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特許7159010アイラッシュカーラーの評価方法およびその方法に用いられる冶具とアイラッシュカーラー。
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  • 特許-アイラッシュカーラーの評価方法およびその方法に用いられる冶具とアイラッシュカーラー。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】アイラッシュカーラーの評価方法およびその方法に用いられる冶具とアイラッシュカーラー。
(51)【国際特許分類】
   A45D 2/48 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
A45D2/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018209009
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020074845
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 晃
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146858(JP,A)
【文献】特開2016-020879(JP,A)
【文献】特開平06-003234(JP,A)
【文献】特開2013-063919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 2/48
G01N 3/00,3/20
A41G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハンドル部と、該ハンドル部からそれぞれ延長して形成されたアーム部と、一方のアーム部からさらに延長して二股状に分岐形成されたフレーム部を備え、該フレーム部の先端側には左右のフレーム部の間に掛け渡すように挟圧体固定部が設けられ、さらに、該挟圧体固定部に対して接離自在に挟圧体可動部が設けられ、該挟圧体可動部には接続部材が取り付けられ、該接続部材はその先端部において該挟圧体可動部に固着され、その後端部は他方のアーム部に形成された挿通孔に回動自在に貫入され、該一対のハンドル部から延長するアーム部は支軸において回動自在に軸支され、該一対のハンドル部を鋏状に開閉することによりアーム部に連動して挟圧体可動部が挟圧体固定部に対して近接または離間するアイラッシュカーラーを保持するための冶具であって、基台と、該基台上に設けられ、アイラッシュカーラーのハンドル部を上方、挟圧体固定部と挟圧体可動部を下方とした状態で挟圧体固定部を固定するとともに、挟圧体可動部を挟圧体固定部に対し接離可能な状態でアイラッシュカーラーを保持するアイラッシュカーラー保持部と、該基台上に設けられ、睫毛を挟圧体固定部および挟圧体可動部により挟み込むことが可能な位置で保持する睫毛保持部とを備えたアイラッシュカーラー評価用冶具。
【請求項2】
前記アイラッシュカーラー保持部は、基台の上面から垂設された2本の支柱と、該支柱にそれぞれ取り付けられた2つの固定部材と、該固定部材よりそれぞれ水平方向に突出する2本の支持棒と、さらに、基台の上面に設けられた一対の把持部からなり、該支持棒の少なくとも一の頂部にはアイラッシュカーラーの一方のアーム部及び該アーム部より延長するフレーム部の一側面を嵌入可能な溝部が凹設され、該把持部の少なくとも一辺部にはフレーム部の外側の側面を嵌入可能な凹部が凹設され、該2本の支持棒の溝部に一方のアーム部及びフレーム部をそれぞれ嵌め、さらに、該把持部の凹部にフレーム部を嵌めることにより一方のアーム部及びフレーム部を保持し、挟圧体固定部を基台に対して固定した状態でアイラッシュカーラーを保持する請求項1に記載のアイラッシュカーラー評価用冶具。
【請求項3】
前記睫毛保持部は、保持部上部と保持部下部を上下に重ねた状態でネジ部により固定可能に形成され、睫毛を挟む側の端部が一対の把持部の間に位置するように基台上に配設されている請求項2に記載のアイラッシュカーラー評価用冶具。
【請求項4】
一対のハンドル部と、該ハンドル部からそれぞれ延長して形成されたアーム部と、一方のアーム部からさらに延長して二股状に分岐形成されたフレーム部を備え、該フレーム部の先端側には左右のフレーム部の間に掛け渡すように挟圧体固定部が設けられ、さらに、該挟圧体固定部に対して接離自在に挟圧体可動部が設けられ、該挟圧体可動部には接続部材が取り付けられ、該接続部材はその先端部において該挟圧体可動部に固着され、その後端部は他方のアーム部に形成された挿通孔に回動自在に貫入され、該一対のハンドル部から延長するアーム部は支軸において回動自在に軸支され、該一対のハンドル部を鋏状に開閉することによりアーム部に連動して挟圧体可動部が挟圧体固定部に対して近接または離間するアイラッシュカーラーであって、該挟圧体可動部の弾性部材に該挟圧体固定部の先端部を食い込ませるように荷重をかける際の該ハンドル部の握り込み距離の計測手段を備え、該計測手段は、一方のハンドル部に固定された目盛り部と、該目盛り部に対してその長尺方向にスライド移動可能に取り付けられたスライド部と、該スライド部の下部から他方のアーム部方向へ突出し、その先端部が該アーム部の側面部に当接するように設けられたバーを備えたアイラッシュカーラー。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のアイラッシュカーラー評価用冶具により請求項1に記載のアイラッシュカーラーを保持し、前記睫毛保持部により睫毛を保持し、アイラッシュカーラーのアーム部と接続部材の連結部分を押圧手段により所定の荷重で押し下げ、睫毛に生じる角度を測定することでカール力を評価するアイラッシュカーラー評価方法。
【請求項6】
請求項4に記載のアイラッシュカーラーにより使用時のハンドルの握り込み距離を測定し、アイラッシュカーラーの使用時に睫毛にかかる荷重を定量化する方法。
【請求項7】
請求項4に記載のアイラッシュカーラーにより使用時のハンドルの握り込み距離を測定し、アイラッシュカーラーの使用時に睫毛にかかる荷重を定量化し、押圧手段によりアイラッシュカーラーのアーム部と接続部材の連結部分に対してかける荷重を決定することを特徴とする請求項に記載のアイラッシュカーラー評価方法。
【請求項8】
前記押圧手段が、昇降可能なスピンドルを備えたテクスチャーアナライザーである請求項またはに記載のアイラッシュカーラー評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイラッシュカーラーの機能性、特にそのカール力の評価方法と、アイラッシュカーラーの使用時に睫毛にかかる荷重を定量化する方法、さらにそれらの評価方法に用いる冶具及びアイラッシュカーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡単な器具による睫毛の長さや湾曲度等の測定方法や、マスカラの使用性評価方法については提案されているが(特許文献1、2)、睫毛をカールさせるために使用するアイラッシュカーラーの機能、特にそのカール力については、客観手的に評価する方法は確立されておらず、主に「睫毛のカールしやすさ」、「睫毛のセパレートしやすさ」、「使いやすさ」などの官能評価に依存していた。
【0003】
特に、アイラッシュカーラーの構造上、ハンドル部の動きは曲線状であるため、既存の機器による定量的な測定は困難であった。
【0004】
そこで、アイラッシュカーラーの機能性について、簡易な器具により睫毛にかかる荷重を定量的に測定し、カール力等を客観的に評価する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-45230
【文献】特開2002-199932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、アイラッシュカーラーの機能性について定量的に評価することができるアイラッシュカーラーの評価方法とその方法に用いられる冶具とアイラッシュカーラーの提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、挟圧体固定部と挟圧体可動部により上下から睫毛を挟み込んで荷重をかける機構を有するアイラッシュカーラーを保持するための冶具であって、基台と、該基台上に設けられ、アイラッシュカーラーを倒立させた状態で挟圧体固定部を固定するとともに、挟圧体可動部を挟圧体固定部に対し接離可能な状態でアイラッシュカーラーを保持するアイラッシュカーラー保持部と、該基台上に設けられ、睫毛を挟圧体固定部および挟圧体可動部により挟み込むことが可能な位置で保持する睫毛保持部とを備えたアイラッシュカーラー評価用冶具である。
【0008】
また本発明は、ハンドル部の開閉操作に伴い変動する任意の2点間の距離の計測手段を備えたアイラッシュカーラーである。
【0009】
また本発明は、前記アイラッシュカーラー評価用冶具によりアイラッシュカーラーを保持し、前記睫毛保持部により睫毛を保持し、アイラッシュカーラーのアーム部と接続部材の連結部分を押圧手段により所定の荷重で押し下げ、睫毛に生じる角度を測定することでカール力を評価するアイラッシュカーラー評価方法である。
【0010】
また本発明は、前記アイラッシュカーラーにより使用時のハンドルの握り込み距離を測定し、アイラッシュカーラーの使用時に睫毛にかかる荷重を定量化する方法である。
【0011】
さらに本発明は、前記アイラッシュカーラーにより使用時のハンドルの握り込み距離を測定し、アイラッシュカーラーの使用時に睫毛にかかる荷重を定量化し、押圧手段によりアイラッシュカーラーのアーム部と接続部材の連結部分に対してかける荷重を決定することを特徴とするアイラッシュカーラー評価方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるアイラッシュカーラー評価用冶具は、アイラッシュカーラーを開閉操作可能な状態で保持することができ、押圧手段によりアイラッシュカーラーのアーム部と接続部材の連結部分を押し下げることにより睫毛をカールさせる際と同様の荷重をかけることができるため、機械的に使用時の荷重を再現することができる。
【0013】
また、本発明にかかる計測手段を備えたアイラッシュカーラーは、ハンドル部の開閉操作に伴い変動する任意の2点間の距離を計測することができるため、使用時のハンドル部の握り込みの距離を測定することができる。
【0014】
また、本発明にかかるアイラッシュカーラー評価方法は、睫毛にかかる荷重を定量的に測定し、カール力等を客観的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の評価方法の対象となるアイラッシュカーラーの斜視図。
図2】本発明の冶具にアイラッシュカーラーをセットした状態の斜視図。
図3】本発明の冶具の正面図。
図4】本発明の冶具の側面図。
図5】本発明の冶具の平面図。
図6】(a)本発明の冶具にアイラッシュカーラーをセットし、押圧手段のスピンドルを降下させる前の状態の図。(b)発明の冶具にアイラッシュカーラーをセットし、押圧手段のスピンドルを降下させた状態の図。
図7】計測手段を備えた本発明のアイラッシュカーラーの側面図。
図8】本発明の評価方法によるアイラッシュカーラーのカール力の測定結果のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のアイラッシュカーラーの評価方法に用いる冶具およびアイラッシュカーラーの実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0017】
図1は、本発明のアイラッシュカーラーの評価方法の対象となるアイラッシュカーラーである。図に示すように、アイラッシュカーラー6は、使用時に親指と人差し指をそれぞれ挿入可能な一対のハンドル部61a、61bと、該ハンドル部61a、61bからそれぞれ延長して形成されたアーム部62a、62bと、アーム部62aからさらに延長して二股状に分岐形成されたフレーム部63を備える。該フレーム部63の先端側には左右のフレーム部63の間に掛け渡すように挟圧体固定部651が設けられ、さらに、該挟圧体固定部651に対して接離自在に挟圧体可動部652が設けられている。そして、該挟圧体可動部652には接続部材64が取り付けられている。該接続部材64はその先端部において該挟圧体可動部652に固着され、その後端部はアーム部62bに形成された挿通孔67に回動自在に貫入されている。
【0018】
アーム部62aとアーム部62bは支軸66において回動自在に軸支されている。そして、ハンドル部61a、61bを鋏状に開閉することによりアーム部62bの挿通孔67側が支軸66を支点に回動し、それに連動して接続部材64が上下動し、さらに、この接続部材64の動きに連動して挟圧体可動部652が挟圧体固定部651に対して近接または離間する。
【0019】
挟圧体可動部652は、その上辺部に弾性部材653が設けられており、かかる弾性部材653と挟圧体固定部651の下辺部により睫毛を挟み込み、一定の荷重を加えることにより、睫毛をカールさせることができる。
【0020】
なお、本発明のアイラッシュカーラーのカール力評価方法の対象となるアイラッシュカーラーの構成はこれに限定されず、特に、挟圧体固定部651や挟圧体可動部652、弾性部材653は種々の形状を取りうるが、少なくとも、アーム部62bと接続部材64の連結部が、本実施態様のように側面視で外側(使用者の顔側)へ突出して屈曲している構成を有するものであればよい。
【0021】
次に、図2ないし図5により、本発明のアイラッシュカーラーの評価方法に用いられる冶具1の構成について説明する。各図に示すように、冶具1は、基台2と、基台2上に設けられたアイラッシュカーラー保持部3及び睫毛保持部4を備える。
【0022】
本実施態様の基台2は略矩形の板状に形成されているが、形状はこれに限定されず、その上面にアイラッシュカーラー保持部3及び睫毛保持部4を設けることができればよい。アイラッシュカーラー保持部3は、基台2の上面から垂設された2本の支柱31a、31bと、該支柱31a、31bにそれぞれ取り付けられた2つの固定部材32a、32b、該固定部材32a、32bからそれぞれ水平方向に突出する2本の支持棒33a、33b、さらに、基台2の上面に設けられた一対の把持部34a、34bからなる。
【0023】
2本の支柱31a、31bは所定の間隔を空けて基台2より垂設されている。固定部材32a、32bは、いずれも平面視において略矩形に形成され、その中心から一方の端部に偏心した部分に縦孔が貫穿され、かかる縦孔に支柱31a、31bを挿通し、ネジ等の固定手段により固定される。固定部材32a、32bは、支柱31a、31bに対してそれぞれ異なる高さに取り付けられており、具体的には、固定部材32aは固定部材32bよりも高い位置において支柱31aに取り付けられている。さらに、固定部材32a、32bは、縦孔が形成されていない方の端部を、隣の支柱31b、31a側へと向けるようにそれぞれ取り付けられるため、図4の側面図に示すように、固定部材32aと固定部材32bは、支柱31a、31b間において異なる高さで互い違いに突出するように取り付けられている。なお、固定部材32a、32bの支柱31a、31bに対する固定方法は特に限定されず、ネジ等による締め付けや、その他の圧着、接着等の固定手段でも良い。
【0024】
固定部材32a、32bは、その側面に横孔が貫穿され、該横孔に支持棒33a、33bを挿通し、少なくとも把持部34a側へ水平に突出するように設けられている。支持棒33a、33bは、それぞれ、固定部材32a、32bから把持部34a側へ異なる長さに突出するように形成され、具体的には、支持棒33aは支持棒33bよりも長く突出するように形成されている。なお、本実施態様では、支持棒33a、33bは、固定部材32a、32bの横孔に挿入して固定されているが、その固定方法は特に限定されず、ネジ等による締め付けや、その他の圧着、接着等の固定手段でも良い。
【0025】
支持棒33a、33bの少なくとも把持部34a側の頂部には、溝部331がそれぞれ凹設されている。かかる溝部331は、アイラッシュカーラー6のアーム部62aおよびフレーム部63の少なくとも一側面を嵌入可能な形状及び大きさに形成されており、支持棒33a、33bを軸回転させることにより、その溝の方向(角度)を適宜調整することができる。
【0026】
把持部34a、34bは板状片に形成され、その少なくとも一辺部には凹部341が凹設されている。かかる凹部341は、アイラッシュカーラー6のフレーム部63の外側の側面部を嵌入可能な形状及び大きさに形成されている。一対の把持部34a、34bのうち、把持部34bは支柱31aと支柱31bの間に設けられており、把持部34aは所定の間隔を空けて、支柱31a、31bの並びと直交する並びで配置されている。さらに、把持部34a、34bは、凹部341が互いに対向するように設けられている。
【0027】
睫毛保持部4は、略矩形に形成された板状の保持部上部41と、該保持部上部41と略同形状に形成された保持部下部42からなる2枚の板状部材を上下に重ねた状態で、ネジ部43により固定可能に形成されている。該睫毛保持部4は、睫毛Xを挟んだ側の端部が把持部34aと把持部34bの間に位置するように基台上に配設される。なお、本実施態様では、保持部上部41と保持部下部42により睫毛を上下から挟み込み、ネジ部43により固定するが、睫毛を保持して基台2上において固定できる機構を有していれば、かかる構成に限定されない。
【0028】
次に、本発明の冶具1によるアイラッシュカーラー6の保持方法について説明する。まず、アイラッシュカーラー6の挟圧体固定部651側が下になるように倒立した状態とし、挟圧体固定部651の左右のフレーム部63の側面を把持部34a、34bにより左右から挟むようにして凹部341に嵌める。次に、アイラッシュカーラー6の倒立の角度を調整しながら、フレーム部63の一側面を支持棒33bの溝部331に嵌め、さらに、アーム部62aの一側面を支持棒33aの溝部331にそれぞれ嵌める(図2)。
【0029】
これにより、フレーム部63およびアーム部62aは、一対の把持部34a、34bと、支持棒33a、33bの4箇所において保持され、挟圧体固定部651は基台2に対して固定されることになる。一方、ハンドル61bと、ハンドル61bから延長するアーム部62bは固定されておらず、開閉操作が可能となっているため、アーム部62bに接続部材64を介して接続された挟圧体可動部652も挟圧体固定部651に対して近接または離間可能な状態となっている。
【0030】
なお、本実施態様ではアイラッシュカーラー6をフレーム63およびアーム部62aの計4箇所において保持しているが、挟圧体固定部651を固定し、且つ、ハンドル61bの開閉操作が可能な状態でアイラッシュカーラー6の本体を保持できれば、保持する場所や数は本実施態様に限定されない。
【0031】
次に、図6により、本発明のアイラッシュカーラーの冶具1にアイラッシュカーラー6をセットし、押圧手段5を用いてアイラッシュカーラー6を開閉させる機構について説明する。本発明において使用される押圧手段5は、テクスチャーアナライザーやレオメーターなどを好適に利用できるが、指定した荷重で対象物を押圧することができるものであれば特にこれらに限定されない。
【0032】
図6(a)は、本発明の冶具1にアイラッシュカーラー6を保持した状態で押圧手段5をセットし、測定作業開始前の状態を示す(アイラッシュカーラー保持部3は図示せず)。本実施態様の押圧手段5は、昇降可能な棒状のスピンドル51と、該スピンドル51の先端に取り付けられた略直方体の当接部52からなるが、押圧手段5の態様はこれに限らず、固定されたアイラッシュカーラー6のアーム部62bと接続部材64の連結部分に対して所定の荷重をかけられるものであればよい。なお、実際に睫毛を用いてアイラッシュカーラーのカール力を評価する場合は、睫毛Xを保持させた睫毛保持部4を基台2に配設する。このとき、挟圧体可動部652と挟圧体固定部651により睫毛Xが上下から挟まれる位置に睫毛保持部4をセットする。
【0033】
図6(a)に示すように、押圧手段5は、当接部52がアイラッシュカーラー6のアーム部62bと接続部材64の連結部分、詳しくは、アーム部62bの挿通孔67が設けられた部分の上方に位置し、スピンドル51の下降時に当接部52が該連結部分に当接可能な位置にセットされている。そして、測定時には、スピンドル51が下降し、当接部52がアーム部62bと接続部材64の連結部分に当接して押し下げる(図6b)。このようにアーム部62bと接続部材64の連結部分を押し下げることにより、支軸66を支点としてハンドル部61bが持ち上がり、アイラッシュカーラー6は開状態から閉状態へと移行する。それに伴い、挟圧体可動部652は挟圧体固定部651側へと近接し、最終的には、弾性部材653と挟圧体固定部651が互いに接するとともに、一定の荷重がかかった状態になる。かかる荷重を解除する場合は、押圧手段5のスピンドル51を上昇させればよく、スピンドル51が上昇してアーム部62bと接続部材64の連結部分に対する荷重がなくなれば、自重によりハンドル部61bは図6(a)の状態に戻る。
【0034】
なお、押圧手段5による荷重は任意に設定することが可能であるが、使用者がアイラッシュカーラーを使用するときに使用時に睫毛にかかる荷重をあらかじめ定量化しておけば、ハンドル部61a、61bを握り込む力を押圧手段5により正確に再現することができ、より好ましい。以下、かかる荷重の定量化の方法について説明する。なお、本明細書において「握り込む」とは、挟圧体固定部651と挟圧体可動部652が互いに接した状態から、さらに挟圧体固定部651と挟圧体可動部652に所定の荷重をかけるべく、ハンドル部61aとハンドル部61bをより強い力で握ることを意味する。
【0035】
荷重を定量化するために、まず、使用時にハンドル部61a、61bを握り込む力を距離に変換して計測する。具体的には、開閉操作に伴い変動する任意の2点間の距離を測定することができるノギス状の測定手段7を備えたアイラッシュカーラー60を使用し、ハンドル部61aとハンドル部61bを握り込む際の距離を計測する。
【0036】
図7に示すように、アイラッシュカーラー60の計測手段7は、固定部711においてハンドル部61aに固定された目盛り部71と、該目盛り部71に対してその長尺方向にスライド移動可能に取り付けられたスライド部72と、該スライド部72の下部から反対側のアーム部62b方向へ突出し、その先端部731がアーム部62bの側面部に当接するように設けられたバー73を備える。なお、目盛り部71は、図7ではハンドル部61aよりさらに奥まった位置で、ハンドル部61aに挿入した指に当たらないようにクリアランスを取って設けられている。また、バー73も目盛り部71と同様にアーム部62aよりも奥まった位置に設けられており、その当接部731がアーム部62bに当接するように、バー73から図の手前側に立ち上がるように折り曲げ形成されている。
【0037】
かかる計測手段7を備えたアイラッシュカーラー60の使用方法は以下の通りである。まず、人差し指と中指によりハンドル部61aとハンドル部61bを把持し、挟圧体固定部651と挟圧体可動部652が互いに接する位置までハンドル部61aとハンドル部61bを近接させる(図7)。かかる状態において、挟圧体固定部651の先端が挟圧体可動部652の弾性部材653と互いに接した状態の目盛り部71を計測する。
【0038】
次に、使用時と同じようにハンドル部61aとハンドル部61bを握り込んで荷重をかけ、弾性部材653に挟圧体固定部651の先端部を食い込ませる。これにより、アーム部62bに当接しているバー73がアーム部62a側へと押し出され、かかるバー73と連動してスライド部72がハンドル部61a側から離間する方向に移動する。そして、このハンドル部61aとハンドル部61bの握り込みが完了した時点において、再び目盛り部71を計測する。このようにスライド部72の移動距離を計測することにより、ハンドル部61aとハンドル部61bの握り込みの距離を測定することができる。
【0039】
なお、本実施態様では、バー73の先端部731がハンドル部61bの付け根付近のアーム部62bに当接しているが、ハンドル部61aとハンドル部61bの握り込みに伴い任意の2点間で変動する距離を測定できればその当接する位置はこれに限定されない。また、目盛り部71による計測は目視によるものでも良いが、例えば、ハンドル部61aとハンドル部61bを握り込む動作を複数回繰り返す際の個々の距離を計測する場合は、別途カメラ等によりスライド部72の距離を動画撮影し、かかる動画から計測しても構わない。
【実施例
【0040】
以下、本発明のアイラッシュカーラーのカール力の評価方法を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例では、断面形状が凸状、平面状、凹状の弾性部材653をそれぞれ備えた3つのタイプのアイラッシュカーラーについてカール力を評価した。
【0041】
(1)睫毛にかかる荷重の定量化
まず、計測手段7を備えたアイラッシュカーラー60を用い、使用者の握る力について以下の通り測定を行った。まず、ハンドル61aとハンドル61bを閉状態とし、挟圧体可動部652の弾性部材653に挟圧体固定部651の先端部を接触させた。その状態から、睫毛をカールさせる時と同じように、ハンドル61aとハンドル61bを握り込んで荷重をかけ、弾性部材653に挟圧体固定部651の先端部を食い込ませた。このときの握り込み距離を計測手段7により計測し、その平均値を求めた。この測定により、通常の使用時における把持力はハンドル61aとハンドル61bの握り込み距離に換算して0~3mmの範囲内であることが分かった。
【0042】
(2)睫毛にかかる荷重の機械による再現
次に、押圧手段5により、使用者の握る力を再現した。まず、冶具1に測定手段7を備えたアイラッシュカーラー60をセットした。そして、押圧手段5としてテクスチャーアナライザー(TA.XT Plus StableMicroSystems社製)を用い、テクスチャーアナライザーのスピンドル51がアーム部62bと接続部材64の連結部分の上方に位置するように冶具1をセットした。そして、テクスチャーアナライザーを操作し、スピンドル51を下降させてアーム部62bと接続部材64の連結部分を押し下げた。このとき、弾性部材653に挟圧体固定部651の先端部を接触させた状態から、握り込み距離が0~3mmの範囲内となるように荷重をかけたところ、テクスチャーアナライザーの荷重は0~10kgの範囲内であることが分かった。
【0043】
(3)対象とするアイラッシュカーラーによる計測
次に、評価対象となるアイラッシュカーラーを冶具1にセットし、人工睫毛を保持させた睫毛保持部4を冶具1にセットした。そして、下記の荷重条件において、押圧手段5のテクスチャーアナライザーにより、アーム部62bと接続部材64の連結部分を押し下げ、これにより得られた人工睫毛の屈曲部の角度を計測した。かかる角度の計測方法としては、例えば、根本から睫毛の延伸方向に沿って延長線(直線)を引き、この延長線に対して睫毛が屈曲する角度を測定することで計測することができる。なお、荷重回数を4回としたのは、アイラッシュカーラーの使用時に荷重を複数回に分けて睫毛にかけることが一般的だからである。
<荷重条件>
荷重(kg):0.5、1、2、3、4、5、6、8、10
押し下げ速度:10mm/s
荷重保持時間:2秒
荷重回数:4回
【0044】
以上の計測により得られた結果を図8のグラフに示す。グラフ中、■は凹タイプ、◆は凸タイプ、▲は平面タイプの結果をそれぞれ示す。グラフに示すように、弾性部材653が凹タイプのものは弱い力でも強い力でもカールしやすく、凸タイプのものは弱い力ではカールがかかりにくく、強い力ではカールがかかり、さらに、平面状のものはカール力が弱いことが分かった。このように、本発明の冶具1を用いた評価方法によると、弾性部材653の断面形状の違いにより異なるアイラッシュカーラーのカール力を客観的に評価することができた。
【0045】
なお、前記(1)睫毛にかかる荷重の定量化は省略しても良く、その場合、前記(3)の計測において、予め設定しておいた任意の荷重を押圧手段5によりかければよい。
【符号の説明】
【0046】
1 … … 冶具
2 … … 基台
3 … … アイラッシュカーラー保持部
4 … … 睫毛保持部
5 … … 押圧手段
6 … … アイラッシュカーラー
7 … … 計測手段
31a、31b … … 支柱
32a、32b … … 固定部材
33a、33b … … 支持棒
34a、34b … … 把持部
41 … … 睫毛固定部上部
42 … … 睫毛固定部下部
43 … … ネジ部
51 … … スピンドル
52 … … 当接部
60 … … アイラッシュカーラー
61a … … ハンドル部
61b … … ハンドル部
62a … … アーム部
62b … … アーム部
63 … … フレーム部
64 … … 接続部材
65 … … 挟圧体
66 … … 支軸
67 … … 挿通孔
71 … … 目盛り部
72 … … スライド部
73 … … バー
331 … … 溝部
341 … … 凹部
641 … … 屈曲部
651 … … 挟圧体固定部
652 … … 挟圧体可動部
653 … … 弾性部材
711 … … 固定部
731 … … 先端部
X … … 睫毛
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8