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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/32 20190101AFI20221017BHJP
   G07D 11/36 20190101ALI20221017BHJP
   G07D 11/235 20190101ALI20221017BHJP
   G07D 11/14 20190101ALI20221017BHJP
【FI】
G07D11/32
G07D11/36
G07D11/235
G07D11/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018187364
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020057199
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石谷 常彦
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191331(JP,A)
【文献】特開平05-182044(JP,A)
【文献】特開2015-191332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客との間で紙幣の受け渡しを行う入出金口部と、
前記入出金口部から抜き取られなかった紙幣を回収する取り忘れ回収部と、
取引時に搬送された紙幣の紙幣情報を取引ごとにジャーナル部に記録する紙幣処理部であって、所定の取引における取り忘れ回収時に紙幣情報が確定しなかった紙幣の紙幣情報を、該所定の取引における回収以前の処理で金種が確定した紙幣の紙幣情報で代替する前記紙幣処理部と、
を備えることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記入出金口部の紙幣が顧客によりアクセスされたか否かを検知する検知部を備え、
前記紙幣処理部は、前記検知部が前記アクセスされたか否かを前記ジャーナル部に記録し、前記ジャーナル部に前記アクセスされていない旨が記録されている紙幣について、前記代替を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記代替した紙幣情報をレシートに印刷し、または表示装置に表示する出力部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記代替した紙幣情報を、搬送時とは逆の順番で出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の自動取引装置。
【請求項5】
取り忘れ紙幣の回収先となる前記取り忘れ回収部が空であるか否かを検知する取り忘れ検知部を備え、
前記紙幣処理部は、前記取り忘れ回収部が空である場合、一取引内で次に続く取り忘れ回収がないと判断し、前記出力部による出力処理を終了させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記紙幣処理部は、紙幣の金種や記番号を含む前記紙幣情報を、取引ごとに前記ジャーナル部に記録する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automatic Teller Machine)などの自動取引装置は、金融機関やコンビニエンスストアなどに設定され、顧客の操作により現金の出金や入金などの取引が行われている。出金された紙幣や入金返却された紙幣を顧客が取り忘れた場合、自動取引装置は装置内部に取り忘れられた紙幣を回収する。例えば、特許文献1においては、異なる顧客により複数の取引が行われ、複数の取り忘れ回収が発生した場合に、電子ジャーナルに取り忘れ回収も含めた各取引での各紙幣の記番号を記録することにより、各々の取り忘れ回収で回収した紙幣を特定できる技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2においては、取り忘れ回収で金種が判別できなかった紙幣に対しては、電子ジャーナルに金種不明として「UNKNOWN」、記番号で読み取れなかった桁には「?」を記録する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-10799号公報
【文献】特開2015-191332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術においては、取り忘れ回収時の紙幣の記番号を電子ジャーナルに記録することにより、各取り忘れ回収の取引での紙幣を特定できるようになる。しかし、例えば1回目の取り忘れ回収の最後と2回目の取り忘れ回収の最初に重送が発生すると、重送において1枚なのか2枚なのか枚数も不明となるため、1回目の取り忘れ回収と2回目の取り忘れ回収の境界がどの紙幣とどの紙幣の間なのかが不明瞭となってしまうと言う課題があった。
【0006】
また特許文献2においては、金種不明となった紙幣があると、係員が取り忘れ回収部に回収された紙幣を取引毎に分類しようとした際に、情報不足となり明瞭に分類できないケースも出てくるため、出来るだけ金種不明とはならないようにすることが望まれている。
【0007】
本発明は、取り忘れにより集積した紙幣枚数が不明瞭な場合でも、集積した紙幣の金種や記番号などを確定することが可能な自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる自動取引装置は、顧客との間で紙幣の受け渡しを行う入出金口部と、前記入出金口部から抜き取られなかった紙幣を回収する取り忘れ回収部と、取引時に搬送された紙幣の紙幣情報を取引ごとにジャーナル部に記録する紙幣処理部であって、取引時に紙幣情報が確定しなかった紙幣の紙幣情報を、前記取り忘れ回収部による回収以前の処理で金種が確定した紙幣の紙幣情報で代替する前記紙幣処理部と、を備えることを特徴とする自動取引装置として構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取り忘れにより集積した紙幣枚数が不明瞭な場合でも、集積した紙幣の金種や記番号などを確定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動取引装置の外観図
図2】自動取引装置の機能ブロック図
図3】紙幣処理部の機能ブロック図
図4】紙幣の外観図
図5】入金取引のフローチャート
図6】入金計数のフローチャート
図7】入金収納のフローチャート
図8】取り忘れ回収のフローチャート
図9】出金取引のフローチャート
図10】電子ジャーナルの記憶データの例
図11】レシートの印字のフローチャート
図12】レシートの印字例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0012】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0013】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0014】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
【0016】
図1は、本実施例における自動取引装置10の外観図である。自動取引装置10は、金融機関やコンビニエンスストアなどに設定され、顧客の操作により現金の出金や入金などの取引が行われる装置である。自動取引装置10において、ディスプレイ15は、顧客や係員に対して取引に関する情報を含む各種情報を表示する表示装置である。また、タッチパネル16は、顧客や係員が取引や操作を指示する入力装置である。ここではディスプレイ15とタッチパネル16は一体化されている。紙幣の入出金口14は、紙幣を用いた取引を行うための紙幣処理装置が紙幣を入出金するための開口部であり、紙幣を入金したり出金したりする。硬貨の入出金口13は、硬貨を用いた取引を行うための硬貨処理装置が硬貨を入出金するための開口部であり、硬貨を入金したり出金したりする。カード出入口兼レシート出口12は、取引に使用するカードの挿入や排出を行うための出入口であり、また取引に関するレシートを排出するための出口でもある。通帳出入口11は、通帳の出入口である。
【0017】
図2は、自動取引装置10の機能ブロック図である。主制御部20は、CPU(Central Processing Unit)・揮発性メモリ・不揮発性メモリなどで構成されており、不揮発性メモリに格納されているプログラムがCPUにより処理され、自動取引装置10全体の制御が行われる。随時生成される各種情報が揮発性メモリに格納される。
【0018】
接客部(入力表示部)23は、ディスプレイ15やタッチパネル16などで構成され、顧客や係員に情報を表示して提示し、操作指示を受け付ける。紙幣処理部21は、紙幣の入出金口14を有した紙幣処理装置から構成され、紙幣の入金や出金のための処理を行う。紙幣処理部21の詳細な構成は後で図3により説明する。硬貨処理部22は、硬貨の入出金口13を有した硬貨処理装置から構成され、硬貨の入金や出金のための処理を行う。電子ジャーナル25は、取引内容の詳細を記録しておく記憶媒体である。カード処理部27は、カード出入口兼レシート出口12からカードを取り込んで、カードの磁気ストライプをリードライトする装置により構成される。レシート処理部(印刷部)26は、レシートに必要な情報を印字する装置により構成され、顧客や係員などにカード出入口兼レシート出口12から排出する。通帳処理部24は、通帳を取り込んで、取引内容を印字する装置により構成され、通帳出入口11から排出する。
【0019】
図3は、紙幣処理装置10の機能ブロック図である。紙幣処理装置21の入出金口14は、顧客から投入された紙幣を受け取り、または装置から繰り出された紙幣を受け取る。入出金口14には、図示されていないシャッタが含まれ、主制御部20からの指示にしたがってシャッタが開閉することにより、顧客が入出金口14にアクセスするタイミングを必要な時だけに制限している。また、センサ38により顧客が入出金口14に手を入れているか否かを検知している。
【0020】
紙幣識別部31は、搬送されてきた紙幣の搬送状態を確認し、金種を判別し、記番号を認識し、真偽や正損を判別する。一時保留部32では、入金取引で顧客が投入し、紙幣識別部31が受付けた紙幣を一時的に保留する。紙幣識別部31が受け付けなかった紙幣は返却保留部33に集積される。スタッカ35A、35B、35C、35Dは、紙幣識別部31が受付けた紙幣を収納している。各々のスタッカごとに収納する金種が決められている。リジェクト回収部36は、一時保留部32からの繰出しで紙幣識別部31が受付けなかった紙幣や、スタッカ35A、35B、35C、35Dからの繰出しで紙幣識別部31が受付けなかった紙幣などを収納している。
【0021】
カセット37は、スタッカ35A、35B、35C、35Dに補充する紙幣や、スタッカ35A、35B、35C、35Dから回収した紙幣を収納している。スタッカ35A、35B、35C、35Dから入出金口14に出金された紙幣は、所定時間経っても抜き取られなかった場合は、入出金口14から取り忘れ回収部34に搬送される。また、取り忘れ紙幣の回収先となる取り忘れ回収部34にはセンサ39が付設させており、センサ39により取り忘れ回収部34に紙幣が集積されているのか空なのか検知する。
【0022】
上記各々の部位は図示されていない搬送路で接続されており、返却保留部33以外の部位に関しては、搬送路を通して1枚ずつ紙幣は搬送される。紙幣識別部31が受け付けないケースには、複数枚の紙幣が重なって繰出されたり、斜め向きに繰出されたなどの繰出し異常や搬送異常を理由とする場合や、金種が確定できなかった場合や、真券ではないと判断したり、損券と判断したりした場合などを含む。
【0023】
図4は、紙幣の外観図である。紙幣40の表面の左上に記番号41が印刷されている。金種によっては記番号が複数の領域に印刷されている場合もある。また金種によっては横書きではなく、縦書きの場合もある。記番号41は英数字の組み合わせだが、英数字以外の文字を使っても良い。
【0024】
図5は、入金取引が選択された時のフローチャートである。顧客により紙幣が入出金口14に投入される(S100)。次に入金計数(S101)に進むが、その詳細を図6のフローチャートで説明する。
【0025】
図6において、入出金口14から紙幣が1枚ずつ繰出され、紙幣識別部31により識別され、金種を判定し、記番号が読み取られる(S200)。紙幣識別部31は、識別結果において真券か否か判定する(S201)。紙幣識別部31が、識別結果が真券であると判定した場合(S201;YES)は、紙幣は一時保留部32に搬送される(S202)。一方、紙幣識別部31が、識別結果が真券でない(または搬送不良など金種が確定できなかった)と判定した場合(S201;NO)は、紙幣は返却保留部33に搬送される(S203)。
【0026】
紙幣処理部21は、入出金口14の紙幣の繰出しが全て完了したか否かを判定し(S204)、全て完了していないと判定した場合(S204;NO)は元に戻り、入出金口14の次の紙幣を繰出す(S200)。一方、紙幣処理部21は、繰り出しが全て完了したと判定した場合(S204;YES)は、一時保留部32に搬送された紙幣の紙幣情報と返却保留部33に搬送された紙幣の紙幣情報を、搬送先と取引IDと日時情報と共に電子ジャーナル25に記録する(S205)。紙幣情報は、搬送された紙幣の特徴を示す情報であり、金種や記番号などの情報が含まれ、識別した順番で記録される。
【0027】
図5に戻って説明を続ける。紙幣処理部21は、返却保留部33に紙幣を搬送したか否かを判定し(S102)、返却保留部33に紙幣を搬送していなかったと判定した場合(S102;NO)は、入金取引が取り消されたか否かを確認する(S106)。紙幣処理部21は、(S102)で返却保留部33に紙幣を搬送したと判定した場合(S102;YES)、返却保留部33に集積されている紙幣を全て入出金口14に搬送し、電子ジャーナル25に取引IDと日時情報と搬送先と紙幣情報を記録する(S103)。
【0028】
その後、紙幣処理部21は、顧客が紙幣を抜き取るのを所定時間待つが、抜き取りタイムアウトになったか否かを確認する(S104)。紙幣処理部21が、所定時間内に抜き取られたと判定した場合(S104;NO)は、(S106)に進む。紙幣処理部21は、抜き取られずタイムアウトしたと判定した場合(S104;YES)は、センサ38により抜き取り待ち時に顧客の手などが入出金口14の中にアクセスしたか否かを記憶した上で、取り忘れ回収を行う(S105)。その詳細を図8のフローチャートで説明する。
【0029】
図8において、紙幣処理部21は、取り忘れ回収部34が空か否かをセンサ39で確認し記憶しておく(S400)。紙幣処理部21は、入出金口14から紙幣を1枚ずつ繰出し、紙幣識別部31が紙幣を識別し、金種を判定し、記番号を読み取る(S401)。紙幣処理部21は、紙幣を取り忘れ回収部34に搬送する(S402)。紙幣処理部21は、入出金口14の全ての紙幣の繰出しが完了したか否かを判定し(S403)、完了していない場合(S403;NO)は、次の紙幣の処理を行う(S401)。紙幣処理部21は、繰出しを完了していると判定した場合(S403;YES)は、抜き取り待ち時に入出金口14にアクセスがあったのか否かを電子ジャーナル25に記録する。そして、紙幣処理部21は、取り忘れ回収開始時に取り忘れ回収部34が空だった場合はその旨も電子ジャーナル25に記録する。また、紙幣処理部21は、取り忘れ回収部34に搬送された紙幣の紙幣情報を搬送先と取引IDと日時情報と共に電子ジャーナル25に記録する(S404)。紙幣情報は、図6の場合のように、識別した順番で記録される。
【0030】
図5に戻って説明を続ける。主制御部20は、紙幣処理部21による入金計数での識別結果及びこの入金取引を取り消すのか否かの問合せをディスプレイ15に表示し、タッチパネル16により顧客の指示を受け付ける(S106)。主制御部20が、顧客の指示が取引取消ではないと判定した場合(S106;NO)は、紙幣処理部21は入金収納を行い(S107)、終了する。この入金収納の詳細は後ほど説明する。
【0031】
一方、主制御部20が、顧客の指示が取引取消であると判定した場合(S106;YES)は、紙幣処理部21は一時保留部32の全ての紙幣を1枚ずつ繰出し、識別し、入出金口14に搬送する。そして、紙幣処理部21は、電子ジャーナル25に取引IDと日時情報と搬送先と識別結果(紙幣情報)を記録する(S108)。紙幣処理部21は、顧客が紙幣を抜き取るのを所定時間待つが、抜き取りタイムアウトになったか否か確認する(S109)。紙幣処理部21は、所定時間内に抜き取られたと判定した場合(S109;NO)は、終了する。一方、紙幣処理部21は、紙幣が抜き取られずタイムアウトしたと判定した場合(S109;YES)は、センサ38により抜き取り待ち時に顧客の手などが入出金口14の中にアクセスしたか否かを電子ジャーナル25に記録した上で、取り忘れ回収を行う(S110)。その詳細については、図8のフローチャートで説明済みである。
【0032】
図7のフローチャートで入金収納の詳細を説明する。紙幣処理部21は、一時保留部32から紙幣が1枚ずつ繰出し、紙幣識別部31が紙幣を識別し、金種を判定し、記番号を読み取る(S300)。紙幣処理部21は、識別結果が真券か否か判定する(S301)。紙幣処理部21は、識別結果が真券であると判定した場合(S301;YES)は、紙幣をスタッカ35に搬送する(S302)。一方、紙幣処理部21は、識別結果が真券でない(または搬送不良など金種が確定できなかった)と判定した場合(S301;NO)は、紙幣をリジェクト回収部36に搬送する(S303)。
【0033】
紙幣処理部21は、一時保留部32の紙幣の繰出しが全て完了したか否かを判定し(S304)、全て完了していないと判定した場合(S304;NO)は元に戻り、一時保留部32の次の紙幣を繰出す(S300)。一方、紙幣処理部21は、紙幣の繰出しが全て完了したと判定した場合(S304;YES)は、スタッカ35に搬送された紙幣の紙幣情報とリジェクト回収部36に搬送された紙幣の紙幣情報を搬送先と取引IDと日時情報と共に電子ジャーナル25に記録する(S305)。紙幣情報は、図6の場合のように、識別した順番で記録される。
【0034】
図9のフローチャートで出金取引を説明する。紙幣処理部21は、スタッカ35から紙幣を1枚ずつ繰出し、紙幣識別部31が紙幣を識別し、金種を判定し、記番号を読み取る(S500)。紙幣処理部21は、識別結果が真券か否かを判定する(S501)。紙幣処理部21は、識別結果が真券であると判定した場合(S501;YES)は、紙幣を入出金口14に搬送する(S502)。一方、紙幣処理部21は、識別結果が真券でない(または搬送不良など金種が確定できなかった)と判定した場合(S501;NO)は、紙幣をリジェクト回収部36に搬送する(S503)。
【0035】
紙幣処理部21は、出金に必要な指定枚数分の紙幣のスタッカ35からの繰出しが全て完了したか否かを判定し(S504)、まだ全ては完了していないと判定した場合(S504;NO)は元に戻り、スタッカ35の次の紙幣を繰出す(S500)。一方、紙幣処理部21は、(S504)において、全て完了したと判定した場合(S504;YES)は、入出金口14に搬送された紙幣の紙幣情報とリジェクト回収部36に搬送された紙幣の紙幣情報を搬送先と取引IDと日時情報と共に電子ジャーナル25に記録する(S505)。紙幣情報は、図6の場合のように、識別した順番で記録される。
【0036】
紙幣処理部21は、顧客が繰り出した紙幣を抜き取るのを所定時間待つが、抜き取りタイムアウトになったか否か確認する(S506)。紙幣処理部21は、所定時間内に抜き取られたと判定した場合(S506;NO)は、終了する。一方、紙幣処理部21は、抜き取られずタイムアウトしたと判定した場合(S506;YES)は、センサ38により抜き取り待ち時に顧客の手などが入出金口14の中にアクセスしたか否かを電子ジャーナル25に記録した上で、取り忘れ回収を行う(S507)がその詳細を図8のフローチャートで説明済みである。
【0037】
図10は、電子ジャーナル25の記録内容の一例である。図では取り忘れ回収に関連する部分だけを抜き書きしている。電子ジャーナル25には、紙幣を搬送する処理の単位で記録されている。この例では、出金取引1001は、出金搬送と出金取り忘れ回数で構成されている。入金取引1002は、入金計数と入金返却と入金返却取り忘れ回収で構成されている。各々の搬送処理では、処理日時と取引IDと搬送処理名と当該搬送処理で搬送先となる搬送先毎に搬送枚数と内訳として金種と記番号が搬送順に記録されている。
また、出金取り忘れ回収および入金返却取り忘れ回収においては、抜き取り待ち時に入出金口14にアクセスがあったのか否かの情報と取り忘れ回収部34が空状態から集積状態に状態移行した時にはその旨も記録されている。
【0038】
図10では、出金搬送において、入出金口14に搬送された紙幣は金種が確定し、真券と判定された紙幣だけである。また入金計数において一時保留部32に搬送された紙幣は金種が確定し、真券と判定された紙幣だけである。金種が確定した紙幣は、一部認識出来なかった桁もありうるが、記番号認識が行われている。例えば、取引IDが37408912で識別される出金取引では、出金搬送時に3枚の紙幣(金種:1万円)が入出金口まで搬送され、出金取り忘れ回収時に取り忘れがあり、取り忘れ回収部に回収されたことを示している。このとき、顧客から入出金口に対するアクセスはなく、取り忘れ回収部は空状態から集積状態に変化したことを示している。さらに、出金取り忘れ回収において、1枚の紙幣(記番号:HR148296A)が取り忘れ回収部まで搬送されたが、残りの他の2枚は重送されたことを示している。重送されたか否かについては、例えば、紙幣識別部31に設けられた厚みセンサにより検知することができる。
【0039】
その後、取引IDが7326518で識別される入金取引では、金種が異なる3枚の紙幣が入金され、入金計数時には返却保留部に搬送された紙幣はなかった(すなわち、正常に識別された)ことを示している。その後、入金取り消し等による入金返却時に、入金取り忘れ回収において、1枚の紙幣が取り忘れ回収部まで搬送されたが、残りの他の2枚は重送されたことを示している。このとき、顧客から入出金口に対するアクセスはなく、重送のほかに不明券があったことを示している。重送されたか否かについては、出金取引時のように、例えば、紙幣識別部31に設けられた厚みセンサにより検知することができる。 図11は、取り忘れ回収部に集積されている紙幣の一覧のレシート印刷のフローチャートである。接客部23が、係員から印刷指示を受けた場合に、このレシート印刷処理が行われる。また、顧客からの要求などにより係員が取り忘れ回収部内の特定の取引で回収された紙幣を取り出したい時などにこの印刷が指示される。取り忘れ回収部34や入出金口14や一時保留部32などの集積部は、搬送された順番に下から上に向かって集積されているものとする。その場合は取り忘れ回収部34に集積されている紙幣は上から順番に目視確認することになるので、印刷する順番は印刷の最初が集積の最上部の紙幣に対応し、印刷の最後が集積の最下部に対応するように印刷すると、係員の確認は行い易くなる。つまりは、レシート処理部26は、最も直近の取り忘れ回収された紙幣から順番に印刷し、取り忘れ回収の中では搬送と逆の順番で印刷することになる。
【0040】
紙幣処理部21は、センサ39により取り忘れ回収部34が空か否かを確認する(S600)。紙幣処理部21が空であると判定した場合(S600;YES)は、レシート処理部26は、空であることをレシートに印刷する(S601)。紙幣処理部21は、空でないと判定した場合(S600;NO)は、その取り忘れ回収において全ての紙幣の金種が確定したのかを確認する(S602)。紙幣処理部21が全ての紙幣の金種が確定していたと判定した場合(S602;YES)は、レシート処理部26は、取り忘れ回収での識別の結果を搬送とは逆の順番で印刷する(S603)。紙幣処理部21は、どれかの紙幣の金種が確定していないと判定した場合(S603;NO)は、電子ジャーナル25を参照し、入出金口14にアクセスがあったか否かを確認する(S604)。入出金口14へのアクセスの有無を確認するのは、アクセスがあった場合は、一部の紙幣が抜き取られたり、入れ替わっていたりする可能性があり、他の搬送での識別結果を代用して使うことが出来なくなるからである。
【0041】
紙幣処理部21は、入出金口14へのアクセスがあったと判定した場合(S604;YES)は、(S603)に進む。一方、紙幣処理部21は、入出金口14へのアクセスがなかったと判定した場合(S604;NO)は、代替可能な識別結果があるのか否かを確認する(S605)。代替可能な識別結果とは、当該取り忘れ回収以前での搬送で全ての紙幣の金種が確定している搬送での識別結果である。すなわち、紙幣処理部21は、同じ取引IDとして電子ジャーナル25に記録された取引において、当該取り忘れ回収以前の処理で全ての紙幣の金種が確定している(例えば、図10の出金搬送では3枚の全ての金種が確定している)場合、その処理で電子ジャーナル25に記録された情報を読み出して、代替可能な識別結果があると判断する。
【0042】
紙幣処理部21は、代替可能な識別結果がなかったと判定した場合(S605;NO)は、(S603)に進む。一方、紙幣処理部21が代替可能な識別結果があったと判定した場合(S605;YES)は、レシート処理部26は、代替可能な識別結果を印刷する(S606)。紙幣処理部21は、一取引内での取り忘れであることを確認するため、当該取り忘れ回収において取り忘れ回収部34が空状態から集積状態に移行した記録があるのかを判定する(S607)。紙幣処理部21は、空状態から集積状態への移行記録がないと判定した場合(S607;NO)は、元に戻り、次の取り忘れ回収の処理を行う(S602)。すなわち、紙幣処理部21は、図8に示した取り忘れ回収において回収先が空でないことが記憶されている場合は、一取引内で次に続く取り忘れ回収があると判断し、S602以降の処理を繰り返す。一方、紙幣処理部21が空状態から集積状態への移行記録があると判定した場合(S607;YES)は、レシート処理部26は、印刷処理を終了する。すなわち、紙幣処理部21は、図8に示した取り忘れ回収において回収先が空であることが記憶されている場合は、一取引内で次に続く取り忘れ回収がないと判断し、レシート処理部26による印刷処理を終了させる。これにより、一取引における取り忘れ回収部34内の紙幣の枚数分だけ、印刷または表示される紙幣情報を含めることができ、取引単位でこれらの情報を出力することができる。
【0043】
図12は、取り忘れ回収部に集積されている紙幣の一覧のレシート印刷の一例である。図10の電子ジャーナルの内容を図11のフローチャートによって処理を行った結果、出力されたものである。図10に示したように、出金取り忘れ回収の最後に重送が発生し、さらには次の入金返却取り忘れ回収の最初にも重送が発生している。重送が発生した場合は、二枚以上の紙幣が搬送されており、枚数は確定できないので、出金取り忘れ回収での識別結果と入金返却取り忘れ回収での識別結果だけではその境界がどこなのかは不明瞭である。したがって、本来は出金取り忘れ回収の紙幣と入金返却取り忘れ回収の紙幣を分離することはできない。
【0044】
しかしながら、この例では出金取り忘れ回収での識別結果は出金搬送での識別結果で代替可能であり、また入金返却取り忘れ回収の識別結果は入金返却または入金計数での識別結果で代替可能であるため、各々の代替された識別結果が印刷されている。例えば、出金取り忘れにおいては、3枚の紙幣のうち、重送された2枚の紙幣(SN749630D、QT352408P)が代替されている。また、例えば、入金取り忘れにおいては、不明券と識別された1枚の紙幣、重送された2枚の紙幣(すなわち、入金された3枚の全ての紙幣)が代替されている。さらに、代替された情報であることを示すため、取り忘れ回収での識別結果(重送や不明券)も追記されている。
【0045】
このように、出金取り忘れ回収の紙幣であっても、入金取り忘れ回収の紙幣であっても、金種と記番号が印刷されているので、これらの回収の境界がどこであるかが判る。また、入金取り忘れ回収で不明券が1枚発生しているが、この紙幣の金種と記番号も代替された情報が印刷されている。したがって、不明券の場合であっても重送の場合と同様に識別結果を代替することができる。
【0046】
例えば、本実施の形態における自動取引装置10では、紙幣に印刷された記番号または固有記号を認識する紙幣識別部を組み込み、出金または入金返却した紙幣を顧客が取り忘れた時に、紙幣を装置内部に取り忘れ回収する場合において、取り忘れ回収時に重送が発生して、取り忘れ回収部に集積した紙幣枚数が不明瞭な場合でも、他の搬送時の識別結果で代用することにより、取り忘れ回収部に集積した紙幣の金種や記番号などを確定することができる。
【0047】
なお、取り忘れ回収部34などの集積部は搬送順に紙幣を下から上の方向へ集積しているが、上から下の方向へ集積する方式であっても良い。その場合は、レシート印刷の順番を変えれば対応できる。また、取り忘れ回収部34内の紙幣の一覧を出力する出力手段の例として、レシート処理部26がレシートに印刷しているが、接客部23がディスプレイ15に表示するようにしても良い。さらに、入金と出金の両方が行えるようにしているが、出金のみを行う自動取引装置であっても良い。
【0048】
また、取り忘れ回収で金種不明券の金種情報を代替した場合は、代替した旨のマークを紙幣情報とともにジャーナル印字してもよい。このようなジャーナル印字により、係員は、紙幣情報だけでなく、代替されたことをひと目で確認することができる。また、取り忘れ回収が発生した場合、入出口14のセンサ38の状態や取り忘れ回収部34のセンサ39の状態を、紙幣情報とともにジャーナル印字してもよい。このようなジャーナル印字により、係員は、紙幣情報だけでなく、装置センサの状態を容易に確認することができる。さらには、取り忘れ回収部34に集積されている紙幣の一覧をまとめてジャーナル印字してもよい。このようなジャーナル印字により、係員は、紙幣情報だけでなく、取り忘れ回収部に回収された紙幣を容易に確認することができる。
【0049】
取り忘れ回収時に金種が確定出来なかった紙幣がある場合、それ以前の全ての紙幣の金種が確定できた搬送処理での識別結果全体で代替しているが、取り忘れ回収時に金種が確定出来なかった紙幣だけを代替対象としても良い。この場合、どの搬送時の識別結果を使うのかに応じて、記番号情報が出力される。
【符号の説明】
【0050】
10・・・・自動取引装置
14・・・・紙幣処理部の入出金口
20・・・・主制御部
21・・・・紙幣処理部
22・・・・硬貨処理部
23・・・・接客部
24・・・・通帳処理部
25・・・・電子ジャーナル
26・・・・レシート処理部
27・・・・カード処理部
31・・・・紙幣識別部
32・・・・一時保留部
33・・・・返却保留部
34・・・・取り忘れ回収部
35・・・・スタッカ
36・・・・リジェクト回収部
37・・・・カセット
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図12