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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】薬液投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20221017BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20221017BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M5/145 500
A61M5/168 520
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019023340
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020130222
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝平
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173480(WO,A1)
【文献】特開2018-157966(JP,A)
【文献】特開2018-051064(JP,A)
【文献】特開2002-136594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填された薬液貯蔵部と、
前記薬液貯蔵部に充填された前記薬液を押し出す押し子部材と、
前記押し子部材に連結し、前記押し子部材の移動を操作する押し子操作部と、
前記押し子操作部に駆動力を与える駆動部と、
前記押し子部材と前記押し子操作部の連結を検出する連結検出センサと、
前記駆動部の駆動を制御し、前記連結検出センサが検出した検出信号に基づいて前記押し子部材と前記押し子操作部が連結したか否かを判断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記薬液の投与の準備動作において、前記押し子部材と前記押し子操作部が連結したと判断するまで、前記駆動部の駆動を継続させ、
前記制御部は、前記準備動作において、前記準備動作を停止させる指示を受信した際に、前記押し子部材と前記押し子操作部が連結していないと判断した場合、前記準備動作が未完了である旨を通知する
薬液投与装置。
【請求項2】
前記連結検出センサは、前記駆動部の回転を検出する回転検出部である
請求項1に記載の薬液投与装置。
【請求項3】
前記押し子操作部は、
前記駆動部により回転し、軸方向が前記押し子部材の移動方向と平行に配置される送りねじ軸と、
前記送りねじ軸に螺合され、前記押し子部材に連結する連結ナットと、を有する
請求項1に記載の薬液投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液投与装置に関し、例えばインスリンポンプのように持続的な薬液投与を行うための薬液投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮下注射や静脈内注射などによって、患者の体内に薬液を持続的に投与する治療法が行われている。例えば、糖尿病患者に対する治療法として、患者の体内に微量のインスリンを持続的に注入する治療が実施されている。この治療法では、一日中患者に薬液(インスリン)を投与するために、患者の身体又は衣服に固定する持ち運び可能な携帯型の薬液投与装置(いわゆるインスリンポンプ)が用いられている。このような携帯型の薬液投与装置の一つとして、薬液が貯蔵されるシリンジと、シリンジの内部で駆動される押し子とを有するシリンジポンプ形式のものが提案されている。
【0003】
また、特許文献1には、薬液が充填された薬液貯蔵部と、この薬液貯蔵部に充填された薬液を押し出す押し子部材と、押し子部材の移動を操作する押し子操作部と、押し子操作部に駆動力を与える駆動部と、を備えた薬液投与装置が記載されている。また、薬液貯蔵部に薬液を充填する際には、押し子部材と押し子操作部の連結は、外されている。そして、薬液を投与する準備動作において押し子部材と押し子操作部は、連結される。さらに、薬液を投与する準備動作では、薬液貯蔵部や薬液が通過する配管に残留する気泡を除去する作業が行われる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-51064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡の除去作業を手動で行った場合、配管に薬液が満たされたことで、押し子部材と押し子操作部が連結されていなくても、準備動作が完了したと誤認識されるおそれがあった。そして、押し子部材と押し子操作部が連結されていない状態で、薬液の投与動作を行うと、正確な量の薬液を投与することができない、という問題を有していた。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、薬液を投与する準備動作時に、押し子部材と押し子操作部の連結作業を確実に実施することができる薬液投与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の薬液投与装置は、薬液が充填された薬液貯蔵部と、押し子部材と、押し子操作部と、駆動部と、連結検出センサと、制御部と、を備えている。
押し子部材は、薬液貯蔵部に充填された薬液を押し出す。押し子操作部は、押し子部材に連結し、押し子部材の移動を操作する。駆動部は、押し子操作部に駆動力を与える。連結検出センサは、押し子部材と押し子操作部の連結を検出する。制御部は、駆動部の駆動を制御する。また、制御部は、連結検出センサが検出した検出信号に基づいて押し子部材と押し子操作部が連結したか否かを判断する。また、制御部は、薬液の投与の準備動作において、押し子部材と押し子操作部が連結したと判断するまで、駆動部の駆動を継続させる。また、制御部は、準備動作において、準備動作を停止させる指示を受信した際に、押し子部材と押し子操作部が連結していないと判断した場合、準備動作が未完了である旨を通知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の薬液投与装置によれば、薬液を投与する準備動作時、押し子部材と押し子操作部の連結作業を確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態例にかかる薬液投与装置を示す分解斜視図である。
図2】実施の形態例にかかる薬液投与装置を示す平面図である。
図3】実施の形態例にかかる薬液投与装置における回転検出部を示す斜視図である。
図4】実施の形態例にかかる薬液投与装置の制御系を示すブロック図である。
図5】実施の形態例にかかる薬液投与装置における駆動モータの駆動速度及びトルクと負荷との関係を示す説明図である。
図6】実施の形態例にかかる薬液投与装置における連結ナットと連結部の状態を示すもので、図6Aは薬液投与準備時の状態を示し、図6Bは薬液投与準備が完了した状態を示している。
図7】実施の形態例にかかる薬液投与装置における駆動モータに加わる負荷を示す説明図である。
図8】実施の形態例にかかる薬液投与装置における薬液投与準備動作を示すフローチャートである。
図9】実施の形態例にかかる薬液投与装置における薬液投与準備動作での駆動モータの駆動信号と回転検出部が検出した回転信号との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の薬液投与装置の実施の形態例について、図1図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0011】
1.実施の形態例
1-1.薬液投与装置の構成
まず、図1図3を参照して、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる薬液投与装置の構成例について説明する。
図1は、薬液投与装置を示す分解斜視図、図2は、薬液投与装置を示す平面図である。
【0012】
図1に示す装置は、パッチ式や、チューブ式のインスリンポンプ、さらにその他の携帯型の薬液投与装置のように、患者の体内に持続的に薬液投与を行うための携帯型のインスリンポンプである。薬液投与装置1は、薬液投与部2と、薬液投与部2が着脱可能に装着されるクレードル装置3と、クレードル装置3に装着される接続ポート6とを有している。
【0013】
クレードル装置3には、接続ポート6が装着される装着部5が設けられている。接続ポート6は、カニューレ6aを有している。クレードル装置3を患者の皮膚に貼着し、不図示の穿刺機構を用いることにより、接続ポート6は装着部5に装着される。接続ポート6をクレードル装置3の装着部5に装着した際に、クレードル装置3における薬液投与部2が装着される側と反対側からカニューレ6aが突出し、カニューレ6aが生体に穿刺・留置される。
【0014】
また、接続ポート6は、クレードル装置3に装着された状態において、薬液投与部2が装着されると、後述する薬液投与部2の筐体11の裏面収納部に収納される。そして、接続ポート6は、後述する薬液投与部2の送液配管19に接続される。
【0015】
薬液投与部2は、筐体11と、蓋体12と、薬液貯蔵部13と、伝達機構14と、駆動部の一例を示す駆動モータ15と、報知部16と、電源部17とを有している。また、薬液投与部2は、薬液貯蔵部13に充填された薬液を押し出す押し子部材18と、送液配管19と、回転検出部21と、押し子部材18を操作する押し子操作部22と、を有している。
【0016】
筐体11は、一面が開口した中空の略直方体状に形成されている。筐体11には、第1収納部11aと、第2収納部11bが形成されている。第1収納部11aには、駆動モータ15と、電源部17と、回転検出部21と、伝達機構14の一部が収納される。
【0017】
第2収納部11bには、薬液貯蔵部13と、押し子部材18と、押し子操作部22と、伝達機構14の一部が収納される。また、第2収納部11bには、第1軸受け部11cと、第2軸受け部11dが設けられている。第1軸受け部11cと第2軸受け部11dは、第2収納部11bの底面部から開口に向けて突出している。第1軸受け部11cには、後述する押し子操作部22の送りねじ軸22bが回転可能に支持される。また、第2軸受け部11dには、後述する押し子操作部22における操作歯車23の軸部23aが回転可能に支持される。
【0018】
蓋体12は、略平板状に形成されている。蓋体12は、筐体11に形成された第1収納部11a及び第2収納部11bを覆い、筐体11の開口を閉じる。また、蓋体12には、伝達機構14、駆動モータ15、報知部16、電源部17及び回転検出部21が取り付けられる。
【0019】
薬液貯蔵部13は、軸方向の一端が閉塞し、軸方向の他端が開口した筒状に形成されている。この薬液貯蔵部13の筒孔13c内には、薬液が貯蔵される。薬液貯蔵部13の軸方向の一端部には、送液ポート13aと、充填ポート13bが形成されている。
【0020】
送液ポート13aは、送液配管19に接続されている。送液配管19における送液ポート13aと反対側の端部は、接続ポート6に接続される。接続ポート6のカニューレ6aは、患者の生体に穿刺及び留置される。そして、薬液貯蔵部13の筒孔13c内に貯蔵された薬液は、送液ポート13aから排出され、送液配管19及び接続ポート6を通過して患者に投与される。
【0021】
充填ポート13bには、不図示の充填装置が接続される。そして、充填ポート13bを介して薬液貯蔵部13の筒孔13c内に薬液が充填される。
【0022】
また、薬液貯蔵部13の筒孔13c内には、押し子部材18が摺動可能に挿入されている。押し子部材18は、ガスケット18aと、シャフト部18bとを有している。ガスケット18aは、薬液貯蔵部13の筒孔13c内において摺動可能に配置されている。ガスケット18aは、薬液貯蔵部13の筒孔13cの内周面に液密に密着しながら移動する。
【0023】
ガスケット18aにおける先端部の形状は、薬液貯蔵部13の筒孔13cの軸方向の一端側の形状に対応して形成されている。これにより、ガスケット18aが薬液貯蔵部13の軸方向の一端側に移動した際に、薬液貯蔵部13内に充填された薬液を無駄なく送液ポート13aから排出させることができる。
【0024】
ガスケット18aにおける先端部と反対側には、シャフト部18bが設けられている。シャフト部18bは、薬液貯蔵部13の軸方向の他端に形成された開口から外側に延設されている。シャフト部18bにおけるガスケット18aと反対側の端部には、後述する押し子操作部22の連結ナット22cと連結する連結部18cが設けられている。連結部18cが連結ナット22cと連結されて押し子操作部22が駆動すると、押し子部材18は、薬液貯蔵部13の軸方向に沿って移動する。
【0025】
押し子操作部22は、操作歯車23と、送りねじ軸22bと、連結ナット22cとを有している。操作歯車23は、後述する伝達機構14の歯車と歯合する。また、操作歯車23の軸部23aの一端には、送りねじ軸22bの軸方向の端部に接続されている。さらに、操作歯車23の軸部23aの他端は、第2軸受け部11dに回転可能に支持されている。
【0026】
送りねじ軸22bは、第1軸受け部11cに回転可能に支持されている。また、送りねじ軸22bは、その軸方向が、シャフト部18bに対して平行に配置される。すなわち、送りねじ軸22bは、押し子部材18の移動方向と平行に配置される。この送りねじ軸22bには、連結ナット22cが螺合されている。
【0027】
連結ナット22cは、筐体11に収納された際に、送りねじ軸22bの周方向回りの回転が規制される。これにより、操作歯車23が回転し、送りねじ軸22bが回転すると、連結ナット22cは、送りねじ軸22bの軸方向に沿って移動する。そして、連結ナット22cに押し子部材18の連結部18cが係合された後には、送りねじ軸22bの回転にともなって押し子部材18は、連結ナット22cと共に送りねじ軸22bの軸方向に沿って移動する。また、押し子操作部22には、伝達機構14を介して駆動モータ15の駆動力が伝達される。
【0028】
駆動モータ15としては、例えば、ステッピングモータが適用される。そして、駆動モータ15は、後述する演算部101(制御部)からの駆動信号に基づいて回転駆動する。
【0029】
駆動モータ15は、筐体11の開口を蓋体12で閉塞した状態において、筐体11に収納された電源部17の電極に接続されて電力が供給される。駆動モータ15の駆動軸15aには、駆動軸15aの回転を検出する回転検出部21が設けられている。
【0030】
図3は、回転検出部21を示す斜視図である。
図3に示すように、連結検出センサの一例を示す回転検出部21は、検出センサ25と、回転体26とを有するロータリーエンコーダである。回転体26は、駆動モータ15の駆動軸15aに固定された回転体本体部26aと、回転体本体部26aに設けられた3枚の遮蔽板26bと、回転体本体部26aに設けられた軸部26dとを有している。
【0031】
回転体本体部26aは、略円柱状に形成されている。そして、回転体本体部26aは、駆動軸15aの回転に同期して回転する。回転体本体部26aの軸方向における駆動軸15aとは反対側には軸部26dが突出している。軸部26dには、不図示の歯車が設けられており、伝達機構14の歯車と歯合する。
【0032】
また、回転体本体部26aの外周面には、等角度間隔に3枚の遮蔽板26bが設けられている。そのため、回転体本体部26aの周縁には、3つの遮蔽板26bにより、3つのスリット26cが等角度間隔に形成されている。
【0033】
検出センサ25は、蓋体12に配置されている。光を出射する発光部25aと、発光部25aから出射された光を受光する受光部25bとを有する光学式センサである。発光部25aから出射された光は、回転体26の遮蔽板26bにより遮られ、または回転体26のスリット26cを通過する。
【0034】
上述したように、回転体26には、3つの遮蔽板26bと、3つのスリット26cが形成されている。そのため、駆動モータ15の駆動軸15aが1回転、すなわち回転体26が1回転すると、検出センサ25の受光部25bは、遮蔽板26bにより光が遮られた「暗」と、スリット26cを通過した光を検出する「明」の1セットが3回繰り返されたパルス信号を検出する(図9参照)。これにより、検出センサ25は、駆動モータ15の回転を検出する。
【0035】
なお、遮蔽板26bの数は、3つに限定されるものではなく、2つ、あるいは4つ以上設けてもよい。そのため、回転体26が1回転した際に生じるパルス信号は、遮蔽板26b及びスリット26cの数に応じて適宜変化する。
【0036】
また、検出センサ25は、検出した駆動モータ15の回転情報を後述する演算部101(制御部)に出力する。
【0037】
図1及び図2に示すように、駆動モータ15の駆動軸15aには、回転検出部21を介して伝達機構14が接続されている。伝達機構14は、駆動モータ15の駆動力(回転)を押し子操作部22に伝達するものである。伝達機構14は、複数の歯車から構成されている。駆動モータ15が駆動すると、伝達機構14を構成する複数の歯車が回転し、駆動モータ15の駆動力が操作歯車23に伝達される。そのため、押し子部材18が操作されて、薬液貯蔵部13に貯蔵された薬液がガスケット18aにより押し出される。
【0038】
報知部16は、後述する演算部101に接続されている。報知部16は、薬液投与装置1に誤作動が生じた場合や、閉塞を検知した場合等に後述する演算部101(制御部)からの指示により駆動し、警報を出力する。この報知部16が出力する警報としては、例えば振動や音などを単独で発してもよく、または振動や音などを併用して発するようにしてもよい。
【0039】
電源部17は、薬液投与装置1を構成する各構成要素に電力を供給するためのものである。電源部17としては、例えば電池17a及びこれを収納する電池ボックス、さらには電池からの電力の供給をオン/オフするスイッチ等で構成されている。
【0040】
1-2.薬液投与装置の制御系
次に、図4を参照して薬液投与装置1の制御系について説明する。
図4は、薬液投与装置1の制御系を示すブロック図である。
【0041】
図4に示すように、薬液投与装置1は、上述した駆動モータ15と、回転検出部21と、報知部16と、電源部17とを有している。また、薬液投与装置1は、制御部の一例を示す演算部101と、通信部103と、記憶部104と、日時管理部105とを有している。
【0042】
駆動モータ15と、回転検出部21と、報知部16と、電源部17と、通信部103と、記憶部104と、日時管理部105は、演算部101に接続されている。
【0043】
回転検出部21の検出センサ25(図3参照)で検出した駆動モータ15の回転情報は、演算部101に出力される。演算部101は、回転検出部21が検出した駆動モータ15の回転情報に基づいて、連結ナット22cと、連結部18cが連結したか否かを判断する。また、駆動モータ15の駆動は、演算部101により制御される。
【0044】
通信部103は、薬液投与装置1を操作する不図示のコントローラや、外部の携帯情報処理端末や、PC(パーソナルコンピュータ)と有線又は無線のネットワークを介して接続されている。通信部103は、不図示のコントローラや携帯情報処理端末等を介して使用者が操作した操作情報や、外部の装置が計測した計測データを受信する。そして、通信部103は、受信した操作情報や計測データを演算部101に出力する。
【0045】
また、通信部103は、演算部101により制御されることで、閉塞情報、薬液貯蔵部13に貯蔵された薬液の量に関する情報や、投与パターン等の薬液投与装置1に関する各種情報を不図示のコントローラや携帯情報処理端末等に出力する。
【0046】
記憶部104は、各種のデータを記憶する部分である。記憶部104には、薬液を投与するための投与パターンを示す投与プロファイル等を制御するための制御プログラム、閉塞検出に薬液投与準備動作で用いられる閾値データ等が記憶されている。さらに、記憶部104には、通信部103が受信した情報や、回転検出部21が検出した駆動モータ15の回転情報等が格納される。そして、記憶部104は、予め記憶されている制御プログラムや、他の処理部から受信した回転情報等を演算部101に出力する。
【0047】
日時管理部105は、日時管理を行うためのプログラム部分であり、一般的なマイコンに搭載されているものであって良く、演算部101からの指令に基づいて日時情報を出力する。この日時管理部105は、電源がオフの状態であっても電力が供給されることにより、正確な日時情報を出力する。
【0048】
演算部101には、駆動モータ15、通信部103、記憶部104、日時管理部105等の各種装置を制御するプログラムが実装されている。そして、演算部101は、そのプログラムに基づいて薬液投与装置1の各種動作を制御する。また、演算部101は、回転検出部21が検出した駆動モータ15の回転情報等を受信する。演算部101は、受信した情報を記憶部104に格納する。
【0049】
また、演算部101は、受信した回転情報に基づいて、駆動モータ15に加わる負荷を検知する。演算部101は、回転情報に基づいて駆動モータ15を駆動させる駆動信号を設定する。そして、演算部101は、設定した駆動信号に基づいて駆動モータ15を駆動させる。
【0050】
さらに、演算部101は、記憶部104に記憶された薬液の投与パターンを示す投与プロファイルに基づいて、駆動モータ15を駆動させる。これにより、使用者には、所定の投与プロファイルに基づいた薬液が投与される。演算部101は、例えばここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備えたものである。ROM(Read Only Memory)は、記憶部104であってもよい。
【0051】
1-3.駆動モータの駆動速度及び負荷との関係
次に、上述した構成を有する薬液投与装置1における駆動モータ15の駆動速度及びトルクと負荷との関係について図5を参照して説明する。
図5は、駆動モータ15の駆動速度及びトルクと負荷との関係を示す説明図である。
【0052】
なお、駆動モータ15に印加される電圧又は電流の値は一定である。そのため、図5に示すように、駆動モータ15の駆動速度Vを上げると、トルクMが小さくなり、駆動速度Vが下がると、トルクMが大きくなる。
【0053】
また、駆動モータ15に加わる負荷が大きくなると、この負荷に合わせて駆動モータ15のトルクMを大きくする必要がある。そして、トルクMを大きくするためには、駆動速度Vを下げる必要がある。
【0054】
2.薬液投与装置のプライミング動作例
次に、上述した構成を有する薬液投与装置1における薬液投与準備動作、いわゆるプライミング動作の一例について図6から図9を参照して説明する。
【0055】
2-1.薬液投与準備動作時に加わる負荷
まず、図6及び図7を参照して、薬液投与準備動作時に加わる負荷について説明する。
図6Aは、連結ナット22cと連結部18cが連結する前の状態を示し、図6Bは、連結ナット22cと連結部18cが連結した状態を示す説明図である。図7は、駆動モータ15に加わる負荷を示す説明図である。
【0056】
薬液投与準備動作を行う前では、図6Aに示すように、押し子操作部22の連結ナット22cは、押し子部材18の連結部18cから離反している。そのため、連結ナット22cと連結部18cの連結は、外されている。このとき、駆動モータ15を駆動させて連結ナット22cを移動させても、連結ナット22cに加わる抗力(負荷)が小さいため、駆動モータ15に加わる負荷も小さい。
【0057】
そして、駆動モータ15を回転駆動させて、連結ナット22cを連結部18cに接近させると、図6Bに示すように、連結ナット22cが連結部18cと連結する。この際、図7に示す斜線矢印のように、連結ナット22cは、連結部18cから移動方向と反対向きに負荷を受ける。連結ナット22cに抗力が伝わることで、連結ナット22cと螺合する送りねじ軸22bには、連結ナット22cを介して、回転方向と反対向きの負荷を受ける。そして、送りねじ軸22bに接続された操作歯車23にも、回転方向と反対向きの負荷が加わる。その結果、伝達機構14を介して駆動モータ15に加わる負荷が大きくなる。
【0058】
また、薬液貯蔵部13、送液ポート13aや送液配管19内に残留する空気を除去する際には、押し子部材18を押し子操作部22で操作し、ガスケット18aを薬液貯蔵部13の筒孔13c内を摺動させる。これにより、薬液貯蔵部13の筒孔13c、送液ポート13aや送液配管19内に残留する空気が送液配管19から排出する。
【0059】
ガスケット18aを、筒孔13c内で摺動させる際は、ガスケット18aは、作用・反作用の法則により薬液から押し出す向きと反対向きに抗力(負荷)を受ける。ガスケット18aに加わった負荷は、シャフト部18bを介して押し子操作部22の連結ナット22cに伝わる。その結果、連結ナット22cと連結部18cが連結する際と同様に、送りねじ軸22b、操作歯車23及び駆動モータ15には、回転方向と反対向きの負荷が加わる。
【0060】
2-2.薬液投与装置のプライミング動作
次に、図8図9を参照して本例の薬液投与装置1のプライミング動作について説明する。
図8は、プライミング動作を示すフローチャート、図9は、演算部が駆動モータに出力する駆動信号と回転検出部が検出した回転信号との関係を示す説明図である。
【0061】
まず、図8に示すように、演算部101は、不図示のコントローラや外部の携帯情報端末等を介して使用者からプライミング開始ボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11の処理において、演算部101は、プライミング開始ボタンが押下されたと判断した場合(ステップS11のYES判定)、プライミング動作を開始させる(ステップS12)。ステップS12の処理では、演算部101は、駆動モータ15を制御し、駆動モータ15を駆動させる。これにより、送りねじ軸22bが回転し、連結ナット22cが、連結部18cに接近する。
【0062】
そして、使用者は、送液配管19の先端から薬液が排出されると、不図示のコントローラや外部の携帯情報端末等に設けられたプライミング停止ボタンを押下する。次に、演算部101は、不図示のコントローラや外部の携帯情報端末等を介して使用者からプライミング停止ボタンが押下されたか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、演算部101は、通信部103を介して停止指示を受信したか否かを判断する。
【0063】
なお、使用者の誤操作により、送液配管19から薬液が排出される前に、プライミング停止ボタンが押下される場合がある。そのため、ステップS13の処理において、演算部101は、プライミング停止ボタンが押下されたと判断した場合(ステップS13のYES判定)、回転検出部21から駆動モータ15の回転情報に基づいて、負荷を検出したか否かを判断する(ステップS14)。
【0064】
上述したように、連結ナット22cと連結部18cが連結されると、伝達機構14を介して駆動モータ15に加わる負荷が大きくなる。図9に示すように、演算部101が出力した駆動信号の1パルス(T1秒)において回転検出部21が検出する回転信号(回転検出部パルス)は、「明」と「暗」が6回繰り返された信号となる。
【0065】
また、連結ナット22cが連結部18cに連結されることで、駆動モータ15に加わる負荷が大きくなると、図9に示すように、演算部101が出力した駆動信号の1パルス(T1秒)において回転検出部21が検出する回転信号(回転検出部パルス)の「明」と「暗」の繰り返しのパターンが変化する(図9に示す例では、「明」が2回、「暗」が4回)。そして、演算部101は、「明」と「暗」の繰り返しのパターンが変化した回転信号を受信した際に、負荷を検知したと判断し、連結ナット22cと連結部18cが連結されたと判断する。
【0066】
ステップS14の処理において、演算部101は、負荷を検出していないと判断した場合(ステップS14のNO判定)、連結ナット22cと連結部18cが連結していないと判断する。そして、演算部101は、通信部103を介して、不図示のコントローラや外部の携帯情報端末等にプライミング処理が未完了である旨を通知する(ステップS15)。また、演算部101は、駆動モータ15の制御し、駆動モータ15の駆動を継続させる。
【0067】
ステップS14の処理において、演算部101は、負荷を検出したと判断した場合(ステップS14のYES判定)、連結ナット22cと連結部18cが連結したと判断する。そして、演算部101は、図9に示すように、駆動軸15aがT1秒よりも長いT2秒で1回転するように駆動モータ15を制御する。これにより、駆動モータ15の駆動速度が低下し、駆動モータ15で生じるトルクが増加する。
【0068】
なお、本例では、連結ナット22cと連結部18cが連結する前と後で、駆動モータ15の駆動速度を変化させる例を説明したが、これに限定されるものではなく、常に一定の駆動速度で駆動モータ15を駆動させてもよい。
【0069】
また、演算部101は、プライミング動作の停止を許可する(ステップS16)。ステップS16の処理では、例えば、演算部101は、通信部103を介して、不図示のコントローラや外部の携帯情報端末等にプライミング動作の停止許可を通知する。そして、再びプライミング停止ボタンが押下されると、演算部101は、駆動モータ15を制御し、駆動モータ15の駆動を停止させる。これにより、薬液投与装置1の薬液投与準備動作であるプライミング動作が完了する。
【0070】
上述したように、本例の薬液投与装置1によれば、連結ナット22cと連結部18cの連結を確認するまで、演算部101がプライミング動作を停止させない。これにより、連結ナット22cと連結部18cが連結されずに薬液の投与動作が開始されることを防ぐことができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態例について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の薬液投与装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0072】
上述した実施の形態例では、薬液投与装置としてインスリンを投与するインスリンポンプを適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。投与する薬液としては、鎮痛薬、抗癌治療薬、HIV薬、鉄キレート薬、肺高血圧症治療薬等のその他各種の薬液を用いてもよい。
【0073】
また、上述した実施の形態例では、連結検出センサとして回転検出部21を用いて、連結ナット22cと連結部18cが連結したか否かを回転検出部21の回転信号に基づいて演算部101が判断する例を説明したが、これに限定されるものではない。連結検出センサとしては、例えば、筐体11の歪みを検出する歪みセンサを用いてもよい。連結ナット22cと連結部18cが連結する際には、連結ナット22c及び連結部18cを収容する筐体11が歪む。そして、演算部101は、歪みセンサが検出した筐体11の歪みから連結ナット22cと連結部18cが連結したか否かを判断する。
【0074】
また、連結検出センサとしては、機械式の押圧センサや光学センサ等のその他各種のセンサを用いてもよい。そして、押圧センサや光学センサによって連結ナット22cや連結部18cの位置や、連結ナット22cと連結部18cとの接触を検出し、この検出信号に基づいて、演算部101は、連結ナット22cと連結部18cが連結したか否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…薬液投与装置、 2…薬液投与部、 3…クレードル装置、 5…装着部、 6…接続ポート、 6a…カニューレ、 11…筐体、 11c…第1軸受け部、 11d…第2軸受け部、 12…蓋体、 13…薬液貯蔵部、 14…伝達機構、 15…駆動モータ(駆動部)、 15a…駆動軸、 16…報知部、 17…電源部、 18…押し子部材、 18a…ガスケット、 18b…シャフト部、 18c…連結部、 19…送液配管、 21…回転検出部(連結検出センサ)、 22…押し子操作部、 22b…送りねじ軸、 22c…連結ナット、 23…操作歯車、 25…検出センサ、 25a…発光部、 25b…受光部、 26…回転体、 26a…回転体本体部、 26b…遮蔽板、 26c…スリット、 101…演算部(制御部)、 104…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9