(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/06 20060101AFI20221017BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20221017BHJP
B65D 75/56 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B65D33/06
B65D30/02
B65D75/56
(21)【出願番号】P 2018184402
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 記瑞
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0002090(US,A1)
【文献】実開昭63-171375(JP,U)
【文献】登録実用新案第3071906(JP,U)
【文献】特開2008-201462(JP,A)
【文献】特開2018-104084(JP,A)
【文献】特開2010-132331(JP,A)
【文献】特表2001-523021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00-33/38
B65D 57/00-59/08
B65D 67/00-81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装体を収容する本体部と、
前記本体部の上部に設けられた持手部と、
前記持手部の長手方向の中央部に形成された指掛部とを有し、
前記指掛部の少なくとも上方に、
チキソトロピー性を有するゲル状物質を含む緩衝部材が形成されて
おり、
前記ゲル状物質がセルロース繊維またはヒアルロン酸化合物である、包装袋
。
【請求項2】
前記緩衝部材が、前記ゲル状物質がフィルム袋体に充填されたものである、請求項
1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記フィルム袋体は、前記持手部の厚み方向に貼り付けられている、請求項
2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記指掛部は、前記長手方向に沿って延びるスリットで形成され、
前記指掛部の中央部は、前記持手部の高さ方向の下方に湾曲する、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記指掛部は、前記指掛部の中央部と前記指掛部の両端部との間にそれぞれ変曲点を有し、
前記両端部の各先端が前記各変曲点の下方に位置するように、前記両端部が湾曲する、請求項
4に記載の包装袋。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記持手部の高さ方向の中央部に配置されている、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項7】
前記指掛部および前記緩衝部材は、前記持手部に形成されたシール部に囲まれている、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー等の物品を包装する包装袋は、包装される物品が収容される本体部と、本体部の上部に設けられた持手部とを備える。また、包装袋の持手部には、指をかけるための指掛部が設けられている。従来の包装袋では、トイレットペーパー等の購入者等が、持手部の指掛部に指を掛けることで、包装袋の持手部を掴むことができ、包装袋に収容されたトイレットペーパー等を持ち運ぶことができるようになっている。
【0003】
例えば、特許第4856412号公報(特許文献1)の
図3等には、被包装体が収容される本体部の上側に設けられた上端縁に、1つの指掛穴(切れ目)が形成された包装袋が開示されている。また、特開2004-269010号公報(特許文献2)の
図2等には、本体部の上部に設けられた把持部に、2つの指掛穴(ミシン目)が形成されたロール製品収納用包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4856412号公報
【文献】特開第2004-269010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の包装袋では、包装袋に収容される被包装体の重量や嵩、被包装体が収容された包装袋の持ち方等によって、手指が締め付けられたり、持ち運びの際に手指が痛くなる場合がある。また、包装袋を持ち運ぶ際に、持手部が伸びたり、破断する場合がある。そのため、被包装体が収容された状態で包装袋が持ちづらく、また持ち運びの際に包装袋が破損することがある。
【0006】
本発明の課題は、持ちやすく、破損しにくい包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、被包装体を収容する本体部と、前記本体部の上部に設けられた持手部と、前記持手部の長手方向の中央部に形成された指掛部とを有し、前記指掛部の少なくとも上方に、ゲル状物質を含む緩衝部材が形成されている、包装袋を提供する。
【0008】
本明細書において、ゲル状物質とは、粘性を有するコロイド溶液が静止状態で流動性を失った固体状の物質である。また、ゲル状物質の態様は、特に限定されず、物理刺激(加圧、温度変化等)によって流動性が変化しない(流動性が生じない)もの、及び物理刺激によって流動性が変化する(流動性が生じる)もののいずれも含まれる。なお、物理刺激によって流動性が変化するゲル状物質としては、熱溶解性を有するもの、後述するチキソトロピー性を有するもの等が挙げられる。
【0009】
また、緩衝部材は、包装袋に設けられた状態で、指掛部に手指または掌(以下、手指等という)を入れて持手部を掴んだ(または握った)ときに、手指等にかかる圧力(または負荷)をやわらげる(または緩和する)部材である。なお、ゲル状物質を含む緩衝部材の形態は、特に限定されず、例えば、緩衝部材に含まれるゲル状物質がシート状に形成されたもの、持手部の表面に貼り付けたフィルムシートとの間に介在させたもの、またはフィルム袋体にゲル状物質が充填されたもの等が挙げられる。
【0010】
また、指掛部の少なくとも上方に緩衝部材が形成されているとは、緩衝部材が指掛部の上方のみに形成されている場合に限られず、指掛部の上方を含む持手部の全体または一部に緩衝部材が形成されていてもよいことを示す。
【0011】
第1の態様では、このような緩衝部材が指掛部の少なくとも上方に形成されているため、手指等を入れて持手部を掴む(または握る)と、指掛部の上方に設けられた緩衝部材を掴むことができる。また、緩衝部材はゲル状物質を含むため、持手部を掴んだときに手指等にかかる圧力は、この緩衝部材に分散される。
【0012】
また、ゲル状物質を含む緩衝部材は、持手部を掴んだ手指等の状態に合わせて形状が変化する。言い換えると、ゲル状物質を含む緩衝部材は、持手部を掴んだ(または握った)手指等に馴染んだ形で当たる(フィットする)。そのため、ゲル状物質を含む緩衝部材が少なくとも上方に設けられた持手部は、安定した状態で掴む(または握る)ことができる。
【0013】
このような構成により、第1の態様では、持手部を掴んだ際に手指等にかかる負荷をやわらげる(または緩和する)ことができる。そのため、持手部によって手指等が締め付けられたり、手指等が痛くなるのを抑制することができる。これにより、第1の態様では、持手部が掴みやすくなり、包装袋の持ち運びが容易になる。
【0014】
また、第1の態様では、ゲル状物質を含む緩衝部材によって、上述のように手指等にかかる圧力が分散され、また、持手部を安定した状態で掴むことができることで、持手部が伸びたり、破断するのを抑制することができる。そのため、被包装体が収容された状態で包装袋を持ち運ぶ場合に、包装袋が破損しにくくなる。
【0015】
本発明に係る第2の態様は、前記ゲル状物質が、チキソトロピー性を有する、包装袋を提供する。本明細書において、チキソトロピー性は、一定の力がかかると粘性(または粘度)が低下し、力がかからないようにする(静置する)と元の粘性に戻る性質を示す(以下、チキソ性という場合がある)。
【0016】
第2の態様では、緩衝部材に含まれるゲル状物質がチキソトロピー性を有することで、ゲル状物質を含む緩衝部材が、手指等にかかる圧力を分散しながら吸収することができる。また、チキソトロピー性を有するゲル状物質を含む緩衝部材では、持手部を掴んだ手指等に合わせて形状がより変化しやすい。そのため、持手部を掴む手指等により馴染んで当たる(またはフィットする)ことができるため、持手部をより安定した状態で掴むことができる。
【0017】
本発明に係る第3の態様は、前記緩衝部材は、前記ゲル状物質がフィルム袋体に充填されたものである、包装袋を提供する。第3の態様では、ゲル状物質を含む緩衝部材としてこのようなフィルム袋体にゲル状物質が充填されたものを用いることにより、ゲル状物質を含む緩衝部材の構成を簡単にすることができる。
【0018】
また、このようなフィルム袋体にゲル状物質が充填された緩衝部材は、保形性が付与されるため、持手部を掴んだときに、持手部の緩衝部材が設けられた部分が、手指等に対して面状に当たりやすくなる。言い換えると、持手部に設けられた緩衝部材の部分は、手指等に対して線状に当たりにくくなる。
【0019】
このような構成により、指掛部に手指等を掛けて持手部を掴んだときに、手指等にかかる圧力がさらに持手部に設けられた緩衝部材に分散され、持手部を掴んだ際に手指等にかかる負荷をさらに緩和することができる。そのため、持手部によって手指等が締め付けられたり、手指等が痛くなるのをさらに抑制することができる。これにより、第3の態様では、さらに持手部が掴みやすくなり、包装袋の持ち運びが容易になる。
【0020】
本発明に係る第4の態様は、前記フィルム袋体が、前記持手部の厚み方向に貼り付けられている、包装袋を提供する。第4の態様では、このようなゲル状物質が充填されたフィルム袋体を持手部の厚み方向に貼り付けるだけで、ゲル状物質を含む緩衝部材を持手部に設けることができる。そのため、第4の態様では、持手部にゲル状物質を含む緩衝部材を簡単に設けることができる。
【0021】
本発明に係る第5の態様は、前記指掛部は、前記長手方向に沿って延びるスリットで形成され、前記指掛部の中央部は、前記持手部の高さ方向の下方に湾曲する、包装袋を提供する。
【0022】
本明細書において、長手方向に沿って延びるとは、スリットが持手部の長手方向に平行である場合と平行でない場合のいずれも含む。また、スリットの形状は、特に限定されず、直線状、曲線状、波線状等のいずれであってもよい。また、持手部の高さ方向の下方に湾曲するとは、指掛部の中央部が持手部の下端側に向かって凸状に曲がっていることを示す。
【0023】
第5の態様では、このような湾曲するスリットで指掛部を形成することにより、指掛部に入れる手指等の形に合わせて指掛部を構成することができる。そのため、スリットを介して持手部の厚み方向に手指等を入れるだけで、持手部に手指等を簡単に掛けることができる。
【0024】
本発明に係る第6の態様は、前記指掛部は、前記指掛部の中央部と前記指掛部の両端部との間にそれぞれ変曲点を有し、前記両端部の各先端が前記各変曲点の下方に位置するように、前記両端部が湾曲する、包装袋を提供する。
【0025】
本明細書において、変曲点は、スリットで形成された指掛部の中央部と2つの端部との間に位置し、指掛部の曲がる方向が変わる点(屈曲点)を示す。また、指掛部の両端部の各先端が各変曲点の下方に位置するように指掛部の両端部が湾曲するとは、指掛部の各端部が、持手部の長手方向の中央部から持手部の各端部側に向かって凸状に曲がりながら、指掛部の中央部と連続して各変曲点から各先端に延びていることを示す。
【0026】
第6の態様では、指掛部の両端部が指掛部の各変曲点の下方に指掛部の両端部の各先端が位置するように湾曲することで、手指等を指掛部に入れて持手部を掴んだ(握った)ときに、持手部に繋がった状態で折れ曲がる持手部の一部(折れ曲り部)は、指掛部の下方に折れ曲がることができる。すなわち、持手部の一部(折れ曲り部)が指掛部の上方に捲れ上がるのを防ぐことができる。
【0027】
このような構成により、指掛部に手指等を入れて持手部を掴んだときに、持手部の一部(折れ曲り部)が手指等と持手部の緩衝部材との間に挟まることを防ぐことができる。これにより、第6の態様では、スリットで形成された指掛部の中央部が持手部の高さ方向の下方に湾曲する場合でも、持手部を掴んだときに、手指等に対して持手部の緩衝部材が確実に当たるように、指掛部を構成することができる。
【0028】
なお、持手部に繋がった状態で下方に折れ曲がった持手部の一部(折れ曲り部)は、指掛部に手指等を入れて持手部を掴んだ(または握った)ときに、手指等に対して面状に当たりやすい(線状に当たりにくい)。第6の態様では、このような観点からも、手指等が痛くなるのを抑制することができる。
【0029】
本発明に係る第7の態様は、前記緩衝部材は、前記持手部の高さ方向の中央部に配置されている、包装袋を提供する。本明細書において、持手部の高さ方向の中央部とは、持手部の高さ方向の中央と該中央の近傍または周辺を含む領域を示す。
【0030】
第7の態様では、このような持手部の高さ方向の中央部に緩衝部材を配置することで、指掛部が持手部の下端寄りに形成される。なお、持手部は、指掛部の上方に向かって切れやすい傾向があるが、第7の態様では、指掛部が持手部の下端寄りに形成されることで、持手部の余白(持手部が形成されていない部分)が指掛部の上方に十分に(または広い範囲で)存在するため、指掛部から持手部の上端に向かって持手部が破断するのを食い止めることができる。
【0031】
本発明に係る第8の態様は、前記指掛部および前記緩衝部材は、前記持手部に形成されたシール部に囲まれている、包装袋を提供する。シール部は、包装袋において持手部を補強する補強部となり得る。そのため、持手部に形成された指掛部は、上方に緩衝部材が設けられた状態で、このシール部(補強部)で囲まれた構成となる。第8の態様では、このようなシール部で指掛部を囲むことで、指掛部を起点に持手部が破断するのをさらに食い止めることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、持ちやすく、破損しにくい包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態(第1実施形態)に係る包装袋を示す図である。
【
図2】本実施形態(第1実施形態の変形例)に係る包装袋を示す図である。
【
図3】本実施形態(第1実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る包装袋の持手部に設けられた緩衝部材を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る包装袋において指掛部に手指を入れる前の状態を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る包装袋において指掛部に手指を入れた状態を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る包装袋において指掛部に手指を入れて持手部を掴んだ状態を示す図である。
【
図10】本実施形態(第2実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。
【
図11】従来の包装袋(比較例1)の持手部を示す図である。
【
図12】従来の包装袋(比較例2)の持手部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す説明では、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、理解を容易にするため、各図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、包装袋の持手部の高さ方向において、一方(持手部の上端側)を上方、他方(持手部の下端側)を下方という場合がある。
【0035】
図1は、本発明の実施形態(第1実施形態)に係る包装袋100を示す。また、
図2は、本実施形態(第1実施形態の変形例)に係る包装袋100を示す図である。さらに、
図3は、本実施形態(第1実施形態)に係る包装袋100の持手部20を示す。
【0036】
図1及び
図2において、包装袋100は、本体部10、持手部20、指掛部30を備えている。なお、包装袋100は、本発明の包装袋の一例であり、本体部10、持手部20、指掛部30は、本発明の包装袋を構成する本体部、持手部、指掛部の各一例である。
【0037】
本体部10は、被包装体Tが収容される包装袋100の本体(袋本体)を構成する。本体部10は、樹脂フィルム等で形成することができる。本体部10は、この樹脂フィルムがサイドシールにより袋状にされ、袋状になった樹脂フィルムがガセット状に折り込まれた構造になっている(
図1、
図2参照)。
【0038】
本体部10を形成する樹脂フィルムの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、PE-エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)-PEの積層体(PE/EVOH/PE)等の樹脂フィルムを用いることができる。また、樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムとしてPE、PE/EVOH/PEを用いる場合、樹脂フィルムの厚みは10~70μmとすることができ、好ましくは15~60μm、より好ましくは20~50μmである。
【0039】
本体部10は、被包装体Tの一例としてロール状のトイレットペーパーが12個収容されている(
図1、
図2参照)。なお、被包装体の形態は、ロール状に限定されず、積層状等の他の形態で収容されていてもよい。また、本体部10に収容される被包装体は、トイレットペーパーに限定されるものではなく、キッチンペーパー、ベビー用または介護用の紙おむつ、生理用ナプキン等の物品を収容することができる。
【0040】
さらに、本体部10に収容される物品の個数は限定されない。すなわち、収容される物品の個数は、1つでもよく、
図1、
図2に示すように複数であってもよい。なお、
図1に示す例では、12個のロール状のトイレットペーパー(被包装体T)を1段に4つ並べたものを3段に積み上げた状態で本体部10内に収容されている。しかしながら、本体部10内に収容される被包装体の配列はこの配列に限定されるものではなく、例えば、12個のトイレットペーパー(被包装体T)を1段に並べた状態で本体部10に収容しても良い(
図2参照)。
【0041】
持手部20は、
図1、
図2に示すように、本体部10の上部11に設けられ、包装袋100を手指または掌(以下、手指等という場合がある)で掴む部分(持手または取っ手)を構成する。持手部20の形状は、特に限定されないが、例えば、持手部20の厚み方向(Z方向)に見たときの輪郭形状を長方形等の四角形にすることができる。
【0042】
また、持手部20の寸法は、特に限定されず、本体部10や指掛部30の寸法、後述する緩衝部材40の範囲等によって定めることができる。なお、持手部20の形状が長方形の場合、持手部20の寸法は、例えば、持手部20の長手方向(X方向)の寸法を150~500mmにすることができ、好ましくは160~400mm、より好ましくは170~300mmである。また、持手部20の高さ方向(Y方向)の寸法を、35~150mmにすることができ、好ましくは40~130mm、より好ましくは45~100mmである。
【0043】
持手部20は、本体部10と同様に、樹脂フィルム等で形成することができる。持手部20は、熱融着(ヒートシール)により、本体部10の上部11に形成される。本体部10の上部11(持手部20が設けられる位置)は、
図1のように本体部10の天面に限定されず、
図2のように本体部10の側面でもよい。なお、熱融着(ヒートシール)には、例えば、上述のガセット状に折り込まれた樹脂フィルムを、持手成形用の熱版で型押しする手法(スタンプ方式)を用いることができる。
【0044】
持手部20は、この折り込まれた樹脂フィルムが、持手部20の長手方向(X方向)の両端部23、24では4枚重ねで、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25付近では2枚重ねで、ヒートシール(熱融着)で形成されたシール部50で接着されている。なお、シール部50は、熱融着に限定されず、接着剤、粘着剤等を塗布することによって形成してもよい。
【0045】
シール部50は、
図3に示すように、上端シール51、下端シール52、側端シール53、側端シール54、及び中間シール55で構成されている。上端シール51は、持手部20の上端22側に該上端22に沿って設けられている。下端シール52は、持手部20の下端21側に該下端21に沿って設けられている。側端シール53は、持手部20の長手方向(X方向)の端部23側に該端部23に沿って設けられている。側端シール54は、持手部20の長手方向(X方向)の端部24側に該端部24に沿って設けられている。中間シール55は、持手部20の上端22(または上端シール51)と指掛部30との間に、側端シール53から側端シール54に連続して延びるように設けられている。
【0046】
これにより、持手部20の内側には、シール部50(シール51~55)が形成される。そして、シール51~54で囲まれた部分は、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25を構成する。なお、持手部20には、持手部20を取り付けた本体部10が包装袋100の製造時または流通時に破裂しないように、本体部10と包装袋100の外部とを連通する空気穴(図示せず)を設けるのが好ましい。
【0047】
指掛部30は、
図3に示すように、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25に形成されている。指掛部30は、持手部20の長手方向(X方向)に沿って延びるスリットSで形成され、持手部20を掴む(または握る)際に手指等を掛ける部分を構成する。なお、持手部20を構成するスリットSの形態は、特に限定されないが、例えば、ミシン目で形成することができ、該ミシン目を破ることでスリットを形成することができる。
【0048】
ここで、持手部20の長手方向(X方向)に沿って延びる態様としては、スリットSが持手部20の長手方向(X方向)に平行である場合と平行でない場合とがあり得る。また、スリットSの形状は、
図3に示すような直線状に限定されず、曲線状、波線状、円形、楕円形、四角形等の形状やこれらに類似する形状等のいずれであってもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、指掛部30が1つのスリットで形成されているが(
図3参照)、スリットの個数は限定されない。したがって、指掛部30を2つ以上のスリットで形成してもよく、例えば、持手部20の長手方向(X方向)に所定の間隔をあけて配置された2つのスリットで形成することができる。
【0050】
また、持手部20には、補強フィルム(図示せず)を設けてもよい。この補強フィルムは、樹脂フィルムで形成することができる。なお、補強フィルムの材質は特に限定されず、持手部20を構成する樹脂フィルムの材質と同じでも良く、また異なっていても良い。このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびPE-エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)-PEの積層体(PE/EVOH/PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の樹脂フィルムを用いることができる。このような補強フィルムを設けることにより、指掛部30が形成された持手部20の長手方向(X方向)の中央部25を補強することができる。
【0051】
また、補強フィルムの厚み寸法は、特に限定されず、例えば、20μm以上にすることができ、好ましくは30μm~150μm、より好ましくは50μm~130μmである。補強フィルムの厚み寸法をこのような範囲にすることにより、持手部20が伸びたり、破断するのを防ぐことができる。また、補強フィルムは、上述の熱溶着等により、シール部50の形成時に、持手部20に接着することができる。
【0052】
本実施形態(第1実施形態)では、指掛部30の少なくとも上方に、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が形成されている。具体的には、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が、持手部20の高さ方向(Y方向)に指掛部30と並んで(指掛部30に対向して)配置されている。
【0053】
ここで、緩衝部材40に含まれるゲル状物質42は、粘性を有するコロイド溶液が静止状態で流動性を失った固体状の物質である。また、ゲル状物質42の態様は、特に限定されず、物理刺激(加圧、温度変化等)によって流動性が変化しないもの、及び物理刺激によって流動性が変化するもののいずれでもよい。
【0054】
また、ゲル状物質42を含む緩衝部材40は、包装袋100に設けられた状態で、指掛部30に手指等を入れて持手部20を掴んだ(または握った)ときに、手指等にかかる圧力(または負荷)をやわらげる(または緩和する)部材である。なお、ゲル状物質42を含む緩衝部材40の形態は、特に限定されず、例えば、ゲル状物質42がシート状に形成されたもの、持手部20の表面(一方の面20Aおよび/または他方の面20B)に貼り付けたフィルムシート(上述の補強フィルム等)との間にゲル状物質42介在させたもの、または後述するフィルム袋体41にゲル状物質42が充填されたもの等が挙げられる(
図3~
図6参照)。
【0055】
また、指掛部30の少なくとも上方に緩衝部材40が形成されている態様は、
図1~
図3に示すような緩衝部材40が指掛部30の上方のみに形成されている場合に限られない。したがって、緩衝部材40が指掛部30の上方に形成されている限り、指掛部30の上方を含む持手部20の全体または一部に緩衝部材40が形成されていてもよい。
【0056】
本実施形態では、緩衝部材40に含まれるゲル状物質42として、熱溶解性を有するもの、チキソトロピー性を有するもの等を用いることができる。ここで、チキソトロピー性(チキソ性)は、一定の力がかかると粘性(または粘度)が低下し、力がかからないようにすると(静置すると)元の状態に戻る性質を示す。
【0057】
熱溶解性を有するゲル状物質の具体例としては、例えば、セルロース誘導体等が挙げられ、中でもカルボキシメチルセルロース化合物が好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。
【0058】
また、チキソ性を有するゲル状物質42の具体例としては、例えば、セルロース繊維、ヒアルロン酸化合物、食用ソース等が挙げられる。セルロース繊維としては、平均繊維径(幅)が10μm以下のセルロース繊維が好ましく、平均繊維径(幅)が100nm以下のセルロース繊維(セルロースナノファイバー等)がより好ましい。
【0059】
なお、チキソ性を有するゲル状物質42に用いられるセルロースナノファイバーは、特に限定されない。このようなセルロースナノファイバー(CNF)としては、例えば、平均繊維径(幅)が3~4nmとなるTEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等のiCNF(individualized CNF)(シングルセルロースナノファイバー)を用いることができる。
【0060】
ここで、セルロース繊維は、セルロースのミクロフィブリル、または、これを構成する繊維を示す。また、平均繊維径とは、繊維の長さ方向に対して垂直な断面又は垂直に近い断面の繊維を複数本選択し、その繊維径を測定した平均値である。なお、繊維が熱や圧力によって溶融する場合や変形する場合は、断面積を測定して、真円換算の繊維径を算出する。繊維は、例えば、繊維を走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察される。
【0061】
また、ヒアルロン酸化合物としては、ヒアルロン酸ゲル(ヒアルロン酸ナトリウムと硝酸の混合物)が好ましく、食用ソースの具体例としては、入手容易性の観点からマヨネーズ等が好ましい。
【0062】
これらのチキソ性を有するゲル状物質の中でも、平均繊維径(幅)が100nm以下のセルロース繊維(セルロースナノファイバー等)は、チキソ性のせん断力がかかった際にゲル状から流動性が生じた後のゲル状への復元が早い点で、特に好ましい。
【0063】
また、熱溶解性を有するゲル状物質として、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いる場合は、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度が約2%以上の水溶液)を用いるのが好ましい。
【0064】
また、チキソ性を有するゲル状物質として、セルロースナノファイバーを用いる場合は、セルロースナノファイバーの水溶液(例えば、セルロースナノファイバーの濃度が2%以上の水溶液)を用いるのが好ましい。なお、ゲル状物質の加工性の観点から、セルロースナノファイバーの水溶液におけるセルロースナノファイバーの濃度が3%以上であることがより好ましい。
【0065】
また、チキソ性を有するゲル状物質として、ヒアルロン酸ゲルを用いる場合は、ヒアルロン酸ナトリウムと硝酸の混合物の水溶液(例えば、ヒアルロン酸ナトリウムと硝酸の混合物の濃度が1%以上の水溶液)を用いるのが好ましい。
【0066】
本実施形態では、緩衝部材40は、ゲル状物質42がフィルム袋体41に充填されて構成されている。そして、ゲル状物質42が充填されたフィルム袋体41は、持手部20の厚み方向(Z方向)に貼り付けられている(
図3~
図6参照)。
【0067】
具体的には、
図5、
図6に示すように、貼代41Aが設けられたフィルム袋体41にゲル状物質42を充填して、フィルム袋体41の貼代41Aを、シール部50の一部(側端シール53、54の一部と中間シール55)で持手部20の一方の面20Aに融着する(
図4参照)。なお、持手部20に緩衝部材40(ゲル状物質42が充填されたフィルム袋体41)を貼り付ける態様は、特に限定されず、持手部20の一方の面20Aの代わりに持手部20の他方の面20Bに貼り付けてもよく、持手部20の両面20A、20Bにそれぞれ貼り付けてもよい。
【0068】
なお、フィルム袋体41の態様は、特に限定されないが、例えば、シートフィルムを2つ折りにした長方形の折り目となる1辺を除いた3辺をヒートシール(熱融着)により接着することで貼代41Aが形成されたフィルム袋体41を構成することができる(
図3~
図6参照)。また、フィルム袋体41を構成し得るシートフィルムには、本体部10と同様に、樹脂フィルム等を用いることができる。
【0069】
また、本実施形態では、
図3に示すように、緩衝部材40が、高さ方向(Y方向)の中央部26に配置されている。ここで、持手部20の高さ方向(Y方向)の中央部26とは、持手部20の高さ方向(Y方向)の中央と該中央の近傍または周辺を含む領域を示す。このように、持手部20の高さ方向(Y方向)の中央部26に緩衝部材40を配置することで、指掛部30が持手部20の下端21寄りに形成される。
【0070】
また、本実施形態では、
図3に示すように、指掛部30および緩衝部材40が、持手部20に形成されたシール部50に囲まれている。具体的には、指掛部30と緩衝部材40が形成された持手部20の長手方向(X方向)の中央部25が、上端シール51の一部、下端シール52の一部、側端シール53、54で囲まれている。
【0071】
さらに、中間シール55は、持手部20の上端22(または上端シール51)と緩衝部材40との間に、側端シール53から側端シール54に連続して延びるように設けられている。これにより、指掛部30と緩衝部材40は、側端シール53、54の一部と中間シール55に囲まれている。
【0072】
図7~
図9は、本実施形態に係る包装袋100の使用態様を示す図である。ここで、
図7~
図9により、本実施形態による効果について説明する。本実施形態では、まず持手部20の長手方向(X方向)の中央部25に形成された指掛部30に手指等Pを入れることができる(
図7、
図8参照)。
【0073】
また、本実施形態では、上述のように指掛部30の上方に、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が形成されている。そのため、指掛部30に手指等Pを入れて持手部20を掴む(または握る)と、指掛部30の上方に設けられた緩衝部材40を掴むことができる。また、緩衝部材40はゲル状物質42を含むため、持手部20を掴んだときに手指等Pにかかる圧力は、この緩衝部材40に分散される。
【0074】
また、ゲル状物質42を含む緩衝部材40は、持手部20を掴んだ手指等Pの状態に合わせて形状が変化することができる。言い換えると、ゲル状物質42を含む緩衝部材40は、持手部20を掴んだ(または握った)手指等Pに馴染んだ形で当たることができる。(フィットする)。そのため、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が上方に設けられた持手部20は、安定した状態で掴む(または握る)ことができる。
【0075】
このような構成により、本実施形態では、持手部20を掴んだ際に手指等Pにかかる負荷をやわらげる(または緩和する)ことができる。そのため、持手部20によって手指等Pが締め付けられたり、手指等Pが痛くなるのを抑制することができる。これにより、本実施形態では、持手部20が掴みやすくなり、包装袋100の持ち運びが容易になる。
【0076】
また、本実施形態では、ゲル状物質42を含む緩衝部材40によって、上述のように手指等Pにかかる圧力が分散され、また、持手部20を安定した状態で掴むことができることで、持手部20が伸びたり、破断するのを抑制することができる。そのため、被包装体Tが収容された状態で包装袋100を持ち運ぶ場合に、包装袋100が破損しにくくなる。
【0077】
また、本実施形態では、上述のように緩衝部材40に含まれるゲル状物質42がチキソトロピー性を有することで、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が、手指等Pにかかる圧力を分散しながら吸収することができる。また、チキソトロピー性を有するゲル状物質42を含む緩衝部材40では、持手部20を掴んだ手指等Pに合わせて形状がより変化しやすく、持手部20を掴む手指等Pにより馴染んで当たる(またはフィットする)ことができるため、持手部20をより安定した状態で掴むことができる。
【0078】
また、本実施形態では、チキソトロピー性を有するゲル状物質42としてセルロース繊維が緩衝部材40に含まれているため、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が、手指等Pにかかる圧力を分散しながらさらに吸収することができる。また、セルロース繊維を含む緩衝部材40では、持手部20を掴んだ手指等Pに合わせて形状がさらに変化しやすくなる。これにより、緩衝部材40は、持手部20を掴む手指等Pにさらに馴染んで当たる(またはフィットする)ため、持手部20をさらに安定した状態で掴むことができる。
【0079】
また、本実施形態では、上述のように緩衝部材40がフィルム袋体41にゲル状物質42が充填されたものであり、このように構成された緩衝部材40には保形性が付与される。そのため、持手部20を掴んだときに、持手部20の緩衝部材40が設けられた部分が、手指等Pに対して面状に当たりやすくなる。言い換えると、持手部20に設けられた緩衝部材40の部分は、手指等Pに対して線状に当たりにくくなる。
【0080】
このような構成により、本実施形態では、指掛部30に手指等Pを掛けて持手部20を掴んだときに、手指等Pにかかる圧力がさらに持手部20に設けられた緩衝部材40に分散され、持手部20を掴んだ際に手指等Pにかかる負荷をさらに緩和することができる。そのため、持手部20によって手指等Pが締め付けられたり、手指等Pが痛くなるのをさらに抑制することができる。これにより、本実施形態では、さらに持手部20が掴みやすくなり、包装袋100の持ち運びが容易になる。
【0081】
なお、緩衝部材40に保形性が付与される場合は、緩衝部材40がフィルム袋体41にゲル状物質42が充填されたものである場合に限られない。例えば、ゲル状物質42がシート状に形成されたもの、または持手部20の表面(一方の面20Aおよび/または他方の面20B)に貼り付けたフィルムシート(上述の補強フィルム等)との間にゲル状物質42を介在させたもの等でも、緩衝部材40に保形性を付与することができる(持手部20の緩衝部材40が設けられた部分が手指等Pに対して面状に当たりやすくなる)。
【0082】
また、本実施形態では、上述のようにゲル状物質42がフィルム袋体41に充填された緩衝部材40を、持手部20の厚み方向(Z方向)に貼り付けるだけで、ゲル状物質42を含む緩衝部材40を持手部20に設けることができる。そのため、本実施形態では、持手部20にゲル状物質42を含む緩衝部材40を簡単に設けることができる。
【0083】
なお、持手部20は、指掛部30の上方に向かって切れやすい傾向があるが、本実施形態では、上述のように指掛部30が持手部20の下端21寄りに形成されていることで、持手部20の余白(持手部20が形成されていない部分)が指掛部30の上方に十分に(または広い範囲で)存在するため、指掛部30から持手部20の上端22に向かって持手部20が破断するのを食い止めることができる。
【0084】
また、本実施形態では、上述のように、指掛部30および緩衝部材40が、シール部50(上端シール51の一部、下端シール52の一部、側端シール53、54)に囲まれている。そして、中間シール55が、緩衝部材40の上方に形成され、持手部20の上端22(または上端シール51)と緩衝部材40との間に設けられている。これにより、指掛部30および緩衝部材40は、側端シール53、54の一部と中間シール55に囲まれたものとなる。
【0085】
このようなシール部50は、持手部を補強する補強部となり得るため、持手部20に形成された指掛部30は、上方に緩衝部材40が設けられた状態で、このようなシール部50(補強部)で囲まれた構成となる。これにより、本実施形態では、指掛部30を起点に持手部20が破断するのを、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25内で確実に食い止めることができる。
【0086】
図10は、本実施形態(第2実施形態)に係る包装袋100の持手部20を示す。本実施形態では、指掛部30は、長手方向(X方向)に沿って延びるスリットSで形成され、指掛部30の中央部31が、持手部20の高さ方向(Y方向)の下方に湾曲している。具体的には、
図10に示すように、指掛部30の中央部31が、持手部20の下端21側に向かって凸状に曲がっている。
【0087】
なお、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が指掛部30の上方に形成されている(
図3参照)。
【0088】
本実施形態では、さらに、指掛部30が、指掛部30の中央部31と指掛部30の両端部32、33との間にそれぞれ変曲点C1、C2を有する。そして、指掛部30は、両端部32、33の各先端D1、D2が各変曲点C1、C2の下方に位置するように、両端部32、33が湾曲している。
【0089】
具体的には、指掛部30の各端部32、33が、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25から持手部20の各端部23、24に向かって凸状に曲がりながら、指掛部30の中央部31と連続して各変曲点C1、C2から各先端D1、D2に延びている。なお、変曲点C1、C2は、スリットSで形成された指掛部30の中央部31と2つの端部32、33との間に位置し、指掛部30の曲がる方向が変わる点(屈曲点)を示す。
【0090】
本実施形態では、このように湾曲するスリットSで指掛部30が形成することにより、指掛部30に入れる手指等Pの形に合わせて指掛部30を構成することができる。そのため、スリットSを介して持手部20の厚み方向(Z方向)に手指等Pを入れるだけで、持手部20に手指等Pを簡単に掛けることができる。
【0091】
また、本実施形態では、上述のように、指掛部30の両端部32、33が指掛部30の各変曲点C1、C2の下方に指掛部30の両端部32、33の各先端D1、D2が位置するように湾曲する。これにより、手指等Pを指掛部30に入れて持手部20を掴んだときに、持手部20に繋がった状態で折れ曲がる持手部20の一部(折れ曲り部)は、指掛部30の下方に折れ曲がることができる。すなわち、持手部20の一部(折れ曲り部)が指掛部30の上方に捲れ上がるのを防ぐことができる。
【0092】
このような構成により、指掛部30に手指等Pを入れて持手部20を掴んだときに、持手部20の一部(折れ曲り部)が手指等Pと持手部20の緩衝部材40との間に挟まることを防ぐことができる。これにより、本実施形態では、スリットSで形成された指掛部30の中央部31が持手部20の高さ方向(Y方向)の下方に湾曲する場合でも、持手部20を掴んだときに、手指等Pに持手部20の緩衝部材40が確実に当たるように、指掛部30を構成することができる。
【0093】
なお、持手部20に繋がった状態で下方に折れ曲がった持手部20の一部(折れ曲り部)は、指掛部30に手指等Pを入れて持手部20を掴んだ(または握った)ときに、手指等Pに対して面状に当たりやすい(線状に当たりにくい)。本実施形態では、このような観点からも、手指等が痛くなるのを抑制することができる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の試験により行った。
【0095】
[指掛け試験]
包装袋100について、指掛け試験を行った。指掛け試験では、包装袋100の本体部10に、12個のロール状のトイレットペーパーT(大王製紙株式会社製の「エリエール トイレットティシュー 60mシングル(147g/ロール)」)を収容し、持手部20の指掛部30に、ユーザーが手指等Pを掛けて、包装袋100の持手部20を持った。このときの包装袋100の持ちやすさを評価した。持ちやすさの評価は、以下の基準で行った。
◎:持手部への指掛けが容易で、持手部を安定した状態で持つことができた
〇:持手部を安定した状態で持つことができた
×:持手部を安定した状態で持つことができなかった
【0096】
[振り子試験]
包装袋100について、振り子試験を行った。振り子試験では、指掛け試験と同様に、包装袋100にトイレットペーパー(被包装体T)を収容し、持手部20の指掛部30に、ユーザーが手指等Pを掛けて持手部20を持ち、さらに包装袋100を180°の範囲で振り子のように10往復移動させた。このとき、包装袋100の耐久性を評価した。なお、振り子試験は、各実施例及び比較例につき5回行った。耐久性の評価は、以下の基準で行った。
◎:5回中1回も破損が確認できなかった
○:5回中1回以上持手部の一部が破断したが指掛部は破断(または断裂)しなかった
×:5回中1回以上破損を確認した
【0097】
[変形試験]
包装袋100について、持手部20の変形試験を行った。変形試験では、包装袋100の持手部20を手指等Pで約10秒間掴み(握り)、手指等Pを放した直後と、手指等Pを放してから約1時間静置した後の、持手部20の変形の有無から、持手部の変形性を評価した。変形性の評価は、以下の基準で行った。
◎:手指等Pを放した直後から約1時間後まで、手指等Pの形に変形した状態で維持された
〇:手指等Pを放した直後は手指等Pの形に変形していたが、約1時間後は元の状態に戻っていた
×:手指等Pを放した直後から手指等Pの形に変形しなかった
【0098】
以下、実施例及び比較例について、説明する。
【0099】
[実施例1]
厚み約25μmのポリエチレンのフィルムから、製袋機を用いて、包装袋100を作製した。包装袋100では、持手部20を本体部10の上部11に形成した(
図1参照)。持手部20の寸法は、持手部20の長手方向(X方向)の寸法を約200mmとし、高さ方向(Y方向)の寸法を約50mmとした。持手部20には、シール部50(シール51~55)を設け、シール52、53間の距離を約100mmとし、シール51、55間の距離を約7mmとした。また、シール51~54で囲まれた部分(持手部20の長手方向(X方向)の中央部25)に、持手部20の長手方向(X方向)に直線状に延びる指掛部30(スリットS)と緩衝部材40を形成した(
図10参照)。指掛部30は、中央部31を持手部20の高さ方向(Y方向)の下方に湾曲させ、両端部32、33の各先端E1、E2が各変曲点B1、B2の下方に位置するように両端部32、33を湾曲させた。指掛部30の寸法は、持手部20の長手方向(X方向)の長さを約80mm、高さ方向(Y方向)の幅を約10mmとした。緩衝部材40は、指掛部30の上方(持手部20の高さ方向(Y方向)の中央部26)に形成した(
図10参照)。また、緩衝部材40は、貼代41Aが設けられたフィルム袋体41にゲル状物質42を約10g充填して、フィルム袋体41の貼代41Aを、シール部50の一部(側端シール53、54の一部と中間シール55)で持手部20に融着した(
図4~
図6参照)。なお、ゲル状物質42には、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬株式会社製、常温の粘度が約1600mPa・S)の約5%水溶液(熱溶解性を有するゲル状物質)を用いた。また、持手部20の中央部25(シール51~54で囲まれた部分)には、補強フィルムとして厚み寸法が90μmのポリエチレンフィルム(図示せず)をシール51~55で接着した。作製した包装袋100について、指掛け試験、振り子試験、変形試験を行い、評価した。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例2]
ゲル状物質42として、カルボキシメチルセルロースナトリウムに代えてセルロース繊維(大王製紙株式会社製、セルロースナノファイバー、平均繊維径(幅)が30~50nm)の約3%水溶液(チキソ性を有するゲル状物質)を用いた以外は、実施例1と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例3]
セルロース繊維の水溶液濃度を約2%にした水溶液(チキソ性を有するゲル状物質)を用いた以外は、実施例2と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例4]
ゲル状物質42として、カルボキシメチルセルロースナトリウムに代えてマヨネーズ(キューピー株式会社製、チキソ性を有するゲル状物質)を用いた以外は、実施例1と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0103】
[実施例5]
ゲル状物質42として、カルボキシメチルセルロースナトリウムに代えてヒアルロン酸ゲル(ミヨシ油脂株式会社製のヒアルロン酸ナトリウムと硝酸の混合物)の約1%水溶液(チキソ性を有するゲル状物質)を用いた以外は、実施例1と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0104】
[比較例1]
図11に示すように、楕円状の指掛部70を設け、楕円の周囲のうち下端の一部を残すように指掛部70を配置し(指掛部70の中央部71を持手部20の上端22側に配置し、両端部72、73を持手部20の下端21側に配置し)、指掛部70の寸法を、持手部20の長手方向(X方向)約80mm、Y方向に約20mmとした以外は、実施例1と同様に包装袋100を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0105】
[比較例2]
図12に示すように、楕円状の2つのスリット(指掛部80と指掛部90)を設け、指掛部80と指掛部90を楕円形状が略左右対称になるように持手部20の長手方向(X方向)に並べて配置し(指掛部80の中央部81及び指掛部90の中央部91を持手部20の下端21側に配置し、指掛部80の両端部82、83及び指掛部90の両端部92、93を持手部20の上端22側に配置し)、指掛部80、90の寸法を、持手部20の長手方向(X方向)に約30mmの長径をもち、持手部20の高さ方向(Y方向)に約15mmの短径をもち、X方向における指掛部80と指掛部90との間の距離を最短で約20mmとした以外は、実施例1と同様に包装袋100を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0106】
[参考例1]
カルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液濃度を約1%にした水溶液(ゲル状でない液体)を用いた以外は、実施例1と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0107】
[参考例2]
カルボキシメチルセルロースナトリウムの約5%水溶液(ゲル状物質)の代わりにグリセリン(阪本薬品工業株式会社製)の約85%水溶液(ゲル状でない液体)を用いた以外は、実施例1と同様に作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
表1より、包装袋100の持手部20において、指掛部30の上方にゲル状物質42を含む緩衝部材40が形成された構成では、指掛け試験、振り子試験、変形試験の結果がいずれも○または◎となった(実施例1~5)。
【0110】
また、緩衝部材40に含まれるゲル状物質42としてチキソ性を有するセルロース繊維を用いた構成では、変形試験の結果が向上した(実施例2~5)。
【0111】
また、ゲル状物質42として、セルロースナノファイバーを用いた場合は、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはマヨネーズを用いた場合に比べて、チキソ性のせん断力がかかった際にゲル状から流動性が生じた後のゲル状への復元が早い傾向があった(実施例2~5)。
【0112】
さらに、ゲル状物質42として用いるセルロースナノファイバーの水溶液の濃度を約3%とした場合は、同濃度を約2%とした場合に比べて、粘度が高くなり、加工性が向上した(実施例2~5)。
【0113】
これに対して、楕円状の指掛部70が1つ設けられた構成では、振り子試験、変形試験の結果が×となった(比較例1)。また、楕円状の指掛部80、90が持手部20の長手方向(X方向)に並ぶ構成では、指掛け試験、変形試験の結果が×となった(比較例2)。また、緩衝部材40にゲル状でない液体が含まれる構成では、変形試験の結果が×となった(参考例1、2)。
【0114】
これらの結果から、持手部20の長手方向(X方向)の中央部25に形成された指掛部30の少なくとも上方に、ゲル状物質42を含む緩衝部材40が形成された包装袋100は、持ちやすく、破損しにくいものであることが判った。また、緩衝部材40に含まれるゲル状物質42がチキソトロピー性を有する場合、より持ちやすく、破損しにくいものであることが判った。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
100 包装袋
T 被包装体(トイレットペーパー)
10 本体部
11 上部
20 持手部
20A 一方の面
20B 他方の面
21 下端
22 上端
23 端部
24 端部
25 長手方向の中央部
26 高さ方向の中央部
30 指掛部
S スリット
31 中央部
32 端部
33 端部
C1 変曲点
C2 変曲点
D1 先端
D2 先端
40 緩衝部材
41 フィルム袋体
41A 貼代
42 ゲル状物質
50 シール部
51 上端シール
52 下端シール
53 側端シール
54 側端シール
P 手指等