(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】分析装置、フローセルの廃液流路及び排液の排出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20221017BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20221017BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
G01N1/00 101M
G01N35/08 A
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2019073674
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】太田 進一
(72)【発明者】
【氏名】山口 岳史
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034336(WO,A1)
【文献】特開2008-023889(JP,A)
【文献】特開2010-214353(JP,A)
【文献】特開2011-244698(JP,A)
【文献】特開昭58-066853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 35/08
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体
とともにシース液が流れる流路を有するフローセルと、
前記流路に前記検体を流入させる流入ポンプと、
前記流路に流れる検体を測定する測定手段と、
前記流路の下流に接続し、前記検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
前記第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
前記廃液貯留部から前記廃液貯留部の外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
前記第2廃液管の下流に設けられ、前記廃液貯留部に貯留する前記廃液を前記第2廃液管を介して前記廃液貯留部の外部へ吸引する排出ポンプと、
前記測定手段、前記流入ポンプ及び前記排出ポンプを制御する制御部と、
前記廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
前記第1廃液管の端縁は、前記廃液貯留部の中で、前記第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
前記第1廃液管の配管抵抗は、前記排気開口の配管抵抗より大きく、
前記制御部は、前記流入ポンプを駆動して前記流路に前記検体を流入させ、前記測定手段を制御して前記流路を流れる検体を測定させ、前記廃液貯留部において貯留した廃液の液面が前記第1廃液管の端縁の高さに到達する前に、前記排出ポンプを駆動して前記廃液貯留部に貯留した廃液を吸引させる、分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記測定手段が前記検体を測定中に、前記排出ポンプを駆動して前記第2廃液管から前記廃液貯留部に貯留した廃液を吸引させる、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
検体
とともにシース液が流れる流路を有するフローセルと、
前記流路の下流に接続し、前記検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
前記第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
前記廃液貯留部から前記廃液貯留部の外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
前記廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
前記第1廃液管の端縁は、前記廃液貯留部の中で、前記第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
前記第1廃液管の配管抵抗は、前記排気開口の配管抵抗より大きい、フローセルの廃液流路。
【請求項4】
前記第2廃液管が、前記廃液貯留部から貯留した廃液を吸引する排出ポンプと接続されている、請求項
3に記載のフローセルの廃液流路。
【請求項5】
検体
とともにシース液が流れる流路を有するフローセルと、
前記流路の下流に接続し、前記検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
前記第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
前記廃液貯留部から前記廃液貯留部の外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
前記廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
前記第1廃液管の端縁は、前記廃液貯留部の中で、前記第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
前記第1廃液管の配管抵抗は、前記排気開口の配管抵抗より大きい、フローセルの廃液流路、を用いる廃液の排出方法であって、
前記流路に流れる検体を測定する測定工程と、
前記測定工程中に、前記廃液貯留部に貯留する廃液を前記第2廃液管から前記廃液貯留部の外部へ排出する排出工程と、を有する廃液の排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローセルを用いた分析装置、フローセルの廃液流路及び排液の排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、シース液が流入するシース液流路と、液体の検体が流入する検体流路と、これら2つのシース液流路及び検体流路が合流して検体に含有される有形成分の撮影が行われる合流路と、を備えたフローセルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-112516号公報
【文献】特開2019-7893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フローセルを用いた検体の測定中、フローセルからの廃液の流路を動かしたり足で踏んだりして物理的衝撃を与えることで、フローセル内部での液体の流れが乱され、測定に影響が生ずるおそれがあるため、このような影響を排除する必要がある。
そこで本発明の実施態様は、フローセルの下流に位置する廃液流路からの影響によるフローセル内部での液体の流れを乱すことを回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の分析装置では、
検体が流れる流路を有するフローセルと、
流路に検体を流入させる流入ポンプと、
流路に流れる検体を測定する測定手段と、
流路の下流に接続し、検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
廃液貯留部からこの廃液貯留部の外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
第2廃液管の下流に設けられ、廃液貯留部に貯留する廃液を第2廃液管を介して廃液貯留部の外部へ吸引する排出ポンプと、
測定手段、流入ポンプ及び排出ポンプを制御する制御部と、
廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
第1廃液管の端縁は、廃液貯留部の中で、第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
第1廃液管の配管抵抗は、排気開口の配管抵抗より大きく、
制御部は、流入ポンプを駆動して流路に検体を流入させ、測定手段を制御して流路を流れる検体を測定させ、廃液貯留部において貯留した廃液の液面が第1廃液管の端縁の高さに到達する前に、排出ポンプを駆動して廃液貯留部に貯留した廃液を吸引させる。
【0006】
本開示のフローセルの廃液流路では、
検体が流れる流路を有するフローセルと、
流路の下流に接続し、検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
廃液貯留部から外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
第1廃液管の端縁は、廃液貯留部の中で、第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
第1廃液管の配管抵抗は、排気開口の配管抵抗より大きい。
【0007】
本開示の排液の排出方法では、
検体が流れる流路を有するフローセルと、
前記流路の下流に接続し、前記検体を含む廃液が流出する第1廃液管と、
前記第1廃液管からの廃液を貯留する廃液貯留部と、
前記廃液貯留部から外部へ廃液を導出する第2廃液管と、
前記廃液貯留部と大気とを連通する排気開口と、
を備え、
前記第1廃液管の端縁は、前記廃液貯留部の中で、前記第2廃液管の端縁より上方に位置するとともに、
前記第1廃液管の配管抵抗は、前記排気開口の配管抵抗より大きい、フローセルの廃液流路、を用い、
前記流路に流れる検体を測定する測定工程と、
前記測定工程中に、前記廃液貯留部に貯留する廃液を前記第2廃液管から廃液貯留部の外部へ排出する排出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施態様では、フローセルの下流に位置する廃液流路への物理的衝撃によるフローセル内部での液体の流れを乱すことを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態のフローセル下流の廃液流路構造を有する分析装置の模式図である。
【
図2】本実施形態の分析装置におけるフローセルと測定手段との位置関係を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の分析装置の機能ブロック図である。
【
図4】制御部のハードウェア構成をブロック図で示す。
【
図7】本実施形態の排液の排出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態は以下のとおりである。なお、以下の記載で各構成に付与されている符号は図面に記載されている符号と対応させてあるが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。また、本開示では、各流路において、液体の流入元に近い側を「上流」と称し、液体の流出先に近い側を「下流」と称する。
【0011】
<分析装置>
本開示の第1の態様の分析装置10においては、検体70が流れる流路を有するフローセル20と、この流路に検体70を流入させる流入ポンプ40と、この流路に流れる検体70を測定する測定手段11と、流路の下流に接続し、検体70を含む廃液75が流出する第1廃液管36と、第1廃液管36からの廃液75を貯留する廃液貯留部37と、廃液貯留部37からこの廃液貯留部37の外部へ廃液75を導出する第2廃液管38と、第2廃液管38の下流に設けられ、廃液貯留部37に貯留する廃液75を第2廃液管38を介して廃液貯留部37の外部に吸引する排出ポンプ44と、測定手段11、流入ポンプ40及び排出ポンプ44を制御する制御部100と、廃液貯留部37と大気とを連通する排気開口37Aと、を備える。
【0012】
そして、第1廃液管36の端縁36Aは、廃液貯留部37の中で、第2廃液管38の端縁38Aより上方に位置するとともに、第1廃液管36の配管抵抗は、排気開口37Aの配管抵抗より大きい。
【0013】
また、制御部100は、流入ポンプ40を駆動して上記した流路に検体70を流入させ、測定手段11を制御してこの流路を流れる検体70を測定させ、廃液貯留部37において貯留した廃液75の液面が第1廃液管36の端縁の高さに到達する前に、排出ポンプ44を駆動して廃液貯留部37に貯留した廃液75を吸引させる。
【0014】
換言すると、フローセル20の下流、つまり上記した流路の下流には、廃液流路として、第1廃液管36、廃液貯留部37及び第2廃液管38が設けられている。また、廃液貯留部37は排気開口37Aで大気と連通している。
【0015】
ここで、廃液貯留部37には、第1廃液管36を通じてフローセル20から排出された廃液75が、第1廃液管36を通じて流入する。また、廃液75の排出路は、廃液貯留部37の中で、第1廃液管36の端縁36Aと第2廃液管38の端縁38Aとに断絶している。そして、廃液貯留部37の中では、第1廃液管36の端縁36Aは、第2廃液管38の端縁38Aより上方に位置している。つまり、第1廃液管36の端縁36Aが廃液75の水面に浸る前に、第2廃液管38の端縁38Aは廃液75の水面に浸る。そのため、第1廃液管36の端縁36Aが廃液75の水面に浸る前に、第2廃液管38の端縁38Aを通じて廃液75を廃液貯留部37から廃液貯留部37の外部へ導出することができ、第1廃液管36の端縁36Aが廃液75の水面に浸ることを回避できる。よって、廃液貯留部37を含めて下流側にある貯留部、タンク、配管などを足で踏んでしまうとか、廃液貯留部37に溜まった廃液75の吸引を行うポンプの動作によって生じた物理的衝撃などが、廃液貯留部37の廃液75を通じて第1廃液管36から上流のフローセル20へ伝わり、フローセル内部での液体の流れが乱れることが抑制される。
【0016】
第1廃液管36の端縁36Aが廃液貯留部37の内部にあれば、第1廃液管36は廃液貯留部37と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。廃液貯留部37の下流で生じた物理的衝撃が第1廃液管36を伝ってフローセル20に伝わることを回避する上で、第1廃液管36は廃液貯留部37と接触していないことが好ましい。第2廃液管38についても、第2廃液管38の端縁38Aが廃液貯留部37の内部にあれば、第2廃液管38は廃液貯留部37と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。また、第1廃液管36の端縁36Aが廃液貯留部37の内部にあることで、第1廃液管36の端縁36Aから流出する廃液が廃液貯留部37の外部へ飛び散ることを回避できる。
【0017】
第1廃液管36の端縁36Aが貯留した廃液75の水面より上方に位置するための手段は適宜選択できる。たとえば、廃液貯留部37に廃液75が一定量貯留されるごとに廃液貯留部37から排出させてもよい。また、第1廃液管36の端縁36Aより下方に、液面を感知するセンサを設け、そのセンサが液面を感知したときに廃液75を廃液貯留部37から排出させてもよい。また、廃液貯留部37にどれほどの容量の廃液を貯留すると、第1廃液管36の端縁36Aが廃液75に浸るのかを事前に調べておいて、廃液貯留部37に送り出す送液量を管理し、その送液量がその容量を超えたときに廃液75を廃液貯留部37から排出させてもよい。あるいは、一度に廃液75が廃液貯留部37に排出される量よりも、廃液75が第1廃液管36の端縁36Aに浸るために必要な容量が大きい廃液貯留部37を設け、貯留されるごとに廃液貯留部37から排出してもよい。また、測定手段11でフローセル20の流路を流れる検体70を測定中に、廃液貯留部37に貯留された廃液75を排出してもよく、測定後に排出してもよい。また、測定後にフローセル20から廃液貯留部37にシース液などの洗浄液を送液して行うフローセル20の洗浄時に、廃液貯留部37に貯留された廃液75を排出してもよく、あるいは、その洗浄後に排出してもよい。
【0018】
さらに、第1廃液管36の配管抵抗は、排気開口37Aの配管抵抗より大きいため、前記したような物理的衝撃によって廃液貯留部37の内部の圧力が変動したとしても、その圧力変動は配管抵抗のより低い排気開口37Aから大気に逃れることになり、第1廃液管36を通じてフローセル20へ圧力変動が伝わる可能性が低減される。
【0019】
そのため、第1廃液管36が動かないように固定したり、踏みつけられないように覆いを施したりすれば、廃液貯留部37から下流側で圧力変動が生じても、フローセル20内部の液体の流れが乱れることを回避できる。
【0020】
排気開口37Aは、廃液貯留部37に貯留される廃液75の水面よりも上方にあればよい。たとえば、第1廃液管36の端縁36Aより上方に設けてもよいし、下方に設けてもよい。また廃液貯留部37の天面や側面に設けてもよい。
【0021】
ここで、配管抵抗は、管摩擦係数並びに流体の密度及び流速が一定であると仮定すると、管長に比例し、かつ、管径に反比例する。すなわち、第1廃液管36の配管抵抗が、前記排気開口37Aの配管抵抗より大きいとは、換言すると、第1廃液管36の管長をL1、管径をD1とし、排気開口37Aを管とみなしたときの管長をL2、管径をD2としたとき、
(L1/D1)>(L2/D2)・・・(式1)
の関係が成立することをいう。
【0022】
なお、排気開口37Aが、廃液貯留部37の天面に設けられている孔である場合、管径(D2)はその孔の直径であり、管長(L2)はその天面の厚さであるとみなすことができる。また、排気開口37Aが、廃液貯留部37の天面を貫通する管である場合には、その管長(L2)及び管径(D2)は、上記式1の関係が成立するように設定される。
【0023】
なお、フローセル20においてシース液80及び検体70が流れる合流路23の近傍では、たとえばカメラや分光光度計のような測定手段11によって検体70の性状(たとえば、検体70に懸濁される固形成分の性状若しくは密度、又は検体70に溶解される特定成分の濃度)が測定される。フローセル20内部のシース液80及び検体70の液体の流れが乱れると、フローセル20内部を流れるシース液80及び検体70の層流の厚み、並びにその層流と測定手段11との距離が変動し、正確に検体70を測定することができなくなる。そのため、正確に検体70を測定する上で、フローセル20内部の液体の流れが乱れることを回避し、安定的に流れるようにする点で本態様は有用である。
【0024】
なお、合流路23に検体70は流すが、検体70とシース液80とをともに流さない態様であっても、本開示によってフローセル20内部の検体70の流れが乱れることを回避できる。そのため、本開示はシース液80と検体70とがともに流れる流路を有するフローセルの態様に限定されるものではない。
【0025】
排出ポンプ44は、第2廃液管38を介して廃液貯留部37に貯留される廃液75を吸引し、廃液貯留部37の外部へ排出できるものであればよく、適宜、排出ポンプ44を選択できる。たとえば、後述するように、第2廃液管38の下流に廃液吸引タンク16を接続する。そして、排出ポンプ44として吸気ポンプを廃液吸引タンク16に接続する。そして、吸気ポンプを駆動して廃液吸引タンク16内部の空気を吸引し、第2廃液管38を介して、廃液貯留部37に貯留する廃液75を廃液貯留部37の外部へ排出してもよい。また、第2廃液管38の下流に、液体を送液するポンプを設けて、廃液貯留部37に貯留する廃液75を外部へ排出してもよい。
【0026】
制御部100は、測定手段11が上記した流路を流れる検体を測定中に、第2廃液管38から廃液貯留部37に貯留した廃液75を吸引するように排出ポンプ44を駆動するものでもよい。つまり、制御部100は、測定手段11を制御して上記した流路を流れる検体70を測定させ、同時に、排出ポンプ44を駆動して第2廃液貯留部37に貯留した廃液75を吸引させるものでもよい。この構成により、フローセル20の流路を流れる検体70を測定手段11が測定している間に、排出ポンプ44が駆動して廃液貯留部37から廃液75が吸引されても、その吸引による振動や衝撃がフローセル20の流路に伝わることがなく、測定が滞りなく行われる。
【0027】
フローセルの廃液流路においては、検体70が流れる流路を有するフローセル20と、流路の下流に接続し、検体70を含む廃液75が流出する第1廃液管36と、第1廃液管36からの廃液75を貯留する廃液貯留部37と、廃液貯留部37からこの廃液貯留部37の外部へ廃液75を導出する第2廃液管38と、廃液貯留部37と大気とを連通する排気開口37Aと、を備える。そして、第1廃液管36の端縁は、廃液貯留部37の中で、第2廃液管38の端縁より上方に位置するとともに、第1廃液管36の配管抵抗は、排気開口37Aの配管抵抗より大きい。
【0028】
第2廃液管38が、廃液貯留部37から貯留した廃液75を吸引する排出ポンプ44と接続されていてもよい。この排出ポンプ44の動作、たとえば、吸引やその停止などによって、第2廃液管38には圧力変動が生ずるが、その圧力変動は上記したように、第1廃液管36に伝わるよりも、排気開口37Aから大気へ逃がされることになる。
【0029】
本態様における各構成の意義については、上記した第1の態様と同様である。
【0030】
廃液の排出方法においては、検体70が流れる流路を有するフローセル20と、流路の下流に接続し、検体70が混合した廃液75が流出する第1廃液管36と、第1廃液管36からの廃液75を貯留する廃液貯留部37と、廃液貯留部37からこの廃液貯留部37の外部へ廃液75を導出する第2廃液管38と、廃液貯留部37と大気とを連通する排気開口37Aと、を備え、第1廃液管36の端縁は、廃液貯留部37の中で、第2廃液管38の端縁より上方に位置するとともに、第1廃液管36の配管抵抗は、排気開口37Aの配管抵抗より大きい、フローセルの廃液流路、が用いられる。そして、この流路に流れる検体70を測定する測定工程と、測定工程中に、廃液貯留部37に貯留する廃液75を第2廃液管38から廃液貯留部37の外部へ排出する排出工程と、を有する。
【0031】
本態様における各構成の意義については、上記した第1の態様と同様である。
【0032】
本態様の廃液の排出方法により、フローセル20の流路を流れる検体70を測定手段11が測定している間に、排出ポンプ44が駆動して廃液貯留部37から廃液75が吸引されても、その吸引による振動や衝撃がフローセル20の流路に伝わることがなく、測定が滞りなく行われる。
【0033】
<実施形態>
以下、本開示における実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図1は、検体70の分析装置10の実施形態を模式的に示している。本実施形態では、フローセル20に流入する流路として、第1流路31及び第2流路32がそれぞれフローセルのシース液開口21A、フローセルの検体開口22Aと接続している。また、フローセル20から流出する流路として、第1廃液管36がフローセルの廃液開口23Aと接続している。
【0035】
[分析装置の構成]
第1流路31には、第1ポンプ41からシース液80(
図1参照)が供給される。また、第2流路32には、第2ポンプ42からシース液80が供給される。本実施形態では、第1ポンプ41及び第2ポンプ42は両方ともプランジャーポンプが用いられており、それぞれ第1流路31及び第2流路32からシース液80を吸引することも可能である。なお、第2ポンプ42としては、チューブポンプのような、吸引機能を有さず送液機能のみを有するポンプを用いてもよい。
【0036】
シース液貯留部13は、流入ポンプ40としての第1ポンプ41及び第2ポンプ42を通じてフローセル20に供給されるシース液80を貯留するタンクである。シース液貯留部13からは、第1ポンプ41及び第2ポンプ42へ連結される管であるシース液供給路35が延設されている。シース液供給路35には、シース液貯留部13と第1ポンプ41との間に第1シース液バルブ54、及び、シース液貯留部13と第2ポンプ42との間に第2シース液バルブ55が設けられている。これらの第1シース液バルブ54及び第2シース液バルブ55はいずれも一方向にのみ開閉可能なバルブである。
【0037】
第2流路32の途中には、三方バルブである第1バルブ51が設けられている。この第1バルブ51を介して、ノズルとして形成されている吸引部12が先端に装着されている第3流路33が、第2流路32に接続されている。吸引部12は、検体70を収容する検体収容部60から、後述するように第1ポンプ41によって検体70を吸引する部分である。
【0038】
なお、本実施形態では、第1流路31、第2流路32及び第3流路33において、フローセル20に近い側が下流側と定義され、その反対側が上流側と定義される。
【0039】
第2流路32にはまた、第1バルブ51とフローセル20との間(換言すると、第1バルブ51の下流側)に、三方バルブである第2バルブ52が設けられている。一方、第1流路31の途中(換言すると、第1ポンプ41とフローセル20との間)には、三方バルブである第3バルブ53が設けられている。そして、第2バルブ52と第3バルブ53とが、第4流路34にて連絡されている。
【0040】
第3流路33の上流端には、検体収容部60に収容された検体70を吸引するための吸引部12が設けられている。
【0041】
第1流路31、第2流路32、第3流路33及び第4流路34並びにシース液供給路35及び第1廃液管36はいずれも、可撓性及び柔軟性を備えた材質の管(たとえば、テフロン(登録商標)チューブ)によって構成されている。
【0042】
[フローセル]
本実施形態では、フローセル20に流入する流路として、第1流路31及び第2流路32がそれぞれフローセルのシース液開口21A、フローセルの検体開口22Aと接続している。また、フローセル20から流出する流路として、第1廃液管36がフローセルの廃液開口23Aと接続している。
【0043】
フローセル20は、透光性のある材質、たとえば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、又はガラス等、可視光透過性が90%以上の材質で形成されることが望ましい。フローセル20は、上記のような材質の、長方形状の板材2枚を貼り合わせることで形成することができる。具体的には、これら板材のうちの一方の表面に、長方形状の溝であるシース液流路21を形成するとともに、この長方形状の短辺の一方と直交する直線状の溝も形成する。この直線状の溝は、該短辺の外方へ延出する検体流路22と、該短辺の内方へ延出する合流路23となっている。検体流路22は、該板材の短辺近傍にその先端が到達している。合流路23は、シース液流路21の、反対側の短辺近傍にその先端が到達している。また、他方の板材には、シース液開口21A、検体開口22A及び廃液開口23Aの3個の孔が形成されている。これらのうち、シース液開口21Aは、シース液流路21の短辺のうち、検体流路22及び合流路23と直交していない方の中点の位置に一致している。また、検体開口22Aは検体流路22の先端の位置に一致し、廃液開口23Aは合流路23の先端の位置に一致している。これら2枚の板材が貼り合わされることで、シース液開口21Aで外部と連通するシース液流路21と、検体開口22Aで外部と連通する検体流路22と、廃液開口23Aで外部と連通する合流路23とを内蔵するフローセル20が形成される。シース液開口21Aには、第1流路31が接続される。検体開口22Aには、第2流路32が接続される。廃液開口23Aには、第1廃液管36が接続される。
【0044】
換言すると、第1流路31はシース液開口21Aを介して、フローセル20内の2つのシース液流路21に分岐する。一方、第2流路32は検体開口22Aを介して、フローセル内の検体流路22に至る。そして、2つのシース液流路21及び検体流路22が合流して、シース液80及び検体70が流れる流路としての合流路23となり、廃液開口23Aを介して、第1廃液管36へ至る。
【0045】
フローセル20は、
図2に示すように、分析装置10において適宜の筐体14の凹部14Aに装着される。光源15と測定手段11とは、フローセル20の合流路23を挟んで対向した位置に設置されている。光源15は、合流路23を流れる検体70に光線を照射する。測定手段11は、合流路23をシース液80とともに流れる検体70を測定する。なお、ここでいう測定とは、検体70の特定の成分を、測定手段11としての光学測定手段(たとえば、分光光度計)によって定量的又は定性的に検出することや、別な測定手段11としてのカメラなどによる画像としての観察や撮影も含む。
【0046】
本実施形態のフローセル20は、たとえば、シース液80とともに検体70の一例としての尿検体を流入させることで、尿検体の有形成分を測定手段11で撮影し、撮影された画像の有形成分の形状等から分析を行う尿中有形成分検査に用いることができる。本実施形態では、検体70の一例として、尿検体を用い、尿中有形成分検査を行っているが、血液、細胞、体液などの他の検体及び用途に使用することも可能である。
【0047】
[機能ブロック]
分析装置10の機能ブロック図を
図3に示す。制御部100は、この分析装置10の各部を制御するものである。制御部100は、後述するハードウェア構成によって、測定手段11を制御する測定制御手段111、流入ポンプ40としての第1ポンプ41及び第2ポンプ42による液体の供給及び吸引を制御する流入制御手段140、及び、排出ポンプ44による廃液貯留部37に貯留する廃液75の吸引を制御する排出制御手段144、廃液ポンプ43による廃液吸引タンク16に貯留する廃液75の吸引を制御する廃液制御手段143として機能する。なお、制御部100は、他にも分析装置10の各種機能を制御する制御手段も有するが、本開示と直接関連しない部分については図示及び説明を割愛する。
【0048】
制御部100は、
図4のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103及びストレージ104を有する。各構成は、バス109を介して相互に通信可能に接続されている。
【0049】
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102又はストレージ104からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。CPU101は、ROM102又はストレージ104に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0050】
ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本態様では、ROM102又はストレージ104には、測定や判定に関するプログラムや各種データが格納されている。また、ストレージ104には、測定データを保存しておくこともできる。
【0051】
制御部100は、上記ハードウェア構成のうちCPU101が、前記したプログラムを実行することによって、分析装置10において
図3に示すような測定制御手段111、流入制御手段140、及び排出制御手段144として機能する。
【0052】
[フローセルの廃液流路]
フローセル20の下流、すなわち廃液開口23Aから発している第1廃液管36は、
図1に示すように、その端縁36Aを廃液貯留部37の内部に挿入されている。一方、廃液貯留部37からは、第1廃液管36とは断絶した第2廃液管38が廃液貯留部37の内部から外部に向けて延長されている。第2廃液管38は、その端縁38Aが、第1廃液管36の端縁36Aよりも下方になるように設置される。換言すると、廃液貯留部37の中では、第1廃液管36の端縁36Aは第2廃液管38の端縁38Aよりも上方に位置している。なお、第1廃液管36の端縁36Aは、第2廃液管38の端縁38Aよりも上方であれば、廃液貯留部37の天面や側面に位置していてもよい。廃液貯留部37より下流で生じた物理的衝撃が、廃液貯留部37からフローセル20に伝わることを回避する観点からは、廃液貯留部37と接触することなく、その端縁36Aを廃液貯留部37の内部に挿入することが好ましい。
【0053】
第2廃液管38は、途中に設けられる廃液バルブ56を介して、大気からは密閉された廃液吸引タンク16に至る。廃液吸引タンク16には、吸気流路39Aを介して排出ポンプ44である吸気ポンプが接続されている。また、廃液吸引タンク16にはさらに、吸液流路39Bを介して廃液ポンプ43が接続され、その下流には排出流路39Cが接続されている。
【0054】
第1廃液管36を流下した廃液75は、
図5に示すように廃液貯留部37に貯留される。廃液貯留部37の中では、上述のように、第1廃液管36の端縁36Aは第2廃液管38の端縁38Aよりも上方に位置している。ここで、第1廃液管36の、フローセル20の廃液開口23Aから端縁36Aまでの管長をL1とし、管径をD1とする。
【0055】
また、廃液貯留部37の天面には、直径D2の排気開口37Aが形成されている。なお、廃液貯留部37の天面の厚さをL2としたとき、このL2は、排気開口37Aを管とみなしたときの管長として把握できる。また、直径D2は、排気開口37Aを管とみなしたときの管径として把握できる。
【0056】
そして、
図5から明らかに、下記式2の関係が成立する。
【0057】
(L1/D1)>(L2/D2)・・・(式2)
【0058】
上記式2の関係より、排気開口37Aを管とみなしたとき、第1廃液管36の配管抵抗は、排気開口37Aの配管抵抗より大きい、といえる。
【0059】
なお、
図6に示すように、排気開口37Aを、廃液貯留部37の天面を貫通する管として形成することとしてもよい。この場合、排気開口37Aの管長L2及び管径D2についても、上記式2の関係を満たすように設定される。
【0060】
[作用]
以下、
図1~
図5を参照しつつ、本実施形態の作用を説明する。
【0061】
まず、
図1に示す状態に至る前に、第1流路31、第2流路32、第3流路33、第4流路34、フローセル20及び第1廃液管36が、制御部100の流入制御手段140によって制御された流入ポンプ40としての第1ポンプ41及び第2ポンプ42によって供給されたシース液80で満たされる。次いで、第1ポンプ41の吸引によって、吸引部12から、少量の空気90が吸引された後、検体70が吸引される。吸引された空気90及びそれに続く検体70は、第3流路33から第1バルブ51を通過して第2流路32に至り、さらに第2バルブ52を経由して第4流路34へ至る。
【0062】
この段階で、
図1に示すように、再び第1ポンプ41によってシース液80が第1流路31からフローセル20へ供給されると同時に、第2ポンプ42によってシース液80が第2流路32へ供給される。第2流路32へ供給されたシース液80は、既に第2流路32に吸引されていた検体70を押し出し、検体70はフローセル20へ流入する。
【0063】
第1流路31からは、シース液開口21Aからフローセル20のシース液流路21へシース液80が流入する。一方、第2流路32からは、検体開口22Aからフローセル20の検体流路22へ検体70が流入する。フローセル20に流入した検体70とシース液80とは合流路23で合流し、合流路23に対向する位置に配置された測定手段11(
図2参照)による測定に供された後、混合されて廃液75となり、廃液開口23Aから第1廃液管36へ排出される。
【0064】
廃液75は第1廃液管36を通り、
図5に示すように廃液貯留部37に貯留される。ここで、廃液75は、第2廃液管38の端縁38Aを浸すが、第1廃液管36の端縁36Aに達するまでに、排出ポンプ44である吸気ポンプによって、途中の廃液バルブ56を開放させた第2廃液管38を通って廃液吸引タンク16へ排出される。すなわち、制御部100の排出制御手段144によって制御された排出ポンプ44である吸気ポンプは、内部が密閉空間である廃液吸引タンク16から、吸気流路39Aを通じて内部の空気を吸引し、それによって陰圧になった第2廃液管38が、廃液貯留部37に貯留した廃液75を吸引する。
【0065】
なお、廃液吸引タンク16に貯留した廃液75は、廃液ポンプ43により吸液流路39Bを通じて吸引され、排出流路39Cを通じて分析装置10の外部へ排出される。
【0066】
ここで、フローセル20において、制御部100の測定制御手段111に制御された測定手段11によって検体70の測定が行われている際に、第2廃液管38が足で踏まれたり、あるいは排出ポンプ44や廃液ポンプ43が作動したりして、第2廃液管38の内部で圧力変動が生じたとしても、第2廃液管38は第1廃液管36とは断絶しているため、圧力変動は第1廃液管36からフローセル20へ伝達されることはない。また、廃液貯留部37に貯留された廃液75は、第1廃液管36の端縁36Aに達していないため、物理的衝撃が廃液75を通じてフローセル20へ伝達されることはない。
【0067】
また、上述のように排出ポンプ44や廃液ポンプ43が作動しても、物理的衝撃や圧力変動はフローセル20へ伝達されない。そのため、
図7のフローチャートに示すように、フローセル20において、制御部100の測定制御手段111によって実施される測定工程S100において検体70の測定中であっても、フローセル20は廃液貯留部37から下流で生じた圧力変動の影響を受けることなく、同時に、排出制御手段144によって実施される排出工程S200において廃液貯留部37に貯留した廃液75を廃液吸引タンク16に排出し、さらに排出流路39Cを通じて分析装置10の外部に排出できる。これにより、廃液75を廃液貯留部37から廃液貯留部37の外部に排出することを完了させるまでの時間を短縮できる。
【0068】
さらに、第1廃液管36の配管抵抗(L1/D1)は、管とみなした排気開口37Aの配管抵抗(L2/D2)より大きいため、第2廃液管38に生じた圧力変動は、第1廃液管36に伝わるよりも、排気開口37Aを通じて大気へ逃がされることになる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、フローセルを用いた分析装置における廃液流路構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 分析装置 11 測定手段 15 光源
16 廃液吸引タンク
20 フローセル 21 シース液流路
22 検体流路 22A 検体開口
23 合流路 23A 廃液開口
36 第1廃液管 36A 端縁 37 廃液貯留部
37A 排気開口 38 第2廃液管 38A 端縁
39A 吸気流路 39B 吸液流路 39C 排出流路
40 流入ポンプ 43 廃液ポンプ 44 排出ポンプ
70 検体 75 廃液