(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機およびこれを用いた冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F04B 39/04 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
F04B39/04 C
(21)【出願番号】P 2019032581
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521161750
【氏名又は名称】ジーエムシーシー アンド ウェリング アプライアンス コンポーネント (タイランド) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 海斗
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遵自
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-004354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0154330(US,A1)
【文献】特開2017-116224(JP,A)
【文献】中国実用新案第203488335(CN,U)
【文献】特開2013-019410(JP,A)
【文献】特表昭63-500878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとヘッドカバーとピストンによって冷媒を圧縮する圧縮室を構成する圧縮要素と、
前記ピストンを駆動する電動要素と、
前記圧縮要素に対して冷媒流の上流側に設けられた吸入サイレンサと、
前記圧縮要素、前記電動要素、前記吸入サイレンサを収納し、底部に油を貯えた密閉容器と、
を具備する圧縮機であって、
前記吸入サイレンサは、
前記冷媒流の吸入孔から吐出孔に至る流路の方向を変更する曲がり部と、
前記流路から分岐する拡張室と、
前記曲がり部と前記吐出孔の間に設けられた障壁と、
該障壁より上流側の前記流路の底面に設けられた油排出手段と、
を有
し、
前記流路は、前記曲がり部の上流側にある湾曲部分と、前記曲がり部の下流側にある直線部分とを含み、
前記湾曲部分は、前記冷媒流が通過する際に前記吸入サイレンサの内壁に衝突するように設けられており、
前記障壁は、前記曲がり部に接近するように前記直線部分において設けられている、ことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記障壁は、前記吐出孔の流路直径をD1、前記曲がり部から前記障壁までの距離をL1としたとき、L1<5D1を満たす位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記障壁は、前記流路の内壁全周に設けた環状のものであることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記油排出手段は、吸入サイレンサ外と重力方向に連通した油抜き孔であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記油排出手段は、前記油抜き孔まで前記油を運ぶ溝を含むことを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
請求項1乃至5何れか一項に記載の圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された冷媒が供給される冷却器と、
を接続して形成した冷凍サイクルを備えることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入サイレンサを内蔵する密閉型圧縮機、および、これを用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫には、消費電力量の低減と製品寿命の長期化が求められており、その対策の一つとして、圧縮機のピストンとシリンダ間に冷凍機油を供給し流体潤滑を行っている。また、冷蔵庫には、低騒音化も求められており、その対策の一つとして、圧縮機内にサイレンサを配置している。
【0003】
しかし、圧縮機のシリンダへの吸入冷媒に冷凍機油が混ざると冷凍能力が下がるため、冷凍サイクル内の冷凍機油の循環率(オイルレート)を下げる工夫が必要となる。例えば、特許文献1では、吸入マフラー(以下では「吸入サイレンサ」と称する)内で冷媒流れの方向を大きく変化させることで、冷媒流から冷凍機油を分離し、オイルレートを下げている(例えば、特許文献1の
図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の
図2のような構成では、吸入マフラーを通過するオイルミストが壁面に衝突し油滴化したオイルが、冷媒の流れに乗ってシリンダ内に侵入する可能性が高く、オイルレートが却って増加することも考えられる。
【0006】
そこで、本発明では、サイレンサを通過する冷媒流内の油滴がシリンダ内に侵入することを効果的に防ぐことができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の圧縮機は、シリンダとヘッドカバーとピストンによって冷媒を圧縮する圧縮室を構成する圧縮要素と、前記ピストンを駆動する電動要素と、前記圧縮要素に対して冷媒流の上流側に設けられた吸入サイレンサと、前記圧縮要素、前記電動要素、前記吸入サイレンサを収納し、底部に油を貯えた密閉容器と、を具備する圧縮機であって、前記吸入サイレンサは、前記冷媒流の吸入孔から吐出孔に至る流路の方向を変更する曲がり部と、前記流路から分岐する拡張室と、前記曲がり部と前記吐出孔の間に設けられた障壁と、該障壁より上流側の前記流路の底面に設けられた油排出手段と、を有するものとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧縮機によれば、サイレンサを通過する冷媒流内の油滴がシリンダ内に侵入することを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例1の吸入サイレンサをZ軸正方向から見た水平断面図
【
図3】実施例1の吸入サイレンサの吐出孔付近をZ軸正方向から見た拡大図
【
図4】実施例1の吸入サイレンサの吐出孔付近をX軸負方向から見た正面図
【
図5】実施例2の吸入サイレンサの吐出孔付近をZ軸正方向から見た拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例に係る密閉型圧縮機CMPを詳細に説明する。なお、後述する各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、或る構成要素が他の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【実施例1】
【0011】
<冷蔵庫>
まず、
図6を用いて、密閉型圧縮機CMPを用いた冷蔵庫REFの一例を説明する。ここに例示する冷蔵庫REFは、上方から冷蔵室70、上部冷凍室72、下部冷凍室73、野菜室74を有する。なお、ここに例示した構成はあくまで一例であって、本実施例の冷蔵庫REFの構成はこの例の構成に限定されるものではない。
【0012】
冷蔵室70は前方側に、左右に分割された観音開き(いわゆるフレンチ型)の冷蔵室扉70a、70bを備えている。上部冷凍室72、下部冷凍室73、野菜室74は夫々引き出し式の上部冷凍室扉72a、下部冷凍室扉73a、野菜室扉74aを備えている。
【0013】
ここで、
図6に示すように冷蔵庫本体75の下部には機械室76が形成され、この中に冷凍サイクルの一部を構成する密閉型圧縮機CMPが内蔵されている。冷却器収納室78と機械室76は凝縮水排水パイプ79で連通され、冷却器80の凝縮水を機械室76のトレイに排出できるようになっている。
【0014】
機械室76は、直方体形状の空間から形成されており、凝縮器、冷却ファン、密閉型圧縮機CMPが機械室内に配置されている。この図では凝縮器、冷却ファンは省略されている。機械室76の長手方向の両端の壁面には図示しない空気導入口と空気排出口が形成されており、冷却ファンを駆動することによって、空気導入口から冷却空気を吸い込み、凝縮器、密閉型圧縮機CMPから熱を奪って空気排出口から排出されるものである。
【0015】
図6に示すように、冷蔵庫本体75の庫外と庫内は、内箱と外箱との間に発泡ウレタンフォームを充填することにより形成される断熱箱体81により隔てられている。また冷蔵庫本体75の断熱箱体81は複数の真空断熱材82を実装している。冷蔵庫本体75は、上側断熱仕切壁83により冷蔵室70と上部冷凍室72が区画され、下側断熱仕切壁84により下部冷凍室73と野菜室74とが区画されている。
【0016】
図6に示すように、冷蔵室70の最下端で上側断熱仕切壁83の上面には冷蔵室貯蔵容器85が収納、配置されている。また、上部冷凍室72には上部冷凍貯蔵容器86が収納、配置され、下部冷凍室73には上段冷凍貯蔵容器87、下段冷凍貯蔵容器88が収納、配置されている。更に、野菜室74には上段野菜貯蔵容器89、下段野菜貯蔵容器90が収納、配置されている。
【0017】
次に冷蔵庫REFの冷却方法について説明する。冷蔵庫本体75には冷却器収納室78が形成され、この中に冷却サイクルの一部を構成する冷却器80を備えている。冷却器80(一例として、フィンチューブ熱交換器)は、下部冷凍室73の背部に備えられた冷却器収納室78内に設けられている。また、冷却器収納室78内であって冷却器80の上方には送風手段として送風機91(一例として、プロペラファン)が設けられている。
【0018】
冷却器80で熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器80で熱交換した低温の空気を「冷気」と称する)は、送風機91によって冷蔵室送風ダクト92、冷凍室送風ダクト93、及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室70、上部冷凍室72、下部冷凍室73、野菜室74の各貯蔵室へそれぞれ送られる。
【0019】
各貯蔵室への送風は、冷蔵温度帯の冷蔵室70への送風量を制御する第一の送風制御手段(以下、冷蔵室ダンパ94という)と、冷凍温度帯の上部冷凍室72、下部冷凍室73への送風量を制御する第二の送風量制御手段(以下、冷凍室ダンパ95という)とにより制御される。ちなみに、冷蔵室70、上部冷凍室72、下部冷凍室73、及び野菜室74への各送風ダクトは、冷蔵庫本体75の各貯蔵室の背面側に設けられている。具体的には、冷蔵室ダンパ94が開状態、冷凍室ダンパ95が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト92を経て多段に設けられた吹き出し口96から冷蔵室70に送られる。
【0020】
また、冷蔵室70を冷却した冷気は、冷蔵室70の下部に設けられた冷蔵室戻り口97から冷蔵室-野菜室連通ダクト98を経て、下側断熱仕切壁84の下部右奥側に設けた野菜室吹き出し口99から野菜室74へ送風される。野菜室74からの戻り冷気は、下側断熱仕切壁84の下部前方に設けられた野菜室戻りダクト入口98aから野菜室戻りダクト98bを経て、野菜室戻りダクト出口から冷却器収納室78の下部に戻る。
【0021】
図6に示すように、冷却器収納室78の前方には、各貯蔵室と冷却器収納室78との間を仕切る仕切部材100が設けられている。仕切部材100には、上下に複数の吹き出し口が形成されており、冷凍室ダンパ95が開状態のとき、冷却器80で熱交換された冷気が送風機91により図示を省略した製氷室送風ダクトや上段冷凍室送風ダクトを経て吹き出し口から上部冷凍室72へ送風される。また、下段冷凍室送風ダクト103を経て下部冷凍室73へ送風される。
<密閉型圧縮機CMP>
次に、
図7、
図8を用いて、本実施例の密閉型圧縮機CMPの構造を説明する。
【0022】
図7に示すように、本実施例の密閉型圧縮機CMPは、圧縮要素20と電動要素30を密閉容器3内に配置して構成されたいわゆるレシプロ圧縮機である。上側に配置した圧縮要素20と下側に配置した電動要素30は、密閉容器3内において複数のコイルバネ9(弾性部材)を介して弾性的に支持されている。密閉容器3は、略上半分の外郭を構成する上ケース3mと略下半分の外郭を構成する下ケース3nとが溶接などで接合され、内部に圧縮要素20および電動要素30を収容する空間を有している。
【0023】
圧縮要素20は、シリンダ21と、このシリンダ21内においてピストン22を往復動させることで冷媒を圧縮するクランクシャフト23と、このクランクシャフト23を軸支するラジアル軸受25と、を備えている。ラジアル軸受25(軸受)は、シリンダ21およびフレーム24と一体に形成されている。クランクシャフト23は、スラスト軸受26を介してフレーム24に回転自在に支持されている。
【0024】
フレーム24は、略水平方向に延びるベース24aを有し、シリンダ21がベース24aの上部に位置している。また、フレーム24の略中央部には、鉛直方向下方に(下ケース3nの底面に向けて)延びる円筒形状のラジアル軸受25が形成されている。また、フレーム24は、シリンダ21の一部を構成している。
【0025】
シリンダ21は、クランクシャフト23の中心軸Oよりも径方向の外側の偏った位置に形成されている。また、シリンダ21の軸方向の外周側の端部にはヘッドカバー27が取り付けられ、反対側の端部にはピストン22が挿入されている。このように、シリンダ21とヘッドカバー27とピストン22とによって、圧縮室(シリンダ室)Q1が構成されている。なお、シリンダ21とヘッドカバー27との間には、冷媒を吸気する際に開く吸気弁、圧縮した冷媒を吐出する際に開く吐出弁を備えた弁開閉機構が設けられている。
【0026】
ラジアル軸受25は、クランクシャフト23が軸支されるすべり軸受によって構成されている。また、ラジアル軸受25は、フレーム24に形成された貫通孔24bによって構成されている。スラスト軸受26は、ベース24aの上面の貫通孔24bの周囲に円形溝状に形成された凹部24cに配置されている。
【0027】
コネクティングロッド22aの大径側の端部22bは、後記するクランクピン23aと連結され、コネクティングロッド22aの小径側の端部22cは、ピン22dを介してピストン22と連結されている。
【0028】
クランクシャフト23の上端部には、クランクピン23aが形成され、クランクピン23aがクランクシャフト23の回転中心軸Oから偏心した位置に形成されている。また、クランクシャフト23の下端部は、下ケース3nの近傍に位置している。クランクピン23aが回転中心軸Oに対して偏心回転することで、ピストン22がシリンダ21内を往復運動するようになっている。
【0029】
クランクシャフト23は、貫通孔24bの上方において、回転中心軸Oに対して直交する方向(水平方向)に延びるフランジ部23bを有している。また、クランクシャフト23には、軸方向の下端から上方に向けて凹形状の中繰り穴23cが形成され、クランクシャフト23内に中空部を有するように構成されている。さらに、クランクシャフト23には、中繰り穴23cの上端からフランジ部23bの上面に貫通する上部連通孔23dが形成されている。
【0030】
また、クランクシャフト23の外周面には、らせん溝23eがフランジ部23bの近傍まで形成されている。らせん溝23eの上端部は、クランクピン23aに形成された凹形状のピン部中繰り穴23fと、ピン部連通孔23gを介して連通している。
【0031】
クランクシャフト23の中空部には、固定軸部材28が挿入されている。固定軸部材28は、図示しない固定具によって、クランクシャフト23の回転時においても回転しないように固定されている。固定軸部材28の外周面には、固定軸らせん溝28aが形成されている。この固定軸らせん溝28aの壁面と中繰り穴23cの壁面とでらせん状の冷凍機油通路が形成され、クランクシャフト23の回転による壁面移動に伴い、冷凍機油が粘性の効果で壁面に引きずられて固定軸らせん溝28a内を上昇するようになっている。
【0032】
中繰り穴23cを上昇した冷凍機油は、上部連通孔23dを通ってフランジ部23b上に吹き出して、スラスト軸受26を潤滑する。また、クランクシャフト23のらせん溝23eを上昇した冷凍機油は、クランクシャフト23とラジアル軸受25との間を潤滑するとともに、ピン部連通孔23gを通って、クランクピン23aのピン部中繰り穴23fに向けて流れ込み、コネクティングロッド22aの周辺を潤滑する。なお、スラスト軸受26などを潤滑した冷凍機油は、孔24s(
図8参照)を介して、密閉容器3の底に戻るように構成されている。
【0033】
電動要素30は、フレーム24の下側(ベース24aの下方)に配置され、ロータ31およびステータ32からなるモータを含んで構成されている。
【0034】
ロータ31は、電磁鋼板を積層したロータコアを備えて構成され、クランクシャフト23の下部に圧入などによって固定されている。また、ロータ31は、半径(R)が厚み(T1:軸方向の高さ)よりも大きい扁平形状である。また、ロータ31の厚み(T1:軸方向の高さ)は、ラジアル軸受25の長さ(L:軸受長)の略半分程度に設定されている。
【0035】
ステータ32は、ロータ31の外周に配置され、円筒状のステータコアとこのステータコアの内周に形成された複数のスロットとからなる鉄心32aと、鉄心32aに絶縁体(図示せず)を介して巻回されたコイル32bとを備えて構成されている。また、鉄心32aは、
図7の縦断面視において、径方向の長さ(W)が厚み(T2:軸方向の高さ)よりも長い扁平形状である。コイル32bも、
図7の縦断面視において、径方向の長さが厚み(軸方向の高さ)よりも長い扁平形状である。また、鉄心32aの厚み(T2:軸方向の高さ)は、ロータ31の厚み(T1:軸方向の高さ)と同程度になるように構成されている。このように、ロータ31を扁平にした場合、ステータ32の径も広げて扁平形状にすることで、ロータ31を回転させるためのトルクをかせぐことができる。
【0036】
このようにして圧縮要素20および電動要素30が設けられたフレーム24は、密閉容器3内において複数のコイルバネ9を介して弾性支持されている。また、圧縮要素20および電動要素30は、運転時に振動したときに、密閉容器3の内壁面に接触しないように、所定のクリアランスCLが予め設定された状態で設計されている。
【0037】
コイルバネ9は、圧縮要素20の一部を構成するシリンダ21の側(圧縮機室側Q2、
図7の左側)と、シリンダ21の側とは反対側(反圧縮機室側Q3、
図7の右側)に設けられている。なお、本実施例では、コイルバネ9が、圧縮室側と反圧縮室側のそれぞれにおいて、
図7の紙面に直交する方向の手前側と奥側に計4本設けられている(
図8参照)。
【0038】
また、フレーム24は、シリンダ21よりも外周側(径方向外側)に延びる延出部24dを有している。この延出部24dは、ステータ32よりも外周側に延びている。また、延出部24dの下面には、コイルバネ9の上部に嵌合して保持する突起部24eが形成されている。
【0039】
また、フレーム24は、延出部24dとは反対側においても、延出部24dと同程度に延びる延出部24fを有している。この延出部24fも、ステータ32よりも外周側に延びている。また、延出部24fの下面には、コイルバネ9の上部に嵌合して保持する突起部24gが形成されている。
【0040】
密閉容器3の底面には、ステータ32の外周側において、密閉容器3内に突出するように盛り上がる段差部3aが形成されている。この段差部3aは、下ケース3nの底面の一部と側面の一部とが合わさって凹み形状となることで構成されている。また、段差部3aは、コイルバネ9の位置と対応する位置に設けられている。また、段差部3aの上端には、コイルバネ9の下部が嵌合して保持する突起部3bが形成されており、この突起部3bの下端部がコイルバネ9と当接する当接面3c、3dとなっている。突起部3bは、ロータ31の下面31aよりも上方に位置している。なお、冷凍機油の油面40は、冷凍機油がロータ31と浸からないように、ロータ31の下面31aよりも下側に位置するように構成されている。
【0041】
また、各段差部3aの下部には、密閉容器3を弾性支持するゴム座10が設けられている。このゴム座10は、密閉容器3の下ケース3nに固定されたプレート11に支持されている。また、ゴム座10は、鉛直方向(上下方向)においてコイルバネ9と重なる位置に配置されている。
【0042】
図8は、
図7に示す密閉型圧縮機CMPの横断面図である。なお、
図8では、主に、密閉型圧縮機CMP内の冷媒流Fについて説明する。
【0043】
図8に示すように、冷蔵庫REFの冷却器80から戻って、密閉容器3を貫通して接続された吸入パイプ3eから導入された低圧の冷媒流Fは、吸入サイレンサ1の吸入孔1a(後述)から吸入された後、ヘッドカバー27などを介して圧縮室Q1(
図7参照)に導入される。また、圧縮室Q1においてピストン22によって圧縮された冷媒流Fは、吐出室空間(不図示)を通って、フレーム24に形成された吐出サイレンサ42a、42bおよびパイプ3fを通って、吐出パイプ3gから冷却器80に送られる。
【0044】
このように、本実施例の密閉型圧縮機CMPでは、冷媒流路に複数のサイレンサを配置することで冷媒流通時の低騒音化を実現している。以下では、これらのサイレンサのうち吸入サイレンサ1の詳細構造を、
図1~
図4を用いて説明する。
<吸入サイレンサ>
図1は、実施例1に係る吸入サイレンサ1の斜視図である。図中X、Y、Zは直交座標系を示し、矢印の向きを正方向とする。なお、Z軸負方向が重力方向である。
【0045】
図8でも示したように、密閉型圧縮機CMPの内部においては、シリンダ21の前段に吸入サイレンサ1を配置することで低騒音化を実現している。この吸入サイレンサ1は、
図1に示すように、冷媒流Fの入口となる吸入孔1aと、冷媒流Fの出口となる吐出孔1bと、吸入孔1aと吐出孔1bを繋ぐ最短流路から分岐した、消音器の役割を担う拡張室1cを備えている。なお、点線は吸入孔1aから吐出孔1bまで流れる冷媒流Fの一例を示したものである。
【0046】
図7、
図8からもわかるように、冷却器80から密閉型圧縮機CMPに戻った冷媒流Fは、シリンダ21に吸入される前に、吸入パイプ3e~油面40上の空間~吸入サイレンサ1(吸入孔1a~吐出孔1b)の流路を通過する。このため、吸入サイレンサ1の吸入孔1aには油面40上方の通過によりオイルレートが高まった冷媒流Fが流入するが、密閉型圧縮機CMPの圧縮効率の劣化防止のためには吐出孔1bから流出する冷媒流Fのオイルレートを低くする必要がある。
【0047】
図2は、吸入サイレンサ1をZ軸上方向から見た水平断面図である。ここに示すように、冷媒流Fは吸入サイレンサ1内の吐出孔1bの直前で流れの向きを大きく変える。
【0048】
また、
図3は、吸入サイレンサ1の吐出孔1b付近をZ軸正方向から見た水平断面図の拡大図である。ここに示すように、吸入サイレンサ1内の流路は、冷媒流Fの流れを大きく変更させるための曲がり部1dを持つ。この曲がり部1dを冷媒流Fが通過する際に、冷媒流F中のオイルミストが吸入サイレンサ1の内壁に衝突することで、曲がり部1d付近ではオイルミストが油滴化しやすく、オイルレートを下げることができる。しかしながら、吐出孔1b側の直線流路では冷媒流Fの流速が早くなるため、一旦は油滴化した油滴の一部が再ミスト化しやすく、オイルレートが再度高まる可能性がある。
【0049】
そこで、本実施例の吸入サイレンサ1では、曲がり部1dの下流側に、油滴化した冷凍機油が下流側に流れるのを防ぐ障壁1eを設けた。これにより、油滴化した冷凍機油が障壁1eの上流側に留まるため、障壁1eの下流側での油滴の再ミスト化を防止することができる。
【0050】
ここで、障壁1eを曲がり部1dに接近させるほど油滴の捕捉率を高めることができるが、乱流が整流になるまでの距離は一般に流路直径の5倍程度とされるため、吐出孔1bの流路直径をD1、曲がり部1dから障壁1eまでの距離をL1としたとき、L1<5D1を満たす位置に障壁1eを設置すれば、障壁1eによる油滴の捕捉率を高め、冷媒流Fのオイルレートを低減することができる。
【0051】
図4は、吸入サイレンサ1の吐出孔1b付近をX軸負方向から見た図である。ここに示す通り、障壁1eは流路の内壁全周に設けた環状のものであることが望ましいが、流路の内壁の一部(例えば、下半分)に設けた構成としてもよい。
【0052】
障壁1eにより捕捉された冷凍機油は、障壁1eの上流側に設けられた油抜き孔1fを介して、吸入サイレンサ1外に排出される。油抜き孔1fは重力方向に貫通しているため、吸入サイレンサ1外に排出された冷凍機油は、最終的には密閉型圧縮機CMPの底部に貯えられる。なお、
図3では、油抜き孔1fを一つだけ設けた構成を例示しているが、油抜き孔1fを吸入サイレンサ1内に複数個設けてもよい。
【0053】
以上で説明した本実施例の密閉型圧縮機CMPによれば、吸入サイレンサを通過する冷媒流中の冷却機油が曲がり部と障壁の作用によって効率的に捕捉された後、油抜き孔を介して吸入サイレンサ外に排出されるので、吸入サイレンサから流出する冷媒流のオイルレートを下げることができ、シリンダ内に冷却機油が侵入することを効果的に防ぐことができる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の実施例2に係る密閉型圧縮機CMPについて、
図5を用いて説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0055】
図5は
図3と同様、吸入サイレンサ1の吐出孔1b付近をZ軸正方向から見た水平断面図の拡大図である。ここに示すように、本実施例では、曲がり部1dと障壁1eの作用により冷媒流Fから分離された油滴を油抜き孔1fに導くため、流路の底に溝1gを設けている。この溝1gによって油滴は冷媒流Fの下流方向へ運ばれ、溝1gと接続された油抜き孔1fによって吸入サイレンサ1外に排出される。
【0056】
このように、油抜き孔1fを吐出孔1bから遠ざけた構成によっても、冷媒流Fから分離した油滴をより効率よく吸入サイレンサ1外に排出することができる。
【符号の説明】
【0057】
REF 冷蔵庫、
CMP 密閉型圧縮機
1 吸入サイレンサ、
1a 吸入孔、
1b 吐出孔、
1c 拡張室、
1d 曲がり部、
1e 障壁、
1f 油抜き孔、
1g 溝、
3 密閉容器、
3e 吸入パイプ、
20 圧縮要素、
21 シリンダ、
22 ピストン、
23 クランクシャフト、
24 フレーム、
25 ラジアル軸受、
26 スラスト軸受、
30 電動要素、
31 ロータ、
32 ステータ、
75 冷蔵庫本体、
76 機械室、
78 冷却器収納室、
80 冷却器