆回転加速期間となる。
【0080】
このようにモータの駆動回路に異常が発生してモータが正回転から逆回転するまでの間に、上述のような本実施の形態における異常判定動作を行い、ハイ期間やロー期間が続けて徐々に長くなっていく減速期間において、モータの回転が減速傾向にあることを検知することで、速やかにモータの駆動回路に異常が発生したことを検知することができる。また、ホール信号Shの立ち下がりが検出されたタイミングからホール信号Shの立ち上がりが検出されないまま所定時間が経過したときにもモータ20の駆動状態が異常であると判定することで、遅くとも不定期間において、モータの駆動回路に異常が発生したことを検知することができる。
【0081】
一例として、以下のようなフローチャートにより示される動作を制御回路部3が行うことにより、モータ装置1において、上記のような異常判定動作と、それに伴う切替動作とが行われる。
【0082】
図5は、切替動作の一例を示すフローチャートである。
【0083】
図5に示されるように、ステップS1において、駆動回路切替部37は、異常フラグを確認する。異常フラグは、異常判定動作において異常であると判定されたか否かを示すフラグである。
【0084】
ステップS2において、駆動回路切替部37は、モータ20の駆動状態が異常であるか否かを判断する。すなわち、異常フラグが、異常であると判定されたことを示すか否かを判断する。異常であると判断したとき(YES)、ステップS3に進む。そうでない場合(NO)、一連の処理を終了する。
【0085】
ステップS3において、駆動回路切替部37は、PWM信号生成部35に対して制御信号S6を出力する。すなわち、駆動回路切替部37は、PWM信号生成部35が第1駆動回路2に駆動制御信号Sd1を出力するのを停止させ、結果として、第1駆動回路2のインバータ回路2aからモータ20に供給される駆動電流の出力が停止する。これにより、第1駆動回路2によるモータ20の駆動が停止される。
【0086】
ステップS4において、駆動回路切替部37は、第2駆動回路52に制御信号Sd2を出力する。これにより、第2駆動回路52によるモータ20の駆動が開始される。ステップS4が終了すると、一連の処理が終了する。
【0087】
制御回路部3は、少なくとも第1駆動回路2によりモータ20を駆動している間に、このような図5に示される処理を定期的に実行する。これにより、第1駆動回路2によりモータ20が駆動されている状態で、モータ20の駆動に異常が発生した場合に、モータ20を駆動する駆動回路が第1駆動回路2から第2駆動回路52に切り替えられる。
【0088】
図6は、異常判定動作の一例を示すフローチャートである。
【0089】
制御回路部3は、少なくとも第1駆動回路2によりモータ20を駆動している間に、図6に示される処理を定期的に実行する。
【0090】
ステップS11において、回転数算出部31は、ホール信号Shの割り込みが発生したか否かを判断する。割り込みが発生した(すなわち、ホール信号Shの立ち上がり又は立ち下がりが検出された)場合には(YES)、ステップS12に進む。割り込みが発生していない場合には(NO)、ステップS13に進む。
【0091】
ステップS12において、駆動回路切替部37は、そのときのタイマの時間を測定して、変数tに代入する。すなわち、変数tには、そのときの終了したハイ期間又はロー期間の長さに対応するカウント値が代入される。その後、ステップS16に進む。
【0092】
他方、ステップS13において、駆動回路切替部37は、カウント中のタイマの値のオーバーフローについて確認する。
【0093】
ステップS14において、駆動回路切替部37は、タイマの値がオーバーフローしたか否かを判断する。タイマの値がオーバーフローしていない場合には(NO)、ステップS16に進む。タイマの値がオーバーフローした場合には(YES)、ステップS15に進む。
【0094】
タイマの値の上限は、回転数を急激に低下させたときに起こるアンダーシュートよりも十分に低い回転数に対応する値に設定されている。例えば、正常に駆動されている場合の最低回転数の2分の1の回転数に対応する値が設定されている。モータ20が停止するような異常が発生した場合に、タイマの値がオーバーフローすることとなる。
【0095】
ステップS15において、駆動回路切替部37は、変数tに最大値を代入する。その後、ステップS16に進む。
【0096】
ステップS16において、駆動回路切替部37は、タイマをリセットする。
【0097】
ステップS17において、変数操作処理が行われる。
【0098】
図7は、変数操作処理の一例を示すフローチャートである。
【0099】
図7に示されるように、ステップS31において、制御回路部3は、目標速度が、現在速度に4分の3を乗じた速度よりも大きいか否かを判断する。目標速度が、現在速度に4分の3を乗じた速度よりも大きい場合には(YES)、ステップS32に進む。そうでない場合には、ステップS34に進む。
【0100】
ステップS32において、駆動回路切替部37は、ホール信号Shがハイからローに変化したか否かを判断する。ホール信号Shがハイからローに変化した場合、すなわち変数tにハイ期間のカウント値が代入されている場合には(YES)、ステップS33に進む。そうではない場合、すなわち変数tにロー期間のカウント値が代入されている場合には(NO)、ステップS35に進む。
【0101】
ステップS33において、駆動回路切替部37は、ハイ期間について現在の計時結果(すなわち、変数t)と過去の計時結果とを比較するハイ期間カウント処理を行う。これにより、カウント値cntの値が変更される。
【0102】
ステップS34において、駆動回路切替部37は、次回のハイ期間カウント処理を行うのに備えて、変数の更新処理を行う。すなわち、変数HI_t2(2つ前の計時結果)を変数HI_t3に代入し、次回のハイ期間カウント処理において3つ前の計時結果として取り扱えるようにする。また、変数HI_t1(1つ前の計時結果)を変数HI_t2に代入し、次回のハイ期間カウント処理において2つ前の計時結果として取り扱えるようにする。また、変数t(現在の計時結果)を変数HI_t1に代入し、次回のハイ期間カウント処理において1つ前の計時結果として取り扱えるようにする。
【0103】
他方、ステップS35において、駆動回路切替部37は、ロー期間について現在の計時結果(すなわち、変数t)と過去の計時結果とを比較するロー期間カウント処理を行う。これにより、カウント値cntの値が変更される。
【0104】
ステップS36において、駆動回路切替部37は、次回のロー期間カウント処理を行うのに備えて、変数の更新処理を行う。すなわち、変数LO_t2(2つ前の計時結果)を変数LO_t3に代入し、次回のロー期間カウント処理において3つ前の計時結果として取り扱えるようにする。また、変数LO_t1(1つ前の計時結果)を変数LO_t2に代入し、次回のロー期間カウント処理において2つ前の計時結果として取り扱えるようにする。また、変数t(現在の計時結果)を変数LO_t1に代入し、次回のロー期間カウント処理において1つ前の計時結果として取り扱えるようにする。
【0105】
ステップS34の処理又はステップS36の処理が終了すると、変数操作処理が終了する。
【0106】
ここで、ハイ期間カウント処理や、ロー期間カウント処理は、以下のようにして行われる。
【0107】
図8は、ハイ期間カウント処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
図8に示されるように、ステップS41において、駆動回路切替部37は、変数tが変数HI_t1より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ハイ期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である1つ前の計時結果(変数HI_t1)とを比較する。変数tが変数HI_t1より大きいとき(YES)、ステップS42に進み、そうでないとき、ステップS43に進む。
【0109】
ステップS42において、駆動回路切替部37は、カウント値cntに、「2」を加算する。
【0110】
ステップS43において、駆動回路切替部37は、変数tが変数HI_t2より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ハイ期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である2つ前の計時結果(変数HI_t2)とを比較する。変数tが変数HI_t2より大きいとき(YES)、ステップS44に進み、そうでないとき、ステップS45に進む。
【0111】
ステップS44において、駆動回路切替部37は、カウント値cntに、「1」を加算する。すなわち、この場合、ステップS42を経た場合よりも、ステップS44を経た場合のほうが、カウント値cntが小さくなるようになっている。
【0112】
ステップS45において、駆動回路切替部37は、変数tが変数HI_t3より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ハイ期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である3つ前の計時結果(変数HI_t3)とを比較する。変数tが変数HI_t3より大きいとき(YES)、ステップS46に進み、そうでないとき、ステップS47に進む。
【0113】
ステップS46において、駆動回路切替部37は、カウント値cntを2で割った値を新たなカウント値cntとする処理を行う。すなわち、この場合、カウント値cntがそれまでより減少することになる。
【0114】
ステップS47において、駆動回路切替部37は、カウント値cntを「0」とする処理を行う。
【0115】
ステップS42,S44,S46,S47のいずれかが行われると、ハイ期間カウント処理が終了し、図7のステップS34に示される処理に戻る。
【0116】
図9は、ロー期間カウント処理の一例を示すフローチャートである。
【0117】
図9に示されるように、ステップS51において、駆動回路切替部37は、変数tが変数LO_t1より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ロー期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である1つ前の計時結果(変数LO_t1)とを比較する。変数tが変数LO_t1より大きいとき(YES)、ステップS52に進み、そうでないとき、ステップS53に進む。
【0118】
ステップS52において、駆動回路切替部37は、カウント値cntに、「2」を加算する。
【0119】
ステップS53において、駆動回路切替部37は、変数tが変数LO_t2より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ロー期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である2つ前の計時結果(変数LO_t2)とを比較する。変数tが変数LO_t2より大きいとき(YES)、ステップS54に進み、そうでないとき、ステップS55に進む。
【0120】
ステップS54において、駆動回路切替部37は、カウント値cntに、「1」を加算する。すなわち、この場合、ステップS52を経た場合よりも、ステップS54を経た場合のほうが、カウント値cntが小さくなるようになっている。
【0121】
ステップS55において、駆動回路切替部37は、変数tが変数LO_t3より大きいか否かを判断する。すなわち、駆動回路切替部37は、ロー期間の計時結果について、現在の計時結果(変数t)と、過去の計時結果である3つ前の計時結果(変数LO_t3)とを比較する。変数tが変数LO_t3より大きいとき(YES)、ステップS56に進み、そうでないとき、ステップS57に進む。
【0122】
ステップS56において、駆動回路切替部37は、カウント値cntを2で割った値を新たなカウント値cntとする処理を行う。すなわち、この場合、カウント値cntがそれまでより減少することになる。
【0123】
ステップS57において、駆動回路切替部37は、カウント値cntを「0」とする処理を行う。
【0124】
ステップS52,S54,S56,S57のいずれかが行われると、ロー期間カウント処理が終了し、図7のステップS36に示される処理に戻る。
【0125】
変数操作処理が終了すると、図6のステップS18に進む。図6のステップS18において、駆動回路切替部37は、変数tが、閾値TAより大きいか否かを判断する。閾値TAは、第2駆動回路52による駆動に切り替えることが望ましい回転数になったときに変数tが閾値TAより大きくなるように、予め設定されている。タイマがオーバーフローになったときにも、変数tは閾値TAより大きくなる。変数tが閾値TAより大きいとき(YES)。ステップS20に進む。そうでないとき(NO)、ステップS19に進む。
【0126】
ステップS19において、駆動回路切替部37は、カウンタcntが、閾値CNTAより大きいか否かを判断する。閾値CNTAは、モータ20の駆動状態が異常であってモータ20が減速した場合においてカウント値cntが閾値CNTAより大きくなるように、予め設定されている。カウンタcntが閾値CNTAより大きいとき(YES)。ステップS20に進む。そうでないとき(NO)、一連の処理が終了する。
【0127】
ステップS20において、駆動回路切替部37は、異常フラグをONにする。すなわち、ステップS20において、駆動回路切替部37は、モータ20の駆動状態が異常であると判定する。ステップS20の処理が終了すると、一連の処理が終了する。
【0128】
以上説明したように、本実施の形態では、ホール信号Shの位相の変化に基づく判定結果が所定条件を満足したときに、第1駆動回路2によるモータ20の駆動状態が異常であると判定される。したがって、異常が発生したときに、減速期間や不定期間に異常が発生していると速やかに判定することができる。第1駆動回路2によるモータ20の駆動に異常が発生する要因としては様々なものがあるが、モータ20の回転に応じて出力されるホール信号Shに基づいて異常判定動作を行うので、簡素な構成で、かつより確実に、様々な要因に起因して発生する異常を広く検出することができる。
【0129】
異常判定を行うために現在の計時結果と過去の計時結果を比較する際には、ホール信号Shのハイ期間どうし、ロー期間どうしが比較される。したがって、ホール信号Shの1周期に占めるハイ期間とロー期間との割合に偏りがあっても(ハイ期間とロー期間との割合が50パーセントずつでなくても)、正確に、減速しているか否かの傾向について判断することができる。
【0130】
現在の計時結果と、過去の複数の周期分の計時結果との比較に基づいて、異常判定を行うためのカウント値cntがカウントされる。過去の各計時結果との比較に応じて、カウント値cntが画一的に変動するのではなく、変動に重み付けがされている。そのため、カウント値cntを回転速度の変動に関する大きな傾向を反映したものとなり、モータ20の回転状況に変動がある場合であっても、正確に異常状態であることを判定することができる。
【0131】
本実施の形態では、通常の駆動時においては、3相インバータ回路2aを含む第1駆動回路2でモータ20が3相駆動される。そして、第1駆動回路2に異常が発生すると、異常判定動作によりそれが検知され、速やかに単相インバータ回路52aを含む第2駆動回路52に駆動回路が切り替えられ、第2駆動回路52によってモータ20が単相駆動される。すなわち、モータ装置1は、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwに通電されるメイン駆動回路として用いられる第1駆動回路2と、モータ20の単相のコイルLu2,Lv2,Lw2に通電するバックアップ回路として用いられる、第1駆動回路2とは別個の駆動回路である第2駆動回路52とを含んでいる。
【0132】
モータ装置1に第1駆動回路2のみが設けられている場合には、第1駆動回路2が故障し、モータ20を駆動することができなくなると、モータ20が外力により逆回転することを止めることができなくなる。ショートブレーキを作用させたとしても、逆回転の回転速度を低減させることができるが、モータ20を停止させることは困難である。
【0133】
これに対し、本実施の形態では、第1駆動回路2の故障などでモータ装置1が異常状態になっても、簡素な構成の第2駆動回路52で、単相駆動によるトルクをモータ20に加えることができる。したがって、少なくともモータ20が逆回転することを防止することができる。そのうえ、モータ20を逆回転させようとする外力が小さければ、単相駆動によるトルクによりモータ20を正回転させることができる。したがって、本実施の形態では、モータ装置1の製造コストを低く抑え、かつ、モータ装置1に異常状態が発生してモータ20を通常のように駆動することができなくなってもその影響を小さく抑えることができる。
【0134】
第1駆動回路2の故障などでモータ装置1が異常状態になったときに、モータ20が逆回転になるまでに速やかに第2駆動回路52による駆動に切り替えることができる。したがって、モータ20を正回転させるまでに必要なトルクが小さくて済み、また、速やかにモータ20を正回転させることができる。
【0135】
例えば上記の特許文献1に記載の装置は、同等な機能を持つ2系統の駆動回路を備えている。そのため、例えば一方の系統の駆動回路が故障した場合であっても、他方の系統の駆動回路を用いて同等にモータを駆動することができる。しかしながら、同等の2系統の駆動回路を用いるため、回路の規模が大きくなり、モータ駆動制御装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0136】
これに対し、本実施の形態においては、バックアップ回路として用いられる第2駆動回路52は、モータ20を単相駆動する、簡素な構成の回路である。したがって、モータ装置1の回路規模を比較的小さくすることができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0137】
なお、単相駆動に用いるコイルを3相駆動に用いるコイルの一部と共有する方法が考えられるが、本実施の形態では、単相駆動に用いられる単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、3相駆動に用いられる3相のコイルLu,Lv,Lwとは独立したコイルとしているため、もし、3相のコイルLu,Lv,Lwのいずれかに異常状態(例えば、断線、短絡など)が発生したとしても、その影響を受けずに、単相駆動を行うことができる。また、駆動用コイルを共有する場合、一方の駆動回路から他方の駆動回路に駆動電流が流入しないように駆動経路を遮断するスイッチを必要とすることが考えられるが、本実施の形態では、3相駆動系と単相駆動系のそれぞれが独立しているため、そのようなスイッチは不要となり、モータ装置1の回路構成を簡素化でき、また、部品実装面積を小さくできる。さらには、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2は、3相のコイルLu,Lv,Lwとは独立しているため、3相駆動を考慮せずに、単相のコイルLu2,Lv2,Lw2の構成について自由に設計できる。
【0138】
例えばファンモータとして用いられるモータ20を用いたモータ装置1において、第1駆動回路2が故障すると、内外の圧力差があったりファンに風が当たったりして、ファンが逆回転する可能性がある。このような場合においても、本実施の形態においては、第2駆動回路52によりモータ20を単相駆動させることができるので、ファンが逆回転しないように、モータ20を停止状態に維持したり、モータ20を正回転させることができる。したがって、第1駆動回路2が故障した場合であっても、ファンモータによる冷却機能が低下することを防止することができる。
【0139】
[その他]
【0140】
モータ装置やそのモータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。上記の実施の形態や変形例の特徴点が部分的に組み合わされてモータ装置やそのモータ駆動制御装置が構成されていてもよい。上記の実施の形態や変形例において、いくつかの構成要素が設けられていなかったり、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。例えば、本実施の形態では、制御回路部3に異常判定装置の構成である回転数算出部31及び駆動回路切替部37を含むものとして説明したが、回転数算出部31と駆動回路切替部37とは、必ずしも制御回路部3に含まれている必要はない。例えば、回転数算出部と駆動回路切替部とが、制御回路部とは独立した回路として設けられていてもよい。この場合、制御回路部(駆動制御手段)が速度指令解析部とPWM指令部とPWM信号生成部とを含み、異常判定装置が回転数算出部(検出手段の一例)と駆動回路切替部(計時手段の一例、比較手段の一例、判定手段の一例、切替手段の一例)とを含む構成となる。また、計時手段、比較手段、判定手段、切替手段が、それぞれ別々の回路として構成されていてもよい。
【0141】
上述の閾値TA、閾値CNTA、カウント値を変更する際のルール、係数、タイマの上限値などは、例えばモータの仕様や、用途等に応じて、異常発生時における減速期間や不定期間において異常状態であると判定することができるように、適宜設定することができる。
【0142】
モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウエアによる処理ではなく、ソフトウエアによる処理であってもよい。
【0143】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られず、単相のモータであってもよいし、他の種類のモータであってもよい。ホールICの数は、1個に限られない。ホールICとは異なる検出器を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホール素子等を用いてもよい。また、モータは、ホール素子やホールIC等の位置検出器を用いない、センサレス方式により駆動されるようにしてもよい。
【0144】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0145】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御回路部は、マイコンに限定されない。制御回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 モータ装置、2 第1駆動回路(第1系統の駆動回路の一例)、3 制御回路部(異常判定装置の一例、駆動制御手段の一例)、5 位置検出器、20 モータ、31 回転数算出部(検出手段の一例)、37 駆動回路切替部(計時手段の一例、比較手段の一例、判定手段の一例、切替手段の一例)、52 第2駆動回路(第2系統の駆動回路の一例)、Lu,Lv,Lw (3相の)コイル(第1系統のコイルの一例)、Lu2,Lv2,Lw2 (単相の)コイル(第2系統のコイルの一例)、Sd1 駆動制御信号、Sd2 制御信号、Sh ホール信号(位置信号の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9