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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】集塵システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/02 20060101AFI20221017BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20221017BHJP
   B04C 5/103 20060101ALI20221017BHJP
   B04C 7/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B01D47/02 B
B04C5/04
B04C5/103
B04C7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019110950
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203233
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390032469
【氏名又は名称】株式会社小泉
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【弁護士】
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】長坂 紘司
(72)【発明者】
【氏名】長坂 剛
(72)【発明者】
【氏名】岸 廣勝
(72)【発明者】
【氏名】村井 寧
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-253734(JP,A)
【文献】特開2005-152768(JP,A)
【文献】特開2019-130437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 47/00-47/18,50/00
B04C 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引装置の吸引力によって、吸引口から粉塵を吸引する集塵システムであって、
前記吸引口側から前記吸引装置側への経路において、
前記吸引口から吸引された粉塵を回収するサイクロン型遠心分離装置と、
内部に貯水を有する回収槽、及び、硬質材料製フィルターを備えた微細バブル発生装置を備えた微粉塵回収部とが順に設けられ、
前記サイクロン型遠心分離装置の出口管部から延びる管路は、前記回収槽内の前記貯水の水位よりも低い位置に配置された入口管部に接続され、
前記硬質材料製フィルターは、ステンレス鋼製の束子を1つ又は複数含み、
前記微細バブル発生装置は、前記吸引口側から前記吸引装置側へ向かう方向において、第1繊維製フィルターと、前記第1繊維製フィルターと同一の構成の第2繊維製フィルターとで前記硬質材料製フィルターを挟む構成とし、これらのフィルターのうち、前記吸引口側の前記第1繊維製フィルターが前記回収槽の前記貯水側に配置され、
前記回収槽では、前記吸引力によって、前記管路を通じて、前記サイクロン型遠心分離装置から前記貯水内へ空気が流入するとともに、前記サイクロン型遠心分離装置で回収されなかった微粉塵が吸引されて前記貯水に流入して、前記微粉塵を内包したバブルが発生し、
前記回収槽で発生した前記バブルは前記第1繊維製フィルターで細分され、前記硬質材料製フィルターにおいて前記第1繊維製フィルターで細分された前記バブル対して微細化が行われることを特徴とする集塵システム。
【請求項2】
前記硬質材料製フィルター、前記第1繊維製フィルター、及び、前記第2繊維製フィルターは、前記バブルの流入が可能な保持部に保持され、前記保持部を前記回収槽内の所定位置に配置することにより前記第1繊維製フィルターまでが前記貯水に浸かる請求項1に記載の集塵システム。
【請求項3】
前記1つ又は複数の束子は、前記保持部内において前記第1繊維製フィルターと前記第2繊維製フィルターとの間に充填される請求項2に記載の集塵システム。
【請求項4】
前記第1繊維製フィルターと前記第2繊維製フィルターは、撥水性を有する合成繊維で構成される請求項3に記載の集塵システム。
【請求項5】
前記合成繊維はポリ塩化ビニリデン系繊維を含む請求項4に記載の集塵システム。
【請求項6】
前記吸引装置の排気側には、微粉塵を回収するフィルター部が設けられている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の集塵システム。
【請求項7】
前記フィルター部は、HEPAフィルター又はHEPAフィルターに準じた第2フィルターと、前記第2フィルターよりも前記吸引装置側に配置された第1フィルターとを備える請求項6に記載の集塵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵を回収する集塵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロン(粉末分離機)による乾式集塵法は、簡便な方法として広く知られている。例えば、特許文献1に記載のサイクロン分離装置では、上昇気流による粉塵の流出を防ぐため、円盤形状遮蔽部材を配置して、できるだけ集積室に粉塵を留める工夫をしている。
【0003】
しかし、それでも全ての粉塵を集積室内にとどめることは難しく、HEPAフィルターによる集塵に頼らざるを得えない。しかし、アスベストなどのように針状の粉体については、HEPAフィルターの目を潜り抜けるおそれがあるため、粉塵を水で湿らせて粉塵汚泥にし、乾式集塵法より粉塵の舞い上がりによる流出を抑えることができる湿式集塵法が、集塵には有効な方法と考えられる。
【0004】
湿式集塵法の例として、例えば特許文献2に記載の湿式集塵機では、粉塵に散水することが、その回収に対して有効であると示されている。また、特許文献3に記載の粉塵の除去方法では、給散水をサイクロン部前にあるミストルームで行っている。さらにまた、特許文献4に記載の集塵システムでは、吸引口側から吸引装置側への経路において順に、サイクロン型遠心分離装置と、水噴霧部と、粉塵汚泥回収部と、フィルター部とが配置されており、水噴霧部において水の噴霧によって粉塵を泥化している。
【0005】
特許文献2における除去方法では、水平に飛び散る粉塵をブロワによって、サイクロン部へ移行回収し、さらに回収できなかった粉塵を噴霧散水後、上昇気流に乗せて気液分離部を経て回収させたりしている。または、特許文献3における除去方法では、噴霧散水後、粉塵汚泥としてミストルーム下部の排水口に移行させたりして、粉塵を除去するとしている。
【0006】
特許文献4における除去方法では、水噴霧部において泥化された粉塵を粉塵汚泥回収部で回収する。また、吸引装置の手前にフィルター部を配置することによって、粉塵によって吸引装置が汚染されることを防止している。
【0007】
また、特許文献5に記載の集塵装置では、サイクロンやフィルターによって集塵された粉塵を加水後、練成機にて作成された粉塵練成物を廃棄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5031807号公報
【文献】特許第5317953号公報
【文献】特許第5413762号公報
【文献】特願2018-012467
【文献】特許第3697698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の湿式集塵機では、粉塵汚泥によって、気液分離部のメッシュが詰まりやすくなるという問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載の粉塵の除去方法では、粉塵汚泥の一部がミストルームや回転槽に付着するなどして、粉塵汚泥の全てがサイクロン部やミストルーム下部の排水口へ移行されないなどの問題がある。
【0011】
さらに、特許文献5に記載の集塵装置では、粉塵の性状に合わせて、練成に適したエアー圧や水量を繊細に調整しなければならないため、常時一定性状の練成物を作成することは難しい。また、このような機能を備えることは装置を大型化することにつながり、狭所や高所では装置を動かし難いという問題がある。
【0012】
特許文献4に記載の集塵システムでは、粉塵の泥化のために継続して水を供給する必要があるため、水の使用量が多大となり、また、粉塵を含む汚泥の回収量が増大したり、泥化のために粉塵の回収経路や噴出口が詰まりやすくなっていた。このため、集塵作業を行うことができる場所が限定されてしまったり、作業ができる現場であっても、集塵作業の利便性が低くなってしまうという問題があった。
【0013】
以上のように、湿式集塵法においては、粉塵汚泥によるフィルター、メッシュ、及び、排水口等の詰まりや付着が生じやすく、頻繁なフィルター交換を強いられること、相当量の水が必要となること、及び、噴出口などの詰まりなどのため、作業準備や管理に関わる作業効率や経済性が有意でなくなる。
【0014】
また、装置が大型となって常設型や車体ユニット型となるため、可動性を欠くとともに、作業現場まで装置を移動させることが難しくなる。さらに、狭い現場に搬入することも困難である。また、装置自体も複雑化し、高額になってしまうことが多い。加えて、大型であるために設置場所が限定されることから、作業現場から集塵装置まで長くて太い配管を相当距離に渡って引き回して集塵しなければならないこともある。よって、集塵作業の効率が悪くなるとともに、洗浄や部品交換等の補修作業も簡便に行うことが難しくなる。ついては、大型化された、あるいは常設された集塵装置は、作業経済性をみても比較的大規模な現場にしか対応できず、小規模の現場には対応できないため、このような大型集塵装置を導入できない小規模の現場では、粉塵の回収を十分に行うことができず、そこで働く作業員の健康に関して重大な問題が生じるおそれがある。
【0015】
一方、特許文献4の集塵システムでは、吸引装置の手前にフィルター部を配置することによって、粉塵によって吸引装置が汚染されることを防止している。この配置においては、フィルター部のフィルターに多量の粉塵が吸着する場合があり、このような状態で吸引を継続すると、フィルターにかかる空気抵抗が大きくなり、フィルターが破裂又は破損してしまう可能性があり、作業性の低下や、保守点検・管理の複雑化を招くおそれがある。
【0016】
そこで本発明は、小型軽量化、作業操作性の改善、及び、保守点検・管理の簡便化を図ることができる集塵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の集塵システムは、吸引装置の吸引力によって、吸引口から粉塵を吸引する集塵システムであって、吸引口側から吸引装置側への経路において、吸引口から吸引された粉塵を回収するサイクロン型遠心分離装置と、内部に貯水を有する回収槽、及び、硬質材料製フィルターを備えた微細バブル発生装置を備えた微粉塵回収部とが順に設けられ、回収槽では、サイクロン型遠心分離装置で回収されなかった微粉塵が、吸引力によって吸引され、貯水に流入してバブルが発生し、微細バブル発生装置は、吸引力によって、バブル及びこれに内包された微粉塵を吸引し、上記微細バブル発生装置内の硬質材料製フィルターは、吸引したバブルを微細化することが可能な密度と量を有することを特徴としている。
【0018】
本発明の集塵システムにおいて、微細バブル発生装置は、回収槽で発生したバブルを細分する第1繊維製フィルターを備え、硬質材料製フィルターでは、第1繊維製フィルターで細分されたバブルに対して微細化が行われることが好ましい。
【0019】
本発明の集塵システムにおいて、微細バブル発生装置は、吸引口側から吸引装置側へ向かう方向において、第1繊維製フィルターと、第1繊維製フィルターと同一の構成の第2繊維製フィルターとで硬質材料製フィルターを挟む構成とし、これらのフィルターのうち、吸引口側の第1繊維製フィルターまでが回収槽の貯水に浸かるように配置されることが好ましい。
【0020】
本発明の集塵システムにおいて、硬質材料製フィルター、第1繊維製フィルター、及び、第2繊維製フィルターは、バブルの流入が可能な保持部に保持され、保持部を回収槽内の所定位置に配置することにより第1繊維製フィルターまでが貯水に浸かることが好ましい。
【0021】
本発明の集塵システムにおいて、硬質材料製フィルターは、ステンレス鋼製の束子を1つ又は複数含み、この1つ又は複数の束子は、保持部内において第1繊維製フィルターと第2繊維製フィルターとの間に充填されることが好ましい。
【0022】
本発明の集塵システムにおいて、第1繊維製フィルターと第2繊維製フィルターは、撥水性を有する合成繊維で構成されることが好ましい。
【0023】
本発明の集塵システムにおいて、上記合成繊維はポリ塩化ビニリデン系繊維を含むことが好ましい。
【0024】
本発明の集塵システムにおいて、吸引装置の排気側には、微粉塵を回収するフィルター部が設けられていることが好ましい。
【0025】
本発明の集塵システムにおいて、フィルター部は、HEPAフィルター又はHEPAフィルターに準じた第2フィルターと、第2フィルターよりも吸引装置側に配置された第1フィルターとを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、小型軽量化、作業操作性の改善、及び、保守点検・管理の簡便化を図ることができる集塵システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る集塵システムの概略構成を示す図、(b)は吸引装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態におけるサイクロン型遠心分離装置の概略構成を示す、図3のA-A’線における断面図である。
図3】本発明の実施形態におけるサイクロン型遠心分離装置の内部の概略構成を側方から見た図である。
図4】本発明の別の実施形態におけるサイクロン型遠心分離装置の概略構成を示す、図5のB-B’線における断面図である。
図5】本発明の別の実施形態におけるサイクロン型遠心分離装置の内部の概略構成を側方から見た図である。
図6】(a)は微細バブル発生装置が回収槽内に収容された状態を示す図、(b)は微細バブル発生装置を回収槽から分離した状態を示す図である。
図7】微粉塵回収部の構成を変更した、実施例1と実施例2、及び、比較例において、サイクロン型遠心分離装置、微粉塵回収部、及び、フィルター部で回収された粉塵量を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る集塵システムについて図面を参照しつつ詳しく説明する。図1(a)は、本実施形態の集塵システム10の概略構成を示す図、図1(b)は吸引装置20の概略構成を示すブロック図、図2は、サイクロン型遠心分離装置30の概略構成を示す、図3のA-A’線における断面図、図3は、サイクロン型遠心分離装置30の内部の概略構成を側方から見た図である。図4は、別の実施形態におけるサイクロン型遠心分離装置130の概略構成を示す、図5のB-B’線における断面図、図5は、図4に示すサイクロン型遠心分離装置130の内部の概略構成を側方から見た図である。図4図5においては、図2図3に示す部材や方向等と共通する部材や方向等については、同一の参照符号を付している。
【0029】
図6(a)、(b)は、微粉塵回収部40の内部の概略構成を側方から見た図であって、(a)は微細バブル発生装置50が回収槽41内に収容された状態を示す図、(b)は微細バブル発生装置50を回収槽41から分離した状態を示す図である。各図においては、吸引口11から吸引された粉塵の流れを矢印によって概略的に示している。
【0030】
<全体構成・概要>
図1に示す本実施形態の集塵システム10は、吸引装置20の吸引力によって、吸引口11から粉塵を吸引する集塵システムである。吸引口11側から吸引装置20側への管路(経路)12において、サイクロン型遠心分離装置30と、微粉塵回収部40とが順に設けられ、さらに、吸引装置20の排気側にはフィルター部60が配置されている。
【0031】
集塵システム10は、簡易な手法で広く用いられている乾式集塵法と、乾式集塵法で集塵できない粉塵を水によって湿らして集塵する湿式集塵法とを併用し、両者の優れた点を最大限利用する。すなわち、グラインダー等で発生する粉塵等を吸引口11から吸引し、サイクロン型遠心分離装置30で回収する(乾式集塵法)とともに、サイクロン型遠心分離装置30で回収しきれなかった粉塵等を回収槽41の貯水42(図6(a)、(b)参照)中に流入させて粉塵汚泥として回収する(湿式集塵法)ものである。
以下、集塵システム10を構成する装置等のそれぞれについて説明する。
【0032】
<吸引装置20>
吸引装置20は、吸引口11から吸引された粉塵を、管路(経路)12で順に接続された、サイクロン型遠心分離装置30及び微粉塵回収部40を通じて吸引する吸引力とフィルター部60を通じて排気する排出力を備えた装置である。吸引装置20としては、モータを単基または複数基備え、例えば、図1(b)に示すように、第1モータ21と、第2モータ22と、第3モータ33とを3基直並列に繋いだ装備で構成する。具体的には、微粉塵回収部40側に第1モータ21を配置して、この第1モータ21の排気側に、第2モータ22と第3モータ23を互いに並列となるように配置し、第2モータ22と第3モータ23の排気側にフィルター部60を配置する。これらのモータとしては、例えば、AMETEK社製モータ116119-00(型番)や同社製119785-00(型番)をそれぞれ用いる。これら3基のモータを同時に駆動することによって、管路12内の真空度を高めて、吸引口11における吸引性を高めることができ、また、管路12、サイクロン型遠心分離装置30、及び微粉塵回収部40の吸引やフィルター部60の排気における風量を大きくすることができる。この構成では、吸引装置20の電源として100Vと200Vのいずれかの電圧が使用できる。一般に200V仕様の方が吸引風量は大きくなるため、例えば、吸引ホース15mを4本以上接続し、ホースの長さが30m以上になるような配置や端末5mを2~4本に分岐した配置でも、粉塵を吸収回収することができる。
【0033】
また、吸引装置20としては、上記構成のほか、クリンテック小泉社製のCKバキューム装置(吸引力4663mm/Aq(0.046MPa)、排気風量 6m/分、平地で約60m吸引可能)のような1個の吸引装置を接続して用いても良いし、又は、その能力に準ずる、あるいはその能力以上の性能を有する吸引力があるバキュームモーター等を用いても良い。例えば、直列にバキュームモーターを配列すると、真空度は増すため、このような配列にして用いても良い。
【0034】
<サイクロン型遠心分離装置30>
集塵システム10では、図2図3に例示する構成のサイクロン型遠心分離装置30を用いるが、この分離装置は2つ以上用いても良い。また、図2図3に例示するサイクロン型遠心分離装置30以外の構成のサイクロン型遠心分離装置、例えば図4図5に示すサイクロン型遠心分離装置130を用いることもできる。
【0035】
図2図3に示すように、吸引口11から吸引された粉塵は、管路(経路)12に連なる入口管部12aからサイクロン型遠心分離装置30の内部へ導入される。サイクロン型遠心分離装置30内に導入された粉塵は、小型サイクロン33aにおける第4空間35d内で中心軸AXの周りを一定方向(方向D4)に沿って回る旋回流となる。これは、図4図5に示すサイクロン型遠心分離装置130においても同様である。
【0036】
図2図3に示すサイクロン型遠心分離装置30においては、サイクロン入口33bから小型サイクロン33a内へ導かれた粉塵は、小型サイクロン33aの内部の第4空間35dにおいて中心軸AXの周りを高速で旋回する(図2図3の方向D4)。第4空間35d内で高速旋回する粉塵のうち、重量の大きなものは、第4空間35dの下方に位置する第5空間35e内へ落下する(図3の方向D5)。なお、サイクロン型遠心分離装置30は小型サイクロン33aを複数個備えてもよい。
【0037】
これに対して、図4図5に示すサイクロン型遠心分離装置130においては、図2図3に示すサイクロン型遠心分離装置30から隔壁34aを除く一方で、略円筒形の隔壁34bを設けて、第5空間35eと第2空間35bとを分けている。また、サイクロン型遠心分離装置130の外筒31の内側には、小型サイクロン33aが備えられた内筒32が設けられている。この場合、始めに方向D1に沿って回る粉塵のうち、重量が大きいものは、第1空間35aの下方の第2空間35bへ落下し、(図5の方向D2)、より細かい微粉塵のみが、第3空間35cを通って小型サイクロン33a内に導かれる(図5の方向D3)。そして、その微粉塵のうち、重量が大きなものが第5空間35e内に落下する(図5の方向D5)。
【0038】
図3に示すサイクロン型遠心分離装置30や図5に示すサイクロン型遠心分離装置130は、シールパッキン37が付設され、底壁36は、その端部に設けたヒンジ38によって回動可能とされており、手動のトグルクランプによって開閉可能となっており、その下方には、バケツやビニール袋などの回収容器等が配置されている。したがって、第5空間35e内に落下・堆積した粉塵は、底壁36を開いて回収容器等内へ落下させることによって、簡便に回収することができる。一方、図5に示すサイクロン型遠心分離装置130では、第2空間35bと第5空間35e内に落下・堆積した粉塵は、底壁36を開いて回収容器等内へ落下させることによって、簡便に回収することができる。
【0039】
また、集積された粉塵が周囲に飛び散らないように、ビニール袋等で、外筒31の外周面を含むサイクロン型遠心分離装置30やサイクロン型遠心分離装置130の下部を囲うことが好ましい。さらにまた、底壁36の下部にホース等を連結させ、粉塵を回収するようにしても良い。
【0040】
一方、第4空間35d内で高速旋回する微粉塵のうち、重量の小さな微粉塵は、第4空間35dの上部から上方へ延びる出口管部12bから、サイクロン型遠心分離装置30やサイクロン型遠心分離装置130の外部へ排出される(図2図3図4図5の方向D6)。上記出口管部12bは管路(経路)12に連なっている。
【0041】
ここで、サイクロン型遠心分離装置30やサイクロン型遠心分離装置130に設けられた小型サイクロン33aは、金属の平板の曲げ加工によって製造されている。このため、従来のような溶接による製造と比べて、小型化や軽量化を図ることができる。また、接続箇所を減らすことができるため、このような箇所で生じやすい、流体に対する抵抗を大幅に削減できることから、サイクロン内の高速旋回を効率的に発生させることが可能となることで、粉塵の旋回や進行を妨げることがなく、回収効率を高めることができる。また、プラスチックを用いる場合よりも高い耐久性を得ることができる。サイクロン型遠心分離装置30のサイズとしては、例えば、直径90mm、長さ370mm程度とすることができ、耐久性の高いサイクロン型遠心分離装置を製造することができる。
【0042】
<微粉塵回収部40>
吸引口11から吸引された粉塵は、乾式集塵法であるサイクロン型遠心分離装置30によって、その99%以上を回収することができる。しかし、すべての粉塵を捕集することは難しい。そこで、捕集できなかった微粉塵を、サイクロン型遠心分離装置30の下流に配置された微粉塵回収部40において回収する。微粉塵回収部40においてより多く回収できるようにするため、回収槽41と微細バブル発生装置50を設けており、回収槽41内の貯水42で微粉塵を内包したバブルを発生させ、そのバブルを微細バブル発生装置50で微細化している。微粉塵回収部40の出口管部12dは吸引装置20の入口管部20aに接続されている。微粉塵回収部40を設けることで、管路(経路)12を通じて流れてきた微粉塵が吸引装置20に流入する量を低減させることができ、これにより、吸引装置20の故障を未然に防ぐことができる。さらに、吸引装置20から排出される排気に含有される微粉塵を削減する効果も有する。
【0043】
図1(a)に示すように、サイクロン型遠心分離装置30の出口管部12bから延びる管路(経路)12は、下側へ折り曲げられ、微粉塵回収部40の回収槽41の下方に位置する入口管部12cに接続される。
【0044】
図6(b)に示すように、回収槽41は、円形底面を有する中空の缶状をなしており、内部に貯水42を貯えている。この貯水42は、微細バブル発生装置50を内部に収容していない状態で、予め貯えられ、常圧状態で回収槽41の下部から排水することができる。貯水42の水量は、回収槽41内に微細バブル発生装置50を収容したときに、第1繊維製フィルター52までが浸かるような水位L1とすることが好ましい。すなわち、回収槽41内に微細バブル発生装置50を収容したときに、内部に収容された第1繊維製フィルター52は貯水42に浸かり、第1繊維製フィルター52よりも上側の硬質材料製フィルター53と第2繊維製フィルター54は貯水42に浸からない状態となる。別言すると、保持部51は、第1繊維製フィルター52までが貯水42に浸かるような、回収槽41内の所定位置に配置されている。このような配置により、硬質材料製フィルター53が水に浸かっていないため、貯水42で発生したバブルが硬質材料製フィルター53の網目で微細化され易くなる。
【0045】
なお、貯水42の水量は、硬質材料製フィルター53の一部が浸かるような、上記水位L1よりも上側の水位としてもよい。この場合は、回収槽41の容量を大きくして、水位より上側に位置する硬質材料製フィルター53の量を一定量確保するとよい。
また、第1繊維製フィルター52が浸からない、又は、第1繊維製フィルター52の一部が浸かるような、上記水位L1よりも下側の水位としてもよい。
【0046】
回収槽41内において、入口管部12cに対応する高さ位置にネット43が配置されている。入口管部12cは水位L1よりも低い位置に配置され、回収槽41の側壁を厚み方向に貫通する貫通孔44を通じて、貯水42へと通じている。ネット43は、耐水性と耐久性を備えた材料、例えばナイロンで構成し、一定以上の大きさの微粉塵を回収可能な網目、例えば0.5mmを有する。ネット43は、貯水42が貯えられたときに貯水42中に位置し、入口管部12cから流入する微粉塵はネット43を通って貯水42内へ広がる。
【0047】
入口管部12cから貯水42内へ流入する微粉塵は、吸引装置20の吸引力によって、サイクロン型遠心分離装置30で回収されなかった微粉塵が管路12を経て移動してきたものであり、上記吸引力によって貯水42内で発生するバブルに内包されるように、貯水42内へ流入する。貯水42中において、入口管部12cに対応する位置にネット43を設けているため、万一、サイクロン型遠心分離装置30で捕集できなかった粒径が大きい粉塵の捕集や、上記バブルがより大きく細分され易くなっている。
【0048】
微細バブル発生装置50は、回収槽41に対応した大きさの円形底面を有するカゴ状の保持部51を備え、保持部51内には、第1繊維製フィルター52、硬質材料製フィルター53、及び、第2繊維製フィルター54を保持可能である。保持部51は、水の出入りが可能な網目を有し、耐水性と微粉塵に対する耐久性を備えた材料、例えば、ステンレス鋼や、耐水加工した金属で構成される。保持部51内には、下側から上側へ順に、第1繊維製フィルター52と、硬質材料製フィルター53と、第2繊維製フィルター54とが配置されている。第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54は互いに略平行となるように上下に配置され、これらの間の空間に硬質材料製フィルター53が配置される。
【0049】
第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54は、同一の構成であって、保持部51の平面形状(上下方向に沿って上から見た形状)に合わせた平面形状、例えば円形、の底面を有する板状をなしている。このような繊維製フィルターとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン系繊維を含む、撥水性を有する合成繊維が挙げられる。より具体的には、東洋クッション株式会社製のサランロック(商標)のOM-150(型番)が好ましい。OM-150は、ポリ塩化ビニリデン系繊維であるサラン(商標)を不織布状に加工し、ラテックスで被覆結合したものであり、厚み10~50mm、サラン(商標)繊維の繊度600~1000デニール、目付1.1~3.3kg/m、サランとラテックスの嵩密度65~113kg/m、比表面積360~620m/m、空間率93~96(%)である。ここで、長さ450m、重さ50mgの糸の太さを1デニールとしている。
【0050】
第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54としては、天然素材の繊維製フィルターや、有機化合物や無機化合物を繊維状としたフィルターを用いることもできる。天然素材としては、例えば天然の棕櫚の皮が挙げられ、株式会社タカショーが販売する「しゅろ皮」(製品名)や、株式会社大創産業が販売する「パームマット」(製品名)を用いられる。一方、プラスチック多孔質フィルター板として、例えば、アズワン株式会社が販売するポリプロピレン製フィルター板(製品名)(孔径(ろ過径)70μm、100μm、150μm、200μm、300μm、400μm)や、ポリエチレン製フィルター板(製品名)(硬質タイプ、孔径(ろ過径)20μm)(軟質タイプ、孔径(ろ過径)100μm、150μm、200μm、300μm)を保持部51の平面形状に合わせて使用することもできる。
【0051】
吸引装置20の吸引力が及んでいる状態で、第1繊維製フィルター52を貯水42中に浸漬させると、貯水42内のバブルは第1繊維製フィルター52の網目によって細分され、一部は硬質材料製フィルター53側へ移動し、残りは貯水42内へ溶解する。繊維製フィルターに撥水性を持たせると、硬質材料製フィルター53側へ貯水42の水分やバブルが移動し易くなるため、硬質材料製フィルター53においてバブルを効率良く微細化させることができる。また、第1繊維製フィルター52、硬質材料製フィルター53、及び第2繊維製フィルター54で、細分されたバブルは貯水42へもどり易く、貯水42において微粉塵の回収効率が高まるようなフィルターの配置が好ましい。このように微粉塵の回収効率を高めるために、第2繊維製フィルター54の材質を保水性がある天然素材、例えば、上記ジュロマットを使用した場合、貯水42に回収されなかった微粉塵は、その保水性によって、第2繊維フィルターでも回収されやすくなる。
【0052】
硬質材料製フィルター53は、貯水42内で生じ、吸引装置20の吸引力によって第1繊維製フィルター52を通過したバブルを微細化可能な密度と量を有する(例えば図7における実施例1、2参照)。硬質材料製フィルター53の材質としては、耐水性と微粉塵に対する耐久性の点から、金属や硬質プラスチックを用いることが好ましい。硬質材料は、微粉塵に対する十分な耐久性を実現可能な硬さを有する材料である。硬質材料として金属を用いる場合は、例えば、マルテンサイト系、オーステナイト系、又は、フェライト系のステンレス鋼が好ましい。硬質材料製フィルター53は、1つ又は複数のフィルターを含むように構成でき、例えば、家庭用のステンレス鋼製の束子(たわし)は、第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54との間の空間に対して、隙間を埋めるように順に落とし込むようにして、バブルを微細化可能な密度と量を有して充填することが好ましい。なお、束子のような細線状の構成のほか、球状にした金属を複数保持部51内に充填させた形態も可能である。
【0053】
家庭用の束子としては、例えば、株式会社大創産業が販売するステンレスたわし(25g)、早川工業株式会社製のステンレスたわし(40g又は60g)、株式会社エスコ製のステンレスたわし(93mm×35mm、62g)、石浜金物工業株式会社製のステンレスたわし(70mm×40mm、30g、又は、80mm×60mm、60g)を用いることができ、保持部51内の第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54との間の空間形状に合わせて適宜組み合わせるとよい。
なお、このように束子を用いた硬質材料製フィルターと同様の密度と量であれば、家庭用の束子に限定されることなく、金属をメッシュ状に形成した単体、又は、数個に分けたフィルター構成も可能である。
【0054】
硬質材料製フィルターにおける金属の密度としては、集塵システムとして要求される微粉塵の回収性能や、回収の対象物が微粉塵となったときのサイズ、吸引装置20に用いるモータの性能などに応じて適宜設定できる。下記の実施例1、2では0.1g/cmを一例として挙げているがこれに限定されない。
【0055】
硬質材料として用いる硬質プラスチックとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの芳香族ポリエーテルケトン、ナイロンなどのポリアミド樹脂を用いることができる。これらは、バブルを効率良く微細化することができるように、上記束子のように細線状にしたものや、球状にしたものを保持部51内に複数充填させる形態や、上記微細化に適した所定の径孔(例えば0.5mm以下)を有する板状などが可能である。
【0056】
回収槽41の底面には、開閉自在な排水口(不図示)が設けられており、排水口を開くことによって、貯水42を簡便かつ確実に排出することができる。排水口にはバルブを介してホース等を連結させることが好ましい。
【0057】
微細バブル発生装置50には、出口管部12dの直下に合致するように遮蔽板55を設けている。これにより、第1繊維製フィルター52、硬質材料製フィルター53、及び、第2繊維製フィルター54で回収できなかった微粉塵や、微粉塵が含有される貯水42が出口管部12dに向かうことを妨げることができるため、出口管部12dを経て吸引装置20へ流れる微粉塵の量を減らすことができる。
【0058】
なお、サイクロン型遠心分離装置30で捕集できなかった微粉塵を、微粉塵回収部40において十分に回収することができれば、微粉塵回収部40に設けるフィルターとしては、繊維製フィルターを設けずに、硬質材料製フィルターのみとしてもよい。また、繊維製フィルターを設ける場合にも、その枚数は限定されず、2枚以上設ける場合の配置についても、硬質材料製フィルターを挟み込む以外の配置であってもよい。
【0059】
また、保持部51は、内部にフィルターを収容するカゴ状の形態に限定されず、フィルターを保持できればカゴ状部材以外の形態にすることも可能である。
【0060】
<フィルター部60>
フィルター部60は、吸引装置20の出口管部20bに接続されており、吸引装置20側から順に、第1フィルター61と第2フィルター62とが配置されている。これにより、吸引装置20からの排気を清浄化し、微粉塵回収部40までの工程で集塵されなかった微粉塵を収集する。
【0061】
第1フィルター61はプレフィルターであり、紙製、不織布製等のフィルターを用いることができる。第2フィルター62は、交換可能なHEPAフィルター又はHEPAフィルターに準じたフィルターである。第1フィルター61と第2フィルター62は、吸引装置20から排出される微粉塵を回収でき、吸引装置20からの排出ガスの風量や気圧に耐えうる構成・材質で形成されている。
【0062】
第1フィルター61に用いるプレフィルターは、パネルフィルターを用いることができ、例えば、エアプロダクツ株式会社製のAPパネルフィルターが挙げられる。このパネルフィルターの主な仕様は次の通りである。
捕集効率:82%(重量法)
初期圧損:95Pa以下
定格風量:40m/min
ろ材:不織布
枠:アルミニウム
【0063】
第2フィルター62に用いる、HEPAフィルター及びHEPAフィルターに準じたフィルターは、平板状で、かつ、微粉塵の捕集が多くなるように表面積が多くなるように、例えばジャバラ状の形状を有しており、真空圧や風量に耐えうるように製造されている。このようなHEPAフィルターとしては、例えば、エアプロダクツ株式会社製のミニプリーツ型ヘパフィルターを用いることができる。このヘパフィルターの主な仕様は次の通りである。
捕集効率:粒径0.3μmの試験粒子に対して99.99%以上
初期圧損:250Pa以下
定格風量:12m/min
ろ材:ガラス繊維製ろ紙
枠:アルミニウム
また、HEPAフィルターに準じたフィルターとして、例えばエアプロダクツ株式会社製のAPMM90-K-Aのような中性能フィルターを用いても良い。
【0064】
また、フィルター部60のハウジングは、網を排気面に有するステンレス製で、その網は簡単に取り外すことができ、よって第1フィルター61や第2フィルター62が簡単に交換できる構造になっている。
【0065】
<実施例>
以下、実施例に基づいて本実施形態に関する作用効果について説明する。図7は、微粉塵回収部40の構成を変更した、実施例1と実施例2、及び、比較例において、サイクロン型遠心分離装置30、微粉塵回収部40、及び、フィルター部60で回収された粉塵量を示す表である。
【0066】
<実施例1、2と比較例における全体構成>
実施例1と実施例2、及び、比較例は、上記実施形態と同様に、以下の構成としている。
吸引口11→サイクロン型遠心分離装置30→微粉塵回収部40→吸引装置20→フィルター部60
【0067】
図7に示す各構成における、共通の装置・部材・条件等は次の通りである。
吸引装置20:モータ3機直並列搭載パワーユニット(図1(b))であり、モータとしてAMETEK社製モータ116119-00を3基使用した。なお、本機は吸引ホースの長さや、求められる吸引性能等に応じて100V又は200Vで駆動することができるが、ここでは100Vを用いた。
吸引する粉塵:コンクリート粉、2kg
吸引時間:10分
吸引口(吸引ホース):内径38mm、長さ5m
小型サイクロン:2基
【0068】
微粉塵回収部40の共通の構成
保持部51:高さ200mm×直径190mmの円筒形、ステンレス鋼製
回収槽41:高さ583mm×直径215mmの中空の柱体、ステンレス鋼製
貯水42の量(初期量):6リットル、保持部51内の液面高さ215mm
ネット43:0.5mmメッシュ、ナイロン製
第1繊維製フィルター52及び第2繊維製フィルター54:東洋クッション株式会社製のサランロック(商標)のOM-150(型番)
第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54の間隔:130mm(実施例1)、65mm(実施例2)
硬質材料製フィルター53の密度:0.1g/cm
遮蔽板55:ステンレス鋼(本体)、ゴム(回収槽41の内面への接着部)製
【0069】
<実施例1、2と比較例における、硬質材料製フィルター及び繊維製フィルターの設置構成>
(1)実施例1
硬質材料製フィルター53:大創産業社が販売する「ステンレスたわし」(商品名)25gを、第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54の間に16個充填し、合計400g用いた。
繊維製フィルターは、図1図6(a)、(b)に示すように、第1繊維製フィルター52と第2繊維製フィルター54の2枚構成とした。
【0070】
(2)実施例2
保持部51内において、硬質材料製フィルター53として、実施例1と同様の「ステンレスたわし」(商品名)25gを、第2繊維製フィルター54と、第1繊維製フィルター52との間に8個充填し、合計200g用いた。さらに、第2繊維製フィルター54の上には第3繊維製フィルターを配置した。よって、ここでは繊維製フィルターを全部で3枚用いた。第3繊維製フィルターは、実施例1で用いた第1及び第2繊維製フィルターと同様のものとした。
ここで、実施例1と実施例2を比較すると、繊維製フィルターを3枚とした実施例2に対して、実施例1では繊維製フィルターを1枚少ない2枚としている。実施例1では、除いた1枚分の繊維製フィルターに対応するスペースに上記ステンレスたわし8個を充填した。これにより、実施例1の保持部51内においてフィルターが占める高さは、実施例2の2倍に設定された。
【0071】
(3)比較例
保持部51内において、硬質材料製フィルター53は用いず、実施例1で用いた第1及び第2繊維製フィルターと同様の繊維製フィルターを重ねて配置し、全部で4枚用いた。
【0072】
<実施例1、実施例2、及び比較例における回収の結果、作用効果>
図7に示すように、実施例1においては、サイクロン型遠心分離装置30によって、1985.7gの粉塵が回収され、回収率としては、吸引した粉塵2kgの99.29%(小数点第3位以下四捨五入、以下同様)となった。さらに、微粉塵回収部40では9.0gの微粉塵が回収され、その回収率は初期の吸引量2kgに対して0.45%であった。最後に、フィルター部60では0.1g(回収率0.01%)が回収された。
【0073】
実施例2においては、サイクロン型遠心分離装置30によって、1994.1gの粉塵が回収され、その回収率は99.71%であった。さらに、微粉塵回収部40では4.3gの微粉塵が回収され、その回収率は0.22%であった。そして、フィルター部60では0.2g(回収率0.01%)が回収された。
【0074】
比較例においては、サイクロン型遠心分離装置30によって、1991.8gの粉塵が回収され、その回収率は99.59%であった。さらに、微粉塵回収部40では4.0gの微粉塵が回収され、その回収率は0.20%であった。そして、フィルター部60では0.6g(回収率0.03%)が回収された。
【0075】
図7に示す結果における微粉塵回収部40における硬質材料製フィルター53が装備されていない比較例と、硬質材料製フィルター53が装備されている実施例1や実施例2を比較すると、所定の密度の硬質材料製フィルター53を一定量以上設けることにより、サイクロン型遠心分離装置30で回収できなかった微粉塵を回収し易くなることが分かった。これは、吸引装置20の吸引力によって、サイクロン型遠心分離装置30から貯水42内へ流入する空気が、微粉塵を内包したバブルとなり、一部の微粉塵は貯水42に溶解し、残りはバブルとして第1繊維製フィルター52側へ上昇する過程が実現され、第1繊維製フィルター52へ上昇した、微粉塵を含んだバブルは細分化され、さらに、硬質材料製フィルター53において微細化され易くなったことによるものと考えられる。また、図7の実施例1と実施例2において、微粉塵回収部40における回収量を比較すると、硬質材料製フィルター53の量が多い場合の方が少ない場合より、回収量が多くなることが分かった。これは、硬質材料製フィルター53に接触する時間が長いほど、つまり硬質材料製フィルター53の量が多いほど、微粉塵を含んだバブルは微細になり易くなると考えられる。そして、微細化されたバブルは、再び貯水42側へ落下し、微細化されたバブルに含有された微粉塵は貯水42に溶解し易くなるため、ここで確実に回収される。このようにして微粉塵回収部40で微粉塵の回収量を増やすことができることから、吸引装置20への吸気に微粉塵が混入する割合を減らすことができる。よって、吸引装置20の排気側に配置したフィルター部60のフィルターが破裂又は破損してしまうことを防ぐことができる。したがって、フィルター部におけるフィルターの交換を含むメンテナンス回数の低減や、吸引装置のモータにおける微粉塵が原因となる故障頻度が軽減できるため、機器性能の低下や保守点検・管理の複雑化を防ぐことができる。
【0076】
また、集塵システム10を構成する、サイクロン型遠心分離装置30、微粉塵回収部40、吸引装置20、及び、フィルター部60は、互いに独立したものを管路(経路)によって結合して用いているので、それぞれは簡単に取り外すことができる。このため、それぞれを取り出して簡便に保守点検や補修を行うことができる。また、各部・各装置においては、回収する粉塵(又は微粉塵)の種類などに応じた適切な仕様の装置等に置き換えたり、あるいは省いたりすることを簡単に行うことができる。さらに、各部・各装置において、小型化された装置等を用いることによって、集塵システム10全体として小型軽量化を図ることができる。これにより、小型トラックなどによって現場へ運搬することができる可動性が得られる。また、小型であるため、小規模な現場、狭所、高所の現場などのあらゆる作業現場で使用することができる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る集塵システムは、小型軽量化、作業操作性の改善、及び、保守点検・管理の簡便化を図ることができる点で有用である。
【符号の説明】
【0078】
10 集塵システム
11 吸引口
12 管路(経路)
12a、12c、20a 入口管部
12b、12d、20b 出口管部
20 吸引装置
21 第1モータ
22 第2モータ
23 第3モータ
30、130 サイクロン型遠心分離装置
31 外筒
32 内筒
33a 小型サイクロン
33b サイクロン入口
34a、34b 隔壁
35a 第1空間
35b 第2空間
35c 第3空間
35d 第4空間
35e 第5空間
36 底壁
37 シールパッキン
38 ヒンジ
40 微粉塵回収部
41 回収槽
42 貯水
43 ネット
44 貫通孔
50 微細バブル発生装置
51 保持部
52 第1繊維製フィルター
53 硬質材料製フィルター
54 第2繊維製フィルター
55 遮蔽板
60 フィルター部
61 第1フィルター
62 第2フィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7