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特許7159035充電システム、バッテリパック及び充電器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】充電システム、バッテリパック及び充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221017BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20221017BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20221017BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02H7/18
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018241254
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020103003
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡林 寿和
(72)【発明者】
【氏名】石川 義博
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-143062(JP,A)
【文献】特開2008-177138(JP,A)
【文献】特開2010-115087(JP,A)
【文献】特開2013-181458(JP,A)
【文献】特開2014-139058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0238370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 7/18
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機に着脱可能に構成され、前記電動作業機へ電力を供給するように構成されたバッテリパックと、
前記バッテリパックを着脱可能に構成され、前記バッテリパックへ充電電力を供給するように構成された充電器と、
を備え、
前記バッテリパックは、
前記充電電力により充電されるように構成されたバッテリと、
前記バッテリパックが特定の異常状態である場合に前記充電器へ異常情報を出力し、前記バッテリパックが前記特定の異常状態ではない場合に前記充電器へ正常情報を出力し、前記充電器から異常設定要求を受信することに応じて、前記バッテリパックが前記特定の異常状態であるか否かにかかわらず前記充電器へ前記異常情報を出力するように構成された情報出力回路と、
を備え、
前記充電器は、
前記充電電力を生成するように構成された充電電力生成回路と、
前記バッテリパックから前記正常情報が入力されることに応じて、前記充電電力生成回路により生成された前記充電電力が前記バッテリパックへ出力されることを許可し、前記バッテリパックから前記異常情報が入力されることに応じて、前記充電電力生成回路により前記充電電力が生成されていてもその充電電力が前記バッテリパックへ出力されることを強制的に抑制するように構成された機能回路と、
自己診断処理を実行するように構成された自己診断回路と、
を備え、
前記自己診断回路は、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合における特定のタイミングで前記バッテリパックへ前記異常設定要求を送信する異常設定要求処理と、
前記異常設定要求処理によって前記充電器に前記異常情報が入力された場合に、前記機能回路の動作状態を反映した動作情報を取得する動作情報取得処理と、
前記動作情報取得処理により取得された前記動作情報に基づいて、前記機能回路が適正に動作するか否か診断する機能回路診断処理と、
を含む前記自己診断処理を実行するように構成されている、
充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記自己診断回路は、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合に、前記充電電力生成回路が適正に動作するか否かを診断すること
を含む前記自己診断処理を実行するように構成されている、
充電システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の充電システムであって、
前記充電器における前記自己診断回路は、
前記動作情報取得処理の実行後に前記バッテリパックへ異常解除要求を送信する異常解除要求処理、
を含む前記自己診断処理を実行するように構成され、
前記バッテリパックにおける前記情報出力回路は、前記充電器から前記異常解除要求を受信することに応じて、前記バッテリパックが前記特定の異常状態であるか否かに応じた前記正常情報又は前記異常情報を前記充電器へ出力するように構成されている、
充電システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の充電システムであって、
前記機能回路は、
前記充電電力生成回路により生成された前記充電電力を前記充電器に装着された前記バッテリパックへ供給するように構成された電力経路と、
スイッチ駆動信号が入力されることに応じて前記電力経路を導通し、前記スイッチ駆動信号が入力されないことに応じて前記電力経路を遮断するように構成されたスイッチ回路と、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合、前記スイッチ回路を前記スイッチ駆動信号に応じて作動させ、前記充電器に前記異常情報が入力されている場合、前記スイッチ回路に前記スイッチ駆動信号が入力されているか否かにかかわらず前記スイッチ回路に強制的に前記電力経路を遮断させるように構成された強制遮断回路と、
を備える、充電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の充電システムであって、
さらに、
前記スイッチ回路に並列に接続され、事前充電信号が入力されることに応じて、前記充電電力を制限して前記バッテリパックへ出力するように構成された事前充電回路と、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合、前記事前充電回路を前記事前充電信号に応じて作動させ、前記充電器に前記異常情報が入力されている場合、前記事前充電信号が入力されているか否かににかかわらず前記事前充電回路の動作を停止させるように構成された強制停止回路と、
を備え
前記自己診断回路は、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合における前記強制停止回路の動作状態と、前記異常設定要求処理によって前記充電器に前記異常情報が入力されている場合における前記強制停止回路の動作状態とを比較することによって、前記強制停止回路が適正に動作するか否かを診断すること、
を含む前記自己診断処理を実行するように構成されている、
充電システム。
【請求項6】
電動作業機及び充電器に着脱可能に構成されたバッテリパックであって、
前記充電器から供給される充電電力によって充電されるように構成されたバッテリと、
前記バッテリパックが特定の異常状態である場合に前記充電器へ異常情報を出力し、前記バッテリパックが前記特定の異常状態ではない場合に前記充電器へ正常情報を出力し、前記充電器から異常設定要求を受信することに応じて、前記バッテリパックが前記特定の異常状態であるか否かにかかわらず前記充電器へ前記異常情報を出力するように構成された情報出力回路と、
を備える、バッテリパック。
【請求項7】
電動作業機に着脱可能に構成されたバッテリパックを着脱可能に構成され、前記バッテリパックへ充電電力を供給するように構成された充電器であって、
前記充電電力を生成するように構成された充電電力生成回路と、
前記バッテリパックから正常情報が入力されることに応じて、前記充電電力生成回路により生成された前記充電電力が前記バッテリパックへ出力されることを許可し、前記バッテリパックから異常情報が入力されることに応じて、前記充電電力生成回路により前記充電電力が生成されていてもその充電電力が前記バッテリパックへ出力されることを強制的に抑制するように構成された機能回路であって、前記バッテリパックは、前記バッテリパックが特定の異常状態である場合に前記充電器へ前記異常情報を出力し、前記バッテリパックが前記特定の異常状態ではない場合に前記充電器へ前記正常情報を出力し、前記充電器から異常設定要求を受信することに応じて、前記バッテリパックが前記特定の異常状態であるか否かにかかわらず前記充電器へ前記異常情報を出力するように構成されている、機能回路と、
自己診断処理を実行するように構成された自己診断回路と、
を備え、
前記自己診断回路は、
前記充電器に前記正常情報が入力されている場合における特定のタイミングで前記バッテリパックへ前記異常設定要求を送信する異常設定要求処理と、
前記異常設定要求処理によって前記充電器に前記異常情報が入力された場合に、前記機能回路の動作状態を反映した動作情報を取得する動作情報取得処理と、
前記動作情報取得処理により取得された前記動作情報に基づいて、前記機能回路が適正に動作するか否か診断する機能回路診断処理と、
を含む前記自己診断処理を実行するように構成されている、
充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリを充電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、バッテリを充電する充電器が開示されている。特許文献1に開示された充電器は、バッテリの充電開始前に、充電器が正常に動作するか否かを確認するための自己診断を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5576264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常が生じている充電器でバッテリパックが充電されると、バッテリパックが適正に充電されない可能性があるのに加え、充電器及びバッテリパックの故障が発生する可能性もある。そのため、充電器においてはより高い信頼性が望まれる。
【0005】
本開示の1つの局面は、信頼性のより高い充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面における充電システムは、バッテリパックと、充電器とを備える。バッテリパックは、電動作業機に着脱可能であって、電動作業機へ電力を供給するように構成されている。充電器は、バッテリパックを着脱可能であって、バッテリパックへ充電電力を供給するように構成されている。
【0007】
バッテリパックは、バッテリと、情報出力回路とを備える。バッテリは、充電電力により充電されるように構成されている。情報出力回路は、バッテリパックが特定の異常状態である場合に充電器へ異常情報を出力し、バッテリパックが特定の異常状態ではない場合に充電器へ正常情報を出力する。情報出力回路は、さらに、充電器から異常設定要求を受信することに応じて、バッテリパックが特定の異常状態であるか否かにかかわらず充電器へ異常情報を出力する。
【0008】
充電器は、充電電力生成回路と、機能回路と、自己診断回路とを備える。充電電力生成回路は、充電電力を生成する。機能回路は、バッテリパックから正常情報が入力されることに応じて、充電電力生成回路により生成された充電電力がバッテリパックへ出力されることを許可し、バッテリパックから異常情報が入力されることに応じて、充電電力生成回路により充電電力が生成されていてもその充電電力がバッテリパックへ出力されることを強制的に抑制する。自己診断回路は、自己診断処理を実行する。
【0009】
自己診断処理は、異常設定要求処理と、動作情報取得処理と、機能回路診断処理とを含む。異常設定要求処理は、充電器に正常情報が入力されている場合における特定のタイミングでバッテリパックへ異常設定要求を送信する。動作情報取得処理は、異常設定要求処理によって充電器に異常情報が入力された場合に、機能回路の動作状態を反映した動作情報を取得する。機能回路診断処理は、動作情報取得処理により取得された動作情報に基づいて、機能回路が適正に動作するか否か診断する。
【0010】
このように構成された充電システムでは、充電器における自己診断処理が、バッテリパックと連携して行われる。即ち、自己診断処理では、意図的にバッテリパックに異常情報を出力させ、その異常情報に対して充電器の機能回路が適正に動作するか否かが判断される。そのため、信頼性のより高い充電器を提供することが可能となる。
【0011】
なお、「機能回路が適正に動作する」、とは、例えば、機能回路が、充電電力生成回路により充電電力が生成されていてもその充電電力がバッテリパックへ出力されることを強制的に抑制するように動作すること、であってもよい。
【0012】
また、機能回路は、ソフトウェア処理を行わずハードウェア処理によって機能を達成するように構成されていてもよい。機能回路は、例えば、特定の制御信号を受けてその制御信号に基づいて充電電力をバッテリパックへ出力する又は充電電力の出力を停止する機能を備えつつ、バッテリパックから異常情報が入力されることに応じて、制御信号にかかわらず充電電力がバッテリパックへ出力されることを強制的に抑制する機能を備えていてもよい。
【0013】
自己診断回路は、特定機能診断処理を含む自己診断処理を実行するように構成されていてもよい特定機能診断処理は、充電器に正常情報が入力されている場合に、充電器において特定の機能が適正に達成されるか否かを診断する。
【0014】
このように構成された充電システムでは、バッテリパックから充電器に正常情報が入力されている場合と異常情報が入力されている場合とでそれぞれ充電器が適正に動作するか否かを診断できる。そのため、充電器の信頼性をさらに高めることができる。
【0015】
充電器における自己診断回路は、異常解除要求処理を含む自己診断処理を実行するように構成されていてもよい。異常解除要求処理は、動作情報取得処理の実行後にバッテリパックへ異常解除要求を送信する。バッテリパックにおける情報出力回路は、充電器から異常解除要求を受信することに応じて、バッテリパックが特定の異常状態であるか否かに応じた正常情報又は異常情報を充電器へ出力するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成された充電システムでは、充電器は、異常設定要求によって意図的に異常情報を出力させた後、異常解除要求によって、その意図的な異常情報の出力を容易に解除させることができる。
【0017】
機能回路は、電力経路と、スイッチ回路と、強制遮断回路とを備えていてもよい。電力経路は、充電電力生成回路により生成された充電電力を充電器に装着されたバッテリパックへ供給するように構成されている。スイッチ回路は、スイッチ駆動信号が入力されることに応じて電力経路を導通し、スイッチ駆動信号が入力されないことに応じて電力経路を遮断するように構成されている。強制遮断回路は、充電器に正常情報が入力されている場合、スイッチ回路をスイッチ駆動信号に応じて作動させ、充電器に異常情報が入力されている場合、スイッチ回路にスイッチ駆動信号が入力されているか否かにかかわらずスイッチ回路に強制的に電力経路を遮断させるように構成されている。
【0018】
このように構成された充電システムでは、バッテリパックからの異常情報によってスイッチ回路が電力経路を強制的に遮断するか否かを適切に診断することができる。
充電器は、さらに、別体の機能回路を備えていてもよい。別体の機能回路は、バッテリパックから正常情報が入力されている場合とバッテリパックから異常情報が入力されている場合とで異なる機能を達成するように構成されている。
【0019】
自己診断回路は、別体診断処理を含む自己診断処理を実行してもよい。別体診断処理は、充電器に正常情報が入力されている場合における別体の機能回路の動作状態と、異常設定要求処理によって充電器に異常情報が入力されている場合における別体の機能回路の動作状態とを比較することによって、別体の機能回路が適正に動作するか否かを診断する。
【0020】
このように構成された充電システムでは、機能回路と別体の機能回路の両方の診断を適切且つ効率的に行うことが可能となり、これら両方を備えた充電器の信頼性を向上させることが可能となる。
【0021】
別体の機能回路は、事前充電回路と、強制停止回路とを備えていてもよい。事前充電回路は、スイッチ回路に並列に接続され、充電信号が入力されることに応じて、充電電力を制限してバッテリパックへ出力するように構成されている。強制停止回路は、充電器に正常情報が入力されている場合、事前充電回路を事前充電信号に応じて作動させ、充電器に異常情報が入力されている場合、事前充電信号が入力されているか否かににかかわらず事前充電回路の動作を停止させるように構成されている。
【0022】
このように構成された充電システムでは、バッテリパックからの異常情報によって事前充電回路が動作を停止するか否かを適切に診断することができる。
本開示の別の1つの局面におけるバッテリパックは、電動作業機及び充電器に着脱可能に構成されている。そのバッテリパックは、バッテリと、情報出力回路とを備える。バッテリは、充電器から供給される充電電力によって充電される。情報出力回路は、バッテリパックが特定の異常状態である場合に充電器へ異常情報を出力し、バッテリパックが特定の異常状態ではない場合に充電器へ正常情報を出力し、充電器から異常設定要求を受信することに応じて、バッテリパックが特定の異常状態であるか否かにかかわらず充電器へ異常情報を出力する。
【0023】
このように構成されたバッテリパックでは、充電器からの異常設定要求を受信すると、特定の異常状態ではない場合であっても異常情報を出力する。これにより、充電器においては、バッテリパックから異常情報が出力された場合の動作を確認することが可能となり、充電器の信頼性向上に寄与できる。
【0024】
本開示のさらに別の1つの局面における充電器は、電動作業機に着脱可能に構成されたバッテリパックを着脱可能に構成され、バッテリパックへ充電電力を供給するように構成されている。充電器は、充電電力生成回路と、機能回路と、自己診断回路とを備える。
【0025】
充電電力生成回路は、充電電力を生成する。機能回路は、バッテリパックから正常情報が入力されることに応じて、充電電力生成回路により生成された充電電力がバッテリパックへ出力されることを許可し、バッテリパックから異常情報が入力されることに応じて、充電電力生成回路により充電電力が生成されていてもその充電電力がバッテリパックへ出力されることを強制的に抑制する。なお、バッテリパックは、バッテリパックが特定の異常状態である場合に充電器へ異常情報を出力し、バッテリパックが特定の異常状態ではない場合に充電器へ正常情報を出力し、充電器から異常設定要求を受信することに応じて、バッテリパックが特定の異常状態であるか否かにかかわらず充電器へ異常情報を出力するように構成されている。自己診断回路は、自己診断処理を実行する。
【0026】
自己診断処理は、異常設定要求処理と、動作情報取得処理と、機能回路診断処理とを含む。異常設定要求処理は、充電器に正常情報が入力されている場合における特定のタイミングでバッテリパックへ異常設定要求を送信する。動作情報取得処理は、異常設定要求処理によって充電器に異常情報が入力された場合に、機能回路の動作状態を反映した動作情報を取得する。機能回路診断処理は、動作情報取得処理により取得された動作情報に基づいて、機能回路が適正に動作するか否か診断する。
【0027】
このように構成された充電器では、自己診断処理がバッテリパックと連携して行われるため、信頼性のより高い充電器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態のバッテリパックの電気的構成を示す説明図である。
図2】実施形態の充電器の電気的構成を示す説明図である。
図3】実施形態の作業機本体の電気的構成を示す説明図である。
図4】充電器におけるスイッチング起動回路の具体的構成を示す電気回路図である。
図5】充電器におけるラインスイッチ回路及びプリ充電回路の具体的構成を示す電気回路図である。
図6】充電器における自己診断の実行例を示すタイムチャートである。
図7】充電器で実行される充電器メイン処理の一部のフローチャートである。
図8】充電器で実行される充電器メイン処理の他の一部(図7の続き)のフローチャートである。
図9】バッテリパックで実行されるバッテリメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しつつ、本開示の例示的な実施形態を説明する。
[実施形態]
(1)充電システム及び電動作業機の概要
図1図3を参照して、本実施形態の充電システム及び電動作業機について説明する。
【0030】
本実施形態の充電システムは、図1に示すバッテリパック10と、図2に示す充電器40とを備える。充電器40は、バッテリパック10を着脱可能に構成されている。
図1に示すように、バッテリパック10はバッテリ20を備える。バッテリ20は、充電及び放電が可能な二次電池である。バッテリ20は、どのような二次電池であってもよい。本実施形態では、バッテリ20は例えばリチウムイオン電池である。
【0031】
本実施形態のバッテリ20は、直列接続された第1セル群21及び第2セル群22を備える。第1セル群21及び第2セル群22は、それぞれ、複数のセルを備える。第1セル群21及び第2セル群22の各々において、複数のセルは、どのように接続されていてもよい。本実施形態では、第1セル群21及び第2セル群22の各々において、複数のセルは、例えば直列接続されている。
【0032】
第1セル群21及び第2セル群22の定格電圧値はどのような値であってもよい。本実施形態では、第1セル群21及び第2セル群22の定格電圧値はいずれも例えば28.8Vであり、バッテリ20の定格電圧値は例えば57.6Vである。また、本実施形態の第1セル群21及び第2セル群22の各々は、例えば、直列接続された8個のセルを備え、各セルの定格電圧値は例えば3.6Vである。
【0033】
バッテリ20の実際の電圧値は、充電状態によって変化し得る。具体的には、バッテリ20の電圧値は57.6Vよりも低い値になり得るし、57.6Vよりも高い値(例えば64V)にもなり得る。なお、上述した、バッテリ20におけるセルの数、セルの定格電圧値、バッテリ20の定格電圧値は、一例である。バッテリ20におけるセルの数、セルの定格電圧値、バッテリ20の定格電圧値は様々な値をとり得る。
【0034】
バッテリパック10は、後述する作業機本体200(図3参照)を含む各種の電動機器に着脱可能である。バッテリパック10は、バッテリパック10が装着された電動機器へバッテリ20の電力(以下、「バッテリ電力」と称する)を供給するように構成されている。
【0035】
本実施形態の電動作業機は、図1に示すバッテリパック10と、図3に示す作業機本体200とを備える。作業機本体200は、バッテリパック10を着脱可能に構成されている。
【0036】
作業機本体200にバッテリパック10が装着されると、作業機本体200にバッテリ電力が入力される。作業機本体200は、バッテリ電力によって作動する。
作業機本体200は、例えば園芸用、石工用、金工用、木工用などの各種の用途のいずれかに応じた作業を行うことが可能に構成されている。本実施形態の電動作業機は、例えば、草や小径木などを刈り払うための充電式刈払機であってもよい。
【0037】
(2)バッテリパックの構成
図1に示すように、バッテリパック10は、正極端子11、負極端子12、センター端子13、ES端子14、及び通信端子15を備える。
【0038】
正極端子11は、バッテリ20の正極(詳しくは第1セル群21の正極)に接続されている。負極端子12は、バッテリ20の負極(詳しくは第2セル群22の負極)に接続されている。センター端子13は、バッテリ20における第2セル群22の正極(換言すれば第1セル群21の負極)に接続されている。
【0039】
図1に示すように、バッテリパック10は、さらに、バッテリ制御回路23と、ES出力回路24と、通信回路25と電源回路31とを備えている。
ES出力回路24は、ES端子14に接続されている。通信回路25は、通信端子15に接続されている。また、ES出力回路24及び通信回路25は、バッテリ制御回路23に接続されている。
【0040】
電圧検出回路32は、バッテリ20の電圧(以下、「バッテリ電圧」と称する)の値(以下、「バッテリ電圧値」と称する)を示すバッテリ電圧情報をバッテリ制御回路23へ出力する。バッテリ電圧情報には、例えば、第1セル群21の電圧値を示す情報、第2セル群22の電圧値を示す情報、及びバッテリ20の電圧値を示す情報、のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0041】
電流検出回路33は、バッテリ20から電動機器への放電時においては、バッテリ20から放電される放電電流の値を示す放電電流情報をバッテリ制御回路23へ出力する。電流検出回路33は、充電器40によるバッテリ20の充電時においては、充電器40からバッテリ20へ供給される充電電流の値を示す充電電流情報をバッテリ制御回路23へ出力する。
【0042】
温度検出回路34は、バッテリ20の温度を検出し、その検出した温度を示す温度情報をバッテリ制御回路23へ出力する。
電源回路31には、バッテリ電圧が、遮断回路30を介して入力される。遮断回路30は、バッテリ20の正極と電源回路31とを接続する通電経路に設けられ、この通電経路を導通又は遮断する。遮断回路30は、バッテリ制御回路23によってオン又はオフされる。遮断回路30がオンされると、上述の通電経路が導通され、遮断回路30がオフされると、上述の通電経路が遮断される。遮断回路30は、どのように構成されていてもよい。遮断回路30は、例えば、上記通電経路を導通又は遮断するスイッチング素子を備えていてもよい。
【0043】
電源回路31は、入力される直流の電圧を、その入力される電圧の電圧値よりも低い電圧値を有する直流の制御電圧Vcに変換して出力する。電源回路31により生成される制御電圧Vcは、バッテリ制御回路23を含む、バッテリパック10内の各部において、それらの電源として用いられる。
【0044】
電源回路31は、どのように構成されていてもよい。電源回路31は、スイッチングレギュレータまたはリニアレギュレータを備え、そのスイッチングレギュレータまたはリニアレギュレータによって入力電圧を制御電圧Vcに変換するように構成されていてもよい。制御電圧Vcの電圧値及び第1電源電圧Vccの電圧値はいずれもどのような値であってもよい。
【0045】
バッテリ制御回路23は、例えば、CPU及びメモリを含むマイクロコンピュータを備えている。メモリは、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリを含んでもよい。メモリは、CPUがバッテリパック10の各種機能を達成するために読み込み、実行する各種プログラムやデータを記憶する。メモリに記憶されているプログラムには、後述するバッテリメイン処理のプログラムが含まれる。これら各種機能は、ソフトウェア処理に限るものではなく、その一部又は全部が、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて達成されてもよい。
【0046】
バッテリ制御回路23は、バッテリパック10に充電器40又は作業機本体200が装着されているか否かを検出するように構成されている。バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が充電器40に装着されたことを検出すると、バッテリ側充電制御処理を実行する。バッテリ側充電制御処理では、バッテリ電圧情報、放電電流情報、充電電流情報及び温度情報などの各種情報に基づいて、充電器40によるバッテリ20の充電を制御する。バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が作業機本体200に装着されたことを検出すると、前述の各種情報に基づいて、バッテリ20から作業機本体200への放電を制御する。
【0047】
バッテリ制御回路23は、データ通信(例えばシリアル通信)機能を備えている。具体的には、バッテリ制御回路23は、送信データを通信回路25を介して通信端子15から送信する。また、バッテリ制御回路23は、通信端子15に入力された受信データを通信回路25を介して受信する。なお、送信データを送信するための送信端子と、受信データを受信するための受信端子とを別々に備えていてもよい。
【0048】
バッテリ制御回路23は、バッテリ側充電制御処理において、充電器40とデータ通信を行うことにより、バッテリ20の充電に必要な情報を送受信する。具体的には、例えば、バッテリ制御回路23は、バッテリ電圧に基づいて、バッテリ20を充電するために必要な充電電流の値を演算し、その値を示す充電電流指令値を充電器40へ送信する。
【0049】
バッテリ制御回路23は、電圧検出回路32から入力されるバッテリ電圧情報に基づいて、バッテリ20が過放電状態であるか否か判断する。バッテリ制御回路23は、バッテリ20が過放電状態であるか否かをどのような方法で判断してもよい。バッテリ制御回路23は、例えば、バッテリ電圧情報が示すバッテリ電圧値が所定の電圧下限値未満である場合に過放電状態であると判断してもよい。
【0050】
バッテリ制御回路23は、バッテリ20が過放電状態ではない間は、遮断回路30をオンすることにより、バッテリ電力を、遮断回路30を介して電源回路31へ供給させる。この場合、電源回路31は、バッテリ電圧を制御電圧Vcに変換して出力する。
【0051】
バッテリ制御回路23は、バッテリ20が過放電状態であると判断した場合は、バッテリ制御回路23をシャットダウンモードに設定する。具体的には、バッテリ制御回路23は、遮断回路30をオフして電源回路31へのバッテリ電圧の入力を遮断することにより、電源回路31からの制御電圧Vcの出力を停止させる。シャットダウンモードでは、バッテリ制御回路23に制御電圧Vcが入力されなくなるため、バッテリ制御回路23の動作が停止される。
【0052】
なお、電圧検出回路32は、バッテリ20における各セルの電圧値を示す情報をバッテリ制御回路23へ出力してもよい。この場合、バッテリ制御回路23は、少なくとも1つのセルの電圧値が所定のセル電圧下限値未満である場合に過放電状態であると判断してもよい。
【0053】
また、電圧検出回路32が、バッテリ20が過放電状態であるか否かの判断を行ってもよい。即ち、電圧検出回路32は、バッテリ電圧値が所定の電圧下限値未満である場合、または少なくとも1つのセルの電圧値が所定のセル電圧下限値未満である場合に、過放電状態であると判断してもよい。この場合、バッテリ制御回路23は、電圧検出回路32によって過放電状態であると判断された場合に、遮断回路30をオフしてもよい。
【0054】
シャットダウンモードのバッテリ制御回路23は、動作を停止しているため、自ら遮断回路30をオンすることはできない。バッテリ制御回路23のシャットダウンモードは、作動中の充電器40にバッテリパック10を装着することによって解除される。本実施形態のバッテリパック10は、作動中の充電器40に装着されると、充電器40から、後述する第1電源電圧Vccが入力されるように構成されている。充電器40から入力された第1電源電圧Vccは、電源回路31に入力される。
【0055】
シャットダウンモード中に電源回路31に第1電源電圧Vccが入力されると、電源回路31は、第1電源電圧Vccを制御電圧Vcに変換して出力する。これにより、バッテリ制御回路23が起動する。シャットダウンモード中に起動したバッテリ制御回路23は、バッテリ20が充電されることによってバッテリ電圧値が電圧下限値以上になると、遮断回路30をオンすることにより、シャットダウンモードを解除する。これにより、バッテリ電圧が電源回路31に入力され、電源回路31は、バッテリ電圧から制御電圧Vcを生成可能となる。
【0056】
バッテリ制御回路23は、さらに、バッテリパック10が特定の異常状態であるか否かを監視し、その監視結果に応じて、許可指令または禁止指令をES出力回路24へ出力する。特定の異常状態とは、例えば、バッテリ20からの放電及びバッテリ20の充電を停止させるべき状態であってもよい。
【0057】
バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が特定の異常状態であるか否かをどのような方法で判断してもよい。バッテリ制御回路23は、例えば、前述のバッテリ電圧情報、放電電流情報、充電電流情報及び温度情報の少なくとも1つに基づいて、バッテリパック10が特定の異常状態であるか否かを判断してもよい。
【0058】
また、特定の異常状態は、どのような状態であってもよい。例えば、バッテリ20が過放電状態である場合、または過放電状態が一定時間継続した場合に、バッテリパック10が特定の異常状態であると判断してもよい。また例えば、バッテリ20からの放電電流の値が所定の電流上限値を超えた場合、または電流上限値を超えた状態が一定時間継続した場合に、バッテリパック10が特定の異常状態であると判断してもよい。また例えば、バッテリ20の温度が所定の温度上限値を超えた場合、または温度上限値を超えた状態が一定時間継続した場合に、バッテリパック10が特定の異常状態であると判断してもよい。
【0059】
バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が特定の異常状態ではない場合、ES出力回路24へ許可指令(本実施形態では例えばHレベルの信号)を出力する。バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が特定の異常状態である場合、ES出力回路24へ禁止指令(本実施形態では例えばLレベルの信号)を出力する。
【0060】
ES出力回路24は、ES指令を出力する。ES指令には、ES許可指令及びES禁止指令が含まれる。ES出力回路24は、バッテリ制御回路23から許可指令が入力されると、ES端子14を介してES許可指令を出力する。ES出力回路24は、バッテリ制御回路23から禁止指令が入力されると、ES端子14を介してES禁止指令を出力する。
【0061】
より具体的には、本実施形態のES出力回路24は、バッテリ制御回路23から許可指令が入力されると、ES端子14の入力インピーダンス(即ちES端子14からみたES出力回路24のインピーダンス)を低インピーダンスにする。一方、本実施形態のES出力回路24は、バッテリ制御回路23から禁止指令が入力されると、ES端子14の入力インピーダンスを高インピーダンスにする。つまり、本実施形態のES出力回路24において、ES許可指令を出力する、とは、ES端子14の入力インピーダンスを低インピーダンスにすることを意味し、ES禁止指令を出力する、とは、ES端子14の入力インピーダンスを高インピーダンスにすることを意味する。ただし、ES許可指令及びES禁止指令は、電気的にどのような状態をとるものであってもよい。
【0062】
(3)充電器の構成
図2に示すように、充電器40は、正極端子41、負極端子42、センター端子43、ES端子44、及び通信端子45を備える。
【0063】
充電器40にバッテリパック10が装着されると、正極端子41にバッテリパック10の正極端子11が接続され、負極端子42にバッテリパック10の負極端子12が接続され、センター端子43にバッテリパック10のセンター端子13が接続され、ES端子44にバッテリパック10のES端子14が接続され、通信端子45にバッテリパック10の通信端子15が接続される。
【0064】
充電器40は、さらに、電源プラグ50と、整流回路51と、PFC(Power Factor Correction)回路52と、平滑回路53と、メインコンバータ54と、正極ライン55と、負極ライン56と、セル群切替回路57と、ラインスイッチ回路58と、プリ充電回路59と、充電制御回路60と、電流検出回路61と、差動増幅回路62と、ローパスフィルタ63と、出力設定回路64と、スイッチング起動回路67とを備える。
【0065】
電源プラグ50は、例えば交流100Vの電圧を供給する商用電源などの交流電源に接続され、交流電源から交流電力を受けるように構成されている。整流回路51は、電源プラグ50から入力される交流電力を整流(例えば全波整流)して出力する。PFC回路52は、整流回路51に入力される交流電力の力率を改善する。平滑回路53は、PFC回路52から出力された電力を平滑化する。本実施形態の平滑回路53は、平滑回路53に入力された電力を平滑化するためのコンデンサを備えている。PFC回路52が設けられている目的の1つは、電源プラグ50から入力される交流電力における交流電流の波形を正弦波に近づけることにより交流電力の力率を1に近づけることである。
【0066】
メインコンバータ54は、平滑回路53によって平滑化された直流電力を、バッテリ20の充電に適した電圧を有する充電電力に変換し、出力する。メインコンバータ54は、本実施形態では例えば絶縁型の降圧スイッチング電源回路として構成されている。
【0067】
より具体的には、メインコンバータ54は、変圧器54aと、メインスイッチ54bと、スイッチング制御回路54cとを備える。変圧器54aにおける1次側(即ち1次巻線)には、平滑回路53によって平滑化された直流電力が入力される。
【0068】
メインスイッチ54bは、変圧器54aにおける1次側において、前述の直流電力の供給経路に設けられ、この供給経路を導通又は遮断する。メインスイッチ54bは、どのようなスイッチであってもよい。本実施形態では、メインスイッチ54bは、半導体スイッチング素子(例えばFET)を備え、この半導体スイッチング素子がオン又はオフされることにより、供給経路が導通又は遮断される。
【0069】
スイッチング制御回路54cは、メインスイッチ54bを制御する。スイッチング制御回路54cは、スイッチング起動回路67から起動信号が入力されると起動し、スイッチング起動回路67から停止信号が入力されると動作を停止する。
【0070】
スイッチング制御回路54cは、起動中、出力設定回路64から入力されるスイッチング制御信号に基づいてメインスイッチ54bをオン又はオフすることにより、変圧器54aの2次側(即ち2次巻線)に、バッテリ20を充電するための充電電力を発生させる。変圧器54aの2次側には、正極ライン55の第1端及び負極ライン56の第1端が接続されている。メインコンバータ54により生成された充電電力は、正極ライン55及び負極ライン56を介してバッテリパック10へ供給される。
【0071】
正極ライン55の第2端及び負極ライン56の第2端は、セル群切替回路57に接続されている。セル群切替回路57は、互いに連動する正極スイッチ57a及び負極スイッチ57bを備える。正極スイッチ57a及び負極スイッチ57bは、c接点型のスイッチである。正極ライン55の第2端は、正極スイッチ57aにおけるコモン端子に接続され、負極ライン56の第2端は、負極スイッチ57bにおけるコモン端子に接続されている。
【0072】
正極スイッチ57aにおける第1端子は正極端子41に接続され、正極スイッチ57aにおける第2端子はセンター端子43に接続されている。負極スイッチ57bにおける第1端子はセンター端子43に接続され、負極スイッチ57bにおける第2端子は負極端子42に接続されている。
【0073】
セル群切替回路57は、充電制御回路60から入力される切替指令に従って、第1接続状態または第2接続状態に切り替わる。第1接続状態は、正極スイッチ57a及び負極スイッチ57bのいずれもコモン端子と第1端子とが接続された状態である。第2接続状態は正極スイッチ57a及び負極スイッチ57bのいずれもコモン端子と第2端子とが接続された状態である。
【0074】
本実施形態では、セル群切替回路57が第1接続状態及び第2接続状態に交互に切り替わりながらバッテリ20が充電される。即ち、第1接続状態においては第1セル群21が充電され、第2接続状態においては第2セル群22が充電される。
【0075】
ラインスイッチ回路58は、正極ライン55に設けられ、正極ライン55を導通または遮断する。ラインスイッチ回路58は、充電制御回路60から第1駆動信号Sd1が入力されるとオンして正極ライン55を導通し、充電制御回路60から第1駆動信号Sd1が入力されていない場合はオフして正極ライン55を遮断する。
【0076】
第1駆動信号Sd1は、本実施形態では、所定周波数のパルス信号である。なお、充電制御回路60における第1駆動信号Sd1の出力端子がLレベルにされることが、第1駆動信号Sd1が出力されていない状態に対応する。
【0077】
ラインスイッチ回路58がオンして正極ライン55が導通すると、バッテリパック10へ充電電力を供給可能な状態になる。ラインスイッチ回路58がオフして正極ライン55が遮断されると、バッテリパック10へ充電電力が供給されない状態になる。ラインスイッチ回路58は、どのように構成されていてもよい。本実施形態では、ラインスイッチ回路58は、例えば図5に示すように構成されている。図5に示すラインスイッチ回路58については、後で説明する。
【0078】
充電制御回路60は、例えば、CPU及びメモリを含むマイクロコンピュータを備えている。メモリは、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリを含んでもよい。メモリは、CPUが充電器40の各種機能を達成するために読み込み、実行する各種プログラムやデータを記憶する。メモリに記憶されているプログラムには、後述する充電器メイン処理のプログラムが含まれる。これら各種機能は、ソフトウェア処理に限るものではなく、その一部又は全部が、論理回路やアナログ回路等を組み合わせたハードウェアを用いて達成されてもよい。
【0079】
充電制御回路60は、後述する充電器側充電制御処理によってバッテリ20の充電を行う際、通常充電又はプリ充電を行う。通常充電では、メインコンバータ54で生成された充電電力がラインスイッチ回路58を介してバッテリパック10へ供給される。一方、プリ充電では、メインコンバータ54で生成された充電電力がプリ充電回路59を介してバッテリパック10へ供給される。
【0080】
充電制御回路60は、バッテリ20の充電を行う際、基本的には、通常充電を行う。ただし、充電開始前のバッテリ電圧値が第1下限値(例えば25V)より低い場合、充電制御回路60は、まずプリ充電を実行する。具体的には、ラインスイッチ回路58をオフする一方で、プリ充電回路59へ第2駆動信号Sd2を出力してプリ充電回路59を作動させることにより、充電電力をプリ充電回路59を介してバッテリパック10へ供給する。
【0081】
そして、プリ充電によってバッテリ電圧値が第2下限値以上になった場合、通常充電に移行する。即ち、第2駆動信号Sd2の出力を停止し、第1駆動信号Sd1を出力する。第2下限値は、第1下限値と同じ値であってもよいし、第1下限値とは異なる値であってもよい。
【0082】
プリ充電回路59は、どのように構成されていてもよい。本実施形態では、プリ充電回路59は、例えば図5に示すように構成されている。図5に示すプリ充電回路59については、後で説明する。
【0083】
電流検出回路61は、負極ライン56に設けられている。電流検出回路61は、メインコンバータ54から出力される充電電流の値(充電電流値Ich)を示す電流検出信号Siを出力する。電流検出信号Siは、充電電流値Ichに応じた電圧値を有するアナログ信号である。電流検出回路61は、例えば、負極ライン56に挿入されたシャント抵抗器(不図示)を備え、シャント抵抗器の両端間の電圧に応じた電流検出信号Siを出力するように構成されていてもよい。電流検出信号Siは、充電制御回路60および差動増幅回路62に入力される。
【0084】
充電制御回路60は、充電器側充電制御処理において、バッテリパック10とのデータ通信によってバッテリパック10から前述の充電電流指令値を取得する。充電制御回路60は、取得した充電電流指令値に応じたPWM信号、即ち充電電流指令値に応じたデューティ比のパルス信号を生成し、ローパスフィルタ63へ出力する。ローパスフィルタ63は、充電制御回路60から入力されるPWM信号を平滑化して差動増幅回路62へ出力する。
【0085】
差動増幅回路62は、ローパスフィルタ63によって平滑化されたPWM信号の電圧値(即ち充電電流指令値に対応した値)と、電流検出信号Siの電圧値(即ち実際の充電電流値Ichに対応した値)との差に応じた差動信号Difを出力する。差動信号Difは、出力設定回路64に入力される。本実施形態では、充電電流指令値として、例えば、1000mAまたはその近傍の値を示す充電電流指令値が取得されることがある。
【0086】
本実施形態では、充電制御回路60は、通常充電及びプリ充電のいずれにおいても、充電電流指令値に応じたPWM信号を出力する。そのため、充電電流指令値が例えば1000mAを示している場合は、通常充電時及びプリ充電時のいずれも、1000mAを示すPWM信号を出力する。ただし、プリ充電回路59は、後述するようにリミッタ回路59a(図5参照)を備えており、このリミッタ回路59aによって、プリ充電回路59から出力される充電電流の値は、一定レベル以下(例えば200mA以下)に制限される。
【0087】
出力設定回路64は、CV設定回路81と、CV回路82と、第1フォトカプラ83とを備える。差動信号Difは、第1フォトカプラ83の2次側(即ち不図示の発光ダイオード側)に入力される。第1フォトカプラ83において、フォトダイオードは、差動信号Difに応じた光量の光を発光する。フォトダイオードが発光した光は、第1フォトカプラ83の1次側(即ち不図示のフォトトランジスタ)で受光される。第1フォトカプラ83は、一次側で受光された光量に応じたスイッチング制御信号をスイッチング制御回路54cへ出力する。
【0088】
これにより、スイッチング制御回路54cは、差動信号Difに応じてメインスイッチ54bを駆動することにより、充電電力を生成する。即ち、スイッチング制御回路54cは、差動信号Difがゼロになるように充電電力を生成する。
【0089】
CV設定回路81には、充電制御回路60からCV設定値Dcvが入力される。充電制御回路60は、充電器側充電制御処理において、メインコンバータ54から出力される充電電力の電圧値(充電電圧値Vch)が過大になるのを抑制するために、充電電圧値Vchの上限値を設定し、その上限値を示すデジタルデータである前述のCV設定値Dcvを、CV設定回路81へ出力する。
【0090】
CV設定回路81は、入力されたCV設定値DcvをアナログのCV設定信号に変換するなどの所定の信号処理を行う。CV設定回路81から出力されたCV設定信号は、CV回路82に入力される。
【0091】
CV回路82には、CV設定回路81からのCV設定信号と、実際の充電電圧値Vchを示すアナログの充電電圧信号とが入力される。CV回路82は、CV設定信号と充電電圧信号とを比較し、充電電圧信号がCV設定信号より大きい場合(つまり実際の充電電圧値Vchが充電電圧値Vchの上限値を超えている場合)、両者の差に応じた出力制限信号を第1フォトカプラ83へ出力する。なお、充電電圧信号は、充電制御回路60にも入力される。充電制御回路60は、入力される充電電圧信号に基づいて充電電圧値Vchを取得することができる。
【0092】
第1フォトカプラ83は、CV回路82から出力制限信号を受けた場合、差動信号Difにかかわらず、充電電圧値Vchを抑制するためのスイッチング制御信号をスイッチング制御回路54cへ出力する。これにより、充電電圧値Vchが上限値を超えることが抑制される。
【0093】
なお、充電制御回路60は、通常充電時は、充電電圧値Vchの上限値を例えば38Vに設定し、38Vを示すCV設定値Dcvを出力する。一方、充電制御回路60は、プリ充電時は、充電電圧値Vchの上限値を通常充電時よりも低い値(例えば25V)に設定し、その設定した上限値を示すCV設定値Dcvを出力する。
【0094】
第1フォトカプラ83は、さらに、充電制御回路60から、FB有効信号Sfbが入力されるように構成されている。充電制御回路60は、バッテリ20の充電が不要な場合、FB有効信号Sfbを出力しない。一方、充電制御回路60は、バッテリ20の充電を行う際は、FB有効信号Sfbを出力する。
【0095】
第1フォトカプラ83は、FB有効信号Sfbが入力されている場合は、差動信号Difに応じたスイッチング制御信号をスイッチング制御回路54cへ出力する。一方、第1フォトカプラ83は、FB有効信号Sfbが入力されていない場合は、差動信号Difを無効として、充電電流値Ichを0Aにするため(つまりメインコンバータ54からの充電電力の出力を停止させるため)のスイッチング制御信号を出力する。
【0096】
スイッチング起動回路67は、充電制御回路60からスイッチング起動信号Sacが入力されることに応じて、スイッチング制御回路54cへ起動信号を出力することにより、スイッチング制御回路54cを起動させる。スイッチング起動回路67は、充電制御回路60からスイッチング起動信号Sacが入力されていない場合は、起動信号を出力しない。スイッチング起動信号Sacは、本実施形態では所定周波数(例えば500Hz)のパルス信号である。このパルス信号が出力されずにスイッチング起動信号Sacの出力端子がLレベルにされている状態が、スイッチング起動信号Sacが出力されていない状態に対応する。
【0097】
スイッチング制御回路54cは、スイッチング起動回路67から起動信号が入力されている場合に作動し、出力設定回路64から入力されるスイッチング制御信号に応じてメインスイッチ54bを制御する。スイッチング制御回路54cは、スイッチング起動回路67から起動信号が入力されていない場合は、動作を停止する。この場合、メインスイッチ54bはオフされ、充電電力は生成されない。
【0098】
スイッチング起動回路67の具体的回路構成について、図4を参照して説明する。図4に示すように、スイッチング起動回路67は、抵抗器R31,R32,R33,R34と、コンデンサC31,C32と、スイッチング素子T31,T32と、第2フォトカプラ84とを備える。スイッチング素子T31は、本実施形態では例えばNPN形バイポーラトランジスタである。スイッチング素子T32は、本実施形態では例えばnチャネルMOSFETである。
【0099】
充電制御回路60からのスイッチング起動信号Sac、即ちパルス信号は、コンデンサC31及び抵抗器R31を含む微分回路を介してスイッチング素子T31のベースに入力される。スイッチング素子T31のコレクタには、抵抗器R32を介して第1電源電圧Vccが印加される。
【0100】
スイッチング素子T31のエミッタは、抵抗器R33を介してグランドラインに接続されると共に、抵抗器R34を介してスイッチング素子T32のゲートに接続されている。スイッチング素子T31のエミッタとグランドラインとの間には、抵抗器R33と並列に、コンデンサC32が接続されている。スイッチング素子T32のソースはグランドラインに接続されている。スイッチング素子T32のドレインは第2フォトカプラの2次側(即ち不図示の発光ダイオード)に接続されている。
【0101】
このような構成により、充電制御回路60からスイッチング起動信号Sacが入力されていない場合は、スイッチング素子T31,T32がいずれもオフする。この場合、第2フォトカプラ84は、スイッチング制御回路54cへ停止信号を出力する。一方、充電制御回路60からスイッチング起動信号Sacが入力されている間は、スイッチング起動信号Sacの周波数に応じてスイッチング素子T31が周期的にオン及びオフする。
【0102】
抵抗器R32,R33及びコンデンサC32を含む回路は、積分回路として機能する。即ち、スイッチング素子T31がオンされると、コンデンサC32が、第1電源電圧Vccにより、抵抗器R32とコンデンサC32との時定数τ1に従って充電される。スイッチング素子T31がオフされると、コンデンサC32に充電されている電荷が、抵抗器R33とコンデンサC32との時定数τ2に従い、抵抗器R33を介して放電される。時定数τ1は、時定数τ2よりも小さい。なお、スイッチング素子T32のゲートの入力インピーダンスは非常に大きいため、ゲートに入力される電流は0またはほぼ0である。
【0103】
スイッチング起動回路67にスイッチング起動信号Sacが入力されている間は、上述のようにコンデンサC32が充電されることにより、スイッチング素子T32のゲート電圧はスイッチング素子T32がオンされ得る値に維持され、これによりスイッチング素子T32がオンする。この場合、第2フォトカプラ84は、スイッチング制御回路54cへ起動信号を出力する。
【0104】
一方、スイッチング起動回路67にスイッチング起動信号Sacが入力されていない間は、スイッチング素子T31がオフに維持される。そのため、コンデンサC32の充電電荷は抵抗器R33を介して放電され、スイッチング素子T32もオフに維持される。この場合、第2フォトカプラ84は、スイッチング制御回路54cへ停止信号を出力する。なお、起動信号及び停止信号は、第2フォトカプラ84における、不図示のフォトトランジスタを含む一次側の出力回路から出力される。
【0105】
本実施形態では、スイッチング起動信号Sacは、直流電圧ではなくパルス信号であり、前述の微分回路を介してスイッチング素子T31のベースに入力される。
そのため、仮に、スイッチング起動信号Sacが出力されていないにもかかわらず、スイッチング起動回路67におけるスイッチング起動信号Sacが入力される端子の電圧が、スイッチング素子T31をオンし得る一定値に固定されてしまう異常が生じても、微分回路が介在していることによりスイッチング素子T31はオフに維持される。スイッチング素子T31がオフに維持されると、前述の通り、スイッチング素子T32もオフに維持される。つまり、本実施形態のスイッチング起動回路67では、上記異常が発生した場合にスイッチング素子T31,T32がオンされ続けることが抑制される。
【0106】
正極ライン55における、メインコンバータ54とラインスイッチ回路58との間には、整流回路65と、平滑回路66とが設けられている。本実施形態のメインコンバータ54は絶縁型であるため、メインコンバータ54から出力される充電電力は交流である。整流回路65は、メインコンバータ54から出力された交流の充電電力を整流する。平滑回路66は、整流回路65により整流された充電電力を平滑化する。
【0107】
正極ライン55における、ラインスイッチ回路58とセル群切替回路57との間には、ダイオードD01が設けられている。ダイオードD01は、正極端子41またはセンター端子43から、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59への電流の逆流を抑制する。
【0108】
充電器40は、さらに、サブコンバータ68を備える。サブコンバータ68は、平滑回路53によって平滑化された直流電力を、メインコンバータ54の出力電圧値とは異なる電圧値の電源用電力に変換して出力する。サブコンバータ68は、本実施形態では例えば絶縁型の降圧スイッチング電源回路を備えている。
【0109】
サブコンバータ68から出力された電源用電力は、電源回路69に入力される。電源回路69は、入力された電源用電力から、第1電源電圧Vcc及び第2電源電圧VDを生成する。第1電源電圧Vccの電圧値(例えば5V)は、第2電源電圧VDの電圧値(例えば12V)よりも低い。第1電源電圧Vccは、充電制御回路60を含む、充電器40における各部で、電源として用いられる。第2電源電圧VDは、例えば不図示のファン及びブザーなどの電源として用いられる。
【0110】
充電器40は、さらに、ES入力回路74と、通信回路75とを備える。ES入力回路74は、ES端子44に接続されている。通信回路75は、通信端子45に接続されている。
【0111】
ES入力回路74は、バッテリパック10からES端子44に入力されるES指令に応じたES信号を出力する。ES信号は、ES許可信号及びES禁止信号を含む。ES端子44にES許可指令が入力された場合、ES入力回路74は、ES許可信号を出力する。ES端子44にES禁止指令が入力された場合、ES入力回路74は、ES禁止信号を出力する。ES許可信号及びES禁止信号はどのような信号であってもよい。本実施形態では、ES許可信号はLレベルの信号であり、ES禁止信号はHレベルの信号である。
【0112】
ES入力回路74から出力されたES信号は、充電制御回路60、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59に入力される。
通信回路75は、バッテリパック10から送信されたデータを通信端子45を介して受信し、その受信したデータを中継して充電制御回路60へ出力する。また、充電制御回路60は、バッテリパック10へ送信するデータを、通信回路75へ出力する。通信回路75は、充電制御回路60から入力された送信用のデータを中継して通信端子45を介してバッテリパック10へ送信する。
【0113】
ここで、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59の具体的回路構成について、図5を参照して説明する。図5に示すように、ラインスイッチ回路58は、スイッチング素子T01,T02と、チャージポンプ回路58aと、強制遮断回路58bとを備える。
【0114】
スイッチング素子T01,T2は、正極ライン55において直列接続されている。具体的には、スイッチング素子T01のドレインは、平滑回路66(図2参照)に接続され、充電電力が入力される。スイッチング素子T01のソースは、スイッチング素子T02のソースに接続されている。スイッチング素子T02のドレインは、ダイオードD01(図2参照)を介してセル群切替回路57に接続されている。スイッチング素子T01,T02のゲートは互いに接続されている。
【0115】
したがって、正極ライン55は、スイッチング素子T01,T2がオンしているときに導通し、スイッチング素子T01,T2のいずれか一方でもオフしているときは遮断される。スイッチング素子T01,T02は、本実施形態では例えばnチャネルMOSFETである。
【0116】
チャージポンプ回路58aは、抵抗器R01,R02,R03,R04,R05,R06、コンデンサC01,C02、ダイオードD11,D12,D13,D14、スイッチング素子T03,T04を備える。スイッチング素子T03は、本実施形態では例えばPNP形バイポーラトランジスタである。スイッチング素子T04は、本実施形態では例えばNPN形バイポーラトランジスタである。
【0117】
抵抗器R01及びコンデンサC01は、スイッチング素子T01のゲートとソースの間(即ちスイッチング素子T02のゲートとソースの間)に接続されている。
スイッチング素子T03のエミッタには、第2電源電圧VDが印加される。抵抗器R03は、スイッチング素子T03のベースとエミッタの間に接続されている。スイッチング素子T03のコレクタは、ダイオードD11のアノードに接続されている。ダイオードD11のカソードは、ダイオードD13のアノードに接続されている。ダイオードD13のカソードは、抵抗器R05を介してスイッチング素子T01,T02のゲートに接続されている。
【0118】
ダイオードD11のカソードは、コンデンサC02の第1端にも接続されている。コンデンサC02の第2端はダイオードD14のアノードに接続されている。ダイオードD14のカソードは、抵抗器R06を介してスイッチング素子T04のコレクタに接続されている。抵抗器R02は、スイッチング素子T02のドレインとダイオードD14のアノードとの間に接続されている。
【0119】
スイッチング素子T03のベースには、抵抗器R04の第1端も接続されている。抵抗器R04の第2端はダイオードD12のアノードに接続されている。ダイオードD12のカソードは、ダイオードD14のカソードに接続されている。
【0120】
スイッチング素子T04のエミッタは、グランドラインに接続されている。スイッチング素子T04のベースには、充電制御回路60からの第1駆動信号Sd1が入力される。
強制遮断回路58bは、抵抗器R07,R08,R09と、コンデンサC03と、ダイオードD15と、スイッチング素子T05とを備える。スイッチング素子T05は、本実施形態では例えばnチャネルMOSFETである。
【0121】
ダイオードD15のアノードは、ES入力回路74(図2参照)に接続され、ES入力回路74からES信号(ES許可信号またはES禁止信号)が入力される。ダイオードD15のカソードは、抵抗器R09を介してスイッチング素子T05のゲートに接続されている。スイッチング素子T05のソースはグランドラインに接続されている。抵抗器R08及びコンデンサC03は、それぞれ、スイッチング素子T05のゲートとソースの間に接続されている。スイッチング素子T05のドレインは、抵抗器R07を介して、スイッチング素子T01,T02のゲートに接続されている。
【0122】
強制遮断回路58bにES許可信号(即ちLレベル信号)が入力されると、スイッチング素子T05はオフする。この場合、強制遮断回路58bは、スイッチング素子T01,T02の動作に影響を与えない。つまり、スイッチング素子T01,T02は、第1駆動信号Sd1が入力されているか否かに応じて、オンまたはオフされる。
【0123】
一方、強制遮断回路58bにES禁止信号(即ちHレベル信号)が入力されると、スイッチング素子T05はオンする。この場合、スイッチング素子T01,T02のゲートの電位がグランドラインと同電位またはそれに近い電位となる。そのため、第1駆動信号Sd1が入力されているか否かにかかわらず、スイッチング素子T01,T02はいずれも強制的にオフされる。つまり、ES禁止信号が入力されている間は、充電制御回路60からの第1駆動信号Sd1は無効にされる。
【0124】
強制遮断回路58bにES許可信号が入力されているときに、充電制御回路60から第1駆動信号Sd1が入力されると、スイッチング素子T04は、第1駆動信号Sd1の周波数に応じてオンまたはオフされる。第1駆動信号Sd1によってスイッチング素子T04がオン、オフを繰り返すと、チャージポンプ回路58aが作動してスイッチング素子T01,T02のゲートの電圧が上昇し、スイッチング素子T01,T02がオン(つまりラインスイッチ回路58がオン)する。
【0125】
強制遮断回路58bは、ソフトウェア処理を行わず、ハードウェア処理にて、ES禁止信号が入力されている場合にラインスイッチ回路58を強制的にオフするように構成されている。
【0126】
なお、ダイオードD12は、正極ライン55を流れる充電電流の一部が第2電源電圧VDの供給経路へ流入することを抑制するために設けられている。即ち、本実施形態では、通常充電においては、メインコンバータ54から出力される充電電圧の値(充電電圧値Vch)は、例えば30Vを含む所定範囲の値をとる。一方、第2電源電圧VDの電圧値は本実施形態では12Vであり、充電電圧値Vchとの差が大きい。
【0127】
そのため、仮にダイオードD12が設けられていない場合、スイッチング素子T02のドレインから出力した充電電流の一部が、抵抗器R02、ダイオードD14、抵抗器R04、及び抵抗器R03を経て、電源回路69に流入する可能性がある。そこで、本実施形態では、上記のような充電電流の電源回路69への流入を抑制するために、ダイオードD12が設けられている。
【0128】
次に、プリ充電回路59について説明する。図5に示すように、プリ充電回路59は、抵抗器R11,R12,R14,R15,R16と、ダイオードD21と、スイッチング素子T11,T12と、リミッタ回路59aと、強制遮断回路59bとを備える。リミッタ回路59aは、抵抗器R13と、スイッチング素子T13とを備える。スイッチング素子T11,T13は、本実施形態では例えばPNP形バイポーラトランジスタである。スイッチング素子T12は、本実施形態では例えばNPN形バイポーラトランジスタである。
【0129】
スイッチング素子T11のエミッタは、抵抗器R13を介して正極ライン55(ただしラインスイッチ回路58よりも上流側)に接続されている。つまり、メインコンバータ54からの充電電力が、リミッタ回路59aを介して、スイッチング素子T11のエミッタに入力される。リミッタ回路59aにおいて、スイッチング素子T13のエミッタは正極ライン55に接続され、スイッチング素子T13のベースはスイッチング素子T11のエミッタに接続され、スイッチング素子T13のコレクタはスイッチング素子T11のベースに接続されている。抵抗器R11はスイッチング素子T11のエミッタとベースの間に接続されている。
【0130】
スイッチング素子T11のコレクタは、ダイオードD21のアノードに接続されているダイオードD21のカソードは、抵抗器R12を介して正極ライン55(ただしラインスイッチ回路58よりも下流側)に接続されている。
【0131】
スイッチング素子T11のベースは、抵抗器R14を介してスイッチング素子T12のコレクタに接続されている。スイッチング素子T12のエミッタはグランドラインに接続されている。スイッチング素子T12のベースには、抵抗器R16を介して第2駆動信号Sd2が入力される。抵抗器R15は、スイッチング素子T12のベースとエミッタの間に接続されている。
【0132】
強制遮断回路59bは、ラインスイッチ回路58における強制遮断回路58bと同様に構成されている。強制遮断回路59bにおけるスイッチング素子T05のドレインは、抵抗器R07を介してスイッチング素子T12のベースに接続されている。
【0133】
強制遮断回路59bにES許可信号(即ちLレベル信号)が入力されてスイッチング素子T05がオフしている場合、強制遮断回路59bは、スイッチング素子T12の動作に影響を与えない。つまり、スイッチング素子T12は、第2駆動信号Sd2が入力されているか否かに応じて、オンまたはオフされる。
【0134】
一方、強制遮断回路59bにES禁止信号(即ちHレベル信号)が入力されてスイッチング素子T05がオンすると、スイッチング素子T12のベースの電位がグランドラインと同電位またはそれに近い電位となる。そのため、第2駆動信号Sd2が入力されているか否かにかかわらず、スイッチング素子T12は強制的にオフされる。つまり、ES禁止信号が入力されている間は、充電制御回路60からの第2駆動信号Sd2は無効にされる。
【0135】
強制遮断回路59bにES許可信号が入力されているときに、充電制御回路60から第2駆動信号Sd2が入力されると、スイッチング素子T12はオンする。スイッチング素子T12がオンすると、スイッチング素子T11がオンする。スイッチング素子T11がオンすると、メインコンバータ54から出力された充電電流が、スイッチング素子T11を介してバッテリパック10へ出力される。
【0136】
強制遮断回路59bは、ソフトウェア処理を行わず、ハードウェア処理にて、ES禁止信号が入力されている場合にプリ充電回路59を強制的にオフするように構成されている。
リミッタ回路59aは、プリ充電回路59から出力される充電電流の値を前述の一定レベル以下(例えば200mA以下)に制限する。即ち、リミッタ回路59aは、入力される充電電流の値が上記の一定レベルを超えるとスイッチング素子T13がオンするように構成されている。スイッチング素子T13がオンするとスイッチング素子T11がオフするため、プリ充電回路59からの充電電流の出力が停止される。
【0137】
なお、充電制御回路60は、第1駆動信号Sd1または第2駆動信号Sd2を出力しているときにES禁止信号が入力された場合、ソフトウェア処理によって、その出力している第1駆動信号Sd1または第2駆動信号Sd2を停止する。ただし、充電制御回路60にES禁止信号が入力されてから、充電制御回路60がソフトウェア処理によって第1駆動信号Sd1または第2駆動信号Sd2を停止するまでの間に、一定のタイムラグが生じる。
【0138】
しかし、本実施形態では、ES入力回路74からES禁止信号が出力された場合、充電制御回路60がソフトウェア処理によって第1駆動信号Sd1または第2駆動信号Sd2を停止するよりも先に、強制遮断回路58b,59bによるハードウェア処理によって、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59が強制的にオフされる。
【0139】
このように構成された充電器40では、充電制御回路60は、第1電源電圧Vccが供給されることにより起動すると、後述する充電器メイン処理(図7図8参照)を実行する。充電器メイン処理は、自己診断処理(図7のS140~図8のS300を含む)と、バッテリ20を充電するための前述の充電器側充電制御処理(図8のS310)とを含む。
【0140】
充電制御回路60は、充電器メイン処理において、バッテリパック10が充電器40に装着されたことを検出すると、まず自己診断処理を実行する。自己診断処理は、充電器40が適正に作動するか否かを診断するための処理であり、本実施形態では、後述する第1検査~第5検査を実行する。自己診断処理において、充電器40が適正に作動するとの診断結果が得られた場合、即ち第1検査~第5検査のいずれにおいても適正であるとの結果が得られた場合、充電制御回路60は、充電器側充電制御処理を実行する。
【0141】
充電制御回路60は、充電器側充電制御処理において、バッテリパック10とデータ通信を行いながら、バッテリ20への充電電力の供給を制御することにより、バッテリ20を充電する。具体的には、充電制御回路60は、バッテリパック10から、前述の充電電流指令値を含む、バッテリ20の充電に関わる各種情報を取得する。そして、取得した各種情報に基づいて、バッテリ20への充電電力の出力を制御する。
【0142】
充電制御回路60は、バッテリ20の充電が必要である場合、ES許可信号が入力されていることを条件として、バッテリ20の充電を開始する。即ち、充電制御回路60は、スイッチング起動信号Sacを出力することにより、メインコンバータ54のスイッチング制御回路54cを起動させる。
【0143】
続いて、充電制御回路60は、現在のバッテリ電圧値に基づいて、通常充電またはプリ充電のどちらを実行するかを決定する。通常充電を実行する場合は、ラインスイッチ回路58へ第1駆動信号Sd1を出力することによりラインスイッチ回路58をオンする。プリ充電を実行する場合は、プリ充電回路59へ第2駆動信号Sd2を出力することによりプリ充電回路59を作動させる。
【0144】
また、充電制御回路60は、通常充電かプリ充電かに応じてCV設定値Dcvを設定し、CV設定回路81へ出力する。また、充電制御回路60は、バッテリパック10から取得した充電電流指令値に応じたPWM信号を出力すると共に、FB有効信号Sfbを出力する。
【0145】
これにより、メインコンバータ54にて充電電力が生成される。そして、生成された充電電力がバッテリパック10へ出力されることにより、バッテリ20が充電される。なお、メインコンバータ54からの充電電力は、通常充電時にはラインスイッチ回路58を介してバッテリパック10へ出力され、プリ充電時にはプリ充電回路59を介してバッテリパック10へ出力される。
【0146】
充電制御回路60は、セル群切替回路57を第1接続状態と第2接続状態とに交互に切り替えながらバッテリ20の充電を行う。即ち、第1セル群21の充電と第2セル群22の充電とを並行して実行する。第1接続状態と第2接続状態との切り替えはどのようなタイミングで行ってもよい。例えば、一定期間(例えば1分)毎に切り替えるようにしてもよい。
【0147】
充電制御回路60は、ES禁止信号が入力されている場合は、バッテリ20の充電を行わない。即ち、充電制御回路60は、ES禁止信号が入力されている場合は、第1駆動信号Sd1、第2駆動信号Sd2、スイッチング起動信号Sac、及びFB有効信号を停止すると共に、PWM信号も停止する。これにより、メインコンバータ54が停止され、充電電力は生成されなくなる。
【0148】
(4)作業機本体の構成
図3に示すように、作業機本体200は、正極端子201、負極端子202、ES端子204、及び通信端子205を備える。
【0149】
作業機本体200にバッテリパック10が装着されると、正極端子201にバッテリパック10の正極端子11が接続され、負極端子202にバッテリパック10の負極端子12が接続され、ES端子204にバッテリパック10のES端子14が接続され、通信端子205にバッテリパック10の通信端子15が接続される。
【0150】
作業機本体200は、さらに、モータ駆動回路211と、モータ212と、駆動機構213と、出力ツール214と、駆動スイッチ215と、スイッチ駆動回路216と、操作部217と、操作検出回路218と、駆動制御回路220と、ES入力回路224と、通信回路225と、電源回路230とを備える。
【0151】
モータ駆動回路211には、正極端子201及び負極端子202からバッテリ電力が入力される。モータ駆動回路211は、駆動制御回路220から入力される駆動指令に基づき、モータ212へ電力を供給する。モータ212は、駆動制御回路220から供給される電力により回転する。駆動機構213は、モータ212の回転を出力ツール214に伝達する。出力ツール214は、モータ212の回転力を駆動源として駆動機構213を介して駆動される。出力ツール214は、作業機本体200の外部に作用することにより電動作業機の機能を達成するように構成されている。出力ツール214は、例えば、草や小径木などを刈り払うための回転刃であってもよい。また例えば、出力ツール214は、被加工材に穴を開けるためのドリルビットであってもよい。また例えば、出力ツール214は、送風または吸引するための羽根であってもよい。
【0152】
正極端子201とモータ駆動回路211との間の通電経路には、この通電経路を導通または遮断するための駆動スイッチ215が設けられている。駆動スイッチ215は、駆動制御回路220によりスイッチ駆動回路216を介して制御される。
【0153】
操作部217は、電動作業機の使用者により操作される。操作検出回路218は、使用者による操作部217の操作を検出し、操作を検出した場合に操作検出信号を駆動制御回路220へ出力する。駆動制御回路220は、操作検出信号が入力された場合、駆動スイッチ215をオンすると共に、モータ駆動回路211を駆動することにより、モータ212を回転させる。
【0154】
電源回路230は、バッテリ電圧Vbを、そのバッテリ電圧Vbの電圧値よりも低い電圧値を有する直流の制御電源電圧Vdmに変換して出力する。駆動制御回路220を含む、作業機本体200内の各部は、制御電源電圧Vdmによって動作する。
【0155】
ES入力回路224は、ES端子204に接続されている。通信回路225は、通信端子205に接続されている。
ES入力回路224は、本実施形態では、充電器40におけるES入力回路74と同じ構成を備えている。即ち、ES入力回路224は、前述のES許可信号またはES禁止信号を出力する。ES禁止信号は、駆動制御回路220及びスイッチ駆動回路216に入力される。
【0156】
駆動制御回路220は、ES許可信号が入力されている場合に、操作部217の操作に応じてモータ212を駆動する。駆動制御回路220は、ES禁止信号が入力された場合は、操作部217が操作されていても、駆動回路211の動作を停止するとともに駆動スイッチ215をオフする。スイッチ駆動回路216は、ES許可信号が入力されている場合は、駆動制御回路220による駆動スイッチ215の制御を有効とするが、ES禁止信号が入力された場合は、駆動制御回路220による駆動スイッチ215の制御を無効とし、駆動スイッチ215を強制的にオフする。
【0157】
通信回路225は、バッテリパック10から送信されたデータを通信端子205を介して受信し、その受信したデータを中継して駆動制御回路220へ出力する。また、通信回路225は、駆動制御回路220から出力された送信用のデータを中継して通信端子205へ出力することにより、そのデータをバッテリパック10へ送信する。
【0158】
(5)自己診断処理
次に、充電器40において充電制御回路60が実行する前述の自己診断処理について、図6を参照して具体的に説明する。本実施形態の自己診断処理では、バッテリパック10とのデータ通信が行われ、そのデータ通信によってバッテリパック10の状態が意図的に変化される。そして、その変化の前後でそれぞれ少なくとも1つの検査が行われる。より具体的には、本実施形態では、前述の第1検査~第5検査が順次行われる。なお、自己診断処理は、バッテリパック10からES許可指令が入力されている状態、即ち、ES入力回路74からES許可信号が出力されている状態で、開始される。
【0159】
図6に示すように、充電制御回路60は、充電器40にバッテリパック10が装着された後、自己診断処理を開始する前に、バッテリパック10とデータ通信(後述する充電時初回通信処理)を実行することにより、バッテリパック10が充電器40に装着されたことをバッテリパック10に認識させる。
【0160】
バッテリパック10は、充電器40に装着される前はES端子14からES禁止指令を出力しているが、充電器40とのデータ通信によって充電器40に装着されたことを認識すると、図6に示すように、ES端子14からES許可指令を出力する。
【0161】
図6に示すように、充電制御回路60に入力されるES信号は、バッテリパック10からES禁止指令が出力されているときはES禁止信号であるが、バッテリパック10からES許可指令が出力されると、ES許可信号に切り替わる。充電制御回路60は、充電時初回通信処理の後にES許可信号が入力されると、自己診断処理を開始する。具体的には、まず第1検査を実行する。
【0162】
第1検査の主目的は、メインコンバータ54内のスイッチング制御回路54cが適正に動作することを確認することである。
第1検査は、充電器40の初期状態、即ち、図6に示すようにスイッチング起動信号Sac、FB有効信号Sfb、第1駆動信号Sd1及び第2駆動信号Sd2が全てオフにされ、さらに、PWM信号の設定値が0mAに設定されている状態で、実行する。なお、本実施形態において、信号について「オン」とは、当該信号を出力することを意味し、信号について「オフ」とは、当該信号を出力しないことを意味する。
【0163】
第1検査の実行時、スイッチング制御回路54cに異常がなければ、スイッチング制御回路54cは作動せず、メインスイッチ54bはオフされたままである。そのため、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchはいずれもゼロまたはゼロに近い値になる。
【0164】
一方、スイッチング制御回路54cに異常が生じて、スイッチング制御回路54cが暴走すると、メインコンバータ54から充電電力が出力される可能性がある。この場合、充電電圧値Vthが例えば通常充電時と同等の値(例えば約37V)あるいはそれ以上に上昇し、充電電流値Ithも上昇する可能性がある。
【0165】
そこで、第1検査では、メインコンバータ54から出力される充電電力の電圧値(充電電圧値Vch)及び正極ライン55を流れる充電電流の値(充電電流値Ich)が取得され、これらに基づいて検査される。充電制御回路60は、充電制御回路60に入力される電流検出信号Siに基づいて充電電流値Ichを取得し、充電制御回路60に入力される充電電圧信号に基づいて充電電圧値Vchを取得する。
【0166】
充電制御回路60は、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合、スイッチング制御回路54cが適正に動作すると判断し、第1検査の結果を正常と判断する。充電制御回路60は、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、スイッチング制御回路54cが適正に動作しないと判断し、第1検査の結果を異常と判断する。
【0167】
第1電圧閾値Vth1及び第1電流閾値Ith1は、どのように決定されてもよい。本実施形態では、例えば、第1電圧閾値Vth1は30Vであり、第1電流閾値Ith1は0.5Aである。
【0168】
第1検査の結果が正常であった場合、次に第2検査が実行される。第2検査の主目的は、スイッチング起動信号Sacが適正に機能するか否か、換言すればスイッチング起動信号Sacをオフすることによってスイッチング制御回路54cを停止させて充電電力の出力を停止させることができるか否かを確認することである。
【0169】
第2検査を実行するために、充電制御回路60は、図6に示すように、スイッチング起動信号Sac、第1駆動信号Sd1及び第2駆動信号Sd2をオフに維持する一方、FB有効信号Sfbをオンし、さらに、PWM信号の設定値を、通常充電時に設定され得る所定の値(例えば1000mA)に設定する。その後、第2検査を実行する。
【0170】
この場合、出力設定回路64からは、1000mAの充電電流を生成させるためのスイッチング制御信号がスイッチング制御回路54cへ入力されるが、スイッチング起動信号Sacがオフされている。そのため、スイッチング起動信号Sacが適正に機能していれば、スイッチング制御回路54cは起動せず、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchはいずれもゼロまたはゼロに近い値になる。
【0171】
一方、スイッチング起動信号Sacが適正に機能せず、スイッチング制御回路54cがスイッチング制御信号に基づいて作動して充電電力が生成された場合、充電電圧値Vthが通常充電時と同等の値(例えば約37V)になり、充電電流値IthもPWM信号の設定値に応じた値(例えば約1A)になる可能性がある。
【0172】
そこで、第2検査においても、第1検査と同様、充電制御回路60は、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchを取得する。そして、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合、スイッチング起動信号Sacが適正に機能すると判断し、第2検査の結果を正常と判断する。充電制御回路60は、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、スイッチング起動信号Sacが適正に機能しないと判断し、第2検査の結果を異常と判断する。
【0173】
第2検査の結果が正常であった場合、次に第3検査が実行される。第3検査の主目的は、FB有効信号Sfbが適正に機能するか否か、換言すればFB有効信号Sfbをオフすることによって充電電流の出力を停止させることができるか否かを確認することである。
【0174】
第3検査を実行するために、充電制御回路60は、図6に示すように、FB有効信号Sfbをオフに変え、その後、スイッチング起動信号Sacをオンに変える。その後、第3検査を実行する。
【0175】
この場合、FB有効信号Sfbが正常に機能していれば、出力設定回路64からは、差動信号Difにかかわらず、充電電流の出力を停止させるためのスイッチング制御信号がスイッチング制御回路54cへ出力される。
【0176】
一方、例えば充電制御回路60から第1フォトカプラ83へのFB有効信号Sfbの伝送経路の異常、あるいは第1フォトカプラ83の異常などの、何らかの要因で、FB有効信号Sfbが正常に機能しない場合、スイッチング制御回路54cが、差動信号Difに応じたスイッチング制御信号に基づいて作動する可能性がある。この場合、充電電圧値Vthが通常充電時と同等の値(例えば約37V)になり、充電電流値IthもPWM信号の設定値に応じた値(例えば約1A)になる可能性がある。
【0177】
そこで、第3検査においても、第1検査と同様、充電制御回路60は、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchを取得する。そして、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合、FB有効信号Sfbが適正に機能すると判断し、第3検査の結果を正常と判断する。充電制御回路60は、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、FB有効信号Sfbが適正に機能しないと判断し、第3検査の結果を異常と判断する。
【0178】
第3検査の結果が正常であった場合、次に第4検査が実行される。第4検査の主目的は、バッテリパック10からES禁止指令が入力された場合に、第1駆動信号Sd1が出力されていてもラインスイッチ回路58がハードウェア処理によって(つまり強制遮断回路58bによって)強制的にオフされるか否かを確認することである。
【0179】
第4検査を実行するために、充電制御回路60は、図6に示すように、意図的にバッテリパック10からES禁止指令を出力させる。具体的には、充電制御回路60は、データ通信にてバッテリパック10へES禁止要求を送信する。バッテリパック10のバッテリ制御回路23は、充電器40からES禁止要求を受信すると、バッテリパック10が特定の異常状態ではなくても、ES出力回路24へ禁止指令を出力するように構成されている。そのため、バッテリパック10へES禁止要求が送信されると、バッテリパック10のES端子14からES禁止指令が出力される。これにより、充電器40のES入力回路74からES禁止信号が出力される。さらに、第4検査を実行するために、第1駆動信号Sd1及びFB有効信号Sfbを順次オンに変える。
【0180】
この場合、ES禁止信号が正常に機能していれば、ラインスイッチ回路58は強制的にオフされる。そのため、メインコンバータ54にて充電電力が生成されるものの、ラインスイッチ回路58から充電電流は出力されない。つまり、充電電圧値Vchは通常充電時と同等の値(例えば約37V)になるものの、充電電流値Ithはゼロ又はゼロに近い値になる。
【0181】
一方、例えば強制遮断回路58bの異常などによって、ES禁止信号が正常に機能しない場合、ラインスイッチ回路58はES禁止信号に基づくハードウェア処理によってはオフされない可能性がある。この場合、充電電流値IthはPWM信号の設定値に応じた値(例えば約1A)になる可能性がある。
【0182】
そこで、第4検査においては、充電制御回路60は、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchを取得する。そして、充電電圧値Vchが第2電圧閾値Vth2以上且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合、ES禁止指令によってラインスイッチ回路58が正常にオフされると判断し、第4検査の結果を正常と判断する。充電制御回路60は、充電電圧値Vchが第2電圧閾値Vth2より低い、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、ES禁止指令によってラインスイッチ回路58が正常にオフされないと判断し、第4検査の結果を異常と判断する。
【0183】
第4検査の結果が正常であった場合、次に第5検査が実行される。第5検査の主目的は、バッテリパック10からES禁止指令が入力された場合に、第2駆動信号Sd2が出力されていてもプリ充電回路59がハードウェア処理によって(つまり強制遮断回路59bによって)強制的にオフされるか否かを確認することである。
【0184】
第5検査を実行するために、充電制御回路60は、図6に示すように、第5検査の実行前に、第1駆動信号Sd1をオフに変え、第2駆動信号Sd2をオンに変える。そして、充電電流値Ichを取得し、充電電流保持値Ich0として記憶する。このとき、ES禁止信号が正常に機能していれば、充電電流保持値Ich0はゼロ又はゼロに近い値になる。
【0185】
充電電流保持値Ich0を記憶した後、充電制御回路60は、図6に示すように、バッテリパック10へ、データ通信にて、ES許可要求を送信する。バッテリ制御回路23は、禁止指令を出力しているときに充電器40からES許可要求を受信した場合、バッテリパック10において特定の異常状態が発生しているか否かを判断する。そして、特定の異常状態が発生していない場合は、ES出力回路24へ許可指令を出力する。これにより、バッテリパック10のES端子14からES許可指令が出力され、これを受けた充電器40においては、ES入力回路74からES許可信号が出力される。
【0186】
充電制御回路60は、ES許可信号が出力されていることを確認すると、第5検査を実行する。即ち、現在の充電電流値Ichを取得する。そして、その取得した充電電流値Ichと充電電流保持値Ich0との差(以下、「電流偏差」と称する)が、第2電流閾値Ith2より大きいか否か判断する。電流偏差が第2電流閾値Ith2より大きい場合は、ES禁止指令によってプリ充電回路59がハードウェア処理にて正常にオフされると判断し、第5検査の結果を正常と判断する。充電制御回路60は、電流偏差が第2電流閾値Ith2以下の場合は、ES禁止指令によってプリ充電回路59がハードウェア処理にて正常にオフされないと判断し、第5検査の結果を異常と判断する。
【0187】
第5検査の結果が正常であった場合、充電制御回路60は、自己診断処理を終了する。即ち、図6に示すように、スイッチング起動信号Sac、FB有効信号Sfb、第1駆動信号Sd1及び第2駆動信号Sd2を全てオフにし、さらに、PWM信号の設定値を0mAに設定することにより、充電器40の初期状態に戻す。そして、前述の充電器充電制御処理を開始することにより、バッテリ20の充電を開始する。
【0188】
(6)充電器メイン処理
充電制御回路60が実行する、前述の自己診断処理を含む充電器メイン処理について、図7及び図8を参照して説明する。充電制御回路60は、起動すると、充電器メイン処理を開始する。
【0189】
充電制御回路60は、充電器メイン処理を開始すると、S110で、初期処理を実行する。具体的には、スイッチング起動信号Sac、FB有効信号Sfb、第1駆動信号Sd1及び第2駆動信号Sd2を全てオフし、さらに、PWM信号の設定値を0mAに設定する(つまりPWM信号のデューティ比を例えば0に設定する)。
【0190】
S120では、バッテリパック10が装着されたか否か判断する。バッテリパック10が装着されるまではS120の判断を繰り返す。バッテリパック10が装着された場合、S130に移行する。
【0191】
S130では、充電時初回通信処理を実行する。即ち、バッテリパック10のバッテリ制御回路23とデータ通信を行うことにより、バッテリ制御回路23に、バッテリパック10が充電器40に装着されたことを認識させる。バッテリ制御回路23は、他の機器に装着されていない場合は、ES出力回路24へ禁止指令を出力する。バッテリ制御回路23は、バッテリパック10が充電器40に装着されたことを認識すると、バッテリパック10が特定の異常状態であるか否かを判断する。そして、特定の異常状態ではない場合、ES出力回路24へ許可指令を出力することにより、ES端子14からES許可指令を出力させる。
【0192】
S130では、上述のデータ通信を行った後、バッテリパック10からES許可指令が出力されるのを待つ。そして、充電制御回路60にES許可信号が入力されることによって、バッテリパック10からES許可指令が出力されたことを確認すると、S140に移行する。
【0193】
S140では、第1検査を実行する。具体的には、充電電圧値Vch及び充電電流値Ichを取得する。そして、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1(例えば30V)より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1(例えば0.5A)より小さいか否か判断する。充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、S320に移行する。S320では、第1検査の結果を異常と判断し、所定のエラー処理を実行する。S320のエラー処理実行後は、充電器メイン処理を終了する。
【0194】
S140で、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合は、第1検査の結果を正常と判断し、S150に移行する。
【0195】
S150では、第1検査を行った状態から、FB有効信号Sfbをオンに変更し、さらに、PWM信号の設定値を前述の所定の値(例えば1000mA)に変更する。
S160では、第2検査を実行する。具体的には、充電電圧値Vch及び充電電流値Ichを取得する。そして、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さいか否か判断する。充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、S330に移行する。S330では、第2検査の結果を異常と判断し、所定のエラー処理を実行する。S330のエラー処理実行後は、充電器メイン処理を終了する。
【0196】
S160で、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合は、第2検査の結果を正常と判断し、S170に移行する。
【0197】
S170では、第2検査を行った状態から、まずFB有効信号Sfbをオフに変更し、その後、スイッチング起動信号Sacをオンに変更する。
S180では、第3検査を実行する。具体的には、充電電圧値Vch及び充電電流値Ichを取得する。そして、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さいか否か判断する。充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1以上、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、S340に移行する。S340では、第3検査の結果を異常と判断し、所定のエラー処理を実行する。S340のエラー処理実行後は、充電器メイン処理を終了する。
【0198】
S180で、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さく且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合は、第3検査の結果を正常と判断し、S190に移行する。
【0199】
S190では、バッテリパック10へ、データ通信にて、ES禁止要求を送信する。S200では、一定時間待機する。この一定時間はどの程度の長さであってもよい。この一定時間は、例えば、ES禁止要求を送信したタイミングから、そのES禁止要求に応じてバッテリパック10からES禁止指令が出力されるタイミングまでの時間よりも長い時間であってもよい。
【0200】
S210では、バッテリパック10からES禁止指令が出力されたことを確認できたかどうか判断する。具体的には、充電制御回路60にES禁止信号が入力されれば、ES禁止指令が出力されたと判断する。ES禁止指令が出力されたことを確認できなかった場合は、S350で、所定のエラー処理を実行して、充電器メイン処理を終了する。ES禁止指令が出力されたことを確認できた場合は、S220(図8参照)に移行する。
【0201】
S220では、第3検査を行った状態から、第1駆動信号Sd1をオンに変更し、その後、FB有効信号をオンに変更する。なお、第1駆動信号Sd1をオンするタイミングとFB有効信号をオンするタイミングは上記とは逆であってもよいし、同時であってもよい。
【0202】
S230では、第4検査を実行する。具体的には、充電電圧値Vch及び充電電流値Ichを取得する。そして、充電電圧値Vchが第2電圧閾値Vth2以上且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さいか否か判断する。充電電圧値Vchが第2電圧閾値Vth2より小さい、または充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1以上である場合は、S360に移行する。S360では、第4検査の結果を異常と判断し、所定のエラー処理を実行する。S360のエラー処理実行後は、充電器メイン処理を終了する。
【0203】
S230で、充電電圧値Vchが第2電圧閾値Vth2以上且つ充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さい場合は、第4検査の結果を正常と判断し、S240に移行する。
【0204】
S240では、第4検査を行った状態から、第1駆動信号Sd1をオフし、第2駆動信号をオンする。S250では、充電電流値Ichを取得し、充電電流保持値Ich0として記憶する。
【0205】
S260では、バッテリパック10へ、データ通信にて、ES許可要求を送信する。S270では、一定時間待機する。この一定時間はどの程度の長さであってもよい。この一定時間は、例えば、ES許可要求を送信したタイミングから、そのES許可要求に応じてバッテリパック10からES許可指令が出力されるタイミングまでの時間よりも長い時間であってもよい。
【0206】
S280では、バッテリパック10からES許可指令が出力されたことを確認できたかどうか判断する。具体的には、充電制御回路60にES許可信号が入力されれば、ES許可指令が出力されたと判断する。ES許可指令が出力されたことを確認できなかった場合は、S370で、所定のエラー処理を実行して、充電器メイン処理を終了する。ES許可指令が出力されたことを確認できた場合は、S290に移行する。
【0207】
S290では、第5検査を実行する。具体的には、前述の電流偏差(現在の充電電流値Ichと充電電流保持値Ich0との差)を算出し、その電流偏差が第2電流閾値Ith2(例えば100mA)より大きいか否か判断する。電流偏差が第2電流閾値Ith2以下である場合は、S380で、所定のエラー処理を実行して、充電器メイン処理を終了する。電流偏差が第2電流閾値Ith2より大きい場合は、第5検査の結果を正常と判断し、S300に移行する。
【0208】
S300では、自己診断処理において全ての検査結果が正常であったことに応じて、自己診断処理を終了し、バッテリ20の充電のための準備的処理を行う。具体的には、第5検査を行った状態から、現時点でオンされているスイッチング起動信号Sac、FB有効信号Sfb、及び第2駆動信号Sd2をオフにする。さらに、PWM信号の設定値を0mAに設定する。つまり、充電制御回路60が起動した直後の初期状態(第1検査が実行されるときの状態)に戻す。そして、S310で、前述の充電器側充電制御処理を実行することにより、バッテリ20の充電を制御する。
【0209】
(7)バッテリメイン処理
次に、バッテリパック10のバッテリ制御回路23が実行するバッテリメイン処理について、図9を参照して説明する。バッテリ制御回路23は、起動すると、バッテリメイン処理を開始する。なお、バッテリ制御回路23は、起動時は、ES出力回路24へ禁止指令を出力することにより、ES端子14からES禁止指令を出力する。
【0210】
バッテリ制御回路23は、バッテリメイン処理を開始すると、S510で、バッテリパック10が外部の機器(例えば充電器40、作業機本体200など)と接続されたか否か判断する。外部の機器と接続されていない間は、S510の判断を繰り返す。外部の機器と接続された場合は、S520に移行する。
【0211】
ここで、本実施形態では、バッテリパック10が充電器40に装着されたことによってS510で外部機器に接続されたと判断されたことを想定する。そして、以下では、バッテリメイン処理のうち、バッテリパック10が充電器40に装着された場合に実行される処理について説明する。
【0212】
S520では、充電時初回通信処理を実行する。即ち、充電器40の充電制御回路60とデータ通信を行うことにより、バッテリパック10が充電器40に装着されたことを認識する。S530では、バッテリ制御回路23を、充電器40からの充電電力によるバッテリ20の充電を制御するための充電モードに移行する。
【0213】
S540では、ES許可指令を出力可能な状態であるか否か判断する。具体的には、バッテリパック10が前述の特定の異常状態になっているか否か判断する。特定の異常状態になっている場合は、ES許可指令を出力できない状態であると判断して、S560に移行する。特定の異常状態でなければ、ES許可指令を出力可能な状態であると判断して、S550に移行する。S550では、ES出力回路24へ許可指令を出力することにより、ES端子14からES許可指令を出力する。
【0214】
S560では、充電器40から送信されるES禁止要求(図7のS190参照)を受信する。S570では、充電器40からES禁止要求を受信したことに応じて、バッテリパック10が特定の異常状態であるか否かにかかわらず、ES出力回路24へ禁止指令を出力することにより、ES端子14からES禁止指令を出力する。
【0215】
S580では、充電器40から送信されるES許可要求(図8のS260参照)を受信する。S590では、充電器40からES許可要求を受信したことに応じて、S540と同様に、ES許可指令を出力可能な状態であるか否か判断する。ES許可指令を出力できない状態である場合は、S610に移行する。ES許可指令を出力可能な状態である場合は、S600に移行する。
【0216】
S600では、ES出力回路24へ許可指令を出力することにより、ES端子14からES許可指令を出力する。S610では、前述のバッテリ側充電制御処理を実行することにより、充電器40からの充電電力によるバッテリ20の充電を制御する。
【0217】
ここで、本実施形態の充電システムの特徴について補足説明する。本実施形態では、充電器40は、バッテリパック10とのデータ通信が正常に行えるか否かの診断も可能である。
【0218】
即ち、仮に、充電器40とバッテリパック10とが正常にデータ通信できないような異常が発生している場合、図7のS190で充電器40がバッテリパック10へES禁止要求を送信してもバッテリパック10からES禁止指令が入力されない可能性があり、図8のS260でバッテリパック10へES許可要求を送信してもバッテリパック10からES許可指令が入力されない可能性がある。
【0219】
これに対し、本実施形態では、図7のS210でバッテリパック10からES禁止指令が出力されたことを確認できなかった場合は、S350で所定のエラー処理を実行する。また、図8のS280でバッテリパック10からES許可指令が出力されたことを確認できなかった場合は、S370で所定のエラー処理を実行する。そのため、充電器40とバッテリパック10とが正常にデータ通信できないような異常が発生している場合、エラー処理によって、異常が発生していることを認識することができる。
【0220】
また、前述の特許文献1に開示された充電器では、診断対象の回路自体の自己診断は可能であるものの、その回路がバッテリパックに接続される回路である場合、その回路とバッテリパックとを接続するための別の回路(例えば配線、コネクタなど)に不具合(例えば断線)が生じていてもその不具合を検出することは困難であることが予想される。
【0221】
これに対し、本実施形態では、診断対象の回路とバッテリパック10とを接続するための別の回路の不具合を検出することも可能である。即ち、例えば、ES端子44からES入力回路74を経てラインスイッチ回路58及び/またはプリ充電回路59に至る配線系統に不具合が生じていることを想定する。この場合、ラインスイッチ回路58及び/またはプリ充電回路59に、バッテリパック10からのES指令に応じた適正なES信号が入力されない可能性がある。しかし、このような不具合が生じた場合も、前述のS210またはS280の処理によって、異常が発生していることを認識することができる。
【0222】
また、充電器40で自己診断処理が実行されている間、バッテリパック10の状態の変化に応じてバッテリパック10からのES指令が意図せず変化する可能性がある。これに対し、本実施形態では、ES指令に基づく第4検査(S230)の実行前にはバッテリパック10へES禁止要求を送信し(S190)。ES指令に基づく第5検査(S290)の実行前にはバッテリパック10へES許可要求を送信する(S260)。そのため、第4検査及び第5検査のいずれも、検査目的に応じた適切なES指令がバッテリパック10から入力されている状態で適正に検査を行うことが可能となる。
【0223】
なお、バッテリパック10において、バッテリ制御回路23は本開示における情報出力回路の一例に相当し、ES禁止指令は本開示における異常情報の一例に相当し、ES許可指令は本開示における正常情報の一例に相当する。メインコンバータ54は本開示における充電電力生成回路の一例に相当する。ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59は、本開示における機能回路又は別体の機能回路の一例に相当する。充電制御回路60は本開示における自己診断回路の一例に相当する。充電制御回路60からバッテリパック10へ送信されるES禁止要求は本開示における異常設定要求の一例に相当する。充電制御回路60からバッテリパック10へ送信されるES許可要求は本開示における異常解除要求の一例に相当する。正極ライン55は本開示における電力経路の一例に相当する。ラインスイッチ回路58は本開示におけるスイッチ回路の一例に相当する。プリ充電回路59は本開示における事前充電回路一例に相当する。第1駆動信号Sd1は本開示におけるスイッチ駆動信号の一例に相当する。第2駆動信号Sd2は本開示における事前充電信号の一例に相当する。プリ充電回路59における強制遮断回路59bは本開示における強制停止回路の一例に相当する。
【0224】
S190の処理は本開示における異常設定要求処理の一例に相当する。S230の処理は本開示における動作情報取得処理及び機能回路診断処理の一例に相当する。S140,S160及びS180の処理はいずれも本開示における特定機能診断処理の一例に相当する。S260の処理は本開示における異常解除要求処理の一例に相当する。S290の処理は本開示における別体診断処理の一例に相当する。
【0225】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0226】
(1)上記実施形態では、バッテリパック10からのES禁止指令に応じて適正に作動するか否かの診断対象(以下、「ES対応診断対象」と称する)が、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59であったが、ES対応診断対象は、ラインスイッチ回路58及びプリ充電回路59のうち何れか一方であってもよいし、これら2つの回路とは異なる他の回路であってもよい。
【0227】
(2)ラインスイッチ回路58の自己診断に対応する第4検査において、第5検査と同様に、電流偏差に基づく診断を行うようにしてもよい。逆に、プリ充電回路59の自己診断に対応する第5検査において、第4検査と同様に充電電流値Ich及び充電電圧値Vchに基づく診断を行うようにしてもよいし、充電電流値Ich及び充電電圧値Vchのいずれか一方のみに基づく診断を行うようにしてもよい。
【0228】
(3)第1検査では、正常であることの条件は、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vth1より小さいという条件と、充電電流値Ichが第1電流閾値Ith1より小さいという条件と、を同時に満たすことであったが、これら2つの条件のうち1つのみを判断してもよい。例えば、充電電流値Ichに基づく判断は行わず、充電電圧値Vchが第1電圧閾値Vthより小さければ正常であると判断してもよい。第2検査、第3検査及び第4検査においても同様である。
【0229】
(4)上記実施形態では、自己診断処理において5つの検査(第1検査~第5検査)が実行されたが、実行される検査の数は5つ以外であってもよい。また、各検査においてどのような検査が行われてもよい。
【0230】
(5)上記実施形態では、自己診断処理が、充電器40にバッテリパック10が装着された後、バッテリ20の充電が開始される前に行われたが、自己診断処理はどのタイミングで行われてもよい。また、バッテリパック10が充電器40に装着されている間に自己診断処理が複数回実行されてもよい。
【0231】
(6)上記実施形態では、図7及び図8を参照して説明したように、自己診断処理においていずれかの検査で異常と判断された場合は、その後の検査は行われずエラー処理が行われたが、検査結果に関わらず、全ての検査(上記実施形態では第1検査~第5検査)を実行するようにしてもよい。
【0232】
(7)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0233】
10…バッテリパック、11…正極端子、12…負極端子、20…バッテリ、23…バッテリ制御回路、40…充電器、41…正極端子、42…負極端子、50…電源プラグ、51…整流回路、52…回路、53…平滑回路、54…メインコンバータ、54c…スイッチング制御回路、55…正極ライン、56…負極ライン、58…ラインスイッチ回路、58b,59b…強制遮断回路、59…プリ充電回路、60…充電制御回路、64…出力設定回路、67…スイッチング起動回路、200…作業機本体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9