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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20221017BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20221017BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
H02M3/155 Y
H01L25/04 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019119880
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005979
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 龍明
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148076(JP,A)
【文献】特開2018-143010(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056719(WO,A1)
【文献】特開2019-097321(JP,A)
【文献】特開2018-098270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0019094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位と前記第1電位よりも小さい第2電位との間に直列接続されたハイサイド素子とローサイド素子とを含むスイッチングレギュレータを備える電子装置であって、
前記スイッチングレギュレータは、
前記ハイサイド素子と前記ローサイド素子とを接続する第1配線部と、
前記ローサイド素子と接続され、かつ、前記第2電位が印加される第2配線部と、
を有し、
前記第1配線部と前記第2配線部とは、互いに並行する第1部位を含み、
前記スイッチングレギュレータの動作期間は、
前記ハイサイド素子をオンし、かつ、前記ローサイド素子をオフするオン期間と、
前記ハイサイド素子をオンし、かつ、前記ローサイド素子もオンする遷移期間と、
前記ハイサイド素子をオフし、かつ、前記ローサイド素子をオンするオフ期間と、
を有し、
前記遷移期間および前記オフ期間のそれぞれにおいて、前記第1部位では、前記第1配線部を流れる電流の方向と前記第2配線部を流れる電流の方向が、互いに逆方向である、電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記第1配線部と前記第2配線部は、配線基板の第1配線層に形成され、
前記配線基板は、前記第1配線層の1つ下層に位置する第2配線層を有し、
前記第1部位における前記第1配線部と前記第2配線部との間の最大間隔は、前記第1配線層と前記第2配線層との間の間隔よりも小さい、電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置において、
前記最大間隔は、0.1mm以下である、電子装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子装置において、
平面視において、前記第2配線部は、前記ハイサイド素子と交差する、電子装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子装置において、
前記スイッチングレギュレータは、
前記第1配線部と接続されたインダクタと、
前記インダクタと接続され、かつ、第3電位が印加される第3配線部と、
前記第3配線部と前記第2配線部とに接続されたコンデンサと、
を有し、
前記第2配線部は、前記インダクタと並行する第2部位を含む、電子装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子装置において、
前記インダクタは、巻線から構成され、
前記インダクタを流れる電流の向きが前記第2部位を流れる電流の向きとは逆向きとなるように前記巻線の巻方向が設定されている、電子装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電子装置において、
前記電子装置は、
前記ハイサイド素子が形成された第1半導体部品と、
前記ローサイド素子が形成された第2半導体部品と、
前記第1配線部と前記第2配線部とが形成された配線基板と、
を有する、電子装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子装置において、
前記配線基板には、前記第1電位が印加される電源配線部が形成され、
前記第1配線部は、前記電源配線部と離間して配置され、
前記第2配線部は、前記電源配線部と前記第1配線部との間を通り、かつ、前記第1部位の一部を構成する延在部と、前記延在部と接続する大面積部とを含む、電子装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置において、
前記第1半導体部品は、前記第2配線部の前記延在部を跨いで、前記電源配線部と前記第1配線部とに接続するように配置され、
前記第2半導体部品は、前記第1配線部と前記第2配線部とに接続するように配置される、電子装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電子装置において、
前記配線基板には、第3電位が印加される出力配線部が形成され、
前記電子装置は、さらに、
前記第1配線部と前記出力配線部とに接続するように配置されたインダクタと、
前記大面積部と前記出力配線部とに接続するように配置されたコンデンサと、
を有する、電子装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子装置において、
前記大面積部は、前記インダクタと並行する第2部位を含む、電子装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電子装置において、
前記第1配線部と前記第2配線部は、前記配線基板の第1配線層に形成され、
前記配線基板は、前記第1配線層の1つ下層に位置する第2配線層を有し、
前記第2部位における前記大面積部と前記第1配線部との間の最大間隔は、前記第1配線層と前記第2配線層との間の間隔よりも小さい、電子装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電子装置において、
前記第2部位における前記大面積部と前記インダクタとの間の間隔は、前記最大間隔よりも小さい、電子装置。
【請求項14】
請求項11に記載の電子装置において、
前記配線基板は、前記第1配線部と前記第2配線部と前記電源配線部と前記出力配線部とが形成された第1配線層とは異なる第2配線層に形成された他配線部を有し、
前記延在部と前記大面積部との接続領域において、前記第2配線部と前記他配線部とがビアで接続される、電子装置。
【請求項15】
請求項10に記載の電子装置において、
前記コンデンサは、複数個存在する、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関し、例えば、スイッチングレギュレータを含む電子装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-294464号公報(特許文献1)には、非絶縁型DC/DCコンバータの小型化および電圧変換効率を向上させる技術が記載されている。
【0003】
特開2018-200953号公報(特許文献2)には、電子装置の性能を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-294464号公報
【文献】特開2018-200953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、DC/DCコンバータに代表されるスイッチングレギュレータは、周期的にスイッチング動作を繰り返すことにより、所望の電圧を出力するように構成されている。
【0006】
このようにスイッチングレギュレータでは、スイッチング動作が行なわれるが、スイッチング動作では電流のオン/オフの切り替えが行なわれる。
【0007】
このことから、スイッチングレギュレータに存在する寄生インダクタンスが大きいと、スイッチング動作に起因する電流変化によって発生する高周波ノイズが大きくなる。
【0008】
この結果、スイッチングレギュレータが大きな高周波ノイズの発生源となり、周辺に配置される電子部品に悪影響を及ぼすことになる。したがって、スイッチングレギュレータから発生する高周波ノイズを低減することが望まれている。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態における電子装置は、スイッチングレギュレータを含む。このとき、スイッチングレギュレータは、ハイサイド素子とローサイド素子とを接続する第1配線部と、ローサイド素子と接続される第2配線部とを有する。そして、第1配線部と第2配線部とは、互いに並行する第1部位を含む。そして、スイッチングレギュレータの動作期間は、ハイサイド素子をオンし、かつ、ローサイド素子をオフするオン期間と、ハイサイド素子をオンし、かつ、ローサイド素子もオンする遷移期間と、ハイサイド素子をオフし、かつ、ローサイド素子をオンするオフ期間とを有する。ここで、遷移期間およびオフ期間のそれぞれにおいて、第1部位では、第1配線部を流れる電流の方向と第2配線部を流れる電流の方向が、互いに逆方向である。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、電子装置の性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電子装置の回路構成を示す図である。
図2】ハイサイドMOSトランジスタとローサイドMOSトランジスタのタイミングチャートを示す図である。
図3】関連技術における降圧型DC/DCコンバータを示す回路図である。
図4】関連技術における降圧型DC/DCコンバータの実装レイアウトを示す平面図である。
図5】実施の形態における降圧型DC/DCコンバータを示す回路図である。
図6】オン/オフ動作において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す回路図である。
図7】遷移期間において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す回路図である。
図8】オフ/オン動作において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す回路図である。
図9】実施の形態における降圧型DC/DCコンバータの構成要素である配線基板の配線レイアウトを模式的に示す平面図である。
図10】配線基板上に降圧型DC/DCコンバータの構成部品を搭載した状態を模式的に示す平面図である。
図11】オン/オフ動作において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。
図12】遷移期間において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。
図13】オフ/オン動作において降圧型DC/DCコンバータに流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。
図14】関連技術における伝導EMI特性を示すグラフである。
図15】実施の形態における伝導EMI特性を示すグラフである。
図16】関連技術における降圧型DC/DCコンバータでの負荷電流と電力変換効率との関係を示すグラフである。
図17】実施の形態における降圧型DC/DCコンバータでの負荷電流と電力変換効率との関係を示すグラフである。
図18】変形例における降圧型DC/DCコンバータの実装レイアウトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0018】
本実施の形態における技術的思想は、様々な種類のスイッチングレギュレータに幅広く適用することができる。すなわち、本実施の形態における技術的思想は、DC/DC変換方式のスイッチングレギュレータやAC/DC変換方式のスイッチングレギュレータに適用することができる。さらに、本実施の形態における技術的思想は、降圧型や昇圧型や反転型のいずれのスイッチングレギュレータにも適用することができる。
【0019】
以下では、本実施の形態における技術的思想を適用するスイッチングレギュレータの一例として、降圧型DC/DCコンバータを取り挙げて説明する。
【0020】
<DC/DCコンバータの回路構成および動作>
図1は、降圧型DC/DCコンバータCVの回路構成を示す図である。図1に示すように、降圧型DC/DCコンバータCVでは、入力端子TE1とグランド(基準電位)GNDとの間にハイサイドMOSトランジスタQHとローサイドMOSトランジスタQLが直列接続されている。そして、ハイサイドMOSトランジスタQHとローサイドMOSトランジスタQLとの間のノードNAと負荷RL側のグランドGNDとの間にインダクタLと負荷RLが直列接続されており、負荷RLと並列にコンデンサCが接続されている。
【0021】
また、ハイサイドMOSトランジスタQHのゲート電極、および、ローサイドMOSトランジスタQLのゲート電極は、制御回路CCに接続されており、制御回路CCによって、ハイサイドMOSトランジスタQHのオン/オフ動作、および、ローサイドMOSトランジスタQLのオン/オフ動作が制御される。具体的に、制御回路CCは、ハイサイドMOSトランジスタQHをオンする際には、ローサイドMOSトランジスタQLをオフし、ハイサイドMOSトランジスタQHをオフする際には、ローサイドMOSトランジスタQLをオンするように制御する。
【0022】
ここで、例えば、ハイサイドMOSトランジスタQHがオンし、ローサイドMOSトランジスタQLがオフしている場合、入力端子TE1からハイサイドMOSトランジスタQHおよびインダクタLを経由して負荷RLに電流が流れる。その後、ハイサイドMOSトランジスタQHがオフし、ローサイドMOSトランジスタQLがオンすると、まず、ハイサイドMOSトランジスタQHがオフすることから、入力端子TE1からハイサイドMOSトランジスタQHおよびインダクタLを経由して負荷RLに流れる電流が遮断される。すなわち、インダクタLに流れる電流が遮断される。ところが、インダクタLにおいては、電流が減少(遮断)すると、インダクタLを流れる電流を維持しようとする。このとき、ローサイドMOSトランジスタQLがオンしていることから、今度は、グランドGNDからローサイドMOSトランジスタQLおよびインダクタLを経由して負荷RLに電流が流れる。その後、再び、ハイサイドMOSトランジスタQHをオンし、ローサイドMOSトランジスタQLをオフする。このような動作を繰り返すことにより、図1に示す降圧型DC/DCコンバータCVでは、入力端子TE1に入力電圧Vinを入力すると、負荷RLの両端に入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutが出力されることになる。
【0023】
以下では、上述したスイッチング動作を繰り返すことにより、入力端子TE1に入力電圧Vinを入力した場合、負荷RLの両端に入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutが出力される理由について簡単に説明する。なお、以下では、インダクタLを流れる電流が断続しないものとして取り扱うことにする。
【0024】
まず、ハイサイドMOSトランジスタQHは、制御回路CCによる制御により、オン期間TONおよびオフ期間TOFFでスイッチング動作するものとする。この場合のスイッチング周波数は、f=1/(TON+TOFF)となる。
【0025】
ここで、例えば、図1において、負荷RLと並列に挿入されているコンデンサCは、出力電圧Voutを短時間に大きく変動させない機能を有している。つまり、図1に示す降圧型DC/DCコンバータCVでは、負荷RLと並列に比較的大きな容量値のコンデンサCを挿入するため、定常状態では、出力電圧Voutに含まれるリップル電圧は、出力電圧Voutに比べて小さい値になる。このため、スイッチング動作の1周期内での出力電圧Voutの変動は無視できるものとする。
【0026】
最初に、ハイサイドMOSトランジスタQHがオンしている場合を考える。このとき、出力電圧Voutが1周期内で変動しないものと仮定しているため、インダクタLにかかる電圧は、(Vin-Vout)で一定と見なすことができる。この結果、インダクタLのインダクタンスをL1とすると、オン期間TONにおける電流の増加分ΔIONは、式(1)で与えられる。
【0027】
ΔION=(Vin-Vout)/L1×TON ・・・(1)
次に、ハイサイドMOSトランジスタQHがオフしている場合を考える。この場合、ローサイドMOSトランジスタQLがオンしていることから、インダクタLにかかる電圧は、0-Vout=-Voutとなる。したがって、オフ期間TOFFにおける電流の増加分ΔIOFFは、式(2)で与えられる。
【0028】
ΔIOFF=-Vout/L1×TOFF ・・・(2)
このとき、定常状態となると、インダクタLを流れる電流は、スイッチング動作の1周期の間に増減しないことになる。言い換えれば、1周期の間にインダクタLに流れる電流が増減する場合、まだ定常状態に達していないことを意味する。したがって、定常状態では、式(3)が成立する。
【0029】
ΔION+ΔIOFF=0 ・・・(3)
この式(3)に式(1)の関係および式(2)の関係を代入すると、以下に示す式(4)を得ることができる。
【0030】
Vout=Vin×TON/(TON+TOFF) ・・・(4)
この式(4)において、TON≧0、および、TOFF≧0であることから、Vout<Vinであることがわかる。すなわち、図1に示す降圧型DC/DCコンバータCVは、入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutを出力する回路であることがわかる。そして、式(4)から制御回路CCによるスイッチング動作を制御することにより、オン期間TONとオフ期間TOFFを変化させることで、入力電圧Vinよりも低い任意の出力電圧Voutを得ることができることがわかる。特に、オン期間TONとオフ期間TOFFとが一定になるように制御すれば、一定の出力電圧Voutを得ることができる。
【0031】
以上のようにして、図1に示す降圧型DC/DCコンバータCVによれば、制御回路CCで、ハイサイドMOSトランジスタQHのオン/オフ動作、および、ローサイドMOSトランジスタQLのオン/オフ動作を制御することにより、入力電圧Vinよりも低い出力電圧Voutを出力できることがわかる。
【0032】
なお、本明細書では、図1において、破線で囲まれている構成要素がスイッチングレギュレータの一例である降圧型DC/DCコンバータCVであり、この降圧型DC/DCコンバータCVと制御回路CCとを合わせて電子装置EAが構成されている。
【0033】
図2は、ハイサイドMOSトランジスタQHとローサイドMOSトランジスタQLのタイミングチャートを示す図である。図2において、オン期間TONは、ハイサイドMOSトランジスタQHがオンしている時間を示しており、オフ期間TOFFは、ハイサイドMOSトランジスタQHがオフしている時間を示している。このとき、図2に示すように、ハイサイドMOSトランジスタQHがオンしている場合、ローサイドMOSトランジスタQLはオフし、ハイサイドMOSトランジスタQHがオフしている場合、ローサイドMOSトランジスタQLはオンしていることがわかる。したがって、オン期間TONは、ローサイドMOSトランジスタQLがオフしている時間を示しており、オフ期間TOFFは、ローサイドMOSトランジスタQLがオンしている時間を示しているということもできる。
【0034】
ここで、上述した式(4)に示すように、入力電圧Vinに対して、出力電圧Voutを充分に低くする場合には、オン期間TONが短くなる。言い換えれば、入力電圧Vinに対して、出力電圧Voutを充分に低くする場合には、オフ期間TOFFを長くする必要がある。このことから、入力電圧Vinに対して、出力電圧Voutを充分に低くすることを考えると、ハイサイドMOSトランジスタQHをオフしているオフ期間TOFFが長くなるように制御回路CCによって制御する必要がある。言い換えれば、ハイサイドMOSトランジスタQHをオフしているオフ期間TOFFが長くなるということは、ローサイドMOSトランジスタQLのオン期間が長くなることを意味する。したがって、特に、出力電圧Voutを充分に低くする場合、ローサイドMOSトランジスタQLのオン期間が長くなることから、DC/DCコンバータの効率を向上させる観点を考慮すると、ローサイドMOSトランジスタQLのオン抵抗を充分に小さくする必要があることがわかる。
【0035】
<関連技術の説明>
上述したように、例えば、降圧型DC/DCコンバータCVは、周期的にスイッチング動作を繰り返すことにより、所望の電圧を出力するように構成されている。そして、スイッチング動作では電流のオン/オフの切り替えが行なわれる。
【0036】
このことから、降圧型DC/DCコンバータCVに存在する寄生インダクタンスが大きいと、スイッチング動作に起因する電流変化によって発生する高周波ノイズが大きくなる。この結果、降圧型DC/DCコンバータCVが大きな高周波ノイズの発生源となり、周辺に配置される電子部品に悪影響を及ぼすことになる。
【0037】
したがって、降圧型DC/DCコンバータCVから発生する高周波ノイズを低減することが望まれている。この点に関し、高周波ノイズを低減するための関連技術が存在する。そこで、以下では、まず、この関連技術について説明する。
【0038】
ここで、本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
【0039】
図3は、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVの構成を示す回路図である。
【0040】
図3において、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVは、入力電圧を供給する電源Eと接続されており、この電源Eと並列に入力コンデンサCinが接続されている。そして、電源Eの電源電位と電源Eのグランド電位(基準電位)との間に、例えば、電界効果トランジスタ(MOSトランジスタ)から構成されるハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とが直列接続されている。このとき、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2のそれぞれは、スイッチング素子として機能する。ハイサイド素子SW1とローサイド素子SWとは、例えば、配線パターンで接続されることから、図3には、配線パターンに存在する寄生インダクタンスL1が図示されている。同様に、ローサイド素子SWは、グランド電位が供給される配線パターンと接続されることから、図3には、グランド電位が供給される配線パターンに存在する寄生インダクタンスL2も図示されている。
【0041】
次に、図3において、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2との間の接続ノードには、インダクタLcが接続されており、このインダクタLcとグランド電位が供給される配線パターンとの間に負荷RLが接続されている。つまり、降圧型DC/DCコンバータCVでは、インダクタLcとグランド電位が供給される配線パターンとの間に出力電圧が発生するように構成されており、この出力電圧が負荷RLに加わるようになっている。なお、負荷RLと並列に出力コンデンサCoutが接続されており、この出力コンデンサCoutは、グランド電位が供給される配線パターンと接続されることから、図3には、この配線パターンに存在する寄生インダクタンスL3が図示されている。以上のようにして、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVの回路が構成されている。
【0042】
関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVでは、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2のそれぞれにおいて、スイッチング動作が行なわれる。具体的に、ハイサイド素子SW1をオンし、かつ、ローサイド素子SW2をオフするオン/オフ動作と、ハイサイド素子SW1をオフし、かつ、ローサイド素子SW2をオンするオフ/オン動作とが繰り返される。このとき、実際には、オン/オフ動作とオフ/オン動作との間に、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とが同時にオンする遷移期間(オン/オン期間)が存在する。そして、この遷移期間の際には、例えば、図3において、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とが同時にオンする結果、電源電位とグランド電位が短絡して、電源電位とグランド電位との間に大電流が流れる。したがって、高周波ノイズ(ノイズ電圧)が寄生インダクタンスと電流変化との積で表されることを考慮すると、例えば、図3において、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2の大きさが大きくなると、遷移期間に大きな高周波ノイズが発生することがわかる。特に、遷移期間には、短時間に大電流が流れることから電流変化率も大きくなって高周波ノイズが大きくなる。
【0043】
このことから、降圧型DC/DCコンバータCVでは、特に、遷移期間に発生する高周波ノイズを低減することが重要である。この点に関し、高周波ノイズを低減するために、電流変化率を低減することは困難であることから、遷移期間における高周波ノイズを低減するためには、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2の大きさをできる限り小さくすることが重要である。
【0044】
そこで、関連技術では、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2の大きさをできる限り小さくするために、例えば、図3に示すループ100の経路長を最小化する工夫を施している。なぜなら、図3に示すループ100の経路長を最小化することができれば、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2の大きさを小さくすることができるからである。すなわち、配線パターンの長さが短くなれば、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2の大きさは小さくなるので、関連技術では、図3に示すループ100の経路長を最小化する工夫を施すことによって、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とを小さくしようとしている。具体的に、関連技術では、実装レイアウトを工夫することにより、図3に示すループ100の経路長を最小化している。
【0045】
図4は、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVの実装レイアウトを示す平面図である。図4において、例えば、配線基板には、入力パターンWIと、出力パターンWOと、配線パターンW1と、配線パターンW2とが形成されている。そして、図4に示すように、入力パターンWIと配線パターンW1との間にハイサイド素子が形成された半導体部品SP1が搭載されている。同様に、配線パターンW1と配線パターンW2との間にローサイド素子が形成された半導体部品SP2が搭載されている。また、関連技術においては、配線パターンW1と出力パターンWOとの間にインダクタ部品LPが搭載されている。さらに、関連技術においては、入力パターンWIと配線パターンW2との間に入力コンデンサが形成された容量部品CP1が搭載されている一方、配線パターンW2と出力パターンWOとの間に出力コンデンサが形成された容量部品CP2が搭載されている。
【0046】
このように構成されている関連技術の降圧型DC/DCコンバータCVでは、ハイサイド素子が形成された半導体部品SP1とローサイド素子が形成された半導体部品SP2とが近接配置されている。この結果、関連技術では、例えば、図4に示すように、半導体部品SP1と半導体部品SP2との間に存在する寄生インダクタンスL1と、半導体部品SP2と接続する配線パターンW2に起因する寄生インダクタンスL2を小さくすることができる。このようにして、関連技術における実装レイアウトによれば、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とを小さくすることができると考えられる。
【0047】
ところが、図3に示すループ100の経路長を最小化する工夫を施しても、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスを無くすことはできない。すなわち、関連技術において、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2は、部品サイズに律速される結果、小さくできる限界が生じる。つまり、関連技術では、遷移期間に発生する高周波ノイズを一定量以下に小さくすることは困難である。このことから、関連技術では、さらに、高周波ノイズを低減するために、高周波ノイズ対策用のバイパスコンデンサやスナバ回路などのノイズ対策が必要となる。この結果、関連技術では、降圧型DC/DCコンバータCVを構成する部品数の増大に伴う電子装置の大型化や電子装置の製造コストの増大を招くことになる。すなわち、関連技術における高周波ノイズ対策は不充分である。つまり、降圧型DC/DCコンバータCVを構成する電子装置の大型化や製造コストの増大を招くことなく、充分な高周波ノイズ対策を実現する観点から、関連技術には、改善の余地が存在する。そこで、本実施の形態では、関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0048】
<実施の形態における降圧型DC/DCコンバータの回路構成>
図5は、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1を示す回路図である。
【0049】
図5において、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1には、降圧型DC/DCコンバータCV1に入力電圧を供給する電源Eが接続されており、この電源Eと並列に入力コンデンサCinが接続されている。次に、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、電源電位とグランド電位(基準電位)との間に接続されたハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とを有している。ここで、図5では、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2との接続部位(第1配線部)に存在する寄生インダクタンスL1が図示されている。また、図5には、ローサイド素子SW2とグランド電位との接続部位(第2配線部)に存在する寄生インダクタンスL2も図示されている。ここで、ハイサイド素子SW1およびローサイド素子SW2のそれぞれは、例えば、スイッチング素子である電界効果トランジスタ(MOSFET)から構成されている。
【0050】
図5に示すように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1では、互いに直列接続されているハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2が、平面的に閉じたループを構成するように配置されている。例えば、図5に示すように、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とが互いに対向配置されている。そして、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とを接続する配線(寄生インダクタンスL1を含む第1配線)と、ローサイド素子SW2とグランド電位とを接続する配線(寄生インダクタンスL2を含む第2配線)も互いに対向配置されている。特に、ローサイド素子SW2とグランド電位とを接続する配線(第2配線)は、平面視において、ハイサイド素子SW1と交差している。これにより、図5に示す平面的に閉じたループが形成される。
【0051】
このような平面的に閉じたループによって、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とを接続する第1配線と、ローサイド素子SW2とグランド電位とを接続する第2配線とは、互いに並行する部位200を含むように構成されることになる。特に、互いに並行する部位200における第1配線と第2配線との間の間隔は、第1配線と第2配線との間の間隔の中で最も小さくなるように、互いに並行する部位200が近接配置されている。
【0052】
続いて、図5に示すように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2との間の接続ノードに接続された一端を有するインダクタLcを含み、このインダクタLcの他端は、負荷RLと接続されている。特に、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1によれば、インダクタLcの他端とグランド電位との間に出力電圧が出力されるように構成されており、この出力電圧が負荷RLに供給されるようになっている。また、図5に示すように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、負荷RLと並列接続される出力コンデンサCoutも有している。そして、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線には、寄生インダクタンスL3が存在し、この寄生インダクタンスL3を有する配線とインダクタLcとが近接配置されている。すなわち、図5に示すように、寄生インダクタンスL3を有する配線は、インダクタLcと互いに並行する部位300を含むように構成される。以上のようにして、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1が構成される。
【0053】
<実施の形態における降圧型DC/DCコンバータの回路動作>
次に、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の回路動作について説明する。
【0054】
本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2のそれぞれに対してスイッチング動作を実施することにより、入力電圧から絶対値が入力電圧よりも低い出力電圧を生成する。具体的に、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、ハイサイド素子SW1をオンし、かつ、ローサイド素子SW2をオフするオン/オフ動作と、ハイサイド素子SW1をオフし、かつ、ローサイド素子SW2をオンするオフ/オン動作とを繰り返すことにより、入力電圧よりも低い出力電圧を生成する。このとき、オン/オフ動作とオフ/オン動作の間には、遷移期間が存在し、この遷移期間では、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2の両方が同時にオンする結果、電源電位とグランド電位との間に貫通電流(短絡電流)が流れる。
【0055】
図6は、オン/オフ動作において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す回路図である。図6において、ハイサイド素子SW1をオンし、かつ、ローサイド素子SW2をオフするオン/オフ動作の際には、電源電位→ハイサイド素子SW1→インダクタLc→出力コンデンサCout(負荷RL)→グランド電位の経路で電流が流れる。このとき、図6に示すように、互いに近接並行しているインダクタLcと寄生インダクタンスL3には、互いに逆方向の電流が流れることになる。
【0056】
続いて、図7は、遷移期間において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す回路図である。図7において、ハイサイド素子SW1をオンし、同時に、ローサイド素子SW2をオンする遷移期間には、主に電源電位→ハイサイド素子SW1→ローサイド素子SW2→グランド電位の経路で電流が流れる。このとき、図7に示すように、互いに近接並行している寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2には、互いに逆方向の電流が流れることになる。
【0057】
次に、図8は、オフ/オン動作において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す回路図である。図8において、ハイサイド素子SW1をオフし、かつ、ローサイド素子SW2をオンするオフ/オン動作の際には、グランド電位→ローサイド素子SW2→インダクタLc→出力コンデンサCout(負荷RL)→グランド電位の経路で電流が流れる。このとき、図8に示すように、互いに近接並行している寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2には、互いに逆方向の電流が流れることになるとともに、互いに近接並行しているインダクタLcと寄生インダクタンスL3にも、互いに逆方向の電流が流れることになる。
【0058】
以上のようにして、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、図6に示すオン/オフ動作と、図7に示す遷移期間の動作と、図8に示すオフ/オン動作とが繰り返されることにより、電源Eから供給される入力電圧(電源電位)から絶対値が入力電圧よりも小さな出力電圧が負荷RLに向って出力される。
【0059】
<本実施の形態における回路上の特徴>
続いて、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の回路上の特徴点について説明する。本実施の形態における第1特徴点は、例えば、図5に示すように、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2とを接続する第1配線(第1配線部)と、ローサイド素子SW2とグランド電位とを接続第2配線(第2配線部)とが、互いに近接並行している点にある。すなわち、本実施の形態における第1特徴点は、互いに並行する部位200を設けるように、互いに直列接続されるハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2の配置関係を工夫している点にある。具体的には、図5に示すように、平面的に閉じたループを形成するように、ハイサイド素子SW1とローサイド素子SW2との接続経路を工夫する点にある。これにより、本実施の形態における第1特徴点によれば、互いに並行する部位200における実効インダクタンスを低減することができる。なぜなら、互いに逆方向に電流が流れる第1配線と第2配線とを近接並行するように配置することにより、第1配線と第2配線との間の実効インダクタンスが小さくなるからである。これにより、本実施の形態における第1特徴点によれば、遷移期間に電源電位からグランド電位に流れる貫通電流の電流経路に存在する寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2に起因して発生する高周波ノイズを低減できる。つまり、本実施の形態における第1特徴点によれば、互いに並行する部位200によって、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2を結合させて実効インダクタンスを低減できる結果、インダクタンスに比例する高周波ノイズの発生を低減できる。特に、実効インダクタンスを低減する観点からは、互いに逆方向に電流が流れる第1配線と第2配線との間の間隔を小さくすることが望ましい。
【0060】
このように、本実施の形態における第1特徴点の根底にある基本思想は、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2を結合させて実効インダクタンスを低減することにより、高周波ノイズを低減する思想である。この思想によれば、不可避的に寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2が存在しても、実効インダクタンスを小さくできる。すなわち、本実施の形態における基本思想は、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体を小さくする思想ではなく、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とを実効インダクタンスが小さくなるように結合させる思想である。この点において、本実施の形態における基本思想は、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体を小さくすることに着目している関連技術と相違する。特に、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体を小さくすることに着目している関連技術では、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体を無くすことはできないので、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体を小さくするにも限界があり、一定量以上の高周波ノイズの発生を抑制することはできない。
【0061】
これに対し、本実施の形態における基本思想によれば、たとえ、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2自体が存在しても、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とを結合させて実効インダクタンスを低減することができるので、寄生インダクタンスL1および寄生インダクタンスL2の最小値以下の実効インダクタンスにすることも可能である。この結果、本実施の形態における基本思想によれば、関連技術では実現することが困難な高周波ノイズの低減も実現することができる。したがって、本実施の形態によれば、高周波ノイズ対策用のバイパスコンデンサやスナバ回路などのノイズ対策が不要となる。この結果、本実施の形態では、降圧型DC/DCコンバータCV1を構成する部品数の増大を抑制できる。このことから、本実施の形態によれば、充分な高周波ノイズ対策を実現しながらも電子装置の小型化や製造コストの削減を図ることができる。
【0062】
次に、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、図5に示すように、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線がインダクタLcに近接並行する点にある。言い換えれば、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、図5に示すように、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線がインダクタLcと近接並行する部位300を含むように構成されている点である。これにより、リンギングなどのノイズを含む負荷電流がインダクタLcを流れることに起因して発生する高周波ノイズを抑制することができる。すなわち、本実施の形態における第2特徴点によれば、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線がインダクタLcと近接並行しているため、インダクタLcのインダクタンスと、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線の寄生インダクタンスL3とが結合して、実効インダクタンスが低減される。つまり、本実施の形態における第2特徴点によれば、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線がインダクタLcと近接並行し、かつ、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線に流れる電流の方向と、インダクタLcに流れる電流の方向とが逆方向となる。この結果、インダクタLcのインダクタンスと配線の寄生インダクタンスL3とが結合して実効インダクタンスが小さくなることから、インダクタLcに起因する高周波ノイズの発生と寄生インダクタンスL3に起因する高周波ノイズの発生の両方を抑制することができる。すなわち、本実施の形態における第2特徴点によれば、インダクタLcに起因して発生する高周波ノイズと、寄生インダクタンスL3に起因して発生する高周波ノイズの両方を低減するために、インダクタLcのインダクタンスと、出力コンデンサCoutとグランド電位とを接続する配線に存在する寄生インダクタンスL3とを結合して実効インダクタンスを小さくしている。これにより、インダクタLcのインダクタンスおよび寄生インダクタンスL3に起因する高周波ノイズの発生を抑制できる。
【0063】
なお、インダクタLcに起因して発生する高周波ノイズは、インダクタLcのインダクタンス×電流変化率で表される。この点に関し、インダクタLcを流れる負荷電流は、定常状態では時間変化しないことから、電流変化率はゼロとなる。このため、定常的に流れる負荷電流は、高周波ノイズの発生に影響を及ぼさないことから、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1では、電力変換効率に影響を及ぼすことなく、高周波ノイズの発生を抑制することができる。
【0064】
以上のようにして、本実施の形態における第1特徴点を採用すると、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とに起因する高周波ノイズの発生を低減することができる。一方、本実施の形態における第2特徴点を採用すると、インダクタLcのインダクタンスと寄生インダクタンスL3とに起因する高周波ノイズの発生を低減することができる。したがって、少なくとも本実施の形態における第1特徴点と本実施の形態における第2特徴点のいずれか一方を採用することにより、降圧型DC/DCコンバータCV1からの高周波ノイズの発生を抑制することができる。この点に関し、降圧型DC/DCコンバータCV1からの高周波ノイズの発生を充分に抑制する観点からは、上述した第1特徴点と第2特徴点の両方を採用することが望ましい。なぜなら、本実施の形態における第1特徴点と第2特徴点の両方を採用することにより、寄生インダクタンスL1と寄生インダクタンスL2とに起因する高周波ノイズだけでなく、インダクタLcのインダクタンスと寄生インダクタンスL3とに起因する高周波ノイズの発生も抑制できるからである。
【0065】
本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1では、高周波ノイズ対策用のバイパスコンデンサやスナバ回路などのノイズ対策が不要となる。この結果、本実施の形態では、降圧型DC/DCコンバータCV1を構成する部品数の増大を抑制できる。このことから、本実施の形態によれば、充分な高周波ノイズ対策を実現しながらも電子装置の小型化や製造コストの削減を図ることができるという顕著な効果が得られる。
【0066】
<実施の形態における降圧型DC/DCコンバータの実装構成>
次に、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の実装構成について説明する。
【0067】
図9は、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の構成要素である配線基板の配線レイアウトを模式的に示す平面図である。本実施の形態における配線基板WBは、例えば、ガラス繊維にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂やマレイミド樹脂などを含浸させたリジッド基板から構成される。この配線基板WBは、例えば、多層配線構造をしており、例えば、図9に示すように、配線基板WBの表面には、複数の配線部が形成されている。
【0068】
図9において、本実施の形態における配線基板WBの表面には、電源電位が供給される電源配線部10が形成されている。そして、この電源配線部10と離間して第1配線部11が形成されている。さらに、配線基板WBの表面には、平面視において、電源配線部10と第1配線部11に挟まれるように第2配線部14が形成されている。この第2配線部位14は、電源配線部10と第1配線部11との間を通り、かつ、図5に示す部位(200)の一部を構成する延在部12と、延在部12と接続する大面積部13とを含む。このように構成されている第2配線部14には、グランド電位が供給される。
【0069】
また、図9において、第1配線部11および第2配線部14と平面的に離間した位置に出力配線部15が形成されている。この出力配線部15から出力電圧が出力される。さらに、図9において、第2配線部14に近接してゲート配線部16が形成されるとともに、第1配線部11に近接してゲート配線部17が形成されている。
【0070】
このように構成されている配線基板WBにおいては、図9に示すように、第1配線部11に寄生インダクタンスL1が存在する一方、第2配線部14の延在部12に寄生インダクタンスL2が存在する。そして、寄生インダクタンスL1が存在する第1配線部11と、寄生インダクタンスL2が存在する第2配線部14の延在部12とは、互いに近接並行するように配置されている。この結果、図9に示す配線基板WBには、部位(200)が形成されていることがわかる。一方、図9に示すように、第2配線部14の大面積部13には、寄生インダクタンスL3が存在している。
【0071】
続いて、図9に示すように、第2配線部14の大面積部13と第2配線部14の延在部12との接続部分近傍には、ビアVAが接続している。つまり、本実施の形態における配線基板WBは、第1配線部11と第2配線部14と電源配線部10と出力配線部15とが形成された第1配線層を有するとともに、この第1配線層とは異なる第2配線層を含む多層配線構造をしている。そして、第1配線層とは異なる第2配線層には、他配線部が形成されており、例えば、図9に示すように、延在部12と大面積部13との接続領域近傍において、第2配線部14と他配線部とがビアVAで接続されている。
【0072】
以上のようにして、本実施の形態における配線基板WBに降圧型DC/DCコンバータCV1を実現するための複数の配線部(配線パターン)が形成されている。
【0073】
次に、図10は、配線基板WB上に降圧型DC/DCコンバータCV1の構成部品を搭載した状態を模式的に示す平面図である。図10において、半導体部品SP1は、第2配線部14の延在部12を跨いで、電源配線部10と第1配線部11とに接続するように配置されている。具体的に、半導体部品SP1には、例えば、図5に示すハイサイド素子(SW1)を構成する電界効果トランジスタ(パワートランジスタ)が形成されている。
【0074】
このとき、ハイサイド素子のドレインが電源配線部10と接続され、かつ、ハイサイド素子のソースが第1配線部11に接続され、かつ、ハイサイド素子のゲートがゲート配線部16に接続される。
【0075】
続いて、半導体部品SP2は、第1配線部11と第2配線部14とに接続するように配置されている。具体的に、半導体部品SP2にも、例えば、図5に示すローサイド素子(SW2)を構成する電界効果トランジスタ(パワートランジスタ)が形成されている。このとき、ローサイド素子のドレインが第1配線部11と接続され、かつ、ローサイド素子のソースが第2配線部14の延在部12と接続され、かつ、ローサイド素子のゲートがゲート配線部17と接続される。
【0076】
さらに、図10に示すように、容量部品CP1は、電源配線部10と第2配線部14の大面積部13とに接続するように配置されている。この容量部品CP1には、例えば、図5に示す入力コンデンサ(Cin)を構成するチップコンデンサが形成されている。また、容量部品CP2は、出力配線部15と第2配線部14の大面積部13とに接続するように配置されている。この容量部品CP2には、例えば、図5に示す出力コンデンサ(Cout)を構成するチップコンデンサが形成されている。
【0077】
そして、図10に示すように、インダクタ部品LPは、第1配線部11と出力配線部15とに接続するように配置されている。このインダクタ部品LPには、例えば、図5に示すインダクタLcが形成されており、巻線型のインダクタ部品やチップインダクタから構成されている。このとき、図10に示すように、第2配線部14の大面積部13は、インダクタ部品LPと並行する部位を含む。
【0078】
このようにして、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1を実現する実装レイアウトが構成されている。つまり、図10に示す実装レイアウトによって、本実施の形態における第1特徴点(図5の部位200)と第2特徴点(図5の部位300)とを有する回路構成(図5参照)が実現されている。
【0079】
次に、図10に示す降圧型DC/DCコンバータCV1の実装レイアウトを参照しながら、降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路について説明する。
【0080】
図11は、オン/オフ動作において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。図11において、ハイサイド素子SW1をオンし、かつ、ローサイド素子SW2をオフするオン/オフ動作の際には、電源配線部10(電源電位)→半導体部品SP1→インダクタ部品LP→出力配線部15→容量部品CP2→第2配線部14の大面積部13(グランド電位)の経路で電流が流れる。
【0081】
続いて、図12は、遷移期間において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。図12において、ハイサイド素子SW1をオンし、同時に、ローサイド素子SW2をオンする遷移期間には、主に電源配線部10(電源電位)→半導体部品SP1→第1配線部11→半導体部品SP2→第2配線部14の延在部12(グランド電位)の経路で電流が流れる。
【0082】
次に、図13は、オフ/オン動作において降圧型DC/DCコンバータCV1に流れる電流の電流経路を示す実装レイアウト図である。図13において、ハイサイド素子SW1をオフし、かつ、ローサイド素子SW2をオンするオフ/オン動作の際には、第2配線部14の大面積部13(グランド電位)→第2配線部14の延在部12→半導体部品SP2→第1配線部11→インダクタ部品LP→出力配線部15→容量部品CP2→第2配線部14の大面積部13(グランド電位)の経路で電流が流れる。
【0083】
以上のようにして、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、図11に示すオン/オフ動作と、図12に示す遷移期間の動作と、図13に示すオフ/オン動作とが繰り返されることにより、電源配線部10に入力された入力電圧(電源電位)から絶対値が入力電圧よりも小さな出力電圧が出力配線部15から出力される。
【0084】
ここで、例えば、図12には、概略的に部位200が示されている。ただし、図12に示されている部位200は、部位200の主要領域であり、部位200は、この主要領域の形状に限定されるものではない。図12に示す部位200は、互いにy方向に並行して延在する第1配線部11と第2配線部12とを含むように構成されている。このとき、部位200は、第1配線部11の寄生インダクタンスと第2配線部14の延在部12の寄生インダクタンスの結合による実効インダクタンスの低減効果を高めるために、以下の領域を含む部位として定義される。すなわち、図12に示す部位200は、少なくとも第1配線部11を流れる電流の方向と第2配線部14の延在部12を流れる電流の方向とが逆方向になり、かつ、図12において、第1配線部11と第2配線部14の延在部12との間の最大間隔D1が、第1配線部11および第2配線部14のそれぞれが形成された第1配線層(図12に示す配線層)と、この第1配線層よりも1つ下側(配線基板WBの下面側)に位置する第2配線層(図12では示されない)との間隔(D2とする)よりも小さい領域を含む部位として定義される。なぜなら、部位200における第1配線部11と第2配線部14の延在部12との間の最大間隔D1が、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)よりも大きくなると、第1配線部11に存在する寄生インダクタンスと第2配線部14の延在部12に存在する寄生インダクタンスとの結合による実効インダクタンスの低減効果が弱まるからである。
【0085】
なお、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)は、例えば、0.15mmであることから、部位200における第1配線部11と第2配線部14の延在部12との間の最大間隔D1は、0.15mmよりも小さいことが望ましい。具体的に、部位200における第1配線部11と第2配線部14の延在部12との間の最大間隔D1は、0.1mm以下であることが望ましい。ただし、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)が、例えば、0.065mmのように0.1mmよりも小さい場合には、部位200と平面的に重なる配線パターンを第1配線層の1層下層に位置する第2配線層に配置しないように工夫することにより、部位200における第1配線部11と第2配線部14の延在部12との間の最大間隔D1が、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)よりも大きくなる関係を維持できる。この場合、第1配線部11に存在する寄生インダクタンスと第2配線部14の延在部12に存在する寄生インダクタンスとの結合による実効インダクタンスの低減効果を発揮できる。
【0086】
次に、例えば、図13には、概略的に部位300が示されている。ただし、図13に示されている部位300は、部位300の主要領域であり、部位300は、この主要領域の形状に限定されるものではない。図13に示す部位300は、互いにx方向に並行して延在するインダクタ部品LPと第2配線部12とを含むように構成されている。このとき、部位300は、インダクタ部品LPの寄生インダクタンスと第2配線部14の大面積部13の寄生インダクタンスの結合による実効インダクタンスの低減効果を高めるために、以下の領域を含む部位として定義される。すなわち、図13に示す部位300は、少なくともインダクタ部品LPを流れる電流の方向と第2配線部14の大面積部13を流れる電流の方向とが逆方向になり、かつ、図13において、第1配線部11と第2配線部14の大面積部13との間の最大間隔D3が、第1配線部11および第2配線部12のそれぞれが形成された第1配線層(図13に示す配線層)と、この第1配線層よりも1つ下側(配線基板WBの下面側)に位置する第2配線層(図12では示されない)との間隔(D2とする)よりも小さい領域を含む部位として定義される。これにより、必然的に、インダクタ部品LPと第2配線部14の大面積部12との間の間隔D4は、第1配線部11と第2配線部14の大面積部13との間の最大間隔D3よりも小さくなる。この結果、部位300においては、インダクタ部品LPと第2配線部14の大面積部13とが近接配置されることになり、これによって、第2配線部14の大面積部13に存在する寄生インダクタンスとインダクタ部品LPに存在する寄生インダクタンスとの結合による実効インダクタンスの低減効果を発揮できる。
【0087】
なお、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)は、例えば、0.15mmであることから、部位300における第1配線部11と第2配線部12の大面積部13との間の最大間隔D3は、0.15mmよりも小さいことが望ましい。具体的に、部位300における第1配線部11と第2配線部12の大面積部13との間の最大間隔D3は、0.1mm以下であることが望ましい。ただし、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)が、例えば、0.065mmのように0.1mmよりも小さい場合には、部位300と平面的に重なる配線パターンを第1配線層の1層下層に位置する第2配線層に配置しないように工夫することにより、部位300における第1配線部11と第2配線部14の大面積部13との間の最大間隔D3が、配線基板WBの厚さ方向における第1配線層と第2配線層との間の間隔(D2)よりも大きくなる関係を維持できる。この場合、インダクタ部品LPに存在する寄生インダクタンスと第2配線部14の大面積部13に存在する寄生インダクタンスとの結合による実効インダクタンスの低減効果を発揮できる。
【0088】
<実施の形態における実装上の特徴>
続いて、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の実装上の特徴点について説明する。本実施の形態における第3特徴点は、例えば、図10において、インダクタ部品LPを流れる電流の向きと第2配線部14の大面積部13を流れる電流の向きとが逆方向となるように、インダクタ部品LPの構成を工夫する点にある。具体的に、インダクタ部品LPは、巻線型のインダクタ部品やチップインダクタから構成することができるが、例えば、インダクタ部品LPを巻線型のインダクタ部品から構成する場合には、インダクタ部品LPを流れる電流の向きが第2配線部14の大面積部13を流れる電流の向きとは逆向きとなるように巻線の巻方向を設定する。これにより、第2配線部14の大面積部13に存在する寄生インダクタンスL3を流れる電流の向きとインダクタ部品LPを流れる電流の向きとが逆方向になり、かつ、寄生インダクタンスL3が存在する部位とインダクタ部品LPとが近接並行する構成が実現される。この結果、寄生インダクタンスL3とインダクタ部品LPのインダクタンスとが結合して実効インダクタンスが小さくなることから、インダクタ部品LPに起因する高周波ノイズと寄生インダクタンスL3に起因する高周波ノイズの両方を低減することができる。
【0089】
次に、本実施の形態における第4特徴点は、例えば、図10に示すように、グランド電位が供給される第2配線部14と、第2配線部14が形成されている第1配線層とは異なる第2配線層に形成されているグランド配線とを接続するビアVAの配置位置を第2配線部14の延在部12と大面積部13との接続領域近傍に設ける点にある。言い換えれば、本実施の形態における第4特徴点は、図10において、ビアVAの配置位置を半導体部品SP1に近接するように設定する点にある。これにより、例えば、図11図13に示すように、容量部品CP2→第2配線部14の大面積部13→(寄生インダクタンスL3の存在する部位)→ビアVAの経路で電流を流すことができる。つまり、本実施の形態における第4特徴点を実現するようにビアVAを配置することにより、第2配線部14の大面積部13を流れる電流の向きがインダクタ部品LPを流れる電流の向きと逆方向に流れるように誘導することができる。これにより、上述した本実施の形態における第2特徴点が具現化されることになる。すなわち、本実施の形態における第4特徴点を採用すると、インダクタ部品LPのインダクタンスと第2配線部14の寄生インダクタンスL3とが結合して実効インダクタンスが小さくなる効果を誘発できる。このため、本実施の形態における第4特徴点によれば、インダクタ部品LPに起因する高周波ノイズの発生と寄生インダクタンスL3に起因する高周波ノイズの発生の両方を抑制することができる。
【0090】
<実施の形態における効果>
続いて、本実施の形態における効果について説明する。
【0091】
図14は、関連技術における伝導EMI(Electromagnetic Interference)特性を示すグラフである。図14において、横軸は周波数(Hz)を示しており、縦軸は、ノイズレベル(dBμV)を示している。図14において、「12-M」と「10-K」と「8-H」は、国際規格IEC61967-4に準拠した基準を示しており、例えば、「8-H」が最も緩い基準であり、「12-M」が最も厳しい基準である。図14に示すように、関連技術においては、「12-M」の基準を満たしておらず、EMI性能が充分によいとは言えないことがわかる。特に、関連技術においては、降圧型DC/DCコンバータCVの動作に最小限必要な2個のコンデンサ(電源安定化コンデンサ)の他に、高周波ノイズを除去するためのバイパスコンデンサ(ノイズ対策コンデンサ)を9個も搭載しているにも関わらず、充分なEMI性能が実現できていないことがわかる。
【0092】
一方、図15は、本実施の形態における伝導EMI特性を示すグラフである。図15において、横軸は周波数(Hz)を示しており、縦軸は、ノイズレベル(dBμV)を示している。図15において、「12-M」と「10-K」と「8-H」は、国際規格IEC61967-4に準拠した基準を示しており、例えば、「8-H」が最も緩い基準であり、「12-M」が最も厳しい基準である。図15に示すように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、最も厳しい「12-M」の基準を満たしており、EMI性能が充分に良好であることがわかる。特に、本実施の形態において、降圧型DC/DCコンバータCV1の動作に最小限必要な2個のコンデンサ(電源安定化コンデンサ)の他には、高周波ノイズを除去するためのバイパスコンデンサ(ノイズ対策コンデンサ)を搭載していないにも関わらず、充分なEMI性能が実現できていることがわかる。
【0093】
このように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVに比べて、9個の容量部品を削減することができる結果、部品面積を59%減少させながらも、充分に良好なEMI特性を実現できる。したがって、本実施の形態における技術的思想は、充分な高周波ノイズ対策を実現しながらも電子装置の小型化や製造コストの削減を図ることができる点で優れていることがわかる。
【0094】
次に、図16は、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVでの負荷電流と電力変換効率との関係を示すグラフである。図16において、横軸は負荷電流(A)を示しており、縦軸は電力変換効率(%)を示している。図16に示すように、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCVの最大電力変換効率は、86.5%であることがわかる。
【0095】
一方、図17は、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1での負荷電流と電力変換効率との関係を示すグラフである。図17において、横軸は負荷電流(A)を示しており、縦軸は電力変換効率(%)を示している。図17に示すように、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1の最大電力変換効率は、87.9%であることがわかる。したがって、図16図17とを比較すると、本実施の形態における降圧型DC/DCコンバータCV1は、関連技術における降圧型DC/DCコンバータCV1よりも最大電力変換効率が高いことがわかる。このことは、本実施の形態における技術的思想を採用すると、充分な高周波ノイズ対策を実現しながら、さらに、最大電力変換効率も向上できることを意味している。したがって、本実施の形態における技術的思想は、充分な高周波ノイズ対策を実現しながらも電子装置の小型化や製造コストの削減を図ることができるだけでなく、さらに最大電力変換効率も向上できる点で非常に優れた技術的思想であることがわかる。
【0096】
<変形例>
次に、変形例について説明する。
【0097】
図18は、本変形例における降圧型DC/DCコンバータCV2の実装レイアウトを示す平面図である。図18において、本変形例における降圧型DC/DCコンバータCV2では、複数の容量部品CP1を使用して入力コンデンサを構成しているとともに、複数の容量部品CP2を使用して出力コンデンサを構成している。
【0098】
これにより、本変形例における降圧型DC/DCコンバータCV2によれば、以下に示す利点を得ることができる。すなわち、降圧型DC/DCコンバータCV2は、入力電圧から入力電圧よりも小さい出力電圧を出力するように構成されている。そして、降圧型DC/DCコンバータCV2から出力される出力電圧の大きさは、スイッチング周波数に依存する。つまり、降圧型DC/DCコンバータCV2では、スイッチング周波数を所定の周波数に設定することにより、所望の出力電圧を得ることができる。ここで、スイッチング周波数によって、入力コンデンサの容量値や出力コンデンサの容量値が変化する。したがって、入力コンデンサや出力コンデンサを複数の容量部品から構成する場合、複数の容量部品の個数を調整して入力コンデンサの容量値や出力コンデンサの容量値を調整することにより、所望の出力電圧を得ることができるように調整できる。さらに、入力コンデンサや出力コンデンサを複数の容量部品から構成する場合、たとえ、複数の容量部品のうちの一部の容量部品に不良が発生しても、他の容量部品の存在によって、容量値は変化するものの、所望の出力電圧に近い出力電圧を確保することができる。このように本変形例における降圧型DC/DCコンバータCV2によれば、降圧型DC/DCコンバータCV2の信頼性を向上できる。
【0099】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0100】
10 電源配線部
11 第1配線部
12 延在部
13 大面積部
14 第2配線部
15 出力配線部
16 ゲート配線部
17 ゲート配線部
200 部位
300 部位
Cin 入力コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
CP1 容量部品
CP2 容量部品
CV 降圧型DC/DCコンバータ
CV1 降圧型DC/DCコンバータ
CV2 降圧型DC/DCコンバータ
E 電源
Lc インダクタ
LP インダクタ部品
L1 寄生インダクタンス
L2 寄生インダクタンス
L3 寄生インダクタンス
RL 負荷
SP1 半導体部品
SP2 半導体部品
SW1 ハイサイド素子
SW2 ローサイド素子
VA ビア
WB 配線基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18