(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 141/10 20060101AFI20221017BHJP
C10M 137/02 20060101ALN20221017BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20221017BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20221017BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20221017BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20221017BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20221017BHJP
【FI】
C10M141/10
C10M137/02
C10M133/16
C10M135/10
C10N10:04
C10N30:06
C10N40:04
(21)【出願番号】P 2019064304
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】長井 晴子
(72)【発明者】
【氏名】増田 耕平
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-306292(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158304(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145592(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129465(WO,A1)
【文献】特開2009-235358(JP,A)
【文献】特開2011-162774(JP,A)
【文献】特開2005-281474(JP,A)
【文献】特開2011-219537(JP,A)
【文献】特開2013-155348(JP,A)
【文献】特公昭45-037097(JP,B1)
【文献】特開昭51-031369(JP,A)
【文献】国際公開第2007/021014(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/04
C10N 30/06
C10N 40/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃における動粘度が2.5~4.7mm
2
/sである潤滑油基油と、
(A)塩基価100mgKOH/g超のカルシウム系清浄剤と、
(B)亜リン酸エステル系摩耗防止剤と、
(C)
N-メチルアミノ酸の窒素原子が炭素数12~22の直鎖脂肪酸でアシル化された構造を有するN-アシル化-N-メチルアミノ酸であって、前記アミノ酸はグリシン又はβ-アラニンである、N-アシル化-N-メチルアミノ酸、並びに/又は
、その
金属塩及び/若しくはエタノールアミン塩と
を含
み、
有機モリブデン化合物を含有しないことを特徴とする、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、塩基価100mgKOH/g超のカルシウムスルホネート清浄剤である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
無段変速機用潤滑油組成物である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関し、より詳しくは、無段変速機の潤滑に好ましく用いることのできる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュベルト式無段変速機は、自動車の省燃費性向上に有効であることから、近年急速に普及が進んでいる。プッシュベルト式無段変速機は、駆動プーリー及び従動プーリーを含む一対のプーリーと、該一対のプーリーに巻き掛けられた金属ベルトとを備え、該金属ベルトは、プーリーに挟み込まれては解放されることを繰り返しながら上記一対のプーリーの周囲を周回移動する複数の金属要素(横断要素;コマ)と、該複数の金属要素を上記周回移動の経路上に保持する少なくとも1本のリング状の金属バンド(キャリア)とを備えている。駆動プーリーが金属ベルトのキャリアに保持されたコマを挟み込んで従動プーリーに向けて押し出すことにより、動力が入力側(駆動プーリー)から出力側(従動プーリー)に伝達される。その変速比は、一方または両方のプーリーにおける金属要素の円弧状の移動経路の半径を調整することにより制御される。該移動経路の半径の調整は、プーリーが金属要素を挟み込む一対の円錐面(シーブ)の間の距離を変更することにより行われる。金属ベルトの伝達トルク容量を高めるために、金属要素とシーブとの間の面圧は通常、他の摺動部位(ギヤ歯面を除く。)における面圧よりも高く維持される。すなわち、他の摺動部位(ギヤ歯面を除く。)における面圧は低面圧(例えば1~10MPa程度)であるのに対し、金属要素とシーブとの間の面圧は中面圧(例えば0.1GPa以上1GPa未満程度)に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速機における省エネルギー化に対する一つのアプローチとして、変速機の小型軽量化が挙げられる。変速機の小型軽量化により、変速機が搭載される車両の燃費が改善する。特にプッシュベルト式無段変速機については、金属要素とシーブとの間の中面圧条件下の摩擦係数(金属間摩擦係数)を高めることができれば、(1)オイルポンプからの油圧を低くすることが出来るためオイルポンプを小型化することが可能になり、(2)金属ベルトの伝達トルク容量を損なうことなく変速機を小型化することが可能になる。したがって、無段変速機に用いられる潤滑油は、中面圧条件下における金属間摩擦係数を高く保つことが望ましい。その一方で、他の摺動部位における摩擦損失を低減して省燃費性を高める観点からは、低面圧条件下における金属間摩擦係数は低いことが望ましい。
【0005】
しかしながら通常、中面圧条件下における金属間摩擦係数を高めた潤滑油においては、低面圧条件下における金属間摩擦係数も高くなる傾向にあり、また低面圧条件下における金属間摩擦係数を低めた潤滑油においては、中面圧条件下における金属間摩擦係数も低くなる傾向にある。
【0006】
本発明は、中面圧条件下における金属間摩擦係数をより高く維持しながら、低面圧条件下における金属間摩擦係数をより低減することが可能な、潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施形態は、潤滑油基油と、(A)塩基価100mgKOH/g超のカルシウム系清浄剤と、(B)亜リン酸エステル系摩耗防止剤と、(C)炭素数6~24のアルキル若しくはアルケニル若しくはアシル基を有するアミノ酸及び/又はその誘導体とを含むことを特徴とする、潤滑油組成物である。
【0008】
上記潤滑油組成物において、上記(A)成分が、塩基価100mgKOH/g超のカルシウムスルホネート清浄剤であることが好ましい。
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、無段変速機用潤滑油組成物として好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中面圧条件下における金属間摩擦係数をより高く維持しながら、低面圧条件下における金属間摩擦係数をより低減することが可能な、潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。なお本明細書においては、特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」と等価であるものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。本明細書において、「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、要素E1及びE2について「E1及び/又はE2」という表記は「E1、若しくはE2、又はそれらの組み合わせ」と等価であり、N個の要素E1、…、EN(Nは3以上の整数である。)について「E1、…、及び/又はEN」という表記は「E1、…、若しくはEN、又はそれらの組み合わせ」と等価である。
【0012】
<潤滑油基油>
本発明の潤滑油組成物(以下において「潤滑油組成物」又は単に「組成物」ということがある。)における潤滑油基油としては、API基油分類のグループII基油、グループIII基油、グループIV基油、若しくはグループV基油、又はそれらの混合基油を特に制限なく用いることができる。APIグループII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。APIグループIII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が120以上の鉱油系基油である。APIグループIV基油はポリα-オレフィン基油である。APIグループV基油はエステル系基油である。
【0013】
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる、パラフィン系またはナフテン系などの鉱油系基油を挙げることができる。APIグループII基油及びグループIII基油は通常、水素化分解プロセスを経て製造される。また、ワックス異性化基油や、GTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化する手法で製造される基油等も使用可能である。
【0014】
APIグループIV基油としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。
【0015】
APIグループV基油としては、例えばモノエステル(例えばブチルステアレート、オクチルラウレート);ジエステル(例えばジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセパケート等);ポリエステル(例えばトリメリット酸エステル等);ポリオールエステル(例えばトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)等を挙げることができる。
【0016】
潤滑油基油は、1種の基油からなってもよく、2種以上の基油を含む混合基油であってもよい。2種以上の基油を含む混合基油においては、それらの基油のAPI分類は同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。一の実施形態において、潤滑油基油は、APIグループII基油、若しくはAPIグループIII基油、若しくはAPIグループIV基油、又はそれらの組み合わせである。
【0017】
潤滑油基油の100℃における動粘度は好ましくは2.5~5.0mm2/sであり、より好ましくは3.3~4.7mm2/s、さらに好ましくは3.8~4.5mm2/sである。潤滑油基油の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また潤滑油基油の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、潤滑箇所における油膜形成を十分にして潤滑性を高めることが可能になる。なお本明細書において、「100℃における動粘度」とは、ASTM D-445に規定される100℃での動粘度を意味する。
【0018】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは8.5~30.0mm2/sであり、より好ましくは12.0~28.0mm2/s、さらに好ましくは15.0~25.0mm2/s以下である。潤滑油基油の40℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また潤滑油基油の40℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、潤滑箇所における油膜形成を十分にして潤滑性を高めることが可能になる。なお本明細書において「40℃における動粘度」とは、ASTM D-445に規定される40℃での動粘度を意味する。
【0019】
潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは105以上であり、一の実施形態において110以上であってもよく、120以上であってもよく、125以上であってもよい。潤滑油基油の粘度指数が上記下限値以上であることにより、潤滑油組成物の粘度-温度特性、熱・酸化安定性、及び摩耗防止性の向上が可能になる。なお、本明細書において粘度指数とは、JIS K 2283-1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0020】
潤滑油基油中の硫黄分の含有量は、酸化安定性の観点から好ましくは0.03質量%(300質量ppm)以下、より好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下であり、1質量ppm以下であってもよい。
【0021】
潤滑油組成物中の潤滑油基油(全基油)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは70~99.3質量%、より好ましくは80~99.3質量%、一の実施形態において85~99.3質量%であり得る。
【0022】
<(A)カルシウム系清浄剤>
本発明の潤滑油組成物は、(A)塩基価100mgKOH/g超のカルシウム系清浄剤(以下において単に「(A)成分」ということがある。)を含有する。(A)成分としては、カルシウムスルホネート清浄剤、カルシウムサリシレート清浄剤、カルシウムフェネート清浄剤等の公知のカルシウム系清浄剤を用いることができ、カルシウムスルホネート清浄剤を好ましく用いることができる。(A)成分としては1種の清浄剤を単独で用いてもよく、2種以上の清浄剤を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
カルシウムスルホネート清浄剤の好ましい例としては、アルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩またはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。アルキル芳香族化合物の重量平均分子量は好ましくは400~1500であり、より好ましくは700~1300である。
アルキル芳香族スルホン酸としては、例えば、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が挙げられる。また、合成スルホン酸の一例としては、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントにおける副生成物を回収すること、もしくは、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものを挙げることができる。合成スルホン酸の他の一例としては、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したものを挙げることができる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては、特に制限はなく、例えば発煙硫酸や無水硫酸を用いることができる。
【0024】
カルシウムサリシレート清浄剤の好ましい例としては、カルシウムサリシレート又はその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。カルシウムサリシレートの好ましい例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0025】
【0026】
一般式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数14~30のアルキル基またはアルケニル基を表す。aは1又は2を表し、好ましくは1である。なおa=2である場合、R1は異なる基の組み合わせであってもよい。
【0027】
カルシウムサリシレートの製造方法は特に制限されるものではなく、公知のモノアルキルサリシレートの製造方法等を用いることができる。例えば、フェノールを出発原料として、オレフィンを用いてアルキレーションし、次いで炭酸ガス等でカルボキシレーションして得たモノアルキルサリチル酸、あるいは、サリチル酸を出発原料として、当量の上記オレフィンを用いてアルキレーションして得られたモノアルキルサリチル酸等に、カルシウムの酸化物や水酸化物等の金属塩基を反応させること、又は、これらのモノアルキルサリチル酸等を一旦ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからカルシウム塩と金属交換させること等により、カルシウムサリシレートを得ることができる。
【0028】
フェネート系清浄剤の好ましい例としては、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物のカルシウム塩の過塩基性塩を挙げることができる。
【0029】
【0030】
一般式(2)中、R2は炭素数6~21の直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基又はアルケニル基を表し、bは重合度であって1~10の整数を表し、Aはスルフィド(-S-)基またはメチレン(-CH2-)基を表し、cは1~3の整数を表す。なおR2は2種以上の異なる基の組み合わせであってもよい。
【0031】
一般式(2)におけるR2の炭素数は、好ましくは9~18、より好ましくは9~15である。R2の炭素数が上記下限値以上であることにより、基油に対する溶解性を高めることが可能になる。またR2の炭素数が上記上限値以下であることにより、耐熱性を高めることが可能になる。
【0032】
一般式(2)における重合度bは、好ましくは1~3である。重合度bがこの範囲内であることにより、耐熱性を高めることができる。
【0033】
過塩基化されたカルシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを得る方法は特に限定されるものではないが、例えば、炭酸ガスの存在下でカルシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートをカルシウム塩基(例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム等。)と反応させることにより、過塩基化されたカルシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを得ることができる。
【0034】
(A)成分の塩基価は100mgKOH/g超であり、好ましくは100mgKOH/g超500mgKOH/g以下、より好ましくは150~500mgKOH/g、さらに好ましくは200~500mgKOH/gである。(A)成分の塩基価が100mgKOH/g超であることにより、中面圧条件下における金属間摩擦係数(金属ベルトの伝達トルク容量)を高めることが可能になる。なお本明細書において塩基価とは、ASTM D 2896に準拠して測定される、過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0035】
潤滑油組成物中の(A)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、カルシウム量(カルシウム元素換算量)として好ましくは50~1500質量ppm、より好ましくは80~1000質量ppmであり、一の実施形態において100~600質量ppmであり得る。(A)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、中面圧条件下における金属間摩擦係数(金属ベルトの伝達トルク容量)を維持ないしさらに高めながら、低面圧条件下における金属間摩擦係数(ギヤ、ベアリング等の摺動における摩擦係数)をさらに低減することが可能になる。また(A)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、クラッチトルク容量および変速特性を長期に渡って良好に維持することが可能になる。
【0036】
<(B)亜リン酸エステル系摩耗防止剤>
本発明の潤滑油組成物は、亜リン酸エステル系摩耗防止剤(以下において「(B)成分」ということがある。)を含有する。(B)成分の例としては、下記一般式(3)で表される化合物、並びにその金属塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。(B)成分としては1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
【化3】
(一般式(3)中、X
1、X
2、及びX
3は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R
3は炭素数1~30の炭化水素基を表し;R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表し;R
3、R
4、及びR
5は同一でも相互に異なっていてもよく;一般式(3)の化合物はタウトマーであってもよい。)
【0038】
一般式(3)における炭素数1~30の炭化水素基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基等を挙げることができる。炭化水素基は好ましくは、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数6~24のアリール基であり、一の実施形態において炭素数3~18、さらに好ましくは炭素数4~12のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である。
【0039】
一般式(3)で表されるリン化合物と金属塩を形成する金属の例としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、もしくは亜鉛、又はそれらの組み合わせが好ましい。
【0040】
一般式(3)で表されるリン化合物とアンモニウム塩を形成する含窒素化合物の例としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、及びアルカノールアミンを挙げることができる。より具体的には、下記一般式(4)で表される含窒素化合物;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;及びこれらの組み合わせ、等を挙げることができる。
【0041】
【化4】
(一般式(4)中、R
6~R
8はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基を表し;R
6~R
8のうち少なくとも1つは炭素数1~8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基である。)
【0042】
リン含有添加剤としては、上記した化合物の中でも、亜リン酸エステル化合物を好ましく用いることができ、中でも炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を有するハイドロジェンホスファイトが特に好ましい。例えば、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、及びジラウリルハイドロジェンホスファイトから選ばれる1種以上のハイドロジェンホスファイトを好ましく用いることができる。
【0043】
一の実施形態において、(B)成分としては、下記一般式(5)で表される化合物を好ましく用いることができる。(B)成分として一般式(5)で表される亜リン酸エステル化合物を用いることにより、耐摩耗性および耐疲労性を高めることが可能になる。
【0044】
【化5】
一般式(5)において、R
9及びR
10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~18の直鎖炭化水素基、又は下記一般式(6)で表される炭素数5~20の基であり、R
9及びR
10の少なくとも一方は炭素数1~18の直鎖炭化水素基または下記一般式(6)で表される炭素数5~20の基である。一の好ましい実施形態において、R
9及びR
10の両方がそれぞれ独立に炭素数1~18の直鎖炭化水素基または下記一般式(6)で表される炭素数5~20の基である。
【0045】
【化6】
一般式(6)において、R
11は炭素数2~17の直鎖炭化水素基であり、好ましくはエチレン基またはプロピレン基であり、一の実施形態においてエチレン基である。R
12は炭素数2~17の直鎖炭化水素基であり、好ましくは炭素数2~16の直鎖炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数6~10の直鎖炭化水素基である。X
4は酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは硫黄原子である。
【0046】
一の実施形態において、R9及びR10の好ましい例としては、炭素数4~18の直鎖アルキル基を挙げることができる。直鎖アルキル基の例としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができる。
【0047】
一の実施形態において、R9及びR10の好ましい例としては、3-チアペンチル基、3-チアヘキシル基、3-チアヘプチル基、3-チアオクチル基、3-チアノニル基、3-チアデシル基、3-チアウンデシル基、4-チアヘキシル基、3-オキサペンチル基、3-オキサヘキシル基、3-オキサヘプチル基、3-オキサオクチル基、3-オキサノニル基、3-オキサデシル基、3-オキサウンデシル基、3-オキサドデシル基、3-オキサトリデシル基、3-オキサテトラデシル基、3-オキサペンタデシル基、3-オキサヘキサデシル基、3-オキサヘプタデシル基、3-オキサヘプタデシル基、3-オキサノナデシル基、4-オキサヘキシル基、4-オキサヘプチル基、及び4-オキサオクチル基、を挙げることができる。
【0048】
潤滑油組成物中の(B)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準でリン量として好ましくは50~800質量ppm、より好ましくは50~500質量ppmであり、一の実施形態において100~300質量ppmであり得る。(B)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になり、また耐摩耗性、耐焼き付き性、及び疲労寿命を高めることが可能になる。また(B)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減することが可能になり、また耐摩耗性、耐焼き付き性、及び疲労寿命を高めることが可能になる。
【0049】
<(C)無灰摩擦調整剤>
本発明の潤滑油組成物は、無灰摩擦調整剤として、炭素数6~24のアルキル若しくはアルケニル若しくはアシル基を有するアミノ酸及び/又はその誘導体(以下において「(C)成分」ということがある。)を含有する。(C)成分としては1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。炭素数6~24のアルキル又はアルケニル又はアシル基を有するアミノ酸の例としては、下記一般式(7)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化7】
一般式(7)において、R
13は炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル又はアシル基である。R
14は水素原子又は炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。R
15は官能基を有していてもよく直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を含む炭素数1~10の炭化水素基、又は水素原子である。dは0又は1であり、d=1のとき、R
16は水素原子又は炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
【0051】
R13の炭素数は6~24であり、好ましくは12~24、より好ましくは12~18である。R13の炭素数が上記下限値以上であることにより、基油への溶解性を高めるとともに、低面圧条件下における金属間摩擦係数を低減することが可能になる。R13は直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよいが、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減する観点からは、R13は直鎖のアルキル又はアルケニル又はアシル基であることが好ましい。アルキル基の例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、及びテトラコシル基を挙げることができる。アルケニル基の例としては、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、及びテトラコセニル基を挙げることができる。アルケニル基において二重結合の位置はいずれでもよいが、α-位(すなわち窒素原子に結合した炭素原子)以外であることが好ましい。アシル基の例としては、α-位にメチレン基を有する直鎖または分岐鎖アルキル又はアルケニル基において、該α-位の(すなわち窒素原子に結合した)メチレン基がカルボニル基に置き換えられた基を挙げることができる。
【0052】
R14は水素原子又は炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、貯蔵安定性の観点からは好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基又はエチル基であり、一の実施形態においてメチル基であり得る。
【0053】
R15は官能基を有していてもよく直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を含む炭素数1~10の炭化水素基、又は水素原子である。R15はフェニル基、フェニレン基、イミダゾリル基、インドリル基等の環状構造または複素環構造を有していてもよく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド結合、アミノ基、メルカプト基、スルフィド結合、グアニジノ基等の官能基を有していてもよい。基油への溶解性を高める観点、および低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減する観点からは、R15は好ましくはメチル基若しくはエチル基又は水素原子、より好ましくはメチル基又は水素原子、特に好ましくは水素原子である。
【0054】
dは0又は1であり、d=1のとき、R16は水素原子又は炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。貯蔵安定性の観点からは、R16は好ましくは炭素数1~3のアルキル基又は水素原子であり、より好ましくはメチル基若しくはエチル基又は水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0055】
一般式(7)で表される化合物の一の好ましい実施形態としては、R13が脂肪族アシル基、R14がメチル基である化合物、すなわち、N-メチルアミノ酸の窒素原子が脂肪酸でアシル化された構造を有するN-アシル化-N-メチルアミノ酸を挙げることができる。当該化合物において、R13は脂肪酸に対応する脂肪族アシル基である。そのような化合物は例えば、N-メチルアミノ酸と、脂肪酸から誘導されるアシル化剤とを、必要に応じて塩基の存在下に反応させることにより、縮合生成物として得ることができる。なお本明細書において、「脂肪酸に対応する脂肪族アシル基」とは、脂肪酸(R-CO2H)のカルボキシ基からヒドロキシ基を取り除くことにより得られるアシル基(R-CO-基)を意味する。
【0056】
N-メチルアミノ酸は、アミノ酸のアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)がメチル化された構造を有する化合物である。N-メチルアミノ酸は2種以上の化合物の混合物であってもよい。アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、テアニン等のα-アミノ酸;及び、β-アラニン等のβ-アミノ酸を挙げることができる。不斉中心を有するアミノ酸はD-体であってもよく、L-体であってもよく、ラセミ体であってもよく、それらの混合物であってもよい。これらのアミノ酸の中でも、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、又はβ-アラニンが好ましく、グリシン又はβ-アラニンが特に好ましい。
【0057】
脂肪酸から誘導されるアシル化剤の例としては、脂肪酸の酸ハライド(例えば酸塩化物、酸臭化物等。)、脂肪酸の活性エステル(例えば脂肪酸とN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とのエステル、脂肪酸と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)とのエステル等。)、脂肪酸の酸無水物等を挙げることができる。脂肪酸としては、炭素数6~24、好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数12~24、さらに好ましくは炭素数12~22の脂肪酸を用いることができる。脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよいが、直鎖脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸の好ましい例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、及びこれらの混合物等を挙げることができる。上記の脂肪酸のうち2種以上を含有する混合物として、天然油脂由来の脂肪酸を用いてもよい。天然油脂由来の脂肪酸の例としては、ココナッツ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、キリ油脂肪酸、トール油脂肪酸、コーン油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ごま油脂肪酸、大豆油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、あまに油脂肪酸、魚油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0058】
N-メチルアミノ酸とアシル化剤との反応に際しては、必要に応じて、N-メチルアミノ酸のアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)以外の1つ以上の官能基(例えばカルボキシ基。)に保護基が導入された状態で上記縮合反応を行い、その後に必要に応じて脱保護を行ってもよい。α-カルボキシ基(アミノ酸がβ-アミノ酸である場合にはβ-カルボキシ基。)の保護基の例としては、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル等を挙げることができる。アスパラギン酸およびグルタミン酸側鎖のカルボキシ基の保護基の例としては、tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、アリルエステル等を挙げることができる。セリン及びトレオニン側鎖のアルコール性ヒドロキシ基の保護基の例としては、ベンジル基、tert-ブチル基等を挙げることができる。チロシン側鎖のフェノール性ヒドロキシ基の保護基の例としては、2-ブロモベンジルオキシカルボニル基、tert-ブチル基等を挙げることができる。システイン側鎖のメルカプト基の保護基の例としては、4-メチルベンジル基、トリチル基、tert-ブチル基等を挙げることができる。アルギニン側鎖のグアニジノ基の保護基の例としては、p-トルエンスルホニル基等を挙げることができる。ヒスチジン側鎖のイミダゾリル基の保護基の例としては、ベンジルオキシメチル基、tert-ブトキシメチル基、2,4-ジニトロフェニル基、トリチル基等を挙げることができる。トリプトファン側鎖のインドール環の保護基の例としては、ホルミル基、tert-ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。保護基の導入および脱保護には、公知の反応条件を適用できる。
【0059】
一般式(7)で表される化合物の他の一の実施形態としては、R13が直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基、好ましくは直鎖のアルキル又はアルケニル基であり、R14がメチル基である化合物、すなわち、N-メチルアミノ酸の窒素原子がアルキル又はアルケニル化された構造を有するN-アルキル又はアルケニル-N-メチルアミノ酸を挙げることができる。そのような化合物は例えば、N-メチルアミノ酸と、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニルハライドとを、塩基の存在下に反応させることにより得ることができる。N-メチルアミノ酸としては、上記説明したN-メチルアミノ酸を用いることができる。アルキル又はアルケニルハライドとしては、R13に関連して上記説明したアルキル基又はアルケニル基と、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子とが結合したアルキル又はアルケニルハライドを用いることができる。一の実施形態において、アルキル又はアルケニルハライドとしては、上記説明した脂肪酸に対応する脂肪族アルコールに対応するアルキル又はアルケニルハライドを好ましく用いることができる。なお本明細書において、「脂肪酸に対応する脂肪族アルコール」とは、当該脂肪酸のカルボキシ基をヒドリド還元することにより得られる脂肪族アルコールを意味する。また本明細書において、「脂肪族アルコールに対応するアルキル又はアルケニルハライド」とは、当該脂肪族アルコールのヒドロキシ基がハロゲノ基に変換された構造を有するアルキル又はアルケニルハライドを意味する。N-メチルアミノ酸とアルキル又はアルケニルハライドとの反応に際しては、必要に応じて、N-メチルアミノ酸のアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)以外の1つ以上の官能基(例えばカルボキシ基。)に保護基が導入された状態で上記アルキル又はアルケニルハライドとの反応を行い、その後に必要に応じて脱保護を行ってもよい。保護基については上記説明した通りである。
【0060】
一般式(7)で表される化合物の一の典型的な実施形態としては、N-メチルグリシンのアミノ基が脂肪酸でアシル化された構造を有する、N-アシル化-N-メチルグリシン(一般式(7)においてR13が脂肪酸に対応するアシル基、R14がメチル基、R15が水素原子、d=0)を挙げることができる。
一般式(7)で表される化合物の他の典型的な実施形態としては、N-メチル-β-アラニンのアミノ基が脂肪酸でアシル化された構造を有する、N-アシル化-N-メチル-β-アラニン(一般式(7)においてR13が脂肪酸に対応するアシル基、R14がメチル基、R15が水素原子、d=1、R16が水素原子)を挙げることができる。
【0061】
一の実施形態において、一般式(7)で表される化合物を、そのままで(C)成分として好ましく用いることができる。他の実施形態において、(C)成分として一般式(7)で表される化合物の誘導体を用いてもよく、(C)成分として一般式(7)で表される化合物とその誘導体とを組み合わせて用いてもよい。一般式(7)で表される化合物の誘導体としては、金属塩、エタノールアミン塩、第1級または第2級アミド、メチルエステル、及び多価アルコールエステルを挙げることができる。
【0062】
一般式(7)で表される化合物と金属塩を形成する金属の例としては、ナトリウム、カリウム等の、アルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;及び亜鉛を挙げることができる。摩擦調整効果を長期間にわたって維持する観点からは、金属塩はアルカリ土類金属塩または亜鉛塩であることが好ましい。なお本明細書においては、マグネシウムはアルカリ土類金属に包含されるものとする。
一般式(7)で表される化合物の金属塩およびエタノールアミン塩は例えば、一般式(7)で表される化合物を、金属塩基(例えば金属酸化物、金属水酸化物等。)またはエタノールアミン塩と反応させることにより得ることができる。
【0063】
一般式(7)で表される化合物のメチルエステルは、一般式(7)中のカルボキシ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-カルボキシ基、β-アミノ酸である場合にはβ-カルボキシ基。)がメチルエステルに変換された誘導体である。当該メチルエステルは、例えば一般式(7)で表される化合物とメタノールとの縮合反応により得てもよく、アミノ酸メチルエステル又はN-アルキルアミノ酸メチルエステルのアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)の窒素原子上に置換基R13を導入することにより得てもよい。
【0064】
一般式(7)で表される化合物の第1級アミドは、一般式(7)中のカルボキシ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-カルボキシ基、β-アミノ酸である場合にはβ-カルボキシ基。)が第1級アミド(-CONH2)に変換された誘導体である。当該第1級アミドは、例えば一般式(7)で表される化合物のエステル(例えばメチルエステル、エチルエステル等。)とアンモニアとの反応(アンモノリシス)により得てもよく、アミノ酸の第1級アミド又はN-アルキルアミノ酸の第1級アミドのアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)の窒素原子上に置換基R13を導入することにより得てもよい。
【0065】
一般式(7)で表される化合物の第2級アミドは、一般式(7)中のカルボキシ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-カルボキシ基、β-アミノ酸である場合にはβ-カルボキシ基。)が第2級アミド(-CONHR17)に変換された誘導体である。R17は好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。当該第2級アミドは例えば、一般式(7)で表される化合物と第1級アミンとの縮合反応により得てもよく、アミノ酸の第2級アミド又はN-アルキルアミノ酸の第2級アミドのアミノ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-アミノ基、β-アミノ酸である場合にはβ-アミノ基。)の窒素原子上に置換基R13を導入することにより得てもよい。
なお、一般式(7)で表される化合物のアミド誘導体としては、第1級アミドが好ましい。
【0066】
一般式(7)で表される化合物の多価アルコールエステルは、一般式(7)中のカルボキシ基(アミノ酸がα-アミノ酸である場合にはα-カルボキシ基、β-アミノ酸である場合にはβ-カルボキシ基。)が多価アルコールとエステルを形成した誘導体である。当該多価アルコールエステルは例えば、一般式(7)で表される化合物と多価アルコールとの縮合反応により得ることができる。
カルボキシ基とエステルを形成する多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、イソソルビド、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールメタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、3-メチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン(2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール)等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,5,6-ヘキサンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、アロース、タロース、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール等の6価アルコール;ポリグリセリン;及びこれらの脱水縮合物;並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
【0067】
潤滑油組成物中の(C)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.10~0.40質量%、より好ましくは0.15~0.30質量%であり、一の実施形態において0.18~0.25質量%である。(C)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減することが可能になる。また(C)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、高面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になる。
【0068】
<(D)コハク酸イミド系無灰分散剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、(D)コハク酸イミド系無灰分散剤(以下において「(D)成分」ということがある。)を更に含み得る。(D)成分としては1種の分散剤を単独で用いてもよく、2種以上の分散剤を組み合わせて用いてもよい。(D)成分としては、ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤を用いてもよく、非ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤を用いてもよく、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(D)成分としては、例えば、アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドまたはその誘導体を用いることができる。アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの例としては、下記一般式(8)又は(9)で表される化合物を挙げることができる。
【0070】
【0071】
一般式(8)中、R18は炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を表し、eは1~5、好ましくは2~4の整数を表す。R18の炭素数は好ましくは60~350である。
【0072】
一般式(9)中、R19及びR20は、それぞれ独立に炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を表し、異なる基の組み合わせであってもよい。R19及びR20は特に好ましくはポリブテニル基である。また、fは0~4、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の整数を表す。R19及びR20の炭素数は好ましくは60~350である。
【0073】
一般式(8)及び(9)におけるR18~R20の炭素数が上記下限値以上であることにより、潤滑油基油に対する良好な溶解性を得ることができる。一方、R18~R20の炭素数が上記上限値以下であることにより、潤滑油組成物の低温流動性を高めることができる。
【0074】
一般式(8)及び(9)におけるアルキル基またはアルケニル基(R18~R20)は直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくは、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基を挙げることができる。なかでも慣用的にポリイソブチレンと呼ばれるイソブテンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基またはアルケニル基や、ポリブテニル基が最も好ましい。
一般式(8)及び(9)におけるアルキル基またはアルケニル基(R18~R20)の好適な数平均分子量は800~3500、より好ましくは1000~3500である。
【0075】
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドには、ポリアミン鎖の一方の末端のみに無水コハク酸が付加した、一般式(8)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミン鎖の両末端に無水コハク酸が付加した、一般式(9)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含される。潤滑油組成物には、モノタイプのコハク酸イミド及びビスタイプのコハク酸イミドのいずれが含まれていてもよく、それらの両方が混合物として含まれていてもよい。(D)成分中のビスタイプのコハク酸イミド又はその誘導体の含有量は、(D)成分の全量を基準(100質量%)として好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0076】
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの製法は、特に制限されるものではなく、例えば、炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物と、ポリアミンとの反応により縮合反応生成物として得ることができる。(D)成分としては、該縮合生成物をそのまま用いてもよく、該縮合生成物を後述する誘導体に変換して用いてもよい。アルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物とポリアミンとの縮合生成物は、ポリアミン鎖の両末端がイミド化された、ビスタイプのコハク酸イミド(一般式(9)参照。)であってもよく、ポリアミン鎖の一方の末端のみがイミド化された、モノタイプのコハク酸イミド(一般式(8)参照。)であってもよく、それらの混合物であってもよい。ここで、ポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン、並びにそれらの混合物を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上を含むポリアミン原料を好ましく用いることができる。ポリアミン原料はエチレンジアミンをさらに含有してもよく、含有しなくてもよいが、縮合生成物またはその誘導体の分散剤としての性能を高める観点からは、ポリアミン原料中のエチレンジアミンの含有量は、ポリアミン全量基準で好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%である。炭素数40~400のアルキル若しくはアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はそれらの無水物と、2種以上のポリアミンの混合物との縮合反応生成物として得られるコハク酸イミドは、一般式(8)又は(9)において異なるe又はfを有する化合物の混合物である。
【0077】
コハク酸イミドの誘導体としては、例えば、(i)上述のコハク酸イミドに、脂肪酸等の炭素数1~30のモノカルボン酸、炭素数2~30のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等。)、これらの無水物もしくはエステル化合物、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、又はヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートを作用させたことにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、含酸素有機化合物による変性化合物;(ii)上述のコハク酸イミドにホウ酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、ホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド);(iii)上述のコハク酸イミドにリン酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、リン酸変性化合物;(iv)上述のコハク酸イミドに硫黄化合物を作用させることにより得られる、硫黄変性化合物;及び、(v)上述のコハク酸イミドに含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせて施すことにより得られる変性化合物が挙げられる。これら(i)~(v)の誘導体の中でも、ホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)を好ましく用いることができる。
【0078】
(D)コハク酸イミド系無灰分散剤の重量平均分子量は好ましくは1000~20000であり、より好ましくは1000~15000であり、特に好ましくは2000~9000である。(D)成分の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、クラッチ特性およびスラッジ分散性を高めることが可能になる。
【0079】
潤滑油組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.5~8.0質量%、より好ましくは1.0~6.0質量%、さらに好ましくは2.0~5.0質量%である。(D)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減するとともに、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めること、およびクラッチ特性を良好にすることが可能になる。また(D)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減すること、およびクラッチ特性を良好にすることが可能になる。
【0080】
潤滑油組成物が(D)成分を含有する場合、その窒素量としての含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~0.20質量%、より好ましくは0.02~0.15質量%、さらに好ましくは0.03~0.10質量%である。(D)成分の窒素量としての含有量が上記下限値以上であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減するとともに、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めること、およびクラッチ特性を良好にすることが可能になる。また(D)成分の窒素量としての含有量が上記上限値以下であることにより、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減すること、およびクラッチ特性を良好にすることが可能になる。
【0081】
潤滑油組成物が(D)成分としてホウ素化コハク酸イミド無灰分散剤を含有する場合、(D)成分のホウ素量としての含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.001~0.05質量%、より好ましくは0.002~0.03質量%、さらに好ましくは0.003~0.02質量%である。(D)成分のホウ素量としての含有量が上記下限値以上であることにより、耐摩耗性、湿式クラッチの伝達トルク容量、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減するとともに、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になる。また(D)成分のホウ素量としての含有量が上記上限値以下であることにより、耐摩耗性および耐焼き付き性を高めることが可能になる。
【0082】
<(E)酸化防止剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、(E)酸化防止剤(以下において「(E)成分」ということがある。)を更に含み得る。(E)成分としては1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。(E)成分としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を特に制限なく用いることができる。
【0083】
アミン系酸化防止剤の例としては、芳香族アミン系酸化防止剤、及びヒンダードアミン系酸化防止剤が挙げられる。芳香族アミン系酸化防止剤の例としては、アルキル化α-ナフチルアミン等の第1級芳香族アミン化合物;及び、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン等の第2級芳香族アミン化合物;を挙げることができる。芳香族アミン系酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、若しくはアルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、又はそれらの組み合わせを好ましく用いることができる。
【0084】
ヒンダードアミン系酸化防止剤の例としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を挙げることができる。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体としては、4-位に置換基を有する2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が好ましい。また、2個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格が、それぞれの4-位の置換基を介して結合していてもよい。また2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格のN-位は無置換であってもよく、該N-位に炭素数1~4のアルキル基が置換していてもよい。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格は好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格である。
【0085】
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位の置換基としては、アシロキシ基(R21COO-)、アルコキシ基(R21O-)、アルキルアミノ基(R21NH-)、アシルアミノ基(R21CONH-)、等を挙げることができる。R21は好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~24、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。炭化水素基の例としてはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等を挙げることができる。
【0086】
2個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格が、それぞれの4-位の置換基を介して結合する場合の置換基としては、ヒドロカルビレンビス(カルボニルオキシ)基(-OOC-R22-COO-)、ヒドロカルビレンジアミノ基(-HN-R22-NH-)、ヒドロカルビレンビス(カルボニルアミノ)基(-HNCO-R22-CONH-)、等を挙げることができる。R22は好ましくは炭素数1~30のヒドロカルビレン基であり、より好ましくはアルキレン基である。
【0087】
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位の置換基としては、アシロキシ基が好ましい。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位にアシロキシ基を有する化合物の一例としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとカルボン酸とのエステルを挙げることができる。該カルボン酸の例としては、炭素数8~20の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸を挙げることができる。
【0088】
フェノール系酸化防止剤の例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチル)フェノール;4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;2,2’-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トリデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;3-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
【0089】
潤滑油組成物が(E)成分としてアミン系酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.02~3質量%である。アミン系酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であることにより、酸化安定性を高めるとともに、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減し、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になる。またアミン系酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であることにより、酸化安定性を高めることが可能となる。
【0090】
潤滑油組成物が(E)成分としてフェノール系酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.02~3質量%である。フェノール系酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であることにより、酸化安定性を高めるとともに、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減し、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になる。またフェノール系酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であることにより、酸化安定性を高めることが可能となる。
【0091】
<(F)チアジアゾール化合物>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、1種以上のチアジアゾール化合物(以下において「(F)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(F)成分としては1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(F)成分の例としては、下記一般式(10)で表される1,3,4-チアジアゾール、下記一般式(11)で表される1,2,4-チアジアゾール化合物、及び下記一般式(12)で表される1,2,3-チアジアゾール化合物を挙げることができる。
【0093】
【0094】
【0095】
【化11】
(一般式(10)~(12)中、R
23及びR
24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素又は炭素数1~20のヒドロカルビル基を表し;g及びhは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に0~8の整数を表す。)
【0096】
上記チアジアゾール化合物の中でも、上記一般式(10)~(12)のいずれかで表され、ヒドロカルビルジチオ基を有するチアジアゾール化合物を特に好ましく用いることができる。
【0097】
潤滑油組成物中の(F)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.005~1質量%、より好ましくは0.01~0.50質量%である。(F)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、耐焼き付き性、耐摩耗性、耐疲労性を高めることが可能になるとともに、低面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに低減し、中面圧条件下における金属間摩擦係数をさらに高めることが可能になる。また(F)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、耐焼き付き性および耐疲労性を高めることが可能になる。
【0098】
<その他の添加剤>
一の実施形態において、潤滑油組成物は、粘度指数向上剤、流動点降下剤、(B)成分以外の摩耗防止剤または極圧剤、(C)成分以外の摩擦調整剤、(F)成分以外の腐食防止剤、防錆剤、(F)成分以外の金属不活性化剤、シール膨潤剤、消泡剤、抗乳化剤、および着色剤から選ばれる1種以上をさらに含み得る。
【0099】
粘度指数向上剤としては、潤滑油において用いられる公知の粘度指数向上剤を特に制限なく用いることができる。粘度指数向上剤の例としては、ポリメタクリレート、エチレン-α-オレフィン共重合体及びその水素化物、α-オレフィンと重合性不飽和結合を有するエステル単量体との共重合体、ポリイソブチレン及びその水素化物、スチレン-ジエン共重合体の水素化物、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体、並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。これらの中でもポリメタクリレート、若しくは、エチレン-α-オレフィン共重合体若しくはその水素化物、又はそれらの組み合わせを好ましく用いることができる。粘度指数向上剤は分散型であってもよく、非分散型であってもよい。一の実施形態において、粘度指数向上剤の重量平均分子量は例えば2000~30000であり得る。潤滑油組成物は粘度指数向上剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が粘度指数向上剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常1.0~15質量%である。
【0100】
流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレート系ポリマー等の公知の流動点降下剤を特に制限なく用いることができる。潤滑油組成物は流動点降下剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が流動点降下剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.01~0.5質量%である。
【0101】
(B)成分以外の摩耗防止剤または極圧剤としては、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等の硫黄系化合物等、及び(B)成分以外のリン含有摩耗防止剤が挙げられる。(B)成分以外のリン含有摩耗防止剤としては、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、それらの完全エステル及び部分エステルを挙げることができる。潤滑油組成物は(B)成分以外の摩耗防止剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が(B)成分以外の摩耗防止剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.01~5質量%である。
【0102】
(C)成分以外の摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン化合物および無灰摩擦調整剤から選ばれる1種以上の摩擦調整剤を用いることができる。潤滑油組成物は(C)成分以外の摩擦調整剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が(C)成分以外の摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.01~3質量%である。
【0103】
有機モリブデン化合物の例としては、硫黄を含有する有機モリブデン化合物、及び、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を挙げることができる。硫黄を含有する有機モリブデン化合物の例としては、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物;ジチオリン酸モリブデン化合物;モリブデン化合物(例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩またはアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等。)と、硫黄含有有機化合物(例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等。)又はその他の有機化合物との錯体等;および、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等の、硫黄を含有する有機モリブデン化合物を挙げることができる。なお有機モリブデン化合物は、単核モリブデン化合物であってもよく、二核モリブデン化合物や三核モリブデン化合物等の多核モリブデン化合物であってもよい。構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物の例としては、モリブデン-アミン錯体、モリブデン-コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩などが挙げられる。
【0104】
(C)成分以外の無灰摩擦調整剤の例としては、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、脂肪族ウレア、脂肪酸ヒドラジド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、好ましくは炭素数10~30の炭化水素基、より好ましくは炭素数10~30のアルキル又はアルケニル基、さらに好ましくは炭素数12~24の直鎖アルキル又はアルケニル基を有する。
【0105】
(F)成分以外の腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を用いることができる。潤滑油組成物は(F)成分以外の腐食防止剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が(F)成分以外の腐食防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0106】
防錆剤としては、例えば石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等の公知の防錆剤を用いることができる。潤滑油組成物は防錆剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が防錆剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0107】
(F)成分以外の金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を用いることができる。潤滑油組成物は(F)成分以外の金属不活性化剤を含有しなくてもよいが、潤滑油組成物が(F)成分以外の金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0108】
シール膨潤剤としては、例えば、エラストマー材料の膨潤を生じさせる、アルコール、アルキルベンゼン、置換スルホラン、鉱油等の公知のシール膨潤剤を用いることができる。
アルコール系シール膨潤剤は、低揮発性の直鎖アルキルアルコールであり、その好ましい例としては、デシルアルコール、トリデシルアルコール、及びテトラデシルアルコールを挙げることができる。
シール膨潤剤として用いることのできるアルキルベンゼンの例としては、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン等を挙げることができる。
シール膨潤剤として用いることのできる置換スルホランの例としては、下記一般式(13)で表される置換スルホラン化合物を挙げることができる。
【0109】
【化12】
一般式(13)中、R
25は炭素数4以上の炭化水素基であり、好ましくは炭素数4~25、より好ましくは炭素数4~10のアルキル又はアルケニル基である。R
26及びR
27はそれぞれ水素原子または炭素数7以下の(好ましくは直鎖の)アルキル基であり、好ましくはR
26及びR
27の一方が水素原子、他方(好ましくはR
27)が水素原子またはメチル基であり、より好ましくはR
26及びR
27の両方が水素原子である。X
5は酸素原子または硫黄原子であり、好ましくは酸素原子である。
シール膨潤剤として用いることのできる鉱油は典型的には、ナフテン分または芳香族分の含有量の高い低粘度鉱油である。
潤滑油組成物はシール膨潤剤を含有してもよく、含有しなくてもよいが、潤滑油組成物がシール膨潤剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.01~3.0質量%である。
【0110】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を用いることができる。潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.0005~0.01質量%である。
【0111】
抗乳化剤としては、例えばポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を用いることができる。潤滑油組成物が抗乳化剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0112】
着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を用いることができる。
【0113】
<潤滑油組成物>
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは12~40mm2/s、より好ましくは14~30mm2/s、さらに好ましくは16~25mm2/sである。潤滑油組成物の40℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また潤滑油組成物の40℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、潤滑箇所における油膜の形成を十分にして耐摩耗性を高めることが可能になる。
【0114】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは2~12mm2/s、より好ましくは3~8mm2/s、さらに好ましくは4~6mm2/sである。潤滑油組成物の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、潤滑箇所における油膜の形成を十分にして耐摩耗性を高めることが可能になる。また潤滑油組成物の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
<実施例1~13及び比較例1~11>
表1~5に示されるように、本発明の潤滑油組成物(実施例1~13)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例1~11)をそれぞれ調製した。表中、各成分の含有量はいずれも潤滑油組成物の全量を基準(100質量%)としている。成分の詳細は次の通りである。
【0117】
(潤滑油基油)
O-1:水素化精製鉱油(APIグループIII基油、動粘度(40℃):19.42mm2/s、動粘度(100℃):4.234mm2/s、粘度指数:125、流動点:-17.5℃、%CP:79.4、%CN:20.6、硫黄分:10質量ppm未満)
【0118】
((A)カルシウム系清浄剤)
A-1:カルシウムスルホネート清浄剤、塩基価300mgKOH/g、Ca:11.6質量%
A-2:カルシウムサリシレート清浄剤、塩基価225mgKOH/g、Ca:8.0質量%
A-3*:カルシウムスルホネート清浄剤、塩基価85mgKOH/g、Ca:4.8質量%
【0119】
((B)亜リン酸エステル系摩耗防止剤)
B-1:ビス(3-チアウンデシル)ハイドロジェンホスファイト、P:7.3質量%
B-2:ジブチルハイドロジェンホスファイト、P:15.9質量%
【0120】
((C)無灰摩擦調整剤)
C-1:N-オレオイル-N-メチルグリシン
C-2*:グリセロールモノオレエート
C-3*:オレイルアミン-エチレンオキサイド付加物
C-4*:コハク酸イミド系摩擦調整剤(アルケニルコハク酸無水物とポリアミンとの縮合生成物、アルケニル基の炭素数:18、N:5.5質量%)
C-5*:ポリアミン系摩擦調整剤(テトラエチレンペンタミンとイソステアリン酸との縮合生成物)
【0121】
((D)コハク酸イミド系無灰分散剤)
D-1:ホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド、重量平均分子量:5000、ポリブテニル基の数平均分子量:1000、B:0.3質量%、N:1.3質量%
D-2:非ホウ素化ポリブテニルコハク酸イミド、重量平均分子量:4500、ポリブテニル基の数平均分子量:1000、N:1.3質量%
【0122】
((E)酸化防止剤)
E-1:アミン系酸化防止剤
E-2:フェノール系酸化防止剤
【0123】
((F)チアジアゾール化合物)
F-1:一般式(10)~(12)で表される、ヒドロカルビルジチオ基を有するチアジアゾール化合物、S:36質量%
【0124】
((G)その他の添加剤)
シール膨潤剤:一般式(13)で表される置換スルホラン化合物、X5=酸素原子、分子量:278.45、S:11.5質量%
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
(ピンオンディスク試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、ピンオンディスク試験機を用いて、試料油に浸漬されたディスクとピンとの間の摩擦係数を測定した。測定条件は次の通りである。
ピン:材質JIS SUJ-2、直径6mm
ディスク:材質JIS SUJ-2、直径32mm
荷重:200N
面圧:5.3MPa
すべり速度:0.2m/s
オイル供給方法:油浴
供給オイル温度:80℃
試験時間:30分
結果を表1~5に示している。本試験において測定された金属間摩擦係数が低いほど、低面圧条件下における金属間摩擦係数が低いことを意味し、好ましいといえる。
【0131】
(LFW-1試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、荷重を1100N、面圧を0.6GPaに変更した以外はJASO M358-2005(ベルト式CVT油の金属間摩擦係数特性試験)に準拠し、ブロックオンリング摩擦摩耗試験機(LFW-1)により、金属間摩擦係数(動摩擦係数)を測定した。試験条件はブロック:H60、リング:S10、荷重:1100N、面圧:0.6GPa、油温80℃とし、すべり速度0.1m/sでの金属間摩擦係数を測定した。結果を表1~5に示している。本試験において測定された金属間摩擦係数が高いほど、中面圧条件下における金属間摩擦係数(金属ベルトの伝達トルク容量)が高い(大きい)ことを意味し、好ましいといえる。
【0132】
(評価結果)
実施例1~13の潤滑油組成物は、中面圧条件下における金属間摩擦係数、及び、低面圧条件下における金属間摩擦係数の両方において、良好な結果を示した。
(A)成分に代えて(A)成分の範囲外のカルシウム系清浄剤を含有する比較例1の潤滑油組成物は、実施例1の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分を含有しない比較例2の潤滑油組成物は、実施例1の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分の範囲外の無灰摩擦調整剤を含有する比較例3の潤滑油組成物は、実施例1の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数、及び、中面圧条件下における金属間摩擦係数の両方において劣った結果を示した。
(A)成分に代えて(A)成分の範囲外のカルシウム系清浄剤を含有する比較例4の潤滑油組成物は、実施例2の潤滑油組成物に比較して、中面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分を含有しない比較例5の潤滑油組成物は、実施例2の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分を含有しない比較例6の潤滑油組成物は、実施例7の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分以外の無灰摩擦調整剤を含有する比較例7の潤滑油組成物は、実施例7の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分以外の無灰摩擦調整剤を含有する比較例8の潤滑油組成物は、実施例7の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数、及び、中面圧条件下における金属間摩擦係数の両方において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分以外の無灰摩擦調整剤を含有する比較例9の潤滑油組成物は、実施例8の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分以外の複数の無灰摩擦調整剤を含有する比較例10の潤滑油組成物は、実施例8の潤滑油組成物に比較して、低面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。
(C)成分に代えて(C)成分以外の複数の無灰摩擦調整剤を含有する比較例11の潤滑油組成物は、実施例8の潤滑油組成物に比較して、中面圧条件下における金属間摩擦係数において劣った結果を示した。