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  • 特許-切削範囲確定装置 図1
  • 特許-切削範囲確定装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】切削範囲確定装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20221017BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20221017BHJP
   B27C 5/10 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E04F15/00 R
E04F21/00 A
E04F21/00 D
B27C5/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018225113
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020084718
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518427498
【氏名又は名称】山口 信次
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 信次
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184227(JP,A)
【文献】実開昭56-143006(JP,U)
【文献】特開2001-159247(JP,A)
【文献】実開昭51-033296(JP,U)
【文献】実開昭61-070098(JP,U)
【文献】特開2007-154626(JP,A)
【文献】米国特許第04215731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04F 21/00
E04G 23/02
B27C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削箇所に向かい上下移動して切削する切削刃と、該切削刃を前後方向へ移動させると共に前後移動幅を確定する第1部材と、該切削刃を左右方向へ移動させると共に左右移動幅を確定する第2部材とを備え、
前記第1部材と第2部材とは積み重ねられて、第1部材は前後に、第2部材は左右に移動可能とされ、かつ各々の確定した移動幅で、前記前後および左右の移動を規制する規制部材とを有し、
前記切削刃は、前記第1部材上方に取り付けられ、第1部材と第2部材に設けられた切削作業孔を通過して前記切削箇所を所定の深さ、並びに所定の前後左右の範囲で切削でき、
切削作業の確認は前記切削作業孔近傍位置に可視可能なカバーで形成された可視部により確認でき、
該可視部から確認できる内部空洞には、木目方向設定部が前記第1部材の前後方向に向かって前記切削刃に隣接して設けられ、該木目方向設定部を切削すべき木目と一致させる、
ことを特徴とする切削範囲確定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、木製からなるフローリング床などに出来たキズを修復すべく所定範囲を切削し、その切削した箇所に新たに新しいフローリング床を嵌め込んで修復するための切削範囲確定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本の家屋では畳の部屋より、木質のフローリング材を敷設したフローリング床の部屋が急増している。しかしながら、床が木質のフローリング材であると、例えば、食器を落としたり、あるいは電化製品を落下させたりしてフローリング材の床に可視出来る程のキズをつけてしまうことがあった。
【0003】
従来、この様な場合の床修復作業は、床に出来たキズを埋めるべく、合成樹脂材を加熱して流動状にし、これをキズ口に流し込んで修復するものとしていた。しかしながら、流し込む合成樹脂材は、木目がついてはおらず、単色であるため、キズの箇所、すなわち修復箇所が小さくとも修復したことが認識できてしまっていた。
【0004】
そこで、切削刃を有するポータブルな切削具を使用し、該切削具でキズ周辺の箇所を切削し切削した箇所に木目質のフローリング材をはめ込んで修復していたが、切削箇所の範囲と嵌め込むフローリング材の大きさや木目などを合わせることが難しく、また、切削作業には熟練した技術も必要で、修復したことが全く分からないようにするのはきわめて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平02-144402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、本発明は前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、キズ周辺の箇所を切削し切削した箇所に木目質のフローリング材をはめ込んで修復する際、切削箇所の範囲及び切削深さ、並びに切削箇所に寸法ぴったりに嵌め込めるフローリング材を簡単に作製でき、さらには嵌め込むフローリング材の方向や木目模様などを従来のフローリング材と同様に合わせることが簡単に行え、修復後は修復したことが全く分からないように行える切削範囲確定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
切削箇所に向かい上下移動して切削する切削刃と、該切削刃を前後方向へ移動させると共に前後移動幅を確定する第1部材と、該切削刃を左右方向へ移動させると共に左右移動幅を確定する第2部材とを備え、
前記第1部材と第2部材とは積み重ねられて、第1部材は前後に、第2部材は左右に移動可能とされ、かつ各々の確定した移動幅で、前記前後および左右の移動を規制する規制部材とを有し、
前記切削刃は、前記第1部材上方に取り付けられ、第1部材と第2部材に設けられた切削作業孔を通過して前記切削箇所を所定の深さ、並びに所定の前後左右の範囲で切削でき、
切削作業の確認は前記切削作業孔近傍位置に可視可能なカバーで形成された可視部により確認でき、
該可視部から確認できる内部空洞には、木目方向設定部が前記第1部材の前後方向に向かって前記切削刃に隣接して設けられ、該木目方向設定部を切削すべき木目と一致させる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キズ周辺の箇所を切削し切削した箇所に木目質のフローリング材をはめ込んで修復する際、切削箇所の範囲及び切削深さ、並びに切削箇所に寸法ぴったりに嵌め込めるフローリング材を簡単に作製でき、さらには嵌め込むフローリング材の方向や木目模様などを従来のフローリング材と同様に合わせることが簡単に行え、修復後は修復したことが全く分からないように行えるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による構成を説明する説明図(1)である。
図2】本発明による構成を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0011】
図に本発明の切削範囲確定装置1を示す。
本発明の切削範囲確定装置1は、木製のフローリング床などに出来たキズを修復すべく、キズを含めた周囲箇所を切削し、その後、この切削箇所に同質、同等のフローリング材を嵌め込むなどして修復するものである。
【0012】
ここで、この切削範囲確定装置1の構成につき説明する。
まず、この切削範囲確定装置1は、前記切削箇所に向かい上下移動でき、切削箇所に接したとき、回転して切削箇所において所定の切削深さに切削する切削刃2と該切削刃2を取り付けて回転させる本体4を備えた切削具3を有している。
【0013】
切削具3は、先端に切削刃2を有し、後端にはモーターを内設した本体4を有して構成される。切削刃2は本体4のチャック口にその後端が握持されて取り付けられる。
尚、切削刃2は、各種の切削刃2を用意してあり、切削箇所に応じて交換し、使用する。
【0014】
この切削具3は、平板状をなす第1部材5上に上方に向かって突設する取り付けスタンド6に取り付けられる。
この取り付けスタンド6は、前記第1部材5上に立設された複数本の保持部材7と、保持部材7上に設けられた切削具取付部8を有して構成されている。
【0015】
すなわち、図から理解されるように、切削具3は下側垂直方向に切削刃2の先端が向かうよう切削具取付部8に取り付けられるものとなる。そして、複数本の保持部材7には切削具3を上下方向に揺動できる揺動部9が形成されており、切削刃2はこの揺動部9が揺動する揺動範囲内で上下動できるよう構成される。尚、切削具3は、切削作業を行っていないときは、スプリング部材などの弾性部材によって、上方向に弾発力を有して保持されている。
【0016】
ここで、切削刃2は、第1部材5及び第2部材12に連通して設けられた切削作業孔10から下側に突出して、切削箇所についての切削する深さが決定され、決定された深さで切削することになるが、その切削深さの決定は、前記揺動部9でなされるものとなる。
【0017】
すなわち、揺動部9によって本件切削範囲確定装置1の切削作業孔10から下側に突出する切削刃2の突出幅が決定される。そして、決定された切削深さ以上に切削刃2が下側に移動しないよう揺動部9に係止部材11が取り付けられており、これにより、切削刃2は決定された切削深さ以上に、切削箇所において深く切削することはない。
【0018】
図から理解される様に、第1部材5は第2部材12上に積み重ねられている。ここで、第1部材5も第2部材12もほぼ同様の方形状をなして形成されており、第1部材5は前後に、第2部材12は左右に移動できるよう構成されている。前後に移動する手段については何ら限定されないが、例としては、前記第1部材5につき2枚の部材を積層したもので形成し、その間にレールとそのレール上を走行する車輪などを双方の部材に取り付け、積層された2枚の部材のうち、上側の部材が前後方向に移動自在にすることが考えられる。
【0019】
また、第1部材5が前後方向に移動する際に、その移動距離を確定する第1確定部材13は、前記第1部材5の側面、すなわち、例えば積層された2枚の内、上側の部材の側面に取り付けられている。
【0020】
該第1確定部材13は、前記第1部材5上に設置された切削具3の切削刃2が前後方向に向かって切削を始める第1始点14と、予め設定された前後方向への切削距離の終点15と、その切削距離の実際の長さが計測でき、その長さを明確に出来る第1メジャー部16とを有して構成されている。
【0021】
そして、前記終点15は、第1メジャー部16の長さがある分だけ前後方向に移動できて、その移動した箇所で仮固定できるように構成されている。よって、前後方向の切削距離は、ある程度の長い長さにまで調整できるものとなっている。
【0022】
次に、第2部材12についても、左右方向へ移動する手段について、何ら限定されていない。しかし、具体例としては、やはり第2部材12も2枚の部材を積層したもので形成し、その間にレールとそのレール上を走行する車輪などを双方の部材に取り付け、左右方向に移動自在にすることが考えられる。
【0023】
また、第2部材12が左右方向に移動する際に、その移動距離を確定する第2確定部材17は、前記第2部材12の側面、すなわち積層された2枚の部材の内、上側の部材の側面に取り付けられる。
【0024】
そして、該第2確定部材17は、前記第1部材5上に設置された切削具3の切削刃2が、左右方向に向かって切削を始める第2始点18と、予め設定された左右方向への切削距離の第2終点19と、その切削距離の実際の長さが計測でき、明確に出来る第2メジャー部20とを有して構成されている。
【0025】
そして、前記第2終点19についても、さらに左右方向に移動できて、その移動した箇所で仮固定できるように構成されている。よって、左右方向の切削距離は、ある程度の長さにまで調整できるものとなっている。
【0026】
ところで、切削の確認は前記切削作業孔10の近傍位置に設けられた可視確認部21によって行える。
【0027】
切削作業孔10は第1部材5と第2部材12とを貫通して設けられるが、その切削作業孔10の近傍は大きく削られて空洞化されている。そして、第1部材5の上面においては、切削刃2が貫通する孔だけを設けた外部からは可視出来る例えば透明なカバーで形成された可視確認部21により覆われて形成されている。
【0028】
そして、可視確認部21で覆われた内部、すなわち、第1部材5及び第2部材の内部は大きく削られて空洞化され、切削した切削処理物を外に排出しないよう作業空間にしてあり、切削ゴミはこの作業空間部にとどめられる。
【0029】
以上において、本発明の使用状態につき説明する。
木製のフローリング床においてキズの程度を確かめる。そして、横、縦、すなわち、前後、左右の切削寸法を決定する。また、切削の深さを決定する。さらに、木目の方向を見定める。
【0030】
次いで、本発明の切削範囲確定装置1をキズのある箇所に設置する。そして、決定した前後、左右の切削範囲の距離に切削距離を合わせる。この距離の設定は前記第1確定部材13及び第2確定部材17を用いて行う。
【0031】
さらに、木目の方向に合わせるべく操作する。すなわち、前記可視確認部21の内部には、木目方向設定部が設けられている。この木目方向設定部は糸状の部材で構成され、たとえば、第1部材の前後方向に向かって前記切削刃2に隣接して設けられる。この木目方向設定部を切削すべき木目と一致させれば、切削した後、この箇所に嵌め込む修理部材の木目を容易に切削箇所近傍の木目に一致させることが出来る。
【0032】
所定の切削範囲が確定したら、決定された所定の切削ポイントにおいて、切削刃2を下側に移動させ、その切削ポイントにおいて、設定された切削深さまで切削する。さらに、その状態から例えば左側に移動させ、その後、さらに上側に移動し、そこからさらに右側に移動させて略方形状に切削する。次いで、その方形状に切削した内側部分を切削刃2を移動させて切削していく。
【0033】
しかして、上記の切削作業により、所定深さの、所定範囲の切削が終了する。その際、大量の切削ゴミが発生するが、この切削ゴミは前記作業空間部にとどめられる。そして、この作業空間に連通されたバキューム24によって、吸い取られ外部に散乱しないように構成されている。
【0034】
切削が終了すると、所定の深さの切削箇所が出来る。その切削箇所には、同じ大きさに形成された修理パッドが使用される。この修理パッドは切削した床材と同じ材質のものが選択され、同じ木目方向にして嵌め込まれる。この修理パッドには接着剤により固着されるので、前記切削した深さより厚みが薄いものが使用される。
【0035】
また、この切削範囲確定装置1は、床のみならず、垂直方向に立設された壁材の補修にも使用出来る。そして、壁材の補修に際しては、垂直方向の壁材に確実に添着させるため、その底面に固形粘着材を取り付け、該固定粘着材を介して壁材に取り付け、作業を行うことが出来る。
【符号の説明】
【0036】
1 切削範囲確定装置
2 切削刃
3 切削具
4 本体
5 第1部材
6 取り付けスタンド
7 保持部材
8 切削具取付部
9 揺動部
10 切削作業孔
11 係止部材
12 第2部材
13 第1確定部材
14 第1始点
15 第1終点
16 第1メジャー部
17 第2確定部材
18 第2始点
19 第2終点
20 第2メジャー部
21 可視確認部
24 バキューム
図1
図2