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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】検査判定機および検査判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018183983
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051987
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 智方
(72)【発明者】
【氏名】小樋山 理沙
(72)【発明者】
【氏名】高野 智洋
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 恭
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/061494(WO,A1)
【文献】特開2011-174865(JP,A)
【文献】特開2004-264065(JP,A)
【文献】国際公開第2005/075979(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物質が含まれている可能性のある液体試料を、テストストリップの標識化物質含有領域を介して被検出物質検出領域に展開し、前記被検出物質検出領域の呈色状態から陰性か陽性か判定するイノマクロマトグラフィ法の検査判定機であって、
前記被検出物質検出領域の少なくとも一部を含む範囲について1回以上、呈色状態に関する指標である呈色指標のデータを取得する観測部と、
前記呈色指標のデータに基づいて判定を行う処理部と、を有し、
前記呈色状態が安定した後に即座に判定を行う第1動作モードと、時々刻々と変化する呈色状態を継続的に観測し判定を行う第2動作モードとがあり、
前記処理部が、上限値をN回(Nは複数)と定めて取得された少なくとも1回の呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陰性状態であれば陰性と判定し、前記N回までの全ての呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陽性状態であれば陽性と判定する、ことを基本動作とし、
前記第1動作モードでは、前記基本動作を1回実行して判定結果を提示し、
前記第2動作モードでは、
前記基本動作を所定の時間間隔を空けて所定の上限回数であるM回(Mは複数)まで実行し、
前記基本動作にて陽性と判定された段階で陽性を確定し、
前記M回までの前記基本動作の全てで陰性と判定されると陰性を確定し、
確定した判定結果を提示する、
検査判定
【請求項2】
前記観測部が前記被検出物質検出領域の少なくとも一部を含む範囲についてN回に亘り呈色指標のデータを取得し、
前記処理部が、前記取得されたN回の呈色指標のデータの各々について前記被検出物質検出領域の呈色状態を判定し、前記複数回の呈色指標のデータの呈色状態の組合せにおいて、陰性状態が含まれていれば陰性と判定し、全てが陽性状態であれば陽性と判定する、
請求項1に記載の検査判定
【請求項3】
前記観測部が前記被検出物質検出領域の少なくとも一部を含む範囲の呈色指標のデータを2回に亘り取得し、
前記処理部が、前記2回の呈色指標のデータの各々における前記被検出物質検出領域の呈色状態が陰性状態か陽性状態か一次判定し、前記2回の呈色指標のデータにおける一次判定の結果が、2つとも陽性状態であれば陽性と二次判定し、少なくとも1回が陰性状態であれば陰性と二次判定する、
請求項2に記載の検査判定装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記観測部が取得した順に前記呈色指標のデータにおける前記被検出物質検出領域の呈色状態を一次判定し、前記一次判定で陰性と判定される呈色指標のデータがあったらその段階で陰性と二次判定する、
請求項2に記載の検査判定
【請求項5】
前記基本動作には、前記被検出物質検出領域の呈色指標の値を、陰性状態か陽性状態か判定するための呈色閾値と比較する処理が含まれ、
前記第2動作モードにおいて、前記処理部は、m回目(mはM-1以下の自然数)の基本動作に用いる第1呈色閾値と、m+1回目の基本動作に用いる第2呈色閾値とを異なる値とする、
請求項に記載の検査判定
【請求項6】
前記呈色指標が前記呈色閾値を越えていたら陽性状態であり前記呈色指標が前記呈色閾値以下であれば陰性状態であり、前記第1呈色閾値は前記第2呈色閾値よりも大きい値である、あるいは、
前記呈色指標が前記呈色閾値を越えていたら陰性状態であり前記呈色指標が前記呈色閾値以下であれば陽性状態であり、前記第1呈色閾値が前記第2呈色閾値よりも小さい値である、
請求項に記載の検査判定
【請求項7】
前記検査判定機は、
前記テストストリップを備えた検査キットを着脱可能なスロットと、
前記スロットに検査キットが装着されているか否か検知する検知部と、を更に備え、
前記スロットに装着された検査キットに対して検査を実行する装置であり、
前記第2動作モードにおいて、前記処理部は、検査の開始時刻からの経過時間を終了時刻まで計測し、前記開始時刻から前記終了時刻までの間に前記スロットから前記検査キットが取り外されたことが前記検知部にて検知されると、前記終了時刻までの残り時間を表示する、
請求項に記載の検査判定
【請求項8】
前記終了時刻が、前記基本動作を前記M回だけ実行し終える時刻である、
請求項記載の検査判定
【請求項9】
前記処理部は、前記第1動作モードが選択されたとき前記第1動作モードをメインの処理として実行しつつ、前記第2動作モードの処理を進めておき、前記第2動作モードへ切り替えられると、前記第2動作モードをメインの処理として動作を継続する、
請求項1に記載の検査判定機。
【請求項10】
被検出物質が含まれている可能性のある液体試料を、テストストリップの標識化物質含有領域を介して被検出物質検出領域に展開し、前記被検出物質検出領域の呈色状態から陰性か陽性か判定するイノマクロマトグラフィ法の検査判定方法であって、
前記呈色状態が安定した後に即座に判定を行う第1動作モードと、時々刻々と変化する呈色状態を継続的に観測し判定を行う第2動作モードとがあり、
前記被検出物質検出領域の少なくとも一部を含む範囲について1回以上、呈色状態に関する指標である呈色指標のデータを取得し、
少なくとも1回の呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陰性状態であれば陰性と判定し、
所定の上限値であるN個(Nは複数)までの全ての呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陽性状態であれば陽性と判定する、ことを基本動作とし、
前記第1動作モードでは、前記基本動作を1回実行して判定結果を提示し、
前記第2動作モードでは、
前記基本動作を所定の時間間隔を空けて所定の上限回数であるM回(Mは複数)まで実行し、
前記基本動作にて陽性と判定された段階で陽性を確定し、
前記M回までの前記基本動作の全てで陰性と判定されると陰性を確定し、
確定した判定結果を提示する、
検査判定方法。
【請求項11】
前記第1動作モードが選択されたとき前記第1動作モードをメインの処理として実行しつつ、前記第2動作モードの処理を進めておき、前記第2動作モードへ切り替えられると、前記第2動作モードをメインの処理として動作を継続する、
請求項10に記載の検査判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマトグラフィ法による検査においてテストストリップの画像から検査結果を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の唾液等の検体に細菌やウイルスなどの被検出物質が含まれているか否か(陰性/陽性)を判定する際にイムノクロマトグラフィ法による検査が行われる。イムノクロマトグラフィ法による検査には、被検出物質の有無により検出領域に異なる色を呈するテストストリップを備えた検査キットが用いられる。
【0003】
テストストリップには、被検出物質が含まれている可能性のある液体試料の流れる方向(以下「展開方向」ともいう)の上流から順に、滴下領域、標識化物質含有領域、検出領域が設けられている。滴下領域は、液体試料を滴下する領域である。滴下領域に滴下された液体試料は展開方向に展開する。標識化物質含有領域は、被検出物質に選択的に結合しかつ標識となる標識化物質を含有する領域である。標識化物質は特定色の標識であり、液体試料と混合されると抗原抗体反応により被検出物質と結合する。液体試料が標識化物質含有領域を通過すると、液体試料に含まれている被検出物質に標識化物質が結合される。検出領域は、標識化物質と結合した被検出物質を固定する固定化物質が固着された領域である。標識化物質と結合した被検出物質は、検出領域に達すると、そこで固定化物質と選択的に結合し、固定される。標識化物質と結合した被検出物質が固定され、蓄積された検出領域は標識化物質により所定の色を呈する。検査者は検出領域を目視し、呈色状態から陰性か陽性か判定する。
【0004】
また、一部の医療の現場では検査者の作業を軽減するために検査判定機が導入されている。検査判定機は、挿入された検査キットにおけるテストストリップの検出領域の画像を取得し、画像処理により陰性か陽性か判定し、判定結果を提示する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-133813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査判定機による自動判定の有用性は検査の迅速性と正確性とに依存する。
【0007】
本発明の目的は、機器による検査判定の有用性向上を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示による検査判定装置は、被検出物質が含まれている可能性のある液体試料を、テストストリップの標識化物質含有領域を介して被検出物質検出領域に展開し、前記被検出物質検出領域の呈色状態から陰性か陽性か判定するイノマクロマトグラフィ法の検査判定機であって、前記被検出物質検出領域の少なくとも一部を含む範囲について1回以上、呈色状態に関する指標である呈色指標のデータを取得する観測部と、前記呈色指標のデータに基づいて判定を行う処理部と、を有し、前記処理部が、上限値をN回(Nは複数)と定めて取得された少なくとも1回の呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陰性状態であれば陰性と判定し、前記N回の全ての呈色指標のデータにおける被検出物質検出領域の呈色状態が陽性状態であれば陽性と判定する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば機器による検査判定の有用性向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】検査キットの平面図である。
図2】テストストリップの2面図である。
図3】検査判定機の斜視図である。
図4】検査判定機のブロック図である。
図5】N=2の場合の判定テーブルである。
図6】撮像処理のフローチャートである。
図7】判定処理のフローチャートである。
図8】検査処理のフローチャートである。
図9】抜去監視処理のフローチャートである。
図10】変形例3における検査処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態にて用いる検査キットの平面図である。図2は、テストストリップの2面図である。上段が平面図であり、下段が側面図である。検査キット20は、イムノクロマトグラフィ法により、A型インフルエンザおよびB型インフルエンザの検査を行うための検査器である。図1および図2に示す構成は言うまでもなく一例である。検査キット20は筐体21内にテストストリップ30を備える構成である。
【0013】
図2に示すように、テストストリップ30は、試料展開メンブレン31、試料滴下パッド32、および標識化物質含有パッド33を有する構成である。
【0014】
標識化物質含有パッド33の底面の全体が試料展開メンブレン31と重なるように、試料展開メンブレン31と標識化物質含有パッド33が接続されている。標識化物質含有パッド33の上面の一部と試料滴下パッド32の底面の一部が重なるように標識化物質含有パッド33と試料滴下パッド32が接続されている。試料滴下パッド32と試料展開メンブレン31とは直接接触しない。
【0015】
試料展開メンブレン31には、矢印で示された展開方向Bにおける標識化物質含有パッド33の下流に、第1被検出物質検出領域34と、第2被検出物質検出領域35と、試料展開検出領域36とが、その順序で、互いに離隔して配設されている。
【0016】
図1を参照すると、検査キット20の筐体21には開口部22と観測窓23が設けられている。開口部22は、筐体21に内蔵されたテストストリップ30の試料滴下パッド32に、液体試料を滴下可能なように、試料滴下パッド32の上面の少なくとも一部を露出させる貫通孔である。観測窓23は、第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36の呈色状態を視認可能なように、第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36のそれぞれの少なくとも一部を外部から見えるように設けられた窓である。観測窓23は開口部22と同様の貫通孔であってもよいし、貫通孔を透明な部材で塞いだ構造部であってもよい。
【0017】
液体試料を開口部22から試料滴下パッド32に滴下すると液体試料は展開方向Bに展開する(流れる)。標識化物質含有パッド33は、被検出物質に選択的に結合しかつ標識となる標識化物質を含有している。ここでは被検出物質はA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの2種類なので、それぞれに選択的に結合する2種類の標識化物質が標識化物質含有パッド33に含有されている。以下、A型インフルエンザウイルスを第1被検出物質ともいい、B型インフルエンザウイルスを第2被検出物質とも言うことにする。またA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスをまとめて単に被検出物質とも言うこともある。標識化物質含有パッド33を流れる液体試料に被検出物質が含まれていれば、標識化物質は被検出物質に結合し、被検出物質と共に試料展開メンブレン31を下流に流れていく。
【0018】
また、標識化物質含有パッド33は、更に、展開検出用物質と選択的に結合する展開検出用標識化物質を含有している。液体試料が標識化物質含有パッド33を流れると、展開検出用物質は液体試料と共に試料展開メンブレン31を下流に流れていく。展開検出用物質と展開検出用標識化物質の結合については後述する。
【0019】
液体試料は、試料展開メンブレン31を下流に展開し、やがて第1被検出物質検出領域34に到達する。第1被検出物質検出領域34には、第1被検出物質と結合する固定化物質が固着されている。標識化物質と結合した第1被検出物質を含む液体試料が第1被検出物質検出領域34を流れると、標識化物質と結合した第1被検出物質が固定化物質と結合し、第1被検出物質検出領域34に固定される。標識化物質と結合した第1被検出物質が第1被検出物質検出領域34に蓄積されると、第1被検出物質検出領域34は視認可能な所定の呈色状態を示す。具体的には第1被検出物質検出領域34が標識化物質の色になる。当該呈色状態はA型インフルエンザの陽性を示す。
【0020】
液体試料は、更に試料展開メンブレン31を下流に展開し、やがて第2被検出物質検出領域35に到達する。第2被検出物質検出領域35には、第2被検出物質と結合する固定化物質が固着されている。標識化物質と結合した第2被検出物質を含む液体試料が第2被検出物質検出領域35を流れると、標識化物質と結合した第2被検出物質が固定化物質と結合し、第2被検出物質検出領域35に固定される。標識化物質と結合した第2被検出物質が第2被検出物質検出領域35に蓄積されると、第2被検出物質検出領域35は視認可能な所定の呈色状態を示す。具体的には第1被検出物質検出領域34が標識化物質の色になる。当該呈色状態はB型インフルエンザの陽性を示す。
【0021】
液体試料は、更に試料展開メンブレン31を下流に展開し、やがて試料展開検出領域36に到達する。試料展開検出領域36は、展開検出用標識化物質と選択的に結合する展開検出用物質が固着されている。液体試料が試料展開検出領域36を流れると、液体試料に含まれる試料展開検出用標識化物質が試料展開検出用物質と結合し、試料展開検出領域36に固定される。試料展開検出領域36に試料展開検出用標識化物質が蓄積されると、試料展開検出領域36は視認可能な所定の呈色状態を示す。当該呈色状態は、液体試料が、第1被検出物質検出領域34および第2被検出物質検出領域35を経て試料展開検出領域36まで展開したことを示す。
【0022】
図3は、本実施形態による検査判定機の斜視図である。検査判定機10は、上述した検査キット20の判定を実行し、判定結果を表示する装置である。図3を参照すると、検査判定機10には、スロット11と、操作ボタン12と、表示器13とがある。ユーザがスロット11から検査キット20を挿入して所定位置に装填し、操作ボタン12を操作すると、検査判定機10は、検査キット20の観測窓23からテストストリップ30の呈色状態を観測し、観測結果に基づいて、第1被検出物質および第2被検出物質について陽性か陰性かの判定を行い、判定結果を表示器13に表示する。
【0023】
図4は、検査判定機のブロック図である。図4を参照すると、検査判定機10は撮像部14、処理部15、操作部16、表示部17、および検知部18を有している。
【0024】
撮像部(観測部)14は、所定位置に装填された検査キット20の観測窓23から見えるテストストリップ30の画像を取得する撮像装置である。例えば撮像部14は、発光器(不図示)と受光器(不図示)を備え、発光器から観測窓23に光を照射し、受光器で観測窓23からの反射光を受光するものである。発光器は一例としてLEDにより構成されてもよい。受光器はCMOSイメージセンサにより構成されてもよい。上述したように、観測窓23は、第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36のそれぞれの少なくとも一部を外部から見えるように設けられているので、観測窓23の全体を含む範囲を撮像すれば、第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36のそれぞれの少なくとも一部を含む画像が得られる。ここでは、第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36の呈色状態を判定できる程度の部分の画像が取得できればよい。検査キット20の筐体21に観測窓23の近傍の所定位置に所定のバーコードが印刷されたシールを貼付しておくこととし、当該シールのバーコードを基準として画像を取得する範囲を決めてもよい。あるいは、予め決まっている観測窓23の形状を基準として画像を取得する範囲を決めてもよい。あるいは、検査キット20を検査判定機10に装填すると観測窓23が配置される位置に対して固定的に画像を取得する範囲を決めておいてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、一例として、撮像部14は、CMOSイメージセンサのように画像全体の呈色指標(画素値)を同時に取得する撮像装置であるが、他の構成も可能である。他の例として、観測窓23を含む範囲内をスキャンし、特定波長の反射光を受光することにより、その範囲内の各部における上記特定波長の呈色状態を示す呈色指標を順次取得し、デジタルデータあるいは画像データにして処理部15に引き渡す観測装置を用いてもよい。第1被検出物質検出領域34、第2被検出物質検出領域35、および試料展開検出領域36にそれぞれ異なる色を用いる場合にはそれぞれの色についてスキャンを行い、各色の波長の反射光を受光する。
【0026】
処理部15は、操作部16に対して行われた操作に基づいて各種処理を実行して判定を行い、判定結果を表示部17に表示させる装置である。例えば処理部15は、プロセッサ(不図示)とメモリ(不図示)を備え、メモリに格納されたソフトウェアプログラムを実行するマイコンである。ソフトウェアプログラムはファームウェアとアプリケーションとを含んでいてもよい。処理部15が実行する各種処理の詳細については後述する。
【0027】
操作部16は、ユーザが行った操作を処理部15に伝える装置である。例えば、操作部16は、押されている状態と押されていない状態の2つの状態を取ることができ、その状態を処理部15に伝えるプッシュスイッチ(不図示)である。処理部15は、操作部16の状態から長押し、短押し、二度押しなど各種操作を知得できる。
【0028】
表示部17は、処理部15の指示により、文字、記号、および画像等を表示する装置である。例えば表示部17は液晶表示器(不図示)である。
【0029】
検知部18は、スロット11に検査キット20が装着されているか否か検知し、処理部15に伝えるセンサである。
【0030】
以下、検査判定機10の動作について説明する。
【0031】
検査判定機10は、液体試料がテストストリップ30に十分に流れ呈色状態が安定した検査キット20について即座に判定を行う動作モード(以下「第1動作モード」ともいう)と、液体試料をテストストリップ30に滴下された直後から時々刻々と変化する検査キット20の呈色状態を継続的に観測し判定を行う動作モード(以下「第2動作モード」ともいう)とを有する。テストストリップ30の画像から呈色状態を判定する動作(以下「基本動作」ともいう)は第1動作モードと第2動作モードに共通する。第2動作モードの途中で検査キット20が引き抜かれると検査判定機10は所定の動作(以下、「異常時動作」ともいう)を行う。
【0032】
以下、基本動作、第1動作モード、第2動作モード、および異常時動作のそれぞれについて説明する。
【0033】
<基本動作>
基本動作として、処理部15は、上限値をN個(Nは複数)と定めて取得された少なくとも1個の画像の被検出物質検出領域(第1被検出物質検出領域34および/または第2被検出物質検出領域35を指す)の呈色状態が陰性状態であれば陰性と判定し、N個の全ての画像の被検出物質検出領域の呈色状態が陽性状態であれば陽性と判定する。
【0034】
検査に供される検体の状態によっては液体試料に粘性成分が含まれる場合があり、その粘性成分の影響により液体試料の流れに部分的な滞留が生じ、液体試料および標識化物質の一部が被検出物質検出領域に遅れて流れてくることがある。遅れてきた液体試料が通過中に被検出物質検出領域の画像を取得すると、画像には偽陽性と判定される恐れのある呈色状態が現れる。被検出物質がなければ標識化物質が被検出物質検出領域に固定されないので液体試料が流れきれば呈色状態は元に戻る。本実施形態の基本動作によれば、少なくともいずれか1個の画像の呈色状態が陰性状態であれば陰性と判定し、上限のN個の画像の呈色状態が全て陽性状態であったら陽性と判定するので、判定を誤る可能性を低減することができる。判定の正確性が向上し、検査判定機による検査判定の有用性を向上することができる。
【0035】
本実施形態では、基本動作に、テストストリップ30が画像を取得する撮像処理と、取得した画像から陰性か陽性か判定する判定処理が含まれる。撮像処理では、処理部15からの指示により、撮像部14が被検出物質検出領域を含む画像をN回に亘り取得する。判定処理では、処理部15が、取得されたN個の画像の各々について被検出物質検出領域の呈色状態を判定し、複数の画像の呈色状態の組合せにおいて、陰性状態が含まれていれば陰性と判定し、全てが陽性状態であれば陽性と判定する。複数の画像の呈色状態の組合せに基づいて陰性か陽性かの判定を行うので、容易な処理による判定で正確性が向上し、検査判定機による検査判定の有用性を向上することができる。
【0036】
N=2の具体例としては、撮像部14が被検出物質検出領域を含む画像を2回に亘り取得し、処理部15が、2つの画像の各々の被検出物質検出領域の呈色状態が陰性状態か陽性状態か一次判定し、2つの画像の一次判定の結果が、2つとも陽性状態であれば陽性と二次判定し、少なくとも1つが陰性状態であれば陰性と二次判定する。処理部15は、例えば、一次判定の結果から二次判定を得るための判定テーブルを予め用意しておき、その判定テーブルを参照して二次判定を行うことにしてもよい。
【0037】
図5は、N=2の場合の判定テーブルである。判定テーブルには、1回目の一次判定(1つ目の画像の呈色状態)の結果と、2回目の一次判定(2つ目の画像の呈色状態)の結果と、二次判定の結果とが対応付けられている。図中の「+」は陽性状態を示し、「-」は陰性状態を示す。1回目の一次判定と2回目の一次判定が両方とも+の場合だけ二次判定が陽性となり、それ以外の組合せの場合には二次判定は陰性となる。2つの画像で判定を行うことにより偽陽性と判定される恐れを低減するので、判定の正確性と迅速性を両立させることができる。2回の撮像の時間間隔は、実際に使用される検査キット20において偽陽性が現れる時間あるいは標識化物質が滞留する時間に合わせて好適に調整した値を用いればよい。例えば3秒程度としてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では、N回の一次判定を行ってから二次判定を行う例を示したが、他の例も可能である。他の例として、処理部15は、撮像部14が取得した順に画像の被検出物質検出領域の呈色状態を一次判定し、一次判定で陰性と判定される画像があったらその段階で陰性と二次判定することにしてもよい。画像を取得した順に一次判定し、陰性と判定される画像があったらその段階で陰性と二次判定するので、偽陽性の判定を低減しつつ、判定を迅速化することができる。
【0039】
図6は、撮像処理のフローチャートである。
【0040】
処理部15は、ステップ100にて、撮像部14に指示して、観測窓23から見える被検出物質検出領域を含む画像を撮像する。説明を簡単にするため被検出物質を検出する被検出物質検出領域を1つとして説明する。
【0041】
次に、ステップ101にて、処理部15は、撮像回数が所定の上限数N回(ここでは2回)に達しているか否か判定する。処理部15は、撮像回数がN回に達していれば処理を終了し、撮像回数がN回に達していなければステップ100に戻る。
【0042】
図7は、判定処理のフローチャートである。
【0043】
処理部15は、ステップ200にて、撮像部14が撮像したN個の画像のうち1つの画像を選択する。
【0044】
次に、ステップ201にて、処理部15は、選択した画像に含まれる被検出物質検出領域の呈色状態を判定する。このとき、処理部15は、被検出物質検出領域の呈色状態に関する指標である呈色指標の値を、陰性状態か陽性状態か判定するための所定の呈色閾値と比較する。
【0045】
呈色指標が陽性の方が陰性よりも高い値を示す指標であれば、呈色指標が呈色閾値を越えていたら陽性状態と判定し、呈色指標が呈色閾値以下であれば陰性状態と判定する。逆に、呈色指標が陰性の方が陽性よりも高い値を示す指標であれば、呈色指標が呈色閾値を越えていたら陰性状態と判定し、呈色指標が呈色閾値以下であれば陽性状態と判定する。
【0046】
呈色指標は、画像における被検出物質検出領域の各画素(ピクセル)の画素値や明度に基づく呈色状態を示す指標である。また、撮像部14がデンシトメトリーを用いる装置であり、呈色指標が、所定波長の反射強度や吸光度、目的成分である標識化物質の濃度(密度)などであってもよい。標識化物質が一様に分布している場合には吸光度は標識化物質の濃度に比例する。
【0047】
具体例として、呈色指標は、標識化物質の色に応じた所定色の濃さに基づく指標であってもよい。例えば、呈色状態として、青色(B)および緑色(G)の濃さを用いてもよい。また、呈色状態として、赤色(R)および緑色(G)の濃さを用いてもよい。呈色閾値は呈色指標において閾値として好適な所定値である。例えば、被検出物質検出領域の各ピクセルについて当該ピクセルの前後(展開方向の上下流)所定範囲の所定色の濃さの平均値を呈色指標とし、呈色指標を示す曲線の高さが所定の呈色閾値以上であれば陽性、呈色閾値未満であれば陰性と判定することにしてもよい。
【0048】
続いてステップ202では、処理部15は呈色状態が陰性状態か否か判定する。呈色状態が陰性状態であれば、ステップ203にて、処理部51は、対象とした検査キット20について陰性と判定する。
【0049】
ステップ202の判定にて、呈色状態が陽性状態であれば、ステップ204にて、処理部15は、取得された画像のうち未処理の画像が残っているか否か判定する。未処理の画像が残っていれば、処理部15はステップ200に戻り次の画像を選択する。未処理の画像が残っていなければ、N個の画像の全てにおいて被検出物質検出領域の呈色状態が陽性状態と判定されたことを意味するので、処理部15は、対象とした検査キット20について陽性と判定する。
【0050】
なお、上述した通り、ここでは説明を簡単にするため、被検出物質を検出する被検出物質検出領域を1つとして説明したが、複数の被検出物質検出領域がある場合も基本的には同様である。本実施形態では図7の判定処理を第1被検出物質検出領域34と第2被検出物質検出領域35のそれぞれについて実行することにしてもよい。また、第1被検出物質検出領域34と第2被検出物質検出領域35の両方の判定処理を兼ねる態様も可能であり、その場合、第1被検出物質検出領域34と第2被検出物質検出領域35のいずれか一方が先に陰性と判定された場合でも他方の被検出物質検出領域の判定のためにステップ200に戻り次の画像の処理に進むこととなる。
【0051】
<第1動作モード>
上述したように、第1動作モードは、検査キット20の開口部22に滴下された液体試料がテストストリップ30に十分に流れ呈色状態が安定した後の検査キット20について即座に判定を行う動作モードである。
【0052】
ユーザが検査キット20をスロット11から検査判定機10に装填し、操作ボタン12への操作により第1動作モードでの動作開始を指示すると、処理部15は第1動作モードの処理を実行し、即座に検査キット20の判定を行う。第1動作モードでは、処理部15は、上述した基本動作を即座に1回実行する。基本動作により、対象とする検査キット20について陽性か陰性かの判定結果が得られるので、処理部15は判定結果を表示器13に表示する。
【0053】
<第2動作モード>
上述したように第2動作モードは、液体試料をテストストリップ30に滴下された直後から時々刻々と変化する検査キット20の呈色状態を継続的に観測し判定を行う動作モードである。
【0054】
ユーザが検査キット20をスロット11から検査判定機10に装填し、操作ボタン12への操作により第2動作モードでの動作開始を指示すると、処理部15は第2動作モードの処理を実行し、検査キット20の判定を行う。
【0055】
第2動作モードでは、処理部15は、上述した基本動作を利用した検査処理を実行する。具体的には、処理部15は、基本動作による撮像処理および判定処理を、所定の時間間隔(例えば1分)を空けて所定の上限回数であるM回(Mは複数、例えば5回)まで実行し、その判定処理にて陽性と判定された段階で陽性を確定し、M回までの判定処理の全てで陰性と判定されると陰性を確定する。
【0056】
図8は、検査処理のフローチャートである。
【0057】
処理部15は、まずステップ300にて撮像処理を実行し、続いてステップ301にて判定処理を実行する。そして、ステップ302にて、処理部15は判定処理による判定結果が陽性であったか否か判定する。判定結果が陽性であった場合、処理部15は、ステップ303にて、その段階で検査キット20の最終的な判定結果として陽性を確定し、ステップ307にて、陽性という判定結果を表示器13に表示させる。
【0058】
一方、ステップ302にて判定結果が陰性であった場合、処理部15は、ステップ304にて、判定処理を実行した回数(以下「判定処理実行回数」ともいう)が所定の上限回数(M回)に達したか否か判定する。判定処理実行回数がM回に達していなければ処理部15はステップ305にて、所定の時間だけ待機してステップ300に戻る。
【0059】
一方、ステップ304にて判定処理実行回数が上限回数に達していれば、M回の判定処理の全てで陰性と判定されたことを意味するので、処理部15は、ステップ306にて、検査キット20の最終的な判定結果として陰性を確定し、ステップ307にて、陰性という判定結果を表示器13に表示させる。
【0060】
以上の通り、第2動作モードでは、判定処理を所定の時間間隔を空けて所定の上限回数(M回)まで繰り返し実行するので、液体試料がテストストリップ30を流れている途中段階から検査判定を開始することができる。また、いずれかの判定処理にて陽性と判定された段階で陽性を確定し、上限回数までの全ての判定処理にて陰性と判定された段階で陰性を確定するので、途中時点でも判定を確定できる段階になればその段階で判定を確定させ、判定結果を迅速に確定させることができる。
【0061】
なお、ここでは、判定処理にて呈色指標と比較する呈色閾値をM回の判定処理で特に変化させることなく同じ値を用いているが、呈色閾値を変化させてもよい。処理部15は、m回目(mはM-1以下の自然数)の判定処理に用いる第1呈色閾値と、m+1回目の判定処理に用いる第2呈色閾値とを異なる値とすればよい。液体試料がテストストリップ30を流れている途中段階で判定処理を繰り返すので、判定処理を繰り返している途中で被検出物質検出領域の状態が変化する。本態様によれば、所定回目の判定処理に用いる呈色閾値と、その所定回目の次の回の判定処理に用いる呈色閾値とを異なる値とするので、被検出物質検出領域の状態に応じて適当な閾値を用いた良好な判定が可能となる。
【0062】
また、処理部15は、m回目(mはM-1以下の自然数)の判定処理に用いる第1呈色閾値を、m+1回目の判定処理に用いる第2呈色閾値より厳しい値にしてもよい。被検出物質検出領域の状態は液体試料のテストストリップ30への展開が進行すると徐々に安定してくるので、m回目の第1呈色閾値としてm+1回目の第2呈色閾値よりも陽性状態を厳しく判定する値を用い、判定領域の状態が安定しない間に誤って陽性と判定される可能性を低減することができる。
【0063】
具体的には、最後の判定処理の前までの判定処理では、最後の判定処理で用いる呈色閾値よりも厳しい値を用いることにしてもよい。M=5とすると、5回目の判定処理では所定の第2呈色閾値を用い、1回目から4回目までの判定処理では第2呈色閾値よりも厳しい第1呈色閾値を用いればよい。
【0064】
呈色指標が呈色閾値を越えていたら陽性状態であり呈色閾値以下であれば陰性状態であるような指標であれば、第1呈色閾値が第2呈色閾値よりも大きい値である。例えば第1呈色閾値として第2呈色閾値の2倍の値を用いてもよい。呈色指標が呈色閾値を越えていたら陰性状態であり呈色閾値以下であれば陽性状態であるような指標であれば、第1呈色閾値が第2呈色閾値よりも小さい値である。
【0065】
<異常時動作>
上述したように、異常時動作は、第2動作モードの途中で検査キット20が引き抜かれたときの検査判定機10の動作である。
【0066】
上述したように、処理部15は、検知部18により、スロット11に検査キット20が装着されているか否かと知得することができる。また、処理部15は、第2動作モードによる検査の開始時刻からの経過時間を終了時刻まで計測し、検査中(開始時刻から終了時刻までの間)にスロット11から検査キット20が取り外されたことが検知部18にて検知されると、その時点での終了時刻までの残り時間(以下「残時間」ともいう)を算出し、表示器13に表示させる。終了時刻は例えば判定処理をM回だけ実行し終える時刻とすればよい。検査キット20を途中で抜き取った場合にはユーザが目視により判定を行うことが想定される。本実施形態によれば、検査キット20が抜き取られたときに検査の終了時刻までの残り時間が表示されるので、ユーザは、いつ目視での判定を行えばよいかを知ることができる。
【0067】
図9は、抜去監視処理のフローチャートである。
【0068】
処理部15は、ステップ400にて、第2動作モードによる検査が開始されるのを監視する。検査が開始されると、処理部15は、ステップ401にて、検査キット20が引き抜かれているかどうか判定する。
【0069】
検査キット20が引き抜かれていなければ、ステップ402にて、処理部15は検査が終了したか否か判定する。検査が終了していなければ、処理部15は、ステップ401に戻る。ステップ401にて検査キット20が引き抜かれていれば、処理部15は、ステップ403にて、残時間を算出し、表示器13に表示する。
【0070】
ステップ402にて検査が終了していれば、処理部15は抜去監視処理を終了する。
【0071】
上述した実施形態は、説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0072】
以下、変形例について説明する。
【0073】
<変形例1>
本実施形態の変形例として、処理部15は、第1動作モードが選択されたとき、第1動作モードでの検査をメインの処理として実行する一方で、バックグラウンド処理として第2動作モードの動作も進めておき、ユーザが第2動作モードへ切り替えたら第2動作モードをメインの処理として動作を継続することにしてもよい。ユーザが第2動作モードで検査を行うべきところ誤って第1動作モードを選択してしまい、それに気づいて第2動作モードに切り替えた場合にも正常に第2動作モードでの検査を実行することができる。
【0074】
<変形例2>
本実施形態の変形例として、検査判定機10が第1動作モードで検査をするか第2動作モードで検査をするかを自動的に選択することにしてもよい。処理部15は、第1被検出物質検出領域34および第2被検出物質検出領域35の呈色状態の判定と同様の方法で、試料展開検出領域36が、当該試料展開検出領域36まで液体試料が十分に展開されたことを示す所定の呈色状態を示しているか否か判定し、所定の呈色状態を示していれば、第1動作モードで検査を行い、判定結果を表示器13に表示させることにしてもよい。また、試料展開検出領域36が所定の呈色状態を示していなければ、処理部15は、第2動作モードで検査を行うことにしてもよい。
【0075】
<変形例3>
本実施形態の変形例として、第2動作モードにおいて試料展開検出領域36が所定の呈色状態を利用してもよい。
【0076】
図10は、変形例3における検査処理のフローチャートである。処理部15は、ステップ304にて判定処理実行回数が上限回数(M回)に達していないとき、ステップ305ではなく、ステップ501に進む。ステップ501にて、処理部15は、試料展開検出領域36が所定の呈色状態を示しているか否か、すなわち液体試料の展開が完了しているか否か判定する。試料展開検出領域36が所定の呈色状態を示していれば、処理部15は液体試料の展開が完了しているものとしてステップ306に進む。試料展開検出領域36が所定の呈色状態を示していなければ、処理部15はステップ305に進む。本例によれば第2動作モードによる検査に要する時間を短縮しうる。
【0077】
<変形例4>
本実施形態の変形例として、試料展開検出領域36が所定の呈色状態に応じて、第1被検出物質検出領域34および/または第2被検出物質検出領域35の呈色状態を判定する呈色閾値の値を変化させてもよい。
【0078】
本実施形態として、第2動作モードにおいてM=5とすると、処理部15が、5回目の判定処理では所定の第2呈色閾値を用い、1回目から4回目までの判定処理では第2呈色閾値よりも厳しい第1呈色閾値を用いる例を示した。これに対して、1回目から4回目の判定処理において、試料展開検出領域36が所定の呈色状態(例えば上限に近い呈色状態)を示していれば、第1呈色閾値と第2呈色閾値の間にある値を閾値として、第1被検出物質検出領域34および/または第2被検出物質検出領域35の呈色状態を判定することにしてもよい。
【0079】
試料展開検出領域36が上限に近い呈色状態を示していれば、第1被検出物質検出領域34および第2被検出物質検出領域35は、液体試料が下流まで流れ、ノイズとなる固定されていない標識化物質が少ない状態となっていることが考えられるので、その場合には呈色閾値を下げて判定の確定を早め検査時間の短縮を図ることができる。
【0080】
例えば、第1呈色閾値が第2呈色閾値の2倍の値であるとすれば、試料展開検出領域36が所定の呈色状態を示しているときには第1呈色閾値の代わりに第2呈色閾値の1.6倍の値を用いることにしてもよい。
【0081】
以上、ここに示した変形例は当然ながら例示であり、他の変形例がありうることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
10…検査判定機、11…スロット、12…操作ボタン、13…表示器、14…撮像部、15…処理部、16…操作部、17…表示部、18…検知部、20…検査キット、21…筐体、22…開口部、23…観測窓、30…テストストリップ、31…試料展開メンブレン、32…試料滴下パッド、33…標識化物質含有パッド、34…被検出物質検出領域、35…被検出物質検出領域、36…試料展開検出領域、51…処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10