(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】二重硬化ソフトタッチコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20221017BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20221017BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20221017BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221017BHJP
C09D 7/42 20180101ALI20221017BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D4/02
C09D175/14
C09D5/00 Z
C09D7/42
B05D7/24 302T
(21)【出願番号】P 2018546026
(86)(22)【出願日】2017-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2017053900
(87)【国際公開番号】W WO2017148742
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-01-30
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパニョーラ,リサ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】クラング,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,マンジュリー
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-314779(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073659(WO,A1)
【文献】特開2001-089683(JP,A)
【文献】特開2000-026800(JP,A)
【文献】特許第5876195(JP,B1)
【文献】特開2016-216736(JP,A)
【文献】特表2018-536725(JP,A)
【文献】特開2006-099030(JP,A)
【文献】特開2015-213896(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024686(WO,A1)
【文献】特開2013-213173(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142582(WO,A1)
【文献】米国特許第06335381(US,B1)
【文献】西独国特許出願公開第10048849(DE,A)
【文献】中国特許出願公開第101412860(CN,A)
【文献】特開2007-254529(JP,A)
【文献】国際公開第2012/160891(WO,A1)
【文献】国際公開第03/068870(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198787(WO,A1)
【文献】特表2004-505159(JP,A)
【文献】特開2003-245606(JP,A)
【文献】特表2009-532229(JP,A)
【文献】特開2011-126921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
B05D 7/24
C09D 4/02
C09D 5/00
C09D 7/42
C09D 175/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのポリオール及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるコーティング組成物であって、
前記ポリオールが二官能性であり、
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、
少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート又はその誘導体、又は
少なくとも1つのイソシアネート官能基性含有ウレタンアクリレート
を含み、
前記少なくとも1つのポリイソシアネートが、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,3-ジメチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトジフェニルエーテル、1,5-ジブチルペンタメチレンジイソシアネート、2,3-ビス(8-イソシアナトオクチル)-4-オクチル-5-ヘキシルシクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート及び/又は2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート並びにそれらの異性体及び組合せからなる群より選択され、
前記ポリイソシアネートは、ブロックされていてもよいし、ブロックされていなくてもよく、
前記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート三量体、アロファネート、又は前記ジイソシアネートのウレトジオンであってよく、
(ポリオール+ポリイソシアネート):フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の重量比が、2:1~10:1である、
コーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の官能基を有する少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含む、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート又はその誘導体及び少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基性含有(メタ)アクリレートを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
加熱されたとき又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの艶消し剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの非反応性溶媒をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物が非反応性溶媒を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物が水性である、請求項1から8又は10のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記コーティング組成物が、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリイソシアネート、少なくとも1つの非反応性溶媒、少なくとも1つのウレタンジアクリレート、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、少なくとも1つの艶消し剤及び少なくとも1つの光開始剤から構成されるか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリイソシアネート、少なくとも1つの非反応性溶媒、少なくとも1つのイソシアネート官能基性含有ウレタンアクリレート、少なくとも1つの艶消し剤及び少なくとも1つの光開始剤から構成される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記コーティング組成物が、以下の2つの別個の部分の形態で包装されている、請求項1から
14のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
a-1) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成される部分A-1;及び
b-1) 少なくとも1つのポリオールから構成される部分B-1;又は
a-2) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成される部分A-2;及び
b-2) 少なくとも1つのポリイソシアネートから構成される部分B-2。
【請求項16】
基材の表面上にコーティングを形成する方法であって、基材の表面に、請求項1から
15のいずれか一項に記載のコーティング組成物の少なくとも1つの層を付与する工程、前記コーティング組成物を、前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線及び/又は熱に暴露する工程、及び前記少なくとも1つのポリオールと前記少なくとも1つのポリイソシアネートとを反応させる工程を含む、該方法。
【請求項17】
前記コーティング組成物が、前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び前記少なくとも1つのポリオールから構成される第1の部分と、前記少なくとも1つのポリイソシアネートから構成される第2の部分とを混合することにより、又は前記少なくとも1つのポリオールから構成される第1の部分と、前記少なくとも1つのポリイソシアネート及び前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物から構成される第2の部分とを混合することにより調製される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング組成物が、前記基材の表面に付与された後に加熱される、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティング組成物を、前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線に暴露した後に、前記コーティング組成物が加熱される、請求項
16から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティング組成物を加熱した後に、前記コーティング組成物が、前記少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線に暴露される、請求項
16から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのポリオールと混合された時に、請求項1に定義されたコーティング組成物を形成するのに有用な前駆体組成物であって、該前駆体組成物は、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成され、該前駆体組成物はポリオールは含まない該前駆体組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのポリイソシアネートと混合された時に、請求項1に定義されたコーティング組成物を形成するのに有用な前駆体組成物であって、該前駆体組成物が、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成され、該前駆体組成物がポリイソシアネートを含まない、前駆体組成物。
【請求項23】
請求項1に定義されたコーティング組成物を形成するのに有用な2液系であって、別個に包装された成分として、
a-1) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成される部分A-1;及び
b-1) 少なくとも1つのポリオールから構成される部分B-1;又は
a-2) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成される部分A-2;及び
b-2) 少なくとも1つのポリイソシアネートから構成される部分B-2
を含む、2液系。
【請求項24】
請求項
23の部分A-1及び部分B-1を混合するか、又は請求項
23の部分A-2及び部分B-2を混合してコーティング組成物を形成し、該コーティング組成物を基材の表面に付与し、付与した該コーティング組成物を硬化させることを含む、コーティングの製造方法。
【請求項25】
前記コーティング組成物が硬化される、請求項1から
15のいずれか一項に従うコーティング組成物の少なくとも1つの層から構成されるコーティング。
【請求項26】
基材の表面が、請求項1から
15のいずれか一項に従うコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされる、基材から構成される製造物品。
【請求項27】
前記基材の表面が、熱硬化性物質、熱可塑性物質、金属、木材、皮革、ガラス、紙、ボール紙及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料から構成される、請求項
26に記載の製造物品。
【請求項28】
二重硬化ソフトタッチコーティング及び/又はフィルムにおける請求項1から
15のいずれか1項に定義された組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面にソフトな感触(ソフトタッチ)又は感覚(ソフトフィール)を有する耐久性コーティングを形成するのに有用な硬化性組成物、及びそのような硬化性組成物及び硬化したコーティングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトフィールコーティング又はソフトタッチコーティングを有する製品は、そのようなコーティングがプラスチック、金属又は他の硬質基材に対してより心地よく、上等な感触を提供するので、望ましい。従来のソフトフィールコーティングは、イソシアネート系化学物質を有する溶剤系又は水系の2液系をベースとしている。そのようなコーティングは感触に関して有利であるが、そのようなコーティングは、配合における難点、貯蔵寿命の制限、長い硬化時間及び耐汚染性、耐薬品性、耐摩耗性及び傷抵抗のような不十分な保護特性をはじめとする欠点がある。その結果として、そのようなコーティングを改善すること、特にそれらの保護特性を向上させることと同時にそれらの有利な触覚特性を維持することが望ましいであろう。そのような目的を達成することは、汚染、化学薬品及び摩耗に対する耐性のような、そこから得られる硬化したコーティングの特定の性質を増大させるそのような2液イソシアネート系の配合の変化が、一般にコーティングのソフトフィールを損なう傾向があるので、困難であることが判明している。
【0003】
当該技術分野において既知のコーティング配合物の代表的な例は、以下のように要約することができる。
【0004】
DE202012012632号は、ペングリップのためのUV硬化性のソフトフィールコーティングを開示する。実施例では、この刊行物は、二官能性オリゴマーと放射線硬化性である単官能性モノマーの混合物を使用して得られるソフトフィーリングコーティングを対象とする。
【0005】
JP5000123号は、放射線硬化性コーティングを生成するために使用することができるウレタンアクリレートオリゴマーの合成を開示する。
【0006】
CN104830218号は、遊離イソシアネートと混合される、ポリエステルとアクリル樹脂との混合物を開示する。この混合物を基材に噴霧し、次いで熱で硬化させる。
【0007】
WO2012089827号は、熱硬化後に非加水分解性のソフトフィールコーティングを形成するポリオールとイソシアネートとのブレンドを開示する。
【0008】
ソフトフィールコーティング技術のさらなる改良、特に、耐久性は高い(例えば、従来のウレタン系コーティングよりも汚染、磨耗、化学薬品等に対する耐性がより高い)し、さらに従来のウレタン系コーティングを用いて得られたものに匹敵する触覚特性を有するコーティングの開発には非常に関心がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第202012012632号明細書
【文献】特許第5000123号公報
【文献】中国特許出願公開第104830218号明細書
【文献】国際公開第2012/089827号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールと組み合わせることにより、ポリオールとポリイソシアネートの反応及びフリーラジカル重合の両方によって硬化する場合に、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の非存在下で少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールを硬化させることによって得られるコーティングの保護特性と比較して改善された保護特性を有するコーティング組成物を提供することが今や発見された。しかし、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の組み込みは、硬化したコーティングの望ましい触覚特性に大きな影響を与えない。即ち、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が存在するにもかかわらず、ウレタン(ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物)のみをベースとする硬化したコーティングの望ましい「ソフトタッチ」又は「ソフトフィール」特性は実質的に保持される。例えば、付加架橋による硬化したウレタン系コーティングの耐久性の増加は、典型的には、コーティングの触覚特性に悪影響を与える(即ち、硬化したコーティングはあまり柔らかくなく、触っても心地よく感じられない)ので、この結果は予想外であった。
【0011】
理論に拘束されることを望むものではないが、1つ以上のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物をコーティング組成物中に使用することにより、硬化されると、そのような化合物を含有しないコーティング組成物から調製された類似のコーティングよりも高い架橋度を有するコーティングが製造され、そのような架橋は、本発明に従って調製されたコーティングの耐久性の向上の原因となり得ると考えられる。通常、ポリマー組成物の架橋が増大すると、硬化した組成物のソフトフィールが低下する。したがって、コーティング組成物中にエチレン性不飽和化合物を含めることが触感特性に悪影響を及ぼさないという本発明者の知見は驚くべきものであった。
【0012】
本発明はまた、ウレタン系の「ソフトタッチ」コーティング組成物を使用する際にしばしば遭遇する加工の問題も取り扱う。従来の実践では、ポリオールから構成される第1の部分とポリイソシアネートから構成される第2の部分とを混合することにより、2液型ウレタンコーティング組成物が得られる。それによって得られたコーティング組成物は、基材の表面に付与される。ポリオール及びポリイソシアネートは、一般に、これらの2つの部分が混合されるとすぐに反応してウレタンを形成するが、コーティングの完全な硬化(硬化)には、通常、高温での長時間の焼成が必要となる。したがって、焼成前に、コーティングは傷つきやすく、汚染されやすい(例えば、埃が未硬化/部分的に硬化したコーティングの粘着面に付着する)ことがある。本発明に従って、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物、ポリオール及びポリイソシアネートを含有するコーティング組成物の放射線又は他のフリーラジカル硬化を、組成物が付与された後であるが焼成前に実施することによって、コーティングの中間特性を改善することができる。この手順は、従来の2液型ウレタンコーティング技術を使用して可能であるよりも組成物の完全な硬化を達成する前に、予備の防塵性及び傷抵抗のコーティング表面を達成するためのより速い方法を有利に提供する。
【0013】
本発明に従う実施形態の様々な適切で非限定的な例を以下に記載することができる。
【0014】
1. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのポリオール及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなるコーティング組成物。
【0015】
2. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、ビニル(例えば、アリル)基、アクリレート基、メタクリレート基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の官能基を有する少なくとも1つの化合物を含む、実施形態1のコーティング組成物。
【0016】
3. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート又はその誘導体を含む、実施形態1又は2のコーティング組成物。
【0017】
4. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含む、実施形態1から3のいずれか1つのコーティング組成物。
【0018】
5. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート又はその誘導体及び少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含む、実施形態1から4のいずれか1つのコーティング組成物。
【0019】
6. 少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアネート官能基性含有ウレタンアクリレートを含む、実施形態1から5のいずれか1つのコーティング組成物。
【0020】
7. 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基性含有(メタ)アクリレートを含む、実施形態1から6のいずれか1つのコーティング組成物。
【0021】
8. 少なくとも1つの光開始剤をさらに含む、実施形態1から7のいずれか1つのコーティング組成物。
【0022】
9. 加熱されたときに又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤をさらに含む、実施形態1から8のいずれか1つのコーティング組成物。
【0023】
10. 少なくとも1つの艶消し剤をさらに含む、実施形態1から9のいずれか1つのコーティング組成物。
【0024】
11. 少なくとも1つの非反応性溶媒をさらに含む、実施形態1から10のいずれか1つのコーティング組成物。
【0025】
12. コーティング組成物が非反応性溶媒を含まない、実施形態1から10のいずれか1つのコーティング組成物。
【0026】
13. コーティング組成物が水性である、実施形態1から10又は12のコーティング組成物。
【0027】
14. 少なくとも1つのポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、 ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のポリオールを含む、実施形態1から13のいずれか1つのコーティング組成物。
【0028】
15. 少なくとも1つのポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートからなる群から選択される1つ以上のポリイソシアネートを含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0029】
16. (ポリオール+ポリイソシアネート):フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の重量比が1:1~10:1である、実施形態1から15のいずれか1つのコーティング組成物。
【0030】
17. コーティング組成物が、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリイソシアネート、少なくとも1つの非反応性溶媒、少なくとも1つのウレタンジアクリレート、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、少なくとも1つの艶消し剤及び少なくとも1つの光開始剤を含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる、実施形態1のコーティング組成物。
【0031】
18. コーティング組成物が、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリイソシアネート、少なくとも1つの非反応性溶媒、少なくとも1つのイソシアネート官能基性含有ウレタンアクリレート、少なくとも1つの艶消し剤及び少なくとも1つの光開始剤を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる、実施形態1のコーティング組成物。
【0032】
19. コーティング組成物が、以下の2つの別個の部分の形態で包装されている、実施形態1から18のいずれか1つのコーティング組成物。
a-1) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる部分A-1;及び
b-1) 少なくとも1つのポリオールから構成されるか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる部分B-1;又は
a-2) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成されるか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる部分A-2;及び
b-2) 少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるか、本質的にそれからなるか又はそれからなる部分B-2。
【0033】
そのような実施形態では、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に包装することが好ましい(例えば、部分A-1はポリオールを含まず、部分B-1はポリイソシアネートを含まず、部分A-2はポリイソシアネートを含まず、部分B-2はポリオールを含まない)。
【0034】
20. 基材の表面上にコーティングを形成する方法であって、基材の表面に、実施形態1から19のいずれかに記載のコーティング組成物の少なくとも1つの層を付与する工程、コーティング組成物を、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線及び/又は熱に暴露する工程、及び少なくとも1つのポリオールと少なくとも1つのポリイソシアネートとを反応させる工程を含む該方法。
【0035】
21. コーティング組成物が、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成されるか、それらから本質的になるか又はそれらからなる第1の部分と、少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるか、それらから本質的になるか又はそれらからなる第2の部分とを混合することにより、又は少なくとも1つのポリオールから構成されるか、それらから本質的になるか又はそれらからなる第1の部分と、少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物から構成されるか、それらから本質的になるか又はそれらからなる第2の部分とを混合することにより調製される、実施形態20の方法。
【0036】
22. コーティング組成物が、基材の表面に付与された後に加熱される、実施形態20又は21に記載の方法。
【0037】
23. コーティング組成物を、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線に暴露した後に、コーティング組成物が加熱される、実施形態20から22のいずれか1つの方法。
【0038】
24. コーティング組成物を加熱した後に、コーティング組成物が、少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するのに有効な量の放射線に暴露される、実施形態20から22のいずれか1つの方法。
【0039】
25. 少なくとも1つのポリオールと混合した時にコーティング組成物を形成するのに有用な前駆体組成物であって、前駆体組成物は少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートを含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる該前駆体組成物。そのような前駆体組成物は、ポリオールを含まなくてもよい。
【0040】
26. 少なくとも1つのポリイソシアネートと混合した時にコーティング組成物を形成するのに有用な前駆体組成物であって、前駆体組成物が少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成されるか、本質的にそれからなるか又はそれらからなる該前駆体組成物。そのような前駆体組成物は、ポリイソシアネートを含まなくてもよい。
【0041】
27. コーティング組成物を形成するのに有用な2液系であって、別個に包装された成分として、
a-1) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる部分A-1;及び
b-1) 少なくとも1つのポリオールから構成されるか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる部分B-1;又は
a-2) 少なくとも1つのフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのポリオールから構成されるか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる部分A-2;及び
b-2) 少なくとも1つのポリイソシアネートから構成されるか、本質的にそれからなるか又はそれからなる部分B-2
を含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなる該2液系。
【0042】
そのような実施形態では、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に包装することが好ましい(例えば、部分A-1はポリオールを含まず、部分B-1はポリイソシアネートを含まず、部分A-2はポリイソシアネートを含まず、部分B-2は ポリオールを含まない)。
【0043】
28. 実施態様27の部分A-1及び部分B-1を混合するか、又は実施態様27の部分A-2及び部分B-2を混合してコーティング組成物を形成し、コーティング組成物を基材の表面に付与し、付与したコーティング組成物を硬化させることを含むか、本質的にそれらからなるか又はそれらからなるコーティングの製造方法。
【0044】
29. コーティング組成物が硬化される、実施形態1から19のいずれか1つに従うコーティング組成物の少なくとも1つの層を含むか、本質的にそれからなるか又はそれからなるコーティング。
【0045】
30. 基材の表面が、実施形態1から19のいずれか1つに従うコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされる、基材から構成される製造物品。
【0046】
31. 基材の表面が、熱硬化性物質、熱可塑性物質、金属、木材、皮革、ガラス、紙、ボール紙及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料から構成される、実施形態30に記載の製造物品。
【0047】
32. 二重硬化ソフトタッチコーティング及び/又はフィルム、特に自動車及び他の動力車用のコーティング及び/又はフィルム、例えば、肘掛け、ダッシュボード、座席、スイッチ、制御部及び他の内装部品、航空部品、小型機器上のコーティング、化粧品包装等の包装、印刷強化材(インク)、皮革及び合成皮革及び/又は家庭用電化製品のコーティングにおける実施形態1から19のいずれか1つの組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0048】
特定の実施形態では、本発明は、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和成分(例えば、1つ以上の(メタ)アクリレート官能化モノマー及び/又はオリゴマー)を2液のウレタン(1つ以上のポリオールを含有する第1の部分及び1つ以上のポリイソシアネートを含有する第2の部分)とブレンドされる二重硬化コーティング組成物を提供する。そのような組成物は、耐久性と触覚(「ソフトタッチ」)特性の望ましい組み合わせを有する硬化したコーティングの形成中に起こる2つの様式の硬化、即ち、ポリオール及びポリイソシアネートの硬化、及びフリーラジカル重合又はエチレン性不飽和化合物を含む他の反応に起因するエチレン性不飽和化合物の硬化のために、「二重硬化した」又は「二重硬化性」と呼ぶことができる。組成物のコーティングは、周囲温度又は周囲温度に近い温度、例えば、10~35℃の範囲の温度で基材の表面に付与することができる。付与されると、フリーラジカル硬化とポリオールのヒドロキシル基及びポリイソシアネートのイソシアネート基をウレタン反応(触媒及び/又は高温で加熱することにより促進することができる)において反応させることの両方を使用して、組成物を二重硬化させることができる。フリーラジカル硬化技術は特に限定されず、コーティング組成物を重合促進剤に暴露する技術を含むことができる。そのような技術は、可視光放射、UV放射及びLED放射等の放射エネルギーへの曝露、又は電子線照射への曝露、又は化学物質(例えば、加熱されたとき、又は促進剤の存在下で分解するフリーラジカル開始剤)への曝露を含むことができる。ウレタン反応は、室温で行うことができるが、好ましくは、高温で少なくとも部分的に実施及び/又は完了する。ウレタン反応の例示的な非限定的な反応条件は、50℃~80℃の範囲の温度で15分~75分の範囲の時間である。
【0049】
二重硬化性組成物のコーティングが、例えば、基材に付与されると、フリーラジカル重合及び組成物のヒドロキシル官能化成分及びイソシアネート官能化成分の反応(2液型ウレタン反応)の両方によって、コーティングを硬化させることができる。フリーラジカル硬化及び2液型ウレタン反応を含む二重硬化法の成功は、順序に依存しない。しかし、フリーラジカル重合(硬化)を最初に利用することにより、十分な防塵性及び傷抵抗を有する中間コーティングを生成するのに十分な表面硬化を与えることができる。フリーラジカル重合は、放射エネルギー(例えば、UV光、可視光及び/又はLED光)、又は電子線エネルギー、又は化学物質(例えば、加熱された時に、又は過酸化物のような促進剤の存在下で分解し、フリーラジカル反応を開始するフリーラジカル開始剤)に、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物成分の架橋/重合を引き起こすのに有効な時間の間暴露することによって起こることができる。放射エネルギーの強度及び/又は波長は、所望の程度の硬化を達成するために、所望により調整することができる。暴露時間は、時間がコーティング組成物を実行可能な物品を硬化させるのに有効であれば、特に限定されない。十分な架橋を引き起こすためにエネルギーに暴露される時間枠は、特に限定されず、数秒から数分であることができる。ポリオールとポリイソシアネートが混合されると、本発明の特定の実施形態では2液型ウレタン反応が開始することができる(即ち、ポリオールとイソシアネートは、混合が行われる温度で互いに反応するように選択されてもよく、ウレタン反応を促進するために1つ以上の触媒を存在させることもできる)。コーティング後、ウレタン反応は、オーブン中での焼成による熱エネルギーへの暴露によって促進することができる。時間枠はウレタン反応の反応速度に依存するが、典型的には高温(50~150℃)でのポリオール及びポリイソシアネートの硬化を実施するには数分から数時間かかる。
【0050】
様々な実施形態では、本明細書に記載の二重硬化性コーティング組成物を製造し、使用する方法は、1)1つ以上のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を、例えば、プロペラブレードを有するオーバーヘッドミキサを使用してポリイソシアネート含有成分(又はポリオール含有成分)に組み込み、第1の混合物を得;2)光開始剤及び/又は分散剤を第1の混合物に添加して第2の混合物を得;3)第3の混合物を得るために分散されるまで攪拌しながら第2の混合物に艶消し剤を添加し;4)ポリオール含有成分(又はポリオール含有成分が工程1において組み込まれていればポリイソシアネート含有成分)を第3の混合物に添加して一定の撹拌下にコーティング組成物を得;5)基材の表面上にコーティング組成物を引き下ろし;6)コーティング組成物中の任意の溶媒又は水を除去し;7)コーティング組成物をA)例えば、約70℃で60分間加熱し、次いでB)コーティング組成物を放射線に暴露することによって、例えば、400W/インチ及び50fpmのベルト速度で少なくとも1つの水銀アークランプで照射することにより、又は工程A及びBを逆の順序で実施し、任意選択的に7)コーティングされた基材を一晩放置することにより、コーティング組成物を硬化させることを含むことができる。
【0051】
様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、4000cPs未満又は3500cPs未満又は3000cPs未満又は2500cPs未満の粘度を有する、周囲温度(25℃)で液体である。組成物は、ブルックフィールド粘度計、モデルDV-IIを使用し、27スピンドル(スピンドル速度は典型的には粘度に応じて50~200rpmの間で変化する)を使用して測定して、約500cPs~約4000cPs又は約1000cPs~約3000cPs又は約1500cPs~約2500cPsの範囲の25℃での粘度を有することができる。本明細書に記載されるコーティング組成物のそのような粘度により、コーティング及びフィルムとして付与するための基材上で組成物の容易な広がりが促進される。粘度を所望の値に低下させるために、有効量の水、非反応性溶媒及び/又は反応性希釈剤をコーティング組成物に含めることができる。
【0052】
コーティング組成物は、例えば、噴霧、ナイフコーティング、ローラーコーティング、流涎、ドラムコーティング、浸漬等、及びそれらの組み合わせによって、任意の既知の従来の方法で基材表面に付与することができる。転送法を使用した間接付与も使用できる。基材は、任意の商業的に関連する基材、例えば、高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材、例えば、それぞれ金属基材又はプラスチック基材であることができる。基材は、金属、紙、ボール紙、ガラス、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びそのブレンド、複合材、木材、皮革及びそれらの組み合わせ等を含むことができる。
【0053】
フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を2液ウレタン系に組み込むことにより、所望のソフトフィール特性を維持しながら耐久性が向上したコーティングが得られる。向上した耐久性(フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を含有しない類似の組成物と比較して)は、耐汚染性の増加、耐磨耗性の増加、耐引掻性の増加及び/又は溶媒耐性の増大等の改善された特性において明らかであり得る。
【0054】
フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物
本発明における使用に適したエチレン性不飽和化合物には、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特にフリーラジカル反応に関与できる炭素-炭素二重結合を含む化合物が含まれる。そのような反応は、エチレン性不飽和化合物が重合したマトリックス又はポリマー鎖の一部となる重合又は硬化を生じることができる。本発明の様々な実施形態では、エチレン性不飽和化合物は、1分子当たり1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の炭素-炭素二重結合を含むことができる。異なる数の炭素-炭素二重結合を含む複数のエチレン性不飽和化合物の組み合わせを本発明のコーティング組成物に利用することができる。炭素-炭素二重結合は、α,β-不飽和カルボニル部分、例えば、α,β-不飽和エステル部分、例えば、アクリレート官能基又はメタクリレート官能基の一部として存在してもよい。炭素-炭素二重結合はまた、ビニル基-CH=CH2(例えば、アリル基、-CH2-CH=CH2)の形態でエチレン性不飽和化合物中に存在してもよい。炭素-炭素二重結合を含む2つ以上の異なる種類の官能基がエチレン性不飽和化合物中に存在してもよい。例えば、エチレン性不飽和化合物は、ビニル基(アリル基を含む)、アクリレート基、メタクリレート基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される2つ以上の官能基を含むことができる。
【0055】
本発明のコーティング組成物は、様々な実施形態において、フリーラジカル重合(硬化)を受けることができる1つ以上の(メタ)アクリレート官能性化合物を含有してもよい。本明細書で使用されるように、「(メタ)アクリレート」という用語はアクリレート(-O-C(=O)-CH=CH2)官能基と同様にメタクリレート(-O-C(=O)-C(CH3)=CH2)を指す。好適なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートには、1分子当たり1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む化合物が含まれ、フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートは、オリゴマー又はモノマーであってもよい。
【0056】
存在するポリオール及びポリイソシアネートの総量に対するコーティング組成物中のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の総量は、特に重要であるとは考えられないが、一般に、同じ成分を含むが、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を含まない硬化したコーティングと比較して、前記コーティング組成物を硬化させることによって得られる硬化したコーティングの少なくとも1つの特性を改善するのに有効な量であるように選択される。改善された特性は、以下のうちの1つ以上を含むことができる。
a) 改良された耐汚染性;
b) 改善された耐摩耗性;
c) 改善された耐引掻性;
d) 改善された耐薬品性。
【0057】
本発明の様々な実施形態では、(ポリオール+ポリイソシアネート):フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物(例えば、(メタ)アクリレート)の重量比は、例えば、1:1~10:1又は1.5:1~6:1又は2:1~5:1である。他の実施形態では、コーティング組成物は、合計して5~50重量%又は10~40重量%又は10~35重量%のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物(例えば、(メタ)アクリレート)を含み、そのような量は存在し得る任意の非反応性溶媒又は水を除くコーティング組成物の総重量に基づく。
【0058】
フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー
好適なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートには、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が挙げられる。反応工程は、かなりの濃度の残留ヒドロキシル基がポリエステル(メタ)アクリレート中に残るように実施することができ、又はポリエステルポリオールのヒドロキシル基の全て又は実質的に全てが(メタ)アクリル化されるように実施されてもよい。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシ官能性成分(特にジオール)及びポリカルボン酸官能性化合物(特にジカルボン酸及び無水物)の重縮合反応によって製造することができる。ポリヒドロキシル官能性成分及びポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ、直鎖構造、分枝構造、脂環式構造又は芳香族構造を有することができ、個々に又は混合物として使用することができる。
【0060】
好適なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とグリシジルエーテル又はエステルとの反応生成物が挙げられる。
【0061】
好適なポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とポリエーテルポリオールであるポリエーテルオールとの縮合反応生成物が挙げられるが、これに限定されない。好適なポリエーテルオールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖状又は分枝状物質であることができる。ポリエーテルオールは、環状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシドのスターター分子による開環重合によって調製することができる。好適なスターター分子には、水、ヒドロキシル官能性材料、ポリエステルポリオール及びアミンが挙げられる。
【0062】
本発明のコーティング組成物に使用することができるポリウレタン(メタ)アクリレート(「ウレタン(メタ)アクリレート」とも呼ばれる)は、(メタ)アクリレート末端基でキャップされた、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール及び脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートをベースとするウレタンが挙げられる。
【0063】
様々な実施形態では、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートを、(芳香族、脂肪族及び混合脂肪族/芳香族ポリエステルポリオールをはじめとする)OH基末端ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチシロキサンポリオール若しくはポリブタジエンポリオール又はそれらの組み合わせと反応させて、イソシアネート官能化オリゴマーを形成し、これはヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートと反応して末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製することができる。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、1分子当たり2つ、3つ、4つ又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。
【0064】
1つ以上のウレタンジアクリレートが、本発明の特定の実施形態において使用される。例えば、コーティング組成物は、二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー及びそれらの組み合わせを含む少なくとも1つのウレタンジアクリレートを含むことができる。特定の実施形態では、サートマー米国有限責任会社(Sartomer USA、LLC)(ペンシルベニア州エクストン)から商品名CN9782の下で入手可能なもののような二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1つのウレタンジアクリレートとして使用することができる。他の実施形態では、サートマー米国有限責任会社から商品名CN9023の下で入手可能なもののような二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1つのウレタンジアクリレートとして使用することができる。サートマー米国有限責任会社から入手可能なCN9782、CN9023、CN978、CN965、CN9031、CN8881及びCN8886は全て、本発明のコーティング組成物中のウレタンジアクリレートとして有利に使用することができる。
【0065】
本発明の様々な実施形態では、少なくとも1つのウレタンジアクリレートは、コーティング組成物中に、約1重量%~約30重量%又は約5重量%~約25重量%又は約10重量%~約20重量%の総量(そのような量は、存在し得る任意の非反応性溶媒又は水以外の、コーティング組成物の全成分の総重量に基づく)で存在することができる。
【0066】
フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマー
好適なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーの実例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルキキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n-アルカンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、高度にプロポキシル化されたグリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、脂環式アクリレートモノマー、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシル化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及び/又はトリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
本発明の様々な実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上のイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート又はイソシアヌレートの(メタ)アクリル化誘導体(イソシアヌレートから誘導されたウレタン(メタ)アクリレート等)を有利に含有する。例えば、コーティング組成物は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含むことができる。本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートは、組成物中に、存在し得る水又は非反応性溶媒を除くコーティング組成物の成分の全重量に基づいて、約1重量%~約50重量%(又は約2重量%~約20重量%)の量で存在する。
【0068】
本発明における使用に適したイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートは、当該技術分野で知られている任意の方法によって調製することができ、又は、例えば、サートマー米国有限責任会社によってSR368(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート)の商品名で販売されているイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート生成物のように、市販の供給源から得ることができる。サートマー米国有限責任会社によって商品名CN9008で販売されているウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアヌレートから誘導されたウレタン(メタ)アクリレートの一例である。
【0069】
特定の実施形態では、コーティング組成物は、イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート(及び任意選択的にウレタンジアクリレート)以外のフリーラジカル硬化性成分を含まないか、又は合計で5重量%未満又は1重量%未満のイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート(及び任意選択的にウレタンジアクリレート)以外のフリーラジカル硬化性成分を含む。
【0070】
二官能性エチレン性不飽和化合物
A.1分子当たり1つ以上のイソシアネート官能基及び1分子当たり1つ以上の(メタ)アクリレート官能基の両方、又はB.1分子当たり1つ以上のヒドロキシル官能基及び1分子当たり1つ以上の(メタ)アクリレート官能基の両方を含む、上述のモノマー及びオリゴマーもまた、本発明の組成物での使用に適している。
【0071】
そのような二官能性モノマー及びオリゴマーの実例としては、A.モノイソシアネート-(メタ)アクリレートモノマー、例えば、2-イソシアナトエチルアクリレート及び2-イソシアナトエチルメタクリレート、並びにB.エポキシ(メタ)アクリレート(ジエポキシドのようなエポキシ化合物のエポキシ基が、(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸との反応によって開環されたものである)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明での使用に適した市販のヒドロキシル官能化(メタ)アクリレートとしては、サートマー米国有限責任会社によって商品名SR495、CN152、CN132、CN133、CN120、CN104及びCN110の下で販売されている製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、1つ以上のイソシアネート官能化ウレタン(メタ)アクリレートが、単独のフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートとして、又は1つ以上の他の種類のフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートと組み合わせてコーティング組成物に使用される。イソシアネート官能化ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと、ヒドロキシル基等のイソシアネート反応性官能基を含む(メタ)アクリレートとを、少なくとも1つのイソシアネート基が(例えば、イソシアネート反応性基に対して過剰のイソシアネート基を有することにより)そのような反応によって生成された分子に残るような比で反応させることにより調製することができる。サートマー米国有限責任会社によって商品名CN9302で販売されている製品は、本発明での使用に適したイソシアネート官能化ウレタン(メタ)アクリレートの一例である。
【0073】
ポリオール
本発明のコーティング組成物は少なくとも1つのポリオールを含み、これはポリイソシアネート成分のイソシアネート基と反応してポリウレタンを形成することができる、1分子当たり2つ以上のヒドロキシル官能基を含む有機化合物として定義され得る。特定の実施形態では、ポリオールはオリゴマーである。特定の他の実施形態では、ポリオールは二官能性である(即ち、ポリオールは1分子当たり2つのヒドロキシル基、特に直鎖又は分枝オリゴマー骨格の各末端のヒドロキシル基を含む)。好適なポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル/エーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール及びそれらの組み合わせを挙げることができる。1つの特に有用な実施形態では、コーティング組成物のポリオール成分は、単独又は他のポリオールとのブレンドで使用することができる直鎖状脂肪族ポリエステルポリオールを含む。ポリオールは、本発明の特定の実施形態では、当量当たり100~1500グラム、例えば、当量当たり150~500グラムの範囲のヒドロキシル当量を有することができる。ポリオールは、本発明の様々な実施形態では、60℃未満、例えば、40℃未満又は22℃未満又は0℃未満等のガラス転移温度を有することができる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、存在し得る任意の非反応性溶媒又は水を除くコーティング組成物の総重量に基づいて、40~75重量%の総ポリオール含有率、例えば、50~75重量%のポリオールを有する。
【0074】
特定の実施形態では、ポリオールは、ポリアクリルポリオール又はポリアクリルポリオールの組み合わせであることができる。そのようなポリオール(一般にエチレン性不飽和部位を含まない)は、例えば、その少なくとも1つがヒドロキシ官能化エチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸の1つ以上のヒドロキシアルキルエステルである重合性エチレン性不飽和モノマーの重合によって調製することができる。ヒドロキシ官能化エチレン性不飽和モノマーと適切に共重合され得るエチレン性不飽和モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートをはじめとする(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、並びにビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン及びビニルトルエンが挙げられる。
【0075】
他の実施形態では、ポリオールはポリエステルポリオールであることができる。ポリエステルポリオールの例には、例えば、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合生成物が挙げられる。好適な多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールが挙げられる。好適なポリカルボン酸には、脂肪族及び芳香族ポリカルボン酸、例えば、アジピン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸及びヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。上記のポリカルボン酸に加えて、それらが存在する無水物のような酸の機能的等価物又はメチルエステルのような酸の低級アルキルエステルを使用することができる。また、少量のモノカルボン酸、例えば、ステアリン酸を使用することができる。反応物の比及び反応条件は、所望のヒドロキシル官能価及びヒドロキシル当量を有するポリエステルポリオールを生じるように選択することができる。
【0076】
他の実施形態では、ポリオールはポリウレタンポリオールであることができる。例えば、ポリウレタンポリオールは、ポリオール(ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールのような本明細書に記載の種類のいずれかをはじめとする)をポリイソシアネートと反応させることによって形成することができ、ヒドロキシル官能基を有するポリウレタンポリマーを形成するように化学量論が制御される。好適なポリイソシアネートの例には、芳香族イソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート、並びに脂肪族ポリイソシアネート、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネート、例えば、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートも使用することができる。
【0077】
他の実施形態では、ポリオールは、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリオールの組み合わせであることができる。好適なポリエーテルポリオールの例としては、ポリアルキレンエーテルポリオールが挙げられる。例示的なポリアルキレンエーテルポリオールは、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシ-1,2-プロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール及びポリ(オキシ-1,2-ブチレン)グリコールを含む。
【0078】
また、種々のポリオール、例えば、グリコール、例えば、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA等又は他の高級ポリオール、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のオキシアルキル化から形成されるポリエーテルポリオールも有用である。示したように利用することができるより高い官能価のポリオールは、例えば、スクロース又はソルビトールのような化合物のオキシアルキル化によって製造することができる。1つの一般的に利用されるオキシアルキル化方法は、酸性、塩基性又は他の好適な触媒の存在下でポリオールとアルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドとの反応である。
【0079】
ポリイソシアネート
1分子当たり2つ以上のイソシアネート官能基を含有する任意の有機化合物を、本発明のコーティング組成物のポリイソシアネート成分として利用することができる。そのようなポリイソシアネートは、単独で又は組み合わせて使用することができる。特に、ジイソシアネート、トリイソシアネート又はそれらの組み合わせが使用に適している。
【0080】
ポリイソシアネートは、例えば、芳香族、脂肪族及び/又は脂環式の性質を有していてもよく、126~1000の分子量を有する。これらは、エーテル基又はエステル基を含むジイソシアネートも含むことができる。好適なジイソシアネートの例には、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,3-ジメチルエチレンジイソシアネート、1-メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトジフェニルエーテル、1,5-ジブチルペンタメチレンジイソシアネート、2,3-ビス(8-イソシアナトオクチル)-4-オクチル-5-ヘキシルシクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート及び/又は2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート並びにそれらの異性体及び組合せが挙げられる。ポリイソシアネートは、ブロックされていてもよいし、ブロックされていなくてもよい。他の好適なポリイソシアネートの例としては、イソシアヌレート三量体、アロファネート、及びジイソシアネートのウレトジオン及びポリカルボジイミドが挙げられる。特定の実施形態では、ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(即ち、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート)である。
【0081】
一般的に言えば、ポリイソシアネートは、コーティング組成物中のポリオール又は存在する場合他のヒドロキシル官能性成分上のヒドロキシル基の少なくとも一部と架橋するのに十分な量で使用される。ポリイソシアネート(及び他のイソシアネート官能性成分)と比較したポリオール及び他のヒドロキシル官能性成分の相対量は、反応性ヒドロキシル基に対する反応性イソシアネート基(任意のマスクされた又はブロックされたイソシアネート基を含む)のモル比で表すことができる。ポリイソシアネートは、例えば、NCO:OH比に基づいて約0.5:1~約4:1の比で存在することができる。
【0082】
本発明のコーティング組成物は、イソシアネート/ヒドロキシル反応に触媒作用を及ぼす量の1つ以上の触媒を含むことができる。有用な触媒には、第3級アミン、例えば、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、1-メチル-4-ジメチルアミノエチルピペラジン、3-メトキシ-N-ジメチルプロピルアミン、N-ジメチル-N’-メチルイソプロピルプロピレンジアミン、N,N-ジエチル-3-ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5,40]-ウンデセン-N-7-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、1,4-ジアザ-ビシクロ[2.2.2]-オクタン、N-メチル-N-ジメチルアミノエチル-ピペラジン、ビス-(N,N-ジエチルアミノエチル)アジペート、N,N-ジエチルベンジルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール;スズ化合物、例えば、塩化第一スズ、ジブチルスズジ-2-エチルヘキソエート、第一スズオクトエート(octoate)、ジブチルスズジラウレート、トリメチルスズヒドロキシド、ジメチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、トリブチルスズアセテート、テトラメチルスズ、ジメチルジオクチルスズ、スズエチルヘキソエート、スズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート;他の金属有機化合物、例えば、亜鉛オクトエート、フェニル水銀プロピオネート、鉛オクトエート、鉛ナフテネート及び銅ナフテネートが挙げられる。
【0083】
溶媒
本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、1つ以上の溶媒、特に非反応性有機溶媒であることができる1つ以上の有機溶媒を含むことができる。様々な実施形態では、溶媒は、比較的揮発性であってもよく、例えば、大気圧で150℃以下の沸点を有する溶媒であってもよい。他の実施形態では、溶媒は、大気圧で少なくとも40℃の沸点を有することができる。
【0084】
溶媒は、コーティング組成物の1つ以上の成分を可溶化し、及び/又はコーティング組成物の粘度又は他のレオロジー特性を調節することができるように選択することができる。
【0085】
本発明のコーティング組成物は非反応性溶媒を殆ど又は全く含まないように、例えば、コーティングの総重量を基準にして、10%未満又は5%未満、又はさらには0%の非反応性溶媒を含むように配合することができる。そのような無溶媒又は低溶媒組成物は、溶媒が存在しなくても組成物を十分に低粘度にして、比較的薄い均一なコーティング層を形成するために適切な付与温度で基板表面に容易に付与することができるように選択される、例えば、低粘度の反応性希釈剤及び/又は水をはじめとする様々な成分を用いて配合することができる。
【0086】
好適な溶媒には、例えば、有機溶媒、例えば、ケトン(非環式ケトン及び環状ケトンの両方)、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルエチルケトン及びシクロペンタノン;エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート、プロピレングリコールカーボネート及びエチレングリコールカーボネート;アルコール、例えば、エトキシエタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール及びジアセトンアルコール;芳香族溶媒、例えば、キシレン、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼン;アルカン、例えば、ヘキサン及びヘプタン;グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2-エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(2-プロポキシエタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(2-イソプロポキシエタノール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(2-フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(2-ベンジルオキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトールセロソルブ)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル及びエチレングリコールジブチルエーテル;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;及びアミド、例えば、NMP及びDMF;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
様々な実施形態において、コーティング組成物は、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、アルカン、芳香族化合物、エーテル、アミド及びグリコールエーテル並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの溶媒から構成される。
【0088】
本発明の特定の態様によれば、少なくとも1つの溶媒は、本明細書に記載のコーティング組成物を基材に付与するのに十分な流動性にするのに十分な量で含まれる。例えば、本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、ブルックフィールド粘度計、モデルDV-IIを使用し、27スピンドル(スピンドル速度は、粘度に応じて、典型的には50~200rpmの間で変化する)を使用して25℃で測定して4000mPa.s(cPs)未満又は3500mPa.s(cPs)未満又は3000mPa.s(cPs)未満又は2500mPa.s(cPs)未満の粘度を有する。
【0089】
特定の実施形態では、エネルギー源(放射線、加熱)への曝露による硬化が開始される前に、少なくとも1つの溶媒は本明細書に記載のコーティング組成物から除去される。例えば、溶媒は、エネルギーで誘発される硬化の前に蒸発によって除去することができる。所望ならば、溶媒の蒸発を容易にするために、その表面に付与されたコーティング組成物の1つ以上の層を有する基材を加熱し、及び/又はガスの流れに暴露し、及び/又は真空下に置くことができる。コーティングされた基材の加熱はまた、コーティング組成物のポリオール成分及びポリイソシアネート成分の硬化(反応)を促進するのに役立つ。
【0090】
水性系
本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、非反応性溶媒ではなく水を含むように配合される。そのような組成物は、水性系と呼ばれ、組成物の成分の1つ以上又は全てが水中に分散物として存在する。乳化剤及び/又は分散剤が、ポリオール、ポリイソシアネート、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び/又は他の組成物成分の安定な水性分散液を生成及び維持するために使用され得る。1つ以上の組成物成分は、特定の実施形態では、自己分散型であることができる。イソシアネートとの水の反応を回避又は最小限に抑えるために、ブロックされた及び/又はマスクされたポリイソシアネートをそのような系で使用することができる。そのような水性組成物は基材の表面に付与することができ、水は組成物の粘度を低下させるのに役立つ。次いで、付与されたコーティングを処理して(例えば、蒸発によって)水を除去し、その後、コーティングは、マスクされた又はブロックされたポリイソシアネートを組成物のポリオール成分と反応させて、コーティングを硬化させるのに有効な温度に維持される。組成物の(メタ)アクリレート成分の硬化(例えば、適切なエネルギー源によるコーティングの照射による)は、水の蒸発後、ポリオール及びポリイソシアネートの熱硬化の前又は後に行うことができる。
【0091】
光開始剤
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つの光開始剤を含み、放射エネルギーで硬化可能である。例えば、光開始剤は、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、モノアシルホスフィン、ビスアシルホスフィン、ホスフィンオキシド、メタロセン及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び/又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンであることができる。
【0092】
好適な光開始剤としては、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンズアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アルファ-メチルベンゾイン、アルファ-フェニルベンゾイン、ミヒラーズケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフタレン、エチル-p-ジメチルアミノベンゾアート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンキシド、ベンジルジメチルケタール、ベンジルケタール(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロミウム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、50/50ブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、50/50ブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(ii)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
光開始剤の量は重要であるとは考えられないが、他の要因の中でも、選択された光開始剤、コーティング組成物中に存在するフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の量、使用される放射線源及び放射条件に応じて適切であるように変更することができる。しかし、典型的には、光開始剤の量は、コーティング組成物の総重量(存在し得る水又は非反応性溶媒を含まない)を基準にして、0.05重量%~5重量%であることができる。
【0094】
他の硬化方法
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は開始剤を含まず、電子線エネルギーで硬化可能である。他の実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、加熱するか又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤を含み、化学的に硬化可能である(即ち、コーティング組成物を放射線に暴露する必要がない)。加熱されるか又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1つのフリーラジカル開始剤は、例えば、過酸化物又はアゾ化合物を含むことができる。この目的のために好適な過酸化物には、少なくとも1つのペルオキシ(-O-O-)部分を含む任意の化合物、特に有機化合物、例えば、ジアルキル、ジアリール及びアリール/アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、ペルエステル、過酸、アシルペルオキシド等が挙げられる。少なくとも1つの促進剤は、例えば、少なくとも1つの第3級アミン及び/又は金属塩(例えば、鉄、コバルト、マンガン、バナジウム等の遷移金属のカルボン酸塩及びそれらの組み合わせ)をベースとする1つ以上の他の還元剤を含むことができる。促進剤は、室温又は周囲温度でのフリーラジカル開始剤の分解を促進して活性のフリーラジカル種を生成するように選択され、コーティング組成物の硬化はコーティング組成物を加熱又は焼成することなく達成される。他の実施形態では、促進剤は存在せず、コーティング組成物はフリーラジカル開始剤の分解を引き起こし、コーティング組成物に存在するフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始するフリーラジカル種を生成するのに有効な温度に加熱される。
【0095】
したがって、本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、放射線硬化(UV放射線又は電子線硬化)、電子線硬化、化学硬化(加熱されて又は促進剤の存在下で分解するフリーラジカル開始剤、例えば、過酸化物硬化を使用する)、熱硬化又はそれらの組み合わせからなる群から選択される技術により硬化可能である。
【0096】
ポリマービーズ/ワックス
本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、1種以上のポリマーワックス及び/又はポリマービーズを含む。例えば、ビーズは、コーティング組成物の硬化したコーティングにソフトフィールを与えるのを助けるミクロンサイズのビーズであることができる。そのようなポリマービーズは、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、PTFE及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーから構成することができる。
【0097】
艶消し剤
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に1つの艶消し剤、即ち、基材の表面で硬化したときにコーティング組成物に艶消し仕上げを施すことができる、又は基材で硬化したときにコーティング組成物の光沢を低下させることができる成分を含むことができる。艶消し剤は、「平坦化剤(flatting agent)」又は「平坦化剤(flattening agent)」と呼ばれることもある。艶消し剤は、一般に、水に不溶性であり光沢を低下させるのに有効な材料の小さな固体粒子である。好ましくは、艶消し剤粒子は、約0.05~約50ミクロンのサイズを有する。特定の実施形態では、艶消し剤粒子は塊又は集塊物の形態で集塊する。艶消し剤粒子は、無機又は有機であってもよい。好適な無機平坦化剤の例には、タルクのようなケイ酸塩及び非晶質、エーロゲル、珪藻土、ヒドロゲル及びヒュームドシリカのような様々な形態のシリカが挙げられる。好適な有機平坦化剤の例には、不溶性尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース系繊維及びポリウレタン/ポリ尿素コポリマーが挙げられる。ポリマーワックス及びビーズを艶消し剤として使用することができる。コーティング組成物に添加される艶消し剤の量は、所望の最終光沢レベルに依存する。特定の実施形態では、艶消し剤の量を添加して、コーティング組成物に、硬化したときに60度の角度で測定した5未満の光沢を提供することができる。
【0098】
その他の添加剤
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に、上記成分の代わりに、又は上記成分に加えて、1つ以上の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、コーティング分野で従来使用されている添加剤のいずれかをはじめとする、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、泡抑制剤、流動剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、スリップ添加剤又は他の種々の添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
例示的な配合物
本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、以下の成分を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなることができ、記載された量は、全「固形分」含量(即ち、存在していてもよい水及び/又は非反応性溶媒を含まない)を基準にした重量%で表される。
【0100】
【0101】
また、70重量%までの水及び/又は非反応性溶媒が本発明の様々な実施形態に存在してもよく、そのような量はコーティング組成物中の全「固形分」の総重量に基づいて計算される。
【0102】
本発明の他の実施形態では、コーティング組成物は、以下の成分を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなることができる非反応性溶媒含有組成物であり、記載された量は、全「固形分」含量(即ち、存在する非反応性溶媒を含まない)を基準にした重量%で表される。
【0103】
【0104】
また、30~50重量%の1つ以上の非反応性溶媒が存在し、そのような量はコーティング組成物中の全「固形分」の総重量に基づいて計算される。
【0105】
上記の例示的な配合物の特定の実施形態では、配合物のエチレン性不飽和化合物成分は、少なくとも1つのウレタンジアクリレートと少なくとも1つのイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートとを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなることができる。上記の例示的な配合物の特定の他の実施形態では、配合物のエチレン性不飽和化合物成分は、少なくとも1つのイソシアネート官能基性含有ウレタンアクリレートを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。上記の例示的な配合物のさらに他の実施形態では、配合物のエチレン性不飽和化合物成分は、少なくとも1つのイソシアネート反応性官能基性含有(メタ)アクリレートを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなることができる。
【0106】
基材
本発明によるコーティング組成物が付与され、硬化され得る基材は、それぞれ金属基材又はプラスチック基材のような、高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材のような商業的に関連する任意の基材であることができる。基材は、鋼又は他の金属、紙、ボール紙、ガラス、熱可塑性物質、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン又はそれらのブレンド、複合材、木材、皮革及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0107】
コーティング組成物を付与及び硬化させる例示的な方法
様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物を用いて基材をコーティングする方法は、組成物を基材に付与し(例えば、付与された組成物は基材表面の層の形態である)、組成物を硬化させることを含むか、それらからなるか、それらから本質的になることができ、硬化は、コーティング組成物を可視放射、UV放射、LED放射、電子線放射へ暴露することにより、化学物質へ暴露することにより又は加熱によって硬化することを含む。本発明の様々な実施形態では、コーティング組成物は、噴霧、ナイフコーティング、ローラーコーティング、流涎、ドラムコーティング、浸漬及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって基材に付与することができる。本発明に従ったコーティング組成物の複数の層は、基材表面に付与することができ、複数の層は(例えば、単一線量の放射に暴露することによって)同時に硬化されてもよく、又は各層は、コーティング組成物の追加の層の付与前に連続的に硬化されてもよい。
【0108】
本発明のコーティング組成物から調製されたコーティングの厚さは、特定の最終用途に望まれるように変えることができるが、典型的には10ミクロン~200ミクロンの範囲にある。
【0109】
例示的な最終用途
本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載のコーティング組成物は、自動車及び他の動力車(例えば、アームレスト、ダッシュボード、座席、スイッチ、制御部及び他の内装部品上のコーティング)、航空部品、小型機器、包装(例えば、化粧品包装)、印刷強化材(インク)上のコーティング及び/又はフィルム、皮革及び合成皮革及び/又は家庭用電化製品上のコーティング等のコーティング及び/又はフィルムを提供するために使用することができる。例えば、コーティング組成物は、そのような最終用途のためのコーティング及び/又はフィルムとしての使用に先立って硬化させることができる。
【実施例】
【0110】
本明細書に記載の二重硬化性組成物を使用する実施例は、感触、硬度、接着性、耐磨耗性及び耐汚染性に関連する特性を報告する。実施例について報告された特性は、多くの既知の技術を用いて決定した。鉛筆硬度(傷抵抗)は、ASTM D3363-05に従って決定した。接着性は、ASTM D3359-09に従って決定した。耐磨耗性はASTM F2357-10に従って決定した。MEK(溶媒)耐性は、ASTM D5402-06に従って決定した。耐汚染性は、ΔE測定によるANSI/KCMA A161.1耐薬品性試験に従って決定した。耐汚染性は、ゼネラルモーターズの日焼け止め及び防虫剤耐性試験手順、例えば、GMW14445に従って決定した。GMW14445(80℃で実施)を除いて、上記の試験を室温及び周囲湿度で行った。
【0111】
実施例の各々について、組成物を36μmの目標厚さで基材に付与した。使用された基材の種類は、実施される特定の試験に依存した。接着性及び感触の評価にはABSパネルを使用し、摩耗及び鉛筆硬度を評価するためにガラスを使用し、耐汚染性を評価するために金属レネタを使用し、MEK耐性を評価するためにアルミニウムを使用した。付与された組成物は、2液型(ポリオール+ポリイソシアネート)ウレタン反応及びフリーラジカル硬化の組合せを用いて二重硬化した。コーティングされたパネルを熱硬化、即ち、焼成してウレタン反応を促進させ、一方フリーラジカル硬化はUV光を用いて完了した。70℃で60分間サンプルを加熱することにより熱硬化を達成した。UV硬化は、1つの600W/inのH-バルブランプを用いて50フィート/分で2回のパスで行った。コーティングされたABSパネルは、硬化後に、「ベルベット状」又は「ゴム状」として特徴付けられるソフトフィール、ABS(6×6クロスハッチ)に良好な接着性及び良好な傷抵抗及び耐溶剤性を示した。実施例のコーティングを、フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートを含まない市販の2液型ウレタンソフトフィールコーティングと比較し、感触の種類(ゴム状、ベルベット状、シルク状)及び柔らかさ(1=ソフトフィールなし、5=最高のソフトフィール)に関し経験を積んだ観察者によって評価した。
【0112】
実施例1~3の組成物を以下に表1に列挙し、それによって添加された成分及びそれぞれの質量を提供する。さらに、実施例1~3の総配合物重量に対する重量百分率を、2液型ウレタンに組み込まれた溶剤を含む表2に示す。最初の試験は、実施例1及び2の配合物を含んでいた。その後、配合物1を変更して、添加したフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレート含量を減らして実施例3を製造した。配合物2は、2液型ウレタン硬化剤含有量を減少させ、2液型ウレタンポリオール樹脂の残留ヒドロキシル含有量をイソシアネート含有ウレタンアクリレートと反応させた。
【0113】
【0114】
【0115】
溶媒中に多官能性イソシアネートと二官能性ポリオールとを含む2液系である比較例も提供する。比較例は、22.05gのST2010硬化剤(ジ・アルサ(Alsa)社から入手可能)と共に87.45gのST2010透明樹脂(ジ・アルサ社から入手可能)を使用した。実施例1~3の二重硬化性組成物でコーティングされた基材と同様の方法で、比較例の2液型硬化性組成物でコーティングされた基材を調製した。
【0116】
表3を以下に提供し、表3は、感触、光沢、鉛筆硬度及び接着性等の特定の性質に関する実施例1~3及び比較例の試験結果を含む。
【0117】
【0118】
表4を以下に提供し、表4は複数の製品に対する耐汚染性及び(MEK)耐薬品性に関する実施例1~3及び比較例の試験結果を含む。
【0119】
【0120】
表5を以下に提供し、表5は、実施例3及び比較例の試験結果を含み、二重硬化が実施される順序による特性の変化を説明する。さらに、表6は、両方の変化を通して様々な時点での硬化評価を示しており、最初に放射線硬化をすると粘着性が少ないことを実証している。硬化評価の範囲は1~5である。1は、綿の先端によって完全に跡がつき、傷抵抗に欠ける硬化不足の表面を意味し、5は、綿の先端によって容易に跡がつかないか、又は木のスクレーパーによって容易に傷つけられない完全に硬化したコーティングを意味する。
【0121】
【0122】
【0123】
表3~5から分かるように、本明細書に記載の二重硬化性組成物は、比較例のソフトフィール特性を保持しながら、向上した耐久性及び特定の耐汚染性特性を示す。