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特許7159053ポリマー繊維を紡糸するための紡糸口金アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】ポリマー繊維を紡糸するための紡糸口金アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/06 20060101AFI20221017BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
D01D4/06
D01D5/08 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018555563
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017029148
(87)【国際公開番号】W WO2017189438
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】62/326,978
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】テイラー, トーマス ベイカー
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03762850(US,A)
【文献】米国特許第04290989(US,A)
【文献】米国特許第05513973(US,A)
【文献】特開平11-350236(JP,A)
【文献】特開2006-132057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
B29C48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー繊維を紡糸するための紡糸口金アセンブリであって、以下の構成要素:
(a)インレットポートと、前記インレットポートから流れの方向に外に向けてフレアするフレアド下面とが備えられたキャップ;
(b)中央部分を有する紡糸口金であって、前記中央部分はその厚さを通して多数の紡糸フローチャネルを有する、紡糸口金;ならびに
(c)前記キャップと前記紡糸口金とにより規定されるキャビティ内に備え付けられた先細幾何形状を有するフローガイドであって、前記フローガイドは、前記インレットポートに面するアペックス、前記紡糸口金に面する底部、および前記底部と鋭角を形成する、前記アペックスまで先細になっている1つ以上の側面を有する、フローガイド
を含み;
ここで、
発散性流路は、前記フローガイドの先細の側面と、キャップのフレアド下面とにより規定され、前記発散性流路は、前記フローガイドの先細の側面を取り囲み、および前記インレットポートと流体連通状態にあり、かつ
前記フローガイドの底部は、前記紡糸口金の上面から離れて間隔を置かれ、前記発散性流路と流体連通状態にある空間をもたらし、前記フローガイドが、前記キャップに取り外し可能に付加され、一方で前記キャップのフレアド下面から間隔を置かれている、紡糸口金アセンブリ。
【請求項2】
前記紡糸口金の中央部分で自由に静止するフィルタをさらに含み、前記フィルタは液体に透過性である、請求項1に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項3】
前記多数の紡糸フローチャネルが位置する、前記紡糸口金の中央部分が、前記フローガイドの底部の表面積よりも大きい上部表面積を有する、請求項1または2に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項4】
前記フローガイドが、円形底部をもつ円錐形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項5】
前記キャップのフレアド下面が、切頂円錐形状を有する、請求項4に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項6】
前記フローガイドが、多角形底部をもつピラミッド形状、および前記底部と鋭角を形成する複数の多角形側壁を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項7】
前記キャップのフレアド下面が、切頂ピラミッド形状を有する、請求項6に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項8】
前記紡糸口金の上面区域が、前記多数の紡糸フローチャネルに対応する多数の入口開口部を含み、かつ前記紡糸口金が、前記多数の紡糸フローチャネルに対応する多数の出口開口部を含む下面区域を有し、前記入口開口部の直径は、前記出口開口部の直径より大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項9】
前記フローガイドに、その先細の側面上の複数の離れて間隔を置かれたスペーサが備えられて、先細の側面とキャップのフレアド下面との間に間隔を与え、かつ
前記フローガイドが、前記スペーサを介して延在しているねじで前記キャップに取り外し可能に付加される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項10】
前記紡糸口金の中央部分の上面が、平坦または実質的に平坦であり、かつ前記フローガイドの底部が、平坦または実質的に平坦であり、前記上面に実質的に平行に向けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項11】
前記紡糸口金内の紡糸フローチャネルの数が、100~100,000の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項12】
前記紡糸口金内の紡糸フローチャネルの数が、25~100,000の範囲である、請求項1~11のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項13】
前記紡糸口金を支持し、および前記紡糸口金を前記キャップに連結するように構成されるケーシングをさらに含み、前記ケーシングは、前記キャップに取り外し可能に固定されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項14】
前記紡糸口金が、その中央部分を取り囲む突出リムを有し、かつ前記ケーシングが、前記突出リムがその上に置かれている内に向かって延在するフランジ部分を有する、請求項13に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項15】
前記紡糸口金の突出リムと前記キャップの周辺下部部分との間に閉じ込められた弾力性Oリングを、それらの間に流体シールを形成するためにさらに含む、請求項14に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項16】
前記紡糸口金の突出リムと前記ケーシングのフランジ部分との間にとどめられたガスケットをさらに含む、請求項14または15に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項17】
前記ケーシングおよび前記キャップが、前記ケーシングが前記キャップとのかみ合いにねじり込まれ、またはかみ合いからねじり外され得るように、それらが互いにかみ合う補完的ねじ込み面を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項18】
前記キャップおよび前記紡糸口金に、ねじ込みボルトを収容するための補完的ねじ込み穴が備えられ、前記キャップは、前記ねじ込み穴を通して延在するねじ込みボルトによって前記紡糸口金に連結され、かつ
前記紡糸口金が、前記ボルトを前記キャップから離脱させることによって前記キャップから脱連結される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリ。
【請求項19】
請求項1~12、および18のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリを使用して、繊維紡糸する方法であって、前記方法は、
原料をポリマー溶液または溶融ポリマーの形態で前記紡糸口金アセンブリの前記インレットポート中に連続的に供給し、前記原料を前記紡糸口金内の前記多数の紡糸フローチャネルに通して噴出させ、複数の連続フィラメントを形成する工程を含み、
前記インレットポートからの前記原料は、前記発散性流路を通って、次いで、前記フローガイドの底部と前記紡糸口金の前記上面との間の空間の中に放射状に内に向かって流れ、前記空間を充満させる、方法。
【請求項20】
請求項19の方法のに行われる予備的パージング段階をさらに含み、前記予備的パージング段階は、
原料をポリマー溶液または溶融ポリマーの形態で、その時点では前記キャップに付加された前記フローガイドを含むが、前記紡糸口金を含まない部分アセンブリを通して連続的に供給し、前記原料が前記発散性流路を通って流れるようにする工程;
前記発散性流路から排出される前記原料を検査する工程
を含み、
前記予備的パージング段階は、前記紡糸口金を含む完成紡糸口金アセンブリをアセンブルする前に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項13~17のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリを使用して、繊維紡糸する方法であって、前記方法は、
原料をポリマー溶液または溶融ポリマーの形態で、前記紡糸口金アセンブリの前記インレットポート中に連続的に供給し、前記原料を前記紡糸口金内の前記多数の紡糸フローチャネルに通して噴出させ、複数の連続フィラメントを形成する工程を含み、
前記インレットポートからの前記原料は、前記発散性流路を通って、次いで、前記フローガイドの底部と前記紡糸口金の前記上面との間の空間の中に放射状に内に向かって流れ、前記空間を充満させる、方法。
【請求項22】
請求項21の方法のに行われる予備的パージング段階をさらに含み、前記予備的パージング段階は、
原料をポリマー溶液または溶融ポリマーの形態で、その時点では前記キャップに付加された前記フローガイドを含むが、前記紡糸口金または前記ケーシングを含まない部分アセンブリを通して連続的に供給し、前記原料が前記発散性流路を通って流れるようにする工程;
前記発散性流路から排出される前記原料を検査する工程
を含み、
前記予備的パージング段階は、前記紡糸口金および前記ケーシングを含む完成紡糸口金アセンブリをアセンブルする前に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
連続繊維フィラメント、好ましくは連続炭素繊維フィラメントを形成するための繊維紡糸方法における、請求項1~18のいずれか一項に記載の紡糸口金アセンブリの使用。
【発明の詳細な説明】
【図面の簡単な説明】
【0001】
図1図1は、本開示の実施形態による紡糸口金アセンブリを例証する。
図2A-2B】図2Aおよび図2Bは、本開示の実施形態による円錐形状フローガイドの、それぞれ、透視図および断面図を示す。
図3図3は、図2Aに示されるフローガイドに取り外し可能に取り付けることができる対応するキャップを示す。
図4図4は、図3に示される対応するキャップに取り付けられた図2Aに示される円錐形状フローガイドの部分アセンブリを示す。
図5図5は、本開示の実施形態による紡糸口金、フィルタ、およびOリングを示す。
図6図6は、本開示の実施形態による紡糸口金内の紡糸フローチャネルの部分断面図を示す。
図7図7は、本開示の別の実施形態による紡糸口金アセンブリを示す。
図8図8は、本開示の紡糸口金を通っての原料の流路を例証する。
図9図9は、比較として、フローガイドなしの同じ紡糸口金を通っての原料の流路を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
繊維の紡糸では、液体ポリマー溶液または溶融ポリマーが、紡糸口金の小さい穴を通って押し出されて、細いフィラメントを形成する。紡糸口金を出た直後に、フィラメントは固化する。固化後、フィラメントは延伸(drawn or stretched)されて、フィラメントの特性を変え得る。
【0003】
典型的には、エアギャップ紡糸ダイ設計には、紡糸口金濡れ区域を横切ってポリマードープを分配するために、ブレーカプレートおよび分配フィルタが組み込まれる。操作者がダイを出るドープの品質を迅速かつ容易に判断することを可能にして、ポリマー送達システムから気泡およびポリマーゲルをパージするために十分な時間が与えられるようにポリマードープを分配することは考慮されていない。さらに、典型的なダイ設計は、ドープを紡糸口金キャビティに導入させ、その結果、紡糸口金キャビティ内に空気が捕捉されるおそれがあり、気泡が壊れるに時間がかかり、開始数時間後、さらには数日後にも紡糸欠陥をもたらす。
【0004】
ポリマー繊維を紡糸するための装置、より特には紡糸口金アセンブリが本明細書で開示される。一部の実施形態において、紡糸口金は、紡糸口金取り付け前のゲルまたは気泡の視覚的検査と、および良好な紡糸がより迅速に達成され得るように紡糸口金の上のキャビティ内になんらの空気を有することも回避するような取り付け後の紡糸口金へのドープの送達との、両方に適した環状フィルムとしてポリマードープを提示することができる。
【0005】
本明細書で開示される紡糸口金アセンブリは、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸および乾燥ジェット湿式紡糸を含めて、従来の繊維紡糸方法で使用されてもよい。
【0006】
乾式紡糸では、「ドープ」と呼ばれるポリマー溶液が、溶媒が蒸発する加熱ゾーン中に紡糸口金を通して押し出される。これは、溶融紡糸繊維の冷却よりもより遅いプロセスであり、結果として、非一様な特性およびあまり円形でない断面を有する繊維を生成させる傾向がある。
【0007】
乾燥ジェット湿式紡糸は、ポリマードープが、凝固剤と呼ばれる溶媒/非溶媒混合物が入っている液体凝固浴中に紡糸口金を通して押し出されることを除いて、乾式紡糸と同一である。溶媒は、ドープで使用されるものとほとんど常に同じであり、非溶媒は通常、水である。
【0008】
一般に、本開示の紡糸口金アセンブリは、(a)インレットポート、およびインレットポートから流れの方向に外に向かってフレアするフレアド下面が備えられたキャップ;(b)その厚さを通して多数の紡糸フローチャネルを有する紡糸口金;および(c)キャップと紡糸口金とで規定されるキャビティ内に備え付けされた先細幾何形状を有するフローガイドを含む。フローガイドは、インレットポートに面するアペックス、紡糸口金に面する底部、およびアペックスまで先細になっている1つ以上の側面を有する。発散性流路は、フローガイドの先細の側面とキャップのフレアド下面とで規定される。フローガイドの底部は、紡糸口金の上面から離れて間隔を置かれ、発散性流路と流体連通状態にある空間をもたらす。
【0009】
図1は、本開示の紡糸口金アセンブリの実施形態を例示する。紡糸口金アセンブリの主要構成要素は、インレットポート11を有するキャップ10、キャップ10に取り外し可能に固定されているケーシング12、複数の紡糸フローチャネルを有する紡糸口金13、紡糸口金上に静止しているフィルタ14、および先細幾何形状を有するフローガイド15を含む。インレットポート11は、キャップ10の厚さを通して延在しており、一部の実施形態において、中央に位置している。フローガイド15は、キャップ10と紡糸口金13とで規定されるキャビティ内に備え付けられている。フローガイド15は、スペーサ15aを介してキャップ10に取り外し可能に取り付けられているが、紡糸口金13に機械的に付加または接続はされていない。
【0010】
さらに図1を参照して、フローガイド15は、インレットポート11の出口端に向けられたアペックス(またはピーク部)を有する先細幾何形状、フィルタ14に面する底部、およびアペックスまで先細にされた1つ以上の側面を有する。フローガイドの先細幾何形状は、円錐またはピラミッド形状であってもよい。キャップ10は、インレットポート11から流れの方向に外に向かってフレアし、かつフローガイド15の先細面から離れて間隔を置かれ、環状ギャップをもたらすフレアド下面10aを有する。環状ギャップは、フローガイド15の先細面の大部分に沿って実質的に一定であってもよい。一部の実施形態において、このギャップは、0.5~10.0mmの範囲であってよい。まとめて、キャップ10のフレアド下面10aとフローガイド15とは、インレットポート11と流体連通状態にある発散性流路を規定する。フローガイド15の底部は、紡糸口金13から離れて間隔を置かれ、分散性流路と流体連通状態にある空間を規定する。ある実施形態において、フローガイド15の底部は、平坦または実質的に平坦であり、紡糸口金13の、やはり平坦または実質的に平坦である、入口面に平行に向けられている。本明細書で使用される場合の「実質的に平坦な」は、完全に平坦ではない面を包含する。フローガイドの底部と紡糸口金の入口面との間の空間は、1~20mmのギャップ高さを有してもよい。代替の実施形態において、フローガイドの底部は、曲面、例えば、凸面を有してもよい。
【0011】
一実施形態において、キャップ10のフレアド下面10aは、フローガイド15の形状に対応する。例えば、フローガイド15は、形状が円錐であってもよく、フレアド下面10aは、ファンネルのような、切頂円錐形状を有してもよい。例示的な円錐形状フローガイドは、図2Aおよび図2B(それぞれ、透視図および横断面図)により例証され、対応するキャップは、図3に示される。図2Aおよび図2Bを参照すると、フローガイド15は、その円錐面15a上に複数のスペーサ15aを有して、フレアド下面10aとフローガイド15との間に必要なギャップを与える。この実施形態において、スペーサは、短い管状構造であり(図2A)、これは、フローガイド内のねじ穴と軸方向に整列されている(図2B)。ねじ穴は、フローガイドの底部からスペーサに延在する。4つのスペーサが示されるけれども、スペーサの数は、それに限定されない。めくら穴は、キャップ10内に備えられて(図3)、フローガイド15上のスペーサに対応し、およびフローガイドから延在するねじを受ける。キャップ10にフローガイド15を取り付けるために、ねじは、フローガイド15の底部から、管状スペーサを通って、キャップ10内のめくら穴にねじ込まれる。
【0012】
図2を参照すると、フローガイド15の円錐面15bは、底部に対して鋭角θ(90度未満)を形成する。鋭角θは、10~90度、一部の実施形態において、15~45度であってもよい。別の実施形態において、フローガイド15は、多角形底面、およびそれぞれが、底部と鋭角θを形成する3つ以上の三角形傾斜面を有するピラミッド形状を有してもよく、キャップ10のフレアド下面10aは、フローガイド15の傾斜面に対応する複数の接続性多角形面を有する切頂ピラミッド形状を有してもよい。
【0013】
図3中のキャップ10は、円形周囲(または周辺エッジ)をもつ円形形状を有するものとして示されるけれども、他の形状および外側の幾何形状が可能であると理解されるべきである。例えば、キャップ10は、四角形または他の多角形の周囲を有してもよい。そして、ケーシング12は、やはりそれがキャップ10および紡糸口金13の形状および外側幾何形状を収容する限り、形状が変えられてもよい。
【0014】
図1を再び参照すると、ケーシング12は、これらの2つの構成要素が比較的容易に互いから離脱させることができるように、キャップ10に取り外し可能に固定される。そのような取り外し可能な取り付けを与えるための一つの仕方は、分配キャップ10およびケーシング12に、それらが互いにかみ合う補完的ねじ込み面を与えることである。このようにして、ケーシング12は、ナットおよびボルトの(nut-and-bolt)留め具のようにキャップ10にねじで留めるか、またはそれからねじを外すことができる。あるいは、環状ケーシング12は、従来の留め具、例えば、クランプ、皿頭ボルトの配置、および他の従来の留め具手段を使用して分配キャップに取り外し可能に固定することができる。キャップ10およびケーシング12は、金属、セラミック、または複合材料(例えば、チョップドまたは連続繊維で強化された樹脂またはプラスチック)から作られてもよい。紡糸口金は、金属またはセラミックから作られてもよい。
【0015】
図4は、図3に示される対応するキャップ10に連結された、図2Aに示される円錐形状フローガイド15の部分アセンブリを示す。図4に示される部分アセンブリ(取り外し可能なケーシング12および紡糸口金13なしの)は、予備的パージング工程の間「そのままで」操作的に機能性であり、ここで、繊維を紡糸するための原料(例えば、ポリマー溶液または溶融ポリマー)が、インレットポート11の中に加圧下で連続的に導入され、キャップ10とフローガイド15との間の発散性流路を通って原料を流させる。排出される材料は、薄い管状フィルムの形態である。この予備的パージング工程は、紡糸口金13および環状ケーシング12の取り付け前に操作者が原料を目視検査することを可能にするために、所定の期間、例えば、15~90分間行われてもよい。透明ポリマー溶液または溶融ポリマーが、ポリマー繊維フィラメントを紡糸するために望ましい。したがって、ポリマー溶液または溶融ポリマー中のいずれの望ましくない気泡、ポリマーゲルまたは他の不純物も、容易に見ることができ、そのような不純物が見られる場合、紡糸口金取り付けは、ポリマー溶液または溶融ポリマーが透明になり、いかなる異成分も含まなくなるまで遅延させることができる。この予備的パージング工程により、紡糸口金が早まって取り付けされず、そのように、安定な紡糸が、そうでなければ可能であるよりも迅速に達成され得ることが保証される。
【0016】
図1に示される実施形態において、紡糸口金13は、突出リム13aを有し、ケーシング12は、紡糸口金13の突出リムをキャップ10の周辺部分に連結するように構成される。その目的のために、環状ケーシング12の下端部は、リム13aがその上に静止する、内に向かって延在するフランジ部分12aを有する。紡糸口金13は、ケーシング12によって適所に支持および保持されるが、いかなる留め機構によってもそれに永久的または機械的に取り付けられない。フィルタ14は、紡糸フローチャネルを覆って、紡糸口金13の流体入口面上に自由に静止している。任意選択で、薄いガスケット16は、リム13aとフランジ部分12aとの間に配置されて、ケーシング12の底面に対して正しい紡糸口金高さをもたらす。ガスケット16は、フランジ部分12aの形状に対応し、例えば、それは、ケーシング12が円形形状紡糸口金を収容するように構成される場合、リング形状化されていてもよい。一部の実施形態において、弾力性シール17、例えば、Oリングは、紡糸口金13のリム13aとキャップ10の周辺下部分との間に閉じ込められて、キャップ10と紡糸口金13との間に流体シールを形成し、それにより、紡糸口金アセンブリを通って流れるポリマー溶液/溶融物の漏洩を防止する。
【0017】
図5は、分離した構成要素として、実施形態による紡糸口金13、フィルタ14、および弾力性シール17を示す。紡糸口金13は、突出リム13aにより取り囲まれた中央部分を有し、この中央部分には、その厚さを通して延在する多数の紡糸フローチャネルが備えられている。中央領域は、フローガイドの底部の表面積よりも大きい表面積を有する。この実施形態において、紡糸口金13は、突出リム13aにより取り囲まれた中央部分を有し、中央部分には、その厚さを通して延在する多数の紡糸フローチャネルが備えられている。弾力性シール17は、紡糸口金13の突出リム13aの形状に対応する。この実施形態において、シール17は、Oリングである。フィルタは、紡糸口金13の形状に対応するために円形形状を有してもよい。紡糸口金13、フィルタ14およびシール17は、図5に示されるとおりの円形以外の他の幾何形状を有してもよい。例えば、これらの構成要素は、四角形または多角形の周囲を有してもよい。
【0018】
フィルタ14は、紡糸口金13に永久的に取り付けられるとは限らず、容易に置き換えることができる。また、フィルタ14は、液体、特にポリマー溶液および低粘度溶融ポリマーに透過性であり、金属メッシュ、不織材料、焼結粒子ディスク、またはセルロースポリマーもしくは金属繊維から構成される織布の形態であってもよい。フィルタは、紡糸口金アセンブリを通って流れるポリマー溶液/溶融物に不活性である任意の不活性材料から作られていてもよい。そのような不活性材料の例には、金属、セルロース、またはポリマーが含まれる。
【0019】
ガスケット16は、アルミニウム、ステンレス鋼、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、および紡糸環境に対して化学的および熱的に影響を受けない任意の他の頑健な材料から作られていてもよい。弾力性シール17、例えば、Oリングは、可撓性材料、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、もしくはポリエチレン(PE)、軟質アルミニウム、または使用されるポリマー溶液/溶融物と相溶性である任意の他の圧縮性材料から作られている。
【0020】
図6は、一実施形態による紡糸口金内の紡糸フローチャネルの分解横断面図である。紡糸口金のフローチャネルは、円形断面形状を有してもよいが、他の形状、例えば、長円形、四角形、三角形、五角形、および他の多角形形状が可能である。紡糸フローチャネルの数は、紡糸方法、原料、および繊維のための最終市場に依存して広範囲に変わってもよい。ポリマー溶液を使用する湿式紡糸の場合、紡糸フローチャネルの数は、少なくとも1000、例えば、3000~75000の範囲である。乾燥ジェット湿式紡糸の場合、範囲は、100~10000であってもよい。溶融ポリマーを使用する溶融紡糸の場合、紡糸フローチャネルの数は、25~100,000の範囲であってもよい。円形断面を有するフローチャネルの場合、紡糸口金の入口側にある開口部(「入口開口部」)の直径は、図6に示されるとおりに出口側にあるもの(「出口開口部)」の直径よりも大きい。一実施形態において入口開口部の直径は、出口開口部のものの10~100倍であってもよい。例えば、入口開口部は、1000~15000μmの範囲の直径を有してもよく、出口開口部は、40~500μmの範囲の直径を有してもよい。紡糸フローチャネルの長さ(すなわち、フローチャネルが位置する紡糸口金の中央部分の厚さ)は、2~50mmの範囲であってもよい。紡糸口金13の上面領域内の入口開口部の密度は、5~200開口部/cmの範囲であってもよい。同様に、非円形開口部の場合、入口開口部のサイズ(周囲により決定して)は、出口開口部のサイズよりも大きくてよく、例えば、10~100倍より大きい。
【0021】
図7は、紡糸口金アセンブリについての代替の実施形態を示す。この実施形態において、インレットポート21を有するキャップ20は、直接紡糸口金22に連結され(図1に示されるケーシング12なしで)、紡糸口金22は、突出リムを有しない。補完的ねじ込み穴(キャップ20内の23aおよび紡糸口金22内の23b)は、キャップを紡糸口金に連結するためのねじ込みボルト(図示せず)を収容するためにキャップおよび紡糸口金を通して与えられる。先細フローガイド24は、キャップ20と紡糸口金22とにより規定されるキャビティ内に備え付けられる。弾力性シール25、例えば、Oリングは、キャップ20と紡糸口金22との間に割り込まされて、流体シールを与える。キャップ20およびフローガイド24は、図1を参照して上に記載されたとおりにインレットポートと流体連通状態である発散性流路を規定するように構成される。また、フローガイド24は、図1図2Aおよび図2Bを参照して上に記載されたとおりにスペーサ(簡略化のために図示せず)を介してキャップ20に取り外し可能に取り付けられる。紡糸口金22は、フィルタ(簡略化のために図示せず)を置くことができる窪み面を有する。フィルタは、図5を参照して上に記載されたとおりである。紡糸口金の窪み面22aは、フローガイド24の底部に面し、多数の開口部を有し、これらは、紡糸口金の紡糸フローチャネルに対応する。紡糸口金内の紡糸フローチャネルは、上に記載されたとおりである。紡糸口金22がキャップ20から離脱されると、キャップ20およびフローガイド24の部分アセンブリは、図4を参照して記載されたとおりに予備的パージング工程で機能し得る。
【0022】
本開示の紡糸口金アセンブリを経る原料(以後「ポリマードープ」)の流路は、図8により例証される。操作では、ポリマードープは、キャップ31のインレットポート30の中に加圧下で連続的に導入される。操作中に、インレットポート30は、典型的には計量ポンプ(図示せず)から出て来る、ポリマー供給に接続される。インレットポート30から、ポリマードープは、フローガイド32の先細面(例えば、円錐面)を取り囲む発散性流路Fと通って流れ、次いで、フローガイドの底部と紡糸口金33との間の空間Sの中にフローガイド底部の周囲を回って流れ、この空間Sを充満させる。ポリマードープは、フローガイドの底部の周囲からこの空間の中心に向けて放射状に内に向かって空間Sを充満させる。流路Fおよび空間S内に捕捉されるすべての空気は、紡糸口金33内の非障害紡糸フローチャネルを通って最初に押し出される。空間Sがポリマードープで完全に充満され、その中の圧力がある特定のレベルに達すると、ドープはフィルタ(図示せず)を通過し、紡糸口金33内の多くの紡糸フローチャネルを通って押し出され、紡糸口金33の出口側で連続ポリマーフィラメントを形成する。空間Sは、ポリマードープが紡糸口金内のフローチャネルのすべてを通過することを防止し得るいかなる介在構造物によっても障害されないことに留意されたい。
【0023】
図9は、比較として、ポリマードーブが、フローガイド32なしの図8に示される同じ紡糸口金アセンブリを通ってどのように流れるかを示す。この状況においては、ポリマードープは、キャビティC(キャップ31と紡糸口金33とにより規定される)を中心から外れて充満させ、キャビティ内に捕捉されるエアポケットを生じさせ、紡糸フローチャネルを出るポリマー材料中に同伴されることによることを除いて回避する方法はない。結果として、材料中の空気同伴は、連続フィラメントの代わりに排出フィラメントにおける破壊、またはポリマードリップを生じさせる。
【0024】
本明細書に記載される紡糸口金アセンブリは、その後に炭素繊維に変換され得る、ポリアクリロニトリル(PAN)前駆体繊維を生成させるための湿式紡糸または乾燥ジェット湿式紡糸(「空気ギャップ紡糸」としても知られる)プロセスで使用されてもよい。PAN前駆体繊維を作製するために、PANポリマー溶液(スピン「ドープ」と呼ばれる)が初期工程として形成される。このスピンドープは、溶液の全重量に基づいて、5重量%~28重量%(好ましくは15~25重量%)の範囲内のポリマー濃度を有してもよい。湿式紡糸の場合、紡糸口金を通して押し出されたドープは、液体凝固浴中に直接入って、フィラメントを形成する。紡糸口金穴は、PAN繊維の所望のフィラメント番手を決定する(例えば、3K炭素繊維用には3,000穴)。エアギャップ紡糸では、1~50mm、好ましくは2~15mmの垂直エアギャップが、紡糸口金と凝固浴との間に維持される。エアギャップ紡糸では、紡糸口金から押し出されたドープは、エアギャップに入り、その後、凝固浴中で凝固される。これらの紡糸プロセスで使用される凝固液は、溶媒と非溶媒との混合物である。水またはアルコールが典型的には、非溶媒として使用される。溶媒と非溶媒との比および浴温が、凝固中の押し出されたフィラメントの固化速度を調整するために使用される。
【0025】
一部の実施形態において、紡糸フィラメントは、次いで、繊維直径を制御する最初の工程として、洗浄浴を通ってローラにより凝固浴から引き出されて、過剰の凝固剤を除去し、熱水浴中で延伸されて、フィラメントに分子配向を付与する。次いで、延伸フィラメントは、例えば、乾燥ロール上で乾燥される。乾燥ロールは、直列および蛇行構造に配置された複数の回転可能なロールから構成されてもよく、ロール上をフィラメントが、ロールからロールへ順次、および十分な張力下に通過して、ロール上でフィラメントに延伸または緩和を与える。ロールの少なくともいくつかは、内部をもしくはロールを通って循環する、加圧スチーム、またはロールの内部の電気加熱素子によって加熱される。PAN前駆体繊維を炭素繊維に変換するために、PAN前駆体繊維は、酸化および炭化にかけられる。
【0026】
本明細書に開示される紡糸口金アセンブリは、ポリマーが分解なしに適切な低粘度まで溶融され得る場合、溶融紡糸法で使用されてもよい。この方法は、ポリマー、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、およびポリエステル繊維から熱可塑性繊維を紡糸するために適する。溶融紡糸では、加圧溶融ポリマーが、インレットポートに導入されて、ガス状媒体、例えば、空気の中に紡糸口金を通って押し出され、ここで、押し出された繊維は、冷め、固体連続フィラメントを生成する。次いで、フィラメントは、延伸されて、ポリマー分子を配向させ、かつ得られた繊維の引張り特性を改善する。
【0027】
様々な実施形態が本明細書で説明されるが、本明細書に開示される要素の様々な組み合わせ、実施形態の変形が、当業者によってなされてもよく、本開示の範囲内であることが本明細書から理解される。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または材料を本明細書に開示される実施形態の教示に適合させるために多くの修正がなされてもよい。したがって、特許請求された発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されないこと、および特許請求された発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9