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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】流体流通管
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20221017BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
F02M35/10 101D
F02M35/104 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019176136
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2020106026
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018243992
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】河野 崇史
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-185859(JP,A)
【文献】国際公開第2014/112052(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059913(US,A1)
【文献】特開2017-023251(JP,A)
【文献】特開2010-108614(JP,A)
【文献】実開平05-096685(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通方向に沿って、第1湾曲部と、前記第1湾曲部から延びる直線部と、前記直線部から延びる第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部、前記直線部、および前記第2湾曲部は、同一の径を有し、
前記第1湾曲部は、前記流体の流通方向に曲率が連続的に減少するクロソイド曲線に沿って中心が湾曲し、
前記第2湾曲部は、前記流体の流通方向に曲率が連続的に増加するクロソイド曲線に沿って中心が湾曲することを特徴とする、自動車用のインテークマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流通管に関し、例えば、自動車用の燃料含有ガスなどの流体をエンジンに供給する流体流通管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関に接続される吸気通路を備えた吸気装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この吸気装置は、吸気通路の上流側で湾曲した上流側湾曲部及び下流側で湾曲した下流側湾曲部を有する。そして、この吸気装置は、湾曲下流部の吸気通路の延びる方向と直交する断面において、下流側湾曲部における湾曲外側の吸気通路内面と湾曲内側の吸気通路内面との間の下流部第1間隔を吸気流れ方向に沿って徐々に小さくする。さらに、この吸気装置は、下流部第1間隔を有して対向する吸気通路内面に直交して対向する吸気通路内面間の下流部第2間隔を吸気流れ方向に沿って徐々に大きくする。これにより、特許文献1に記載の吸気装置によれば、吸気流の剥離を抑制して吸気通路の湾曲部における圧力損失を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6394154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の気体流通管においては、気体流通管の湾曲部を流れる際の流体の抵抗が増大する場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、内部を通過する流体の湾曲部に基づく抵抗増大を低減することができる流体流通管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る流体流通管は、流体が流通する空間を有する流体流通管であって、曲率が連続的に変化する緩和曲線に沿って湾曲する湾曲部を有することを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、流体流通管は、流体が流通する湾曲部の曲率が緩和曲線によって連続的に変化し、内部を通過する気体などの流体が湾曲部を通過する際の流体の進路の急激な変化を緩和するので、内部を通過する流体の湾曲部に基づく抵抗増大を低減することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、前記湾曲部は、前記流体の流通方向に沿って前記緩和曲線の曲率が連続的に減少してもよい。これにより、流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0009】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、前記湾曲部は、前記流体の流通方向に沿って前記緩和曲線の曲率が連続的に増加してもよい。これにより、流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管は、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0010】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、前記湾曲部は、所定箇所まで前記流体の流通方向に曲率が連続的に減少する緩和曲線に沿って湾曲する第1湾曲部と、前記所定箇所まで前記流体の流通方向に曲率が連続的に増加する緩和曲線に沿って湾曲する第2湾曲部と、を有していてもよい。これにより、流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管は、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0011】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、前記緩和曲線は、クロソイド曲線であってもよい。これにより、流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管は、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0012】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、前記流体は、気体であってもよい。流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管は、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0013】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、吸気管であってもよい。これにより、流体流通管は、湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大をより一層防ぐことができる。そして、例えば、流体が気体などである場合には、流体流通管は、流体流通管内での湾曲部に基づく流体の跳ね返りを防止及び流体流通管を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0014】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、自動車用であってもよい。これにより、流体流通管は、自動車用の流体流通管内であるインテークマニホールド及びエキゾーストマニホールドなどの各種流体流通管における湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大を効果的に防ぐことが可能となる。
【0015】
本発明の一態様に係る流体流通管においては、インテークマニホールドであってもよい。これにより、流体流通管は、自動車用の流体流通管内であるインテークマニホールドの湾曲部の内部を通過する流体の抵抗増大を効果的に防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部を通過する流体の湾曲部に基づく抵抗増大を低減することができる流体流通管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、緩和曲線を用いた湾曲部の概念の説明図である。
図1B図1Bは、緩和曲線を用いた湾曲部の概念の説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る流体流通管の一例を示す図である。
図3図3は、一般的な流体流通管の一例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る気体流通管の模式図である。
図5図5は、本発明の比較例に係る気体流通管の模式図である。
図6図6は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部をそれぞれクロソイド曲線として気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したとき、及び図3において第1湾曲部、第2湾曲部をそれぞれ円弧に形成して気体流通管2に2.5m/minの流速でエアを導入したときの、管の曲げ径と圧力損失との関係の解析結果を示した図である。
図7図7は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径30mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図8図8は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径45mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図9図9は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径65mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図10図10は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径30mmの円弧に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図11図11は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径45mmの円弧に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図12図12は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径65mmの円弧に形成して気体流通管に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図13図13は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部をそれぞれクロソイド曲線として気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したとき、及び図3において第1湾曲部、第2湾曲部をそれぞれ円弧に形成して気体流通管2に4.0m/minの流速でエアを導入したときの、管の曲げ径と圧力損失との関係の解析結果を示した図である。
図14図14は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径30mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図15図15は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径45mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図16図16は、図2において第1湾曲部、第2湾曲部を最小径65mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図17図17は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径30mmの円弧に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図18図18は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径45mmの円弧に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
図19図19は、図3において第1湾曲部、第2湾曲部を径65mmの円弧に形成して気体流通管に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、図1A及び図1Bを参照して、緩和曲線を用いた湾曲部の概念について説明する。図1A及び図1Bは、緩和曲線を用いた湾曲部の概念の説明図である。なお、図1A及び図1Bにおいては、自動車用道路101の直線部101Aを走行する自動車102が、カーブとなる湾曲部としての曲線部101B及び101Cを通過する例について示している。また、図1Aにおいては、自動車道路101の曲線部101Bを一定の曲率Rで設けた場合について示し、図1Bにおいては、自動車道路101の曲線部101Cの曲率RAを緩和曲線の一例としてのクロソイド曲線に沿った曲線として設けた例を示している。
【0019】
図1Aに示すように、自動車道路101における曲線部101Bの曲率Rが一定に設けられた場合には、自動車102が直線部101Aから曲線部101Bに進入する際に、直線部101Aの進行時からハンドル103を一方向に一気に回転させる必要がある(図1Aの矢印A1参照)。そして、曲線部101B内では、自動車102は、ハンドル103の操作を停止して、ハンドル103の回転角度を一定に保持した後、曲線部101Bの終わりの部分でハンドル103を一気に戻す操作を行う必要がある(図1Aの矢印A2参照)。このように、曲線部101Bの曲率Rを一定に設けた場合には、自動車102は、曲線部101Bの入口近傍及び出口近傍で急なハンドル操作を行う必要がある。このような急なハンドル操作を行うと自動車102の幅方向などの加速度変化が大きくなり、乗り心地が悪化することがある。
【0020】
これに対して、図1Bに示すように、自動車道路101の曲線部101Cがクロソイド曲線などの緩和曲線に従った曲率RAを有する場合には、自動車道路101の曲線部101Cは、曲線部101Cの一端側から他端側に向けて曲率RAが連続的に変化する。そのため、自動車102は、直進時から曲線部101Cの最も曲率RAの極大部101Dに向けて徐々にハンドル103を回してゆき、極大部101Dから直線部101Aに向けて徐々にハンドル103を戻す操作をする必要がある(図1Bの矢印A3及び矢印A4参照)。この結果、自動車102は、ハンドル103の操作を曲線部101Cの入口から出口に向けて連続的に変化し、急なハンドル103の操作を行うことなく曲線部101Cを通過することが可能となる。
【0021】
このように、緩和曲線を活用した曲率RAに沿った曲線部101Cを設けると、緩和曲線に沿って移動する物質の移動の変化を、曲線部101Bの曲率Rを一定に設けた場合と比較して異ならせることが可能となる。本発明者は、上記現象に着眼し、流体が流れる流体流通管の湾曲部を、このような緩和曲線に沿った形状とすることにより、流体流通管の内部を通過する流体の湾曲部での抵抗増大を低減することができることを着想し、本願発明を完成するに至った。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の実施の形態は、適宜組み合わせて実施可能である。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る流体流通管の一例を示す模式図であり、図3は、一般的な流体流通管の一例を示す模式図である。なお、以下の実施の形態においては、流体流通管の一例として、気体Aを流通する気体流通管について説明する。
【0024】
図2に示すように、本実施の形態に係る気体流通管1は、例えば、自動車などのインテークマニホールドとして用いられるものである。気体流通管1は、外部の気体Aを気体流通管1内に導入する気体導入部10に接続される。気体Aとしては、空気及び燃料含有ガスなどが挙げられる。気体流通管1は、気体導入部10に接続された第1直線部11Aと、第1直線部11Aから延びる第1湾曲部11Bと、第1湾曲部11Bから延びる第2直線部11Cと、第2直線部11Cから延びる第2湾曲部11Dと、第2湾曲部11Dから延びる第3直線部11Eとを有する。
【0025】
気体導入部10は、例えば、エアクリーナーなどの大気中の粉塵を濾過する機能を有するものである。なお、気体導入部10は、気体流通管1の内部に気体Aを導入できるものであれば構成は適宜変更可能であり、例えば、必ずしも粉塵の濾過機能を有するものでなくともよい。
【0026】
気体流通管1は、気体導入部10から導入された気体Aを、気体Aの流通方向の上流側である第1直線部11A、第1湾曲部11B、第2直線部11C、第2湾曲部11D及び第3直線部11Eの順に流通して後段に設けられたエンジンなどに供給するものである。第1直線部11A、第1湾曲部11B、第2直線部11C、第2湾曲部11D及び第3直線部11Eは、所定の内径を有する管状部材である。なお、第1直線部11A、第1湾曲部11B、第2直線部11C、第2湾曲部11D及び第3直線部11Eは、必ずしも同一の内径を有する必要はなく、異なる内径を有するものであってもよい。また、第1直線部11A、第2直線部11C及び第3直線部11Eは、必ずしも直線に設けられている必要はなく、所定の曲率を有して湾曲していてもよい。また、第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dとは、気体Aが曲がる流路の中心部である。なお、第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dは、気体流通管1が湾曲した部分の内側部分であってもよく、外側部分であってもよい。
【0027】
第1直線部11Aは、気体導入部10から導入された気体Aを第1湾曲部11Bに供給する。第1湾曲部11Bは、緩和曲線に従った、連続して変化する曲率RA1を有して湾曲する。第1湾曲部11Bは、例えば、気体Aの流通方向における上流側から下流側に沿った第1直線部11A側から第2直線部11C側に連続的に曲率RA1が増大して湾曲する。ここでの流通方向とは、例えば、第1直線部11Aから第1湾曲部11Bを通過して第2直線部11Cに気体Aが流れる方向である。これにより、第1湾曲部11Bを流通する気体Aは、上述した図1Aに示した例と同様に、第1直線部11A側から第2直線部11Cに向けて連続的に進路が変化する。この結果、図1Aに示した例と同様の原理で、第1湾曲部11Bを通過する気体Aの進路の急激な変化の抑制が可能となり、気体Aが第1湾曲部11Bを通過する際の抵抗を削減することができる。
【0028】
第2直線部11Cは、第1湾曲部11Bから供給された気体Aを第2湾曲部11Dに供給する。第2湾曲部11Dは、緩和曲線に従った、連続して変化する曲率RA2を有して湾曲する。第2湾曲11Dは、例えば、気体Aの流通方向における上流側から下流側に沿った第2直線部11C側から第3直線部11E側に曲率RA2が連続的に増加して湾曲する。ここでの流通方向とは、例えば、第2直線部11Cから第2湾曲部11Dを通過して第3直線部11Eに気体Aが流れる方向である。これにより、第2湾曲部11Dを流通する気体Aは、上述した図1Aに示した例と同様に、第2直線部11C側から第3直線部11Eに向けて連続的に進路が変化する。この結果、図1Aに示した例と同様の原理で、第2湾曲部11Dを通過する気体Aの進路の急激な変化の抑制が可能となり、気体Aが第2湾曲部11Dを通過する際の抵抗増大をより一層削減することができる。第3直線部11Eは、第2湾曲部11Dから供給された気体Aを後段に設けられたエンジン(不図示)などに供給する。
【0029】
これに対し、図3に示すように、一般的な気体流通管2は、図3に示した気体流通管1と同様に、気体導入部10から導入された気体Aを、気体Aの流れ方向の上流側である第1直線部21A、第1湾曲部21B、第2直線部21C、第2湾曲部21D及び第3直線部21Eの順に流通して後段に設けられたエンジンなどに供給する。第1直線部21A、第2直線部21C及び第3直線部21Eの構成は、図2に示した例と同様である。第1湾曲部21Bは、第1直線部21A側から第2直線部21C側に向けて一定の曲率Rを有する。この曲率Rは、第1直線部21A側から第2直線部21Cに向けて一定である。また、第2湾曲部21Dは、第2直線部21C側から第3直線部21E側に向けて一定の曲率Rを有する。この曲率Rは、第2直線部21C側から第3直線部21Eに向けて一定である。
【0030】
このような気体流通管2においては、第1直線部21Aから流れる気体が、第1湾曲部21Bを流通する際に、第1湾曲部21Bの曲率R1に応じて、急激に進路が変化し、所定の進路を保った後に、再度急激に進路が変化して第2直線部21Cに流れる。そして、第2直線部21Cから流れる気体Aが、第2湾曲部21Dを流通する際に、第2湾曲部21Dの曲率Rに応じて、急激に進路が変化し、所定の進路を保った後に、再度急激に進路が変化して第2直線部21Eに流れる。
【0031】
このように、一般的な気体流通管2においては、第1湾曲部21B及び第2湾曲部21Dなどを流れる気体Aの進路が急激に変化する。この結果、図1Bに示した例と同様の原理で、第1湾曲部21B及び第2湾曲部21Dを通過する気体Aの進路が急激に変化して、第1湾曲部21B及び第2湾曲部21Dを通過する際の抵抗を削減することができる。
【0032】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、気体流通管1は、気体Aが流通する第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dの曲率がクロソイド曲線などの緩和曲線によって連続的に変化する。そして、気体流通管1は、内部を通過する気体Aなどの流体が第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dを通過する際の気体Aの進路の急激な変化を緩和するので、内部を通過する流体の湾曲部に基づく抵抗増大を低減することができる。また、気体流通管1は、管径を変更することなく、気体Aの抵抗増大を低減することができるので、流体流通管内での第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dに基づく流体の跳ね返りを防止することができる。これにより、気体流通管1は、例えば、気体流通管1内部を流通する流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。特に、従来の気体流通管では気体流通管の配置及び形状が制限される自動車のエンジンルーム内では、燃料含有ガスなどが内部を流れる場合であっても、気体流通管の湾曲部の曲率を必ずしも最適な範囲とできない場合があった。これに対して、気体流通管1によれば、曲率が連続的に変化する緩和曲線に沿って湾曲する湾曲部を設けるので、燃料含有ガスが湾曲部を通過する際の気体流通管の湾曲部での燃料含有ガスの抵抗が増大する問題を解消することもできる。そして、気体流通管1は、管径を変更することなく、流体の抵抗増大を低減することができるので、気体流通管1内での第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dに基づく気体Aなどの流体の跳ね返りを防止することができる。これにより、気体流通管1は、例えば、気体流通管1を流通する気体Aなどの流体の跳ね返りに基づく音響効果への悪影響を防ぐことも可能となる。
【0033】
なお、上述した実施の形態においては、流体としての気体Aを流通する気体流通管1を用いた例について説明するが、この構成に限定されない。流体としては、気体Aに限定されず、液体などの各種流動性を有する物質であれば適宜適用可能である。
【0034】
また、上述した実施の形態においては、緩和曲線としてクロソイド曲線を用いる例について説明したが、緩和曲線としては、クロソイド曲線以外を用いることも可能である。緩和曲線としては、各種緩和曲線を適用可能である。この場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0035】
さらに、上述した実施の形態においては、気体流通管1が第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dを備える例について説明したが、この構成に限定されない。気体流通管は、1つの湾曲部を備えていてもよい。
【0036】
また、上述した実施の形態においては、気体Aの流通方向の上流側から下流側に向けて第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dの曲率が増大する例について説明したが、第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dの曲率は、この構成に限定されない。第1湾曲部11B及び第2湾曲部11Dの曲率は、連続的に変化するものであればよく、例えば、気体流通管1の内部を流通する流体に応じて、流体の流通方向の上流側から下流側に向けて曲率が減少するものであってもよい。
【0037】
また、上述した実施の形態においては、気体流通管1は、エンジンなどの内燃機関に燃料含有気体を供給するインテークマニホールドなどの吸気管だけでなく、エキゾーストマニホールドなどの燃料排ガスの気体排気管などの各種気体流通管に用いることも可能である。
【0038】
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。
【0039】
本発明者は、上述した気体流通管による通気抵抗改善効果の確認のために、上述した実施の形態に係る図2に示した気体流通管及び図3に係る一般的な気体流通管を用いたシミュレーション試験を実施した。以下、本発明者が調べた内容について説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施例に係る気体流通管の模式図であり、図5は、本発明の比較例に係る気体流通管の模式図である。なお、図4に示す気体流通管3の構成は、上述した図2に示した気体流通管1の構成に対応するものであり、図5に示す気体流通管4の構成は、上述した気体流通管2の構成に対応するものである。
【0041】
図4に示すように、本実施例に係る気体流通管4においては、第1湾曲部31A及び第2湾曲部31Bの曲率が連続的に変化するので、第1湾曲部31A及び第2湾曲部31B内に変曲点が生じることがない。これにより、気体流通管3では、空気導入部32から取り入れた空気によって生じる圧力発生点P1が湾曲部31Aの後半部分となる。これにより、気体導入部32から導入された空気が気体流通管3から排出されるまでの通気抵抗を低減することが可能となる。
【0042】
これに対して、比較例に係る気体流通管4においては、第1湾曲部41A及び第2湾曲部41Bの曲率が一定しているので、第1湾曲部41A内及び第2湾曲部41Bに変曲点が生じることがない。これにより、気体流通管4では、空気導入部42から取り入れた空気によって生じる圧力発生点P2が、上述した実施例に係る圧力発生点P1と比較して第1湾曲部51Aの前半部分となる。これにより、気体導入部42から導入された空気が気体流通管4から排出されるまでの通気抵抗が低減することが大幅に増大する。この結果、上記実施例に係る気体流通管3によれば、気体流通管3内を流れる気体の通気抵抗が、比較例に係る気体流通管4と比較して、1.45%も改善することが可能となった。
【0043】
図6は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dをそれぞれクロソイド曲線として気体流通管1に2.5m/minの流速でエアを導入したとき、及び図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dをそれぞれ円弧に形成して気体流通管2に2.5m/minの流速でエアを導入したときの、管の曲げ径と圧力損失との関係の解析結果を示した図である。図6では、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dの中心におけるクロソイド曲線の最小径が第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dの中心における半径と同等なときを比較している。
【0044】
図7は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径30mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0045】
図8は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径45mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0046】
図9は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径65mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0047】
図10は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径30mmの円弧に形成して気体流通管2に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0048】
図11は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径45mmの円弧に形成して気体流通管2に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0049】
図12は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径65mmの円弧に形成して気体流通管2に2.5m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0050】
図6に示すように、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径30mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径30mmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を9.1%低減することができた。また、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径45mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径45mmmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を10.8%低減することができた。また、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径65mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径65mmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を13.0%低減することができた。
【0051】
以上のように比較的低い流量において、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dをクロソイド曲線に形成した方が、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを円弧に形成したときよりも圧力損失を低減できることが確認できた。
【0052】
図13は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dをそれぞれクロソイド曲線として気体流通管1に4.0m/minの流速でエアを導入したとき、及び図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dをそれぞれ円弧に形成して気体流通管2に4.0m/minの流速でエアを導入したときの、管の曲げ径と圧力損失との関係の解析結果を示した図である。図13においても、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dの中心におけるクロソイド曲線の最小径が第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dの中心における半径と同等なときを比較している。
【0053】
図14は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径30mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0054】
図15は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径45mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0055】
図16は、図2において第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径65mmのクロソイド曲線に形成して気体流通管1に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0056】
図17は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径30mmの円弧に形成して気体流通管2に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0057】
図18は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径45mmの円弧に形成して気体流通管2に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0058】
図19は、図3において第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径65mmの円弧に形成して気体流通管2に4.0m/minの流速でエアを導入したときの各位置における流速の解析結果を色の濃淡で表した図である。
【0059】
図13に示すように、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径30mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径30mmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を11.2%低減することができた。また、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径45mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径45mmmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を10.5%低減することができた。また、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dを最小径65mmのクロソイド曲線に形成したときは、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを径65mmの円弧に形成したときよりも、圧力損失を13.5%低減することができた。
【0060】
以上のように比較的高い流量においても、第1湾曲部11B、第2湾曲部11Dをクロソイド曲線に形成した方が、第1湾曲部21B、第2湾曲部21Dを円弧に形成したときよりも圧力損失を低減できることが確認できた。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3,4 気体流通管
10 気体導入部
11A,21A 第1直線部
11B,21B,31A,41A 第1湾曲部
11C,21C 第2直線部
11D,21D,31B,41B 第2湾曲部
11E,21E 第3直線部
101自動車道路
101A 直線部
101B,101C 曲線部
101D 極大部
102 自動車
103 ハンドル
R,RA,RA1,RA2 曲率
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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