(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221017BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 611
B41J2/14 305
B41J2/14 603
B41J2/165 301
(21)【出願番号】P 2018219592
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】肥田 真一郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109456(JP,A)
【文献】特開2018-020537(JP,A)
【文献】特開2018-051937(JP,A)
【文献】特開2012-187865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有する駆動ベースと、
前記駆動ベースの表面に配される実装部と、
前記駆動ベースの表面の少なくとも一部を覆うとともに、前記駆動ベースと対向する対向面に、前記実装部に対向する凹部を有する、マスクプレートと、
を備え
、
前記凹部の深さは前記マスクプレートの板厚の4/5未満である、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記駆動ベースは、複数の前記ノズルにそれぞれ連通する空間である圧力室と、前記圧力室を駆動するアクチュエータと、を備え、
前記実装部は、前記駆動ベースの表面に形成され、前記アクチュエータに接続される電極を有し、
前記マスクプレートと前記駆動ベースの前記表面との間に、前記実装部と接着層とが配され、
前記凹部に前記実装部及び前記接着層の少なくとも一部が収容される、請求項1に記載の、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記駆動ベースのインク吐出側の反対側に配されるとともに、
前記圧力室に連通するインク流路を構成する流路ベースと、
前記実装部に異方性導電材を介して接続されるとともに駆動ICを搭載するCOFと、を備え、
前記マスクプレートは、金属材料で構成され、前記ノズルの前記表面に対向配置されるトッププレートと、前記駆動ベースの外周に配されるサイドプレートとを一体に有する、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
前記駆動ベースの表面に当接するワイプ部材を備えるメンテナンス装置と、
を備える、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいて、ノズルを有する駆動ベースの吐出面に、電極などの実装部を配する構成が知られている。例えば、吐出面上に形成された電極は、ACF(Anisotropic Conductive Film)を介して、駆動ICを搭載したCOF(Chip on Film)に、接続される。このような液体吐出ヘッドにおいて、ノズルの周囲の実装部に液体が付着することを防止するために、吐出面上の実装部を覆うマスクプレートが設けられる。マスクプレートは例えば所定厚さを有する板状部材であり、例えば接着層を介して吐出面上に接着される。マスクプレートの表面は吐出面よりも吐出方向に突出することから、液体吐出ヘッドの吐出側の表面に段差ができる。このため、メンテナンス時のワイプ処理においてワイプ部材と吐出面とが接触し難くなる等、吐出面の処理が妨げられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、吐出面の処理が容易となる、液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るインクジェットヘッドは、駆動ベースと、実装部と、マスクプレートと、を備える。駆動ベースは、複数のノズルを有する。実装部は前記駆動ベースの表面に配される。マスクプレートは、前記駆動ベースの表面の少なくとも一部を覆うとともに、前記駆動ベースと対向する対向面に、前記実装部に対向する凹部を有する。前記凹部の深さは前記マスクプレートの板厚の4/5未満である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態にかかるインクジェットヘッドの斜視図。
【
図3】同インクジェットヘッドの一部を示す斜視図。
【
図4】同インクジェットヘッドの一部を示す断面図。
【
図5】同インクジェットヘッドの一部を拡大して示す説明図。
【
図6】同インクジェットヘッドの駆動ベースの一部の構成を示す断面図。
【
図8】同インクジェットヘッドのマスクプレートの斜視図。
【
図9】同インクジェットヘッドのマスクプレート及び駆動ベースの構成を示す説明図。
【
図10】一実施形態にかかるインクジェット装置の説明図。
【
図11】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドの一部を示す断面図。
【
図12】同インクジェットヘッドの一部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、第1実施形態に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)1及びインクジェット装置(液体吐出装置)100について、
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1及び
図2は、一実施形態にかかるインクジェットヘッド1の斜視図である。
図3及び
図4はインクジェットヘッド1の一部を示す斜視図及び断面図である。
図5はインクジェットヘッド1の一部を拡大して示す説明図である。
図6及び
図7は駆動ベースの一部の構成を示す断面図である。
図8はマスクプレート30の斜視図である。
図9はインクジェットヘッド1の一部を分解して示す斜視図であり、マスクプレート30及び駆動ベース10を示している。
【0008】
図1乃至
図9に示すインクジェットヘッド1は、例えばベントモードのMEMS方式のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド1は、例えば
図10に示すインクジェット装置100などの液体吐出装置に、ノズル12aが下方に向く姿勢で配置される。インクジェットヘッド1は、液体として例えばインクを吐出することで、対向して配置される記録媒体に所望の画像を形成する。
【0009】
なお、ベントモードのMEMS方式のインクジェットヘッドに限らず、シェアモードシェアードウォール方式のインクジェットヘッドであっても良い。
【0010】
図1乃至
図9に示すように、インクジェットヘッド1は、複数のノズル12aを有する駆動ベース10と、所定の流路を形成する流路ベース20と、駆動ベース10の吐出側の吐出面10aを保護するマスクプレート30と、を備える。
【0011】
駆動ベース10は、例えば矩形の板状に構成されたMEMSチップであり、複数の圧力室11aを有するベース層11に、圧力室11aに連通する複数のノズル12aが形成された圧電振動板12が、一体に設けられて構成されている。
【0012】
ベース層11は、例えば単結晶シリコンウエハで構成され、複数の圧力室11aが形成されている。各圧力室11aは、インクを保持する例えば円柱状の空間を構成する。複数の圧力室11aは互いに隔てられる。
【0013】
圧電振動板12は、振動板13、アクチュエータ14、実装部16、及び保護層17を備える。圧電振動板12には、貫通孔である複数のノズル12aが形成される。例えば本実施形態においては、所定の第1方向に沿って複数のノズル12aが並んで形成されるノズル列が2列配される。なお、ノズル12aは、列方向及び行方向に2次元配列し、行方向に並ぶノズル12aは、行方向の軸線上にノズル12aが重ならないように斜めに配列しても良い。また、ノズル列は2列に限らず、例えば8列であってもよい。
【0014】
振動板13は、ベース層11上に成膜された層であり、例えばSiO2膜(二酸化ケイ素)で構成される。
【0015】
アクチュエータ14は、圧電体14aと、圧電体14aを挟む一対の電極14b、14cを積層して備える。
【0016】
圧電体14aは例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミック材料等で構成される。圧電体14aは、例えば駆動ベース10の内部に作り込まれ、ノズル12aの周りを囲む円形状にパターニングされている。
【0017】
第1の電極14bは圧電体14aに接続される2つの電極のうちの一方であり、圧電体14aの圧力室11a側に成膜される。第1の電極14bは個別配線14dに接続される。
【0018】
第2の電極14cは圧電体14aに接続される2つの電極のうちの他方であり、圧電体14aの吐出面側に成膜される。第2の電極14cは共通配線14eに接続される。
【0019】
個別配線14d及び共通配線14eは所定のパターンにて形成された配線であり、実装部16に至って形成され、あるいは実装部16に電気的に接続される。保護層17と振動板13の境界には、個別配線14dと共通配線14eの短絡を防ぐ絶縁層14fが設けられる。絶縁層14fはコンタクトホール14gが形成され、コンタクトホール14gによって第2の電極14cと共通配線14eとが電気的に接続される。
したがって、アクチュエータ14は、実装部16、ACF(異方性導電フィルム)53、及びCOF52の配線パターンを介して、駆動IC54に電気的に接続されている。
【0020】
実装部16は、例えば電極16aを有する。実装部16は、例えば吐出面10a上であってノズル列の側部に形成されている。実装部16の電極16aは、個別配線14dや共通配線14eに接続されるとともに、ACF53を介してCOF52に接続される。
【0021】
流路ベース20は、駆動ベース10のインク吐出側とは反対側に組付けられ、駆動ベース10に接合される。流路ベース20は、矩形状に構成されインクジェットヘッド1の外郭を構成するとともに内部に所定のインク流路を有する、マニフォルドである。
【0022】
インク流路は、複数の圧力室11aにそれぞれ連通する共通室23を有する。流路ベース20の、駆動ベース10とは反対側の端部には、共通室23に連通する流路を構成する供給管27及び回収管28が接続される。
【0023】
供給管27は、インク流路の上流側に連通する所定の流路を形成する管状部材である。回収管28は、インク流路の下流側に連通する所定の流路を形成する管状部材である。
【0024】
図2乃至
図5に示すように、マスクプレート30は、インクジェットヘッド1の外郭の一部を構成する。マスクプレート30は、例えばSUS材等の金属材料で構成された板部材が曲成され、吐出面10aの所定領域を覆うトッププレート部31と、駆動ベース10の外周に配されるサイドプレート部32とを一体に有する断面L字状に構成される。
【0025】
トッププレート部31の、駆動ベース10と対向する対向面31aには、所定深さの凹部33が形成される。例えば凹部33の深さはマスクプレート30の板厚の4/5未満である。本実施形態においては、マスクプレート30の板厚は0.1mm、凹部33の深さは0.05~0.08mmとする。例えば、マスクプレート30は、トッププレート部31とサイドプレート部32とが平面状に面一に連続した板状部材の所定箇所を、エッチング処理により抉り取ることで凹部33を形成した後、L字に折曲して製造される。
【0026】
COF52は、表面に例えば駆動IC54等の実装部品が実装されたフィルム状の配線基板である。COF52の一端側はACF53を介して実装部16の電極16aに接続されている。COF52の他端側は各種の電子部品が実装された回路基板50に接続されている。回路基板50は、例えばフレキシブルケーブル51により外部の電子機器に電気的に接続される。
【0027】
ACF53は、異方性導電材料で構成され、例えば電極16aとCOF52との間に介在して圧着されることで、電極16aとCOF52とを機械的に接合するとともに電気的に接続する。
【0028】
駆動IC54は、COF52の配線パターンを介して回路基板50上の実装部品や配線パターンに接続される。また駆動IC54はCOF52の配線パターン及び実装部16の電極16aを介して圧力室11a内のアクチュエータ14に電気的に接続される。
【0029】
接着層55はエポキシ系などの接着剤で構成されている。接着層55は、COF52とマスクプレート30との間、及び吐出面10aとマスクプレート30との間に配され、COF52とマスクプレート30と吐出面10aとを接着する。接着層55は一部がマスクプレート30の凹部33に収容される。
【0030】
すなわち、接合部分において、吐出面10a上の実装部16の電極16aの吐出側に、ACF53を介してCOF52の一部が積層して配され、さらにCOF52の吐出側に接着層55を介してマスクプレート30が積層して配され、これらが積層方向に圧着されることで、吐出面10aと電極16aとCOF52とマスクプレート30とが接合される。
【0031】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1は、駆動IC54により駆動電圧を印加することで、アクチュエータ14を変形させ、圧力室11aの容積を増減することで、圧力室11aに対向するノズル12aから液滴を吐出させる。
【0032】
以下、インクジェットヘッド1を有するインクジェット装置100について、
図10を参照して説明する。
図10はインクジェット装置100としてインクジェットプリンタの構成を示す説明図である。
図10に示すように、インクジェット装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、支持装置である搬送装置115と、メンテナンス装置116と、制御部117と、を備える。
【0033】
インクジェット装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路A1に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0034】
媒体供給部112は複数の給紙カセット112aを備える。媒体排出部114は、排紙トレイ114aを備える。画像形成部113は、用紙を支持する支持部118と、支持部118の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0035】
支持部118は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118aと、搬送ベルト118aを裏側から支持する支持プレート118bと、搬送ベルト118aの裏側に備えられた複数のベルトローラ118cと、を備える。
【0036】
ヘッドユニット130は、複数のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク132と、インクジェットヘッド1と供給タンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、液体を循環させる循環型のヘッドユニットである。
【0037】
本実施形態において、インクジェットヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1C,1M,1Y,1Bと、これらの各色のインクをそれぞれ収容する供給タンク132として、供給タンク132C,132M,132Y,132Bを備える。供給タンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。接続流路133は、インクジェットヘッド1の供給管27に接続される供給流路133aと、インクジェットヘッド1の回収管28に接続される回収流路133bと、を備える。
【0038】
また、供給タンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結されている。そして、インクジェットヘッド1と供給タンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置により供給タンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズルに供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0039】
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路133aに設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部117に接続され、CPU(Central Processing Unit)117aの制御によって制御可能に構成されている。循環ポンプ134は、インクジェットヘッド1と供給タンク132を含む循環流路で液体を循環させる。
【0040】
搬送装置115は、媒体供給部112の給紙カセット112aから画像形成部113を通って媒体排出部114の排紙トレイ114aに至る搬送路A1に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路A1に沿って配置される複数のガイドプレート対121a~121hと、複数の搬送用ローラ122a~122hと、を備えている。搬送装置115は、用紙Pをインクジェットヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0041】
メンテナンス装置116は、例えば吐出面10aに当接して移動することで吐出面10aの液滴をぬぐうブレード状のワイプ部材116dを有するワイプ装置116aと、吐出面10aの液滴を吸引するサクション装置116bと、移動装置116cと、を備える。メンテナンス装置116は、インクジェットヘッド1の下方の吐出面10aの下に対向配置されるメンテナンス位置と、インクジェットヘッド1の直下から退避した待機位置とで往復移動可能に構成されている。
【0042】
制御部117は、プロセッサ117aと、各種のプログラムなどを記憶するメモリと、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェースと、を備える。例えばメモリには、インクの循環動作、インクの供給動作、圧力調整、温度管理、インクの液面管理などの制御に必要な情報として、各種制御プログラムや動作条件が記憶されている。
【0043】
搬送装置115は、インクジェットヘッド1に対して、記録媒体を相対的に移動する。例えば搬送装置115は、記録媒体を保持及び搬送する記録媒体移動機構を備える。また搬送装置115は各種の印刷条件に応じて所定のタイミングでインクジェットヘッド1を移動させるヘッド移動機構を備える。
【0044】
以上のように構成されたインクジェット装置100の動作について説明する。プロセッサ117aは、例えばインターフェースにおいて印刷指示を検出すると、搬送装置115を駆動して用紙Pを搬送するとともに、所定のタイミングでインクジェットヘッド1に対して印字信号を出力することで、インクジェットヘッド1を駆動する。インクジェットヘッド1は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、圧電素子を選択的に駆動してノズル12aからインクを吐出して、対向位置に保持された記録媒体に画像を形成する。このとき、インクは、供給タンク132から、供給管27を通って流路ベース20内のインク流路を経て複数の圧力室11aへ至り、圧力室11aに対向配置されたノズル12aから吐出される。一方、インクは、圧力室11aから共通室23、回収管28、を通って供給タンク132に回収され、循環する。
【0045】
また、プロセッサ117aは、所定のタイミングでメンテナンス装置116の移動装置116cを駆動し、メンテナンス装置116をメンテナンス位置に移動するとともに、ワイプ装置116aやサクション装置116bを駆動し、クリーニング処理を行う。具体的には例えばワイプ装置116aのブレード状のワイプ部材116dを吐出面10aに当接させた状態で吐出面10aの面方向に沿って移動させ、吐出面10aに付着した液滴を除去する。また、サクション装置116bの吸引ノズルを吐出面10aに対向させて吸引処理を行う。
【0046】
本実施形態にかかるインクジェットヘッド1及びインクジェット装置100によれば、マスクプレート30に凹部33が形成されていることから、実装部16及び接着層55の一部が収容されることでマスクプレート30による表面の凹凸や段差を小さくして平坦化することができる。したがって、接合部分の積層方向における段差の寸法t1を小さく抑えられる。このため、例えばワイプ装置116aのワイプ部材116dが吐出面10aに当接しやすく、ワイプメンテナンス処理を効果的に行うことが可能となる。
【0047】
また、吐出面10aとマスクプレート30との間の隙間が狭くなることから、接着層55を薄くし、接着剤の量を少なくすることができる。
【0048】
また、凹部33の段差によって接着層55の接着面積を確保できるためシール性が向上する。さらに凹部33に一部の接着層55が収容されることから、接着層55がはみ出しにくくなる。
【0049】
上述した実施形態によれば、吐出面10aの処理が容易に行える。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0051】
例えば上記実施形態においては、吐出面10aの片側であって第1方向の全長に亘る領域に、マスクプレート30が配される例を示したが、これに限られるものではない。例えば両側にマスクプレート30を設けてもよいし、全周に亘って設けてもよい。あるいは第1方向のうち一部にのみ設けてもよい。他の実施形態として
図11及び
図12に示すインクジェットヘッド1Aは、吐出面10aの全周にわたってマスクプレート30が形成されている。マスクプレート30は、吐出面10aの全周を囲むトッププレート部31と、両側部に配されるサイドプレート部32と、を有し、中央部分にノズル12aが露出する開口を有している。インクジェットヘッド1Aは、ノズル12aの列の両側に、それぞれ、電極16aが形成された実装部16が設けられ、両側の実装部16上のトッププレート部31に、凹部33が形成されている。本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
上記実施形態において、マスクプレート30はL字状に曲成された構成を例示したが、これに限られるものではない。例えばサイドプレート部32を有さず、吐出面10aに対向する平板状のトッププレート部31のみで構成されていてもよい。また、凹部33の領域も上記に限られるものではなく、実装部や接着部の形状等の条件に応じて適宜設定可能であり、例えば実装部16が複数箇所に配されている場合等に複数の凹部33を形成してもよい。なお、吐出面10aにはさらに撥インク層などの被覆層が形成されていてもよい。
【0053】
また、吐出する液体はインクに限られるものではなく、インク以外の液体を吐出することもできる。インク以外を吐出する液体吐出装置としては、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0054】
インクジェットヘッド1は、上記の他、例えば静電気で振動板を変形してインク滴を吐出する構造、あるいはヒータ等の熱エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出する構造等でもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては液体吐出装置はインクジェット装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではない。例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0056】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、ノズル面の処理がしやすい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
複数のノズルを有する駆動ベースと、
前記駆動ベースの表面に配される実装部と、
前記駆動ベースの表面の少なくとも一部を覆うとともに、前記駆動ベースと対向する対向面に、前記実装部に対向する凹部を有する、マスクプレートと、
を備える、液体吐出ヘッド。
[2]
前記駆動ベースは、複数の前記ノズルにそれぞれ連通する空間である圧力室と、前記圧力室を駆動するアクチュエータと、を備え、
前記実装部は、前記駆動ベースの表面に形成され、前記アクチュエータに接続される電極を有し、
前記マスクプレートと前記駆動ベースの前記表面との間に、前記実装部と接着層とが配され、
前記凹部に前記実装部及び前記接着層の少なくとも一部が収容される、[1]に記載の、液体吐出ヘッド。
[3]
前記駆動ベースのインク吐出側の反対側に配されるとともに、圧力室に連通するインク流路を構成する流路ベースと、
前記実装部に異方性導電材を介して接続されるとともに駆動ICを搭載するCOFと、を備え、
前記マスクプレートは、金属材料で構成され、前記ノズルの前記表面に対向配置されるトッププレートと、前記駆動ベースの外周に配されるサイドプレートとを一体に有する、[2]に記載の液体吐出ヘッド。
[4]
前記凹部の深さは前記マスクプレートの板厚の4/5未満である、[1]に記載の液体吐出ヘッド。
[5]
[1]乃至[4]のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、
前記駆動ベースの表面に当接するワイプ部材を備えるメンテナンス装置と、
を備える、液体吐出装置。
【符号の説明】
【0058】
1(1C,1M,1Y,1B)、1A…インクジェットヘッド、10…駆動ベース、10a…吐出面、11…ベース層、11a…圧力室、12…圧電振動板、12a…ノズル、13…振動板、14…アクチュエータ、14a…圧電体、14b…第1の電極、14c…第2の電極、14d…個別配線、14e…共通配線、14f…絶縁層、14g…コンタクトホール、16…実装部、16a…電極、17…保護層、20…流路ベース、23…共通室、27…供給管、28…回収管、30…マスクプレート、31…トッププレート部、31a…対向面、32…サイドプレート部、33…凹部、50…回路基板、51…フレキシブルケーブル、52…COF、53…ACF、54…駆動IC、55…接着層、100…インクジェット装置、111…筐体、112…媒体供給部、112a…給紙カセット、113…画像形成部、114…媒体排出部、114a…排紙トレイ、115…搬送装置、116…メンテナンス装置、116a…ワイプ装置、116b…サクション装置、116c…移動装置、116d…ワイプ部材、117…制御部、117a…プロセッサ、118…支持部、118a…搬送ベルト、118b…支持プレート、118c…ベルトローラ、121a~121h…ガイドプレート対、122a~122h…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…供給タンク、132B…供給タンク、132C…供給タンク、132M…供給タンク、132、Y…供給タンク、133…接続流路、133a…供給流路、133b…回収流路、134…循環ポンプ、A1…搬送路。