(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】燃料取替機
(51)【国際特許分類】
G21C 19/18 20060101AFI20221017BHJP
【FI】
G21C19/18 400
(21)【出願番号】P 2019034554
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】桃井 康行
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
(72)【発明者】
【氏名】李 典燦
(72)【発明者】
【氏名】長野 真士
(72)【発明者】
【氏名】小林 希士
(72)【発明者】
【氏名】毛利 亮太
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-174193(JP,A)
【文献】国際公開第2005/012155(WO,A1)
【文献】特開昭63-214697(JP,A)
【文献】特開2001-302176(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2821360(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/18
G21C 19/19
B66C 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な走行台車と、
前記走行台車の上を移動可能な横行台車と、
前記横行台車に取り付けられ、伸縮可能であり、燃料集合体を吊り下げることができる伸縮管と、
前記走行台車と前記横行台車と前記伸縮管を制御する制御装置と、
前記伸縮管と前記燃料集合体から構成される振動系の共振周波数を求める共振周波数同定装置と、
前記走行台車と前記横行台車に対する指令値から前記共振周波数の成分を除去した補正指令値を求める補正装置と、
を備え、
前記伸縮管は、径が互いに異なる複数の円管を備え、複数の前記円管によりテレスコピック式に伸縮可能である構造を持つとともに、前記燃料集合体を吊り下げる掴み具を下端に備え、
前記共振周波数同定装置は、前記振動系の数値モデルを用いて計算することにより、前記共振周波数を求め、
前記数値モデルは、複数の前記円管、前記掴み具、及び前記燃料集合体の振れ角を時間の関数で表した変数を含む、前記振動系の運動方程式で表され、
前記制御装置は、前記補正指令値に従って前記走行台車と前記横行台車を制御する、
ことを特徴とする燃料取替機。
【請求項2】
前記指令値は、前記走行台車の速度の指令値と前記横行台車の速度の指令値を含む、
請求項1に記載の燃料取替機。
【請求項3】
前記伸縮管は、水中に設置された前記燃料集合体を吊り下げることができ、
前記共振周波数同定装置は、前記燃料集合体と前記伸縮管が水から受ける付加質量効果と浮力を含む前記数値モデルを用いて、前記共振周波数を求める、
請求項
1に記載の燃料取替機。
【請求項4】
前記共振周波数同定装置は、前記燃料集合体のみが振動する前記数値モデルを用いて、前記共振周波数を求める、
請求項
3に記載の燃料取替機。
【請求項5】
前記共振周波数同定装置は、
前記燃料集合体の振れを計測する振れ観測装置と、
前記振れ観測装置が計測した前記燃料集合体の振れから、前記共振周波数を計算して求める共振周波数演算装置と、
を備える、
請求項1に記載の燃料取替機。
【請求項6】
前記補正装置は、前記共振周波数を遮断周波数とするノッチフィルタを少なくとも1つ備える、
請求項1に記載の燃料取替機。
【請求項7】
前記燃料集合体のパラメータとして少なくとも前記燃料集合体の質量を計測する燃料集合体パラメータ計測装置を備え、
前記共振周波数同定装置は、前記燃料集合体パラメータ計測装置が計測した前記パラメータを用いた、前記振動系の数値モデルを用いて計算することにより、前記共振周波数を求める、
請求項1に記載の燃料取替機。
【請求項8】
前記燃料集合体の個体識別情報を検出する燃料集合体個体識別装置を備える、
請求項1に記載の燃料取替機。
【請求項9】
前記燃料集合体の振れを計測する振れ観測装置と、
前記振れ観測装置が計測した前記燃料集合体の振れを抑制するように、前記補正指令値を補正する振れフィードバック補正装置を備える、
請求項1に記載の燃料取替機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所において水中に設置された燃料集合体や機器の移送を行う燃料取替機に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、定期点検で行われる燃料取替作業に要する時間の短縮が望まれている。燃料取替作業には、燃料集合体を、原子炉圧力容器内の炉心から原子炉ウェルを経由して燃料プールに置かれた燃料貯蔵ラックへ移送する作業と、燃料貯蔵ラックから炉心へ移送する作業と、炉心内と燃料貯蔵ラック内で移送する作業が含まれる。この作業を行う燃料取替機は、走行台車と、走行台車上を移動する横行台車と、横行台車に取り付けられ伸縮可能な伸縮管を備え、伸縮管の下端で燃料集合体を把持し、走行台車と横行台車の移動(以下、「横走行」と呼ぶ。)と伸縮管の伸縮により燃料集合体を移送する。
【0003】
燃料取替機を用いた燃料取替作業では、横走行の停止時に、伸縮管と伸縮管に把持された燃料集合体の振れが発生する。この振れが大きいと、燃料取替機が炉心内と燃料貯蔵ラック内の燃料集合体を掴み損なうことや、燃料集合体を炉心と燃料貯蔵ラックの所定の位置に挿入できないことなどの不具合が生じやすくなる。
【0004】
そこで、燃料取替機では、燃料集合体を把持する前と燃料集合体を所定の位置へ挿入する前に、伸縮管と燃料集合体の振れが収まるまで燃料取替機を停止させて所定の時間待つ「振れ待ち」と呼ばれる動作を行っている。横走行の停止時に発生する伸縮管と燃料集合体の振れを速やかに抑制し、振れ待ちの時間を短縮することができれば、燃料取替作業に要する時間を短縮することができる。
【0005】
特許文献1には、伸縮管と燃料集合体の振れを速やかに抑制する燃料交換機の例が開示されている。特許文献1に記載の燃料交換機は、横行台車と伸縮管の間にサスペンションと電磁石から構成された制振装置を備え、伸縮管の揺動速度により電磁石に供給する電流を制御して伸縮管の振れを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の燃料交換機などの従来の燃料交換機は、伸縮管と燃料集合体の振れを抑制するために制振装置を備えるので、構成が複雑になって部品数が増加し、コストが増加するという課題がある。また、燃料集合体が伸縮管に搖動可能な状態で吊り下げられるため、伸縮管の振れが収まった後に燃料集合体の振れが残留することが懸念される。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、制振装置を備えることなく、燃料集合体と伸縮管の振れを抑制することができる燃料取替機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による燃料取替機は、移動可能な走行台車と、前記走行台車の上を移動可能な横行台車と、前記横行台車に取り付けられ、伸縮可能であり、燃料集合体を吊り下げることができる伸縮管と、前記走行台車と前記横行台車と前記伸縮管を制御する制御装置と、前記伸縮管と前記燃料集合体から構成される振動系の共振周波数を求める共振周波数同定装置と、前記走行台車と前記横行台車に対する指令値から前記共振周波数の成分を除去した補正指令値を求める補正装置とを備える。前記制御装置は、前記補正指令値に従って前記走行台車と前記横行台車を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、制振装置を備えることなく、燃料集合体と伸縮管の振れを抑制することができる燃料取替機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1による燃料取替機の構成を示す図である。
【
図2A】共振周波数同定装置が共振周波数を求めるための、振動系の簡単なモデルを示す図である。
【
図3A】補正装置が、指令値から振動系の共振周波数成分を除去する処理を説明する図であり、指令値の一例を示すグラフである。
【
図3B】補正装置が、指令値から振動系の共振周波数成分を除去する処理を説明する図であり、補正装置が備えるノッチフィルタのゲインの一例を示すグラフである。
【
図3C】補正装置が、指令値から振動系の共振周波数成分を除去する処理を説明する図であり、補正指令値の一例を示すグラフである。
【
図4】実施例1において、補正装置の別の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例2による燃料取替機の構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例5による燃料取替機の構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施例5による燃料取替機の別の構成を示す図である。
【
図8】本発明の実施例3による燃料取替機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による燃料取替機は、走行台車と横行台車の移動(横走行)の指令値を制御することにより、制振装置を備えなくても、伸縮管と伸縮管に把持された燃料集合体との振れを速やかに抑制することができる。
【0013】
以下、本発明の実施例による燃料取替機を、図面を用いて説明する。本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
以下に述べる実施例では、燃料取替機が水中に設置された燃料集合体を移送する例を説明する。本発明による燃料取替機は、炉心制御棒などの、原子力発電所において水中に設置された機器を移送することもできる。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1による燃料取替機について説明する。
【0016】
図1は、本実施例による燃料取替機1の構成を示す図である。燃料取替機1は、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、旋回装置(図示せず)、制御装置100、共振周波数同定装置101、及び補正装置102を備える。
【0017】
走行台車2は、原子炉ウェルまたは燃料プール21を挟んで対向する床20の上に平行に設置されたレール22に沿って、原子炉ウェルまたは燃料プール21の真上を移動可能である。
【0018】
横行台車3は、走行台車2の移動方向と直交する方向に、走行台車2の上に設置されたレール(図示せず)に沿って、走行台車2の上を移動可能である。
【0019】
伸縮管4は、ユニバーサルジョイント4aを介して横行台車3に取り付けられ、横行台車3から下方に向かって延伸し、鉛直方向に伸縮可能である。伸縮管4は、径が互いに異なる複数の同軸の円管4b、4c、4dを備え、これらの円管4b、4c、4dがテレスコピック式に伸縮可能な構造を持つ。
図1に示した例では、円管4b、4c、4dは、この順に上から下に位置する。伸縮管4は、下端に掴み具4eを備え、掴み具4eで燃料集合体5を吊り下げて把持することができる。掴み具4eは、伸縮管4の下端に位置する円管4dに設けられ、フックを備え、燃料集合体5の上部にあるハンドル5aをフックで吊り下げたり、ハンドル5aを離したりできる構造を持つ。なお、
図1には伸縮管4が3つの円管4b、4c、4dを備える例を示しているが、伸縮管4が備える円管の数は、3つに限定されない。
【0020】
旋回装置(図示せず)は、横行台車3に設置され、ユニバーサルジョイント4aを鉛直軸の周りに旋回させて、伸縮管4の全体を鉛直方向の周りに旋回させることができる。
【0021】
制御装置100は、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、掴み具4e、及び旋回装置に対する指令値200(実際には、指令値200が補正された補正指令値201)が入力され、入力された指令値200に従い、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、掴み具4e、及び旋回装置を制御する。指令値200には、例えば、走行台車2の速度、横行台車3の速度、伸縮管4の長さ、掴み具4eの動作、及び旋回装置の旋回角に対する指令値が含まれる。
【0022】
共振周波数同定装置101と補正装置102については、後述する。
【0023】
制御装置100、共振周波数同定装置101、及び補正装置102は、任意の場所に設置することができる。
【0024】
燃料集合体5は、走行台車2と横行台車3の移動(横走行)により水平位置が定められ、伸縮管4の伸縮により鉛直位置が定められ、旋回装置の旋回により鉛直軸周りの向きが定められる。燃料集合体5は、水中に設置されているものとする。
【0025】
なお、燃料取替機1は、燃料集合体5の水平位置、鉛直位置、及び鉛直軸周りの向きを定める構成について、任意の構成を備えることができ、上述の構成を備えなくてもよい。また、指令値200は、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、掴み具4e、及び旋回装置を制御できれば、上記以外の指令値(例えば、位置、加速度、または力などに対する指令値)を含んでもよい。本発明は、指令値200の種類によって限定されるものではない。
【0026】
燃料取替機1では、伸縮管4がユニバーサルジョイント4aにより横行台車3に取り付けられているため、伸縮管4の振れが生じる。また、掴み具4eのフックに燃料集合体5が揺動可能に吊り下げられるため、伸縮管4に把持された燃料集合体5の振れも生じる。さらに、伸縮管4を構成する円管4b、4c、4dの継目部分に伸縮管4を伸縮可能とするための隙間が設けられ、伸縮管4の下端に位置する円管4dと掴み具4eの間にも嵌め合いのための隙間が設けられているため、これらの隙間により円管4b、4c、4dと掴み具4eにも振れが生じる。
【0027】
これらの振れは、横走行で顕著に現れる。特に、横走行の停止時に生じた振れが大きいと、燃料取替機1が燃料集合体5を掴み損なうことや、燃料集合体5を所定の位置に挿入できないことなどの不具合が生じやすくなる。そこで、特に横走行の停止時に、これらの振れを速やかに抑制することが必要である。
【0028】
横走行により振れが生じるのは、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系に対して、この振動系の共振周波数成分を励起させる外力が横走行により加わり、共振が生じるためである。そこで、この振動系に加わる外力から共振周波数成分を除けば、振れを速やかに抑制することができる。すなわち、横走行を行う走行台車2と横行台車3に対する指令値200から、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数成分を除去すればよい。
【0029】
そこで、本実施例による燃料取替機1は、共振周波数同定装置101と、補正装置102を備える。共振周波数同定装置101は、共振周波数を求める装置である。補正装置102は、指令値200を補正して補正指令値201を得る装置であり、指令値200から共振周波数成分を除去した補正指令値201を求める。制御装置100は、指令値200の代わりに補正指令値201に従い、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、掴み具4e、及び旋回装置を制御する。
【0030】
初めに、共振周波数同定装置101について説明する。
【0031】
共振周波数同定装置101は、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数fを求める。この振動系は、数値モデル化され、共振周波数同定装置101は、この数値モデルを用いて計算することにより共振周波数fを求め、求めた共振周波数fを補正装置102に出力する。なお、振動系の数値モデルには、共振周波数同定装置101が振動系を数値モデル化した数値モデルを用いることもでき、共振周波数同定装置101以外の装置が振動系を数値モデル化した数値モデルを用いることもできる。
【0032】
伸縮管4を構成する円管4b、4c、4d、掴み具4e、及び燃料集合体5の振れ角(接続している上部要素に対する相対的な角度)を時間の関数θ1(t)、θ2(t)、θ3(t)、θ4(t)、及びθ5(t)で表し、これらをまとめたベクトルをΘ(t)で表すと、振動系の運動方程式は、次式のように表せる。
M(t、Θ(t))*Θ’’(t)+G(t、Θ(t))*Θ(t)+V(t、Θ(t)、Θ’(t))=A(t) ・・・(1)
ここで、「’」は時間に関する1階微分を表し、「’’」は時間に関する2階微分を表す。Mは、Θ’’(t)に係る係数をまとめた行列(慣性行列)である。Gは、Θ(t)に係る係数をまとめた行列(重力項行列)である。Vは、Θ’’(t)とΘ(t)以外の項をまとめた行列である。Aは、横走行により生じる慣性力のベクトルである。M、G、V、及びAの値やΘ(t)の要素数は、伸縮管4の伸縮に応じて時間変化する。
【0033】
この振動系の共振周波数fは、MとGを伸縮管4と燃料集合体5が鉛直に垂下した状態近傍で線形近似して得られた式(2)を角周波数ωについて解き、式(3)を用いて得られる。
det(Gl-Ml*ω^2)=0 ・・・(2)
f=ω/(2π) ・・・(3)
ここで、Glは、Gを線形近似した行列を表し、Mlは、Mを線形近似した行列を表し、detは、行列式演算を表す。
【0034】
以上のように振動系を数値モデル化し、Ml、Glを求めれば、式(2)、(3)から共振周波数fを計算できる。
【0035】
図2Aと
図2Bは、共振周波数同定装置101が共振周波数fを求めるための、振動系の簡単なモデルを示す図である。
図2Aに示した振動系のモデルでは、四角柱形状の燃料集合体5がハンドル5aで掴み具4eに揺動可能に吊り下げられており、これらが横走行により矢印に示す方向へ移動し、燃料集合体5のみが振れるとしている。
図2Bは、
図2Aに示した燃料集合体5を上方から見た図である。
【0036】
図2Aと
図2Bの振動系のモデルにおいて、燃料集合体5の長さをL、幅をw、密度をρとし、密度ρが燃料集合体5に一様に分布しているとすると、Mlは、次式のように求められる。
Ml=1/3*ρ*w^2*L^3+1/12*κ*π*ρf*w^2*L^3
・・・(4)
式(4)において、右辺第1項は、燃料集合体5の回転中心周りの慣性モーメントである。右辺第2項は、燃料集合体5に引きずられて移動する周りの水による付加質量効果を表しており、ρfは水の密度、κは燃料集合体5の形状と移動方向により変化する付加質量係数である。
【0037】
Glは、次式のように求められる。
Gl=1/2*g*ρ*w^2*L^2-1/2*g*ρf*w^2*L^2
・・・(5)
式(5)の右辺第1項は、燃料集合体5に加わる重力の影響を表し、右辺第2項は、燃料集合体5に加わる浮力の影響を表しており、gは重力加速度である。
【0038】
以上説明した数値モデルの共振周波数fは、次式を用いて求められる。
ω=sqrt(Gl/Ml) ・・・(6)
f=ω/(2π) ・・・(7)
上記の数値モデルには、上述したように、伸縮管4と燃料集合体5の水中に存在する部分が水から受ける付加質量効果と浮力を含んでいる。
【0039】
本実施例では、簡単のために、共振周波数同定装置101が、燃料集合体5のみが振れる数値モデルを用いて共振周波数fを求める例を説明した。伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系は、燃料集合体5の振れだけでなく、円管4b、4c、4dと掴み具4eの振れも含めて数値モデル化できる。共振周波数同定装置101は、燃料集合体5と円管4b、4c、4dと掴み具4eの振れを含めた数値モデルを用いても、共振周波数fを求めることができる。
【0040】
共振周波数同定装置101は、以上のようにして、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数fを求めることができる。なお、共振周波数同定装置101は、数値モデル化した振動系の共振周波数fを計算できれば、上記以外の任意の方法(例えば、有限要素法解析など)で共振周波数fを求めてもよい。本発明は、上記の方法に限定されるものではない。
【0041】
横行台車3には、振れ止め装置(図示せず)が取り付けられる。伸縮管4は、振れ止め装置により振れが微小であり、振れ止め装置との衝突や水の抵抗により振れの減衰が大きい。さらに、円管4b、4c、4dと掴み具4eは、これらの部材の隙間が僅かなため振れが微小であり、これらの部材同士の衝突、水の抵抗、及び隙間部分に対する水の流入と流出により振れの減衰が大きい。このため、伸縮管4の振れを微小として無視でき、伸縮管4の振れが燃料集合体5の振れに与える影響も無視できる。したがって、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の数値モデルは、燃料集合体5のみが振動する(単振子運動する)数値モデルとしてもよい。
【0042】
次に、補正装置102について説明する。
【0043】
補正装置102は、走行台車2と横行台車3に対する指令値200から、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数fの成分を除去する。補正装置102は、共振周波数fを遮断周波数とするノッチフィルタを備え、このノッチフィルタを用いて指令値200から振動系の共振周波数成分を除去して、補正指令値201を求める(
図1を参照)。補正装置102は、他の装置または作業員により指令値200を入力し、共振周波数同定装置101から共振周波数fの値を入力し、求めた補正指令値201を制御装置100に出力する。
【0044】
図3A、3B、3Cは、補正装置102が、指令値200から振動系の共振周波数成分を除去する処理を説明する図である。
図3A~3Cでは、指令値200が横行台車3の速度である例を示している。
図3Aは、指令値200の一例を示すグラフであり、横行台車3の速度の時間変化と、速度振幅の周波数特性を示す。
図3Bは、補正装置102が備えるノッチフィルタの伝達関数G(s)の絶対値(ゲイン)の一例を示すグラフである。
図3Cは、振動系の共振周波数成分が除去された指令値200である補正指令値201の一例を示すグラフであり、
図3Aに対応して、横行台車3の速度の時間変化と、速度振幅の周波数特性を示す。
【0045】
ノッチフィルタは、指令値200の速度振幅の特定の周波数成分を除去する。ノッチフィルタの伝達関数G(s)は、次式で表される。
G(s)=(s^2+2*ζn*ω*s+ω^2)/(s^2+2*ζd*ω*s+ω^2) ・・・(8)
ここで、ω=2π*f(fは遮断したい共振周波数)であり、ζnとζdは減衰係数である。ζnは、遮断する周波数帯域の広さと強さから決定される設計パラメータである。ζdは、G(s)の分母のゲイン特性が全周波数帯域でフラットになるように0.71とするのが望ましい。
【0046】
補正装置102は、共振周波数同定装置101から共振周波数fを入力し、走行台車2と横行台車3の指令値200が入力されると、G(s)で示された特性を持つノッチフィルタにより、指令値200から共振周波数fの周波数成分を除去し、補正指令値201を求める。
【0047】
なお、伸縮管4の伸縮により共振周波数fが時間変化する場合には、ノッチフィルタの伝達関数G(s)のパラメータが、共振周波数fの時間変化とともに変化するようにしてもよい。
【0048】
図4は、補正装置102の別の構成を示す図である。補正装置102は、複数のノッチフィルタ102a、102b、102cを備え、指令値200を入力し、これらのノッチフィルタを用いて補正指令値201を求め、補正指令値201を制御装置100に出力する。なお、
図4には、一例として補正装置102が3つのノッチフィルタ102a~102cを備える構成を示しているが、補正装置102は、2つまたは4つ以上のノッチフィルタを備えることができる。
【0049】
燃料集合体5と円管4b、4c、4dと掴み具4eの振れを含めた振動系では、複数の共振周波数(例えば、f1、f2、f3)が得られる。この場合には、補正装置102が、遮断周波数が互いに異なる複数のノッチフィルタ102a、102b、102cを備えればよい。ノッチフィルタ102a、102b、102cは、それぞれ共振周波数f1、f2、f3を遮断周波数とし、直列に接続される。これにより、補正装置102は、指令値200から共振周波数f1、f2、f3の周波数成分を除去した補正指令値201を得ることができる。
【0050】
なお、補正装置102は、複数の共振周波数のうち振幅が大きい共振周波数成分を遮断するノッチフィルタのみを備えてもよい。また、補正装置102では、ノッチフィルタの伝達関数G(s)の設計パラメータを調整し、遮断する周波数帯域を広くして、1つのノッチフィルタで複数の共振周波数成分を遮断するようにしてもよい。なお、補正装置102は、振動系の共振周波数成分を遮断できれば、ローパスフィルタなどの任意のフィルタを備えることができる。本発明は、上記の構成に限定されるものではない。
【0051】
また、補正装置102は、走行台車2と横行台車3のそれぞれに対する指令値200からそれぞれに対する補正指令値201を求めてもよく、走行台車2と横行台車3の指令値を合成した指令値200から補正指令値201を求めてもよい。
【0052】
制御装置100は、以上のように、共振周波数同定装置101と補正装置102により得られた補正指令値201に従い、走行台車2と横行台車3を制御する。走行台車2と横行台車3の指令値200は、予め定めることができ、補正装置102は、予め定められた指令値200から補正指令値201を予め求めて記録することができる。制御装置100は、動作の実行時に、補正装置102が予め求めた補正指令値201を読み込んで、走行台車2と横行台車3を制御してもよい。
【0053】
以上のように、本実施例による燃料取替機では、走行台車2と横行台車3を制御する指令値である補正指令値201には、伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数成分が含まれていないので、伸縮管4と燃料集合体5の共振が励起されず、伸縮管4と燃料集合体5の振れを抑制できる。本実施例による燃料取替機は、伸縮管4の振れだけではなく、燃料集合体5の振れも抑制できるので、伸縮管4の振れが収まった後に燃料集合体5の振れが残留する懸念はない。したがって、本実施例による燃料取替機では、横走行の指令値200を補正することにより、制振装置を備えずに、伸縮管4と燃料集合体5の振れを速やかに抑制することができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の実施例2による燃料取替機について説明する。上述の実施例による燃料取替機と共通の構成については、説明を省略する場合がある。
【0055】
図5は、本実施例による燃料取替機1の構成を示す図である。本実施例による燃料取替機1では、共振周波数同定装置101が、振れ観測装置101aと共振周波数演算装置101bを備える。
【0056】
実際の伸縮管4と燃料集合体5を表すパラメータ(例えば、形状や質量)が設計値と異なる場合や、燃料を使用したことにより燃料集合体5の質量が変化した場合には、設計値に基づいて求めた数値モデルを用いて計算した共振周波数fは、実際の振動系の共振周波数fと異なる。本実施例による燃料取替機1は、振れ観測装置101aと共振周波数演算装置101bを備え、実際の振動系の共振周波数fを求める。
【0057】
なお、伸縮管4の振れは、燃料集合体5の振れに含めて観測し抑制できる。
【0058】
振れ観測装置101aは、燃料集合体5の振れθ(t)を計測する装置であり、例えば、水中から燃料集合体5を撮影できる水中カメラで構成することができる。なお、振れθ(t)は、鉛直方向に対する角度である。振れ観測装置101aは、水中から燃料集合体5を撮影することにより、水面に現れる波の影響を受けることなく、燃料集合体5の振れを計測することができる。振れ観測装置101aは、燃料集合体5の振れを計測できれば、走行台車2、横行台車3、伸縮管4、または掴み具4eなど、任意の位置に設けることができ、原子炉圧力容器や燃料プールに取り付けることもできる。
【0059】
共振周波数演算装置101bは、振れ観測装置101aが計測した燃料集合体5の振れθ(t)から、共振周波数fを計算して求める。共振周波数演算装置101bは、例えば、θ(t)のFFT解析を行うことで、またはθ(t)のピーク値間の時間間隔から、共振周波数fを計算できる。共振周波数演算装置101bは、求めた共振周波数fを補正装置102に出力する。
【0060】
以上の共振周波数fの計算は、燃料取替機1の稼働開始時に実施する。実際の伸縮管4のパラメータが設計値と異なるのは、設計段階でのパラメータの見積もりの精度不足や、加工時の寸法公差が原因である。燃料取替機1の稼働開始時に共振周波数fを求めれば、これらの原因により、計算して求めた共振周波数fが実際の振動系の共振周波数fと異なるのを防止できる。
【0061】
また、共振周波数fの計算は、伸縮管4が燃料集合体5を把持して移送するときに行ってもよい。燃料の使用による燃料集合体5のパラメータ(特に質量)の変化は、燃料集合体5を把持して移送する段階で観察可能となる。したがって、燃料集合体5を把持して移送するときに、燃料集合体5の振れを計測して共振周波数fを計算すると、燃料の使用による燃料集合体5のパラメータの変化を考慮した共振周波数fを求めることができる。
【0062】
以上説明したように、本実施例による燃料取替機1では、燃料集合体5の振れを計測することで振動系の共振周波数fを求めるので、燃料集合体5の実際のパラメータが設計値と異なっていても、この影響を受けずに正確に共振周波数fを求めることができ、より効果的に燃料集合体5の振れを抑制することができる。
【0063】
なお、振れ観測装置101aと共振周波数演算装置101bは、燃料集合体5の振れを計測できて共振周波数fを求めることができれば、任意の構成を備えることができ、本実施例での態様に限定されるものではない。
【実施例3】
【0064】
本発明の実施例3による燃料取替機について説明する。上述の実施例による燃料取替機と共通の構成については、説明を省略する場合がある。
【0065】
図8は、本実施例による燃料取替機1の構成を示す図である。本実施例による燃料取替機1は、燃料集合体パラメータ計測装置50を備える。
【0066】
燃料集合体5は、燃料を使用したことによりパラメータ(特に質量)が変化する。また、燃料取替機1が複数の種類の燃料集合体5を扱う場合には、燃料集合体5のパラメータは、燃料集合体5により異なる。このような場合にも、設計値に基づいて求めた数値モデルを用いて計算した共振周波数fは、実際の振動系の共振周波数fと異なる。本実施例による燃料取替機1は、燃料集合体パラメータ計測装置50と共振周波数同定装置101を備え、燃料集合体5の実際のパラメータを計測し、実際の振動系の共振周波数fを求める。
【0067】
燃料集合体パラメータ計測装置50は、例えば、燃料集合体5の質量を計測する計測器50aで構成することができる。燃料集合体5の質量を計測する計測器50aには、例えば、荷重計を用いることができる。計測器50aは、例えば、伸縮管4または掴み具4eに設置することができる。燃料の使用により燃料集合体5の質量が変化した場合には、設計値に基づいて求めた数値モデルを用いて計算した共振周波数fは、実際の振動系の共振周波数fと異なる。本実施例による燃料取替機1では、燃料集合体パラメータ計測装置50(計測器50a)が、燃料集合体5の質量を計測し、共振周波数同定装置101が、計測した質量を用いた数値モデルを使って共振周波数fを計算(再計算)することで、実際の振動系の共振周波数fを求める。
【0068】
燃料集合体パラメータ計測装置50は、燃料集合体5の質量を計測する計測器50aの他に、他の計測器(例えば、水中から燃料集合体5を撮影できる水中カメラ50b)を備えることもできる。水中カメラ50bは、燃料集合体5の形状パラメータ(例えば、長さ、幅、断面形状など)を計測する。
【0069】
共振周波数同定装置101は、燃料集合体パラメータ計測装置50が計測したパラメータ(質量と形状パラメータ)を用いた数値モデルを使って、共振周波数fを計算して求める。(なお、パラメータの質量は、燃料集合体5の数値モデルにおいて、密度ρに反映される。)共振周波数同定装置101は、質量や形状が設計値から変動した燃料集合体5や、質量や形状が互いに異なる複数の燃料集合体5のそれぞれに対して、共振周波数fを正確に求めることができる。
【0070】
燃料集合体パラメータ計測装置50による燃料集合体5のパラメータの計測と、共振周波数同定装置101による計測値を用いた共振周波数fの計算は、伸縮管4が燃料集合体5を把持したときに行う。
【0071】
以上説明したように、本実施例による燃料取替機1では、燃料集合体5のパラメータが変動したときや、燃料集合体5のパラメータが燃料集合体5により異なる場合にも、正確に共振周波数fを求めることができ、より効果的に燃料集合体5の振れを抑制することができる。
【0072】
なお、燃料集合体パラメータ計測装置50は、少なくとも燃料集合体5の質量を計測でき、望ましくは燃料集合体5の形状パラメータも計測できれば、任意の構成を備えることができ、本実施例での態様に限定されるものではない。また、燃料集合体5の質量を計測する計測器50aは、燃料集合体5の荷重を計測した場合でも、計測した荷重から燃料集合体5の質量を求めることができる。
【実施例4】
【0073】
本発明の実施例4による燃料取替機について説明する。上述の実施例による燃料取替機と共通の構成については、説明を省略する場合がある。
【0074】
燃料取替作業では、大量の燃料集合体5を移送するため、燃料集合体5の取り間違いを防止しなくてはならない。そこで、本実施例による燃料取替機1は、燃料集合体個体識別装置を備え、個々の燃料集合体5を識別する。燃料集合体個体識別装置は、燃料集合体5の個体識別情報(例えば、マーカー)を検出し、検出した個体識別情報で個々の燃料集合体5を識別することができる。個体識別情報は、個々の燃料集合体5に固有の情報であり、個々の燃料集合体5を特定するための情報である。
【0075】
燃料集合体個体識別装置は、例えば、水中カメラ(例えば、
図8の水中カメラ50b)を備えることができる。水中カメラは、燃料集合体5に付けられた個体識別情報を撮影して検出する。燃料集合体個体識別装置は、燃料集合体5の個体識別情報を検出し、検出した個体識別情報により個々の燃料集合体5を識別して特定する。燃料集合体5の識別は、伸縮管4が燃料集合体5を把持するとき、または燃料集合体5を把持するために横走行を行っている間に実施すればよい。
【0076】
本実施例による燃料取替機1では、燃料集合体5を表すパラメータが複数の燃料集合体5において互いに異なる場合には、それぞれの燃料集合体5の個体識別情報とパラメータをデータベースに記録しておき、燃料集合体5を把持するときに、把持する燃料集合体5の個体識別情報に対応するパラメータをデータベースから読み込み、このパラメータを用いて共振周波数fを計算(再計算)するようにしてもよい。
【0077】
本実施例による燃料取替機1は、燃料集合体5の振れを抑制できるとともに、燃料集合体5の取り間違いを防止することができる。また、データベースに記録してある燃料集合体5のパラメータを用いて共振周波数fを計算する構成を備える場合には、把持する燃料集合体5を識別して正確に特定できるので、把持する燃料集合体5についてのパラメータを正しくデータベースから読み込んで共振周波数fを求めることができ、燃料集合体5の振れをさらに効果的に抑制することができる。
【0078】
なお、燃料集合体個体識別装置は、個々の燃料集合体5を識別できれば、任意の構成を備えることができ、本実施例での態様に限定されるものではない。
【実施例5】
【0079】
本発明の実施例5による燃料取替機について説明する。上述の実施例による燃料取替機と共通の構成については、説明を省略する場合がある。
【0080】
本実施例による燃料取替機1では、伸縮管4と燃料集合体5に加わる外乱により生じる燃料集合体5の振れも抑制することができる。
【0081】
図6は、本実施例による燃料取替機1の構成を示す図である。本実施例による燃料取替機1は、振れ観測装置101aと振れフィードバック補正装置103を備える。
【0082】
伸縮管4や燃料集合体5には、炉心または燃料貯蔵ラックに格納されている燃料集合体5の発熱による水の対流などの外乱が加わる場合がある。振れ観測装置101aと振れフィードバック補正装置103は、この外乱により生じる燃料集合体5の振れを抑制するために設けられる。
【0083】
振れ観測装置101aは、実施例2でも説明したように、燃料集合体5の振れθ(t)を計測する装置であり、例えば、水中から燃料集合体5を撮影できる水中カメラで構成することができる。
【0084】
振れフィードバック補正装置103は、振れ観測装置101aが計測した燃料集合体5の振れを抑制するように、走行台車2と横行台車3に対する指令値(補正指令値201)を補正する装置である。振れフィードバック補正装置103は、振れ観測装置101aが計測した燃料集合体5の振れθ(t)から、補正指令値201へのフィードバック補正量202を計算して求め、フィードバック補正量202を用いて補正指令値201を補正する。
【0085】
振れフィードバック補正装置103は、例えば、次式の演算により、フィードバック補正量202を計算することができる。
F=kp*θ(t)+kd*θ’(t)+ki*Σθ(t) ・・・(9)
ここで、Fは、フィードバック補正量であり、kp、kd、kiは、フィードバック補正ゲインである。フィードバック補正ゲインは、公知技術を用いて定めることができる。
【0086】
振れフィードバック補正装置103は、式(9)に従い、燃料集合体5が鉛直に垂下した状態を目標値としたPID制御を行い、適切に設定されたフィードバック補正ゲインを用いて、外乱により生じる燃料集合体5の振れを抑制することができる。
【0087】
制御装置100は、補正指令値201(指令値200から伸縮管4と燃料集合体5から構成される振動系の共振周波数fの周波数成分が除去された指令値)にフィードバック補正量202が加算された指令値203、すなわちフィードバック補正量202を用いて補正された補正指令値201である指令値203を用いて、走行台車2と横行台車3を制御する。
【0088】
以上説明したように、本実施例による燃料取替機1では、燃料集合体5の振れθ(t)を走行台車2と横行台車3に対する指令値にフィードバックすることにより、共振周波数同定装置101と補正装置102では考慮できなかった水流などによる外乱の影響も含めて、燃料集合体5の振れを抑制することができる。
【0089】
なお、振れ観測装置101aと振れフィードバック補正装置103は、燃料集合体5の振れを計測できてこの振れを抑制するように指令値を補正できれば、任意の構成を備えることができ、本実施例での態様に限定されるものではない。
【0090】
図7は、本実施例による燃料取替機1の別の構成を示す図である。
図7に示す燃料取替機1は、
図6に示す燃料取替機1において、共振周波数同定装置101と補正装置102を備えない構成を備える。振れフィードバック補正装置103は、走行台車2と横行台車3に対する指令値200を、フィードバック補正量202を用いて補正する。制御装置100は、振れフィードバック補正装置103が補正した指令値200である指令値204に従って、走行台車2と横行台車3を制御する。
【0091】
横走行により生じる伸縮管4と燃料集合体5の振れも、振れ観測装置101aと振れフィードバック補正装置103を用いて抑制することができる。そこで、
図7に示す燃料取替機1は、振れ観測装置101aと振れフィードバック補正装置103により得られたフィードバック補正量202を指令値200に加算する。
【0092】
制御装置100は、指令値200にフィードバック補正量202が加算された指令値である指令値204を用いて、走行台車2と横行台車3を制御する。
【0093】
図7に示す燃料取替機1は、計測した燃料集合体5の振れを用いて指令値200を補正するので、水流などによる外乱の影響も含めて、燃料集合体5の振れを抑制することができる。
【0094】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…燃料取替機、2…走行台車、3…横行台車、4…伸縮管、4a…ユニバーサルジョイント、4b、4c、4d…伸縮管を構成する円管、4e…掴み具、5…燃料集合体、5a…ハンドル、20…床、21…原子炉ウェルまたは燃料プール、22…レール、50…燃料集合体パラメータ計測装置、50a…燃料集合体の質量を計測する計測器、50b…燃料集合体を撮影する水中カメラ、100…制御装置、101…共振周波数同定装置、101a…振れ観測装置、101b…共振周波数演算装置、102…補正装置、103…振れフィードバック補正装置、200…指令値、201…補正指令値、202…フィードバック補正量、203、204…フィードバック補正量が加算された指令値。