(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】シール材の取外し方法
(51)【国際特許分類】
E04F 21/165 20060101AFI20221017BHJP
E04B 1/68 20060101ALI20221017BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
E04F21/165 Z
E04B1/68 Z
E04G23/02 Z
(21)【出願番号】P 2019068905
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 直人
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241081(JP,A)
【文献】特開2006-348520(JP,A)
【文献】特開2008-95347(JP,A)
【文献】特開2011-149167(JP,A)
【文献】特開2008-127931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/165
E04B 1/68
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接配置された複数の外壁パネルと、隣接する前記外壁パネルの間に形成された目地部に設けられたシール材と、を有する外壁において、前記目地部から前記シール材を取り外すシール材の取外し方法であって、
前記目地部における前記シール材と前記外壁パネルとの界面に沿って刃で切込みを入れて、予め前記シール材と前記外壁パネルとを分離することなく、且つ、
前記外壁パネルにおける前記シール材と前記外壁パネルとの前記界面近傍を刃で切削して、前記シール材及び前記外壁パネルにおける前記シール材と前記外壁パネルとの前記界面近傍の部分と前記外壁パネルの他の部分とを予め分離することなく、
前記シール材に弾性が残存した状態で、前記シール材を連続的に引き抜いて、前記シール材を前記外壁パネルから分離させること及び前記シール材を前記目地部から取り外すことを同時に行うことを特徴とするシール材の取外し方法。
【請求項2】
側面視で、前記シール材を引き抜く引き抜き方向と、残存する前記シール材の延在方向とのなす角は鈍角であることを特徴とする請求項1に記載のシール材の取外し方法。
【請求項3】
前記シール材を引き抜く際に、角度変換具を使用し、
該角度変換具は、
前記外壁パネルにおける前記シール材の延在方向の一方側に取り付けられた支持体と、
該支持体に設けられ、前記シール材を掛けることができる方向変換部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシール材の取外し方法。
【請求項4】
前記外壁の表面において、前記外壁パネルと前記シール材との境界部または該境界部近傍に、予め刃で切込みを入れておくことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシール材の取外し方法。
【請求項5】
前記外壁の表面には、塗膜が形成され、
該塗膜の表面において、前記外壁パネルと前記シール材との境界部または該境界部近傍に、予め刃で切込みを入れておくことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシール材の取外し方法。
【請求項6】
予め前記刃で切込みを入れておく前記境界部近傍は、前記外壁を正面視して、前記境界部よりも前記外壁パネル側であることを特徴とする請求項4または5に記載のシール材の取外し方法。
【請求項7】
前記外壁パネルの基材は、軽量気泡コンクリートであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシール材の取外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材の取外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の外壁パネルを連設することによって外壁が構成されている建築物では、隣接する外壁パネルの間に形成された目地部にシール材が設けられている。経年劣化等の理由から、シール材を交換することがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、シール材が設けられた目地部の隅に、予め糸を埋設しておいて、シール材を取り外す際には、糸を外部に引き出すことにより、シール材と外壁との間を縁切りしてから、シール材を取り外す方法が提案されている。
【0004】
他にも、隣接する外壁パネルの間に形成された目地部におけるシール材と外壁パネルとの界面に沿ってカッターナイフ等でシール材の表面から最奥部にかけて切込みを入れてシール材と外壁パネルとを完全に分離してから、シール材を取り外す方法もある。また、外壁パネルがALC(軽量気泡コンクリート)等の比較的加工が容易な材質である場合、外壁パネルにおける目地部近傍の部分をカッターナイフ等で切削してから、シール材を近傍の外壁パネルとともに取り外す方法もある。また、目地部におけるシール材と外壁パネルとの界面に沿って切込みを入れたり、外壁パネルを切削したりする際に、電動工具を使用することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の方法では、予め糸を埋設していないシール材には、適用できない。
【0007】
また、外壁パネル間に形成された目地部におけるシール材と外壁パネルとの界面に沿って切込みを入れる方法では、シール材の表面から最奥部までカッターナイフを入れるには大きな力を要する、残存するシール材の取外しの為に切込み作業を繰り返さなければならない、カッターナイフの刃が折れてしまい刃を頻繁に交換しなければならない、といった問題点がある。
【0008】
また、電動工具を使用すると、切込み作業はしやすいものの、振動や騒音が発生し、近隣に迷惑をかけてしまうという問題点がある。
【0009】
また、外壁パネルにおける目地部近傍の部分を切削する方法では、切削粉が発生する。切削粉が目地部に残ったまま、新たなシール材を充填すると、接着不良の原因になってしまう。特に、外壁パネルの基材がALC(軽量気泡コンクリート)の場合、切削粉が細孔に入り込んでしまう。このため、切削粉を除去する必要があり、手間がかかるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業性良く且つ簡易に取り外すことができるシール材の取外し方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るシール材の取外し方法は、隣接配置された複数の外壁パネルと、隣接する前記外壁パネルの間に形成された目地部に設けられたシール材と、を有する外壁において、前記目地部から前記シール材を取り外すシール材の取外し方法であって、
前記目地部における前記シール材と前記外壁パネルとの界面に沿って刃で切込みを入れて、予め前記シール材と前記外壁パネルとを分離することなく、且つ、前記外壁パネルにおける前記シール材と前記外壁パネルとの前記界面近傍を刃で切削して、前記シール材及び前記外壁パネルにおける前記シール材と前記外壁パネルとの前記界面近傍の部分と前記外壁パネルの他の部分とを予め分離することなく、前記シール材に弾性が残存した状態で、前記シール材を連続的に引き抜いて、前記シール材を前記外壁パネルから分離させること及び前記シール材を前記目地部から取り外すことを同時に行うことを特徴とする。
【0012】
目地部におけるシール材と外壁パネルとの界面に沿って切込みを入れて、シール材の最奥部まで刃を到達させるには大きな力を要したり、刃が折れてしまったりする等の問題点があるが、このように構成されたシール材の取外し方法では、目地部に沿って刃で切込みを入れないため、上記問題点が生じない。
また、外壁パネルにおける目地部近傍を刃で切削すると、切削粉が目地部に残ってしまうため、切削粉を除去する作業が生じるが、上記した方法では、外壁パネルにおける目地部近傍を刃で切削しないため、そのような作業が生じない。
また、シール材を連続的に引き抜けば、シール材を外壁パネルから分離させること及びシール材を目地部から取り外すことを同時に行われるため、シール材を作業性良く且つ簡易に取り外すことができる。シール材は弾性率の高い建築材料であるため、引張方向やせん断方向に沿って取り外すよりも、剥離方向に沿って取り外す方が、接着強度が低いため、容易に取り外すことができる。
【0013】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、側面視で、前記シール材を引き抜く引き抜き方向と、残存する前記シール材の延在方向とのなす角は鈍角であることが好ましい。
【0014】
このように構成されたシール材の取外し方法では、側面視で、残存するシール材の延在方向に対して鈍角となる方向にシール材を引っ張ることにより、残存するシール材の臨界部分(残存するシール材におけるこれから引き抜かれようとする部分)では、シール材が伸長して、目地部から離れる方向(剥離方向)に力が作用するため、シール材をスムーズに取り外すことができる。
【0015】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、前記シール材を引き抜く際に、角度変換具を使用し、該角度変換具は、前記外壁パネルにおける前記シール材の延在方向の一方側に取り付けられた支持体と、該支持体に設けられ、前記シール材を掛けることができる方向変換部と、を有していてもよい。
【0016】
このように構成されたシール材の取外し方法では、作業者と引き抜き作業を行おうとするシール材との位置関係から、シール材を引き抜く引き抜き方向と残存するシール材の延在方向とのなす角度を鈍角に維持しにくい場合であっても、角度変換具を用いることにより鈍角を維持することができる。例えば、上下方向に延在するシール材の上側を、引き抜き方向が斜め上方となるように取り外す際に、外壁パネルにおける作業者よりも高い位置に支持体を取り付けて、方向変換部にすでに引き抜かれているシール材を掛け下方に垂らす。そして、作業者は地上面に立った状態で、シール材を下方に引っ張る。これにより、作業者は足場等を用いて高い位置に移動することなく鈍角を維持して引き抜き作業を行うことができ、シール材を容易に取り外すことができる。
【0017】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、前記外壁の表面において、前記外壁パネルと前記シール材との境界部または該境界部近傍に、予め刃で切込みを入れておいてもよい。
【0018】
このように構成されたシール材の取外し方法では、シール材が目地部への取付強度の低い部分に沿って不規則に剥ぎ取られることが抑制され、シール材の改修後も建築物の外壁の美観を維持することができる。
【0019】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、前記外壁の表面には、塗膜が形成され、
該塗膜の表面において、前記外壁パネルと前記シール材との境界部または該境界部近傍に、予め刃で切込みを入れておいてもよい。
【0020】
このように構成されたシール材の取外し方法では、シール材を引き抜く際に、シール材近傍の塗膜を不規則に剥ぎ取ってしまうことが抑制され、シール材の改修後も建築物の外壁の美観を維持することができる。
【0021】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、予め前記刃で切込みを入れておく前記境界部近傍では、前記外壁を正面視して、前記境界部よりも前記外壁パネル側であってもよい。
【0022】
このように構成されたシール材の取外し方法では、シール材を引き抜く際に、シール材が外壁パネル側に残ってしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係るシール材の取外し方法は、前記外壁パネルの基材は、軽量気泡コンクリートであってもよい。
【0024】
軽量気泡コンクリートでは、刃で比較的容易に切削することができるため、刃が蛇行して過大に切削してしまうことがある。このように構成されたシール材の取外し方法では、目地部に沿って刃で切込みを入れたり、外壁パネルにおける目地部近傍を刃で切削したりせずに、シール材を引き抜くため、当初の目地部の形状を維持することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るシール材の取外し方法によれば、シール材を作業性良く且つ簡易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法の対象となるシール材が目地部に設けられた建築物の立面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法の対象となるシール材が設けられた外壁の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法を説明する図であり、シール材を上側から取り外す場合であり、(a)断面図であり、(b)正面から見た図であり、(c)(b)のA部拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法を説明する図であり、シール材を下側から取り外す場合の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法を説明する図であり、工具を用いる場合であり、(a)断面図であり、(b)正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシール材の取外し方法の対象となるシール材が目地部に設けられた建築物の立面図である。なお、
図1では、所定の間隔で配置される複数のシール材のうち、一部のシール材のみ図示している(図示を省略しているシール材がある)。
まず、建築物の外壁の構成について説明する。
図1に示すように、建築物100の外壁1は、隣接配置された複数の外壁パネル10と、隣接する外壁パネル10の間に設けられたシール材20と、を有している。
【0028】
各外壁パネル10は、板状に形成されている。複数の外壁パネル10は、板面が同一平面上に配置されるように、上下方向及び水平方向に配列されている。
本実施形態では、外壁パネル10の基材として、ALC(軽量気泡コンクリート)が採用されている。
【0029】
図2は、シール材の取外し方法の対象となるシール材20が設けられた外壁の水平断面図であり、上下方向に延在するシール材20の延在方向に直交する方向に沿う断面図である。
図2に示すように、隣接する外壁パネル10において、外壁パネル10の側端部10eどうしが突き合わさるように配置されている。
【0030】
外壁パネル10の側端部10eには、切り欠き部12が形成されている。切り欠き部12は、外壁パネル10の厚さ方向の中間部から表面10f側にかけて形成されている。換言すると、切り欠き部12は、外壁パネル10の側端部10e且つ表面10f側の角部に形成されている。
【0031】
以下の説明において、外壁パネル10の板厚方向を前後方向と称し、外壁パネル10の長辺側の表面10f側を前側と称し、外壁パネル10の裏面(表面10fと反対側の面。不図示。以下同じ。)側を後側と称することがある。
【0032】
切り欠き部12は、前側部分12fの方が、後側部分12bよりも幅広に形成されている。
【0033】
切り欠き部12の前側部分12fは、後側から前側に向かって漸次幅が広くなるように形成されている。切り欠き部12の後側部分12bは、前後方向全体にわたって同じ幅で形成されている。
【0034】
切り欠き部12は、傾斜面13と、奥行面14と、底面15と、を有している。
【0035】
傾斜面13は、外壁パネル10の表面10fから後側に向かうにしたがって次第に外壁パネル10の側端部10e側に向かうように傾斜している。
【0036】
奥行面14は、傾斜面13の後端部から後側に延びている。底面15は、奥行面14の後端部から外壁パネル10の側端部10eまで延びている。
【0037】
隣接する外壁パネル10において、各切り欠き部12どうしが対向配置されている。対向する切り欠き部12の内部が目地部18とされている。
【0038】
図1に示すように、水平方向に隣接する外壁パネル10の間には、上下方向に延びる目地部18が形成されている。また、1階の外壁パネル10と2階の外壁パネル10との間には、上下方向の目地部18とは異なる断面形状であり、水平方向に延びる目地部18が形成されている。
【0039】
以下では、上下方向に延びる目地部18に設けられたシール材20の取り外し方法について説明する。
各目地部18には、シール材20が設けられている。シール材20は、目地部18の略全長にわたって設けられている。本実施形態では、シール材20として、湿式のものが採用されている。
【0040】
図2に示すように、シール材20の表面20fは、外壁パネル10の表面10fよりも後側にセットバックして配置されている。シール材20表面20fは、幅方向の中央部の方が幅方向の端部側よりも窪んだ湾曲形状をなしている。なお、本実施形態では、シール材20は目地部18の底面15まで達していて、シール材20は目地部18の三面(傾斜面13、奥行面14及び底面15)に接着された状態であるが、例えば目地部18の底面15にバックアップ材が充填され、その上にシール材20が設けられたもの(目地部18の二面(傾斜面13及び奥行面14)に接着されたもの)であってもよい。
【0041】
外壁1には、外壁パネル10の表面10f及びシール材20の表面20fを覆うように、塗料が吹き付けられて塗膜30が形成されている。
【0042】
シール材20は、経年により劣化(可塑剤が揮散し硬化)する。本実施形態に係るシール材の取外し方法は、劣化したシール材20を取り外して新規のシール材を目地部18に充填する際に行われるものである。
【0043】
次に、シール材の取外し方法について説明する。
図3は、シール材20を上側から取り外す場合のシール材の取外し方法を説明する図であり、(a)は断面図であり、(b)は正面から見た図であり、(c)は(b)のA部拡大図である。
図3に示すように、上下方向に延びるシール材20(以下、縦シール材20Aと称することがある)を、上側から下側に向かって取り外す場合(例えば、足場の上方の作業床に立つ作業者が1階部分のシール材20を取り外す場合)には、作業者は、すでに目地部18から引き抜かれているシール材20の上部20uを持って、シール材20の目地部18から離間させて、連続的に引き抜いていく。
【0044】
この際に、
図3(a)に示すように、側面視で、シール材20を引き抜く引き抜き方向(矢印の方向)X1と、残存するシール材20の延在方向X2とのなす角θ1が、鈍角であることが好ましい。
【0045】
図3(b)に示すように、シール材20に弾性が残存した状態では、シール材20は引っ張られて伸長して、シール材20の断面積が小さくなっていく。
図3(c)に示すように、残存するシール材20におけるこれから引き抜かれていく側の部分(臨界部分)20aには、矢印で示すように、目地部18から離れる方向(剥離方向、矢印参照)に力が作用する。これにより、シール材20が外壁パネル10から分離すること及びシール材20が目地部18から取り外されることが、同時に行われる。
【0046】
なお、シール材20を取り外す際には、目地部18に沿って、つまり、目地部18の傾斜面13や奥行面14に沿って、刃で切込み21を入れて、予めシール材20と外壁パネル10とを分離させない。
【0047】
さらに、外壁パネル10における目地部18近傍を刃で切削(
図2に示す二点鎖線P参照)して、シール材20及び外壁パネル10における目地部18近傍の部分(
図2のP1参照)と外壁パネル10における他の部分(
図2のP2参照)とを予め分離しない。
【0048】
図2に示すように、外壁1の塗膜30の表面30fにおいて、外壁パネル10とシール材20との境界部Bに、予め切込み21を入れておいてもよい。
【0049】
外壁1の表面に塗膜30が形成されていない場合にも、外壁1の表面において、外壁パネル10とシール材20との境界部Bに予め切込み21を入れておいてもよい。
【0050】
また、切込み21を入れる位置は、境界部B近傍であってもよい。境界部B近傍に切込み21を入れる場合には、外壁1を正面視して、境界部Bよりもシール材20側(Y1側)であるよりは、境界部Bよりも外壁パネル10側(Y2側)である方が好ましい。なお、切込み21の深さや刃を入れる角度は特に限定はされず、目地部18やシール材20の断面形状や外壁パネル10の基材の材質等に応じて、適宜変更してもよく、刃先が外壁パネル10の基材の内部まで達してもよい。
【0051】
図4は、シール材20を下側から取り外す場合のシール材の取外し方法を説明する断面図である。
図4に示すように、縦シール材20Aを、下側から上側に向かって取り外す場合(例えば、地上面に立つ作業者が1階部分のシール材20をその下端側から取り外す場合)には、作業者は、すでに目地部18から引き抜かれているシール材20の下端部20dを持って、シール材20の目地部18から離間させて、連続的に引き抜いていく。
【0052】
この場合も、上側から取り外す場合と同様に、側面視で、シール材20を引き抜く引き抜き方向(矢印の方向)X3と、残存するシール材20の延在方向X2とのなす角θ2が、鈍角であることが好ましい。同様にして、1階の外壁パネル10と2階の外壁パネル10との間の水平方向に延びる目地部18において、水平方向に延びるシール材20(以下、横シール材20Bと称することがある。
図1参照。)も取り外すことができる。
【0053】
図5は、工具を用いてシール材の取外し方法を説明する図であり、(a)は断面図であり、(b)は正面から見た図である。
図5に示すように、シール材20を引き抜く際に、角度変換具50を使用してもよい。
角度変換具50は、支持体51と、方向変換部52と、把持部53と、を有している。
【0054】
支持体51は、外壁パネル10におけるシール材20の延在方向の一方側、つまり残存するシール材20と反対側に取り付けられている。支持体51には、目地部18の両側の外壁パネル10に固定するためのピン51aが設けられている。
【0055】
方向変換部52は、支持体51に設けられている。本実施形態では、方向変換部52は、円柱状に形成されている。方向変換部52の延在方向が、シール材20の延在方向と直交し、且つ外壁パネル10の表面10fに沿う方向となるように、方向変換部52は配置されている。
【0056】
把持部53は、支持体51に設けられている。把持部53は、把持可能な棒状部材である。角度変換具50は把持部53が残存するシール材20の方向に延びるように配置される。
【0057】
上記の角度変換具50は、例えば、すでに上側が取り外されたシール材20を地上面に立つ作業者が取り外す際に使用することができる。具体的には、作業者は目地部18におけるすでにシール材20が取り外された位置よりも若干高い位置に方向変換部52を固定する。そして、すでに取り外した部分20cを、方向変換部52に掛ける。作業者は、シール材20の部分20cを把持して、シール材20を下方に引っ張る。これにより、シール材20を引き抜く引き抜き方向と、残存するシール材20の延在方向とのなす角θ3を鈍角に保って、残存するシール材20が連続的に引き抜かれていく(
図5(a)に示す二点鎖線参照)。
【0058】
次に、上記のシール材の取外し方法の作用・効果について説明する。
目地部18におけるシール材20と外壁パネル10との界面に沿って切込み21を入れて、シール材20の最奥部まで刃を到達させるには大きな力を要したり、刃が折れてしまったりする等の問題点があるが、このように構成されたシール材の取外し方法では、目地部18に沿って刃で切込み21を入れないため、上記問題点が生じない。
【0059】
また、外壁パネル10における目地部18近傍を刃で切削すると、切削粉が目地部18に残ってしまうため、切削粉を除去する作業が生じるが、上記した方法では、外壁パネル10における目地部18近傍を刃で切削しないため、そのような作業が生じない。
【0060】
また、シール材20を連続的に引き抜けば、シール材20を外壁パネル10から分離させること及びシール材20を目地部18から取り外すことを同時に行われるため、シール材20を作業性良く且つ簡易に取り外すことができる。シール材20は弾性率の高い建築材料であるため、引張方向やせん断方向に沿って取り外すよりも、剥離方向に沿って取り外す方が、接着強度が低いため、容易に取り外すことができる。
【0061】
また、外壁パネル10の目地部18近傍の部分に外壁パネル10の劣化した部分(例えば、地震時のロッキングによってシール材20に引っ張られ剥離した部分)が存在する場合は、シール材20とともに、劣化部分を剥離させることができる。
【0062】
また、側面視で、引き抜き方向X1,X3が残存するシール材20の延在方向X2に対して鈍角となるように引っ張る。これにより、残存するシール材20の臨界部分20aでは、シール材20が伸長して、目地部18から離れる方向(剥離方向)に力が作用するため、シール材20をスムーズに取り外すことができる。
【0063】
また、角度変換具50を使用すれば、上下方向に延在するシール材20を、引き抜き方向が斜め上方となるように取り外すことができるように、外壁パネル10における作業者よりも高い位置に支持体51を取り付けて、作業者は地上面に立った状態のまま、方向変換部52に掛けられたシール材20を下方に引っ張ればよい。よって、足場等を用いて高い位置に移動して作業する必要がなく、シール材20を容易に取り外すことができる。つまり、作業者がその位置から単純にシール材20を引っ張るだけでは、シール材20を引き抜く引き抜き方向と残存するシール材20の延在方向とのなす角(θ3)を鈍角に維持できない場所で作業する場合あっても、角度変換具50を使用すれば、角θ3を鈍角に維持することができる。
【0064】
また、外壁1の表面10fにおいて、外壁パネル10とシール材20との境界部Bまたは境界部B近傍に、予め刃で切込み21を入れておく。これにより、シール材20が目地部18への取付強度の低い部分に沿って不規則に剥ぎ取られることが抑制され、シール材20の改修後も建築物100の外壁1の美観を維持することができる。
【0065】
また、塗膜30の表面30fにおいて、外壁パネル10とシール材20との境界部Bまたは境界部B近傍に、予め刃で切込み21を入れておく。これにより、シール材20を引き抜く際に、シール材20近傍の塗膜30を剥ぎ取ってしまうことが抑制され、シール材20の改修後も建築物100の外壁1の美観を維持することができる。
【0066】
また、予め刃で切込み21を入れておく境界部B近傍は、外壁1を正面視して、境界部Bよりも外壁パネル10側である。よって、シール材20を引き抜く際に、シール材20が外壁パネル10側に残ってしまうことを抑制することができる。
【0067】
また、軽量気泡コンクリートでは、刃で比較的容易に切削することができるため、刃が蛇行して過大に切削してしまうことがある。このように構成されたシール材の取外し方法では、目地部18に沿って刃で切込みを入れたり、外壁パネル10における目地部18近傍を刃で切削したりせずに、シール材20を引き抜くため、当初の目地部18の形状を維持することができる。
【0068】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0069】
例えば、シール材20と外壁パネル10との接着強さは、シール材20の引張強さ及び外壁パネル10の基材の非劣化部分の引張強さよりも小さくてもよい。これにより、シール材20が引き抜き作業の途中で切れること、シール材20の一部が目地部18に残存すること、及び外壁パネル10の基材の非劣化部分が剥離することが防止される。
【0070】
また、シール材20はプレコート塗膜(下地塗装)の上に充填されており、シール材20の引張強さ、シール材20とプレコート塗膜との接着強さ、プレコート塗膜の引張強さ、外壁パネル10の基材の非劣化部分の引張強さは、プレコート塗膜と外壁パネル10との接着強さよりも大きくてもよい。これにより、シール材20が引き抜き作業の途中で切れること、シール材20やプレコート塗膜の一部が目地部18に残存すること、及び外壁パネル10の基材の非劣化部分が剥離することが防止される。
【0071】
また、シール材20を引き抜く際には、一方の手で、シール材20における既に引き抜かれた部分を掴んで引っ張り、シール材20における新たに引き抜かれた部分を他方の手で掴み替えて更に引っ張るようにしてもよい。この手順を繰り返して、シール材20を途中で切断することなく連続的に引き抜いていってもよい。これにより、全て手作業で行われ電動工具等を使用しないため、騒音や振動が発生しない。また、電源が無い箇所でも作業が可能であり、作業中に電源コードに引っかかる危険や延長コードを取りまわす手間や、降雨による漏電や、機器の故障がない。
【0072】
また、1,2階にわたって設けられたシール材20を、以下のようにして取り外してもよい。1階の縦シール材20Aの下端部分を、地上面に立って斜め下方に引張り、1階の外壁1の上端位置(1階と2階との間の横シール材20B)まで引き抜く(以下、作業1と称する)。(仮設足場の上方の作業床に昇り)縦シール材20Aと横シール材20Bとの交差部分では、縦シール材20Aの連続性が保たれるように、横シール材20Bを分離する(以下、作業2と称する)。既に引き抜かれた1階の縦シール材20Aを掴んで、2階の縦シール材20Aを引っ張り、1階から2階まで連続的に引き抜く。これにより、2階の縦シール材20Aの端部を引き出す手間を省くことができる。
【0073】
また、上記の作業1を1階の外壁1の全ての縦シール材20Aについて行なった後に、上記の作業2を行ってもよい。これにより、作業者の上下移動を軽減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…外壁
10…外壁パネル
12…切り欠き部
18…目地部
20…シール材
21…切込み
50…角度変換具
51…支持体
52…方向変換部
53…把持部
B…境界部
100…建築物