(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-14
(45)【発行日】2022-10-24
(54)【発明の名称】一体型モータを備えた圧縮機機構
(51)【国際特許分類】
F04C 23/02 20060101AFI20221017BHJP
F04C 18/356 20060101ALI20221017BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
F04C23/02 B
F04C18/356 C
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2019514284
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2017072841
(87)【国際公開番号】W WO2018050621
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】エイト ブジアド, ユーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガンショフ ヴァン デル メルシェ, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ガベラ, トーマス
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0123418(US,A1)
【文献】特開2008-215262(JP,A)
【文献】特開2003-065234(JP,A)
【文献】特開平10-246191(JP,A)
【文献】特開2012-062763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0201884(US,A1)
【文献】特開平01-232189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/02
F04C 18/356
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト軸線(X)を中心とする静止部材(40)と、前記静止部材(40)の周囲で回転する回転部材(90)と、を備える回転圧縮機機構(100)であって、
前記静止部材(40)及び前記回転部材(90)は、前記回転圧縮機機構(100)内の密封封止された内容積部の内側に配置されており、
前記回転圧縮機機構(100)は、巻線装置(211)を有するステータ(210)を備え、前記巻線装置(211)は、前記ステータ(210)の内側に電磁力を発生させ、前記ステータ(210)は、前記密封封止された内容積部の外側に配置されており、
前記回転圧縮機機構(100)は、前記ステータ(210)の前記巻線装置(211)に対向して前記回転部材(90)に直接取り付けられた複数の磁石(221)を更に備え、これにより、前記回転部材(90)は、前記ステータ(210)からの回転電磁界によって同伴回転され、
前記回転圧縮機機構(100)は、転動部材(10)を更に備え、前記転動部材(10)は、前記転動部材(10)と前記静止部材(40)との間にチャンバが形成されるように、前記静止部材(40)に対して偏心して配置されており、
前記回転圧縮機機構(100)は、前記回転部材(90)によって同伴回転される少なくとも1つの衛星要素(50)を更に備え、
前記少なくとも1つの衛星要素(50)は、オフセット軸線(Y)において旋回し、前記転動部材(10)を同伴回転させて、前記静止部材(40)と前記転動部材(10)との間の接触を確実なものと
し、
前記回転圧縮機機構(100)は、上部プレート及び下部プレートを更に備え、前記上部プレート及び前記下部プレートは、前記静止部材(40)と前記転動部材(10)との間に形成される少なくとも1つの圧縮チャンバ(110)を密封態様で高さ方向において閉鎖するように配置されており、
前記回転圧縮機機構(100)は、前記少なくとも1つの圧縮チャンバ(110)の密封封止及び前記転動部材(10)の移動を可能にするように、前記上部プレート又は前記下部プレートに配置された少なくとも1つの仕切要素を更に備え、前記少なくとも1つの仕切要素は低摩擦材料を含む、回転圧縮機機構(100)。
【請求項2】
少なくとも一対の衛星要素(50、50’)が、前記衛星要素(50、50’)同士の間に前記磁石(221)が位置するように、前記回転部材(90)の高さ方向において配置されている、請求項
1に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項3】
前記回転部材(90)は、円筒体として構成されており、前記磁石(221)は、前記円筒体の外周縁に直接取り付けられている、請求項
2に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項4】
前記衛星要素は、ベアリング(300)上に取り付けられている、請求項
1~3のいずれか一項に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項5】
前記ステータ(210)は、樹脂材料内に埋設された積層型の磁性コアを含み、前記ステータ(210)は、モータハウジング(230)の一体部分とされている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項6】
前記巻線装置(211)と前記磁石(221)とを隔てる距離は、1mm未満である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項7】
前記転動部材(10)の回転時に前記静止部材(40)内で滑動可能であり、少なくとも1つの圧縮チャンバ(110)を形成する、少なくとも1つの封止ピストン(30)を更に備え、前記少なくとも1つの圧縮チャンバ(110)の容積は、好ましくは冷媒ガスとされる圧縮性流体が吐出される前に圧縮されるように、前記転動部材(10)の回転によって減少する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項8】
潤滑油が、前記圧縮性流体と一緒に供給され、前記圧縮性流体と相溶性である、請求項
7に記載の回転圧縮機機構(100)。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の回転圧縮機機構(100)を備えている、冷却/冷凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型モータを備えた圧縮機機構に関し、より具体的には、好ましくは冷却システム又は冷凍システム内で使用されるベーンタイプの回転圧縮機機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々のタイプの圧縮機が、冷却システム又は冷凍システム内で使用されている。ガス圧縮機は、ガスの容積を減少させることによってガスの圧力を増加させる機械的デバイスである。この場合、ガスの状態を変化させることにより、ガスの温度も変化する。したがって、ガスが凝縮器を通過する時には、ガスは、冷凍圧縮機における冷媒として使用することができる。
【0003】
家庭用途に関しては、ベーン回転圧縮機が、その低減されたサイズのために、冷凍圧縮機として一般的に使用される。典型的には、ベーン回転圧縮機は、その圧縮機ハウジングの内壁によって構成された、より大きい円形空洞部の内側で回転する、円形ロータを備える。このロータの中心と空洞部の中心とが、オフセットされていることにより、偏心が引き起こされる。ロータ内には、ベーンが配置され、典型的にはロータに出入りして滑動し、また、空洞部の内壁に対して封止するように張力を付与されることにより、ベーンチャンバが形成され、このベーンチャンバで、作動流体、典型的には冷媒ガスが圧縮される。このサイクルの吸引部分の間に、冷媒ガスは、入口ポートを通過して圧縮チャンバ内に入り、この圧縮チャンバでは、ロータの偏心運動によって容積が減少され、次いで、その圧縮流体は、出口ポートを通過して吐出される。
【0004】
小サイズのベーン回転圧縮機が有利ではあるが、圧縮機ハウジングの内壁の表面を通過して冷媒が漏出することは、不利である。それゆえ、これらの圧縮機はまた、2つの主機能を有する潤滑油も使用するものであり、1つの機能は、可動部分を潤滑することであり、第2の機能は、それらの可動部分間の隙間を封止することであり、これにより、圧縮機の効率に悪影響を及ぼす恐れのあるガス漏出が、最小限に抑えられる。
【0005】
それらの構成に基づいて、様々なタイプの冷凍圧縮機が存在する。典型的には、冷凍圧縮機は、開放型のもの、半密封型のもの、又は密封型のものとすることができる。密封封止された圧縮機においては、圧縮機及びその駆動モータは、同じシャフトに連結され、剛直な密封ケーシング内に封入される。このタイプの密封封止された圧縮機は、密封的であり、外部に対して作動流体が漏出しないことが保証される。これらは、典型的には、例えば、家庭用の冷蔵庫において、冷凍庫において、又は空調機において、使用される。半密封型の圧縮機も、また、ケーシングの内側に、圧縮機及びその駆動モータを備えている。しかしながら、このケーシングは、開放することができ、これにより、交換が必要とされた場合には、モータ及び圧縮機自体の両方に対してアクセスすることができる。他方、開放型の圧縮機は、圧縮機又はモータをケースに入れることなく構成されている。このため、漏出が防止されているわけではなく、漏出を受けやすく、作動流体の漏れを防止して内圧を維持するためには、潤滑される必要があるシャフトシールに依存することとなる。
【0006】
密封型圧縮機の主要な利点の一つは、単一ユニットとして構成されていることであり、そのため、そのコンパクトさのために、容易に搬送することができる。更に、雑音が少なく、その設置が非常に容易である。しかしながら、この圧縮機は、典型的には、修理することが意図されたものではない。そのため、問題が発生した時には、新たなものへと、ユニット全体が交換される。
【0007】
半密封型圧縮機は、アクセス可能であるために、密封型圧縮機と比較して、修理がより容易である。しかしながら、ある種の漏出が起こり、このことが、圧縮機の性能の一定の損失を引き起こす。
【0008】
密封型圧縮機及び半密封型圧縮機の両方において、ケーシングの内側の電子回路及び配線は、これらが密封ケーシング内に配置されているために、非常に高温となりやすく、これが、これらのタイプの圧縮機を高価なものとしている。また、配線の偶発的なバーンアウトは、システム全体を汚染し得る。
【0009】
他方、開放型の構成においては、圧縮機及びモータは、容易にアクセスすることができ、故障の場合には容易に修理することができる。このため、メンテナンスが安価かつ容易である。密封チャンバの外側にモータが配置されていることにより、モータの選択を幅広い選択肢の中から行い得ると共に、雰囲気条件下で動作するために、より安価なモータの使用を可能とする。このような構成の欠点は、これらのタイプの圧縮機が、騒音が大きいことであり、コンパクトではないこと、更に、ある種のガス漏出がモータ/チャンバ接続部分に存在し、このことがその性能の損失を引き起こすことである。更に、シャフトシールが封止特性を維持するためには、潤滑油がシャフトシール内で必要とされる。
【0010】
したがって、開放型、密封型、及び半密封型の圧縮機の利点を有すると同時にそれらの欠点を回避した圧縮機を提供することが望ましい。
【0011】
当該技術分野においては、例えば欧州特許第2307734B1号明細書において、モータ構造が圧縮機機構の内側に一体化された回転シャフトを備えた回転圧縮機機構が公知である。構造の全体は、モータ及び圧縮機の両方を内側に密閉している外部ハウジングによって、包囲されている。このため、密封型圧縮機を構成している。この構造は、コンパクトではあるけれども、内側の電子部品が高温となってしまうという欠点を示すものであり、適切に冷却することができない。
【0012】
本発明による圧縮機機構は、コンパクトで、密封的で、なおかつ静かで、費用効率の高い解決手段を提供する。すなわち、圧縮チャンバが、密閉された内容積部内にあり、電子部品は外側に位置していて、雰囲気条件下で動作し、それらの間に直接的な物理的接続がないため、いかなる漏出も防止される。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、シャフト軸線Xを中心とする静止部材40と、この静止部材40の周囲で回転する回転部材90と、を備える回転圧縮機機構100に関するものであって、静止部材40及び回転部材90は、回転圧縮機機構100内の密封封止された内容積部の内側に配置されており、回転圧縮機機構100は、巻線装置211を有するステータ210を備え、巻線装置211は、ステータ210の内側に電磁力を発生させ、ステータ210は、密封封止された内容積部の外側に配置されている。本発明の回転圧縮機機構は、ステータ210内の巻線装置211に対向して回転部材90に直接取り付けられた複数の磁石221を更に備え、これにより、回転部材90は、ステータ210からの回転電磁界によって同伴回転される。
【0014】
好ましい実施形態によれば、本発明の回転圧縮機機構100は、転動部材(10)は、転動部材10を更に備え、これにより、この転動部材10と静止部材40との間にチャンバが形成されるように、静止部材40に対して偏心して配置されており、回転圧縮機機構100は、回転部材90によって同伴回転される少なくとも1つの衛星要素50を更に備え、少なくとも1つの衛星要素50は、オフセット軸線Yにおいて旋回し、転動部材10を同伴回転させて、静止部材40と転動部材10との間の接触を確実なものとする。
【0015】
好ましくは、本発明の回転圧縮機機構は、上部プレート及び下部プレートを更に備え、これら上部プレート及び下部プレートは、静止部材40と転動部材10との間に形成された少なくとも1つの圧縮チャンバ110を密封態様で高さ方向において閉鎖するよう配置されている。
【0016】
典型的には、回転圧縮機機構は、少なくとも1つの圧縮チャンバ110の密封封止及び前記転動部材10の移動を可能にするように、上部プレート及び/又は下部プレートの間に配置された少なくとも1つの仕切要素を更に備える。少なくとも1つの仕切要素80は、好ましくは、低摩擦材料を含む。
【0017】
本発明の回転圧縮機機構においては、好ましくは、少なくとも一対の衛星要素50、50’が、衛星要素50、50’同士の間に磁石221が位置するように、回転部材(90)の高さ方向において配置されている。
【0018】
典型的には、本発明の回転圧縮機機構においては、回転部材90は、円筒体として構成されており、磁石221は、円筒体の外周縁に直接取り付けられている。
【0019】
典型的には、衛星要素は、好ましくはボールベアリングとされるベアリング300上に取り付けられている。
【0020】
本発明の回転圧縮機機構においては、ステータ210は、典型的には、樹脂材料内に埋設された積層型の磁性コアを含み、ステータ210は、モータハウジング230の一体部分とされている。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明の回転圧縮機機構において巻線装置211と磁石221とを隔てている距離は、可能な限り小さいものとされ、典型的には約1mm未満である。
【0022】
本発明の回転圧縮機機構は、好ましくは、転動部材10の回転時に静止部材40内で滑動可能であり、少なくとも1つの圧縮チャンバ110を形成する、少なくとも1つの封止ピストン30を更に備え、この少なくとも1つの圧縮チャンバ110の容積は、好ましくは冷媒ガスとされる圧縮性流体が吐出される前に圧縮されるように、転動部材10の回転によって減少する。
【0023】
典型的には、本発明の回転圧縮機機構においては、潤滑油が、圧縮性流体と一緒に供給され、圧縮性流体と相溶性である。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、上述したような回転圧縮機機構100を備えた冷却/冷凍システムを参照する。
【0025】
本発明の更なる特徴、利点及び目的は、当業者には、以下の本発明の発明を実施するための形態を読み、包含された図面の図と併せて解釈すると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における主要構成部材を示す図である。
【
図2】
図1に示すような本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構の外観を示す図である。
【
図3】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、モータのステータ及びモータの磁石を示す図である。
【
図4】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、ステータ、巻線、及び回転要素の配置を示す図である。
【
図5】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構を示す断面図である。
【
図6】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構を示す平面図である。
【
図7a】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における外部構成を示す分解図である。
【
図7b】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、磁石を含む回転要素を示す分解図である。
【
図7c】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、巻線を含むステータを示す分解図である。
【
図8a】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における外部構成を示す分解図である。
【
図8b】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、磁石を含む回転要素を示す分解図である。
【
図8c】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、転動要素とベーンと静止ボディとを示す分解図である。
【
図8d】本発明による一体型モータを備えた圧縮機機構における、巻線を含むステータを示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例えば
図6に示すように、本発明は、ベーン回転圧縮機機構に関するものであり、これは、以下においては、回転圧縮機機構100と称される、あるいは単に、回転圧縮機100と称される。本発明の回転圧縮機100は、好ましくは、冷却システム又は冷凍システム内で使用され、作動流体は、典型的には、任意の圧縮性ガス、好ましくは冷媒ガス、又は冷媒ガスを含む混合物である。
【0028】
回転圧縮機100は、作動流体が通過して圧縮機に入る、入口130と、この流体が、圧縮された後に通過して上記の圧縮機から出る、出口140とを備える。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、例えば
図8cに見ることができるように、圧縮機は、転動部材10を更に備えており、この転動部材10の内側には、シャフト軸線Xによって中心合わせされた静止ボディ40が配置されている。圧縮機は、また、スロット31内へと滑動し得るベーンあるいは封止ピストン30を備えている。これにより、ベーンあるいは封止ピストン30は、転動部材10の内壁に対して接触することができ、以下において更に詳細に説明するように、流体が圧縮されることとなる密封的な圧縮チャンバを形成することができる。
図8cに示すように、静止ボディ40は、転動部材10の内側において、偏心して配置されている。再び
図6を参照すると、作動流体のための入口130及び出口140は、静止ボディ40内に配置されており、好ましくは、封止ピストン30の近傍に配置されている。
【0030】
本発明の構成は、シャフト(及びシャフト軸線X)及び静止ボディ40が、回転圧縮機100内において単一部材であるようにしてかつ静止的なものであるようにして、作製される。しかしながら、静止ボディ40の周囲を回転するものは、転動部材10である。実際、更に後述するように、転動部材10は、少なくとも1つの衛星要素50によって同伴回転されて、静止ボディ40の外表面上を転動する。
【0031】
封止ピストン30は、静止ボディ40内に配置されたスロット31内において、滑動することができる。ここで、このスロット31内において圧力が維持されることにより、静止ボディ40の周囲における転動部材10のすべての転動時に、封止ピストン30を、転動部材10の内壁に対して接触させることができる。これを実現するために、スロット31内には、封止ピストン30に対して圧力を印加する張力付与デバイスが存在している。その結果、封止ピストン30は、転動部材10の内壁に対して接触することができる。そのような機能を提供する任意の種類の張力付与デバイスを使用することができる。張力付与デバイスは、典型的にはスプリングであるけれども、空気圧式デバイスを使用することもできる。本発明の構成においては、
図6に示すように、封止ピストン30は、可変容積の圧縮チャンバ110を形成する。本発明の異なる実施形態においては、2つ以上の封止ピストンを使用することができ、したがって、2つ以上の圧縮チャンバを形成することができる。
【0032】
本発明の回転圧縮機機構においては、基準系は、実際に反転されている。すなわち、静止ボディ40が静止しており、静止ボディ40上における回転時に、少なくとも1つの衛星要素50によって印加された圧力によって静止ボディ40の周囲にわたって転動するのは、転動部材10である。
【0033】
本発明の構成は、また、回転部材90上に取り付けられた少なくとも1つの衛星要素50を備えている。すなわち、この回転部材90の回転によって、衛星要素50は、転動部材10上へと押圧されつつ、転動部材10の周囲を転動し、転動部材10を静止ボディ40に向けて押圧する。したがって、転動部材10と静止ボディ40との間には、回転部材が転動部材10の周囲を回転するすべての際に、接触が存在する(典型的には、静止ボディ40及び転動部材10が円筒形状である場合には、縦の接触ラインが存在する)。この接触が、衛星要素50の位置に対して位置合わせされていることも、また、明らかである。封止ピストン30が転動部材10の内壁に対して接触することにより、可変容積(時間と共に減少する)を有した密封的な圧縮チャンバ110が形成され、作動流体は、この圧縮チャンバ110内において吐出される前に圧縮される。
【0034】
衛星要素は、例えば
図5に示すように軸線Xからオフセットして軸線Yのところに配置され、静止ボディ40の周囲を旋回するものとされている。衛星要素50は、ある種の圧力又は力(すなわち、軸線Xと軸線Yとの間の距離は、衛星要素の軌道全体にわたって、この力が印加されて維持されるようなものとされている)の下で、転動部材10の外壁に対して接触する。すなわち、上述したように、衛星要素50と転動部材10の外壁とが加圧状態で接触することにより、衛星要素50は、歯車構成の場合と同様にして、静止ボディ40上にわたって転動部材10を同伴回転させる(実際には、転動させる)。
【0035】
例えば
図7b又は
図8bを見ると、例えば一対の衛星要素50、50’が、ある種の高さのところに配置されていて、静止ボディ40と転動部材10との内方接触部分と位置合わせされたところにおいて、転動部材10の外壁上を押圧している。これらの図は、また、例えば、所定高さ位置に配置された他の一対の衛星要素50’’、50’’’を示している。これらの衛星要素50’’、50’’’も、また、転動部材10の外壁上を押圧している。この構成においては、静止ボディ40に対しての転動部材10の内壁の接触は、一対の衛星要素50、50’と、他の対の衛星要素50’’、50’’’と、の間の中間ポイントにおいて起こっている。
【0036】
衛星要素は、典型的には、例えば
図1又は
図4に示すように、好ましくはボールベアリングとされるベアリング300上に取り付けられる。
【0037】
典型的には、本発明の圧縮機機構は、作動流体としての冷媒ガスと一緒に動作し、また、油が、圧縮機内において冷媒と同伴される。これにより、可動部材を潤滑し得ると共に、それら可動部材同士の間のクリアランス又は間隙を封止することができる。油は、好ましくは、油ポンプ(図示せず)によって圧縮機内に導入され、また典型的には、この油を収集して油ポンプへと戻すための装置(図示せず)も設けられていることにより、その油は、冷媒と共に再度ポンプ圧送される。この潤滑油は、圧縮機内で作動流体として使用される冷媒と相溶性である、任意の油とすることができる。冷媒は、対象となる所定の温度範囲で有効な、任意の好適な冷媒とすることができる。
【0038】
典型的には、本発明の圧縮機機構は、また、圧縮機の上部部分及び下部部分を閉鎖する上部プレート及び下部プレートを備え、これにより、封止ピストン30と一緒に、圧縮チャンバ110が形成される。2枚のプレートの間の距離、及び、転動部材10を構成している本体部分の高さは、圧縮チャンバ110を適正に封止して形成するためには、厳密なものでなければならないけれども、1つ又は複数の衛星要素上に作用するある種のクリアランス調整又は補償が実現可能である。しかしながら、本発明の圧縮機配置構成を構成するいずれの他の部分も、既知の先行技術の場合のように、正確な公差によって処置する必要はなく、それにより、この配置構成は、製造が遥かに容易なものとなり、その結果として、コストも抑えられる。典型的には、少なくとも1つの仕切要素が、圧縮チャンバ110の密封的な封止を可能としつつ同時に転動部材10の移動を可能とするために、上部プレート及び/又は下部プレートの間に更に設置される。この設置は、静止ボディ40に対しての及びプレートに対しての転動部材10の移動に関するより小さな摩擦が許容される方法で行われる。好ましくは、仕切要素を構成する材料は、典型的にはテフロン(登録商標)といったような低摩擦材料である。
【0039】
これらの低摩擦材料により、典型的には、諸部分の滑動作用が必要とされると共に、依然として低保守性が要求される用途において、長寿命の解決策が可能となる。材料の摩擦特性は、典型的には、摩擦係数によって与えられるものであり、この摩擦係数が与える値は、そのような材料によって作製された表面を横断して物体が移動することにより、それら2つの物体と表面との間に相対運動が存在する場合に、その表面よって加えられた力を示すものである。典型的には、テフロンに関して、この摩擦係数は、0.04~0.2の間に含まれる。低摩擦材料は、0.4未満の、より好ましくは0.3未満の、更により好ましくは0.2未満の摩擦係数を有する。
【0040】
本発明の目的は、駆動モータ構造を回転ベーン圧縮機自体の構成の中へと一体化することである。本発明によるこのモータ一体化は、固定されたシャフト軸線(あるいは、シャフト軸線Xと一緒の静止ボディ40)と外側で回転する部分(この場合には、外部回転部材90)とを有した圧縮機機構において、行うことができる。本発明の好ましい実施形態においては、圧縮機機構100の構成は、回転部材90に取り付けられた衛星要素を備え、衛星要素が、上述したように、静止ボディ40上へと転動部材10を押圧する。巻線211は、外部ステータ210上に取り付けられ、他方、磁石221は、回転部材90の外表面上に直接取り付けられている。磁石221は、巻線211に対して直接的に対向しており、磁石221と巻線211との間には、何らの金属製部材も配置されていない。磁石と巻線との間の距離は、自由ではあるものの可能な限り小さいものとされ、典型的には約1mm未満である。そうでなければ、効率が大幅に低下することとなり、ロータを回転させることができなくなってしまうこととなる。
【0041】
電流が巻線211を通して流れると、ステータ210の内側において、電磁力又は電磁界が発生する。この場合、巻線は、電磁石として作用し、したがって極を有している。反対の極は、回転部材90に直接取り付けられた磁石221内に存在する。これらの極の間に形成される磁界は、力を配向して形成するものとされており、回転部材90を回転させるようなトルクを回転部材90内に提供する。
【0042】
古典的な回転圧縮機においては、巻線及び磁石に関するそのような構成が不可能であることは、明らかである。なぜなら、磁石を取り付けることができる外部回転部材が存在しないからであり、また、(いかなる金属製部材をも介在させることなく)ロータ内において磁石を巻線に対して直接的に対向させ得る外部回転部材が存在しないからである。本発明の構成は、圧縮機のロータ(圧縮機機構の回転する部分、回転部材90)を、モータのロータ(すなわち、永久磁石が取り付けられる)に対して、単一部材として組み込んでいるために、したがって、コンパクトでありかつ密封型の手段を提供するために、特に有利である。更に、ステータの巻線は、外側に配置されており、巻線が閉塞チャンバ内にある密封型の手段と比較して、有利に冷却することができる。本発明の機構100内において密封的に封止されたチャンバは、例えば
図5に示すように、静止ボディ40と、転動部材10と、回転部材90と、磁石221と、に分類される。したがって、巻線211と一緒にステータ210は、例えば
図1又は
図2のいずれかに示すように、この密封チャンバの外側に配置することができ、容易に冷却することができる。
【0043】
本発明の機構におけるステータ210は、典型的には、樹脂内に埋設された積層型の磁性コアを含み、モータハウジングの一体部分として構成されている(ステータ210は、モータハウジングの鉛直方向部分を構成する)。積層型の磁性コアは、典型的には、磁束線に対して実質的に平行に位置する複数の薄い金属シートを含み、そのため、磁性コアは、多数の個々の磁気回路と等価に作製され、各磁性コアは、磁束のわずかな一部を受領し、したがって、渦電流の流れの大部分を大いに制限する。
【0044】
一般的に言えば、本発明の機構は、圧縮機の回転部分を、モータのロータとして使用することを提案した。これにより、この回転部分を直接的に駆動することが可能になり、これにより、構成部材の数及びノイズを大幅に低減することができる。圧縮機機構の最終的な構造は、非常に中実であってコンパクトであり、更に、使用される冷媒ガスに対して密封的なままであって、20バールという圧力に耐え得るように作製される。また、回転部分が取り付けられるベアリングを使用していることにより、機構は、非常にコンパクトなものとして作製される。また、ステータからの放熱は、外部空気に対して直接的に接触しているために、改良される。したがって、圧縮機機構に一体化された磁気回路の剛直な構造は、モータハウジングの機械的抵抗性に寄与する。
【0045】
ここで添付図面を参照すると、
図1は、転動部材10によって偏心的に取り囲まれた静止ボディ40の配置を示している。ここで、転動部材10は、ベアリング300上に取り付けられた回転部材90によって、静止ボディ40の外壁上を転動する。磁石221は、ステータ210内の対応する巻線211に対して対向しつつ、回転部材90の外壁上に直接取り付けられている。しかしながら、この図においては、ステータにおける典型的な積層構造は図示されていない。
【0046】
図2は、外側から見た圧縮機機構100の全体を、外側にモータハウジング230を有した完全にコンパクトな構造として、示している。
図2は、ステータ210が、巻線211を内側に保護していることを示している。
図3は、巻線がステータ210の内側に位置していること、及び、巻線が磁石221に対して対向している様子(浮遊している図示)、を示している。
【0047】
図4は、衛星要素が、圧縮機内において、回転部材90上に取り付けられている様子を示している。
【0048】
図5は、本発明の好ましい実施形態による圧縮機機構を示す断面図であって、密封チャンバを示しており、この密封チャンバは、内側において、磁石221と、回転部材90と、転動部材10と、静止ボディ40と、に分類される。巻線211を有したステータ210は、この密封チャンバの外側に配置されている。
【0049】
図6は、流体入口130と、圧縮された後の流体のための流体出口140と、を有した回転ベーン圧縮機の構造を示している。封止ピストン30が図示されている。封止ピストン30は、スロット31内へと滑動することができ、これにより、転動部材10の内壁に対して接触することができて、密封的な圧縮チャンバ110を形成することができる。圧縮チャンバ110内においては、流体が圧縮され、その後、出口140を通過して吐出される。2つの衛星要素が、符号50、50’’によって図示されている。これら衛星要素は、静止ボディ40上へと転動部材10を押圧し、これにより、チャンバ110の容積を変化させることができる。ここでは、静止ボディ40の外壁に対しての、転動部材10の内壁の接触が、転動部材10に対しての衛星要素50、50’’の外部接触点同士の間の中間の角度位置で起こっている様子を、理解することができる。
【0050】
図7a、
図7b、及び
図7cは、ステータ210を有したモータハウジング230を示す図であり(
図7a);また、外側に取り付けられた、磁石221を有した回転部材90を示す図であって、転動部材10上へと押圧されて転動部材10上を転動する一対の衛星要素50、50’及び他の一対の衛星要素50’’、50’’’が、この回転部材90の所定高さ位置に配置されている様子を示しており(
図7b);また、巻線211を有したステータ210の構成を示す図であって(
図7c)、巻線211は、磁石221に対して対向することとなる。
【0051】
図8a、
図8b、
図8c、及び
図8dは、ステータ210を有したモータハウジング230を示す図であり(
図8a);また、外側に取り付けられた、磁石221を有した回転部材90を示す図であって、転動部材10上へと押圧されて転動部材10上を転動する一対の衛星要素50、50’及び他の一対の衛星要素50’’、50’’’が、この回転部材90の所定高さ位置に配置されている様子を、更に、衛星要素同士の間に、磁石221が配置されている様子を、示しており(
図8b);また、静止ボディ30上に偏心的に配置された転動部材10と、転動部材10の内壁に対して接触する封止ピストン30と、を示す図であり(
図8c);また、巻線211を有したステータ210の構成を示す図であって(
図8d)、巻線211は、磁石221に対して対向することとなる。
【0052】
本発明は、本発明の好適な実施形態を参照して説明されているが、添付の特許請求の範囲によって規定されている本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正及び変形を実施することができる。