(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】包装に使用するのに好適なエチレン捕捉材料及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20221017BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221017BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221017BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20221017BHJP
A23L 3/3562 20060101ALI20221017BHJP
B01J 31/06 20060101ALI20221017BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20221017BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221017BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
B65D81/26 L
B01J20/28 Z
B01J20/30
A23L3/00 101A
A23L3/3562
B01J31/06 M
B65D65/42 A
C08L101/00
C08L1/02
(21)【出願番号】P 2019500502
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(86)【国際出願番号】 IB2017054004
(87)【国際公開番号】W WO2018011666
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-03
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】サウッコネン、エサ
(72)【発明者】
【氏名】ラムパイネン、セッポー
(72)【発明者】
【氏名】シートネン、シモ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン、マリアンネ
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/153210(WO,A1)
【文献】特表2014-530946(JP,A)
【文献】特開平11-314308(JP,A)
【文献】特開2012-007247(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052074(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B01J 20/28
B01J 20/30
A23L 3/00
A23L 3/3562
B01J 31/06
B65D 65/42
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロース及びエチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤を含む、包装に使用するための材料であって、
エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、その上にトップコーティングが配置されているラベルの形態で存在し、
エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤が、エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤をカバーするトップコーティングの除去によって、又は、
トップコーティングを溶解する湿気又は湿度の増加によって、露出されることができる、前記の材料。
【請求項2】
エチレン捕捉剤が、触媒である、請求項
1に記載の包装に使用するための材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ナノサイズのセルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含む、包装に使用するのに好適な材料に関する。本発明は、紙、ラベル、板紙、プラスチック又はフィルム製品であることができるそのような材料を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
包装食品及び加工食品を含む食品及び加工食品は、一般に、微生物汚染及び品質劣化という2つの主な問題を受ける。
【0003】
成熟した野菜及び果物などのいくつかの生産物は、エチレンガスを放出し、それは、成熟を促進し、果物及び野菜に斑点ができて柔らかくなり腐敗することを引き起こす。生地の変化に加えて、当該生産物の味、におい又は栄養挙動は、変化し得る。エチレンに関連した問題は、開発途上国における収穫後損失の大部分を引き起こす。
【0004】
エチレンガスの負の効果から食品材料を保護するために、業界で様々な方法及び製品が存在する。より低温での調整雰囲気又は保管の使用がしばしば使用されるが、これらは、製品の官能挙動の少なくともいくらかに対する負の効果を有し得る。エチレン捕捉特性を導入する方法は、WO2005/000369A1及びEP0515764A2に開示されるように、エチレン酸化剤として過マンガン酸カリウムの使用を含む。過マンガン酸カリウムは、アルミナ、シリカ、クレー及び活性炭などの高い表面積を有する吸収剤材料の中に組込まれる。しかし過マンガン酸カリウムは、ヨーロッパでは禁止されており、そして、過マンガン酸カリウムの毒性の理由で、当該吸収剤材料が袋中に保管されている限りでは、米国では許容範囲が制限されている。他方では、ポリマーフィルム中に異なる機能性ミネラルを組込むことも周知であり、そのような製品はすでに市場で入手可能である。
【0005】
JP2242767は、段ボール箱の中に好ましくはその凹凸面の中心溝に障壁を持つ箱の中に一緒に置かれるガス吸着剤を含有する別のもう1つのフィルムバッグ及び新鮮な野菜を含有しそして少なくとも30mmの防水性及び定義された透気度を有するプラスチックフィルムで作られているバッグを開示する。当該プラスチックフィルムは、その中に、微細セルロース繊維又は連続気泡から成る多孔質物質の粉末が分散していることができる。
【0006】
業界で公知の多くの方法は、エチレンガス分解剤又は触媒を含む吸収剤に基づく。既存の解決策は、様々なフィルム、紙及びカートン用板紙包装解決策などで試験されてきた。
【0007】
既存の解決策の1つの問題は、適用可能な表面積の量が制限されていることである。ナノ材料の使用は、量の多い結合剤又は保持化学薬品をしばしば要求するか、又は、コーティングを介して添加しなければならない。別のもう1つの問題は、関係する材料の例えば強度又はバリヤー性に影響するという理由で、添加される材料の最大量がしばしば制限されることである。例えば、ポリエチレンプラスチックでは、よい多い量の吸収剤又はキャリヤー粒子は、強度特性に影響してそれ故に材料の転化可能性に影響するであろう。それ故に、材料の機械的特性を維持しながら添加できるエチレン捕捉剤の量は、包装された果物又は野菜への所望の抗熟成効果を得るにはしばしば不十分である。
【0008】
こうして、包装用の製品、特に、包装食品の品質劣化に関連した問題に取り組むのに役立つことができる製品、を改善する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概要
驚くべきことに、材料がエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含み、包装に使用するのに好適な材料の中にナノサイズのセルロースを組込むことによって、上述した問題のいくつかを克服できることが、見出された。
【0010】
ここで使用される用語「ナノサイズのセルロース」は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)及びナノ結晶性セルロースを包含する。
【0011】
包装に使用するのに好適な当該材料は、紙、ラベル、板紙、プラスチック又はフィルム又はコーティングであることができる。
【0012】
本発明の一形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、当該材料の中に組込まれる。すなわち、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、ナノサイズのセルロースを調製又は製造する時に存在するか、又は、フィルム又はウェブ(web)を形成するよりも前に、ナノサイズのセルロースと混合される。
【0013】
エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤及びナノサイズのセルロースを含む当該材料は、各成分を別々に又は一緒に、コーティング又は印刷法でも適用できる。
【0014】
本発明の別のもう1つの形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、コーティング又は含浸によって、包装に使用するのに好適な当該材料の中に組込まれる。
【0015】
本発明の一形態は、ナノサイズのセルロース及びエチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤を含む、包装に使用するのに好適な当該材料上に又はそれに使用するためのコーティングである。当該コーティングは、少なくとも1g/m2、好ましくは少なくとも5g/m2、より好ましくは少なくとも10g/m2のエチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤を典型的に含むであろう。
【0016】
本発明に従う当該材料は、少なくとも1%のナノサイズのセルロース、好ましくは少なくとも5%のナノサイズのセルロース、より好ましくは少なくとも10%のナノサイズのセルロースを典型的に含む。
【0017】
本発明の一形態では、本発明に従う材料は、0.05~50重量%、好ましくは0.1~20重量%のエチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤を含む。
【0018】
化学蒸着又は原子層堆積法を通して例えば無機触媒でナノサイズのセルロースを変性することも可能である。この場合は、ナノサイズのセルロース材料は、無機化学薬品の堆積に対しても露出できる相対的に高い表面積を有することが好ましい。
【0019】
本発明の一側面は、ナノサイズのセルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤が含浸した又はそれらでコーティングされたものを含む紙、ラベル、板紙、プラスチック又はフィルム製品である。当該フィルムは、プラスチック材料、バイオポリマー又はセルロース又はセルロースフィブリル、再生セルロース、バイオプラスチックなどで作られることができる。当該製品は、バッグなどの柔軟な包装又は硬質包装製品であることができる。
【0020】
本発明に従う材料を使用して調製される最終の包装は、本発明に従う前記の紙、板紙又はフィルムの多層を有することができる。当該層は、一緒に積層されることができる。本発明の一形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、その上にトップコーティングが場合により配置されているラベルの形態で最終の包装中に存在する。当該トップコーティングは、片面上に接着剤を含むことができ、その結果、トップコーティングは、剥離されるなどで除去でき、それによって、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を露出させてそして活性化できる。前記トップコーティングは、湿度及び/又は湿気に敏感であることができ、それにより、トップコーティングは増加した湿度又は湿気でそのガスバリヤー性を緩めることができ、それによって、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を露出させてそして活性化できる。本発明の一形態では、これは、ミクロフィブリル化セルロースなどのナノサイズのセルロースを含むトップコーティングを使用することによって、実現できる。こうして、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、初期にカプセルに包むことができるが、カプセル化の除去の後には、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、露出されて活性化されることになる。
【0021】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料は、高い表面積及び好ましくは高いエチレン、CO2及びO2透過性を有し、それらは、吸収剤を使用することによって実現できるが、例えばアルコール又は剥離剤を使用することによって又はナノサイズのセルロースをミクロ凝集させることによっても、実現できる。
【0022】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料は、薄く、好ましくは<50gsm(g/m2)、より好ましくは<30gsmである。別のもう1つの形態では、当該材料は、より厚く、例えば、50gsmよりも大きいか又は100gsmよりも大きい。
【0023】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料のガス透過性は、厚さ30μmのフィルムでは、23℃で及び50%相対湿度で決定して、>50cm3/m2/日である。一形態では、OTR値によって決定されるガス透過は、>500、好ましくは>1000である。
【0024】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料は、好ましくは>10wt%であってより好ましくは>30wt%である高い含有量のエチレン吸収剤を有する。
【0025】
本発明の一形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、紙、ラベル、又は板紙製品を製造する方法のウェットエンドに投与でき、又は、表面サイジング、含浸、コーティングにより又は印刷を介して添加できる。代替として、ミクロフィブリル化セルロースフィルムは、原子層堆積(ALD)又は化学蒸着又は同様の方法の使用を通して、機能化されることができる。
【0026】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料中のミクロフィブリル化セルロースなどのナノサイズのセルロースは、>70、より好ましくは>80のSRを有するべきである。SRは、業界で公知の方法を使用して決定されるのと同様にして実現できるthe Schopper Riegler数を示す。
【0027】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料の調製で使用されるウェブは、例えば<30%のクラフト繊維又はより好ましくは<20%のクラフト繊維の長繊維をも含有できる。
【0028】
本発明の一形態では、包装に使用するのに好適な当該材料は、好ましくは>100m2/g、最も好ましくは>200m2/gの高いBET表面積を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な記述
本発明で使用されるエチレン捕捉剤は、例えば以下のものから選択できる:木炭上の臭素酸カリウム又はヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、臭素酸カリウム及び硫酸、臭素液体、酸化銀、希土類酸化物、ホスフェート化合物、クロレート化合物、フェロシアニン化合物、ヒポクロリット、ヒポクロリット塩及び臭化物又はヨウ化物塩、クロレート、亜塩素酸塩、いくらかの金属及び金属酸化物、過マンガン酸K、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム及び水、過酸化物、過マンガン酸ナトリウム(ゼオライトなどのキャリヤーを必要とすることができるもの)、過ヨウ素酸、過マンガン酸カルシウム又はヨウ素酸カリウム、ペルオキシマンガン酸カリウム、トバモライト及び銀、ゾノトライト及び銀、硫酸第一鉄七水和物及び水酸化カルシウム、臭素化炭素質のモレキュラーシーブ、ビニルピリジン樹脂の臭素付加物及び臭化水素、臭素添加ビニルキノリンタイプ樹脂、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、及び次亜塩素酸マグネシウム。エチレン捕捉剤として機能する触媒化学物質は、以下のものを含む:モリブデン酸アンモニウム含有硫酸パラジウム触媒(検出用)、エチレン透過性基材中に組込まれた電子不足ジエン又はトリエン(ベンゼン、ピリジン、ジアジン、トリアジン又はテトラジン(電子吸引置換基を有するもの)、好ましくは、フルオロアルキル基、スルホン基及び/又はエステル基、エステル基はジカルボキシル化又はジカルボキシメチル化されているもの)、疎水性(ヒドロシリル化)触媒、例えばPt、高分子錯体を持つもの、CuCl及びAlCl3、Ti-、Al-、Ni又はFe-酸化物、パラジウムcpd.の配位によって製造されるもの、カーボンブラック、金属酸化物例えばアルミナ及び金属例えば白金上に吸着されたもの、シクロデキストリン及びPEI、塩化パラジウムで処理された活性炭、パラジウムドープゼオライトSocony Mobil(ZSM)-5、又は、UV光又は日光などの光への露出後にそのエチレン捕捉特性を得る感光剤。
【0030】
本発明の一形態では、エチレン捕捉剤は、白金含有又はパラジウム含有触媒などの触媒又は触媒化学物質である。
【0031】
触媒は、業界で公知の方法を使用して調製できる。触媒は、触媒ドープゼオライトの形態で又はゼオライト以外の別のもう1つの吸収剤を使用する形態であることができる。白金含有又はパラジウム含有触媒などの触媒は、ゼオライトの不存在下で包装に使用するのに好適な当該材料中に存在することもできる。
【0032】
本発明の一形態では、エチレン捕捉剤は、白金含有又はパラジウム含有触媒、又は、CuCl及び/又はAlCl3の配位によって製造される高分子錯体である。
【0033】
本発明の一形態では、ナノサイズのセルロースは、MFCである。
【0034】
包装に使用するのに好適な当該材料は、いわゆるキャスティング法でも製造できる。微細セルロース又はMFCの懸濁物が、(例えば触媒又はその前駆体である)エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤と一緒に又はそれなしで、半透性又は非透過性のキャリヤー基材上に堆積される。その後、自立フィルム又はその中間製品を製造するために、乾燥される。1つのオプションは、言及されるいかなる表面処理工程を通して第2の工程でエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を投与することである。キャストコーティングも、溶媒ベースの方法によってはより好適である。
【0035】
当該材料は、水及び湿気に敏感であるすなわち構造が膨潤するのを可能にするヘミセルロースソルビトールなどの低分子炭水化物などの添加物で、更に変性できる。
【0036】
本発明の一側面は、ミクロフィブリル化セルロースフィルムであり、その中には、白金含有又はパラジウム含有触媒などの触媒の形態で、エチレン捕捉剤が吸収されている。
【0037】
本発明で使用されるエチレン吸収剤は、例えば以下のものから選択できる:木炭、ゼオライト、シリカ、変性シリカ、酸化アルミニウム、アルシリケート、セポライト、モンモリロナイト、ベントナイト、トラバータイト又はパームチット、クリストバライト、粘着性鉱石、クレー、サンゴ、ナタネ油、炭素繊維、長石斑状安山岩、カーボンナノ粒子、バーミキュライト、ゲルマニウム、アタパルガイト、グラファイト、腐食土、パーライト、レンガブロック、トバモライト及び有機樹脂。
【0038】
本発明の一形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、包装に使用するのに好適な当該材料の中に組込まれる。この形態では、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤は、ミクロフィブリル化セルロースを調製する時に存在するか、又は、ウェブを形成するよりも前ミクロフィブリル化セルロースと混合される。この形態は、以下の工程を含む、ミクロフィブリル化セルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含む分散物を製造する方法を含む:場合により前処理されたセルロース繊維を含むスラリーを提供すること、当該スラリーにエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を添加すること、及び、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤がミクロフィブリル化セルロースの表面に吸収されているミクロフィブリル化セルロースを含む分散物が形成されるように、機械的粉砕によって当該スラリーを処理すること。場合により前処理されたセルロース繊維及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含むスラリーを機械的粉砕により処理することによって、安定な分散物を製造するのが可能である。
【0039】
機械的粉砕は、好ましくは圧力ホモジナイザー中でなされる。圧力ホモジナイザーを使用することによって、よりオープンな領域を持つミクロフィブリル化セルロースを製造すること、及び、非常に効率的なやり方で分散物のエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を同時に分散すること、が可能であると示された。
【0040】
圧力ホモジナイザーで使用される圧力は、好ましくは500-4000Barの間、より好ましくは1000-2000Barの間である。繊維又は中間製品は、安定化剤又はエチレン捕捉剤又はそれらの前駆体などのプロセス添加物と一緒に又はそれらなしで、1回又は数回フィブリル化されることができる。
【0041】
分散物のミクロフィブリル化セルロースとエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤との間の重量比は、好ましくは、10:90~90:10の間である。どの種類のミクロフィブリル化セルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を分散物が含むかに応じて、比率は変化できる。
【0042】
分散物のエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤の比率は、ミクロフィブリル化セルロース中に又はその表面上に吸収されていることが好ましい。
【0043】
機械的粉砕によって処理されるべきスラリーの乾燥含有量は、好ましくは、繊維の0.05-30重量%の間である。スラリーの乾燥含有量は、使用されるエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤に依存し、機械的粉砕のためにどんな種類の装置が使用されるのかと同様にどんな種類のMFCが使用されるのかに依存する。
【0044】
機械的粉砕によって処理された後の分散物の乾燥含有量は、好ましくは、繊維の50重量%よりも上である。分散物は、好ましくは、乾燥含有量を増加させるために、機械的粉砕の後に脱水される。乾燥含有量を増加させることによって、より効率的なやり方で、分散物を他の場所へ輸送できる。更に、分散物の乾燥含有量を増加させることによって、安定性が一層なお増加することが示された。
【0045】
一形態では、当該方法は、機械的粉砕の後に分散物の洗浄を更に含むことができる。このやり方では、分散物からいかなるフリーのエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を除去できる。
【0046】
機械的粉砕は、例えば、従来技術で開示されるMFCを製造するのに使用される粉砕器又は精砕機又はMasuko粉砕器などの粉砕器又は精砕機などの多くの異なる種類の機械的処理装置で実施できる。しかし、圧力ホモジナイザーを使用するのが好ましく、そこでは、非常に効率的なやり方で、共に、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を潜在的に均質化するのと同様に、前処理された繊維からミクロフィブリル化セルロース繊維を製造するであろう。機械的粉砕の間に高い圧力が使用され、そして、当該圧力は、好ましくは、500-4000Barの間、好ましくは1000-2000Barの間である。最適の圧力は、しばしば、約1500Barである。必要とされる圧力は、処理されている材料に依存する。しかし、あまりにも高い圧力は、装置の摩耗があまりにも高いであろうという理由で、使用するにはしばしば有益ではない。特定の圧力ホモジナイザーの一例は、いわゆるマイクロフルイダイザーである。
【0047】
本発明の一形態では、ベースフィルムが、湿式製造方法に従って又は抄紙機で形成され、それは、ワイヤー上に上述したような懸濁物又は分散物を提供してそしてウェブを脱水して中間の薄い基材又は前記ベースフィルムを形成することによって、形成される。上述したようなミクロフィブリル化セルロースを含む懸濁物又は分散物は、前記ベースフィルムを形成するために提供される。当該懸濁物又は分散物は、完全に水性であることができ、又は、例えば水及びエタノールの共溶媒混合物などのアルコールなどの水以外の溶媒をも含有できる。
【0048】
本発明の一形態では、本発明に従う材料の製造において、泡形成又は泡コーティングが使用される。
【0049】
懸濁物又は分散物のミクロフィブリル化セルロース含有量は、一形態によれば、懸濁物又は分散物の固体の重量に基づいて60~99.9重量%の範囲であることができる。一形態では、懸濁物又は分散物のミクロフィブリル化セルロース含有量は、70~99重量%の範囲、70~95重量%の範囲、又は、75~90重量%の範囲であることができる。
【0050】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の内容では、100nm未満の少なくとも1つの寸法を持つナノスケールのセルロース粒子繊維又はフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的に又は全体的にフィブリル化されたセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離のフィブリルは、100nm未満の直径を有するのに対して、実際のフィブリル直径又は粒度分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、源及び製造方法に依存する。
【0051】
最も小さいフィブリルは、基本フィブリルと呼ばれて約2-4nmの直径を有し(例えば以下を参照:Chinga-Carrasco, G., Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view, Nanoscale research letters 2011, 6:417)、一方で、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形(Fengel, D., Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides, Tappi J., March 1970, Vol 53, No. 3.)は、例えば拡張精練法又は圧力降下粉砕方法を使用することによってMFCを製造する時に得られる主な製品であることが普通である。源及び製造方法に応じて、フィブリルの長さは、約1~10マイクロメートル超で変化できる。粗いMFCグレードは、かなりの部分のフィブリル化繊維、すなわち、仮道管(セルロース繊維)から突き出ているフィブリル、及び、仮道管(セルロース繊維)から遊離したフィブリルのいくらかの量を含有し得る。
【0052】
例えば以下のようなMFC用の異なる頭文字が存在する:セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールのセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体及びセルロースミクロフィブリル凝集体。MFCは、水中に分散した時に低固体(1-5wt%)でゲル状材料を形成するその能力又は大きい表面積などの様々な物理的な又は物理的化学的な特性によっても、特徴付けることができる。セルロース繊維は、好ましくは、BET法での凍結乾燥材料で決定した時、形成されるMFCの最終の比表面積が約1~約300m2/g、1~200m2/gなど又はより好ましくは50-200m2/gであるような範囲に、フィブリル化される。
【0053】
単一の又は複合のパス精錬、事前加水分解、その後のフィブリルの精錬又は高せん断粉砕又は遊離などの様々な方法が、MFCを製造するために存在する。エネルギー効率的でもあり持続可能でもあるMFCを製造するために、1つ又はいくつかの前処理工程が、通常要求される。こうして、供給されるべきパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を低減するために、酵素的に又は化学的に前処理できる。セルロース繊維は、フィブリル化よりも前に化学的に変性されることができ、そこでは、セルロース分子は、元のセルロースの中に見出されるもの以外の(またはそれよりも多くの)機能性基を含有する。そのような基は、中でも、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介による酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は4級アンモニウム(カチオン性のセルロース)を含む。上記の方法の1つで変性又は酸化された後に、当該繊維をMFCに又はナノフィブリルサイズのフィブリルに粉砕することは、より容易である。
【0054】
ナノフィブリルセルロースは、いくらかのヘミセルロースを含有でき;その量は、プラント源に依存する。例えば、加水分解された、事前膨潤された、又は酸化されたセルロース原材料などの前処理された繊維の機械的粉砕は、以下のような好適な装置で実施される:精砕機、粉砕器、ホモジナイザー、コロイダー、摩擦粉砕器、超音波処理装置、フルイダイザー、例えば、マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー又はフルイダイザータイプホモジナイザーなど。MFC製造方法に応じて、製品は、微粉又はナノ結晶性セルロース又は例えば製紙プロセスで又は木質繊維中に存在する他の化学薬品をも含有し得る。製品は、効率的にはフィブリル化されなかったミクロンサイズの繊維粒子の様々な量をも含有し得る。MFCは、木質セルロース繊維から、堅木又は軟木繊維の両方から、製造される。それは、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、又は他の非木材繊維源でも作られることができる。それは、例えば機械的、化学的及び/又は熱機械的なパルプである未使用の繊維からのパルプを含むパルプで作られるのが好ましい。それは、損紙又はリサイクル紙で作られることもできる。
【0055】
MFCの上記の定義は、結晶性の及びアモルファスの両方の領域を持つ複合的な基本フィブリルを含有するセルロースナノファイバー材料を定義するセルロースナノフィブリル(CMF)に関して新しく提案されたTAPPI標準W13021を含むが、それに限定されない。
【0056】
別のもう1つの形態によれば、懸濁物又は分散物は、ミクロフィブリル化セルロースなどの異なるタイプの繊維の混合物、及び、クラフト繊維、微粉、補強繊維、合成繊維、溶解パルプ、TMP又はCTMP、PGWなどの他のタイプの繊維の量を含むことができる。
【0057】
懸濁物又は分散物は、以下のような他のプロセス又は機能性添加物をも含むことができる:フィラー、顔料、湿潤強度薬品、乾燥強度薬品、保持化学薬品、架橋剤、軟化剤又は可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生剤、光学染料、蛍光増白剤、消泡薬品、疎水化薬品、例えば、AKD、ASA、ワックス、樹脂など。添加物は、サイズプレス又は印刷機を使用しても添加できる。
【0058】
本発明に従う材料の製造で使用できる抄紙機は、紙、板紙、ティッシュ又は同様の製品の製造用に使用される当業者に公知のいかなる従来のタイプの機械であることができる。
【0059】
ワイヤー上に置かれている湿紙(wet web)に続いて、それは、脱水される。ワイヤー上での脱水は、一形態によれば、シングルワイヤー又はツインワイヤーシステム、無摩擦脱水、膜補助脱水、真空又は超音波補助脱水などの公知技術を使用することによって実施できる。ワイヤーセクションの後に、湿紙は、更に脱水されてそして、シュープレスを含む機械的プレス、熱風、放射線乾燥、対流乾燥などによって、乾燥される。フィルムは、乾燥されることもでき、又は軟質又は硬質ニップ(又は様々な組合せ)カレンダーなどによって滑らかにされることもできる。
【0060】
一形態によれば、湿紙は、真空によって脱水される、すなわち、ワイヤー上に置かれると、ファーニッシュから水及び他の液体が、吸引される。
【0061】
本発明の上記の詳細な記述を考慮すると、当業者には、他の修正及び変形が明白になるであろう。しかし、そのような他の修正及び変形は、本発明の本質及び範囲から逸脱することなく実行できるということは、明白であるべきである。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
ナノサイズのセルロース及びエチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤を含む、包装に使用するのに好適な材料。
[2]
前記材料が、紙、ラベル、フィルム又は板紙又はプラスチック製品であるか、又は、それを含む、[1]に記載の包装に使用するのに好適な材料。
[3]
エチレン捕捉剤が、白金含有又はパラジウム含有触媒などの触媒である、[1]又は[2]に記載の包装に使用するのに好適な材料。
[4]
当該材料が、コーティングであるか、又は、表面上に印刷されている、[1]-[3]のいずれかに記載の材料。
[5]
エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤が、活性化されることができる、[1]-[4]のいずれかに記載の材料。
[6]
エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤が、エチレン捕捉剤及び/又はエチレン吸収剤をカバーするトップコーティングの除去によって、又は、保護コーティングを溶解する湿気又は湿度の増加によって、露出されることができる、[1]-[5]のいずれかに記載の材料。
[7]
ナノサイズのセルロースが、ミクロフィブリル化セルロースである、[1]-[6]のいずれかに記載の材料。
[8]
以下の工程を含む、ミクロフィブリル化セルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含む分散物を製造する方法:
a)セルロース系繊維を含むスラリーを提供することであって、当該セルロース系繊維は、場合により、機械的処理、酵素処理、カルボキシメチル化、TEMPO酸化、CMCグラフト化、化学膨潤又は酸加水分解によって前処理されたものである、
b)当該スラリーにエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を添加すること、及び、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤がミクロフィブリル化セルロースの表面に吸収されているミクロフィブリル化セルロースを含む分散物が形成されるように、機械的粉砕によって当該スラリーを処理すること。
[9]
機械的粉砕が、ホモジナイザー中で実施される、[8]に記載の方法。
[10]
ホモジナイザー中の圧力が500~2000barである、[9]に記載の方法。
[11]
[8]の工程b)で得られる分散物を使用してウェブを形成すること、及び、前記ウェブを脱水及び/又は乾燥すること、の工程を含む、包装に使用するのに好適な材料を調製する方法。
[12]
ミクロフィブリル化セルロース及びエチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤を含む分散物であって、エチレン捕捉剤又はエチレン吸収剤が、ミクロフィブリル化セルロースの表面に吸収される、前記の分散物。
[13]
紙、ラベル、板紙、プラスチック又はフィルム製品のコーティング又は含浸用の、[12]に記載の分散物の使用。